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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007743
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】モータコアの製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20250109BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20250109BHJP
   H02K 15/027 20250101ALI20250109BHJP
   H02K 15/02 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
B21D28/02 D
H01F41/02 B
H02K15/02 E
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109346
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 涼太
【テーマコード(参考)】
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
5E062AA06
5E062AC11
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS13
5H615SS15
(57)【要約】
【課題】隣り合う鉄心片の基部同士の間に隙間が生じることを抑制できるモータコアの製造装置を提供する。
【解決手段】製造装置は、第1プレスダイ孔を有する第1プレスダイ及び第1プレスダイ孔に対して進退可能に設けられる第1プレスパンチを有する第1プレス装置を備える。また、製造装置は、第2プレスダイ孔を有する第2プレスダイ及び第2プレスダイ孔に対して進退可能に設けられる第2プレスパンチ83を有する第2プレス装置を備える。第1プレスパンチは、先細状の第1突出部74を有する。第2プレスパンチ83は、先細状の第2突出部84を有する。第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1が第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2よりも短い。第1突出部74の突出量H1が第2突出部84の突出量H2と等しい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークから鉄心片を打ち抜くとともに前記鉄心片を複数枚積層することでモータコアを製造するモータコアの製造装置であって、
前記鉄心片の各々は、薄板状の基部と、前記基部から前記鉄心片の積層方向の一側に膨出するダボと、を有するものであり、
第1ダイ孔を有する第1ダイ及び前記第1ダイ孔に対して進退可能に設けられる第1パンチを備え、前記第1ダイ孔及び前記第1パンチにより前記ワークをプレスすることによって、前記第1ダイ孔内に膨出する前記ダボを形成する第1プレス装置と、
第2ダイ孔を有する第2ダイ及び前記第2ダイ孔に対して進退可能に設けられる第2パンチを備え、前記ワークから前記鉄心片を打ち抜く第2プレス装置と、を備え、
前記第2プレス装置は、前記鉄心片を打ち抜く際に、当該鉄心片の前記ダボと、直前に打ち抜かれた前記鉄心片の前記ダボとをかしめるものであり、
前記第1パンチは、前記ダボの凹部を形成する先細状の第1突出部を有し、
前記第2パンチは、前記ダボの凹部を押圧する先細状の第2突出部を有し、
前記第1突出部の先端面及び前記第2突出部の先端面は、いずれも一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、
前記第1突出部の前記先端面の前記長辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記長辺の長さよりも短く、且つ前記第1突出部の前記先端面の前記短辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記短辺の長さ以下であることと、前記第1突出部の前記先端面の前記長辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記長辺の長さ以下であり、且つ前記第1突出部の前記先端面の前記短辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記短辺の長さよりも短いこととのいずれか一方を満たしており、
前記第1突出部の突出量が前記第2突出部の突出量以下である、
モータコアの製造装置。
【請求項2】
ワークから鉄心片を打ち抜くとともに前記鉄心片を複数枚積層することでモータコアを製造するモータコアの製造装置であって、
