(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007775
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ストレッチャブルデバイス
(51)【国際特許分類】
G01L 1/18 20060101AFI20250109BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20250109BHJP
H10D 86/40 20250101ALI20250109BHJP
G01L 1/00 20060101ALI20250109BHJP
G01L 5/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
G01L1/18 Z
H05K1/02 A
H01L29/78 613Z
G01L1/00 D
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109385
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 洋祐
【テーマコード(参考)】
2F051
5E338
5F110
【Fターム(参考)】
2F051AB10
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB63
5E338BB75
5E338CD17
5E338EE60
5F110AA30
5F110BB20
5F110CC01
5F110CC05
(57)【要約】
【課題】高感度の半導体ひずみゲージを有するストレッチャブルデバイスを提供する。
【解決手段】ストレッチャブルデバイスは、順に積層される第1伸縮性樹脂、樹脂基材、アレイ層、第2伸縮性樹脂を有し、樹脂基材は、複数のボディ部と、ボディ部同士を接続する複数のヒンジ部と、を有し、アレイ層は、ボディ部に配置される複数の薄膜トランジスタと、ヒンジ部に配置される複数のひずみゲージと、を有し、ひずみゲージは、長さ方向の一部に、半導体材料で形成された半導体ひずみゲージを含み、半導体ひずみゲージの不純物濃度は、薄膜トランジスタの不純物濃度より高い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に積層される第1伸縮性樹脂、樹脂基材、アレイ層、第2伸縮性樹脂を有し、
前記樹脂基材は、
複数のボディ部と、
前記ボディ部同士を接続する複数のヒンジ部と、
を有し、
前記アレイ層は、
前記ボディ部に配置される複数の薄膜トランジスタと、
前記ヒンジ部に配置される複数のひずみゲージと、
を有し、
前記ひずみゲージは、長さ方向の一部に、半導体材料で形成された半導体ひずみゲージを含み、
前記半導体ひずみゲージの不純物濃度は、前記薄膜トランジスタの不純物濃度より高い
ストレッチャブルデバイス。
【請求項2】
前記半導体ひずみゲージの不純物濃度は、前記薄膜トランジスタの不純物濃度より30%以上高い
請求項1に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項3】
前記半導体ひずみゲージの長さは、前記ひずみゲージの長さの10%以上20%以下である
請求項1又は請求項2に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、荷重が作用していない場合を基準とし、荷重が作用している時の変形量が1%以下となっている変形量低減領域を有し、
前記変形量低減領域に前記半導体ひずみゲージが配置されている
請求項1又は請求項2に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項5】
前記ヒンジ部は、荷重が作用していない場合を基準とし、荷重が作用している時の変形量が1%以下となっている変形量低減領域を有し、
前記変形量低減領域に前記半導体ひずみゲージが配置されている
請求項3に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項6】
前記ひずみゲージは、
前記ヒンジ部の長さ方向の一端から他端に延在する第1ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端から一端に延在する第2ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端に配置され、前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージとを接続する折り返し部と、
を有している
