(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007777
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
H10D 1/47 20250101AFI20250109BHJP
H10D 89/00 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L27/04 P
H01L27/04 E
H01L27/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109397
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AR01
5F038AR09
5F038AR21
5F038AR30
5F038AV10
5F038AV18
5F038DT08
5F038DT12
5F038DT16
(57)【要約】
【課題】電圧変調の影響を低減した抵抗分圧回路を提供する。
【解決手段】半導体集積回路100は、抵抗分圧回路600を備える。第1分圧抵抗Rd1は、第1端子P1と第3端子P3の間に接続され、第2分圧抵抗Rd2は、第2端子P2と第3端子P3の間に接続される。第1バイアス抵抗Rb1および第2バイアス抵抗Rb2は、第1端子P1と第2端子P2の間に直列に接続される。第1バイアス抵抗Rb1は、抵抗値が等しい2つの第1抵抗要素r1を含み、2つの第1抵抗要素r1のウェルおよび第1分圧抵抗Rd1のウェルには、2つの第1抵抗要素r1の接続ノードの電圧Vb1が供給される。第2バイアス抵抗Rb2も第1バイアス抵抗Rb1と同様である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子の電圧と第2端子の電圧を分圧した電圧を第3端子に発生する抵抗分圧回路を備え、
前記抵抗分圧回路は、
前記第1端子と前記第3端子の間に接続された第1分圧抵抗と、
前記第2端子と前記第3端子の間に接続された第2分圧抵抗と、
前記第1端子と前記第2端子の間に直列に接続された第1バイアス抵抗および第2バイアス抵抗と、
を備え、
前記第1バイアス抵抗は、抵抗値が等しい2つの第1抵抗要素を含み、前記2つの第1抵抗要素のウェルおよび前記第1分圧抵抗のウェルに、前記2つの第1抵抗要素の接続ノードの電圧が供給され、
前記第2バイアス抵抗は、抵抗値が等しい2つの第2抵抗要素を含み、前記2つの第2抵抗要素のウェルおよび前記第2分圧抵抗のウェルに、前記2つの第2抵抗要素の接続ノードの電圧が供給される、半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1分圧抵抗および前記第2分圧抵抗の少なくとも一方はトリミング可能である、請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1分圧抵抗、前記第2分圧抵抗、前記第1バイアス抵抗、前記第2バイアス抵抗は、ポリ抵抗である、請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1分圧抵抗、前記第2分圧抵抗、前記第1バイアス抵抗、前記第2バイアス抵抗は、拡散抵抗である、請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記2つの第1抵抗要素のウェルは独立しており、
前記2つの第2抵抗要素のウェルは独立している、請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記2つの第1抵抗要素のウェルは共通であり、
前記2つの第2抵抗要素のウェルは共通である、請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
オペアンプをさらに備え、
前記オペアンプと前記抵抗分圧回路は、差動アンプ回路を構成する、請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記第3端子の電圧をしきい値電圧と比較する電圧コンパレータをさらに備え、
前記電圧コンパレータと前記抵抗分圧回路は、電圧監視回路を構成する、請求項1または2に記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路に形成される抵抗に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の重要な構成要素のひとつに抵抗がある。抵抗の種類はさまざまであり、用途に応じて、ポリ抵抗、拡散抵抗、メタル抵抗などが使用される。