前記鉄心片の各々は、薄板状の基部と、前記基部から前記鉄心片の積層方向の一側に膨出するダボと、を有するものであり、
第1ダイ孔を有する第1ダイ及び前記第1ダイ孔に対して進退可能に設けられる第1パンチを備え、前記第1ダイ孔及び前記第1パンチにより前記ワークをプレスすることによって、前記第1ダイ孔内に膨出する前記ダボを形成する第1プレス装置と、
第2ダイ孔を有する第2ダイ及び前記第2ダイ孔に対して進退可能に設けられる第2パンチを備え、前記ワークから前記鉄心片を打ち抜く第2プレス装置と、を備え、
前記第2プレス装置は、前記鉄心片を打ち抜く際に、当該鉄心片の前記ダボと、直前に打ち抜かれた前記鉄心片の前記ダボとをかしめるものであり、
前記第1パンチは、前記ダボの凹部を形成する先細状の第1突出部を有し、
前記第2パンチは、前記ダボの凹部を押圧する先細状の第2突出部を有し、
前記第1突出部の先端面及び前記第2突出部の先端面は、いずれも一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、
前記第1突出部の前記先端面の前記長辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記長辺の長さ以下であり、且つ前記第1突出部の前記先端面の前記短辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記短辺の長さ以下であり、
前記第1突出部の突出量が前記第2突出部の突出量よりも小さい、
モータコアの製造装置。
【請求項3】
ワークから鉄心片を打ち抜くとともに前記鉄心片を複数枚積層することでモータコアを製造するモータコアの製造装置であって、
前記鉄心片の各々は、薄板状の基部と、前記基部から前記鉄心片の積層方向の一側に膨出するダボと、を有するものであり、
第1ダイ孔を有する第1ダイ及び前記第1ダイ孔に対して進退可能に設けられる第1パンチを備え、前記第1ダイ孔及び前記第1パンチにより前記ワークをプレスすることによって、前記第1ダイ孔内に膨出する前記ダボを形成する第1プレス装置と、
第2ダイ孔を有する第2ダイ及び前記第2ダイ孔に対して進退可能に設けられる第2パンチを備え、前記ワークから前記鉄心片を打ち抜く第2プレス装置と、を備え、
前記第2プレス装置は、前記鉄心片を打ち抜く際に、当該鉄心片の前記ダボと、直前に打ち抜かれた前記鉄心片の前記ダボとをかしめるものであり、
前記第1パンチは、前記ダボの凹部を形成する先細状の第1突出部を有し、
前記第2パンチは、前記ダボの凹部を押圧する先細状の第2突出部を有し、
前記第1突出部の先端面及び前記第2突出部の先端面は、いずれも同一の形状及び同一の大きさを有するものであり、
前記第1突出部の突出量が前記第2突出部の突出量よりも小さくされている、
モータコアの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータコアの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層鉄心の製造装置が記載されている。特許文献1に記載の積層鉄心の製造装置には、ダイ孔を有するダイと、パンチとを備え、ダイ孔及びパンチにより、電磁鋼板に対してダイ孔内に膨出するダボ(カシメとも称される)を形成するダボ形成装置が設けられている。また、上記製造装置におけるダボ形成装置よりも電磁鋼板の搬送方向の下流側には、ダイ孔を有するダイと、パンチとを備える打ち抜き装置が設けられている。打ち抜き装置は、電磁鋼板のうちダボが設けられている部分(以下、打抜部材という)を打ち抜くとともに、当該打抜部材のダボの凸部と、先に打ち抜かれた打抜部材のダボの凹部とをかしめる。打ち抜き装置のパンチの先端面には、打抜部材のダボの凹部の底面を押圧する押圧突起が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-110644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の積層鉄心を含む従来のモータコアの製造方法においては、ダボ形成装置のパンチのうちダボを形成する突起と、打ち抜き装置のパンチの押圧突起とが同一の形状及び同一の大きさを有する。このため、図11に示すように、打ち抜き装置によって打ち抜かれた打抜部材120が、直前に打ち抜かれた打抜部材120の上に重ね合わされると、打抜部材120のダボ123の外周面133が、直下に位置する打抜部材120の内周面137に当接する。その結果、打抜部材120のダボ123の頂面132と、直下に位置する打抜部材120のダボ123の底面136との間に隙間S1が生じる。また、打抜部材120のダボ123の周辺部分の下面と、直下に位置する打抜部材120のダボ123の周辺部分の上面との間に隙間S2が生じる。