請求項1又は請求項2に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項7】
前記ひずみゲージは、
前記ヒンジ部の長さ方向の一端から他端に延在する第1ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端から一端に延在する第2ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端に配置され、前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージとを接続する折り返し部と、
を有している
請求項3に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項8】
前記ひずみゲージは、
前記ヒンジ部の長さ方向の一端から他端に延在する第1ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端から一端に延在する第2ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端に配置され、前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージとを接続する折り返し部と、
を有している
請求項4に記載のストレッチャブルデバイス。
【請求項9】
前記ひずみゲージは、
前記ヒンジ部の長さ方向の一端から他端に延在する第1ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端から一端に延在する第2ひずみゲージと、
前記ヒンジ部の長さ方向の他端に配置され、前記第1ひずみゲージと前記第2ひずみゲージとを接続する折り返し部と、
を有している
請求項5に記載のストレッチャブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチャブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ストレッチャブルデバイスは、伸縮性及び可撓性に優れている。このようなストレッチャブルデバイスは、アレイ層と、アレイ層が設けられる樹脂基材と、アレイ層及び樹脂基材を挟む一対の伸縮性樹脂と、を備える。樹脂基材は、マトリクス状に配置されたボディ部と、ボディ部同士を接続するヒンジ部と、を有している。特許文献1のヒンジ部は、複数の円弧部を有し、蛇行するミアンダ形状となっている。ストレッチャブルデバイスに引っ張り荷重が作用すると、ヒンジ部の円弧部が拡大するように変形する。この結果、ボディ部同士が離隔し、ストレッチャブルデバイスが伸長する。
【0003】
また、ストレッチャブルデバイスのアレイ層に、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、「TFT」と略する場合がある。)を設けられることがある。下記特許文献2に示すように、TFTの製造工程でTFTの半導体層に不純物が注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-118273号公報
【特許文献2】特開2023-28988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ストレッチャブルデバイスに作用した荷重を検出するため、ヒンジ部にひずみゲージを設け、ヒンジ部のひずみ量(変形量)を検出することが検討されている。また、ひずみゲージとして、金属材料よりもゲージ率が高い半導体材料で製造された半導体ひずみゲージの利用が検討されている。ここで、半導体ひずみゲージをTFTと同じ工程で製造すると、半導体ひずみゲージはTFTと同じ不純物濃度となる。TFTと同じ不純物濃度の半導体ひずみゲージは、金属製のひずみゲージよりもゲージ率が大きいが、より高感度の半導体ひずみゲージが求められている。
【0006】
本発明は、高感度の半導体ひずみゲージを有するストレッチャブルデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るストレッチャブルデバイスは、順に積層される第1伸縮性樹脂、樹脂基材、アレイ層、第2伸縮性樹脂を有している。前記樹脂基材は、複数のボディ部と、前記ボディ部同士を接続する複数のヒンジ部と、を有している。前記アレイ層は、前記ボディ部に配置される複数の薄膜トランジスタと、前記ヒンジ部に配置される複数のひずみゲージと、を有している。前記ひずみゲージは、長さ方向の一部に、半導体材料で形成された半導体ひずみゲージを含む。前記半導体ひずみゲージの不純物濃度は、前記薄膜トランジスタの不純物濃度より高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るストレッチャブルデバイスを斜視した模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るストレッチャブルデバイスの断面を模式的に示した図であり、詳細には、
