(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025077582
(43)【公開日】2025-05-19
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20250512BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20250512BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189881
(22)【出願日】2023-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(72)【発明者】
【氏名】横田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 嘉人
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA01
2H087MA15
2H087MA16
2H087NA07
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA14
2H087PA15
2H087PA16
2H087PB14
2H087PB15
2H087PB16
2H087PB17
2H087PB18
2H087PB19
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087SA43
2H087SA47
2H087SA49
2H087SA53
2H087SA56
2H087SA57
2H087SA61
2H087SA62
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA71
2H087SA72
2H087SA73
2H087SB03
2H087SB04
2H087SB12
2H087SB13
2H087SB14
2H087SB15
2H087SB16
2H087SB24
2H087SB27
2H087SB31
2H087SB33
2H087SB35
2H087SB36
2H087SB37
2H087SB42
2H087SB43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型かつ高性能なズームレンズ及び撮像装置を提供する。
【解決手段】物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とで構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.83<Nd2<2.50・・・(1)
0.20<TLt/ft<0.96・・・(2)
1.16<βLt・・・(3)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
βLt:前記後群の最も像側のレンズ群の望遠端における横倍率
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とで構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.83 < Nd2 < 2.50 ・・・(1)
0.20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
1.16 < βLt ・・・(3)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
βLt:前記後群の最も像側のレンズ群の望遠端における横倍率
【請求項2】
物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とで構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、前記後群は合焦時に光軸方向に移動するフォーカス群を有し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.83 < Nd2 < 2.50 ・・・(1)
0.20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
7.1 < |(1-βFt2)×βrt2| < 20.0 ・・・(14)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
βFt:前記フォーカス群の望遠端における横倍率
βrt:前記フォーカス群より像側の全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率
【請求項3】
物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群で構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記後群中の最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nを含む群をFR群とし、前記レンズ群Nより像側かつ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pから最も像側のレンズ群をRR群とし、前記後群が前記FR群と前記RR群で構成され、前記後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、以下の条件式を満足することを特徴とするズームレンズ。
1.83 < Nd2 < 2.50 ・・・(1)
0.20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
2.70 < βCt ・・・(4)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
βCt:前記RR群の中で最も物体側の負レンズ群から最も像側のレンズ群の望遠端における合成横倍率
【請求項4】
前記後群中の最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nを含むFR群と、前記レンズ群Nより像側かつ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pから最も像側のレンズ群をRR群とし、前記後群が前記FR群と前記RR群で構成されることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記後群中の最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nを含むFR群と、前記レンズ群Nより像側かつ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pから最も像側のレンズ群をRR群とし、前記後群が前記FR群と前記RR群で構成されることを特徴とする請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記FR群が全体で負の屈折力を有し、前記RR群が全体で正の屈折力を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.73 < NdA < 2.50 ・・・(5)
但し、
NdA:前記レンズAのd線における屈折率
【請求項8】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
(CrAf+CrAr)/(CrAf-CrAr)< 0.30 ・・・(6)
但し、
CrAf:前記レンズAの物体側面の曲率半径
CrAr:前記レンズAの像側面の曲率半径
【請求項9】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.02 < BFw/fw < 0.98 ・・・(7)
但し、
BFw:当該ズームレンズの広角端における最も像側面から像面までの距離
fw:当該ズームレンズの広角端における焦点距離
【請求項10】
前記後群の最も像側のレンズ群が、4枚以下のレンズ枚数で構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
前記第1レンズ群に含まれる正の屈折力を有するレンズが、2枚以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項12】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.15 < f1/ft < 0.70 ・・・(8)
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
【請求項13】
前記後群は軸上光束の有効径を決定する開口絞りを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.10 < Lnsr/Lnall < 0.74 ・・・(9)
但し、
Lnsr:前記開口絞りより像側にあるレンズの総枚数
Lnall:当該ズームレンズのレンズの総枚数
【請求項14】
前記後群は軸上光束の有効径を決定する開口絞りを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.20 < TLsrw/BFw < 6.95 ・・・(10)
但し、
TLsrw:広角端における前記開口絞りから前記レンズAの像側面までの距離
BFw:当該ズームレンズの広角端における最も像側面から像面までの距離
【請求項15】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.06 < BFt/TLt < 0.32 ・・・(11)
但し、
BFt:当該ズームレンズの望遠端における最も像側面から像面までの距離
