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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007739
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】磁電変換素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 52/00 20230101AFI20250109BHJP
   H10N 52/01 20230101ALI20250109BHJP
   H10N 52/85 20230101ALI20250109BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H10N52/00 S
H10N52/00 P
H10N52/01
H10N52/85
G01R33/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109339
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼水 大樹
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AD53
2G017AD61
2G017AD62
5F092AB01
5F092AC02
5F092BA03
5F092BA06
5F092BA15
5F092BA19
5F092BA20
5F092BA21
5F092BA22
5F092BA32
5F092CA08
5F092CA11
(57)【要約】
【課題】感磁層と金属電極層との間の接触抵抗を低減する。
【解決手段】ホール素子10は、化合物半導体を含む基板11と、基板11の頂面に形成された感磁層12と、感磁層12上に形成された感磁層よりエッチングレートが低いエッチングストップ層13と、エッチングストップ層13上にエッチングストップ層13の一部が露出するように形成された感磁層12より接触抵抗が低いコンタクト層14と、感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14が形成された頂面を露出したエッチングストップ層13を除いて覆うように形成された保護層16と、保護層16上に形成され、保護層16に形成された開口を通じてコンタクト層14に接する金属電極層15とを含み、感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14は化合物半導体を含み、露出したエッチングストップ層13の第2領域13bは酸化により絶縁体にされた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体を含む基板と、
前記基板の頂面に形成された感磁層と、
前記感磁層上に形成された前記感磁層よりエッチングレートが低いエッチングストップ層と、
前記エッチングストップ層上に前記エッチングストップ層の一部が露出するように形成された前記感磁層より金属との接触抵抗が低いコンタクト層と、
前記感磁層、前記エッチングストップ層及び前記コンタクト層が形成された前記頂面を前記露出したエッチングストップ層上を除いて覆うように形成された保護層と、
前記保護層上に形成され、前記保護層に形成された開口を通じて前記コンタクト層に接する金属電極層と
を含み、
前記感磁層、前記エッチングストップ層及び前記コンタクト層は前記化合物半導体を含み、前記露出した前記エッチングストップ層の一部は酸化により絶縁体にされた磁電変換素子。
【請求項2】
前記化合物半導体は、III-V族半導体を含む請求項1に記載の磁電変換素子。
【請求項3】
前記III-V族半導体は、GaAs、InSb及びInAsの少なくとも一つを含む請求項2に記載の磁電変換素子。
【請求項4】
前記感磁層には、Si及びTeの少なくとも一方が添加された請求項1に記載の磁電変換素子。
【請求項5】
前記エッチングストップ層には、Al及びTeが添加された請求項1に記載の磁電変換素子。
【請求項6】
前記コンタクト層には、Teが添加された請求項1に記載の磁電変換素子。
【請求項7】
化合物半導体を含む基板の頂面に感磁層を形成する工程と、
前記感磁層上に前記感磁層よりエッチングレートが低いエッチングストップ層を形成する工程と、
前記エッチングストップ層上に前記感磁層より金属との接触抵抗が低いコンタクト層を形成する工程と、
前記コンタクト層上に前記コンタクト層の一部が露出するように保護層を形成する工程と、
前記保護層から露出した前記コンタクト層をエッチングして前記エッチングストップ層の一部が露出するようにする工程と、
前記露出した前記エッチングストップ層の一部を酸化させて絶縁体にする工程と、
前記保護層上に金属電極層を形成する工程と
を含み、
前記感磁層、前記エッチングストップ層及び前記コンタクト層はいずれも前記化合物半導体を含む磁電変換素子の製造方法。
【請求項8】