図3のII-II線に沿って切った断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るストレッチャブルデバイスの表面の方から樹脂基材の一部を見た拡大図である。
【
図4】
図4は、実施形態の第1ヒンジを拡大した拡大図である。
【
図5】
図5は、実施形態の縦ヒンジ部であって第1方向に伸張するような荷重が作用した場合の拡大図である。
【
図6】
図6は、実施形態のヒンジ部に配置された荷重検出回路の各構成を模式化した平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態のボディ部に配置された荷重検出回路の各構成を模式化した平面図である。
【
図8】
図8は、実施形態のホイートストンブリッジ回路を模式的に示した図である。
【
図9】
図9は、実施例の実験データを示す図(グラフ)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示の発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るストレッチャブルデバイスを斜視した模式図である。
図1に示すように、ストレッチャブルデバイス100は、平板状を成している。ストレッチャブルデバイス100は、互いに反対方向を向く表面1と裏面2(
図1で不図示。
図2参照)を有している。
【0012】
以下、表面1及び裏面2のそれぞれと平行な方向を平面方向と称する。また、平面方向と平行な一方向を第1方向Xと称する。平面方向と平行であり、かつ第1方向Xと交差する方向を第2方向Yと称する。
【0013】
ストレッチャブルデバイス100は、平面視で長方形(四角形)に形成されている。よって、表面1は、一対の短辺3と、一対の長辺4と、を有している。長辺1dは、第1方向Xと平行となっている。短辺1cは、第2方向Yと平行となっている。よって、本実施形態では、第1方向Xと第2方向Yとは、互いに直交している。
【0014】
ストレッチャブルデバイス100は、平面視で、ストレッチャブルデバイス100に入力された荷重を検出可能な検出領域5と、検出領域5の外側を囲む枠状の周辺領域6と、に区分けされる。なお、
図1では、検出領域5と周辺領域6の境界を理解し易くするため、境界線L1を引いている。
【0015】
図2は、実施形態に係るストレッチャブルデバイスの断面を模式的に示した図であり、詳細には、
図3のII-II線に沿って切った断面図である。
図2に示すように、ストレッチャブルデバイス100は、順に積層された第1伸縮性樹脂60、樹脂基材10、アレイ層30、及び第2伸縮性樹脂70を有している。
【0016】
以下、第1伸縮性樹脂60、樹脂基材10、アレイ層30、及び第2伸縮性樹脂70が積層された方向を厚み方向と称する。厚み方向に関し、第1伸縮性樹脂60から視て第2伸縮性樹脂70が配置された方向を第1厚み方向Z1と称し、第1厚み方向Z1の反対方向を第2厚み方向Z2と称する。さらに、第1厚み方向Z1からストレッチャブルデバイス100を視ることを平面視と称する。
【0017】
第1伸縮性樹脂60及び第2伸縮性樹脂70は、絶縁性、伸縮性、及び可撓性を有している。第1伸縮性樹脂60及び第2伸縮性樹脂70として使用される樹脂として、アクリル系エラストマーが挙げられる。なお、本開示の第1伸縮性樹脂60及び第2伸縮性樹脂70は、アクリル系エラストマーに限定されず、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などであってもよく、特に限定はない。
【0018】
第1伸縮性樹脂60及び第2伸縮性樹脂70は、板状に形成され、平面方向に延在している。第1伸縮性樹脂60の第2厚み方向Z2の面は、ストレッチャブルデバイス100の裏面2を構成している。第1伸縮性樹脂60は、第1厚み方向Z1を向く第1面61を有している。第1面61に樹脂基材10が積層される。
【0019】
第2伸縮性樹脂70の第1厚み方向Z1の面は、ストレッチャブルデバイス100の表面1を構成している。第2伸縮性樹脂70の第2厚み方向Z2の面71は、アレイ層30と粘着している。第2伸縮性樹脂70の第1方向Xの端部及び第2方向Yの端部には、面71よりも第2厚み方向Z2に突出する枠部72が設けられている。