【請求項16】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
2.90 < f1/|fFRt| < 8.00 ・・・(12)
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fFRt:前記FR群の望遠端における焦点距離
【請求項17】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
-2.50 < βRRw < -0.50 ・・・(13)
但し、
βRRw:前記RR群の広角端における横倍率
【請求項18】
請求項1から3のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該ズームレンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関し、特に、固体撮像素子等を用いた小型で高性能な撮像装置に好適なズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の固体撮像素子を用いた撮影装置が普及している。これらの撮像装置に用いられる固体撮像素子の高画素化に伴い、光学系には小型軽量を維持しつつ、高い解像性能が求められるようになってきている。
【0003】
これらの要求を満足するために、例えば、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群と、第5レンズ群を備え、諸収差を抑えた小型のズームレンズが提案されている(「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ズームレンズの小型化には、物体側に正の屈折力、像側に負の屈折力を有する、テレフォト型のパワー配置を採用することが効果的である。しかしながら、そのパワー配置を強くすると、少ないレンズ枚数で諸収差を良好に補正することが困難となる。そのためズームレンズの小型化と高性能化の両立には、各レンズ群の屈折力やレンズ構成を最適化する必要がある。
【0006】
本件発明の課題は、小型かつ高性能なズームレンズ及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るズームレンズは、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とで構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
1.83 < Nd2 < 2.50 ・・・(1)
0.20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
1.16 < βLt ・・・(3)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
βLt:前記後群の最も像側のレンズ群の望遠端における横倍率
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るズームレンズは、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とで構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、後群中に合焦時に光軸方向に移動するフォーカス群を有し、以下の条件式を満足する。
1.83 < Nd2 < 2.50 ・・・(1)
0.20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
7.1 < |(1-βFt2)×βrt2| < 20.0 ・・・(14)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
βFt:前記フォーカス群の望遠端における横倍率
βrt:前記フォーカス群より像側の全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るズームレンズは、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群で構成され、変倍時に隣り合うレンズ群の間隔が変化し、前記後群中の最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nを含む群をFR群とし、前記レンズ群Nより像側かつ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pから最も像側のレンズ群をRR群とし、前記後群が前記FR群と前記RR群で構成され、前記後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有し、以下の条件式を満足する。
1.83 < Nd2 < 2.70 ・・・(1)
0.20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
2.70 < βCt ・・・(4)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
βCt:前記RR群の中で最も物体側の負レンズ群から最も像側のレンズ群の望遠端における合成横倍率
【0010】
また、上記課題を解決するため、本件発明に係る撮像装置は、上記記載の光学系と、当該光学系が形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型かつ高性能なズームレンズ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本件発明の実施例1のズームレンズの広角端における断面図である。
【
図2】本件発明の実施例1のズームレンズの広角端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図3】本件発明の実施例1のズームレンズの中間焦点距離における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図4】本件発明の実施例1のズームレンズの望遠端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図5】本件発明の実施例2のズームレンズの広角端における断面図である。
【
図6】本件発明の実施例2のズームレンズの広角端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図7】本件発明の実施例2のズームレンズの中間焦点距離における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図8】本件発明の実施例2のズームレンズの望遠端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図9】本件発明の実施例3のズームレンズの広角端における断面図である。
【
図10】本件発明の実施例3のズームレンズの広角端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図11】本件発明の実施例3のズームレンズの中間焦点距離における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図12】本件発明の実施例3のズームレンズの望遠端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図13】本件発明の実施例4のズームレンズの広角端における断面図である。
【
図14】本件発明の実施例4のズームレンズの広角端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図15】本件発明の実施例4のズームレンズの中間焦点距離における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図16】本件発明の実施例4のズームレンズの望遠端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図17】本件発明の実施例5のズームレンズの広角端における断面図である。
【
図18】本件発明の実施例5のズームレンズの広角端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図19】本件発明の実施例5のズームレンズの中間焦点距離における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図20】本件発明の実施例5のズームレンズの望遠端における無限遠被写体撮影時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0014】
1.ズームレンズ
1-1.ズームレンズの光学構成
まず、本発明に係るズームレンズの光学構成を説明する。本実施の形態のズームレンズは、正の屈折力を有する第1レンズ群と、複数のレンズ群を有する後群とで構成される。当該ズームレンズでは、レンズ群間の間隔を変化させることで、広角端から望遠端に変倍を行う。「レンズ群」は、1枚以上のレンズを有する。「レンズ群」とは、広角端及び望遠端間の変倍時に隣り合うレンズ群同士の間隔が変化する1枚のレンズ又は2枚以上のレンズの集合である。レンズ群が複数のレンズを有する場合では、複数のレンズは、広角端及び望遠端間の変倍時に相対的な位置関係を維持する。レンズ群は、光軸上を移動可能に構成されていてもよいし、固定されていてもよい。
【0015】
当該ズームレンズでは、最も物体側に正の屈折力のレンズ群を有する。集光作用を有するレンズ群を最も物体側に配置することで、テレフォト型のパワー配置を取りやすくなるため、望遠端における光学全長の小型化を図ることが容易となる。また、最も物体側で集光作用を有するため、その像側に配置される後群の径の小型化を図ることが容易となる。
【0016】