前記化合物半導体は、III-V族半導体を含む請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記III-V族半導体は、GaAs、InSb及びInAsの少なくとも一つを含む請求項8に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記感磁層には、Si及びTeの少なくとも一方が添加された請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記エッチングストップ層には、Al及びTeが添加された請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記コンタクト層には、Teが添加された請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項13】
前記感磁層、前記エッチングストップ層及び前記コンタクト層が前記頂面において所定のパターンを形成するように前記感磁層、前記エッチングストップ層及び前記コンタクト層の一部を除去する工程をさらに含む請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項14】
前記コンタクト層上の前記保護層に開口を形成する工程をさらに含み、前記金属電極層は前記開口を通じて前記コンタクト層に接する請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【請求項15】
前記基板の頂面において、少なくとも前記露出したエッチングストップ層を覆うように保護層を形成する工程をさらに含む請求項7に記載の磁電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁電変換素子の一例として、ホール素子が知られている。ホール素子は、磁気信号を電気信号に変換して検出するものであり、電流センサや、モータの回転角検出センサなどの幅広い分野で利用されている。従来のホール素子の構成は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1は、GaAs(ヒ化ガリウム)に不純物のSi(シリコン)を添加したn型半導体で構成した感磁層を基板上に平面視で十字形状を成すように形成したホール素子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-50394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Si添加のn型GaAsで構成された感磁層においては、磁気の検出感度を高めるためにキャリアの移動度を高くする必要があり、それにはSiを低濃度にする必要がある。このため感磁層と金属電極層との金属半導体接合において接触抵抗が高くなりやすかった。この高い接触抵抗はホール素子の感度を低下させる。接触抵抗を低減するために、金属に接する半導体の界面に不純物を高濃度で添加したいわゆるコンタクト層を介在させることがあるが、n型の不純物としてSiは拡散係数が高く、感磁層に拡散して感度を低下させるため、Siを適応することは困難であった。
【0005】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、GaAsに不純物のSiを添加したn型半導体で構成した感磁層を有する磁電変換素子において、感磁層と金属電極層との金属半導体接合における接触抵抗を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示は、化合物半導体を含む基板と、基板の頂面に形成された感磁層と、感磁層上に形成された感磁層よりエッチングレートが低いエッチングストップ層と、エッチングストップ層上にエッチングストップ層の一部が露出するように形成された感磁層より金属との接触抵抗が低いコンタクト層と、感磁層、エッチングストップ層及びコンタクト層が形成された頂面を前記露出したエッチングストップ層上を除いて覆うように形成された保護層と、保護層上に形成され、保護層に形成された開口を通じてコンタクト層に接する金属電極層とを含み、感磁層、エッチングストップ層及びコンタクト層は化合物半導体を含み、露出したエッチングストップ層の一部は酸化により絶縁体にされた。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、感磁層と金属電極層との間の接触抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施の形態のホール素子の平面図である。
図2図2は、本実施の形態のホール素子の断面図である。
図3A図3Aは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3B図3Bは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3C図3Cは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3D図3Dは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3E図3Eは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3F図3Fは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3G図3Gは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3H図3Hは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