【0020】
枠部72は、平面視で環状に形成され、樹脂基材10及びアレイ層30の外周側を囲んでいる。枠部72の第2厚み方向Z2の面72aは、第1伸縮性樹脂60の第1面61と接着している。よって、第1伸縮性樹脂60及び第2伸縮性樹脂70は、互いに協働して樹脂基材10及びアレイ層30を収容する筐体となっている。
【0021】
樹脂基材10は、第1伸縮性樹脂60の第1面61に粘着している。樹脂基材10は、伸縮性、可撓性、及び絶縁性を有している。樹脂基材10は、例えばポリイミドなどの樹脂材料から製造されている。
【0022】
図3は、実施形態に係るストレッチャブルデバイスの表面の方から樹脂基材の一部を見た拡大図である。
図3に示すように、樹脂基材10は、複数のボディ部11と、蛇行しながら平面方向に延在する複数のヒンジ部12と、を備えている。平面視した場合、ボディ部11及びヒンジ部12は、それぞれ検出領域5に配置されている。
【0023】
ボディ部11は、平面視で四角形状(正方形状)となっている。ボディ部11は、4つの角部が第1方向Xと第2方向Yを指すように配置されている。複数のボディ部11は、第1方向Xと第2方向Yに配列し、かつ互いに離隔している。なお、本開示は、平面視でのボディ部11の形状に関し、四角形状に限定されず、円形状や他の多角形状であってもよい。
【0024】
ヒンジ部12は、隣り合うボディ部11同士を接続している。ヒンジ部12は、第1方向Xに延在するする縦ヒンジ部12Aと、第2方向Yに延在する横ヒンジ部12Bと、の2種類がある。また、樹脂基材10においてボディ部11とヒンジ部12とが設けられていない部分は、樹脂基材10を厚み方向に貫通する肉抜き孔19となっている。つまり、樹脂基材10は、複数の肉抜き孔19を有している。
【0025】
図2に示すように、肉抜き孔19と重なる領域には、アレイ層30が積層されない。肉抜き孔19は、第2伸縮性樹脂70により埋められている。これにより、ストレッチャブルデバイス100は、肉抜き孔19と重なる範囲の剛性が低く、伸縮性や屈曲性(ストレッチャブル性)を備える。つまり、ストレッチャブルデバイス100に荷重が作用すると、ヒンジ部12が変形する。一方、ボディ部11の変形が小さく、ボディ部11に積層される機能素子(薄膜トランジスタ40)の破損が抑制される。
【0026】
なお、本実施形態の肉抜き孔19は、第2伸縮性樹脂70により埋められているが、本開示は、第1伸縮性樹脂60により埋められてもよい。又は、肉抜き孔19は、第1伸縮性樹脂60と第2伸縮性樹脂70の両方により埋められていてもよい。若しくは、肉抜き孔19は、第1伸縮性樹脂60と第2伸縮性樹脂70以外の樹脂材により埋められていてもよい。そのほか、肉抜き孔19は、何も配置されておらず、空間となっていてもよい。
【0027】
次に、ヒンジ部12の詳細を説明する。なお、縦ヒンジ部12Aを90°回転させると、横ヒンジ部12Bと同一形状となる。よって、以下では、縦ヒンジ部12Aを代表例として説明する。
【0028】
図4は、実施形態の第1ヒンジを拡大した拡大図である。
図5は、実施形態の縦ヒンジ部であって第1方向に伸張するような荷重が作用した場合の拡大図である。なお、
図4、
図5で示す仮想線Kは、縦ヒンジ部12Aの幅方向の中央を通過する仮想線である。また、説明の都合上、縦ヒンジ部12Aを挟む2つのボディ部11のうち、一方を第1ボディ部11aと称し、他方を第2ボディ部11bと称する。
【0029】
図4に示すように、縦ヒンジ部12Aは、4つの屈曲部20を有し、蛇行しながら第1方向Xに延在している。本実施形態の各屈曲部20は、円弧状を成している。なお、本開示の屈曲部は、円弧状でなく、角状に形成されていてもよい。また、屈曲部の数は、4つに限定されない。
【0030】
4つの屈曲部20は、第1ボディ部11aから第2ボディ部11bに向かって順に配置される第1円弧部21、第2円弧部22、第3円弧部23、及び第4円弧部24である。第1円弧部21及び第4円弧部24は、四分円状を成し、90度折れ曲がっている。第2円弧部22及び第3円弧部23は、半円弧状を成し、180度折れ曲がっている。なお、第2円弧部22と第3円弧部23との間には、直線状の接続部25が設けられている。
【0031】
各屈曲部20は、仮想線Kを境界として、内側(内周側)に配置される内周部(第1内周部21N、第2内周部22N、第3内周部23N、第4内周部24N)と、外側(外周側)に配置される外周部(第1外周部21G、第2外周部22G、第3外周部23G、第4外周部24G)と、に区分けされる。なお、
