IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図1
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図2
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図3A
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図3B
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図4
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図5
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図6
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図7
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図8
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図9
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図10
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図11
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図12
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図13
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図14
  • 特開-物品、巻回体及び収納箱 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007795
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】物品、巻回体及び収納箱
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G06F3/02 490
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109424
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴哉
【テーマコード(参考)】
5B020
【Fターム(参考)】
5B020DD51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた押込性と固定性を両立しつつ、貼り付け時における上下の皺の発生を抑制する物品、巻回体及び収納箱を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、表面が、第1領域と第2領域と第3領域とをこの順に有し、第1領域、第2領域及び第3領域が、各々、基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、基材が粘着部で被覆されない露出部と、を有し、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さい。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、
前記表面が、第1領域と第2領域と第3領域とをこの順に有し、
前記第1領域、第2領域及び第3領域が、各々、前記基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、前記基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有し、
前記第2領域における前記粘着部の粘着力が、前記第1領域及び第3領域における前記粘着部の粘着力よりも小さい、物品。
【請求項2】
前記第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、前記粘着部が、点状粘着部を含み、
前記第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群の合計面積が、各領域における粘着部の合計面積100%に対して、50%以上100%以下であり、
前記第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、下記方法により算出される被覆面積率が、それぞれ、0.1%以上90%以下である、請求項1に記載の物品:
(被覆面積率の測定方法)
前記点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した点状粘着部が含まれるような1cm角の測定領域であって、当該1cm角内における前記点状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における前記点状粘着部の合計面積/1cm2×100にて被覆面積率を算出する。
【請求項3】
前記第2領域の前記被覆面積率が、前記第1領域及び第3領域の各被覆面積率の100%以下である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記第2領域の前記被覆面積率が0.1%以上75%以下であり、
前記第1領域及び第3領域の各被覆面積率が5%以上90%以下である、請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記基材の裏面を被覆する剥離層を更に備える、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
装置の入力部の表面を被覆するために用いられる、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
芯管と、
前記芯管に巻回された請求項1に記載の物品と、
を備える、巻回体。
【請求項8】
請求項1に記載の物品を連続的に形成し、巻回した、巻回体。
【請求項9】
前板、底板、後板及び側板を有し、かつ、上面において開口している本体部と、
前記本体部に収納される、請求項7に記載の巻回体と、
前記上面の開口を開閉可能に配される蓋部と、
を備え、
前記蓋部が、
前記後板の上縁部に接続される天板と、
前記天板の前縁部に接続される掩蓋片と、
を有する、収納箱。
【請求項10】
前記巻回体から引き出された物品を切断する切断部を更に備える、請求項9に記載の収納箱。
【請求項11】
基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、
前記表面が、第1領域と、前記第1領域に囲われた第2領域と、を有し、
前記第1領域及び第2領域が、各々、前記基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、前記基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有し、
前記第2領域における前記粘着部の粘着力が、前記第1領域における前記粘着部の粘着力よりも小さい、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品、巻回体及び収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンのキーボードを水やホコリ等から保護し、故障を防ぐためのキーボードの専用カバーが提案されている。例えば、特許文献1には、基材フィルムと、該基材フィルム上に部分的に配された粘着層と、を有する汚れ防止フィルムが提案されており、かかる汚れ防止フィルムをキーボード等に貼り付けることで、押しボタンを有する入力部(以下、単に「入力部」ともいう。)の操作性(以下、押込性)の低下を避けつつ汚れを防止できることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7138501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の技術において、基材フィルム上に部分的に配された粘着層(粘着剤)の塗工パターンが均一である前提においては、汚れ防止フィルムのキーボードへの固定性を向上させるために粘着剤の塗工量を増加すると押込性が悪化する傾向にあることが判明している。ここで、特許文献1に記載の技術において、押込性を改善するために粘着剤の塗工量を減らすと、フィルムが剥がれ易くなる傾向にあることも判明している。
そこで、特許文献1に記載の技術において、粘着層(粘着剤)を、不均一に配置することも考えられる。例えば、基材フィルムを一端、中央、他端の3領域(帯状の3領域)に区分したとき、中央の領域(典型的には、キーボードの入力部に対応する帯状の一領域)に配される粘着層の密度を他の領域(典型的には、キーボードの入力部以外に対応する帯状の二領域)に比べて小さくすることで、押込性を確保しつつフィルム固定性の低下を防止することができるものと考えられる。しかしながら、特許文献1の図7,8,10のように、固定性を高めるべく、一端及び他端の領域(典型的には、キーボードの入力部以外に対応する領域)の全面に粘着層を配する場合、フィルム貼付け時に当該一端及び他端の領域に空気が溜まりやすく、結果として皺(以下、フィルムの一端及び他端の領域に生じ得る皺を「上下の皺」と略記する場合がある。)が生じる傾向にある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた押込性と固定性を両立しつつ、貼り付け時における上下の皺の発生を抑制できる、物品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、所定の構造を有する物品により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記の態様を包含する。
[1]
基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、
前記表面が、第1領域と第2領域と第3領域とをこの順に有し、
前記第1領域、第2領域及び第3領域が、各々、前記基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、前記基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有し、
前記第2領域における前記粘着部の粘着力が、前記第1領域及び第3領域における前記粘着部の粘着力よりも小さい、物品。
[2]
前記第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、前記粘着部が、点状粘着部を含み、
前記第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群の合計面積が、各領域における粘着部の合計面積100%に対して、50%以上100%以下であり、
前記第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、下記方法により算出される被覆面積率が、それぞれ、0.1%以上90%以下である、[1]に記載の物品:
(被覆面積率の測定方法)
前記点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した点状粘着部が含まれるような1cm角の測定領域であって、当該1cm角内における前記点状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における前記点状粘着部の合計面積/1cm2×100にて被覆面積率を算出する。
[3]
前記第2領域の前記被覆面積率が、前記第1領域及び第3領域の各被覆面積率の100%以下である、[2]に記載の物品。
[4]
前記第2領域の前記被覆面積率が0.1%以上75%以下であり、
前記第1領域及び第3領域の各被覆面積率が5%以上90%以下である、[2]又は[3]に記載の物品。
[5]
前記基材の裏面を被覆する剥離層を更に備える、[1]~[4]のいずれかに記載の物品。
[6]
装置の入力部の表面を被覆するために用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載の物品。
[7]
芯管と、
前記芯管に巻回された[1]~[6]のいずれかに記載の物品と、
を備える、巻回体。
[8]
[1]~[6]のいずれかに記載の物品を連続的に形成し、巻回した、巻回体。
[9]
前板、底板、後板及び側板を有し、かつ、上面において開口している本体部と、
前記本体部に収納される、[7]に記載の巻回体と、
前記上面の開口を開閉可能に配される蓋部と、
を備え、
前記蓋部が、
前記後板の上縁部に接続される天板と、
前記天板の前縁部に接続される掩蓋片と、
を有する、収納箱。
[10]
前記巻回体から引き出された物品を切断する切断部を更に備える、[9]に記載の収納箱。
