(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007732
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シーシャマウスピース
(51)【国際特許分類】
A24F 7/00 20060101AFI20250109BHJP
A24F 1/30 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A24F7/00
A24F1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109323
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】521343334
【氏名又は名称】株式会社しょうざん
(71)【出願人】
【識別番号】502052114
【氏名又は名称】株式会社長崎オフィスセンター
(71)【出願人】
【識別番号】523252490
【氏名又は名称】末次 匠
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉島 哲郎
(57)【要約】
【課題】汚れが付着しにくいシーシャマウスピースを提供すること。
【解決手段】水タバコの喫煙に用いられるシーシャマウスピース1であって、一部又は全体が、陶磁器からなる陶磁器部により構成されている。陶磁器部は、水タバコの煙が通過する貫通孔11を有する。シーシャマウスピース1は、少なくとも吸口部13が陶磁器部から構成されていることが好ましい。陶磁器部は、磁器から構成されていることが好ましい。陶磁器部の成分は、Na
2Oの質量比が0.5質量%以上であることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タバコの喫煙に用いられるシーシャマウスピースであって、
一部又は全体が、陶磁器からなる陶磁器部により構成されており、前記陶磁器部は、前記水タバコの煙が通過する貫通孔を有する、
シーシャマウスピース。
【請求項2】
請求項1に記載のシーシャマウスピースであって、
人が口をつける吸口部が、前記陶磁器部から構成されている、
シーシャマウスピース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシーシャマウスピースであって、
前記陶磁器部は、磁器から構成されている、
シーシャマウスピース。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のシーシャマウスピースであって、
前記陶磁器部の成分は、Na2Oの質量比が0.5質量%以上である、
シーシャマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水タバコの喫煙に用いられるシーシャマウスピースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水タバコ(即ち、シーシャ)の喫煙に用いられる喫煙具として、各種の形状の水パイプが知られている(例えば、特許文献1参照)。水パイプには、水パイプから出る煙を吸うためのホースが接続され、ホースの先端には、人が口を付ける用具として、筒状のシーシャマウスピースが用いられる。シーシャマウスピースとしては、プラスチック製(樹脂製)やガラス製のシーシャマウスピースが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーシャマウスピースは、人が口をつける部分に用いられる用具であるので、汚れが付きにくいことが望ましい。しかし、シーシャマウスピースは、水タバコの煙が出る部分に用いられるものであり、しかも、通常繰り返して使用されるので、汚れが付着し易いという問題があった。
【0005】
本開示の1つの局面では、汚れが付着しにくいシーシャマウスピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、水タバコの喫煙に用いられるシーシャマウスピースである。このシーシャマウスピースは、一部又は全体が、陶磁器からなる陶磁器部により構成されており、陶磁器部は、水タバコの煙が通過する貫通孔を有する。このような構成のシーシャマウスピースは、汚れが付着しにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】シーシャマウスピースが用いられる水パイプの全体構成を表す説明図である。