図4では、各屈曲部20の内周部と外周部の範囲を明確にするため、内周部と外周部を楕円形で囲んでいる。ただし、仮想線Kよりも内周側の全てが内周部であり、仮想線Kよりも外周側の全てが外周部である。よって、
図4において楕円で囲まれた範囲は、内周部又は外周部の一部である。
【0032】
図5に示すように、ストレッチャブルデバイス100に第1方向Xに引っ張り荷重(
図5の矢印F参照)が作用すると、第1円弧部21、第2円弧部22、第3円弧部23、及び第4円弧部24は、それぞれ曲率が小さくなるように変形する。この結果、縦ヒンジ部12Aの一端から他端までの距離が大きくなり、ボディ部11同士が離隔する。また、各屈曲部20が折れ曲がり角度が大きくなった場合、各屈曲部20の内周部と外周部とでは、つぎのような荷重(応力)が作用する。
【0033】
第1円弧部21の第1内周部21Nには、引っ張り荷重が作用する。第1円弧部21の第1外周部21Gに圧縮荷重が作用する。第2円弧部22の第2内周部22Nには、引っ張り荷重が作用する。第2円弧部22の第2外周部22Gには、圧縮荷重が作用する。第3円弧部23の第3内周部23Nには、引っ張り荷重が作用する。第3円弧部23の第3外周部23Gは、圧縮荷重が作用する。第4円弧部24の第4内周部24Nは、引っ張り荷重が作用する。第4円弧部24の第4外周部24Gは、圧縮荷重が作用する。以上から、各屈曲部20の内周部に引っ張りひずみが生じ、一方、各屈曲部20の外周部に圧縮ひずみが生じるようになっている。
【0034】
なお、特に図示しないが第1方向Xの圧縮荷重が縦ヒンジ部12Aに作用した場合、第1円弧部21、第2円弧部22、第3円弧部23、及び第4円弧部24は、それぞれ曲率が大きくなるように変形する。この結果、縦ヒンジ部12Aの一端から他端までの距離が小さくなり、ボディ部11同士が近接する。また、各屈曲部20の内周部に圧縮荷重が作用し、一方で各屈曲部20の外周部に引っ張り荷重が作用するようになっている。
【0035】
以上、縦ヒンジ部12Aに荷重が作用すると、各屈曲部20の内周部及び外周部で大きなひずみが発生する。一方で、縦ヒンジ部12Aには、各屈曲部20と異なり、変形量が1%以下に抑制される領域(変形量低減領域L2)がある場合がある。本実施形態では、
図4、
図5に示すように、第2円弧部22と第3円弧部23との間の接続部25が変形量低減領域L2に相当する。つまり、縦ヒンジ部12Aに荷重が作用しても接続部25の変形量が1%以下に抑制されている。
【0036】
アレイ層30は、厚み方向に積層された複数の絶縁層(不図示)と、複数の絶縁層に埋設されて外部と絶縁された荷重検出回路と、を有している。荷重検出回路は、ストレッチャブルデバイス100に入力された荷重を検出するための回路である。
【0037】
図6は、実施形態のヒンジ部に配置された荷重検出回路の各構成を模式化した平面図である。
図7は、実施形態のボディ部に配置された荷重検出回路の各構成を模式化した平面図である。
図6、
図7に示すように、荷重検出回路は、ひずみゲージ31(
図6参照)、薄膜トランジスタ40(
図7参照)、ゲート線41(
図7参照)、第1信号線42、第2信号線43、第1配線44(
図7参照)、第2配線45(
図7参照)、第2抵抗部52(
図7参照)、第3抵抗部53(
図7参照)、第4抵抗部54(
図7参照)、第1電位検出線55(
図7参照)、及び第2電位検出線56(
図7参照)を備えている。
【0038】
図6に示すように、ひずみゲージ31は、各縦ヒンジ部12Aにのみ配置されている。なお、本実施形態のひずみゲージ31は、縦ヒンジ部12Aにのみ配置されているが、本開示は、ひずみゲージ31を横ヒンジ部12Bにのみ配置したり、縦ヒンジ部12A及び横ヒンジ部12Bの両方に配置したりしてもよい。
【0039】
ひずみゲージ31は、第1ひずみゲージ32と第2ひずみゲージ33と折り返し部34を有している。第1ひずみゲージ32と第2ひずみゲージ33は、縦ヒンジ部12Aに沿って延在し、互いに平行に配置されている。第1ひずみゲージ32及び第2ひずみゲージ33は、ヒンジ部12の各屈曲部20で内周部(第1内周部21N、第2内周部22N、第3内周部23N、及び第4内周部24N。
図4及び
図5参照)と重なるように配置されている。よって、縦ヒンジ部12Aが変形すると、第1ひずみゲージ32及び第2ひずみゲージ33は、各屈曲部20と重なる部分で共通するひずみ(引っ張りひずみ又は圧縮ひずみ)が発生する。
【0040】