[11]
基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、
前記表面が、第1領域と、前記第1領域に囲われた第2領域と、を有し、
前記第1領域及び第2領域が、各々、前記基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、前記基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有し、
前記第2領域における前記粘着部の粘着力が、前記第1領域における前記粘着部の粘着力よりも小さい、物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた押込性と固定性を両立しつつ、貼り付け時における上下の皺の発生を抑制できる、物品等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ノートパソコンで用いられるパンタグラフ型キーの典型例を示す断面図である。
図2図2は、ストロークの増加と荷重の関係を示すグラフである。
図3図3(A),(B)は、本実施形態の物品をノートパソコンのカバーフィルムとして適用する場合の使用状態を示す説明図である。
図4図4(A)~(D)は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図5図5は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図6図6は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図7図7は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図8図8は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図9図9は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図10図10は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図11図11は、本実施形態の物品における粘着部のパターン配列の典型例を示す図である。
図12図12は、本実施形態の物品における各領域の典型的な配置例を示す図である。
図13図13は、実施例1における粘着部のパターン配列を示す図である。
図14図14は、実施例6における粘着部のパターン配列を示す図である。
図15図15は、実施例9における粘着部のパターン配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの本実施形態のみに限定する趣旨ではない。すなわち、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、特に断りのない限り、本明細書における各物理パラメータの測定は、常温常圧下にて行う。また、本明細書における「~」とは、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値、及び下限値として含む意味である。さらに、本明細書では、本実施形態等を説明するために、適宜図面を参照するが、特に断りがない場合、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明するものとする。ここで、図面の寸法比率は、実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0011】
[物品]
本実施形態の第1の態様に係る物品(以下「第1の物品」ともいう。)は、基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、前記表面が、第1領域と第2領域と第3領域とをこの順に有し、前記第1領域、第2領域及び第3領域が、各々、前記基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、前記基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有し、前記第2領域における前記粘着部の粘着力が、前記第1領域及び第3領域における前記粘着部の粘着力よりも小さい。第1の物品は、上記のように構成されているため、優れた押込性と固定性を両立しつつ、貼り付け時における上下の皺の発生を抑制できる。第1の物品における第1領域と第2領域との境界及び第2領域と第3領域との境界は、それぞれ、露出部上に位置するものとする。
本実施形態の第2の態様に係る物品(以下「第2の物品」ともいう。)は、基材と、前記基材の表面上に配される粘着部と、を備える物品であって、前記表面が、第1領域と、前記第1領域に囲われた第2領域と、を有し、前記第1領域及び第2領域が、各々、前記基材が前記粘着部で被覆される被覆部と、前記基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有し、前記第2領域における前記粘着部の粘着力が、前記第1領域における前記粘着部の粘着力よりも小さい。第2の物品は、上記のように構成されているため、優れた押込性と固定性を両立しつつ、貼り付け時における上下の皺の発生を抑制できる。第2の物品における第1領域と第2領域との境界は、露出部上に位置するものとする。
なお、本明細書において、特に断りがない限り、物品に関する以降の説明は、第1の物品及び第2の物品の双方に係るものとする。また、「本実施形態の物品」は第1の物品及び第2の物品を包含するものとして説明する。
【0012】
本実施形態の物品は、前述した第1の物品又は第2の物品に該当するものであれば特に限定されず、種々の形態をとり得る。本実施形態の物品は、装置の入力部の表面、例えば、押しボタンを有する入力部の表面等を被覆するための被覆材とすることができる。かかる被覆材としては、典型的には、カバーフィルムが挙げられ、例えば、パソコンや操作盤を有する各種機器の入力部に貼りつけて用いることができる。被覆材は、以下に限定されないが、例えば、押しボタンを有する入力部の表面に一時的に貼りつけられた状態で使用され、ある程度の期間使用した後、清潔性の観点から、剥がして捨てる態様で用いられる。被覆材をこのような態様で使用する場合の具体例としては、病院内で複数の医療関係者が接触する電子カルテキーボードや操作盤を有する各種検査機器などに対して被覆材を貼り付けて用いることにより、菌やウイルスの付着、血液や嘔吐物、その他体液が直接付着することを防止し、使用のたびに、古い被覆材をはがして捨て、新しいものを貼り付けて使用することにより、各作業における清潔性を保ち、医療関係者間の交差感染を防止することができる。もちろん、使用は医療現場に限られるものではなく、例えば、工場等の汚れが付着しやすい環境下に置かれた操作盤やパソコンに対して用いることにより、汚れの付着を防止することができ、不良や故障の発生を抑制することもできる。
【0013】
また、本実施形態の物品が、フィルム形状を有する場合、後述する枚葉品として流通させることもできるし、巻回体の形態で流通させることもできる。第1の物品は、巻回体の形態で流通させることが好ましく、第2の物品は、枚葉品の形態で流通させることが好ましい。なお、巻回体は、収納箱に収容して流通させることもできる。
【0014】
次いで、押しボタン(キーボード等を構成するスイッチ入力部)の動作に基づいて本実施形態の物品の適用例を説明するが、本実施形態の物品の使用対象は当該例に限定されない。また、以下では、本実施形態の物品の典型な形態として、カバーフィルムを例に説明するが、本実施形態の物品は当該例に限定されない。
図1に、ノートパソコンで用いられるキーボードを構成するパンタグラフ型キーの典型例に係る断面図を示す。パンタグラフ型キー10は、パンタグラフ構造1を介して、キートップ2とスイッチ入力部3が対向する構造を有する。キートップ2とスイッチ入力部3の間には、キートップ2に対してスイッチ入力部3と離れる方向である上向きの付勢力を与える弾性部材4が配されている。弾性部材4の下側の内部は空洞であり、この空洞内に下向きの押圧凸部4aが一体に形成されている。
図1左側の状態において、使用者がキートップ2を押し込むと、ストロークの増加に従って弾性部材4がキートップ2で押し潰されるとともに、押圧凸部4aでスイッチ入力部3が押され、これによりキー入力信号が得られる(図1右側の状態)。図2に示すストロークの増加と荷重の関係からみると、ストロークの増加に従って弾性部材4が弾性変形し荷重は増加し、荷重がピーク荷重(FP)に達すると弾性部材4が座屈し荷重が低下することで、使用者はクリック感を感じ、ストロークがオンストローク(SO)に達すると、押圧凸部4aがスイッチ入力部3に接触し、信号が伝わる。オンストローク後も使用者がキートップ2をさらに押し込むと荷重は増加する。
これに対して、スイッチ入力部3の表面上にカバーフィルムを貼った状態で、使用者がキートップを押し込むと、カバーフィルムがつっぱり、これにより別途抵抗が生じることとなる。これが、押込抵抗となり、オンストローク(SO)時の荷重を増加させる。このような押込抵抗は、キーボードの使用性が低下することになる他、スイッチ入力部3が押しこまれないことに起因する未入力エラーが生じる原因となり得る。また、スイッチ入力部3の表面上にカバーフィルムを貼った状態で、使用者がキートップ2を押し込むと、カバーフィルムの、キートップ2に近接した別のキートップに接触する部分が、キートップ2の方に引っ張られることで、当該別のキートップも追従して押されることがあり、誤入力エラーが生じる原因となり得る。
【0015】
カバーフィルムを用いた場合に、上記のような押込抵抗が生じる理由について、より詳細に説明する。すなわち、上記の理由としては、カバーフィルムの基材自体の力学的物性に由来する抵抗の他に、カバーフィルムが粘着部を介してスイッチ入力部の表面に貼りついていることに由来する抵抗が挙げられる。後者については、スイッチ入力部からのカバーフィルムのズレ及び剥がれが生じることにより、スイッチ入力部を汚染等から保護するという目的が達成されない結果とならないよう、カバーフィルムの基材表面には、少なくとも、スイッチ入力部と接触するような位置に複数の粘着部が配される。カバーフィルムは、この粘着部を介し、キーボードを構成するスイッチ入力部に固定されていることから、押込抵抗が増大するものと考えられる。
一方、本実施形態の物品においては、前述した構成を有することにより、次の効果を奏する。すなわち、本実施形態の物品をキーボード等のカバーフィルムとして用いる場合、カバーフィルムをキーボードに対して十分に固定できるだけでなく、キーボードの使用性の低下を抑制し、カバーフィルムを貼り付けることにより生じる未入力エラーや誤入力エラーを抑制することができる。
さらに、第1領域、第2領域及び第3領域が、各々、基材が粘着部で被覆される被覆部と、基材が粘着部で被覆されない露出部と、を有しているため、貼り付け時における皺の発生を抑制することができ、カバーフィルム貼付け後の外観も改善される。
なお、本実施形態の物品をキーボード等のカバーフィルムとして用いる場合の貼付け時、空気が露出部(粘着部が配されていない部分)を通って、フィルム外に抜けやすく、カバーフィルムをキーボードに張り付ける際に、空気がフィルム内に残存することを防止できる傾向にある。このような観点から、本実施形態の物品においては、第1領域の第2領域側に位置する縁部と、第1領域の第2領域とは逆側に位置する縁部とが、連通するように、第1領域に存在する露出部のうち少なくとも2以上の露出部が連通していることが好ましい。同様に、第1の物品においては、第3領域の第2領域側に位置する縁部と、第3領域の第2領域とは逆側に位置する縁部とが、連通するように、第3領域に存在する露出部のうち少なくとも2以上の露出部が連通していることが好ましい。
【0016】
なお、スイッチ入力部は、キースイッチ等の押しボタンを有する電子機器等の入力部であれば特に限定されないが、例えば、デスクトップ及びノートパソコンのキーボード、固定電話機及び携帯電話機が有する押しボタン、医療機器などの電子機器が有する押しボタン、テレビ等のリモコンの押しボタンなどが挙げられる。押しボタンの形態としては、特に限定されないが、例えば、その機構の相違によって、メカニカルスイッチ、メンブレンスイッチ、パンタグラフスイッチ、静電容量無接点型スイッチ等が挙げられる。
【0017】
(基材)
本実施形態の物品は、基材を備える。
第1の物品における基材の形状としては、基材の表面が第1領域、第2領域及び第3領域をこの順に有し得るものであれば特に限定されず、例えば、第1の物品を被覆材として適用する場合の被覆対象に応じて種々の形状をとることができ、その例としてはフィルム形状やシート形状等を挙げることができる。第1領域、第2領域及び第3領域は、基材の幅方向(基材を押出成型する場合において、基材が押し出される方向(MD)に垂直となる方向(TD))に沿ってこの順に配されていることが好ましい。なお、後述する本実施形態の巻回体から第1の物品を引き出す際の引き出し方向が当該MDに一致することが好ましい。