【
図3】シーシャマウスピースの
図1におけるII-II断面を示す断面図である。
【
図4】(a)はシーシャマウスピースを吸口側から見た上面図、(b)はシーシャマウスピースを接続部側から見た下面図である。
【
図5】(a)は陶磁器製のシーシャマウスピースを醤油に漬けた状態を示す写真、(b)は前記シーシャマウスピースをペーパータオル上に立てた状態を示す写真、(c)は前記シーシャマウスピースをペーパータオル上に横たえた状態を示す写真である。
【
図6】(a)はガラス製のシーシャマウスピースを醤油に漬けた状態を示す写真、(b)は前記シーシャマウスピースをペーパータオル上に立てた状態を示す写真、(c)は前記シーシャマウスピースをペーパータオル上に横たえた状態を示す写真である。
【
図7】(a)は陶磁器製のシーシャマウスピースを醤油に漬けた状態を示す写真、(b)は醤油に漬けた陶磁器製及び樹脂製のシーシャマウスピースを、ペーパータオル上に立てた状態を示す写真、(c)は前記両シーシャマウスピースをペーパータオル上に横たえた状態を示す写真である。
【
図8】(a)、(b)は他の形状のシーシャマウスピースを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.シーシャマウスピースの構成]
図1に示すように、本実施形態のシーシャマウスピース1は、水タバコ(即ち、シーシャ)の喫煙のために用いられる用具である。具体的には、シーシャマウスピース1は、水タバコの喫煙具である水パイプ3に用いられる物品(即ち、用具)である。
【0009】
水パイプ3には、水タバコの煙が出る出口パイプ5が接続されており、出口パイプ5の先端側にはゴム製のホース7が接続されている。そして、このホース7の先端に、煙の吸い口であるシーシャマウスピース1が、着脱可能に取り付けられている。
【0010】
本実施形態のシーシャマウスピース1は、陶磁器製(例えば、磁器製)である。このシーシャマウスピース1は、
図2~
図4に示すように、外周面に凹凸を有する円筒状であり、軸中心Oに沿って、水タバコの煙が流れる貫通孔11を有する。
【0011】
詳しくは、シーシャマウスピース1は、人が口をつける部分である筒状の吸口部13(
図2の上側)と、ホース7が接続される筒状の接続部15(
図2の下側)と、吸口部13と接続部15とを接続するように構成された筒状の連接部17と、を有する。なお、シーシャマウスピース1の厚みは、全体にわたってほぼ均一である。
【0012】
吸口部13は、煙の出口側(
図2の上側)に向かって外径がテーパ状に小さくなっている。接続部15は、ホース7の先端が外嵌される部分であり(
図3参照)、その外径は軸方向(
図2の上下方向)に沿って一定である。連接部17は、軸方向における中央部分に、外径が最大となるように滑らかに外側に張り出す中央湾曲部19を有し、中央湾曲部19の軸方向における両側には、中央湾曲部19より小径で、外側に滑らかに張り出す小湾曲部21、23が設けられている。
【0013】
前記実施形態のシーシャマウスピース1の場合、全体が陶磁器からなる陶磁器部により構成されているが、シーシャマウスピース1の一部が陶磁器部であってもよい。陶磁器部は、磁器からなることが好ましいが、陶器からなっていてもよい。陶磁器部が磁器からなる場合、陶磁器部に汚れが付着しにくい。
【0014】
陶磁器部の少なくとも一部は釉薬に覆われていてもよいが、前記シーシャマウスピース1は、釉薬に覆われていない。なお、釉薬に覆われていない部分は汚れが付着しにくい。
陶磁器部は、例えば、Na2O、Si2O、Al2O3、K2O、CaO、Fe2O3、MgO、P2O5、SO3、TiO2、MnO、ZnO、Ga2O3、Rb2O、SrO、ZrO2等を含む。
【0015】
陶磁器部におけるNa2Oの質量比としては、例えば、0.5質量%以上5質量%以下を採用できる。陶磁器部におけるNa2Oの質量比が上記の範囲内である場合、陶磁器部に汚れが付着しにくい。
【0016】
陶磁器部におけるSi2Oの質量比としては、例えば、70質量%以上82質量%以下を採用できる。陶磁器部におけるSi2Oの質量比が上記の範囲内である場合、陶磁器部に汚れが付着しいくい。
【0017】
陶磁器部におけるAl2O3の質量比としては、例えば、15質量%以上22質量%以下を採用できる。陶磁器部におけるAl2O3の質量比が上記の範囲内である場合、陶磁
器部に汚れが付着しにくい。
【0018】
陶磁器部における各成分の質量比を測定する方法は、SQX(Scan Quant X)分析法である。陶磁器部における特定の成分の質量比とは、陶磁器部の全質量に対する、特定の成分の質量の比率である。