折り返し部34は、第2ボディ部11bに配置され、第1ひずみゲージ32と第2ひずみゲージ33の端部同士を接続している。よって、本実施形態のひずみゲージ31は、第1ボディ部11aから第2ボディ部11bに延在した後、第2ボディから折り返して第1ボディ部11aに戻っている。以上から、本実施形態のひずみゲージ31は、2本のひずみゲージ(第1ひずみゲージ32及び第2ひずみゲージ33)を有している。このため、1本のひずみゲージから成る場合よりも多くのひずみ量を検出でき、検出感度が高い。なお、本開示は、1本のひずみゲージから構成されていてもよい。
【0041】
第2ひずみゲージ33は、長さ方向のすべてが金属材料で製造された金属ひずみゲージである。一方で、第1ひずみゲージ32は、一部が半導体ひずみゲージ35であり、残部と金属ひずみゲージとなっている。半導体ひずみゲージ35は、金属ひずみゲージよりもゲージ率が高い。よって、ひずみゲージ31は、長さ方向の全てが金属材料で製造された場合よりも高感度となっている。なお、
図6において、半導体ひずみゲージ35の部分を分かり易くするため、半導体ひずみゲージ35に相当する部分だけ太く図示している。
【0042】
半導体ひずみゲージ35の材料は、例えばポリシリコンが挙げられる。ポリシリコンに不純物を注入し、P型ポリシリコンからなる半導体ひずみゲージ35が製造される。不純物の元素は、例えば、水素、アルゴン、リン、ホウ素が挙げられる。また、半導体ひずみゲージ35は、薄膜トランジスタ40の半導体層(不図示)を製造する工程で同時に製造されている。但し、半導体ひずみゲージ35に不純物を注入する場合と、薄膜トランジスタ40の半導体層に不純物を注入する場合は、別々に行われており、半導体ひずみゲージ35は、薄膜トランジスタ40の半導体層との不純物濃度が異なる。本実施形態においては、半導体ひずみゲージ35は、薄膜トランジスタ40の半導体層よりも、不純物濃度が30%大きい。よって、半導体ひずみゲージ35は、薄膜トランジスタ40の半導体層の不純物濃度と同じ場合よりもゲージ率が高く、高感度となっている。
【0043】
半導体ひずみゲージ35は、縦ヒンジ部12Aのうち接続部25(変形量低減領域L2)に配置されている。よって、半導体ひずみゲージ35に荷重が作用し難く、半導体ひずみゲージ35の破損が抑制される。
【0044】
なお、本開示は、半導体ひずみゲージ35を第1ひずみゲージ32でなく、第2ひずみゲージ33に配置してもよい。又は、半導体ひずみゲージ35を第1ひずみゲージ32と第2ひずみゲージ33の両方に配置してもよい。また、半導体ひずみゲージ35が占める割合は、ひずみゲージ31の長さ方向の10%から20%の範囲内であることが望ましい。
【0045】
そのほか、
図7に示すように、第1ひずみゲージ32の一端(ひずみゲージ31の始端31a)は、第1ボディ部11aに配置されている。第2ひずみゲージ33の一端(ひずみゲージ31の終端31b)は、第1ボディ部11aに配置されている。
【0046】
図7に示すように、薄膜トランジスタ40は、ボディ部11に配置されている。よって、複数の薄膜トランジスタ40は、ボディ部11に対応して、第1方向X及び第2方向Yにマトリクス状に配列している。本実施形態の薄膜トランジスタ40は、トップゲート型トランジスタである。
【0047】
特に図示しないが、薄膜トランジスタ40は、半導体層と、半導体層に積層されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜に積層されたゲート電極と、半導体層の一部に積層されたソース電極と、半導体層の他部に積層されたドレイン電極と、を備えている。ソース電極とドレイン電極の間にゲート絶縁膜が配置されている。半導体層は、ソース電極とドレイン電極に接続する部分に不純物が注入され、所定の不純物濃度となっている。薄膜トランジスタ40のソース電極にひずみゲージ31の始端31aが接続している。以下、薄膜トランジスタ40とひずみゲージ31の始端31aとの接続点を第1接続点P1と称する。
【0048】
ゲート線41は、複数の横ヒンジ部12Bと複数のボディ部11とに跨って配置され、第2方向Yに延在している。また、ゲート線41は、第1方向Xに複数配置されている。ゲート線41は、薄膜トランジスタ40のゲート電極に接続している。よって、第2方向Yに配列する複数の薄膜トランジスタ40は、1つのゲート線41を共有している。
【0049】
図6に示すように、第1信号線42は、複数の縦ヒンジ部12Aと複数のボディ部11とに跨って配置され、第1方向Xに延在している。同様に、第2信号線43は、複数の縦ヒンジ部12Aと複数のボディ部11とに跨って配置され、第1方向に延在している。なお、特に図示しないが第1信号線42及び第2信号線43は、第2方向Yに複数配置されている。
【0050】
図7に示すように、第1信号線42は、各ボディ部11において薄膜トランジスタ40のドレイン電極と接続している。よって、第1方向Xに配列する複数の薄膜トランジスタは、1つの第1信号線42を共有している。