当該ズームレンズでは、後群の最も像側に負の屈折力を有するレンズAを有する。最も像側に負の屈折力を有することで、テレフォト型のパワー配置を取りやすくなるため、望遠端における光学全長の小型化を図ることが容易となる。また、最も像側で発散作用を有するため、最も像側のレンズの径の小型化を図ることが容易となる。レンズAは単レンズであり、球面レンズ及び非球面レンズのいずれであってもよい。また、非球面レンズには、表面に非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズも含まれるものとする。
【0017】
以下、当該ズームレンズの光学構成に関してより詳細に説明する。
【0018】
(1)第1群レンズ群
第1レンズ群は、当該ズームレンズを構成する複数のレンズ群において、最も物体側に配置される正の屈折力を有するレンズ群である。但し、第1レンズ群より物体側に、屈折力を有さない、若しくは屈折力の極めて小さい光学素子が配置されていてもよい。そのような光学素子として、例えば、レンズの光軸を反射屈曲させるプリズムや、レンズを汚れやキズなどから保護するための保護フィルターや、入射光量を低下させるために用いられるNDフィルターや、色彩を調整するためのPLフィルター等の種々のフィルターが挙げられる。
【0019】
第1レンズ群は正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。第1レンズ群は全体で正の屈折力を有するため、第1レンズ群は少なくとも1枚の正の屈折力を有するレンズを有すればよい。第1レンズ群を複数枚の正の屈折力を有するレンズを用いて構成すれば、望遠端における色収差や球面収差の補正が容易になるため好ましい。
【0020】
第1レンズ群を構成するレンズ枚数は特に限定されるものではないが、当該ズームレンズの小型軽量化及び低コスト化を図りつつ、高い光学性能を実現する上で、第1レンズ群内の正の屈折力を有するレンズは、2枚以下で構成することがより好ましい。
【0021】
(2)後群
後群は、正の屈折力を有する第1レンズ群の像側に配置される複数のレンズ群の総称である。複数のレンズ群を有し、また最も像側のレンズが負の屈折力を有する限り、レンズ群の構成及びレンズの構成は特に限定されない。
【0022】
後群の最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nを含み1以上のレンズ群から構成される合成群をFR群とし、FR群より像側で且つ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pから最も像側のレンズ群までの1以上のレンズ群から構成される合成群をRR群としたとき、後群はFR群とRR群の2つの合成群で構成されることが好ましい。それにより、第1レンズ群と負の屈折力を有するレンズ群Nとでテレフォト型の配置となり、また更に正の屈折力を有するレンズ群Pと後群の最も像側の負の屈折力を有するレンズAとでテレフォト型の配置となる。その結果、望遠端での全長方向と径方向の小型化が容易となる。
【0023】
FR群とRR群間の空気間隔が、広角端における後群中の空気間隔の中で最も広いことが好ましい。FR群に含まれる負の屈折力を有するレンズ群Nは変倍作用が大きいため、第1レンズ群とレンズ群Nの距離変化及び、レンズ群Nと正の屈折力を有するレンズ群Pの距離変化が大きいと大きな変倍作用を有することになる。そのため、FR群とRR群間の空気間隔を広角端で広くとることが高倍率化にとって好ましい。
【0024】
後群の最も像側のレンズ群は、負の屈折力を有することが好ましい。最も像側に負の屈折力を有することで、テレフォト型のパワー配置を取りやすくなるため、望遠端における光学全長の小型化を図ることが容易となる。また、最も像側で発散作用を有するため、最も像側のレンズ群の径の小型化を図ることが容易となる。また、後群の最も像側のレンズ群は4枚以下のレンズ枚数で構成することが、低コスト化の点で好ましい
【0025】
後群を構成するレンズ群の数は特に限定されるものではないが、後群を構成するレンズ群の数が多い方が、変倍域全域において収差補正を良好に行うことができるため好ましい。当該観点から、後群を構成するレンズ群の数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。後群を構成するレンズ群の数が3以上であると、中間焦点距離において像面湾曲を良好に補正することができるため、変倍域全域においてより光学性能の高いズームレンズを得ることができて好ましい。また、後群に含まれるRR群を構成するレンズ群の数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。例えば、RR群は、1つ以上の正の屈折力を有するレンズ群と、2つ以上負の屈折力を有するレンズ群とから構成されることがさらに好ましい。
【0026】
(3)FR群
FR群は、第1レンズ群とRR群の間に配置され、FR群全体の屈折力は正であってもよく、負であってもよい。FR群全体で正の屈折力を有する場合、集光作用を持つこととなるため、大口径化が容易となる。FR群全体で負の屈折力を有する場合、第1レンズ群とFR群でテレフォト型の構成となり、光学全長を小さくすることが容易となる点でより好ましい。
【0027】
FR群内の構成は、後群の最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nを含む限り限定されない。FR群内においてレンズ群Nより物体側に正の屈折力を有するレンズ群を有する場合、球面収差の補正に効果的となり、高性能化の点で好ましい。また、FR群内においてレンズ群Nより像側に負の屈折力を有するレンズ群を有する場合、像面湾曲の補正に効果的となり、高性能化の点で好ましい。
【0028】
また、FR群は正の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有することが、色収差の補正の点で好ましい。このとき、正の屈折力を有するレンズの像側に、負の屈折力を有するレンズを配置すると、望遠端において色収差補正をより良好に補正することができるため好ましい。また、負の屈折力を有するレンズ群Nは、正の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有することが、色収差の補正の点で好ましい。レンズ群Nに含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数が45より小さいと、色収差補正をより良好に補正することができるためより好ましい。また、色収差補正をさらに良好に行う上で、レンズ群Nに含まれる正の屈折力を有する少なくとも1枚のレンズのd線におけるアッベ数が40より小さいことが一層好ましく、レンズ群Nに含まれる正の屈折力を有する少なくとも1枚のレンズのd線におけるアッベ数が35より小さいことがより一層好ましい。
【0029】
また、FR群を構成するレンズ群の数は特に限定されるものではない。FR群を構成するレンズ群の数が1である場合、レンズ群を保持するメカ部材が少なくできるため、低コスト化の点で好ましい。FR群を構成するレンズ群の数が多い方が、変倍域全域において収差補正を良好に行うことができるため高性能化の点で好ましい。
【0030】
(4)RR群
RR群は、FR群の像側に配置され、FR群より像側で且つ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pから最も像側のレンズ群で構成される合成群の総称である。RR群全体の屈折力は正であってもよく、負であってもよい。RR群全体で負の屈折力を有する場合、第1レンズ群とRR群でテレフォト型の構成となり、光学全長を小さくすることが容易となる点で好ましい。RR群全体で正の屈折力を有する場合、集光作用を持つこととなり、レンズ群Nでの発散作用を打ち消す効果があるため、高性能化が容易となる点でより好ましい。
【0031】
RR群内の構成は、FR群より像側で且つ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pを最も物体側に含む限り限定されない。RR群の最も像側のレンズ群は、負の屈折力を有することが好ましい。最も像側に負の屈折力を有することで、テレフォト型のパワー配置を取りやすくなるため、望遠端における光学全長の小型化を図ることが容易となる。また、最も像側で発散作用を有するため、最も像側のレンズ群の径の小型化を図ることが容易となる。また、レンズ群Pの像側には、負の屈折力を有するレンズ群が2つ以上有することがより好ましい。この場合、テレフォト型のパワー配置を取りやすくかつ像面湾曲の補正が容易となるため、小型化と高性能化の両立の点でより好ましい。
【0032】
また、RR群は負の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有することが、像面湾曲の補正の点で好ましい。RR群に含まれる少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率が1.86より大きいと、像面湾曲をより良好に行うことができるためより好ましい。また、像面湾曲をさらに良好に補正する上で、RR群に含まれる少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率が1.88より大きいことが一層好ましく、RR群に含まれる少なくとも1枚の負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率が1.90より大きいことがより一層好ましい。
【0033】
RR群を構成するレンズ群の数は特に限定されるものではないが、RR群を構成するレンズ群の数が多い方が、変倍域全域において収差補正を良好に行うことができるため好ましい。当該観点から、RR群を構成するレンズ群の数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。RR群を構成するレンズ群の数が3以上であると、中間焦点距離において像面湾曲を良好に補正することができるため、変倍域全域においてより光学性能の高いズームレンズを得ることができて好ましい。