これらのことから、モータコア110の積層方向の厚みが上記隙間S1,S2の分だけ厚くなるとともに、当該厚みのばらつきが大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのモータコアの製造装置は、ワークから鉄心片を打ち抜くとともに前記鉄心片を複数枚積層することでモータコアを製造するモータコアの製造装置であって、前記鉄心片の各々は、薄板状の基部と、前記基部から前記鉄心片の積層方向の一側に膨出するダボと、を有するものであり、第1ダイ孔を有する第1ダイ及び前記第1ダイ孔に対して進退可能に設けられる第1パンチを備え、前記第1ダイ孔及び前記第1パンチにより前記ワークをプレスすることによって、前記第1ダイ孔内に膨出する前記ダボを形成する第1プレス装置と、第2ダイ孔を有する第2ダイ及び前記第2ダイ孔に対して進退可能に設けられる第2パンチを備え、前記ワークから前記鉄心片を打ち抜く第2プレス装置と、を備え、前記第2プレス装置は、前記鉄心片を打ち抜く際に、当該鉄心片の前記ダボと、直前に打ち抜かれた前記鉄心片の前記ダボとをかしめるものであり、前記第1パンチは、前記ダボの凹部を形成する先細状の第1突出部を有し、前記第2パンチは、前記ダボの凹部を押圧する先細状の第2突出部を有し、前記第1突出部の先端面及び前記第2突出部の先端面は、いずれも一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、前記第1突出部の前記先端面の前記長辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記長辺の長さよりも短く、且つ前記第1突出部の前記先端面の前記短辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記短辺の長さ以下であることと、前記第1突出部の前記先端面の前記長辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記長辺の長さ以下であり、且つ前記第1突出部の前記先端面の前記短辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記短辺の長さよりも短いこととのいずれか一方を満たしており、前記第1突出部の突出量が前記第2突出部の突出量以下である。
【0006】
また、上記課題を解決するためのモータコアの製造装置は、ワークから鉄心片を打ち抜くとともに前記鉄心片を複数枚積層することでモータコアを製造するモータコアの製造装置であって、前記鉄心片の各々は、薄板状の基部と、前記基部から前記鉄心片の積層方向の一側に膨出するダボと、を有するものであり、第1ダイ孔を有する第1ダイ及び前記第1ダイ孔に対して進退可能に設けられる第1パンチを備え、前記第1ダイ孔及び前記第1パンチにより前記ワークをプレスすることによって、前記第1ダイ孔内に膨出する前記ダボを形成する第1プレス装置と、第2ダイ孔を有する第2ダイ及び前記第2ダイ孔に対して進退可能に設けられる第2パンチを備え、前記ワークから前記鉄心片を打ち抜く第2プレス装置と、を備え、前記第2プレス装置は、前記鉄心片を打ち抜く際に、当該鉄心片の前記ダボと、直前に打ち抜かれた前記鉄心片の前記ダボとをかしめるものであり、前記第1パンチは、前記ダボの凹部を形成する先細状の第1突出部を有し、前記第2パンチは、前記ダボの凹部を押圧する先細状の第2突出部を有し、前記第1突出部の先端面及び前記第2突出部の先端面は、いずれも一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、前記第1突出部の前記先端面の前記長辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記長辺の長さ以下であり、且つ前記第1突出部の前記先端面の前記短辺の長さが前記第2突出部の前記先端面の前記短辺の長さ以下であり、前記第1突出部の突出量が前記第2突出部の突出量よりも小さい。
【0007】
また、上記課題を解決するためのモータコアの製造装置は、ワークから鉄心片を打ち抜くとともに前記鉄心片を複数枚積層することでモータコアを製造するモータコアの製造装置であって、前記鉄心片の各々は、薄板状の基部と、前記基部から前記鉄心片の積層方向の一側に膨出するダボと、を有するものであり、第1ダイ孔を有する第1ダイ及び前記第1ダイ孔に対して進退可能に設けられる第1パンチを備え、前記第1ダイ孔及び前記第1パンチにより前記ワークをプレスすることによって、前記第1ダイ孔内に膨出する前記ダボを形成する第1プレス装置と、第2ダイ孔を有する第2ダイ及び前記第2ダイ孔に対して進退可能に設けられる第2パンチを備え、前記ワークから前記鉄心片を打ち抜く第2プレス装置と、を備え、前記第2プレス装置は、前記鉄心片を打ち抜く際に、当該鉄心片の前記ダボと、直前に打ち抜かれた前記鉄心片の前記ダボとをかしめるものであり、前記第1パンチは、前記ダボの凹部を形成する先細状の第1突出部を有し、前記第2パンチは、前記ダボの凹部を押圧する先細状の第2突出部を有し、前記第1突出部の先端面及び前記第2突出部の先端面は、いずれも同一の形状及び同一の大きさを有するものであり、前記第1突出部の突出量が前記第2突出部の突出量よりも小さくされている。