【0051】
第1配線44は、ボディ部11に配置された配線である。第1配線44の一端は、ひずみゲージ31の終端31bと接続している。以下、第1配線44とひずみゲージ31の終端31bとの接続点を第1中間点P2と称する。第1配線44の他端は、第2信号線43と接続している。以下、第1配線44と第2信号線43との接続点を第2接続点P3と称する。また、第1配線44は、各ボディ部11に設けられている。よって、第1方向Xに配列する複数の薄膜トランジスタ40は、1つの第2信号線43を共有している。また、第1配線44上には、第2抵抗部52が設けられている。
【0052】
第2配線45は、ボディ部11に配置された配線である。第2配線45は、第1接続点P1と第2接続点P3とを接続している。よって、第2配線45は、ひずみゲージ31の始端31aを分岐点として、ひずみゲージ31及び第1配線50からなる回路に対し、平行な回路となっている。また、第2配線45には、第3抵抗部53と第4抵抗部54とが配置されている。以下、第2配線45のうち第3抵抗部53と第4抵抗部54との間のある点を第2中間点P4と称する。
【0053】
第1電位検出線55は、第1中間点P2から延在し、ひずみゲージ31の終端31bの電位を検出するための配線である。第2電位検出線56は、第2配線45の第2中間点P4から延在し、第2配線51の第2中間点P4の電位を検出するための電気配線である。第1電位検出線55は、複数の横ヒンジ部12Bと複数のボディ部とに跨って配置され、第2方向Yの一方に延在している。また、第2電位検出線56は、複数の横ヒンジ部12Bと複数のボディ部11とに跨って配置され、第2方向Yの他方に延在している。
【0054】
以上、本実施形態によれば、ひずみゲージ31を含む回路がホイートストンブリッジ回路を構成している。以下、詳細を説明する。
【0055】
図8は、実施形態のホイートストンブリッジ回路を模式的に示した図である。第2抵抗部52の第2抵抗値R2と、第3抵抗部53の第3抵抗値R3と、第4抵抗部54の第4抵抗値R4は、それぞれ、ヒンジ部12が変形例していない場合のひずみゲージ31の第1抵抗値R1と同じである(R1=R2=R3=R4)。また、第2抵抗部52と第3抵抗部53と第4抵抗部54は、ボディ部11に設けられている。よって、ヒンジ部12の変形時であっても抵抗値の変化量はゼロである。
【0056】
図8に示すように、ひずみゲージ31によるひずみ量検出時において、第1信号線42には、所定の第1電位V1である検出信号が供給される。また、第2信号線43には、第1電位V1よりも低い第2電位V2が供給されている(V2>V1)。本実施形態において、第2電位V2は0Vである。よって、薄膜トランジスタ40が閉じると、第1接続点P!(ひずみゲージ31の始端31a)の電位は第1電位V1となる。
【0057】
ヒンジ部12が変形していないとき、ひずみゲージ31の第1抵抗値R1が変化していない。よって、ひずみゲージ31の第1抵抗値R1と、第2抵抗部52の第2抵抗値R2と、第3抵抗部53の第3抵抗値R3と、第4抵抗部54の第4抵抗値R4と、はそれぞれ等しい。よって、第1電位検出線55で読み込まれた第1中間点P2の電位V3と、第2電位検出線56で読み込まれた第2中間点P4の電位V4は等しい。
【0058】
一方で、ヒンジ部12が変形し、ひずみゲージ31にひずみが生じると、第1抵抗値R1が変化し、第1中間点P2の電位V3が変化する。よって、第1中間点P2と第2中間点P4との間に電位差が生じる。以上から、電位V3と電位V4を検出することで、ひずみゲージ31の抵抗値の変化量を検出することができる。
【0059】
また、
図1に示すように、アレイ層30は、荷重検出回路を駆動させるため、周辺領域6に配置された接続部101と、ゲート線駆動回路102と、第1信号線選択回路103と、第2信号線選択回路104と、第1電位検出線選択回路105と、第2電位検出線選択回路106と、を有している。
【0060】
接続部101は、ストレッチャブルデバイス100の外部に配置された駆動IC(Integrated Circuit)と接続するためのものである。なお、駆動ICは、接続部101に接続される図示しないフレキシブルプリント基板やリジット基板の上に、COF(Chip On Film)として実装されてもよい。または、駆動ICは、第1伸縮性樹脂60の周辺領域6にCOG(Chip On Glass)として実装されてもよい。
【0061】
ゲート線駆動回路102は、駆動ICからの各種制御信号に基づいて複数のゲート線41(