【0034】
(5)フォーカス群
当該ズームレンズにおいて、フォーカス群の有無は特に限定されるものではない。フォーカス群を設ける場合、当該ズームレンズを構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズをフォーカス群とし、合焦時に当該フォーカス群を光軸方向に移動させて被写体に合焦させることができる。当該ズームレンズにおいてフォーカス群として用いるレンズの位置や屈折力は特に限定されるものではない。
【0035】
当該ズームレンズにフォーカス群を設ける場合、フォーカス群を構成するレンズの枚数は特に限定されるものではなく、フォーカス群を構成するレンズ枚数は1枚であっても、複数枚であってもよい。しかしながら、近接被写体に合焦する際に生じる収差変動を抑制する上では、フォーカス群は複数枚のレンズから構成されていることが好ましい。
【0036】
また、フォーカス群の小型化及び軽量化を図る上で、フォーカス群を1つの単レンズユニットから構成することが好ましい。ここで、単レンズユニットとは、1枚の単レンズ、或いは、複数の単レンズを空気間隔を介することなく一体化された接合レンズなどのレンズユニットをいう。すなわち、単レンズユニットは、複数の光学面を有する場合であっても、その最物体側面及び最像側面のみ空気と接し、その他の面は空気とは接していないものをいう。また、当該明細書において、単レンズは、球面レンズ及び非球面レンズのいずれであってもよい。また、非球面レンズには、表面に非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズも含まれるものとする。特に、上記近接被写体に合焦する際に生じる収差変動を抑制しつつ、フォーカス群の小型化及び軽量化を図るという観点から、フォーカス群は複数枚の単レンズが空気間隔を介することなく一体化された接合レンズから構成されることがより好ましい。
【0037】
フォーカス群が上記1つの単レンズユニットから構成される場合、フォーカス群には空気間隔が含まれない。そのため、フォーカス群を複数の単レンズが空気間隔を介して配置された構成と比較すると、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることができる。その結果、合焦時にフォーカス群を光軸方向に移動させるためのメカ部材(以下、「フォーカス駆動機構」と称する。)の小型化及び軽量化を図ることができ、当該ズームレンズユニット全体の小型化及び軽量化を図ることができる。なお、ズームレンズユニットには、当該ズームレンズの他、変倍時に各レンズ群を相対的に移動させるための駆動機構や上記フォーカス駆動機構の他、これらを収容する鏡筒等が含まれるものとする。
【0038】
当該ズームレンズにフォーカス群を設ける場合、フォーカス群の配置は特に限定されるものではないが、後群を構成するレンズ群のいずれか一のレンズ群、又は、その一部をフォーカス群とすることが好ましい。第1レンズ群は比較的径の大きなレンズにより構成されるため、後群のレンズ群又はその一部にフォーカス群を配置することによりフォーカス群の小型化及び軽量化が容易になる。
【0039】
特に、RR群を構成するレンズ群のいずれか一のレンズ群、又は、その一部をフォーカス群とすることが好ましい。当該ズームレンズは上記パワー配置を採用することで、RR群に対する入射光束の径を第1レンズ群やFR群に対する入射光束の径よりも小さくすることができる。そのため、RR群を構成するレンズ群のいずれか一のレンズ群、又は、その一部をフォーカス群とすることで、第1レンズ群やFR群にフォーカス群を配置する場合と比較すると、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることができる。また、RR群に含まれる正の屈折力を有するレンズ群Pよりも像側のいずれか一のレンズ群、又は、その一部をフォーカス群とすることがより好ましい。集光作用を有するレンズ群Pにより、入射光束の径を小さくすることがよりできる。そのため、フォーカス群の小型化及び軽量化を図ることがより容易となる。
【0040】
フォーカス群の屈折力は正であってもよく、負であってもよい。フォーカス群の屈折力が正の場合、その物体側のレンズ群は負の屈折力を有することが好ましい。また、フォーカス群の屈折力が負の場合、その物体側のレンズ群は正の屈折力を有することが好ましい。それにより、フォーカス群の横倍率を大きくすることが容易となり、フォーカス群のピント感度を上げやすくなる。その結果小さな移動量で合焦させることができるようになるため、小型化の点で好ましい。
【0041】
フォーカス群のレンズ構成は限定されないが、正の屈折力を有するレンズを有することが色収差の補正の点で好ましい。フォーカス群に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数が35より小さいと、色収差補正をより良好に補正することができるためより好ましい。また、色収差補正をさらに良好に行う上で、フォーカス群に含まれる正の屈折力を有する少なくとも1枚のレンズのd線におけるアッベ数が32より小さいことが一層好ましく、フォーカス群に含まれる正の屈折力を有する少なくとも1枚のレンズのd線におけるアッベ数が29より小さいことがより一層好ましい。
【0042】
なお、当該ズームレンズに含まれるフォーカス群は一つに限定されるものではなく、複数のレンズ群又は複数のレンズ群の一部分をフォーカス群としてもよい。すなわち、フローティング方式により合焦してもよい。フローティング方式を採用することにより、より近接合焦時の球面収差や像面性をよくすることが出来るため、光学性能のより高いズームレンズを実現することができて好ましい。
【0043】
(6)防振群
当該ズームレンズにおいて、防振群の有無は特に限定されるものではない。撮影時に撮像装置に振動が伝わるなどして生じる像ブレを補正するためには、電気的に画像を補正したり、撮像素子を移動させたりすることにより行うことができる。当該ズームレンズに防振群を設けない場合、これらの方法で像ブレを補正することができる。
【0044】
当該ズームレンズに防振群を設ける場合、当該ズームレンズを構成するレンズのうち少なくとも1枚のレンズを偏芯することにより、像シフトすればよく、その方法は特に限定されるものではない。
【0045】
例えば、当該ズームレンズを構成するレンズのうち、少なくとも1枚のレンズを防振群とし、当該防振群を光軸と略直交する方向へ移動することで像シフトさせると、鏡筒含めたズームレンズユニット全体の小型化を図ることができるため、小型化を図る上で好ましい。
【0046】
当該ズームレンズに防振群を設ける場合、防振群の配置は特に限定されるものではないが、後群内に防振群を設けることがより好ましい。当該ズームレンズは上記パワー配置を採用することで、後群に対する入射光束の径を第1レンズ群に対する入射光束の径よりも小さくすることができる。そのため、防振群を後群に配置することにより、第1レンズ群に防振群を配置する場合と比較すると、防振群の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0047】
当該ズームレンズに防振群を設ける場合、防振群を構成するレンズの枚数は特に限定されるものではない。防振群を複数枚のレンズで構成すれば、防振時の収差変動を抑えることができて好ましい。このとき、防振群は、負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとをそれぞれ少なくとも1枚ずつ有することが好ましい。防振群が少なくともそれぞれ1枚の負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとを有する場合、防振時の色収差の発生を抑制することができ、より光学性能の高いズームレンズを実現することができる。
【0048】
(6)開口絞り
当該ズームレンズにおいて、開口絞りの配置は特に限定されるものではない。但し、ここでいう開口絞りは、当該ズームレンズの光束径を規定する開口絞り、すなわち当該ズームレンズのFnoを規定する開口絞りをいう。
【0049】
当該ズームレンズでは、開口絞りを後群に配置することが、絞り径を小さくすることができ、絞りユニットの小型化の点で好ましい。開口絞りを後群に配置するとは、後群を構成する各レンズ群の物体側又は像側、或いは、後群を構成する各レンズ群内に開口絞りが配置されることをいうものとする。当該ズームレンズでは、最も物体側に収束作用をもつ第1レンズ群が配置されるため、後群に対する入射光束は小さいくなる。そのため、開口絞りの絞り径をより小さくすることができ、小型化の点で好ましい。上述したとおり、当該ズームレンズでは、レンズ群Nによる変倍作用が比較的大きいため、RR群に対する入射光束の径の変動は小さい。そのため、開口絞りの絞り径をより小さくすることができ、絞り径の変動を抑制する上で、RR群の物体側、又はRR群を構成するレンズ群のうち、最も物体側配置されるレンズ群内に開口絞りを配置することが、小型化の点でより好ましい。
【0050】
1-2.動作
(1)変倍時の動作
当該ズームレンズにおいて、隣り合うレンズ群の光軸上の間隔を変化させることで広角端から望遠端への変倍を行う。互いに隣接するレンズ群間の光軸上の間隔が変化する限り、各レンズ群間の間隔の増減は特に限定されるものではない。例えば、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群と後群との間の光軸上の間隔が増大するように、第1レンズ群及び第2レンズ群を相対的に移動させれば、小型で、且つ、変倍比の高いズームレンズを得ることができて好ましい。このとき、後群内のFR群とRR群との間の光軸上の間隔が減少するように、FR群の最も像側のレンズ群とRR群の最も物体側のレンズ群とを相対的に移動させることが、小型で、且つ、変倍比の高いズームレンズを得る上でより好ましい。なお、レンズ群を相対的に移動させるとは、空気間隔を介して隣接する二つのレンズ群をそれぞれ移動させることの他、空気間隔を介して隣接する二つのレンズ群のうちいずれか一方のレンズ群を移動させることも含む。