【0008】
上記構成によれば、第2プレス装置により打ち抜かれる鉄心片のダボの外周面と、直前に打ち抜かれた鉄心片のダボの内周面との間に隙間が形成される。またこのとき、第2プレス装置により打ち抜かれる鉄心片のダボの頂面と、直前に打ち抜かれた鉄心片のダボの底面との間に隙間が形成された状態となる。あるいは、第2プレス装置により打ち抜かれる鉄心片のダボの頂面と直前に打ち抜かれた鉄心片のダボの底面とが当接するものの頂面と底面との間には荷重が作用しない状態となる。このため、鉄心片を打ち抜くとともに当該鉄心片のダボをかしめる際に、当該鉄心片の基部と、直前に打ち抜かれた鉄心片の基部とが面接触するようになる。したがって、隣り合う鉄心片の基部同士の間に隙間が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るステータコアの製造装置を用いて製造されるステータコアの斜視図である。
図2図2は、図1の2-2線に沿った断面の一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、図1のステータコアの製造装置の断面図である。
図4図4は、図3のワークの平面図である。
図5図5は、第1プレス装置によりワークにダボが形成された状態を示す断面図である。
図6図6は、直前に打ち抜かれた鉄心片の上面にワークが載置された状態を示す断面図である。
図7図7は、第2突出部の下面図である。
図8図8は、第2プレス装置によりワークから鉄心片が打ち抜かれた状態を示す断面図である。
図9図9は、第2プレス装置の第1変更例を示す断面図である。
図10図10は、第2プレス装置の第2変更例を示す断面図である。
図11図11は、従来のモータコアを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図8を参照して、モータコアの製造装置をステータコアの製造装置として具体化した一実施形態について説明する。
<ステータコア10>
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態のステータコア10について説明する。
【0011】
なお、各図面において、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。
図1に示すように、ステータコア10は、中心孔10aを有する略円筒状である。ステータコア10は、電磁鋼板製の鉄心片20がステータコア10の軸線方向に複数枚積層された積層体により形成されている。
【0012】
なお、以降において、鉄心片20の積層される方向を単に積層方向Aとし、ステータコア10の径方向を単に径方向Rとし、ステータコア10の周方向を単に周方向Cとして説明する。
【0013】
ステータコア10は、円環状のヨーク12と、ヨーク12から径方向Rの内側に向かって延在するとともに、周方向Cにおいて互いに間隔をあけて形成された複数のティース13とを有する。
【0014】
周方向Cにおいて隣り合うティース13同士の間には、径方向Rの内側に向かって開口するとともに径方向Rに延在するスロット14が形成されている。
ステータコア10の外周面には、ヨーク12から径方向Rの外側に向かって突出する複数の取付部15が設けられている。本実施形態のステータコア10には、3つの取付部15が周方向Cにおいて互いに間隔をあけて設けられている。取付部15には、積層方向Aに貫通する取付孔15aが形成されている。各取付孔15aに挿通される図示しないボルトによってステータコア10と図示しない回転電機のケースとが固定される。
【0015】
<鉄心片20>
図2に示すように、複数枚の鉄心片20は、連続して積層される複数枚の第1鉄心片21と、複数枚の第1鉄心片21の一側(図1及び図2の上側)に積層される1枚の第2鉄心片25とを有する。
【0016】
複数枚の第1鉄心片21は、基本的には同じ構成を有している。このため、ここでは1枚の第1鉄心片21について説明し、残りの第1鉄心片21については、その詳細な説明を省略することがある。
【0017】
第1鉄心片21は、薄板状の基部22と、基部22から第1鉄心片21の積層方向Aにおける第2鉄心片25側に向かって膨出するダボ23とを有する。基部22は、ヨーク12のうち平板状の部分である。ダボ23は、ヨーク12のうち基部22から膨出した部分であり、周方向Cにおいて互いに間隔をあけて複数設けられている(図1参照)。ダボ23は、第1鉄心片21の一方の面から突出する凸部31と、第1鉄心片21の他方の面に設けられる凹部35とを有する。
【0018】
凸部31は、先細状であるとともに、頂面32と、頂面32の周縁から第1鉄心片21の基部22に向かって延在する外周面33とを有する。
凹部35は、先細状であるとともに、底面36と、底面36の周縁から第1鉄心片21の基部22に向かって延在する内周面37とを有する。