【0003】
半導体基板に形成される抵抗は、それに印加される電圧に応じて、抵抗値がわずかに変化する。これを電圧変調という。電圧変調は、10Vを超える大きな電圧を印加してせいぜい0.1%あるいはそれ以下のオーダーであるため、多くの用途で問題となることはない。
[概要]
【0004】
しかしながら、高精度が要求される回路では、わずかな電圧変調による抵抗値の変動が、回路の特性を大きく悪化させる。抵抗を利用して抵抗分圧回路を形成する場合には、抵抗値の変動によって分圧比が変化してしまう。
【0005】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電圧変調の影響を低減した抵抗分圧回路の提供にある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る抵抗分圧回路を備える半導体集積回路の回路図である。
【
図3】
図3は、比較技術に係る抵抗を備える半導体集積回路の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る抵抗および比較技術に係る抵抗の抵抗値のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4のシミュレーションに用いた回路図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る抵抗を備える半導体集積回路の断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る増幅回路の回路図である。
【
図9】
図9は、比較技術に係る増幅回路の回路図である。
【
図10】
図10は、電圧監視回路の回路図である。[詳細な説明]
【0007】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0008】
一実施形態に係る半導体集積回路は、第1端子の電圧と第2端子の電圧を分圧した電圧を第3端子に発生する抵抗分圧回路を備える。抵抗分圧回路は、第1端子と第3端子の間に接続された第1分圧抵抗と、第2端子と第3端子の間に接続された第2分圧抵抗と、第1端子と第2端子の間に直列に接続された第1バイアス抵抗および第2バイアス抵抗と、を備える。第1バイアス抵抗は、抵抗値が等しい2つの第1抵抗要素を含み、2つの第1抵抗要素のウェルおよび第1分圧抵抗のウェルに、2つの第1抵抗要素の接続ノードの電圧が供給され、第2バイアス抵抗は、抵抗値が等しい2つの第2抵抗要素を含み、2つの第2抵抗要素のウェルおよび第2分圧抵抗のウェルに、2つの第2抵抗要素の接続ノードの電圧が供給される。
【0009】
この構成において、第1バイアス抵抗と第2バイアス抵抗は、抵抗のウェルに電圧を供給するバイアス回路として機能する。この構成によると、1個の抵抗を2つの抵抗要素に分割して形成し、それぞれの抵抗要素のウェルに、中点電圧に相当する電圧を印加することにより、電圧変調の影響を低減できる。
【0010】
一実施形態において、第1分圧抵抗および第2分圧抵抗の少なくとも一方はトリミング可能であってもよい。
【0011】
一実施形態において、第1分圧抵抗、第2分圧抵抗、第1バイアス抵抗、第2バイアス抵抗は、ポリ抵抗であってもよい。
【0012】
一実施形態において、第1分圧抵抗、第2分圧抵抗、第1バイアス抵抗、第2バイアス抵抗は、拡散抵抗であってもよい。
【0013】
一実施形態において、2つの第1抵抗要素のウェルは独立しており、2つの第2抵抗要素のウェルは独立していてもよい。
【0014】
一実施形態において、2つの第1抵抗要素のウェルは共通であり、2つの第2抵抗要素のウェルは共通であってもよい。
【0015】
一実施形態において、半導体集積回路は、オペアンプをさらに備えてもよい。オペアンプと抵抗分圧回路は、差動アンプ回路を構成してもよい。
【0016】
一実施形態において、半導体集積回路は、第3端子の電圧をしきい値電圧と比較する電圧コンパレータをさらに備えてもよい。電圧コンパレータと抵抗分圧回路は、電圧監視回路を構成してもよい。
【0017】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
本明細書において、「部材Aが、部材Bに接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0019】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0020】