【0051】
変倍に際して、各レンズ群間の光軸上の間隔が変化する限り、各レンズ群間の間隔の増減は特に限定されるものではない。また、変倍に際して、各レンズ群間の光軸上の間隔が変化するように、各レンズ群が相対的に移動すればよく、全てのレンズ群が光軸に沿って移動してもよいし、いずれか一以上のレンズ群が像面に対して固定され、その他のレンズ群が光軸に沿って移動してもよい。
【0052】
(2)合焦時の動作
当該ズームレンズにおいて、該ズームレンズにフォーカス群を設ける場合、上述したとおり、フォーカス群の位置や屈折力等は特に限定されるものではない。また、無限遠から近接物体への合焦の際に、フォーカス群の移動の方向等についても特に限定されるものではない。フォーカス群の移動の方向は、無限遠から近接物体への合焦の際に物体側から像側にフォーカス群を移動させることが好ましい。例えば、フォーカス群の横倍率をβN、フォーカス群より像側の全てのレンズ群の合成横倍率をβRとすると、フォーカス群のピント敏感度は、(1-βN2)×βR2と表すことができる。フォーカス群の横倍率が1より大きくなると、無限遠物体から有限距離物体への合焦時に合焦群が像側に移動することを意味する。また、1より大きな横倍率を持つことで、焦点距離を伸ばし、全長を短縮することが可能となる。光学全長の小型化のためには1より大きな横倍率のレンズ群をフォーカス群として配置することが好ましい。
【0053】
1-3.条件式
当該光学系では、上述した構成を採用すると共に、次に説明する条件式を満足することが好ましい。
【0054】
1-3-1.条件式(1)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
1.83 < Nd2 < 2.50 ・・・(1)
但し、
Nd2:前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率
【0055】
上記条件式(1)は、当該ズームレンズの前記後群の最も物体側のレンズのd線における屈折率を規定する式である。収束作用を有する第1レンズ群から後群に入射する光線に対して、後群の最も物体側面の曲率半径を適正な範囲に抑えることが性能の点と製造性の点から重要である。後群の最も物体側面の屈折力は面の曲率半径と硝材の屈折率で決まるため、屈折率をある範囲に規定すると、面の屈折力も適正な範囲に抑えやすくなる。ここで、条件式(1)を満足する場合、コストを抑えつつ軸外性能の高いズームレンズが達成できる。また、前記後群の最も物体側のレンズの物体側表面に非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズの場合、Nd2は、非球面フィルムの屈折率ではなく、ベースレンズの屈折率とする。
【0056】
これに対し、上記条件式(1)の数値が上限以上となると、材料のコストが高くなりすぎ、低コスト化の点で好ましくない。上記条件式(1)の数値が下限以下となると、像面湾曲の補正が困難になるとともに、曲率半径を適正な範囲に抑えることが困難となり製造性が悪化する。よって、軸外性能と製造性の点で好ましくない。
【0057】
上記効果を得る上で、上記条件式(1)の上限値は、2.30、2.15、2.12であることが順に好ましい。また、上記条件式(1)の下限値は、1.84、1.85であることが順に好ましい。
【0058】
1-3-2.条件式(2)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
20 < TLt/ft < 0.96 ・・・(2)
但し、
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
【0059】
上記条件式(2)は、当該ズームレンズの望遠端における光学全長と望遠端における焦点距離の比を規定する式である。焦点距離に対して光学全長を小さくするには、収差補正が困難になるとともに誤差感度の悪化を招くことになる。また、焦点距離に対して光学全長を大きくしすぎると、メカ構造含めた重量が重くなるため、全長と焦点距離の比には適正な範囲が存在する。ここで、条件式(2)を満足する場合、小型軽量化と高性能な光学系の両立が達成できる。
【0060】
これに対し、上記条件式(2)の数値が上限以上となると、焦点距離に対して光学全長を大きくなりすぎ、メカ構造含めた重量が重くなるため、軽量化の点で好ましくない。上記条件式(2)の数値が下限以下となると、焦点距離に対して光学全長を小さくなりすぎ、収差補正の点で多くのレンズ枚数が必要になりコストの点で好ましくない。さらに製造性の悪化を招くことになり、高性能化の点で好ましくない。
【0061】
上記効果を得る上で、上記条件式(2)の上限値は、0.93、0.91、0.88、0.85、0.83、0.80、0.78、0.75、0.72、0.69、であることが順に好ましい。また、上記条件式(2)の下限値は0.25、0.30、0.35であることが順に好ましい。
【0062】
1-3-3.条件式(3)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
1.16 < βLt ・・・(3)
但し、
βLt:前記後群の最も像側のレンズ群の望遠端における横倍率
【0063】
上記条件式(3)は、前記後群の最も像側のレンズ群の望遠端における横倍率を規定する式である。最も像側のレンズ群の横倍率を大きくするとテレフォト型のパワー配置を取りやすくなるため、望遠端における光学全長の小型化を図ることが容易となる。また、最も像側のレンズ群で拡大作用を有することから、最も像側のレンズの径の小型化に効果的となる。よって条件式(3)を満足すると、小型化が達成できる。
【0064】
上記条件式(3)の数値が下限以下となると、テレフォト型のパワー配置が弱くなり、光学全長やレンズの径の大型化を招くため、小型化の点で好ましくない。また、最も像側のレンズ群の横倍率を大きくしすぎると、誤差感度が大きくなるため、製造性の点から上限値を規定することが好ましい。上記条件式(3)は上限値を5.0未満とすることがより好ましい。
【0065】
上記効果を得る上で、上記条件式(3)の下限値は、1.18、1.19、1.20、1.21であることが順に好ましい。また、上記条件式(3)の上限値は、4.80、4.50、4.20、3.90、3.60であることが順に好ましい。
【0066】
1-3-4.条件式(4)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
2.70 < βCt ・・・(4)
但し、
βCt:前記RR群の中で最も物体側の負レンズ群から最も像側のレンズ群の望遠端における合成横倍率
【0067】
上記条件式(4)は、前記RR群の中で最も物体側の負レンズ群から最も像側のレンズ群の望遠端における合成横倍率を規定する式である。ここで、当該ズームレンズは上述したように物体側から順に第1レンズ群、FR群、RR群で構成される。ズームレンズの像側に拡大系を配置することで、テレフォト型のパワー配置となり、小型化が達成される。そのため、RR群内の像側の横倍率を適正な範囲とすることが小型化には重要である。条件式(4)を満足することで、小型化が達成される。
【0068】
上記条件式(4)の数値が下限以下となると、テレフォト型のパワー配置が弱くなり、光学全長やレンズの径の大型化を招くため、小型化の点で好ましくない。また、最も像側のレンズ群の横倍率を大きくしすぎると、誤差感度が大きくなるため、製造性の点から上限値を規定することが好ましい。上記条件式(4)は上限値を9.0未満とすることがより好ましい。
【0069】
上記効果を得る上で、上記条件式(4)の下限値は、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.12、3.14であることが順に好ましい。また、上記条件式(4)の上限値は、8.50、8.00、7.50、7.00、6.50、6.00、5.50、5.20、4.90、4.70、4.50、4.20であることが順に好ましい。
【0070】
1-3-5.条件式(5)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
1.73 < NdA < 2.50 ・・・(5)
但し、
NdA:前記レンズAのd線における屈折率
【0071】
上記条件式(5)は、当該ズームレンズの最も像側に配置される負の屈折力を有する前記レンズAのd線における屈折率を規定する式である。当該ズームレンズは全体で正の屈折力を有するため、ペッツバール和を小さくするには負の屈折力を有するレンズの屈折率を大きくする必要がある。ただし、屈折率が高い硝材はコストが高い。そのため高性能化と低コスト化の両立のためには、屈折率を適正な範囲に規定することが重要になる。ここで、条件式(5)を満足する場合、コストを抑えつつ軸外性能の高いズームレンズが達成できる。また、最も像側に配置される負の屈折力を有する前記レンズAの像側表面に非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズの場合、NdAは、非球面フィルムの屈折率ではなく、ベースレンズの屈折率とする。
【0072】
これに対し、上記条件式(5)の数値が上限以上となると、硝材のコストが高くなりすぎ、低コスト化の点で好ましくない。上記条件式(5)の数値が下限以下となると、像面湾曲の補正が困難になり、高性能化の点で好ましくない。
【0073】
上記効果を得る上で、上記条件式(5)の上限値は、2.30、2.15、2.12、2.06、2.01、2.00、1.99、1.97、1.96、1.95、1.93であることが順に好ましい。また、上記条件式(5)の下限値は、1.74、1.75であることが順に好ましい