第1の物品において、基材の表面は、第1領域、第2領域及び第3領域のみからなるものであってもよい。少なくとも、(I)物品の中央に配される第2領域と、それを除く独立した2領域(第1領域及び第3領域)が観念され、かつ、(II)後述する実施例に記載の方法に基づいて測定される各領域の粘着力の関係が第1の物品について前述した関係にあるものであれば、(III)各領域が一以上のサブ領域を含む場合であっても、当該物品は第1領域、第2領域及び第3領域のみからなるものと扱うことができる。上記(III)について、例えば、第1の物品における第2領域が、その領域内において、粘着剤の配置パターン等に沿った一以上の境界により観念され得る一以上のサブ領域を含むとしても、当該サブ領域のみに対する粘着力を測定するのではなく、当該サブ領域を含む領域全体を第2領域と扱うことができる(第1領域及び第3領域についても同様である。)。なお、かかるサブ領域としては、以下に限定されないが、キーボードを被覆対象とする例においては、エンターキー周辺、スペースキー周辺及びタッチパッド周辺等の特定の部位における操作性を考慮して適宜設定される領域等が挙げられる。より具体的には、エンターキー周辺、スペースキー周辺及びタッチパッド周辺等の特定の部位に対応するように、第1の物品の各領域におけるサブ領域を配置することができ、当該サブ領域における粘着部の数を少なくする又は当該サブ領域における粘着部の構成材料として粘着性の低いものを使用すること等により、該当箇所における局所的な粘着性を調整することができる。
第1の物品をキーボード等の被覆材として用いる場合において、第1領域、第2領域及び第3領域は、典型的には、いずれも帯状の形状を有する領域であり、次のように分画される。すなわち、第2領域は、典型的には、ノートパソコンのキーボード等の中央部に位置する押しボタン(キーボード等を構成する入力部)を覆うように位置決めされ、第1領域及び第3領域は、典型的には、キーボード等の両端部に位置し、押しボタン(キーボード等を構成する入力部)以外の部分を覆うように位置決めされる(図3(A)及び(B)参照)。このように、第1の物品において、基材表面の第1領域、第2領域及び第3領域は、第1の物品の適用対象が有する形状に応じて、適宜決定することができる。
第1の物品において、第1領域が帯状の形状を有する領域である場合、その幅としては、特に限定されないが、典型的には、1mm以上100mm以下とすることができ、3mm以上75mm以下とすることができ、5mm以上50mm以下とすることができ、10mm以上30mm以下とすることができる。
第1の物品において、第2領域が帯状の形状を有する領域である場合、その幅としては、特に限定されないが、典型的には、50mm以上200mm以下とすることができ、60mm以上175mm以下とすることができ、70mm以上150mm以下とすることができ、80mm以上125mm以下とすることができる。
第1の物品において、第3領域が帯状の形状を有する領域である場合、その幅としては、特に限定されないが、典型的には、1mm以上150mm以下とすることができ、3mm以上125mm以下とすることができ、5mm以上100mm以下とすることができ、10mm以上100mm以下とすることができる。
【0018】
第2の物品における基材の形状としては、基材の表面が第1領域と、前記第1領域に囲われた第2領域とを有し得るものであれば特に限定されず、例えば、第2の物品を被覆材として適用する場合の被覆対象に応じて種々の形状をとることができ、その例としてはフィルム形状やシート形状等を挙げることができる。
第2の物品において、基材の表面は、第1領域及び第2領域のみからなるものであってもよい。少なくとも、(i)物品の中央に配される第2領域と、それを除く独立した領域(第1領域)が観念され、かつ、(ii)後述する実施例に記載の方法に基づいて測定される各領域の粘着力の関係が第2の物品について前述した関係にあるものであれば、(iii)各領域が一以上のサブ領域を含む場合であっても、当該物品は第1領域及び第2領域のみからなるものと扱うことができる。例えば、第2の物品における第2領域が、その領域内において、粘着剤の配置パターン等に沿った一以上の境界により観念され得る一以上のサブ領域を含むとしても、当該サブ領域のみに対する粘着力を測定するのではなく、当該サブ領域を含む領域全体を第2領域と扱うことができる(第1領域についても同様である。)。なお、かかるサブ領域としては、以下に限定されないが、キーボードを被覆対象とする例においては、エンターキー周辺、スペースキー周辺及びタッチパッド周辺等の特定の部位における操作性を考慮して適宜設定される領域等が挙げられる。より具体的には、エンターキー周辺、スペースキー周辺及びタッチパッド周辺等の特定の部位に対応するように、第2の物品の各領域におけるサブ領域を配置することができ、当該サブ領域における粘着部の数を少なくする又は当該サブ領域における粘着部の構成材料として粘着性の低いものを使用すること等により、該当箇所における局所的な粘着性を調整することができる。
第2の物品をキーボード等の被覆材として用いる場合において、第1領域及び第2領域は、典型的には、それぞれ、矩形枠状の領域及び矩形状の領域であり、次のように分画される。すなわち、第2領域は、典型的には、キーボード等の中央部に位置する押しボタン(キーボード等を構成する入力部)を覆うように位置決めされ、第1領域は、典型的には、基材の表面において第1領域を除く領域であって、キーボード等の押しボタン(キーボード等を構成する入力部)以外の部分を覆うように位置決めされる。このように、第2の物品において、基材表面の第1領域及び第2領域は、第2の物品の適用対象が有する形状に応じて、適宜決定することができる。
第2の物品において、第1領域が矩形枠状の形状を有する領域である場合、その上部と左右部の幅としては、特に限定されないが、典型的には、1mm以上100mm以下とすることができ、3mm以上75mm以下とすることができ、5mm以上50mm以下とすることができ、10mm以上30mm以下とすることができる。また、下部の幅としては、特に限定されないが、典型的には、1mm以上150mm以下とすることができ、3mm以上125mm以下とすることができ、5mm以上100mm以下とすることができ、10mm以上100mm以下とすることができる。
第2の物品において、第2領域が矩形状の形状を有する領域である場合、その幅としては、特に限定されないが、典型的には、50mm以上200mm以下とすることができ、60mm以上175mm以下とすることができ、70mm以上150mm以下とすることができ、80mm以上125mm以下とすることができる。
【0019】
(基材の構成成分)
本実施形態の物品において、基材を構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニリデン;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類;エチレン/ビニルアルコール共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体;ポリアミド;ポリウレタン等の樹脂が挙げられる。この中でも、化粧箱に入れて使用する際のカット性やキーボードに貼って使用する透明性(キー印字の視認性)の観点でポリ塩化ビニリデンが好ましい。なお、基材を構成する成分は1種単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0020】
本実施形態の物品において、使用し得るポリ塩化ビニリデンとしては、塩化ビニリデン単独重合体、及び、塩化ビニリデン単量体とそれと共重合可能な単量体との塩化ビニリデン共重合体が含まれる。塩化ビニリデン単量体と共重合可能な単量体としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル;アクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;メタクリル酸;メチルアクリロニトリル;酢酸ビニル等が挙げられる。これらの共重合可能な単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、ポリ塩化ビニリデンとしては、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本実施形態の物品において、使用し得るポリ塩化ビニリデン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5×104~1.5×105であり、より好ましくは6×104~1.3×105であり、さらに好ましくは7×104~1×105である。重量平均分子量(Mw)が5×104以上であることにより、押出時の溶融特性がより向上する傾向にある。また、重量平均分子量(Mw)が1.5×105以下であることにより、熱安定性を維持した溶融押出が可能となる傾向にある。なお、本実施形態において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、標準ポリスチレン検量線を用いて求めることができる。
【0022】
本実施形態の物品において、基材は、上記樹脂の他、公知の可塑剤、熱安定剤、着色剤、有機系滑剤、無機系滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチルトリブチルシトレート、アセチル化モノグリセライド、ジブチルセバケート等の脂肪酸エステルが挙げられる。
【0024】
熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ化植物油や、エポキシ系樹脂、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の物品において、基材がフィルム形状を有する場合、延伸フィルムであっても未延伸フィルムであってもよいが、延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、未延伸フィルムと比較して、応力に対する高い復元性を有し、ヒステリシスロスが小さい傾向にある。通常、応力に対する復元力が小さいフィルムの場合、一定以上の応力を付加すると、その部分は伸びた状態から元に戻らなくなる傾向にある。例えば、本実施形態の物品としてのカバーフィルムをキーボードに貼りつけて打鍵する場合でいえば、キーを打鍵することで打鍵されたキー付近のカバーフィルムには一時的に応力がかかるが、高復元性を有する延伸フィルムの場合は、打鍵されたキー付近のカバーフィルムは元どおり復元しやすく、カバーフィルムが伸びきってしまうことを抑制することができる。
なお、基材が延伸フィルムであるか否かは、例えば、下記のように熱収縮率を測定することにより判断をすることができる。ここでの熱収縮率は、基材から100mm角のフィルムをサンプルとして切り出し、このサンプルを所定の温度に設定したエアーオーブン式の恒温槽に入れ、1分間熱処理を行い、各温度におけるフィルムのMD(基材を押出成型する場合において基材が押し出される方向;以下「流れ方向」ともいう。)の収縮量とTD(MDに対して垂直となる方向;以下「幅方向」ともいう。)の収縮量を測定し、収縮前の寸法、すなわち100mm、で割った値の百分率比の平均値として決定する。上記測定の結果として、120℃で10分静置したときの熱収縮率が20%以上であるものは、延伸フィルムと判断することができる。このような延伸フィルムは、繰り返し使用した時のヒステリシスロスが少なく、復元性が高いものとなる傾向にある。このように、復元性が高いほど、使用時の操作感が向上する傾向にある。このように、基材が延伸フィルムである場合、未延伸フィルムのように応力の付加後に復元せずフィルムが伸びきった状態になるものと比べて、タイプミスなどの要因や、伸びた部分が押しボタンに引っかかり破膜するなどの問題をより効果的に防止できる傾向にある。
【0026】
(基材の2%歪み弾性率)
本実施形態の物品において、基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の2%歪み弾性率は、各々独立して、好ましくは190~550MPaであり、より好ましくは200~500MPa、さらに好ましくは200~400MPaである。流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の2%歪み弾性率が上記範囲内であることにより、操作性がより向上する傾向にある。さらに、基材が部分的に伸びてしまうことが抑制される傾向にある。
基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の2%歪み弾性率は、例えば、基材を構成し得る樹脂の種類とグレード、使用し得る添加剤の処方の選定、それに応じた加工時の条件調整により制御することができる。なお、基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の2%歪み弾性率は、常法により測定することができる。
【0027】
(基材の引張伸び)