図7参照)を駆動する回路である。ゲート線駆動回路102は、複数のゲート線41を順次又は同時に選択し、選択したゲート線41にゲート駆動信号を供給する。
【0062】
第1信号線選択回路103は、複数の第1信号線42を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。第1信号線選択回路103は、駆動ICから供給される選択信号に基づき、第1信号線42と駆動ICと接続する。これにより、第1信号線42に所定の第1電位V1が印加される。
【0063】
第2信号線選択回路104は、複数の第2信号線43を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。第2信号線選択回路104は、駆動ICから供給される選択信号に基づき、第2信号線43と駆動ICと接続する。これにより、第2信号線43に所定の第2電位V2が印加される。なお、本実施形態において、第2電位V2は0Vである。
【0064】
第1電位検出線選択回路105は、複数の第1電位検出線55を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。第1電位検出線選択回路105は、駆動ICから供給される選択信号に基づき、選択された第1電位検出線55と駆動ICとを接続する。これにより第1中間点P2の電位V3が駆動ICに送られる。
【0065】
第2電位検出線選択回路106は、複数の第2電位検出線56を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。第2電位検出線選択回路106は、駆動ICから供給される選択信号に基づき、選択された第2電位検出線56と駆動ICとを接続する。これにより第2中間点P4の電位V4が駆動ICに送られる。
【0066】
以上、実施形態について説明したが、本開示は実施形態で示した例に限定されない。例えば、半導体ひずみゲージ35は、ヒンジ部12の接続部25にのみ配置されているが、本開示は接続部25以外であってもよい。つまり、ヒンジ部12に接続部25以外の変形量低減領域L2が存在する場合、半導体ひずみゲージ35は、接続部25以外の変形量低減領域L2に配置されてもよい。また、半導体ひずみゲージ35が変形量低減領域L2に配置される理由は、半導体ひずみゲージ35の破損の抑制のためである。よって、本開示は、半導体ひずみゲージ35が破損し易くなるものの、変形量低減領域L2以外の個所に配置されてもよい。
【0067】
(実施例)
図9は、実施例の実験データを示す図(グラフ)である。次に実施例について説明する。半導体ひずみゲージの効果を確認するため、試料として、それぞれ異なるの不純物濃度の半導体ひずみゲージを5つ製造した。また、5つの半導体ひずみゲージの不純物濃度は、薄膜トランジスタの半導体層の不純物濃度を基準とした場合、0.16倍、0.33倍、0.5倍、1倍、1.33倍に設定した。なお、不純物濃度が1.33倍を示す半導体ひずみゲージが実施例であり、その他の半導体ひずみゲージが比較例である。また、5つの半導体ひずみゲージのそれぞれのゲージ率を求めた。注入した不純物はホウ素である。各ゲージ率の結果を
図9に示す。
【0068】
図9に示すように、不純物濃度が1倍(薄膜トランジスタの半導体層と同じ不純物濃度)の半導体ひずみゲージは、ゲージ率が13.5程度を示していた。不純物濃度が0.16倍、0.33倍、0.5倍、の半導体ひずみゲージのゲージ率は、不純物濃度が1倍の半導体ひずみゲージのゲージ率と同程度、若しくは低い結果を示した。
【0069】
一方、不純物濃度が1.33倍(薄膜トランジスタの半導体層よりも30%以上高い不純物濃度)の半導体ひずみゲージは、ゲージ率が18程度を示した。つまり、不純物濃度が1倍の半導体ひずみゲージのゲージ率よりも格段に高い値を示した。以上から、半導体ひずみゲージの不純物濃度を、薄膜トランジスタの不純物濃度よりも高くすることで、高感度の半導体ひずみゲージを得られることがわかった。
【符号の説明】
【0070】
10 樹脂基材
11 ボディ部
12 ヒンジ部
19 肉抜き孔
20 屈曲部
25 接続部
30 アレイ層
31 ひずみゲージ
32 第1ひずみゲージ
33 第2ひずみゲージ
34 折り返し部
35 半導体ひずみゲージ
40 薄膜トランジスタ
41 ゲート線
42 第1信号線
43 第2信号線
44 第1配線
45 第2配線
52 第2抵抗部
53 第3抵抗部
54 第4抵抗部
55 第1電位検出線
56 第2電位検出線
60 第1伸縮性樹脂
70 第2伸縮性樹脂
100 ストレッチャブルデバイス
L2 変形量低減領域
P1 第1接続点
P2 第1中間点
P3 第2接続点
P4 第2中間点