【0019】
[2.シーシャマウスピースの製造方法]
本実施形態のシーシャマウスピース1は、例えば、以下の方法で製造できる。
まず、陶石を粉砕加工し、精製することで陶土とする。なお、必要に応じて、Naを含む成分等を陶土に追加する。陶土に水等を加えて泥漿(即ち、スラリー)を作製する。
【0020】
また、石膏でシーシャマウスピース1の形状に対応した鋳型(即ち、ケース)を作製する。次に、陶土の泥漿をケースに流し込み(即ち、鋳込みにより)、シーシャマウスピース1の形状の素地(即ち、生地)を作製する。次に、その素地をケースから取り出し、自然乾燥する。
【0021】
次に、素地を窯に入れ、素焼きを行う。次に、素焼き後の製品を窯から出す。次に、素焼き後の製品を窯に入れ、本焼きを行う。
[3.シーシャマウスピースが奏する効果]
(3a)本実施形態のシーシャマウスピース1は、全体が陶磁器製(特に磁器製)であるので、汚れが付着しにくいという効果がある。また、付着した汚れが落ち易いという効果もある。なお、汚れとしては、例えば、タバコの煙に含まれるヤニ等の成分などが挙げられる。
【0022】
(3b)また、陶磁器部の成分として、Na2Oの質量比が0.5質量%以上である場合には、汚れが付着しにくいという効果が大きい。また、口当たりが良いという効果もある。詳しくは、Na2Oの質量比が0.5質量%以上と大きい場合には、本焼きのとき、陶磁器部においてガラス成分が溶け易い。その結果、陶磁器部の表面が平滑となり、陶磁器部の表面に汚れ付着しにくいと考えられる。
【0023】
[4.シーシャマウスピースの実施例]
(4-1)実施例のシーシャマウスピースの製造
以下の方法で、実施例のシーシャマウスピースを製造した。
【0024】
天草で採れた陶石を粉砕加工し、精製することで陶土とした。完成した実施例のシーシャマウスピースにおいてNa2Oの質量比が0.5質量%以上となるように、Naを含む成分を陶土に追加する。Naを含む成分として、例えば、ソーダ長石等が挙げられる。なお、目的とする成分の質量比となるように、適宜材料を調整する。そして、陶土に水等を加えて泥漿を作製した。
【0025】
次に、石膏でシーシャマウスピースの形状に対応した鋳型(即ち、ケース)を作製した。次に、陶土の泥漿をケースに流し込む鋳込みにより、シーシャマウスピースの形状の素地を作製した。次に、その素地をケースから取り出し、10日程度自然乾燥した。
【0026】
次に、素地を窯に入れ、素焼きを行った。素焼きのとき、窯内の温度は以下のように変化した。素焼きの開始時点から5時間目までの温度は600℃であった。なお、X時間目とは、素焼きの開始時点からX時間が経過した時点を意味する。5時間目から、8~9時間かけて、温度を950℃まで上昇させた。
【0027】
その後、1時間ほど950℃の温度を維持したあとで、火を止めて冷まして、素地を完
成した。できた素地(即ち、素焼き後の製品)を窯から出した。
次に、素焼き後の製品を窯に入れ、本焼きを行った。本焼きのとき、窯内の温度は以下のように変化した。本焼きの開示時点から、4~6時間が経過するまで、温度は600℃であった。次に、12~14時間かけて、温度を1300℃まで上昇させた。温度が1300℃に達したときから窯の火を弱めてゆき、1~2時間かけて窯の火を消した。窯の火を消したとき、窯内の温度は1200℃であった。
【0028】
窯の火を消してから4~5時間が経過したとき、本焼き後の製品を窯から出した。
以上の工程により、実施例のシーシャマウスピースが完成した。
実施例のシーシャマウスピースは、
図2~
図4に示す形態を有していた。実施例のシーシャマウスピースの全体が陶磁器部であった。陶磁器部は磁器から成っていた。
【0029】
(4-2)シーシャマウスピースの分析
上述のようにして製造した実施例の2つのシーシャマウスピース(A)、(B)について、SQX(Scan Quant X)分析を行い、各成分の質量比を測定した。質量比の測定は、佐賀県窯業技術センターに依頼して行った。測定結果を表1に示す。表1に示す質量比の単位は質量%である。
【0030】
なお、二つのシーシャマウスピース(A)、(B)の組成が異なるのは、陶土自体の成分や、陶土に追加するソーダ長石等の材料の量が異なるからである。つまり、目的とする成分とするように、材料の種類や量を調整した。
【0031】
【0032】
(4-3)シーシャマウスピースの評価
<評価例1>