【0019】
積層方向Aにおいて隣り合う第1鉄心片21同士は、ダボ23同士が互いにかしめられることで結合されている。詳しくは、積層方向Aにおいて隣り合う第1鉄心片21同士は、一方の第1鉄心片21のダボ23の凸部31が、他方の第1鉄心片21のダボ23の凹部35に嵌入されるとともに、かしめられることによって互いに結合されている。
【0020】
第2鉄心片25は、第2鉄心片25と隣り合う第1鉄心片21のダボ23の凸部31が嵌入される孔26を有する。
次に、ステータコア10の製造装置(以下、製造装置40)について説明する。
【0021】
<製造装置40>
図3に示すように、製造装置40は、間欠的に搬送されるワークWから鉄心片20を打ち抜くとともに積層することでステータコア10を製造する。
【0022】
製造装置40は、ワークWが搬送される上面を有する下側ダイセット41、下側ダイセット41の上方に位置するとともに、下側ダイセット41に対して進退可能に設けられる上側ダイセット43、及びストリッパプレート44を備える。製造装置40は、第1孔抜装置50、第2孔抜装置60、第1プレス装置70、及び第2プレス装置80をワークWの搬送方向の上流側(図3の左側)から順に備える。
【0023】
(第1孔抜装置50)
図3及び図4に示すように、第1孔抜装置50は、ワークWから中心孔10aに対応する部分を打ち抜くものである。第1孔抜装置50は、下側ダイセット41に固定され、第1孔抜ダイ孔52を有する第1孔抜ダイ51、及び上側ダイセット43に固定され、第1孔抜ダイ孔52に対して進退可能に設けられる第1孔抜パンチ53を備える。
【0024】
(第2孔抜装置60)
図3及び図4に示すように、第2孔抜装置60は、ワークWのうちスロット14に対応する部分を打ち抜くものである。第2孔抜装置60は、下側ダイセット41に固定され、第2孔抜ダイ孔62を有する第2孔抜ダイ61、及び上側ダイセット43に固定され、第2孔抜ダイ孔62に対して進退可能に設けられる第2孔抜パンチ63を備える。
【0025】
(第1プレス装置70)
図3及び図4に示すように、第1プレス装置70は、ワークWにダボ23を形成するものである。第1プレス装置70は、下側ダイセット41に固定され、第1プレスダイ孔72を有する第1プレスダイ71、及び上側ダイセット43に固定され、第1プレスダイ孔72に対して進退可能に設けられる第1プレスパンチ73を備える。
【0026】
図5に示すように、第1プレスパンチ73は、上側ダイセット43に固定される第1パンチ本体75と、第1パンチ本体75から下方に突出する第1突出部74とを有する。第1突出部74は、先細状である。第1突出部74は、外周面77と先端面76とを有する。
【0027】
図7に示すように、第1突出部74の先端面76は、一対の長辺76a及び一対の短辺76bを有する長方形状である。
短辺76bに沿った方向と直交する断面において、第1突出部74は、台形状を有する。
【0028】
(第2プレス装置80)
図3及び図4に示すように、第2プレス装置80は、ワークWから鉄心片20を打ち抜くものである。第2プレス装置80は、下側ダイセット41に固定され、第2プレスダイ孔82を有する第2プレスダイ81、上側ダイセット43に固定され、第2プレスダイ孔82に対して進退可能に設けられる第2プレスパンチ83、及び背圧装置89を備える。
【0029】
図6に示すように、第2プレスパンチ83は、上側ダイセット43に固定される第2パンチ本体85と、第2パンチ本体85の下面から突出する第2突出部84とを有する。
第2パンチ本体85は、ワークWのうち鉄心片20の基部22となる部分を押圧する平坦面85aを有する。
【0030】
第2突出部84は、先細状である。複数の第2突出部84が、第2パンチ本体85の下面において複数のダボ23の位置にそれぞれ対応して設けられている。
第2突出部84は、外周面87と先端面86とを有する。
【0031】
図7に示すように、第2突出部84の先端面86は、一対の長辺86a及び一対の短辺86bを有する長方形状である。
短辺86bに沿った方向と直交する断面において、第2突出部84は、台形状を有する。
【0032】
なお、以降において、第1プレスパンチ73及び第2プレスパンチ83の進退方向を単に進退方向Mという。
図7に示すように、第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1は、第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2よりも短い(L1<L2)。
【0033】
長辺76aに沿った方向の第1突出部74の基端74aの長さL3は、長辺86aに沿った方向の第2突出部84の基端84aの長さL4よりも短い(L3<L4)。
第1突出部74の先端面76の短辺76bの長さ、第2突出部84の先端面86の短辺86bの長さ、短辺76bに沿った方向の第1突出部74の基端74aの長さ、及び短辺86bに沿った方向の第2突出部84の基端84aの長さの各々は、等しくされている。
