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  • 特開-横断歩道の道路鋲システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007734
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】横断歩道の道路鋲システム
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/559 20160101AFI20250109BHJP
【FI】
E01F9/559
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109326
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000153236
【氏名又は名称】株式会社光波
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智清
(72)【発明者】
【氏名】及川 晋
(72)【発明者】
【氏名】高木 一誠
(72)【発明者】
【氏名】宮下 充浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 有一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 清太郎
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA03
2D064AA22
2D064BA11
2D064EB05
2D064FA01
2D064GA01
2D064GA02
(57)【要約】
【課題】 横断歩道PCに沿って歩行者等Pの横断歩道の横断中に複数の発光する道路鋲20が配置されてなる道路鋲システムに於いて、複数の道路鋲の発光を集中的に制御する制御装置が不要にする。
【解決手段】 道路鋲システムに於いて、各道路鋲は、その配置位置から所定の範囲21内に於ける歩行者等の進入を検知すると、そのことを表わす進入情報を発信し、他の道路鋲が発信した進入情報を受信すると進入情報を再発信し、歩行者等の進入を検知しているとき及び他の道路鋲が発信した進入情報を受信しているときのいずれかに所定期間に亙って発光器23を発光させる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道に沿って複数の発光する道路鋲が配置されてなる道路鋲システムであって、各道路鋲が、
発光器と、
その配置位置から所定の範囲内に於ける歩行者等の進入を検知する検知器と、
前記検知器が前記歩行者等の進入を検知したときにそのことを表わす進入情報を発信すると共に、他の道路鋲が発信した進入情報を受信する信号発受信手段にして、更に、前記他の道路鋲が発信した前記進入情報を受信すると前記進入情報を発信する信号発受信手段と、
前記検知器が前記歩行者等の進入を検知しているとき及び前記他の道路鋲が発信した前記進入情報を受信しているときのいずれかに所定期間に亙って前記発光器を発光させる発光制御手段と
を含み、前記複数の道路鋲のうちのいずれかが前記歩行者等の進入を検知すると、前記複数の道路鋲の全てが前記所定期間に亙ってそれぞれの前記発光器を発光させるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路面上に配置される道路鋲に係り、より詳細には、複数の道路鋲が横断歩道に沿って配置されて、その横断歩道を歩行者や自転車(歩行者等)の横断の際に点灯又は点滅するよう構成された横断歩道の道路鋲システムに係る。
【背景技術】
【0002】