図3I図3Iは、本実施の形態のホール素子の製造方法の一連の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、磁電変換素子及びその製造方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、磁電変換素子の一例としてホール素子について説明する。図1は、ホール素子10を示す平面図である。図2は、図1において切断線II-IIでホール素子10を切断した断面図である。
【0010】
ホール素子10において、平面視で略矩形を有する基板11の頂面には、略矩形の二つの対角線方向に延びる略十字型のパターンを形成するように感磁層12及びエッチングストップ層13が順に積層されている。エッチングストップ層13の端部の第1領域13aには、コンタクト層14がそれぞれ積層されている。これら感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14が積層された基板11の頂面は、エッチングストップ層13において第1領域13aに挟まれた中央の第2領域13bを除いて、絶縁体である保護層16によって覆われている。保護層16上には互いに電気的に分離した金属電極層15が形成されている。保護層16はコンタクト層14上で開口し、金属電極層15は開口を通じてそれぞれコンタクト層14に接し、コンタクト層14を介在させて感磁層12に電気的に接続している。金属電極層15は、保護層16上でコンタクト層14に隣接する領域までさらに伸びている。
【0011】
金属電極層15は、第1金属電極層15から第4金属電極層15までの4個から構成されている。これらの内で、一つの対角線方向に対向する例えば第1金属電極層15及び第3金属電極層15は入力端子を構成し、他の一つの対角線方向に対向する例えば第2金属電極層15及び第4金属電極層15は出力端子を構成している。感磁層12において、第1金属電極層15及び第3金属電極層15のような一対の入力端子の間の経路を移動するキャリアは感磁層12を貫く磁場により移動方向と直交する方向にローレンツ力を及ぼされ、移動方向とは略直交方向に対向する第2金属電極層15及び第4金属電極層15のような出力端子に磁場の強さに応じた起電力が検出される。
【0012】
エッチングストップ層13において、中央の第2領域13bは、コンタクト層14、保護層16又は金属電極層15によって覆われることなく露出し、酸化により絶縁体にされている。この第2領域13bのエッチングストップ層13は、図示しない他の保護層によって覆われてもよい。
【0013】
本実施の形態のホール素子10において、基板11はIII-V族のGaAs(ヒ化ガリウム)による化合物半導体から構成されている。感磁層12は、不純物としてSi(シリコン)及びTe(テルル)の少なくとも一方を添加したGaAsによるn型化合物半導体から構成されている。感磁層12は、磁気を検出する感度を確保するために、移動度が落ちない程度に不純物が低濃度で添加され、キャリア濃度が低くなっている。
【0014】
エッチングストップ層13は、エッチングレートが低下するようにAlを加えたAlxGa(1-x)As(ヒ化アルミニウムガリウム、0<x<1)に、不純物としてTeを添加したn型化合物半導体から構成されている。エッチングストップ層13において、コンタクト層14、金属電極層15又は保護層16によって覆われずに露出している第2領域13bは、酸化されて絶縁体のGa(酸化ガリウム)及びAl(酸化アルミニウム)が生成されている。エッチングストップ層13は感磁層12に接しているが、エッチングストップ層13に含まれる不純物のTeは拡散しにくい性質を有している。このため、感磁層12へ不純物が拡散してキャリアの移動度が低下するような感磁層12の劣化が発生することはなく、ホール素子10の感度が確保される。
【0015】
コンタクト層14は、不純物としてTeを添加したGaAsによるn型化合物半導体から構成されている。コンタクト層14は、n型半導体のエッチングストップ層13と金属電極層15との間に介在し、金属電極層15との接触抵抗が低下するように、エッチングストップ層13と比べて高濃度のTeが添加されて高いキャリア濃度にされている。コンタクト層14は、エッチングストップ層13を介して感磁層12に接しているが、コンタクト層14に含まれる高濃度のTeは拡散しにくい性質を有している。このため、前述のように、感磁層12へのTeの拡散による移動度の低下のような感磁層12の劣化は発生することがなく、ホール素子10の感度が確保される。
【0016】
金属電極層15は、積層構造としてもよく、例えばAuGe(金ゲルマニウム)、Ni(ニッケル)及びAu(金)を順に積層してもよい。保護層16には、SiO(二酸化ケイ素)、SiN(窒化珪素)、SiON(酸窒化珪素)などを使用してもよい。なお、本実施の形態のホール素子10において、基板11、感磁層12、エッチングストップ層13、コンタクト層14に含まれる化合物半導体にはIII-V族のGaAsを示したが、これに限らずInSb(アンチモン化インジウム)、InAs(ヒ化インジウム)など他の種類の化合物半導体を使用してもよい。