【0074】
1-3-6.条件式(6)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
(CrAf+CrAr)/(CrAf-CrAr)< 0.30 ・・・(6)
但し、
CrAf:前記レンズAの物体側面の曲率半径
CrAr:前記レンズAの像側面の曲率半径
【0075】
上記条件式(6)は、当該ズームレンズの最も像側に配置される負の屈折力を有する前記レンズAのレンズの形状を規定するための式である。最も像側の前記レンズAの形状が上記条件式(6)に規定される形状とすることで、コマの補正を良好に行うことが可能になり、軸外性能の高いズームレンズを実現することができる。また、最も像側に配置される負の屈折力を有する前記レンズAに非球面フィルムが貼設されたいわゆる複合非球面レンズの場合、CrAfとCrArは、非球面フィルムの曲率半径ではなく、ベースレンズの曲率半径とする。
【0076】
これに対し、上記条件式(6)の数値が上限以上となると、像側面の曲率半径が物体側面の曲率半径に対して小さくなりすぎるため、コマ収差の補正が困難となり、高性能化の点で好ましくない。また、最も像側の前記レンズAの形状は、物体側の曲率半径が像側の曲率半径に対して小さくなりすぎると、誤差感度が大きくなるため、製造性の点から下限値を規定することが好ましい。上記条件式(6)は下限値を-30.0より大きいとすることがより好ましい。
【0077】
上記効果を得る上で、上記条件式(6)の上限値は、0.20、0.18、0.10、0.00、-0.10、-0.15、-0.20、-0.20、-0.26、-0.30、-0.35、-0.40、-0.45、-0.50、-0.55、-0.60であることが順に好ましい。また、上記条件式(6)の下限値は、-20.00、-10.00、-9.00、-7.90、-6.80であることが順に好ましい
【0078】
1-3-7.条件式(7)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
0.02 < BFw/fw < 0.98 ・・・(7)
但し、
BFw:当該ズームレンズの広角端における最も像側面から像面までの距離
fw:当該ズームレンズの広角端における焦点距離
【0079】
上記条件式(7)は、当該ズームレンズの広角端における最も像側面から像面までの光軸上の距離を空気換算した値と、当該ズームレンズの広角端における焦点距離の比を規定する式である。広角端における最も像側面から像面までの間にローパスフィルタ等の光学素子を配置する必要がある。そのため、小型化を達成しながら光学素子を配置するために広角端のバックを最適な範囲にすることが重要である。条件式(7)を満足する場合、広角端のバックを最適な範囲となるため、小型のズームレンズを実現することが容易になる。
【0080】
これに対し、上記条件式(7)の数値が上限以上となると、広角時の光学全長が大きくなるとともに、メカ含めた重量が重くなる。よって、小型軽量化の点で好ましくない。一方、上記条件式(7)の数値が下限以下となると、ローパスフィルタ等の光学素子を配置することが困難になるため好ましくない。また、最終レンズの径の大型化を招くことになるため、好ましくない。
【0081】
上記効果を得る上で、上記条件式(7)の上限値は、0.93、0.91、0.84、0.78、0.75、0.70、0.68、0.66、0.64であることが順に好ましい。また、上記条件式(7)の下限値は、0.04、0.06、0.07、0.10、0.13、0.16であることが順に好ましい。
【0082】
1-3-8.条件式(8)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
0.15 < f1/ft < 0.70 ・・・(8)
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
ft:当該ズームレンズの望遠端における焦点距離
【0083】
上記条件式(8)は、前記第1レンズ群の焦点距離と、当該光学系の焦点距離の比を規定する式である。条件式(8)を満足することにより、変倍における球面収差や像面湾曲の変動を小さくすることができ、高性能化が達成される。また、条件式(8)を満足する場合、テレフォト型のパワー配置を取りやすくなることから、光学全長方向における当該光学系の小型化を図ることができる。
【0084】
これに対し、上記条件式(8)の数値が上限以上となると、第1レンズ群の屈折力が弱くなる。その結果、テレフォト型のパワー配置が弱くなるため、当該ズームレンズの小型化が困難となるため好ましくない。一方で上記条件式(8)の数値が下限以下になると、第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎて、変倍における球面収差や像面湾曲の変動を小さくすることが困難となるため、高性能化の点で好ましくない。
【0085】
上記効果を得る上で、上記条件式(8)の上限値は、0.68、0.66、0.64、0.63、0.61、0.60であることが順に好ましい。また、上記条件式(8)の下限値は、0.18、0.21、0.24、0.26、0.28、0.30、0.31であることが順に好ましい。
【0086】
1-3-9.条件式(9)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
0.10 < Lnsr/Lnall < 0.74 ・・・(9)
但し、
Lnsr:前記開口絞りより像側にあるレンズの総枚数
Lnall:当該ズームレンズのレンズの総枚数
【0087】
上記条件式(9)は、前記開口絞りより像側にあるレンズの総枚数と、当該ズームレンズのレンズの総枚数の比を規定する式である。レンズ枚数が多くなると収差補正が容易になる。また、軸外光線は開口絞りの物体側で主光線が光軸の下側を通過すると、開口絞りの像側では光軸の上側を通過する。そのため、軸外コマ収差や倍率色収差は開口絞りの物体側と像側で収差の打ち消しあいを起こすと、軸外性能の高性能化が容易となる。これらのことから、開口絞りの像側にレンズ総枚数のうちどのくらいの割合のレンズ枚数があるかに、適正な範囲が存在する。条件式(9)を満足させることによりレンズ枚数が最適な範囲となり、高性能化と低コスト化の両立を図ることが容易となる。レンズ枚数とは、レンズの数を表し、カバーガラスやIRカットフィルターやプリズム等のパワーの持たないものは除く。また、レンズ枚数は、複合非球面レンズは1枚と数え、また2つのレンズが接合された接合レンズは2枚と数える。
【0088】
これに対し、上記条件式(9)の数値が上限以上となると、開口絞りの像側のレンズ枚数の割合が多くなりすぎる。そのため、開口絞りの物体側の収差補正能力が不足となり、高性能化の点で好ましくない。一方で、上記条件式(9)の数値が下限以下となると、開口絞りの像側のレンズ枚数の割合が少なくなりすぎる。そのため、開口絞りの像側の収差補正能力が不足となり、高性能化の点で好ましくない。
【0089】
上記効果を得る上で、上記条件式(9)の上限値は、0.71、0.69、0.66、0.65、0.64、0.63、0.62であることが順に好ましい。また、上記条件式(9)の下限値は、0.15、0.20、0.25、0.29、0.31、0.33、0.34、0.36、0.38、0.40、0.41、0.42であることが順に好ましい。
【0090】
1-3-10.条件式(10)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
1.20 < TLsrw/BFw < 6.95 ・・・(10)
但し、
TLsrw:広角端における前記開口絞りからレンズAの像側面までの距離
BFw:当該ズームレンズの広角端における最も像側面から像面までの距離
【0091】
上記条件式(10)は、当該ズームレンズの広角端における前記開口絞りからレンズAの像側面までの距離と、当該ズームレンズの広角端における最も像側面から像面までの光軸上の距離を空気換算した値の比を規定する式である。当該ズームレンズの最も像側には負の屈折力を有する前記レンズAが配置される。開口絞りと像面の間の適正な範囲に前記レンズAを配置することで、前記レンズAの軸外収差補正能力が最適化される。条件式(10)を満足させることにより、前記レンズAの開口絞りからの距離と、前記レンズAから像面の距離が最適な範囲となり、当該ズームレンズの高性能化を図ることが容易となる。
【0092】
これに対し、上記条件式(10)の数値が上限以上となると、すなわち前記レンズAが開口絞りと像面の間で像面側に近づくことになる。その場合、前記レンズAを通過する軸外光線の高さが高くなりすぎ、前記レンズAの収差補正能力が弱くなる。またもしくは前記レンズAの屈折力が強くなりすぎて、像面湾曲やコマ収差の補正が困難となる。それらにより、高性能化の点で好ましくない。上記条件式(10)の数値が下限以下となると、すなわち前記レンズAが開口絞りと像面の間で像面側から離れることになる。その場合、前記レンズAを通過する軸外光線の高さが低くなりすぎ、前記レンズAの収差補正能力が弱くなる。そのため、像面湾曲やコマ収差の補正が困難となり、高性能化の点で好ましくない。
【0093】
上記効果を得る上で、上記条件式(10)の上限値は、6.50、6.20、5.90、5.60、5.40、5.10、4.90、4.60、4.35、4.10、4.00であることが順に好ましい。また、上記条件式(10)の下限値は、1.30、1.40、1.50、1.60、1.70であることが順に好ましい。
【0094】
1-3-11.条件式(11)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
0.06 < BFt/TLt < 0.32 ・・・(11)
但し、
BFt:当該ズームレンズの望遠端における最も像側面から像面までの距離
TLt:当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離