横断歩道に沿って複数の発光する道路鋲を配置し、歩行者等の横断歩道の横断中に道路鋲を発光させて、横断歩道に向かって走行する車両の運転者に歩行者等が横断中であることを報知できるように構成されたシステムが種々提案されている。例えば、特許文献1に於いては、横断歩道の両端に歩行者等の横断歩道への入りと出を検出する検出器を設置し、横断歩道への歩行者等の進入の検出に応答して、コントローラが横断歩道に沿って配置された複数の道路鋲を発光するよう制御するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-096200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如く、横断歩道に沿って、歩行者等の横断歩道の横断中に複数の発光する道路鋲が配置されてなるシステム(道路鋲システム)に於いて、道路鋲の発光が一つの制御装置にて集中的に制御されるのではなく、各道路鋲にて自律的に制御されるようになっていれば、集中制御を行うための制御装置を不要となり、より廉価なシステムが構築できる点で有利である。また、各道路鋲が自律的に発光制御を実行できる場合、道路鋲の数を調整するだけで、種々の道路幅の横断歩道に対応できることとなる。
【0005】
かくして、本発明の一つの課題は、横断歩道に沿って歩行者等の横断歩道の横断中に複数の発光する道路鋲が配置されてなる道路鋲システムにして、複数の道路鋲の発光を集中的に制御する制御装置が不要であり、歩行者等の横断歩道の横断中に各道路鋲が自律的に発光するよう構成されたシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、横断歩道に沿って複数の発光する道路鋲が配置されてなる道路鋲システムであって、各道路鋲が、
発光器と、
その配置位置から所定の範囲内に於ける歩行者等の進入を検知する検知器と、
前記検知器が前記歩行者等の進入を検知したときにそのことを表わす進入情報を発信すると共に、他の道路鋲が発信した進入情報を受信する信号発受信手段にして、更に、前記他の道路鋲が発信した前記進入情報を受信すると前記進入情報を発信する信号発受信手段と、
前記検知器が前記歩行者等の進入を検知しているとき及び前記他の道路鋲が発信した前記進入情報を受信しているときのいずれかに所定期間に亙って前記発光器を発光させる発光制御手段と
を含み、前記複数の道路鋲のうちのいずれかが前記歩行者等の進入を検知すると、前記複数の道路鋲の全てが前記所定期間に亙ってそれぞれの前記発光器を発光させるシステム
によって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、発光器は、可視光を発するLEDの如き任意の発光手段であってよい。検知器は、物体感知センサ又は人感センサの如く、適宜設定される所定の範囲(検知範囲)内に、歩行者や自転車(歩行者等)が進入したときに、そのことを検知することが可能な任意の形式のセンサ手段であってよい。「進入情報」は、上記の如く検知範囲内に歩行者等の進入が検知されたことを表わす情報である。かかる進入情報は、歩行者等の進入を検知した道路鋲の識別情報(ID)又はそれを含む情報であってよい。信号発受信手段は、任意の形式の無線又は有線にて進入情報である信号を発受信する通信手段であってよい。発光制御手段は、上記の如く、検知器が歩行者等を検知しているとき及び他の道路鋲が発信した進入情報を受信しているときのいずれかに於いて、即ち、システム内の少なくとも一つが歩行者等を検知したときに、所定期間に亙って発光器を発光(点灯又は点滅)させる任意の形式の手段であってよい。なお、「所定期間」は、車両の運転者が発光を認識可能となる任意の期間に設定されてよい。
【0008】
上記の本発明のシステムの構成に於いては、横断歩道に沿って配置される複数の、発光する道路鋲のうちのいずれかの検知器の検知範囲に歩行者等が進入すると、その道路鋲が、発光すると共に、その歩行者等の進入の情報(進入情報)を発信して、かかる進入情報を少なくとも隣りの道路鋲へ伝達し、その進入情報を受信した道路鋲も発光すると共に、進入情報を発信することとなる。これにより、本発明のシステムによれば、各道路鋲の発光制御がそれぞれ自律的に実行されながら、歩行者等が横断歩道に接近又は進入すると、各道路鋲がほぼ一斉に発光を開始することとなる。そして、かかる構成においては、複数の道路鋲の発光を集中的に制御する制御装置が不要となり、その分、コストの低減が図られる。また、各道路鋲が、自律的に、歩行者等の進入を検知し或いは他の道路鋲による歩行者等の進入の検知を知ることができるように構成されているので、種々の長さの横断歩道に発光道路鋲を設置する際に、上記の構成の道路鋲を適当な間隔にて配置するだけでよく、配置数が変更されても、システム全体の調整も不要となる点でも有利である。