【0017】
本実施の形態のホール素子10においては、コンタクト層14に高濃度で添加された不純物にはTeを使用している。また、コンタクト層14と感磁層12との間に介在するエッチングストップ層の不純物にもTeを使用している。したがって、本実施の形態においては、コンタクト層14に添加された高濃度のTeにより高濃度のキャリアを提供して金属電極層15との間の接触抵抗を低減することができる。このような接触抵抗を低減することにより、ホール素子10の感度又は効率を向上させることができる。また、Teは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12にTeが添加されたエッチングストップ層13が隣接し、高濃度のTeが添加されたコンタクト層14がエッチングストップ層13を介在させて接していても、Teが拡散して感磁層12が劣化することにより感度が低下することはない。
【0018】
図3Aから図3Hは、ホール素子10を製造する一連の工程を示す断面図である。これらの図を参照してホール素子10の製造方法について説明する。
【0019】
図3Aに示すように、GaAsから構成された基板11を用意する。図3Bに示すように、基板11の頂面に不純物としてSi及びTeの少なくとも一方を添加したGaAsによるn型化合物半導体を堆積して感磁層12を所定の厚さに形成する。感磁層12は、磁気を検出する感度を確保するために、移動度が高くなるように不純物も低濃度で添加されている。
【0020】
図3Cに示すように、感磁層12上にエッチングレートが低下するようにAlを加えたAlxGa(1-x)Asに不純物としてTeを添加したn型化合物半導体を堆積してエッチングストップ層13を所定の厚さに形成する。エッチングストップ層13は、後述する工程により所定の領域が大気、水蒸気などへの暴露によりGa及びAlに容易に酸化されるように、感磁層12よりも薄い適切な厚さに設定されている。エッチングストップ層13の厚さは、30nm~200nmの範囲にあってもよい。
【0021】
図3Dに示すように、エッチングストップ層13上に不純物としてTeを添加したGaAsによるn型化合物半導体を堆積してコンタクト層14を形成する。コンタクト層14は、金属電極層15との接触抵抗が低下するように、エッチングストップ層13と比べて高濃度のTeを添加してキャリア濃度を高めている。
【0022】
図3Eに示すように、基板11の頂面に積層した感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14が、平面視で略矩形の形状を有する基板11の頂面において二つの対角線方向に延びる略十字型のパターンを形成するように、積層した感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14の一部を除去する。なお、これらの除去は、エッチングによるものでもよいし、リフトオフによるものでもよい。
【0023】
図3Fに示すように、基板11の頂面及び基板11の頂面に積層された感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14を覆うように、SiO、SiN、SiONなどで保護層16を形成する。保護層16は、平面視で略十字形状を有するコンタクト層14において、端部の第1領域13aを除いた中央の第2領域13b上で開口している。
【0024】
図3Gに示すように、保護層16に覆われていない、露出したコンタクト層14をエッチングにより除去する。コンタクト層14の下にあるエッチングストップ層13は、コンタクト層14及び感磁層12よりも低いエッチングレートを有している。このため、露出したコンタクト層14をエッチングすることにより、コンタクト層14のみを除去し、エッチングストップ層13を残すことができる。露出したコンタクト層14をエッチングにより除去すると、エッチングストップ層13において保護層16によって覆われていない第2領域13bが露出するようになる。
【0025】
図3Hに示すように、金属電極層から15から露出したエッチングストップ層13の第2領域13bにおいてAlxGa(1-x)Asを絶縁体のGa及びAlに酸化する。AlxGa(1-x)Asの酸化は、第2領域13bを大気に暴露することによってもよいし、水蒸気に暴露することによってもよい。エッチングストップ層13は、前述のように適切な厚さに設定されているため、第2領域13bは暴露により容易に酸化される。
【0026】
図3Iに示すように、エッチングによりコンタクト層14を覆う保護層16に開口を形成する。そして、保護層16上に例えばAuGe、Ni及びAuを順に積層して金属電極層15を形成する。金属電極層15は、保護層16の開口を通じてコンタクト層14に接している。このような金属電極層15の形成により、図2に示したようなホール素子10が得られる。
【0027】