本実施形態の物品において、基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の引張伸びは、各々独立して、好ましくは60~200%であり、より好ましくは70~180%であり、さらに好ましくは90~160%である。基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の引張伸びが上記範囲内である場合、操作性低下を生じさせにくくされる傾向にある。
基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の引張伸びは、例えば、基材を構成し得る樹脂の種類とグレード、使用し得る添加剤の処方の選定、それに応じた加工時の条件調整により制御することができる。なお、基材の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の引張伸びは、常法により測定することができる。
【0028】
(基材のヘイズ値)
基材のヘイズ値は、好ましくは0.1%~25%であり、より好ましくは0.1%~20%であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。基材のヘイズ値が上記範囲内である場合、キーの視認性がより向上し、誤入力を防止できる傾向にある。基材のヘイズ値は、基材を構成し得る樹脂の種類や基材の厚さ等により調整することができる。また、ヘイズ値は、ASTM D-1003を参考にして測定することができる。
【0029】
(基材の厚さ)
基材の厚さは、好ましくは5~60μmであり、より好ましくは7~50μmであり、さらに好ましくは10~40μmである。基材の厚さが上記範囲内である場合、操作性及び耐破れ性がより向上する傾向にある。
【0030】
(粘着部)
本実施形態の物品は、基材の表面上に、部分的に配された複数の粘着部を備える。
第1の物品においては、基材の表面における第1領域、第2領域及び第3領域の全てに、複数の粘着部が配される。ここで、第1領域、第2領域及び第3領域の各々が、基材が粘着部で被覆される被覆部と、基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有するように粘着部が配される。このように粘着部が配されることで、第1の物品をキーボード等のカバーフィルムとして用いる場合、貼り付け時における皺の発生を抑制することができ、カバーフィルム貼付け後の外観も改善される。
第2の物品においては、基材の表面における第1領域及び第2領域の全てに、複数の粘着部が配される。ここで、第1領域及び第2領域の各々が、基材が粘着部で被覆される被覆部と、基材が前記粘着部で被覆されない露出部と、を有するように粘着部が配される。このように粘着部が配されることで、第2の物品をキーボード等のカバーフィルムとして用いる場合、貼り付け時における皺の発生を抑制することができ、カバーフィルム貼付け後の外観も改善される。
【0031】
(粘着力)
第1の物品においては、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さい。領域間において、粘着力の勾配があることにより、第1の物品をキーボード等のカバーフィルムとして用いる場合、押込性を確保しつつフィルム固定性の低下を防止することができる。
第2の物品においては、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域における粘着部の粘着力よりも小さい。領域間において、粘着力の勾配があることにより、第2の物品をキーボード等のカバーフィルムとして用いる場合、押込性を確保しつつフィルム固定性の低下を防止することができる。
本実施形態において、各領域の粘着力は、本技術分野において通常用いられる種々の方法により評価することができ、それによって領域間の粘着力の大小が把握できればよい。例えば、各領域における粘着部の物性(粘着部の組成や性状)が全て同一と評価できる場合、各領域における粘着部の配置密度(例えば、後述する被覆率C1~C3)の大小関係を各領域の粘着力の大小関係とみなすこともできる。もっとも、各領域における粘着部の物性(粘着部の組成や性状)が全て同一と評価できない場合や、当該物性が既知でない場合であっても、次のようにして各領域の粘着力を評価することができる。
本実施形態において、各領域の粘着力は、JISZ0237の180°引きはがし粘着力を参考にして測定することができる。具体的には、本実施形態の物品の各領域からMDに沿って所定の幅及び長さ150mmに切り出したサンプルを得て、当該サンプルをJISZ0237の180°引きはがし粘着力を参考に引張り測定に供し、剥離力の最大値について5回の測定の平均値(報告単位:N/25mm)を粘着力の値とすることができる。このとき、次のように測定領域を設定する。すなわち、少なくとも1つの独立した粘着部が含まれるような幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mmの測定領域であって、当該幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mm内における前記粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における粘着力を前述のように測定する。より具体的には、各領域が点状粘着部で構成される場合、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した点状粘着部が含まれるような幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mmの測定領域であって、当該幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mm内における前記点状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における粘着力を前述のように測定する。また、各領域が線状粘着部で構成される場合は、幅0.1mmから10mmである線状粘着部で構成される線状粘着部群を対象として、少なくとも1本の独立した線状粘着部が含まれるような幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mmの測定領域であって、当該幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mm内における前記線状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における粘着力を前述のように測定する。さらに具体的には、後述する実施例に記載の方法に基づいて粘着力を測定することができる。なお、同様に180度剥離力を測定した場合の最小値については、複数の粘着部が所定方向に連続して存在しない部分において0となり、そのような数値を考慮した値は、本実施形態の物品の性能を適切に評価する観点から、採用しない。
【0032】
第1の物品において、JISZ0237の180°引きはがし粘着力を参考にして測定される、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力は、好ましくは0.01~0.5N/25mmであり、より好ましくは0.02~0.3N/25mmであり、さらに好ましくは0.03~0.2N/25mmであり、よりさらに好ましくは0.03~0.1N/25mmである。
第2の物品において、JISZ0237の180°引きはがし粘着力を参考にして測定される、第1領域における粘着部の粘着力は、好ましくは0.01~0.5N/25mmであり、より好ましくは0.02~0.3N/25mmであり、さらに好ましくは0.03~0.2N/25mmであり、よりさらに好ましくは0.03~0.1N/25mmである。
本実施形態の物品において、基材上の各領域に粘着部を全面に配さない(各領域が露出部を有する)ことに加え、各領域における粘着部の粘着力が上述した範囲となる場合、貼り付き性と、剥がれ性のバランスに優れ、その上、押しボタンを有する入力部の操作性低下を生じさせにくくし、フィルム貼付け後の外観が向上する傾向にある。
各領域における粘着部の粘着力を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する粘着部の被覆面積率を調整する方法の他、粘着部を構成する材料の種類や硬さ、粘着部の配置、粘着部の厚さ、粘着部の面粗度を調整する方法等が挙げられる。
【0033】
第1の物品において、JISZ0237の180°引きはがし粘着力を参考にして測定される、第2領域における粘着部の粘着力は、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さければよく、その数値としては特に限定されない。第2領域における粘着部の粘着力は、好ましくは第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力の85%以下であり、より好ましくは50%以下である。第1の物品において、領域間の粘着力の差が上記範囲内である場合、貼り付き性と、剥がれ性のバランスにより優れ、押しボタンを有する入力部の操作性低下をより抑制でき、貼付け後の外観が向上する傾向にある。
第2の物品において、JISZ0237の180°引きはがし粘着力を参考にして測定される、第2領域における粘着部の粘着力は、第1領域における粘着部の粘着力よりも小さければよく、その数値としては特に限定されない。第2領域における粘着部の粘着力は、好ましくは第1領域における粘着部の粘着力の85%以下であり、より好ましくは50%以下である。第2の物品において、領域間の粘着力の差が上記範囲内である場合、貼り付き性と、剥がれ性のバランスにより優れ、押しボタンを有する入力部の操作性低下をより抑制でき、貼付け後の外観が向上する傾向にある。
【0034】
(被覆面積率)
第1の物品において、第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、粘着部が、点状粘着部を含み、第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群の合計面積が、各領域における粘着部の合計面積100%に対して、50%以上100%以下であり、第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、下記方法により算出される被覆面積率が、それぞれ、0.1%以上90%以下であることが好ましい。被覆面積率が上記範囲内であることにより、貼り付き性と、剥がれ性のバランスにより優れ、押しボタンを有する入力部の操作性低下をより抑制できる傾向にある。また、同様の観点から、点状粘着部群の面積は、各領域における粘着部の合計面積100%に対して、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがより好ましい。
第2の物品において、第1領域及び第2領域の各々において、粘着部が、点状粘着部を含み、第1領域及び第2領域の各々において、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着被覆部群の面積が、各領域における粘着部の合計面積100%に対して、50%以上100%以下であり、第1領域及び第2領域の各々において、下記方法により算出される被覆面積率が、それぞれ、0.1%以上90%以下であることが好ましい。被覆面積率が上記範囲内であることにより、貼り付き性と、剥がれ性のバランスにより優れ、押しボタンを有する入力部の操作性低下をより抑制できる傾向にある。また、同様の観点から、点状粘着部群の面積は、各領域における粘着部の合計面積100%に対して、80%以上100%以下であることがより好ましく、90%以上100%以下であることがより好ましい。
(被覆面積率の測定方法)
点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した点状粘着部が含まれるような1cm角の測定領域であって、当該1cm角内における点状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における点状粘着部の合計面積/1cm2×100にて被覆面積率を算出する。
上記被覆面積率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。なお、点状粘着部や線状粘着部の合計面積は、定規やノギス等の一般的な測定器で測定することができ、その他の形状を有する粘着部や微細な粘着部である場合は、マイクロスコープ等により得られた画像を二値化し、面積を算出することもできる。
各領域における被覆面積率を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、前述した粘着力を調整する方法と同じく、粘着部を構成する材料の種類や硬さ、粘着部の配置、粘着部の厚さ、粘着部形成時の圧力等の条件を調整する方法等が挙げられる。
【0035】