【0009】
また、上記の本発明のシステムの構成に於いては、最初に歩行者等の進入を検知した道路鋲の発信した進入情報は、他の道路鋲の受信の後、その他の道路鋲から再度発信されるので、最初に歩行者等の進入を検知した道路鋲もその情報を受信することとなる。これにより、最初に歩行者等の進入を検知した道路鋲は、自身の発信した進入情報が他の道路鋲に到達していること、即ち、進入情報の正常な通信ができたことを確認できることとなる。そして、最初に歩行者等の進入を検知しその情報を発信した道路鋲は、その進入情報が他の道路鋲から返信されない場合に、歩行者等の進入を検知している間、その進入情報を再度送信できるようになっていてよい。なお、検知器は、適宜設定される周期(検知周知)毎に歩行者等の有無を検知するよう構成されてよく、各道路鋲にて受信され保持される進入情報は、順次に消去されてよい(これにより、歩行者等が横断歩道からいなくなった後に発光器の点灯又は点滅が継続することが回避される。)。
【0010】
上記の構成に於いて、一つの態様に於いて、複数の道路鋲がそれぞれの検知範囲内の歩行者等の進入を検知しているとき、各道路鋲は、いずれかの道路鋲の進入情報を既に受信しているときには(複数の道路鋲のそれぞれから進入情報を受信するようになっていてよい。)、最初に受信した進入情報を発信し、その最初に受信した進入情報の受信をトリガとして発光器を発光するよう構成されていてよい。この場合、全ての道路鋲は、最初に受信した道路鋲からの進入情報の受信をトリガとして発光器の発光を制御することとなる。また、別の態様に於いては、複数の道路鋲がそれぞれの検知範囲内の歩行者等の進入を検知しているとき、各道路鋲は、いずれかの道路鋲の進入情報を既に受信しているときに、受信した進入情報に自身の発信した進入情報があるときには、自身の進入情報を発信し、受信した進入情報に自身の発信した進入情報がないときには、最初に受信した進入情報を発信するよう構成されていてよい。この場合、各道路鋲は、他の道路鋲からの進入情報の受信前に歩行者等の進入を検知したときには、(次の検知周期までは)自身の歩行者等の進入の検知に応答して発光制御を実行することとなり、或る歩行者等の進入について、各道路鋲に於いて発光制御のトリガとなる道路鋲の変更がなくなり、トリガの交替がなくなり、発光のタイミング制御の混乱が回避できることとなる。
【0011】
ところで、上記のシステムに於いて、複数の道路鋲からの進入情報が或る別の道路鋲へ同時に到来すると、それらの進入情報の信号が消滅してしまい、いずれの進入情報もかかる別の道路鋲に受信されない現象が発生する場合がある。そこで、複数の道路鋲からの進入情報が或る一つの道路鋲へ同時に届いたときでも、その一つの道路鋲へいずれかの道路鋲で歩行者等の進入の検知があったことが確実に伝達されるように、上記の本発明のシステムに於いて、各道路鋲は、自身で歩行者等の進入を検知したことを表わす進入情報を発信するときには、各道路鋲に固有の間隔にて少なくとも2回、進入情報を発信するよう構成されていてよい。かかる構成によれば、複数の道路鋲からの1回目の発信の進入情報が或る一つの道路鋲へ同時に届いた場合でも、複数の道路鋲からの2回目の発信の進入情報が時間差をもってかかる一つの道路鋲に到達し確実に受信されることなる。
【0012】
上記の構成に於いて、発光器は、検知器の歩行者等の進入の検知と進入情報の受信又は発信をトリガとして、所定期間に亙って点灯又は点滅する。具体的には、歩行者等の進入の検知又は進入情報の発受信があると、1秒~数秒に亙って点灯又は点滅されてよい。検知周期は、通常、10m秒~100m秒に設定されてよいところ、発光器の点灯又は点滅中に歩行者等の進入の検知と進入情報の受発信があると、点灯又は点滅期間が新たな検知周期に於ける歩行者等の進入の検知と進入情報の受発信から所定期間の終了まで延長されてよい。即ち、発光器の点灯又は点滅は、最後の歩行者等の進入の検知と進入情報の受発信後から所定期間の終了まで継続されてよい。発光器を点滅させるときの点滅周期は、任意に設定されてよい。