図1は、実施形態に係る抵抗分圧回路600を備える半導体集積回路100の回路図である。抵抗分圧回路600は、第1端子P1、第2端子P2、第3端子P3を有し、第1端子P1の電圧V1と第2端子P2の電圧V2を分圧し、分圧後の電圧V3を第3端子P3に発生する。
【0021】
抵抗分圧回路600は、第1分圧抵抗Rd1、第2分圧抵抗Rd2、第1バイアス抵抗Rb1、第2バイアス抵抗Rb2を備える。
【0022】
第1分圧抵抗Rd1は、第1端子P1と第3端子P3の間に接続され、第2分圧抵抗Rd2は、第2端子P2と第3端子P3の間に接続される。言い換えると、第1分圧抵抗Rd1と第2分圧抵抗Rd2は、第1端子P1と第2端子P2の間に直列に接続されており、第1分圧抵抗Rd1と第2分圧抵抗Rd2の接続ノードが、第3端子P3となっている。
【0023】
第3端子P3の電圧V3は、式(1)で表される。
V3=(V1×Rd2+V2×Rd1)/(Rd1+Rd2) …(1)
【0024】
第1バイアス抵抗Rb1と第2バイアス抵抗Rb2は、バイアス回路610を構成する。第1バイアス抵抗Rb1および第2バイアス抵抗Rb2は、第1端子P1と第2端子P2の間に直列に接続され、第1分圧抵抗Rd1および第2分圧抵抗Rd2に対して並列に接続されている。第1バイアス抵抗Rb1と第2バイアス抵抗Rb2の比は、第1分圧抵抗Rd1と第2分圧抵抗Rd2の比と等しい。
Rb1:Rb2=Rd1:Rd2 …(2)
【0025】
第1バイアス抵抗Rb1は、抵抗値が等しく、直列に接続された2つの第1抵抗要素(サブ抵抗ともいう)r1を含む。第2バイアス抵抗Rb2は、抵抗値が等しく直列に接続された2つの第2抵抗要素r2を含む。
【0026】
図1において、各抵抗(抵抗要素)を囲む矩形は、ウェルを表している。本実施形態では、第1バイアス抵抗Rb1の2つの抵抗要素r1は共通のウェルに形成される。同様に、第2バイアス抵抗Rb2の2つの抵抗要素r2は共通のウェルに形成される。
【0027】
2つの第1抵抗要素r1のウェルおよび第1分圧抵抗Rd1のウェルには、2つの第1抵抗要素r1の接続ノードの電圧(第1バイアス電圧という)Vb1が供給されている。2つの第2抵抗要素r2のウェルおよび第2分圧抵抗Rd2のウェルには、2つの第2抵抗要素r2の接続ノードの電圧(第2バイアス電圧という)Vb2が供給される。
【0028】
第1分圧抵抗Rd1、第2分圧抵抗Rd2、第1バイアス抵抗Rb1、第2バイアス抵抗Rb2は、ポリ抵抗もしくは拡散抵抗である。
【0029】
以上が抵抗分圧回路600の構成である。続いて、第1バイアス抵抗Rb1、第2バイアス抵抗Rb2の構成を説明する。
【0030】
図2は、抵抗200の断面図である。抵抗200は、
図1の第1バイアス抵抗Rb1あるいは第2バイアス抵抗Rb2である。抵抗200は、半導体基板110の上に形成される。抵抗200は、第1端202および第2端204を有する。
【0031】
半導体基板110には、ウェル112が形成される。抵抗200はウェル112上に形成される。抵抗200は、第1端202と第2端204の間に直列に接続される抵抗要素210および212に分割して形成される。抵抗200の抵抗値の設計値をrとするとき、抵抗要素210および212は、それぞれの抵抗値が等しくr/2となるように設計される。抵抗要素210および212は、ポリ抵抗もしくは拡散抵抗である。
【0032】
ウェル112には、第1端202の電圧と第2端204の電圧の中点電圧に相当する電圧Vb1が印加される。具体的には、ウェル112は、抵抗要素210と212の接続ノード206と接続されている。
【0033】
以上が抵抗200の構成である。抵抗200の利点は比較技術との対比によって明確となる。そこで先に比較技術について説明する。
【0034】
図3は、比較技術に係る抵抗200Rを備える半導体集積回路100Rの断面図である。抵抗200Rは、ウェル112上に形成された抵抗値がrである単一の抵抗要素214を含む。ウェル112は、第1端202および第2端204の一方(ここでは第2端204)と接続される。以上が抵抗200Rの構成である。
【0035】
図4は、実施形態に係る抵抗200および比較技術に係る抵抗200Rの抵抗値のシミュレーション結果を示す図である。
図5は、
図4のシミュレーションに用いた回路図である。抵抗200,200Rの設計値は1kΩである。回路(i)では、抵抗200の第2端204を接地し、第1端202に可変電圧源900を接続している。回路(ii)では、抵抗200Rの第2端204を接地し、第1端202に可変電圧源900を接続している。回路(iii)では、抵抗200Rの第1端202を接地し、第2端204に可変電圧源900を接続している。可変電圧源900の電圧V
DDを0~10Vでスイープし、抵抗に流れる電流を測定し、電圧と電流から、抵抗値を算出している。