【0034】
図5及び図6に示すように、第1突出部74の突出量H1は、第2突出部84の突出量H2以下である。
本実施形態では、第1突出部74の突出量H1が、第2突出部84の突出量H2と等しくされている(H1=H2)。
【0035】
図3に示すように、背圧装置89は、打ち抜かれる鉄心片20の下面に対して上向きの圧力である背圧を付与するものであり、鉄心片20の下面を支持する受け台89aと、受け台89aの下面から進退方向Mに沿って延在する支持部89bとを有する。受け台89aは、鉄心片20が打ち抜かれる度に鉄心片20の厚み分だけ降下されるように図示しないモータによって駆動される。
【0036】
(ストリッパプレート44)
図3に示すように、ストリッパプレート44は、上側ダイセット43の下面に設けられるとともに、図示しない付勢部材によって下側ダイセット41に向けて付勢されている。ストリッパプレート44には、パンチ53,63,73,83がそれぞれ挿通されるパンチ挿通孔44a,44b,44c,44dが設けられている。
【0037】
なお、本実施形態において、第1プレスダイ71、第1プレスダイ孔72、及び第1プレスパンチ73の各々が、本発明に係る第1ダイ、第1ダイ孔、及び第1パンチの各々に相当する。また、本実施形態において、第2プレスダイ81、第2プレスダイ孔82、及び第2プレスパンチ83の各々が、本発明に係る第2ダイ、第2ダイ孔、及び第2パンチの各々に相当する。
【0038】
次に、ステータコア10の製造方法について説明する。
ステータコア10の製造方法は、中心孔打抜工程、スロット打抜工程、ダボ形成工程、及び外径打抜工程を備える。
【0039】
<中心孔打抜工程>
図3及び図4に示すように、中心孔打抜工程においては、ストリッパプレート44によりワークWが下側ダイセット41に押し付けられた状態で、第1孔抜パンチ53が第1孔抜ダイ孔52内に進入することで、ワークWから打抜片W1が打ち抜かれる。これにより、ワークWに中心孔10aが形成される。
【0040】
<スロット打抜工程>
図3及び図4に示すように、スロット打抜工程においては、ストリッパプレート44によりワークWが下側ダイセット41に押し付けられた状態で、第2孔抜パンチ63が第2孔抜ダイ孔62内に進入することで、ワークWから打抜片W2が打ち抜かれる。これにより、ワークWにスロット14が形成される。
【0041】
このとき、図示しないダイ孔及びパンチにより、取付孔15aに対応する部分がワークWから打ち抜かれる。これにより、ワークWに取付孔15aが形成される。
<ダボ形成工程>
図3図5に示すように、ダボ形成工程においては、ストリッパプレート44によりワークWが下側ダイセット41に押し付けられた状態で、第1プレスパンチ73が第1プレスダイ孔72内に進入することで、ワークWがプレスされる。これにより、ワークWにダボ23が形成される。
【0042】
<外径打抜工程>
図3図4図6、及び図8に示すように、外径打抜工程においては、ストリッパプレート44によりワークWが下側ダイセット41に押し付けられた状態で、第2プレスパンチ83が第2プレスダイ孔82内に進入する。これにより、ワークWから鉄心片20が打ち抜かれる。ワークWから鉄心片20を打ち抜く際に、第2突出部84がワークWのダボ23の凹部35を押圧することによって、当該鉄心片20のダボ23と、直前に打ち抜かれた鉄心片20のダボ23とがかしめられる。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図6に示すように、第2プレス装置80により打ち抜かれる鉄心片20のダボ23の外周面33と、直前に打ち抜かれた鉄心片20のダボ23の内周面37との間に隙間Sが形成される。
【0044】
またこのとき、第2プレス装置80により打ち抜かれる鉄心片20のダボ23の頂面32と直前に打ち抜かれた鉄心片20のダボ23の底面36とが当接するものの頂面32と底面36との間には荷重が作用しない状態となる。
【0045】
このため、図8に示すように、鉄心片20を打ち抜くとともに当該鉄心片20のダボ23をかしめる際に、当該鉄心片20の基部22と、直前に打ち抜かれた鉄心片20の基部22とが面接触するようになる。
【0046】
次に、本実施形態の効果について説明する。
上記作用を奏するので、隣り合う鉄心片20の基部22同士の間に隙間Sが生じることを抑制できる。したがって、ステータコア10の積層方向Aの厚みの増大を抑制できるとともに、当該厚みのばらつきを低減できる。
【0047】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・背圧装置89を省略してもよい。この場合、第2プレスダイ81の内径よりも僅かに小さな内径を有する筒状のスクイズリングを第2プレスダイ81の下方に設けることが好ましい。これにより、打ち抜かれた鉄心片20の側面をスクイズリングの内周面によって摺動可能に支持することで、スクイズリングの内部において鉄心片20を積層することができる。