【発明の効果】
【0013】
かくして、上記の本発明のシステムに於いては、各道路鋲が、自律的に、歩行者等の進入の検出と他の道路鋲からの進入情報の受発信とに応答して発光器の発光制御を実行するので、全道路鋲の作動を集中的に管理する設備、横断歩道の両端に歩行者等の存在を検知するための設備は不要となる。そして、道路鋲システムの設置の際には、横断歩道に沿って、適当な間隔にて道路鋲を配置する際、横断歩道の長さに応じて、適当な数の道路鋲を配置すればよく、配置施工時に配置数が変更されても、集中制御方式ではないので、そのための調整が不要であり、施工が容易となる点でも有利である。本発明のシステムは、特に信号のない横断歩道に於いて、歩行者等の横断の際に、そのことを周囲の車両の運転者に報知するために有利に用いられる。
【0014】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(A)は、本実施形態による道路鋲システムが適用される横断歩道とその周辺の模式的な平面図である。図1(B)は、本実施形態による道路鋲システムに於ける各道路鋲の構成をブロック図の形式で表わした図である。
図2図2(A)は、本実施形態による道路鋲システムに於ける各道路鋲に於ける作動の一つの態様をフローチャートの形式で表わした図である。図2(B)、(C)は、それぞれ、図2(A)の各道路鋲に於ける作動の一部の修正されたステップを表わした図である。
【符号の説明】
【0016】
R…道路,CL…中央分離線,SL…停止線,LL…路側線,P…歩行者等,PC…横断歩道,10…車両,20…発光道路鋲,21…検知範囲,22…ACアダプタ,23…発光器(LED),24…検知器(マイクロ波センサ).25…信号通信器,26…作動制御器,27…制御信号線,30…電線
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
システムの概要
本実施形態の道路鋲システム(以下、「本システム」と称する。)は、図1(A)に模式的に例示されている如き道路Rに設定された横断歩道PCに適用される。具体的には、本システムは、横断歩道PCの片側又は両側に沿って道路に埋め込まれた複数の道路鋲20から構成され、各道路鋲20は、後に詳細に説明される如く、それぞれ、適宜設定される検知範囲21内への歩行者又は自転車(歩行者等)の進入を検知すると、発光すると共に、その情報(進入情報)を(同じ横断歩道内の)他の道路鋲20へ伝達し、更に、進入情報の伝達された道路鋲20も発光すると共に、その進入情報を(同じ横断歩道内の)他の道路鋲20へ伝達するよう構成され、これにより、歩行者等Pが横断歩道PCに近接して横断する間、各道路鋲20がほぼ一斉に発光(点灯又は点滅)し、横断歩道PCに接近している車両10の運転者に対して、歩行者等Pが横断歩道PCを横断中であること又は横断歩道PCのすぐ近くに歩行者等Pが存在していることが報知されることとなる。なお、横断歩道上のいずれかの領域に歩行者等Pがいるときには確実に各道路鋲20が発光するように、好適には、図示の如く、一つの横断歩道の全ての領域がその横断歩道に沿って配置される道路鋲20の検知範囲21にて網羅されるように、即ち、横断歩道内の全領域がいずれかの道路鋲20の検知範囲21に覆われるように、道路鋲20が適当な間隔にて配置されてよい。上記の本システムの各道路鋲20は、自律的に、歩行者等の進入の検知と、情報の受発信と、発光制御とを行うので、横断歩道PCに於いて、全ての道路鋲20を集中的に作動制御するための設備は不要となる。
【0018】
各道路鋲の構成
本システムの道路鋲20の各々は、図1(B)に模式的に描かれている如く、地中の電力供給線30からの交流電力を直流電力へ変換するACアダプタ22、その電力が供給されて発光する発光器23、歩行者等を検知する検知器24、他の道路鋲との間で信号(進入情報)の通信を実行する信号通信器25及びこれらの作動を制御する制御器26を含んでいてよい。発光器23には、典型的には、LEDが採用されるところ、これに限定されない。検知器24は、検知範囲21内への歩行者等の進入を検知可能なマイクロ波センサの如き任意の検知手段であってよい。信号通信器25は、任意の形式の無線又は有線の信号の発受信の可能な通信手段であってよい。制御器26は、制御信号線27を介して上記の各器の作動を制御することのできる任意のマイクロコンピュータ装置であってよい。なお、各道路鋲20は、図示の如く、地中の電力供給線30から電力が供給されるようになっていてもよいが、それぞれがバッテリ(図示せず)を有し、そのバッテリに蓄電された電力を利用するようになっていてもよい。