【0095】
上記条件式(11)は、当該ズームレンズの望遠端における最も像側面から像面までの光軸上の距離を空気換算した値と、当該ズームレンズの望遠端における最も物体側面から像面までの距離(最も像側面から像面までは空気換算)の値の比を規定する式である。望遠端で光学全長に対してバックを長くするには、物体側の正の屈折力を強くする必要がある。物体側の正の屈折力が強すぎると、球面収差や像面湾曲の補正が困難となる。また、望遠端でバックを短くすると像側のレンズの径の大型化を招く。そのため、望遠端でのバックと全長を適正な半紙にすることが重要である。条件式(11)を満足させることにより、望遠端での光学全長に対するバックの値が適切となり、高性能化と小型化の両立が容易となる。
【0096】
これに対し、上記条件式(11)の数値が上限以上となると、光学全長に対するバックの長さが長くなる。それにより、当該ズームレンズの物体側の収束パワーが強くなり、球面収差や像面湾曲の補正が困難となる。一方で、上記条件式(11)の数値が下限以下となると、光学全長に対するバックの長さが短くなる。それにより、像側のレンズが像面に近づくことで、像側のレンズの径の大型化を招き、小型化の点で好ましくない。
【0097】
上記効果を得る上で、上記条件式(11)の上限値は、0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24であることが順に好ましい。また、上記条件式(11)の下限値は、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16であることが順に好ましい。
【0098】
1-3-12.条件式(12)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
2.90 < f1/|fFRt| < 8.00 ・・・(12)
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fFRt:前記FR群の望遠端における焦点距離
【0099】
上記条件式(12)は、前記第1レンズ群の焦点距離と、前記FR群の望遠端における焦点距離の比を規定する式である。条件式(12)を満足することにより、変倍における球面収差や像面湾曲の変動を小さくすることができ、高性能化が達成される。また、条件式(12)を満足する場合、テレフォト型のパワー配置を取りやすくなることから、光学全長方向における当該光学系の小型化を図ることができる。
【0100】
これに対し、上記条件式(12)の数値が上限以上となると、前記第1レンズ群の焦点距離が、前記FR群の望遠端における焦点距離に対して、大きくなりすぎる。そのため、テレフォト型のパワー配置が弱くなり、小型化が困難となり好ましくない。一方で、上記条件式(12)の数値が下限以下となると、前記第1レンズ群の焦点距離が、前記FR群の望遠端における焦点距離に対して、小さくなりすぎる。第1レンズ群の屈折力が強くなりすぎて、変倍における球面収差や像面湾曲の変動を小さくすることが困難となるため、高性能化の点で好ましくない。
【0101】
上記効果を得る上で、上記条件式(12)の上限値は、7.70、7.40、7.20、7.00、6.90、6.80、6.70、6.60、6.50、6.40であることが順に好ましい。また、上記条件式(12)の下限値は、2.95、3.00、3.05、3.10であることが順に好ましい。
【0102】
1-3-13.条件式(13)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
-2.50 < βRRw < -0.50 ・・・(13)
但し、
βRRw:前記RR群の広角端における横倍率
【0103】
上記条件式(13)は、前記RR群の広角端における横倍率を規定する式である。条件式(13)を満足させることにより、前記RR群の広角端における横倍率が最適となり、広角端のバックが適正な範囲となる。それにより、小型化が達成される。
【0104】
これに対し、上記条件式(13)の数値が上限以上となると、すなわちRR群の広角端における横倍率が大きくなりすぎる。それによって、広角端におけるバックが短くなり、ローパスフィルタ等の光学素子を配置することが困難になるため好ましくない。また、最終レンズの径の大型化を招くことになるため、好ましくない。上記条件式(13)の数値が下限以下となると、広角端におけるバックが長くなるため、広角時の光学全長が大きくなるとともに、メカを含めた重量が重くなる。よって、小型軽量化の点で好ましくない。
【0105】
上記効果を得る上で、上記条件式(13)の上限値は、-0.55、-0.60、-0.65、-0.70、-0.75、-0.80、-0.85、-0.90、-0.95、-1.00であることが順に好ましい。また、上記条件式(13)の下限値は、-2.20、-2.00、-1.90、-1.80、-1.70、-1.60であることが順に好ましい。
【0106】
1-3-14.条件式(14)
当該ズームレンズは以下の条件式を満足することが好ましい。
7.1 < |(1-βFt2)×βrt2| < 20.0 ・・・(14)
但し、
βFt:前記フォーカス群の望遠端における横倍率
βrt:前記フォーカス群より像側の全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率
【0107】
上記条件式(14)は、前記フォーカス群の望遠端におけるピント敏感度を規定する式である。フォーカス群のピント敏感度とは、フォーカス群が1動いた時、像面でピント位置がいくつ動くかの割合を示した値のことである。またここで、前記フォーカス群より像側の全てのレンズ群の望遠端における合成横倍率のβrtは、フォーカス群より像側のレンズ群及びレンズの望遠端における合成横倍率である。フォーカス群より像側にレンズ群やレンズがない場合は、βrtの値は1となる。条件式(14)を満足させることにより、前記フォーカス群の望遠端におけるピント敏感度が最適となり、合焦時の移動量を小さくすることが容易となり、小型化が達成される。また、フォーカス群の駆動時の止まり精度が必要以上に高くならないため、フォーカス群の制御が高い止まり精度でなくても結像性能の高いズームレンズが達成できる。
【0108】
これに対し、上記条件式(14)の数値が上限以上となると、すなわち前記フォーカス群の望遠端におけるピント敏感度が大きくなりすぎる。それによって、フォーカス群の駆動時の止まり位置誤差によるピント位置の大きなずれを引き起こし、高性能化が困難となる。上記条件式(14)の数値が下限以下となると、前記フォーカス群の望遠端におけるピント敏感度が小さくなりすぎる。それによって、無限遠物体から有限距離物体への合焦時の移動量が大きくなり、光学全長の小型化が困難となり好ましくない。
【0109】
上記効果を得る上で、上記条件式(14)の上限値は、19.0、18.0、17.0、16.0であることが順に好ましい。また、上記条件式(14)の下限値は、7.20、7.30、7.40、7.50、7.60、7.80、8.00あることが順に好ましい。
【0110】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る光学系と、当該ズームレンズが形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とする。
【0111】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ、監視カメラ、車載カメラ、ドローン用カメラ、医療用カメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。
【0112】
図21は、本実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図21に示されるように、撮像装置1は、カメラ2及びカメラ2に着脱可能なレンズ3を有している。撮像装置1は、撮像装置の一態様である。カメラ2は、撮像素子としてのCCDセンサ21及びカバーガラス22を有している。CCDセンサ21は、カメラ2における、カメラ2に装着されたレンズ3内のズームレンズの光軸が中心軸となる位置に配置されている。カメラ2は、カバーガラス22の代わりに、IRカットフィルター等を有していてもよい。
【0113】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像側である。
【実施例0114】
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの構成を示す広角端におけるレンズ断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、負の屈折力を有する第4レンズ群G4、負の屈折力を有する第5レンズ群G5で構成されている。後群GRは物体側から順に、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、第5レンズ群G5で構成される。第2レンズ群G2が、後群GRの中で最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群Nに該当する。第3レンズ群G3が、レンズ群Nより像側かつ最も物体側の正の屈折力を有するレンズ群Pに該当する。FR群は、第2レンズ群G2で構成される。RR群は、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4、第5レンズ群G5で構成される。RR群の最も物体側を正の屈折力のレンズ群とすることで、変倍中の球面収差変動を抑制することができる。ここで、第4レンズ群G4が、RR群の中で最も物体側の負の屈折力を有するレンズ群に該当する。また、第5レンズ群G5が、最も像側のレンズ群に該当する。
【0115】