【0049】
・本実施形態では、第1突出部74の基端74aの長さが第2突出部84の基端84aの長さよりも短くなるようにしたが、第1突出部74の基端74aの長さが第2突出部84の基端84aの長さと等しくてもよい。
【0050】
・本実施形態では、第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1が第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2よりも短く、且つ第1突出部74の突出量が第2突出部84の突出量と等しくなるようにしたが、これに限られない。
【0051】
他に例えば、第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1が第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2以下であり、且つ第1突出部74の突出量を第2突出部84の突出量よりも小さくしてもよい。この場合、図9に示すように、第1突出部274の長辺276aの長さL23と第2突出部284の長辺286aの長さL24とを等しくするとともに、第1突出部274の突出量H21を第2突出部284の突出量H22よりも小さくしてもよい。
【0052】
また、図10に示すように、例えば第2突出部384が、第2パンチ本体385から進退方向Mに沿って下方に突出する四角柱状のベース部390と、ベース部390から下方に突出する先細状の先端部391とを備えるようにしてもよい。このとき、先端部391は、第1突出部374と同一の形状及び同一の大きさを有する。この場合、ベース部390の突出量H33の分だけ第2突出部384の突出量H32が第1突出部374の突出量H31よりも大きくなることによって、直前に打ち抜かれた鉄心片320のダボ323に対して直線状の半抜き部339を形成することができる。
【0053】
・本実施形態では、先端面76,先端面86の形状を長方形状のものについて例示したが、これに限られない。他に例えば、第1突出部及び第2突出部を、先端面が円形状のものとして具体化してもよい。
【0054】
・本実施形態では、第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1を第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2よりも短くするとともに、先端面76の短辺76bの長さを先端面86の短辺86bの長さと等しくしたが、これに限られない。
【0055】
例えば、第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1を第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2よりも短くするとともに、先端面76の短辺76bの長さを先端面86の短辺86bの長さよりも短くしてもよい。
【0056】
また、例えば、第1突出部74の先端面76の長辺76aの長さL1を第2突出部84の先端面86の長辺86aの長さL2と等しくするとともに、先端面76の短辺76bの長さを先端面86の短辺86bの長さよりも短くしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…ステータコア
10a…中心孔
12…ヨーク
13…ティース
14…スロット
15…取付部
15a…取付孔
20,320…鉄心片
21…第1鉄心片
22…基部
23,123,323…ダボ
25…第2鉄心片
26…孔
31…凸部
32,132…頂面
33,133…外周面
35…凹部
36,136…底面
37,137…内周面
40…製造装置
41…下側ダイセット
43…上側ダイセット
44…ストリッパプレート
44a,44b,44c,44d…パンチ挿入孔
50…第1孔抜装置
51…第1孔抜ダイ
52…第1孔抜ダイ孔
53…第1孔抜パンチ
60…第2孔抜装置
61…第2孔抜ダイ
62…第2孔抜ダイ孔
63…第2孔抜パンチ
70…第1プレス装置
71…第1プレスダイ
72…第1プレスダイ孔
73…第1プレスパンチ
74,274,374…第1突出部
74a…基端
75…第1パンチ本体
76…先端面
76a,276a…長辺
76b…短辺
77…外周面
80…第2プレス装置
81…第2プレスダイ
82…第2プレスダイ孔
83…第2プレスパンチ
84,384…第2突出部
84a…基端
85,385…第2パンチ本体
85a…平坦面
86…先端面
86a,286a…長辺
86b…短辺
87…外周面
89…背圧装置
89a…受け台
89b…支持部
110…モータコア
120…打抜部材
339…半抜き部
390…ベース部
391…先端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11