第1の物品において、上記と同様の観点から、第2領域の前記被覆面積率が、前記第1領域及び第3領域の各被覆面積率の100%以下であることが好ましく、より好ましくは85%以下であり、さらに好ましくは70%以下である。また、第1の物品において、上記と同様の観点から、第2領域の前記被覆面積率が0.1%以上75%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以上60%以下であり、さらに好ましくは2%以上45%以下である。さらに、第1の物品において、上記と同様の観点から、第1領域及び第3領域の各被覆面積率が5%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上80%以下であり、さらに好ましくは15%以上70%以下である。
【0036】
第2の物品において、上記と同様の観点から、第2領域の前記被覆面積率が、前記第1領域の被覆面積率の100%以下であることが好ましく、より好ましくは85%以下であり、さらに好ましくは70%以下である。また、第2の物品において、上記と同様の観点から、第2領域の前記被覆面積率が0.1%以上75%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以上60%以下であり、さらに好ましくは2%以上45%以下である。さらに、第2の物品において、上記と同様の観点から、第1領域の被覆面積率が5%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上80%以下であり、さらに好ましくは15%以上70%以下である。
【0037】
本実施形態の物品において、「粘着部が点状である」とは、一つの点状の粘着部が少なくとも1cm×1cmの範囲内に収まることをいい、その具体的な形状は、特に限定されず、例えば、円形、略円形、半円形、略半円形、楕円形、略楕円形、半楕円形、略半楕円形、多角形等が挙げられる。点状の粘着剤の配列規則は特に限定されるものではないが、美観の観点から規則的な配列が好ましい。規則的な配列としては、例えば、図4に示すように、60°千鳥型(図4(A)参照)、角千鳥型(図4(B)参照)、並列型(図4(C)参照)や異なるサイズの点状の粘着部による千鳥型(図4(D)参照)等が挙げられる。
本実施形態の物品において、粘着部は、点状粘着部及び/又は線状粘着部を含むことが好ましく、点状粘着部及び/又は線状粘着部のみを含むことがより好ましい。
【0038】
本実施形態の物品において、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した粘着部が含まれるような1cm角の測定領域であって、当該1cm角内における粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定する場合、各領域の当該測定領域に含まれる点状の粘着部の個数としては、好ましくは1個以上であり、より好ましくは2個以上であり、さらに好ましくは5個以上である。上記個数が多いほど、露出部と被覆部とが分散して存在し、各押しボタンごとの操作性のバラつきがより抑制される傾向にある。また、このことから、当該測定領域内に含まれる粘着部の個数の上限については、特に限定されないが、製造上の観点からは、好ましくは250個以下であり、より好ましくは100個以下であり、さらに好ましくは50個以下である。なお、上記測定領域を設定する際に特定する点状粘着部群については、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部のみで構成されていてもよいし、この粘着部群において「面積が3×10-4cm2未満である点状粘着部」や「面積が0.8cm2超である点状粘着部」が一部含まれていてもよいが、そのような点状粘着部を多く配置することは、製造上の問題等に繋がる傾向にあり、そのような観点からは、点状粘着部群は、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部のみで構成されていることが好ましい。
【0039】
第1の物品における第1領域の被覆率C1は、第1領域における粘着部の合計面積/第1領域の面積×100(%)として、3~90%が好ましく、より好ましくは10~65%であり、更に好ましくは20~40%である。
第1の物品における第2領域の被覆率C2は、第2領域における粘着部の合計面積/第2領域の面積×100(%)として、1~90%が好ましく、より好ましくは2~50%であり、更に好ましくは3~35%である。
第1の物品における第3領域の被覆率C3は、第3領域における粘着部の合計面積/第3領域の面積×100(%)として、3~90%が好ましく、より好ましくは10~65%であり、更に好ましくは20~40%である。
第2の物品における第1領域の被覆率C1は、第1領域における粘着部の合計面積/第1領域の面積×100(%)として、3~90%が好ましく、より好ましくは10~65%であり、更に好ましくは20~40%である。
第2の物品における第2領域の被覆率C2は、第2領域における粘着部の合計面積/第2領域の面積×100(%)として、1~90%が好ましく、より好ましくは2~50%であり、更に好ましくは3~35%である。
【0040】
第1の物品における粘着部の配列の例として、図5のように、点状の粘着部で構成される同一の単位列を第1領域、第2領域及び第3領域の各々に配してもよい。第2領域における単位列間距離(単位列の配置間隔)L2は、好ましくは0.5mm~20mmであり、より好ましくは1mm~15mmであり、さらに好ましくは4mm~9mmであり、よりさらに好ましくは4mm~8mmであり、一層好ましくは4mm~7mmである。第1領域及び第3領域における粘着部の単位列間距離は、L2より小さいことが好ましい。これにより、良好な押込性と固定性を両立できるだけでなく、物品を巻回体とした際に、粘着部が重なる度合いが第1領域、第2領域及び第3領域で同等となりやすいため、経時あるいは流通時の高温環境により、巻回された物品の応力緩和が発生した際に、巻回体における巻締りの度合いの差を小さくできる傾向にある。巻回体に巻締まりの度合いの差が小さいと、物品を引き出して貼り付けて使用する際に、部分的に弛みが発生することを防止でき、結果として皺なく貼り付けることが容易となる傾向にあるため好ましい。
【0041】
第1の物品における粘着部の配列の他の例として、図6のように、第2領域において、複数の単位列の束を1つの構成単位として粘着部を配列してもよい。第2領域における当該束の束間距離(配置間隔)L2は0.5mm~20mmであることが好ましく、より好ましくは1mm~15mm、さらに好ましくは4mm~9mmであり、よりさらに好ましくは4mm~8mmであり、一層好ましくは4mm~7mmである。第1領域及び第3領域における粘着部の単位列間距離(配置間隔)はL2より小さいことが好ましく、第2領域における1つの束を構成する単位列の間隔は、第1領域及び第3領域における粘着部の単位列の間隔と同等かそれ以下であることが好ましい。1つの束を構成する単位列の数は限定されないが、好ましくは2~10列であり、より好ましくは2~5列であり、さらに好ましくは3~4列である。各領域において、粘着部がこのように配列する場合、良好な押込性と固定性を両立できるだけでなく、物品を巻回体とした際に、粘着部が重なる度合いが第1領域、第2領域及び第3領域で同等となりやすいため、経時あるいは流通時の高温環境により、巻回された物品の応力緩和が発生した際に、巻回体における巻締りの度合いの差を小さくできる傾向にある。加えて、特に点状の粘着部の大きさが小さい場合に、巻回体の製造工程においてフィルム状の物品が蛇行した場合であっても、粘着部の重なる度合いが第1領域及び第3領域と第2領域とで同程度になりやすく、経時あるいは流通時の高温環境により、巻回された物品の応力緩和が発生した際に、巻回体における巻締りの度合いの差を小さくできる傾向にある。
【0042】
第1の物品における粘着部の配列の更に他の例として、例えば図7のように、第2領域において、単位列と単位列の束を交互に配列してもよく、図8図9図10に例示するように、点状の粘着部の単位列の代わりに、線状の粘着部を単位列として配列してもよい。このとき、線の具体的な形状は特に限定されず、波線や斜線でもよい。また、線状の粘着部は、図8~10とは異なる方向に延びるものであってもよい。すなわち、線状の粘着部は、各々、図8~10に例示するように、第1の物品のMDに沿って延びるものであってもよく、図11に例示するように、第1の物品のTDに沿って延びるものであってもよい。
【0043】
本実施形態の物品における各領域の幅は、任意に調節可能であるが、現在市販されているキーボードへの貼り付けを想定すると、第1の物品においても、第2の物品においても、第2領域の幅を100~120mm程度とするのが好ましい。第1の物品において、第1領域及び第3領域は、例えば図12(A),(B)のように、第2領域の上下に配置され、第1領域の幅W1及び第3領域の幅W3は、各々、10~30mm程度とするのが好ましい。第2の物品において、第1領域は、例えば図12(C),(D)のように、第2領域を囲うように(第2領域の上下左右に)配置され、第1領域の幅W1,W3,T1,T2は、各々、10~30mm程度とするのが好ましい。第1の物品を、ラップトップ型のパソコン等の被覆材として適用する場合には、タッチパッド部を覆うように、第3領域の幅W3を60~90mm程度にすることが好ましい。これにより、タッチパッド部の汚れや液剤での清拭による劣化を防止できる傾向にある。同様に、第2の物品を、ラップトップ型のパソコン等の被覆材として適用する場合には、タッチパッド部を覆うように、第1領域の幅W3を60~90mm程度にすることが好ましい。これにより、タッチパッド部の汚れや液剤での清拭による劣化を防止できる傾向にある。
【0044】
(粘着部を構成する成分)
本実施形態の物品において、粘着部を構成する成分としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エチレン/酢酸ビニル粘着剤などが挙げられる。粘着部を構成する成分は1種単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
押しボタンを有する入力部の表面をカバーするために、一時的に貼りつけられ、その後ある程度使用したら清潔性の観点から剥がして捨てる用途からすれば、強固な粘着性よりも、人が手で貼って剥がせる程度の粘着力であり、かつ、粘着させた面に対して糊のこりしない程度に剥離性に優れることが好ましい。また、そのような粘着性を有するものは、仮に、一の物品の内部において、一の粘着部と他の粘着部との間で結着して絡まりが生じたとしても、絡まりをほどきやすくなるため、一層取扱いやすくなる。このような観点から、上記粘着剤の中でも、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が好ましく、ウレタン系粘着剤がより好ましい。
【0045】
本実施形態の物品において、使用し得るウレタン系粘着剤は、イソシアネート基とヒドロキシ基をもつ化合物同士を縮合し得られるポリウレタンを含む粘着剤であり、貼り付け作業時の空気抜け性に優れ、糊残りすることなく剥がせる性質(再剥離性)に優れる傾向にある。ウレタン系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0046】
本実施形態の物品において、使用し得るシリコーン系粘着剤は、シロキサン結合を主骨格にもつポリマーを含む粘着剤であり、使用可能温度の範囲が広く、貼り作業時の空気抜け性に優れる傾向にある。
【0047】
本実施形態の物品において、使用し得るアクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル重合体を含む粘着剤であり、例えば、主モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステル等に対してこれと共重合可能なコモノマーを添加して凝集力を調整したり、中でも所定の官能基を含有するコモノマーを添加して架橋点を設けて粘着剤の硬さを調整したりすることで、所望とする粘着力を発現させることができる。アクリル系粘着剤に用いられる主モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の各種(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらを単独もしくは組み合わせて使用できる。コモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。官能基含有モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0048】
本実施形態の物品における粘着部には、粘着力を調整する観点から、ロジンやテルペン類、脂肪族及び芳香族合成樹脂等の粘着付与樹脂が含まれていてもよい。粘着部には、上記の他、安定剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤などを添加してもよい。粘着部の原料に、バイオマス原料を用いてもよい。
【0049】