図1に示したように、金属電極層15は、平面視で略十字型を有するエッチングストップ層13における各端部の第1領域13aに保護層16の開口を通じて接し、さらに基板11の頂面において保護層16上で第1領域13aに隣接する領域まで延びている。このような金属電極層15のパターンは、金属電極層15を堆積した後で、エッチングにより形成してもよく、リフトオフによって形成してもよい。
【0028】
図3Hに示したエッチングストップ層13の第2領域13bを酸化した後で、第2領域13bを覆うようにさらに他の保護層を形成してもよい。他の保護層は、保護層16と同様に、例えばSiO、SiN、SiONなどによって形成してもよい。
【0029】
なお、本実施の形態のホール素子10の製造方法において、基板11、感磁層12、エッチングストップ層13、コンタクト層14に含まれる化合物半導体にはIII-V族のGaAsを示したが、これに限らずInSb、InAsなど他の種類の化合物半導体を使用してもよい。また、金属電極層15から露出したコンタクト層14の所定の領域は金属電極層15を形成した後でエッチングにより除去されたが、これにコンタクト層14の当該領域は金属電極層15が形成される前に除去されてもよい。
【0030】
本実施の形態の製造方法においては、感磁層12上に感磁層12及びコンタクト層14よりもエッチングレートが低いエッチングストップ層13を形成している。このため、金属電極層15から露出したコンタクト層14はエッチングにより除去されるが、エッチングはエッチングストップ層13に達すると停止され、エッチングストップ層13の下の感磁層12に及ぶことはない。
【0031】
本実施の形態の製造方法においては、保護層16から露出したコンタクト層14を除去すると、保護層16からエッチングストップ層13の第2領域13bが露出する。エッチングストップ層13は容易に酸化されるような適切な厚さに設定されているため、第2領域13bは酸素を含む雰囲気への暴露により酸化されて酸化物の絶縁体に転換される。第2領域13bの酸化は大気中に所定時間にわたり静置することによってもよいし、水蒸気などに曝して短時間で進めてもよい。第2領域13bは絶縁体に転換されるため、感磁層12を流れる電流が第2領域13bを経由することは阻まれ、ホール素子10の感度が確保される。
【0032】
本実施の形態の製造方法で作製したホール素子10は、コンタクト層14に高濃度で添加された不純物にはTeを使用している。また、コンタクト層14と感磁層12との間に介在するエッチングストップ層の不純物にもTeを使用している。したがって、本実施の形態においては、コンタクト層14に添加された高濃度のTeにより高濃度のキャリアを提供して金属電極層15との間の接触抵抗を低減することができる。このような接触抵抗を低減することにより、ホール素子10の感度又は効率を向上させることができる。また、Teは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12にTeが添加されたエッチングストップ層13が隣接し、高濃度のTeが添加されたコンタクト層14がエッチングストップ層13を介在させて接していても、Teが拡散により感磁層12が劣化して感度が低下することはない。
【0033】
(付記1)
ホール素子10は、化合物半導体を含む基板11と、基板11の頂面に形成された感磁層12と、感磁層12上に形成された感磁層12よりエッチングレートが低いエッチングストップ層13と、エッチングストップ層13上にエッチングストップ層13の一部が露出するように形成された感磁層12より接触抵抗が低いコンタクト層14と、感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14が形成された頂面を露出したエッチングストップ層上13を除いて覆うように形成された保護層16と、保護層16上に形成され、保護層16に形成された開口を通じて前記コンタクト層14に接する金属電極層15とを含み、感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14は化合物半導体を含み、露出したエッチングストップ層13の第2領域13bは酸化により絶縁体にされた。コンタクト層14により金属電極層15との接触抵抗が低減され、エッチングストップ層13の第2領域13bは酸化により絶縁体に転換されているため感磁層12を流れる電流が第2領域13bを経由することを阻んでホール素子10の感度を確保することができる。
【0034】
(付記2)
付記1に記載の化合物半導体は、III-V族半導体を含んでもよい。化合物半導体は、III-V族半導体から適宜選択することができる。
【0035】
(付記3)
付記2に記載のIII-V族半導体は、GaAs、InSb及びInAsの少なくとも一つを含んでもよい。III-V族半導体は、GaAs、InSb及びInAsから適宜選択することができる。
【0036】
(付記4)
付記1から3のいずれか一項に記載の感磁層12には、Si及びTeの少なくとも一方が添加されてもよい。Si及びTeの少なくとも一方の添加により、n型半導体を構成することができる。また、Teは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12に拡散してホール素子10の感度を低下させることがない。
【0037】
(付記5)