実施例及び比較例のシーシャマウスピースのそれぞれについて、汚れの付きにくさを評価した。具体的には、シーシャマウスピースの材料別に、醤油の付着率(即ち、付着の程度)を比較することで、汚れの付着率を比較した。
【0033】
実施例のシーシャマウスピースとしては、上述した
図2~
図4に示す実施形態のシーシャマウスピースを用いた(なお、組成は前記表1の(A)である)。
比較例のシーシャマウスピースとしては、ソーダガラスからなるガラス製及びポリプロピレンからなるプラスチック製(即ち、樹脂製)のシーシャマウスピースを用いた。
【0034】
評価方法は以下の(1)~(4)の通りである。
(1)シーシャマウスピースの吸口部を、1分間グラス内の醤油に浸ける。
(2)シーシャマウスピースを醤油から引き揚げ、保持したまま10秒間待つ。
【0035】
(3)シーシャマウスピースを、吸口部を下にして、キッチンペーパの上に10秒間載置する。
(4)シーシャマウスピースをキッチンペーパから取り除く。
【0036】
(5)キッチンペーパ上の醤油の染みの広がりで、醤油の付着率を比較する。
図5に、実施例の陶磁器製のシーシャマウスピースの評価手順を示す。
図5(a)に示すように、陶磁器製のシーシャマウスピースの吸口部を醤油に漬け、
図5(b)に示すように、前記シーシャマウスピースの吸口部を下にしてキッチンペーパの上に置いた。その後、
図5(c)に示すように、前記シーシャマウスピースをキッチンペーパから持ち上げて、キッチンペーパの他の箇所に横たえた。
【0037】
この
図5(c)から、陶磁器製のシーシャマウスピースの場合には、キッチンペーパ上に付着した醤油の量が少ないことが分かる。
図6(a)~
図6(c)に、比較例のガラス製のシーシャマウスピースの評価手順を示すが、前記実施例の陶磁器製のシーシャマウスピースの評価手順と同様である。
【0038】
図6(c)から、ガラス製のシーシャマウスピースの場合には、陶磁器製のシーシャマウスピースに比べて、キッチンペーパ上に付着した醤油の量が多いことが分かる。
図7(a)~
図7(c)に、実施例の陶磁器製の白色のシーシャマウスピースと比較例の樹脂製の黒色のシーシャマウスピースの評価手順を示すが、前記陶磁器製のシーシャマウスピースの評価手順と同様である。なお、
図7(a)では、陶磁器製のシーシャマウスピースのみを示している。
【0039】
図7(c)から、樹脂製のシーシャマウスピースの場合には、陶磁器製のシーシャマウスピースに比べて、キッチンペーパ上に付着した醤油の量が多いことが分かる。
前記
図5~
図7から明らかなように、実施例の陶磁器製のシーシャマウスピースは、比較例のガラス製又は樹脂製のシーシャマウスピースに比べて、キッチンペーパに付着する醤油の量が少ないこと、即ち、汚れが付きにくいことが分かる。
【0040】
<評価例2>
実施例及び比較例のシーシャマウスピースのそれぞれについて、官能試験を行った。
具体的には、11人の被験者に、実施例の陶磁器製のシーシャマウスピースと比較例の樹脂製のシーシャマウスピースを用いて、水タバコの喫煙をお願いした。そして、各シーシャマウスピースを使用した場合の使用感を教えて頂いた。
【0041】
その結果、下記の評価を得た。
(1)被験者の全員において、「実施例の陶磁器製のシーシャマウスピースを用いた場合には、比較例の樹脂製のシーシャマウスピースを用いた場合に比べて、水タバコをおいしいと感じた」との評価を得た。
【0042】
(2)被験者の全員において、「実施例の陶磁器製のシーシャマウスピースは、比較例
の樹脂製のシーシャマウスピースに比べて、シーシャマウスピースを口にくわえた感触(即ち、口当たり)がすごく良い」との評価を得た。
【0043】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0044】
(1)シーシャマウスピースの形態は、前記実施形態以外の筒状であってもよい。例えば
図8(a)及び
図8(b)に示すような各種の形状を採用できる。
(2)シーシャマウスピースは、陶磁器部ではない部分を備えていてもよい。例えば、汚れが比較的付着しにくい部分(例えば、吸口部以外の部分)に、金属製や樹脂製の部品等を取り付けてもよい。
【0045】
(3)釉薬からなる層を、シーシャマウスピースの一部(例えば、外周面)又は全体に形成してもよい。釉薬としては、周知の各種の材料(例えば灰釉等)を使用できる。
(4)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…シーシャマウスピース、3…水パイプ、11…貫通孔、13…吸口部