本実施形態の物品における粘着部の厚さは、粘着部の粘着力の観点から、好ましくは1μm~30μmであり、より好ましくは3μm~25μmであり、さらに好ましくは5μm~25μmである。粘着部の厚さが上記範囲である場合、本実施形態の物品をキーボード等の被覆材として適用する際に、キーボード等への粘着性と再剥離性とが一層向上する傾向にある。
【0050】
(離型層)
本実施形態の物品は、基材の裏面(粘着部が配される表面とは逆側の面)を被覆する離型層をさらに備えていてもよい。離型層を備えることにより、巻回体としたときに物品を引き出しやすくなる傾向にある。離形層を形成する成分としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系樹脂や長鎖アルキルペンダントポリマー系樹脂等が挙げられる。上記樹脂の他、公知の可塑剤、熱安定剤、着色剤、有機系滑剤、無機系滑剤、界面活性剤、帯電防止剤、加工助剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0051】
本実施形態の物品において、離型層に含まれ得る長鎖アルキルペンダントポリマー系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、炭素数12以上の長鎖アルキルアクリレートの重合物、長鎖アルキルアクリレートと他のビニルモノマーとの共重合物、ポリビニルアルコールに長鎖アルキルイソシアネート等の長鎖アルキル成分を反応させて得られる長鎖アルキル変性高分子等が挙げられる。このような離型層を設けることにより、キーボード等に対する物品の固定性を維持しつつ、巻回体としたときの引出性がより向上する傾向にある。
【0052】
本実施形態の物品において、離型層の厚さは、好ましくは0.1μm~1.0μmであり、より好ましくは0.15μm~0.9μmであり、さらに好ましくは0.2μm~0.7μmである。離型層の厚さを上記範囲内とすることにより、巻回体としたときの引出性がより向上する傾向にある。
【0053】
(その他の構成部材)
本実施形態の物品は、基材と粘着部との間に、印刷層やプライマー層を備えていてもよい。また、本実施形態の物品は、粘着部の保護や被粘着物への貼付け時の利便性の観点から、本実施形態において所望とされる効果を阻害しない範囲で、剥離紙や剥離樹脂フィルムを粘着部に貼り合わせてあってもよい。
【0054】
<物品の厚さ>
本実施形態の物品の厚さは、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは15μm~70μmであり、更に好ましくは20~60μmである。厚さが上記範囲内であることにより、柔軟性がより向上する傾向にある。上記厚さが80μmである場合、例えば、物品をキーボード等の被覆材として使用した際に、キー入力がし辛くなることを防止できる傾向にあり、10μm以上である場合、仮に、一の物品の内部において、一の粘着部と他の粘着部との間で結着して絡まりが生じたとしても、絡まりをほどきやすくなるほか、キー入力時の破れも防止できる傾向にある。
【0055】
(物品の2%歪み引張荷重)
本実施形態の物品の流れ方向(MD)の2%歪み引張荷重及び幅方向(TD)の2%歪み引張荷重は、各々独立して、0.8~1.6N/cmであり、好ましくは0.8~1.5N/cmであり、より好ましくは0.8~1.4N/cmである。2%歪み引張荷重が上記範囲内であることにより、操作性がより向上する傾向にある。
なお、2%歪み引張荷重は、基材の厚さ、粘着部の厚さ、及び粘着剤の塗工面積割合等により調整することができる。なお、物品の流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の2%歪み引張荷重は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0056】
(物品のヘイズ値)
本実施形態の物品のヘイズ値は、好ましくは0.1%~25%であり、より好ましくは0.1%~20%であり、さらに好ましくは0.1%~10%である。物品のヘイズ値が上記範囲内である場合、キーの視認性がより向上し、誤入力を防止できる傾向にある。物品のヘイズ値は、基材を構成し得る樹脂の種類、基材の厚さ、粘着部を構成する材料の種類、粘着部の厚さ、及び粘着部の塗工面積割合等により調整することができる。また、ヘイズ値は、ASTM D-1003を参考にして測定することができる。
【0057】
〔物品の製造方法〕
本実施形態の物品の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」ともいう。)は、基材の表面上の所定領域に、粘着部を形成し、第1の物品又は第2の物品が得られる方法であれば特に限定されない。
【0058】
基材を得る方法としては、例えば、樹脂を環状ダイより単層または多層原反として押し出す工程と、押し出された原反を冷却固化する工程とを含む方法等が挙げられる。また、必要に応じて、樹脂と共に可塑剤や酸化防止剤、安定剤など公知の添加剤を配合して上記した工程を実施してもよい。
【0059】
本実施形態の物品において、基材を延伸フィルムとする場合、本実施形態の製造方法は、ダイから押し出された基材をMD及びTDに延伸する延伸工程をさらに含むことができる。延伸工程における延伸方法は、特に限定されず、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。二軸延伸の具体的な方法としては、逐次又は同時二軸延伸法、又はインフレーション二軸延伸法を採用することができる。具体的には、TDへの延伸は、バブルインフレーション法等により、未延伸チューブ内に注入された空気の内圧により行い、MDへの延伸は、TD延伸部の上流に設けられた未延伸チューブを送り出すロールと下流に設けられた延伸積層チューブを巻き取るロールの速度比を調整することにより行うことができる。また、他の方法として、未延伸フィルムを用いる場合におけるTDへの延伸は、テンター法等により、ピンチクリップを用いて未延伸フィルムの幅に張力をかけることにより行い、MDへの延伸は、TD延伸部の上流に設けられた未延伸フィルムを送り出すロールと下流に設けられた延伸フィルムを巻き取るロールの速度比を調整することにより行うことができる。
この際の延伸倍率は、好ましくは、MD及びTDで、それぞれ、2.5~7.5である。
【0060】
本実施形態の物品は、例えば、上記のように得られた基材に、グラビアコーター又はコンマコーターで粘着剤を塗布し、乾燥した後に巻取り、2日間40℃でエージングすること等により、巻回体として得ることができる。粘着剤を塗布する前に、あらかじめ粘着部及び基材の双方に親和性のあるプライマーを基材に塗布したり、基材の表面張力の調整のために、基材にコロナ処理やプラズマ処理等を施してもよい。また、粘着剤を塗工する前後の工程で、基材の裏面に離型層を形成してもよい。
【0061】
[巻回体]
本実施形態の巻回体は、本実施形態の物品を含むものであれば特に限定されず、芯管と、芯管に巻回された本実施形態の物品と、を備えるものであってもよい。かかる巻回体は、好ましくは、芯管と、芯管に巻回された第1の物品と、を備える。
【0062】
(芯管)
芯管は、その材料に限定はなく、例えば紙製、プラスチック製、金属製等のものを用いることができる。芯管は内部が中空の円筒状物でも、中空でない円柱状物でも構わない。また、芯管の直径に限定はなく、例えば10mm~50mmとすることができる。
【0063】
本実施形態の巻回体は、芯管を有しないものであってもよい。例えば、本実施形態の巻回体は、本実施形態の物品を連続的に形成し、巻回したものであってもよい。かかる巻回体は、好ましくは、第1の物品を連続的に形成し、巻回したものである。
【0064】
[枚葉体]
本実施形態の物品は、上述したような巻回体のほかに、枚葉体としても使用することができる。
【0065】
[収納箱]
本実施形態の収納箱は、前板、底板、後板及び側板を有し、かつ、上面において開口している本体部と、前記本体部に収納される、本実施形態の巻回体と、前記上面の開口を開閉可能に配される蓋部と、を備え、前記蓋部が、前記後板の上縁部に接続される天板と、前記天板の前縁部に接続される掩蓋片と、を有する。本実施形態の収納箱は、上記のように構成されているため、本実施形態の物品の形状を巻回体に保持することができ、かつ、本実施形態の物品を容易に必要量引き出すことができる。
【0066】
本実施形態の収納箱は、本体部から本実施形態の物品を引き出す手段を備えることが好ましい。ここで、例えば、本実施形態の巻回体が本体部の中で自由に回転できる構造とすることで、本実施形態の巻回体から、本体部の開口を通して、本実施形態の物品を必要量引き出すことができる。
【0067】
さらに、本実施形態の収納箱は、巻回体から引き出された物品を切断する手段を備えることができる。これにより引き出した必要量の物品を容易に切断することができる。本実施形態の収納箱は、芯管から引き出された物品を切断する手段として、前記掩蓋片の下縁部に切断部が設けられていることがより好ましい。物品を切断する手段としては、特に限定されないが、例えば、金属製、紙製、プラスチック製等の鋸刃の他に、スライドカッターを用いてもよい。中でも、金属製の鋸刃が安定したカット性を発現できるので好ましい。鋸刃は、物品の幅よりもやや長くして備えることが好ましく、その全体形状は直線が好ましいが、V字状やなだらかな円弧状にしてもよい。
【0068】
本実施形態の巻回体及び/又は本実施形態の収納箱から、本実施形態の物品を引き出す際の引出力は、好ましくは5~300cN/220mm巾であり、より好ましくは10~200cN/220mm巾であり、さらに好ましくは10~100cN/220mm巾である。引出力が上記範囲内であることにより、軽い力で必要な量の物品を引き出すことができる傾向にある。
芯管から物品を引き出す引出力を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、物品の粘着力の設定のほかに、物品の背面へ離型層を設けることが挙げられる。
上記引出力は、後述の実施例に記載の方法に基づいて測定することができる。
【実施例0069】
以下、実施例により本実施形態を詳しく説明するが、本実施形態は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、下記の実施例及び比較例(以下、これらを総称して「各例」ともいう。)で得られたフィルム形状の物品(以下、「カバーフィルム」ともいう。)における各物理パラメータの測定は、常温常圧下にて行うこととした。
【0070】
〔粘着力P〕
各領域における粘着部の粘着力を直接的に評価するべく、JISZ0237の180°引きはがし粘着力の測定を参考に、次の測定を実施した。すなわち、各例で得られたカバーフィルムの各領域からMDに沿って幅25mm(25mm未満の場合は現幅)及び長さ150mmに切り出したサンプルを得た。このサンプルを、SUS304鏡面仕上げ板に、2kg錘ローラーを用いて10mm/秒で2往復させて貼りつけた。300mm/分の速度にて、SUS鏡面仕上げ板から180度の方向に引張り測定を行い、180度剥離力の最大値について5回の測定の平均値(報告単位:N/25mm)を粘着力Pの値とした。測定装置としては、島津製作所社製テクスチャーアナライザー EZ-SXを用いた。
なお、各領域の測定に際しては、次のように測定領域を設定することとした。すなわち、少なくとも1つの独立した粘着部が含まれるような幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mmの測定領域であって、当該幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mm内における前記粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における粘着力を前述のように測定した。
より具体的には、各領域が点状粘着部で構成される場合、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した点状粘着部が含まれるような幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mmの測定領域であって、当該幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mm内における前記点状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における粘着力を前述のように測定した。
また、各領域が線状粘着部で構成される場合は、幅0.1mmから10mmである線状粘着部で構成される線状粘着部群を対象として、少なくとも1本の独立した線状粘着部が含まれるような幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mmの測定領域であって、当該幅25mm(25mm未満の場合は現幅)、長さ150mm内における前記線状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における粘着力を前述のように測定した。
【0071】
〔被覆面積率S1~S3〕