【0019】
各道路鋲の作動
本システムに於いては、既に述べた如く、各道路鋲20は、検知範囲21内への歩行者等の進入の検知、進入情報の発受信及び発光制御を、それぞれ、自律的に実行するところ、一連の作動は、図2(A)に例示されている如く実行されてよい。
【0020】
同図を参照して、より具体的には、各道路鋲に於いて、検知器に於ける検知範囲21内での歩行者等の存在の有無を検知する処理(検知処理-ステップ1)は、適宜設定される所定の長さの検知周期毎、例えば、10~100m秒程度毎に実行されてよい。そして、各検知周期(或る検知処理から次の検知処理までの間)のうちに、各道路鋲での歩行者等の検知の有無に応じて異なった処理にて信号の送受と発光制御(ステップ2~13)が実行される。
【0021】
より詳細には、まず、横断歩道に歩行者等がいないときは、各道路鋲にて、検知器に於ける検知処理が実行されても(ステップ1)、道路鋲歩行者等は検知されないので(ステップ2)、次回の検知処理まで、即ち、一つの検知周期の終了までに、他のいずれの道路鋲からも歩行者等の進入情報が発信されず、各道路鋲の信号受信器の受信バッファに進入情報が保存されていないので(ステップ3)、いずれ道路鋲も発光器は消灯したままとなる(ステップ4)。
【0022】
一方、横断歩道に歩行者等が接近するか進入したときには、検知処理(ステップ1)にて、いずれかの道路鋲で歩行者等の検知が為されることとなる。その際、最初に歩行者等を検知した道路鋲は(ステップ2)、他のいずれの道路鋲からも進入情報を受信しておらず、受信バッファに進入情報を保存していないので(ステップ8)、歩行者等を検知したことを表わす最先の進入情報(最先進入情報)を発信し(ステップ9)、発光器の発光(点灯又は点滅)を開始する(ステップ10)。なお、ステップ9に於いて、最先進入情報は、自らが歩行者等を検知したことを表わすべく、その道路鋲を識別する情報(ID)そのもの又はそれを含む情報であってよい。
【0023】
上記の如く少なくとも一つの道路鋲が発信した最先進入情報は、他の道路鋲に受信されるところ、歩行者等を検知していない道路鋲(ステップ2)が最先進入情報を受信すると、その道路鋲の受信バッファに最先進入情報が保存され(ステップ3)、その道路鋲は、受信した最先進入情報を他の道路鋲へ発信すると共に(ステップ6)、かかる最先進入情報の受発信をトリガとして発光器の発光を開始することとなる(ステップ7)。そして、発信された最先進入情報が、それまで最先進入情報の届かなかった別の道路鋲に受信されると、そこで、また、最先進入情報の発信がされ、この処理が次の検知処理まで繰返されることとなり、結局、歩行者等を検知していない道路鋲を含めて、全て道路鋲に最先進入情報が到達することとなり、かくして、横断歩道に沿って配置された全ての道路鋲で発光器の発光が開始されることとなる。
【0024】
また、上記の処理に於いては、最先進入情報を発信した道路鋲は、自身の発信した最先進入情報を他の道路鋲から受信するので、自身の進入情報の他の道路鋲への正常な通信の達成を確認できることとなる。より具体的には、最先進入情報を受信した他の道路鋲がその最先進入情報を発信すると(ステップ6)、その最先進入情報は、最先進入情報を最初に発信した道路鋲の受信バッファにも保存される(ステップ8)。しかる後、その道路鋲の受信バッファに於ける最初に到達している進入情報が自身の最先進入情報であることが照合されれば(ステップ11)、自身の最先進入情報が他の道路鋲に到達していること、即ち、正常な通信の達成、が確認されることとなる。そして、最先進入情報を最初に発信した道路鋲は、他の道路鋲からの自身の最先進入情報を受信すると、再度、自身の最先進入情報を発信するようになっていてよい(ステップ9)。
【0025】