付記1から4のいずれか一項に記載のエッチングストップ層13には、Al及びTeが添加されてもよい。Alの添加によりエッチングレートを低下させることができ、Teの添加によりn型半導体を構成することができる。また、Teは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12に拡散してホール素子10の感度を低下させることがない。
【0038】
(付記6)
付記1から5に記載のコンタクト層には、Teが添加されてもよい。Teの添加によりn型半導体を構成することができる。またTeは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12に拡散してホール素子10の感度を低下させることがない。
【0039】
(付記7)
ホール素子10の製造方法は、化合物半導体から構成された基板11の頂面に感磁層12を形成する工程と、感磁層12に感磁層12よりエッチングレートが低いエッチングストップ層13を形成する工程と、エッチングストップ層13上に感磁層12より金属との接触抵抗が低いコンタクト層14を形成する工程と、コンタクト層14上にコンタクト層の一部が露出するように保護層16を形成する工程と、保護層16から露出したコンタクト層14をエッチングしてエッチングストップ層13の第2領域13bが露出するようにする工程と、露出したエッチングストップ層13の第2領域13bを酸化させて絶縁体にする工程と、保護層16上に金属電極層15を形成する工程とを含み、感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14はいずれも化合物半導体から構成されている。エッチングレートの低いエッチングストップ層13により感磁層12を保護するとともにコンタクト層14の一部を除去することを可能とし、エッチングストップ層13の第2領域13bを酸化して絶縁体に転換することにより感磁層12を流れる電流が第2領域13bを経由することを阻んでホール素子10の感度を確保することができる。
【0040】
(付記8)
付記7の記載の化合物半導体は、III-V族半導体を含んでもよい。化合物半導体は、III-V族半導体から適宜選択することができる。
【0041】
(付記9)
付記8に記載のIII-V族半導体は、GaAs、InSb及びInAsの少なくとも一つを含んでもよい。III-V族半導体は、GaAs、InSb及びInAsから適宜選択することができる。
【0042】
(付記10)
付記7から9のいずれか一項に記載の感磁層12には、Si及びTeの少なくとも一方が添加されてもよい。Si及びTeの少なくとも一方の添加により、n型半導体を構成することができる。また、Teは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12に拡散してホール素子10の感度を低下させることがない。
【0043】
(付記11)
付記7から10のいずれか一項に記載のエッチングストップ層には、Al及びTeが添加されてもよい。Alの添加によりエッチングレートを低下させることができ、Teの添加によりn型半導体を構成することができる。また、Teは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12に拡散してホール素子10の感度を低下させることがない。
【0044】
(付記12)
付記7から11のいずれか一項に記載のコンタクト層14には、Teが添加されてもよい。Teの添加によりn型半導体を構成することができる。またTeは拡散しにくい性質を有しているため、感磁層12に拡散してホール素子10の感度を低下させることがない。
【0045】
(付記13)
付記7から12のいずれか一項に記載の感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14が頂面において所定のパターンを形成するように感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14の一部を除去する工程をさらに含んでもよい。感磁層12、エッチングストップ層13及びコンタクト層14を適切なパターンに形成することにより、ホール素子10を形成することができる。
【0046】
(付記14)
付記7から13のいずれか一項に記載のコンタクト層14上の保護層16に開口を形成する工程をさらに含み、金属電極層15は開口を通じてコンタクト層14に接してもよい。金属電極層15は、コンタクト層14を介してエッチングストップ層13及び感磁層12に電気的に接続することができる。
【0047】
(付記15)
付記7から13のいずれか一項に記載の基板11の頂面において、少なくとも露出したエッチングストップ層13を覆うように保護層16を形成してもよい。保護層16の形成により、エッチングストップ層13を介して感磁層12を保護することにより、ホール素子10の安定した動作を確保することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 ホール素子
11 基板
12 感磁層
13 エッチングストップ層
14 コンタクト層
15 金属電極層
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I