各領域における被覆面積率(%)は、次のようにして測定した。
第1領域、第2領域及び第3領域の各々において、面積が3×10-4cm2以上0.8cm2以下である点状粘着部で構成される点状粘着部群を特定した。かかる点状粘着部群を対象として、少なくとも1個の独立した点状粘着部が含まれるような1cm角の測定領域であって、当該1cm角内における前記点状粘着部の合計面積が最大になるような測定領域を設定し、当該測定領域における前記点状粘着部の合計面積/1cm2×100にて被覆面積率を算出した。
【0072】
〔被覆率C1~C3)〕
後述するカバーフィルム巻回体から引き出されたカバーフィルム(220mm巾×長さ320mm)を対象とし、各領域の被覆率を次のように算出した。
第1領域の被覆率C1(%)は、第1領域における粘着部の合計面積/第1領域の面積×100(%)として算出した。同様に、第2領域の被覆率C2(%)は、第2領域における粘着部の合計面積/第2領域の面積×100(%)として、第3領域の被覆率C3(%)は、第3領域における粘着部の合計面積/第3領域の面積×100(%)として、それぞれ算出した。
【0073】
〔厚さ〕
各例で得られたカバーフィルムを、ミクロトームを用いて、その厚さ方向に沿って切断し、その切断面を光学顕微鏡(キーエンス社VHX-900)で観察してカバーフィルムの厚さを測定した。これをさらにカバーフィルムのMD(巻出方向)に1mおきに同じく測定して、最終的には10点の平均値をカバーフィルムの厚さ(μm)とした。なお、粘着部の厚さはカバーフィルムの厚さの測定法と同じく光学顕微鏡(キーエンス社VHX-900)で観察して測定し、さらにカバーフィルムのMD(巻出方向)に1mおきに同じく測定して、最終的には10点の平均値を粘着部の厚さ(μm)とした。
【0074】
〔視認性:Haze〕
各例で得られたカバーフィルムのHAZE値は、JISK7136を参考に測定した。具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、カバーフィルムの拡散透過率及び全光線透過率を測定し、下記式にてカバーフィルムのHAZE値を算出した。5回の測定の平均値をカバーフィルムのHAZE値とした。測定には、日本電色工業社製ヘイズメーターNDH8000を用いた。
HAZE(%)=拡散透過率/全光線透過率×100
【0075】
〔2%歪み引張荷重〕
各例で得られたカバーフィルムの流れ方向(MD)及び幅方向(TD)の2%歪み引張荷重2%歪み引張荷重は、以下のとおり測定した。すなわち、各例で得られたカバーフィルムをMD、TDに沿うように、それぞれ任意の位置で幅10mm、長さ100mmに切り出してサンプルとし、5mm/分の引張速度にて2%伸長(すなわち2mm伸長)させたときの荷重を測定した。5回の測定の平均値をMDとTDそれぞれの2%歪み引張荷重の値とした。測定装置には、島津製作所社製テクスチャーアナライザーEZ-SXを用いた。
【0076】
〔引出力〕
各例で得られたカバーフィルム(いずれも220mm巾)を紙管に10m巻き取ったサンプルを28℃で1週間エージングした。アクリル製円筒と直径12mmのスチール棒とをベアリングを介して連結させた回転可能な固定具にはめ込み、スチール棒を引張試験機に固定し、アクリル円筒部と、紙管に巻き取られたカバーフィルムとは、自由に回転できる状態にした。この状態において、カバーフィルムの端を引張試験機のロードセルに直結する幅250mmのプレートに固定し、1000mm/分の速度でカバーフィルムを引き出した際に発生する荷重を引出力とし、5回の測定の平均値を測定値(cN/220mm)とした。測定には、島津製作所社製テクスチャーアナライザー EZ-SXを用いた。
【0077】
〔巻姿〕
各例で得られたカバーフィルムの巻回体の巻姿を常温と40℃でそれぞれ1週間保管後に、以下のように評価した。なお、下記の巻回体の直径は、ノギスを用いて測定した。このとき、粘着部が配されている領域における直径は、粘着部が重なっている部分の直径を測定することとした。
A:巻回体を目視で表面を観察し、両端部(第1領域及び第3領域)に対応する巻回体の直径と中央部(第2領域)に対応する巻回体の直径の差が0mm以上0.2mm未満である。
B:巻回体を目視で表面を観察し、両端部(第1領域及び第3領域)に対応する巻回体の直径と中央部(第2領域)に対応する巻回体の直径の差が0.2mm以上0.5mm未満である。
C:巻回体を目視で表面を観察し、両端部(第1領域及び第3領域)に対応する巻回体の直径と中央部(第2領域)に対応する巻回体の直径の差が0.5mm以上0.8mm未満である。
D:巻回体を目視で表面を観察し、両端部(第1領域及び第3領域)に対応する巻回体の直径と中央部(第2領域)に対応する巻回体の直径の差が0.8mm以上である。
【0078】
〔皺〕
各例で得られたカバーフィルムの巻回体を40℃で保管したのち、400mm引き出してカットしたカバーフィルムを用いて、両端部(第1領域及び第3領域)と中央部(第2領域)の皺を以下のように評価した。
・両端部(1分間、平滑なABS板にカバーフィルム中央部が皺にならないように貼り付け後)
A:カバーフィルムの両端部を目視で観察し、皺がない
B:カバーフィルムの両端部を目視で観察し、皺が数か所ある
C:カバーフィルムの両端部を目視で観察し、皺が複数か所ある
D:カバーフィルムの両端部を目視で観察し、皺が無数にある
・中央部(1分間、市販のキーボードに皺にならないように貼り付け後)
A:カバーフィルムの中央を目視で観察し、キー印字の視認性を害する皺がない
B:カバーフィルムの中央を目視で観察し、キー印字の視認性を害する皺が数か所ある
C:カバーフィルムの中央を目視で観察し、キー印字の視認性を害する皺が複数か所ある
D:カバーフィルムの中央を目視で観察し、キー印字の視認性を害する皺が無数にある
【0079】
〔操作性〕
各例で得られたカバーフィルムを、キーボードカバーとして、市販のキーボードに貼り付けた後、反復してキータッチして(ランダムな日本語の文章2万文字分をタイプして)、未入力または誤入力が生じるか評価した(全ての操作は同一の試験者が行った。)。
(評価基準)
A:未入力及び誤入力による入力ミス50字以下
B:未入力及び誤入力による入力ミス51~100文字以下。
C:未入力及び誤入力による入力ミス101文字以上。
【0080】
〔使用時の固定性〕
各例で得られたカバーフィルムを、キーボードカバーとして、市販のキーボードに貼り付けた後、反復してキータッチして(ランダムな日本語の文章をタイプして)、キーボードに対するカバーフィルムの相対位置が変化した(ズレが生じた)か否か、及び/又はカバーフィルムの剥がれが生じたか否かを評価した(全ての操作は同一の試験者が行った。)。具体的には、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
A:2000文字分タイプした時点で、カバーフィルムのズレ及び/又は剥がれは認められなかった。
B:1500文字分タイプした時点で、カバーフィルムのズレ及び/又は剥がれが認められた。
C:1000文字分タイプした時点で、カバーフィルムのズレ及び/又は剥がれが認められた。
【0081】
[実施例1]
(基材フィルムの製造)
塩化ビニリデン-塩化ビニル共重合体(塩化ビニリデン単量体単位含有量/塩化ビニル単量体単位含有量=80質量%/20質量%、重量平均分子量120000、以下、「PVDC」と表記)100質量部に対し、脂肪酸エステル類としてジブチルセバケートを3質量部、アセチルトリブチルシトレートを3質量部、エポキシ化化合物としてエポキシ化大豆油を2質量部、添加してヘンシェルミキサーで5分間混合した。得られた混合物を溶融押出機で管状に押出し、約10℃の冷水槽で過冷却後、35℃の水中に通し、延伸温度30℃、長手方向(MD)に3.9倍、幅方向(TD)に4.4倍のインフレーション2軸延伸を行って得た管状フィルムをピンチロールで折りたたみ、厚さ42μmの平坦長尺状のフィルムを作製した。その後スリッターを用いてシングルフィルムに剥離させ21μmの基材フィルムとした。
【0082】
(カバーフィルムの製造)
セパレーター(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート(PET)シート)の表面に、ウレタン系粘着剤(主剤:サイアバインSH-101(100質量部)、硬化剤:サイアバインT-501B(5質量部)、トーヨーケム化学(株)製)を、グラビアコーター(グラビアセル深さ:250μm)を用いて、規則的に点状にパターン塗工し、粘着剤付きセパレーターを得た。すなわち、φ1mmの円形状の粘着部が複数形成されるように、かつ、これらが基材フィルム表面の領域毎に所定のパターンを与えるように、粘着剤の塗工位置を調整した。より具体的には、1mmの隙間をあけて1列に配された複数の粘着部を単位列(以下、単に「単位列」ともいう。)として、セパレーター表面の両端部(幅20mmの第1領域と幅90mmの第3領域)では、単位列間距離を0.7mmとし、全体として60°千鳥型のパターンを与えるように、各単位列を配置した。一方、セパレーター表面の中央部(幅110mmの第2領域)では、単位列を3列まとめた束(束内の単位列間距離は1mmとし、束内の単位列が60°千鳥型のパターンを与えるように配置したものであり、以下、単に「3列束」ともいう。)と1列の単位列とを交互に間隔4mmで配置した。前述の基材フィルムと粘着剤付きセパレーターとをラミネートして巻き取り、40℃で2日間エージング後、基材フィルムのもう一方の面に背面処理剤(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、ピーロイル1050)を塗工し、セパレーターをデラミネートすることによりカバーフィルムを製造した。デラミネート後の粘着部の厚さは22μmであった。上記のように得られた実施例1に係るカバーフィルムにおいて、各領域の粘着部は、同一の材料を用いて同一の方法で形成されていることから、物性(粘着部の組成や性状)は全て同一と評価した。
【0083】
(カバーフィルム巻回体の製造)
上記のようにして製造したカバーフィルム(幅:500mm、長さ:300m)を、220mm巾へスリットし、円筒状の芯管にカバーフィルムを流れ方向に長さ10m/分、巻き取ることによりカバーフィルム巻回体(巾=220mm)を製造した。得られたカバーフィルム巻回体において、カバーフィルムの引出力は17cN/220mm巾であった。このカバーフィルム巻回体から引き出されたカバーフィルムの外観に係る説明図を図13に示す。なお、図13は、専ら粘着部の配置パターンを示すための図であり、カバーフィルムの厳密な寸法等は実施例1に係る上記説明及び表1に記載した数値から把握される。
【0084】
上記のようにして得られた基材フィルム、粘着部、カバーフィルム、カバーフィルム巻回体の物性を表1に示す。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例1に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0085】
[実施例2]
粘着剤の形状を、φ1mmの円形状から、一辺が1mmの正方形状に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例2に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0086】
[実施例3]
基材フィルムの材質を未延伸のPEフィルムに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例3に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0087】
[実施例4]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、3列束と1列の単位列とを交互に間隔6mmで配置するように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例4に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0088】
[実施例5]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、3列束と1列の単位列とを交互に間隔9mmで配置するように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例5に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0089】
[実施例6]