上記の処理で、或る道路鋲が歩行者等の進入を検知して自身の進入情報を発信した後に、自身の進入情報が他の道路鋲から戻ってくるより前に、別の道路鋲が歩行者等の進入を検知して発信した別の進入情報を受信したときには(ステップ8、ステップ11)、その別の進入情報が最先進入情報となる。その場合、一つの態様に於いては、図2(A)のステップ12の如く、かかる別の道路鋲の発信した最先進入情報を発信するとともに、その最先進入情報の受発信に応じて発光器の発光が実行されてよい(ステップ13)。この場合、全ての道路鋲の発光器の発光が最先進入情報(全ての道路鋲のうちで最初に歩行者等を検知した道路鋲の発信した進入情報)に従って実行されることとなる。
【0026】
また、或る道路鋲が歩行者等の進入を検知して自身の進入情報を発信した後に、自身の進入情報が他の道路鋲から戻ってくるより前に、別の道路鋲が歩行者等の進入を検知して発信した別の進入情報を受信したとき(即ち、自身の進入情報が最先進入情報ではなかったとき)の別の態様として、図2(B)の如く、ステップ11に於いて、各道路鋲は、受信した進入情報の中に自身の発信した進入情報があるか否かを探索し、自身の発信した進入情報が見つかったときには、自身の発信した進入情報を再度発信し、その進入情報に従って発光器の発光を継続するようになっていてもよい。この場合、一度、自身が歩行者等の進入を検知し、それに従って、発光器の発光を開始したときには、現在の検知周期の最後まで、自身の進入情報に従って発光器の発光が実行されることとなり、途中で、基準となる発光器の発光のトリガとなる進入情報が変更されず、制御上の混乱が回避できることとなる。
【0027】
ところで、上記のシステムの構成に於いて、歩行者等の進入が二つ以上の道路鋲で検知され、それらの発信した進入情報が他の一つの道路鋲へ同時に到達した場合、進入情報の信号が衝突して消滅し他の一つの道路鋲にいずれの進入情報も受信されない現象が観察される。かかる状況を回避すべく、図2(C)の如く、ステップ9に於いて、道路鋲毎に異なる間隔にて、即ち、各道路鋲の固有の間隔にて、自身の進入情報が2回発信されてよい。かかる構成によれば、一つの道路鋲に於いて、進入情報の信号同士の衝突により、1回目の進入情報が消滅し、受信されなくても、2回目の進入情報が時間差をもって到来することで、いずれかの進入情報が受信されることとなる。
【0028】
各道路鋲に於いて、受信バッファは複数の領域にて構成されており、上記の一連の処理に於いて、受信バッファの領域は順次確認がされ、その確認された受信バッファ領域は順次クリアされ(ステップ5)、次の検知周期の受信バッファの確認に於いては、前記のクリア後に受信バッファに到達した進入情報に基づいて制御処理が実行される。これにより、一つの進入情報が無限に発受信される状態は回避される。
【0029】
各道路鋲の発光器の発光は、進入情報の受発信をトリガとして実行されてよく、より詳細には、発光器は、トリガの発生から、任意に設定されてよい所定時間に亙って点灯又は点滅されてよい。発光器の点灯又は点滅の所定時間は、それが、車両の運転者に十分に認識される時間であってよく、通常、検知器の検知周期よりも長く設定される。従って、発光器の点灯又は点滅は、最後の進入情報の受発信(ステップ8、9、12)から所定時間の経過後に終了されてよい。また、発光器を点滅させる場合、点滅周期は、点滅が十分に認識されるような周期であってよく、通常、検知器の検知周期よりも長く設定される。
【0030】
検知器の検知周期(或いは進入情報の発受信周期)は、検知される歩行者等の移動速度に応じて変化されてもよい。例えば、検知器の検知周期は、移動速度に速いほど短くされてよい。
【0031】
かくして、本システムによれば、各道路鋲は、それらを集中的に監視するための設備を要せず、自律分散協調制御により、横断歩道に歩行者等が接近又は進入している間、ほぼ一斉に発光するよう制御される。本システムは、特に、信号機のない横断歩道に於いて有利に適用されてよい。
【0032】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとつて多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2