【0036】
図4に示す様に、比較技術に係る抵抗200Rを用いた回路(ii)および(iii)では、抵抗値rが電源電圧V
DDに応じて変化しており、電圧変調の効果が現れている。これに対して、実施形態に係る抵抗200を用いた回路(i)では、抵抗値rが電源電圧V
DDによらず一定値を示しており、電圧変調の効果が抑制できていることが分かる。
【0037】
図1に戻る。
図1の抵抗分圧回路600において、バイアス回路610の第1バイアス抵抗Rb1および第2バイアス抵抗Rb2は、
図2の抵抗200の構成を有しているため、電圧変調の効果が抑制され、したがって第1バイアス抵抗Rb1および第2バイアス抵抗Rb2の抵抗値は安定である。そして、第1分圧抵抗Rd1のウェルには、第1バイアス抵抗Rb1において生成された第1バイアス電圧Vb1が供給されているため、第1分圧抵抗Rd1においても、電圧変調の効果が抑制され、その抵抗値は安定となる。第2分圧抵抗Rd2のウェルには、第2バイアス抵抗Rb2において生成された第2バイアス電圧Vb2が供給されているため、第2分圧抵抗Rd2においても、電圧変調の効果が抑制され、その抵抗値は安定となる。
【0038】
これにより、
図1の抵抗分圧回路600によれば、2つの抵抗値Rd1,Rd2で決まる分圧比の変動を抑制することができる。
【0039】
図6は、変形例に係る抵抗200aを備える半導体集積回路100aの断面図である。この変形例では、2つの抵抗要素210と抵抗要素212は、独立したウェル112_1,112_2に分離して形成されている。ウェル112_1および112_2は、第1抵抗要素r1と第2抵抗要素r2の接続ノード206と接続される。この構成によっても
図2の抵抗200と同様に、抵抗変調の効果を抑制できる。ただし、この変形例では、ウェル112_1および112_2が独立しているため、回路面積は
図2の抵抗200より大きくなる。
【0040】
続いて抵抗分圧回路600の用途について説明する。抵抗分圧回路600は、0.1%のオーダの高精度が要求される回路に好適に用いることができる。たとえば抵抗分圧回路600の好適な用途として、オペアンプおよび抵抗の組み合わせである増幅回路が挙げられる。
【0041】
図7は、増幅回路400の回路図である。増幅回路400は、オペアンプ402および抵抗R11~R14を備える減算増幅器である。R11=R13、R12=R14が成り立っており、増幅回路400のゲインは、g=R13/R11である。
【0042】
抵抗R11,R12のペア、抵抗R13,R14のペアは、抵抗分圧回路である。したがって、上述の抵抗分圧回路600の構成を適用することができる。
【0043】
図8は、実施形態に係る増幅回路400Aの回路図である。
図8の増幅回路400Aにおいて、抵抗R11,R12のペアが、抵抗分圧回路600_1を構成しており、同様に、抵抗R13,R14のペアが、抵抗分圧回路600_2を構成している。抵抗分圧回路600_1,600_2はそれぞれ、
図1の抵抗分圧回路600の構成を有する。抵抗R11~R14それぞれに対応するバイアス抵抗をR11b~R14bとして示す。
【0044】
図8の増幅回路400Aの利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0045】
図9は、比較技術に係る増幅回路400Bの回路図である。比較技術では、抵抗R11~R14が、
図1の第1バイアス抵抗Rb1や第2バイアス抵抗Rb2と同様の構成を有する。
【0046】
図9の構成によっても、抵抗R11~R14それぞれの抵抗値は、電圧変調の影響を受けにくいため安定である。ここで、オペアンプ402は一般的にオフセットを有しており、このオフセットの影響を除去するために、抵抗R11~R14のひとつまたは複数を、トリミング可能、すなわち抵抗値を微調節可能に構成する場合がある。
図9の例では、抵抗R14の抵抗値がトリミング可能であるとする。トリミング可能な抵抗の構成は特に限定されないが、たとえば、抵抗R14は、基準となる抵抗R14_1に加えて、複数の調整抵抗の直列接続回路R14_2で構成される。複数の調整抵抗それぞれには、並列にスイッチが接続されており、各スイッチは、オン、オフが制御可能となっている。トリミング可能に構成される抵抗R14の面積は、同じ抵抗値を有するトリミング不可である抵抗R12の面積よりも大きい。
【0047】
本発明者は、
図9の構成について検討し、以下の課題を認識した。抵抗のウェルと半導体基板の間には、PN接合が存在している。このPN接合は逆バイアス状態となっているため、PN接合には、ウェルから基板に向かって、実質的にリーク電流が流れる。つまり、抵抗R11,R12,R13,R14において、リーク電流I