セパレーター(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート(PET)シート)に、ウレタン系粘着剤(主剤:サイアバインSH-101(100質量部)、硬化剤:サイアバインT-501B(5質量部)、トーヨーケム化学(株)製)を、グラビアコーター(グラビアセル深さ:250μm)を用いて、図14に示すように、規則的に点状にパターン塗工し、粘着剤付きセパレーターを得た。すなわち、φ1mmの円形状の粘着部が複数形成されるように、かつ、これらが基材フィルム表面の領域毎に所定のパターンを与えるように、粘着剤の塗工位置を調整した。より具体的には、セパレーター表面の両端部(幅20mmの第1領域と幅90mmの第3領域)では、単位列間距離を1mmとし、全体として60°千鳥型のパターンを与えるように、各単位列を配置した。一方、セパレーター表面の中央部(幅110mmの第2領域)では、3列束を間隔3mmで配置した。このようにして得られた粘着剤付きセパレーターを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。上記のように得られた実施例6に係るカバーフィルムにおいて、各領域の粘着部は、同一の材料を用いて同一の方法で形成されていることから、物性(粘着部の組成や性状)は全て同一と評価した。このカバーフィルム巻回体から引き出されたカバーフィルムの外観に係る説明図を図14に示す。なお、図14は、専ら粘着部の配置パターンを示すための図であり、カバーフィルムの厳密な寸法等は実施例6に係る上記説明及び表1に記載した数値から把握される。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例6に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0090】
[実施例7]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、3列束を間隔6mmで配置するように変更したこと以外は、実施例6と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例7に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0091】
[実施例8]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、3列束を間隔9mmで配置するように変更したこと以外は、実施例6と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例8に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0092】
[実施例9]
セパレーター(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート(PET)シート)に、ウレタン系粘着剤(主剤:サイアバインSH-101(100質量部)、硬化剤:サイアバインT-501B(5質量部)、トーヨーケム化学(株)製)を、グラビアコーター(グラビアセル深さ:250μm)を用いて、図15に示すように、規則的に点状にパターン塗工し、粘着剤付きセパレーターを得た。すなわち、φ1mmの円形状の粘着部が複数形成されるように、かつ、これらが基材フィルム表面の領域毎に所定のパターンを与えるように、粘着剤の塗工位置を調整した。より具体的には、セパレーター表面の両端部(幅20mmの第1領域と幅90mmの第3領域)では、単位列間距離を1mmとし、全体として60°千鳥型のパターンを与えるように、各単位列を配置した。一方、セパレーター表面の中央部(幅110mmの第2領域)では、単位列間距離を2mmとし、全体として60°千鳥型のパターンを与えるように、各単位列を配置した。このようにして得られた粘着剤付きセパレーターを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。上記のように得られた実施例9に係るカバーフィルムにおいて、各領域の粘着部は、同一の材料を用いて同一の方法で形成されていることから、物性(粘着部の組成や性状)は全て同一と評価した。このカバーフィルム巻回体から引き出されたカバーフィルムの外観に係る説明図を図15に示す。なお、図15は、専ら粘着部の配置パターンを示すための図であり、カバーフィルムの厳密な寸法等は実施例9に係る上記説明及び表1に記載した数値から把握される。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例9に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0093】
[実施例10]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、単位列間距離を4mmで配置するように変更したこと以外は、実施例9と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例10に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0094】
[実施例11]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、単位列間距離を9mmで配置するように変更したこと以外は、実施例9と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例11に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0095】
[実施例12]
粘着剤の塗工パターンとして、第2領域において、単位列間距離を14mmで配置するように変更したこと以外は、実施例9と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。視認性、巻回体の引出性、キーボード操作性、貼り付け時の固定性に優れた結果であった。巻回体の巻姿、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例12に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0096】
[実施例13]
粘着剤の塗工パターンとして、単位列を幅1mmの線状の粘着剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例13に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0097】
[実施例14]
粘着剤の塗工パターンとして、セパレーター表面の全面にわたり、φ1mm/ピッチ2mm/60°千鳥に配置するように変更し、ここで、第1領域と第3領域の粘着力よりも、第2領域の粘着力が小さくなるように、第2領域に位置する粘着剤種を変更した(なお、第2領域の粘着剤として、ウレタン系粘着剤(主剤:サイアバインSH-101(100質量部)、硬化剤:サイアバインT-501B(7質量部)、トーヨーケム化学(株)製)を使用した)以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。上記のように得られた実施例14に係るカバーフィルムにおいて、第2領域の粘着部は、第1領域及び第3領域の粘着部とは異なる材料を用いて形成されていることから、領域間で粘着部の物性が異なるものと評価した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例14に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、領域間で粘着部の物性は異なるものと評価されたため、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係から、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。
【0098】
[実施例15]
粘着剤の塗工パターンとして、第1領域と第3領域を、φ1mm/ピッチ2mm/60°千鳥に配置するように変更し、第2領域を、φ1mm/ピッチ6mm/60°千鳥に配置するように変更した以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。巻回体の巻姿、カット品の皺、使用時の固定性、キーボード操作性に優れた結果であった。
なお、実施例15に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、各領域の粘着部の物性は全て同一と評価されたため、表1に示す被覆率C1~C3の測定結果から把握される大小関係より、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいものと評価した。さらに、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係からも、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも小さいことを確認した。
【0099】
[比較例1]
粘着剤の塗工パターンとして、実施例1にいう第1領域と第3領域に相当する位置の全面に、線状の粘着剤を配置(すなわち、第1領域には幅20mmの線状の粘着剤を配置;第3領域には幅90mmの線状の粘着剤を配置)し、実施例1にいう第2領域に相当する位置には粘着剤を配置しないように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。上記のように得られた比較例1に係るカバーフィルムにおいては、実施例1に係るカバーフィルム中の第1領域及び第3領域が「露出部が存在しない領域」に変更されており、当該領域は本実施形態にいう「第1領域」「第3領域」には該当しないものと評価した。また、比較例1に係るカバーフィルムにおいては、実施例1に係るカバーフィルム中の第2領域が「粘着部が存在しない領域」に変更されており、当該領域は本実施形態にいう「第2領域」には該当しないものと評価した。キーボード操作性は良好であったが、使用時の固定性がやや悪く、巻回体の巻姿、カット品の皺が不適であった。
なお、比較例1に係るカバーフィルムは、前述のとおり、本実施形態にいう「第1領域」「第2領域」「第3領域」を有しないため、第2領域における粘着部の粘着力と第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力との大小関係がそもそも把握できず、本実施形態の物品に該当しないものと評価した。
【0100】
[比較例2]
粘着剤の塗工パターンとして、実施例1にいう第1領域と第3領域に相当する位置の全面においては、線状の粘着剤を配置(すなわち、実施例1にいう第1領域に相当する位置には幅20mmの線状の粘着剤を配置;実施例1にいう第3領域に相当する位置には幅90mmの線状の粘着剤を配置)し、第2領域の全面においては、単位列間距離を1mmとして単位列を配置するように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。上記のように得られた比較例2に係るカバーフィルムにおいては、実施例1に係るカバーフィルム中の第1領域及び第3領域が「露出部が存在しない領域」に変更されており、当該領域は本実施形態にいう「第1領域」「第3領域」には該当しないものと評価した。使用時の固定性は良好であったが、キーボード操作性がやや悪く、巻回体の巻姿、カット品の皺が不適であった。
なお、比較例2に係るカバーフィルムは、前述のとおり、本実施形態にいう「第1領域」「第3領域」を有しないため、第2領域における粘着部の粘着力と第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力との大小関係がそもそも把握できず、本実施形態の物品に該当しないものと評価した。
【0101】
[比較例3]
粘着剤の塗工パターンとして、セパレーター表面の全面にわたり、φ1mm/ピッチ2mm/60°千鳥に配置するように変更し、ここで、第1領域と第3領域の粘着力よりも、第2領域の粘着力が大きくなるように、第1領域と第3領域に位置する粘着剤種を変更した(なお、第1領域と第3領域の粘着剤として、ウレタン系粘着剤(主剤:サイアバインSH-101(100質量部)、硬化剤:サイアバインT-501B(7質量部)、トーヨーケム化学(株)製)を使用した)以外は、実施例1と同様にしてカバーフィルムを製造し、カバーフィルム巻回体を製造した。上記のように得られた比較例3に係るカバーフィルムにおいて、第2領域の粘着部は、第1領域及び第3領域の粘着部とは異なる材料を用いて形成されていることから、領域間で粘着部の物性が異なるものと評価した。巻回体の巻姿、カット品の皺、キーボードの操作性は良好であったが、使用時の固定性は不適であった。
なお、比較例3に係るカバーフィルムの粘着力については、前述のとおり、領域間で粘着部の物性は異なるものと評価されたため、表1に示す粘着力Pの測定結果から把握される大小関係から、第2領域における粘着部の粘着力が、第1領域及び第3領域における粘着部の粘着力よりも大きいものと評価した。すなわち、比較例3に係るカバーフィルムは、本実施形態の物品に該当しないものと評価した。
【0102】
【表1】
【0103】
各カバーフィルムの評価結果を下記の表2に示す。
【0104】
【表2】
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15