物体側から順に第1レンズ群G1は、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第1レンズL1と正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第2レンズL2との接合レンズで構成される。
【0116】
物体側から順に第2レンズ群G2は、負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第3レンズL3と、負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第4レンズL4と正の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第5レンズL5の接合レンズとで構成される。ここで、第3レンズL3が後群の最も物体側のレンズに該当する。
【0117】
物体側から順に第3レンズ群G3は、正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第6レンズL6と、正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第7レンズL7と負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第8レンズL8の接合レンズと、開口絞りSと、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第9レンズL9と正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第10レンズL10との接合レンズと、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凹面であるメニスカス形状の第11レンズL11とで構成される。第3レンズ群の最も物体側面が、物体側に凸面とすることで、球面収差の補正が良好となる。
【0118】
物体側から順に第4レンズ群G4は、正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第12レンズL12と負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第13レンズL13との接合レンズで構成される。
【0119】
第5レンズ群G5は、物体側に非球面層を有しかつ負の屈折力を有し物体側面が物体側に凹面であるメニスカス形状の第14レンズL14で構成される。ここで、第14レンズL14が、後群の最も像側の負の屈折力を有するレンズAに該当する。
【0120】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔が変化する。広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔は減少する。このように間隔変化させることで、望遠端の焦点距離を長くすることが容易となり、変倍中の球面収差の変動を抑制することができる。また、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔は、一旦減少しその後増大する。このように間隔変化させることで、変倍中の像面湾曲の変動を抑制することができる。
【0121】
広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群G1は物体側に移動し、第2レンズ群G2は像面に対して固定され、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は物体側に移動し、第5レンズ群G5は物体側に移動する。第3レンズ群G3と第5レンズ群G5とは、変倍時同一の軌跡で移動する。それにより、メカ機構の簡素化を図ることができ、低コスト化と小型化に効果的となる。第3レンズ群G3と第5レンズ群G5とをメカ的に一体構造とすると、偏芯時に誤差量が従属することになるため、偏心時の収差発生量が小さくなり、高性能化を図ることができる。
【0122】
ここで、第4レンズ群G4は、無限遠物体から有限距離物体への合焦を像側に移動することで行うフォーカス群に該当する。またここで、第2レンズ群G2は、手振れ発生時に光軸に対して略直行方向に移動させることにより像位置の補正を行う防振群に該当する。
【0123】
なお、図中の「IMG」は像面を示す。上述した、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面である。当該光学系の物体側から入射した光は、像面に結像する。固体撮像素子は受光した光学像を電気的画像信号に変換する。撮像装置等が備える画像処理部(画像処理プロセッサ等)により、撮像素子から出力された電気的画像信号に基づき、被写体の像に対応したデジタル画像が生成される。当該デジタル画像は、例えば、HDD(Hard Disk Device)やメモリカード、光ディスク、磁気テープなどの記録媒体に記録することが可能である。なお、像面は、銀塩フィルムのフィルム面であってもよい。
【0124】
また、図中の「CG」は像面を示す。光学ブロックである。当該光学ブロックCGは、光学フィルタや、カバーガラス、水晶ローパスフィルタ、赤外カットフィルタ等に相
当する。これらの符号(IMG、CG)は、他の実施例で示す各図においても同様のものを示すため、以下では説明を省略する。
物体側から順に第1レンズ群G1は、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第1レンズL1と正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第2レンズL2との接合レンズと、正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第3レンズL3とで構成される。
物体側から順に第2レンズ群G2は、正の屈折力を有し物体側に凹面であるメニスカス形状の第4レンズL4と負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第5レンズL5との接合レンズと、負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第6レンズL6とで構成される。ここで、第4レンズL4が後群の最も物体側のレンズに該当する。
物体側から順に第3レンズ群G3は、正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第7レンズL7と、正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第8レンズL8と負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第9レンズL9の接合レンズとで構成される。ここで、第3レンズ群の最も物体側面が、物体側に凸面とすることで、球面収差の補正が良好となる。
物体側から順に第4レンズ群G4は、開口絞りSと、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第10レンズL10と正の屈折力を有し物体側に凸面であるメニスカス形状の第11レンズL11との接合レンズと、正の屈折力を有し物体側面が物体側に凹面であるメニスカス形状の第12レンズL12と負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第13レンズL13の接合レンズと、物体側に非球面層を有しかつ正の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凸面である両凸形状の第14レンズL14とで構成される。
物体側から順に第5レンズ群G5は、正の屈折力を有し物体側面が物体側に凹面であるメニスカス形状の第15レンズL15と負の屈折力を有し物体側面と像側面がともに凹面である両凹形状の第16レンズL16との接合レンズで構成される。
第6レンズ群G6は、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凹面であるメニスカス形状の第17レンズL17で構成される。ここで、第17レンズL17が、後群の最も像側の負の屈折力を有するレンズAに該当する。
広角端から望遠端へのズーミングに際して、隣り合うレンズ群の間隔が変化する。広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間隔は増大し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔は減少する。このように間隔変化させることで、望遠端の焦点距離を長くすることが容易となり、変倍中の球面収差の変動を抑制することができる。また、広角端から望遠端へのズーミングに際して、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間隔は増大し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5の間隔は一旦減少しその後増大する。このように間隔変化させることで、変倍中の像面湾曲の変動を抑制することができる。
広角端から望遠端へのズーミングに際して、第1レンズ群G1は像面に対して固定され、第2レンズ群G2は像側に移動し、第3レンズ群G3は物体側に移動し、第4レンズ群G4は像面に対して固定され、第5レンズ群G5は像側に凸の軌跡で移動し、第6レンズ群G6は像面に対して固定される。変倍時に像面に対して固定される群を有することで、メカ機構の簡素化を図ることができ、低コスト化と小型化に効果的となる。
ここで、第5レンズ群G5は、無限遠物体から有限距離物体への合焦を像側に移動することで行うフォーカス群に該当する。またここで、第4レンズ群G4中のL12とL13の接合レンズは、手振れ発生時に光軸に対して略直行方向に移動させることにより像位置の補正を行う防振群に該当する。