1~I
4が流れることとなる。
図9では、リーク電流I
1~I
4を電流源のシンボルで示している。
【0048】
I1=I3,I2=I4が成り立っているときには、リーク電流はオフセット電圧に影響を与えない。ところが、抵抗R12と抵抗R14の設計値は等しいが、抵抗R14がトリミング可能に構成されるため、抵抗R14のウェルの面積が、抵抗R12のウェルの面積よりも大きくなる。その結果、抵抗R14のリーク電流I4が、抵抗R12のリーク電流I2よりも大きくなる。このリーク電流I2,I4のアンバランスは、増幅回路400Bのオフセット電圧をもたらす。
【0049】
図8に戻る。
図8では、抵抗分圧回路600_1,600_2それぞれのバイアス回路610において、リーク電流I
1~I
4が流れる。抵抗R14はトリミング可能に構成されるが、バイアス回路610のバイアス抵抗R14bはトリミングする必要がない。したがって、抵抗R14に対応するバイアス抵抗R14bと、抵抗R12に対応するバイアス抵抗R12bのウェルの面積は等しくすることができ、I
2≒I
4とすることができる。これにより、トリミング可能な抵抗R14に起因するオフセット電圧の変化を小さくできる。
【0050】
増幅回路は、減算増幅器に限定されず、非反転増幅器や反転増幅器であってもよい。
【0051】
その他の抵抗分圧回路600の用途としては、電圧監視回路が例示される。
【0052】
図10は、電圧監視回路700の回路図である。電圧監視回路700は、抵抗分圧回路600および電圧コンパレータ702を備える。抵抗分圧回路600は、入力電圧V
INを分圧する。電圧コンパレータ702は、分圧後の電圧V
IN’をしきい値電圧V
THと比較する。この構成によれば、抵抗分圧回路600の分圧比が、電圧変調の影響を受けにくいため、正確な電圧比較が可能となる。
【0053】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0054】
(項目1)
第1端子の電圧と第2端子の電圧を分圧した電圧を第3端子に発生する抵抗分圧回路を備え、
前記抵抗分圧回路は、
前記第1端子と前記第3端子の間に接続された第1分圧抵抗と、
前記第2端子と前記第3端子の間に接続された第2分圧抵抗と、
前記第1端子と前記第2端子の間に直列に接続された第1バイアス抵抗および第2バイアス抵抗と、
を備え、
前記第1バイアス抵抗は、抵抗値が等しい2つの第1抵抗要素を含み、前記2つの第1抵抗要素のウェルおよび前記第1分圧抵抗のウェルに、前記2つの第1抵抗要素の接続ノードの電圧が供給され、
前記第2バイアス抵抗は、抵抗値が等しい2つの第2抵抗要素を含み、前記2つの第2抵抗要素のウェルおよび前記第2分圧抵抗のウェルに、前記2つの第2抵抗要素の接続ノードの電圧が供給される、半導体集積回路。
【0055】
(項目2)
前記第1分圧抵抗および前記第2分圧抵抗の少なくとも一方はトリミング可能である、項目1に記載の半導体集積回路。
【0056】
(項目3)
前記第1分圧抵抗、前記第2分圧抵抗、前記第1バイアス抵抗、前記第2バイアス抵抗は、ポリ抵抗である、項目1または2に記載の半導体集積回路。
【0057】
(項目4)
前記第1分圧抵抗、前記第2分圧抵抗、前記第1バイアス抵抗、前記第2バイアス抵抗は、拡散抵抗である、項目1または2に記載の半導体集積回路。
【0058】
(項目5)
前記2つの第1抵抗要素のウェルは独立しており、
前記2つの第2抵抗要素のウェルは独立している、項目1から4のいずれかに記載の半導体集積回路。
【0059】
(項目6)
前記2つの第1抵抗要素のウェルは共通であり、
前記2つの第2抵抗要素のウェルは共通である、項目1から4のいずれかに記載の半導体集積回路。
【0060】
(項目7)
オペアンプをさらに備え、
前記オペアンプと前記抵抗分圧回路は、差動アンプ回路を構成する、項目1から6のいずれかに記載の半導体集積回路。
【0061】
(項目8)
前記第3端子の電圧をしきい値電圧と比較する電圧コンパレータをさらに備え、
前記電圧コンパレータと前記抵抗分圧回路は、電圧監視回路を構成する、項目1から6のいずれかに記載の半導体集積回路。
【符号の説明】
【0062】
100 半導体集積回路
110 半導体基板
112 ウェル
200 抵抗
202 第1端
204 第2端
r1 第1抵抗要素
r2 第2抵抗要素
400 増幅回路
402 オペアンプ
600 抵抗分圧回路
P1 第1端子
P2 第2端子
P3 第3端子
Rd1 第1分圧抵抗
Rd2 第2分圧抵抗
610 バイアス回路
Rb1 第1バイアス抵抗
r1 第1抵抗要素
Rb2 第2バイアス抵抗
r2 第2抵抗要素