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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007803
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20250109BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109436
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康平
(72)【発明者】
【氏名】日下部 徹
【テーマコード(参考)】
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H621AA03
5H621HH01
5H621PP10
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】製作コストの増大および強度低下を招くことなく回転時の誘起電圧の抑制を可能とする回転電機のロータの提供にある。
【解決手段】電磁鋼板の積層により形成されるロータコア18と、ロータコア18の中心に挿通され、ロータコア18と一体化された回転軸と、ロータコア18の磁極毎に形成され、前記回転軸の軸方向に沿って延在する磁石挿入孔21と、磁石挿入孔21に挿入される永久磁石22と、磁石挿入孔21において永久磁石22とロータコア18により形成される空隙23と、を有する回転電機のロータ12である。ロータコア18には、ロータコア18の周方向において隣り合う一対の磁石挿入孔21が複数対形成され、互いに隣り合う磁石挿入孔21の間にブリッジが形成され、空隙23に挿通され、ブリッジを軸方向に挟圧する挟圧体を有し、挟圧体は、非磁性体であって電磁鋼板よりも線膨張係数の大きい材料により形成された。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板の積層により形成されるロータコアと、
前記ロータコアの中心に挿通され、前記ロータコアと一体化された回転軸と、
前記ロータコアの磁極毎に形成され、前記回転軸の軸方向に沿って延在する磁石挿入孔と、
前記磁石挿入孔に挿入される永久磁石と、
前記磁石挿入孔において前記永久磁石と前記ロータコアにより形成される空隙と、を有する回転電機のロータにおいて、
前記ロータコアには、前記ロータコアの周方向において隣り合う一対の前記磁石挿入孔が複数対形成され、
互いに隣り合う前記空隙の間にブリッジが形成され、
前記空隙に挿通され、前記ブリッジを前記回転軸の軸方向に沿って挟圧する挟圧体を有し、
前記挟圧体は、非磁性体であって前記電磁鋼板よりも線膨張係数の大きい材料により形成されていることを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記挟圧体は、前記ブリッジに巻回される巻線であることを特徴とする請求項1記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
前記挟圧体は、前記ブリッジに複数回巻回されていることを特徴とする請求項2記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
前記ブリッジは、
前記ロータコアの径方向外側に形成される外側ブリッジと、
前記ロータコアの径方向内側に形成される内側ブリッジと、からなり、
前記挟圧体は、前記外側ブリッジおよび前記内側ブリッジのうち少なくとも前記外側ブリッジを挟圧することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のロータに関係する従来技術として、例えば、特許文献1に開示された永久磁石式回転電機が知られている。特許文献1に開示された永久磁石式回転電機は、励磁コイルを巻装した固定子と、固定子に所定の隙間をあけて相対回転自在に配置され、永久磁石を設けた回転子と、を備えている。回転子に、回転子の回転により応力が加わることで磁気特性が変化し、永久磁石の磁束を減少させる磁気特性可変素子(超磁歪素子)が設けられている。特許文献1の永久磁石式回転電機によれば、回転子の回転速度が増大すると、回転子の回転遠心力が磁気特性可変素子に応力として加わり、磁気特性可変素子の磁気特性が変化して永久磁石の磁束を減少させるので、永久磁石式回転電機の誘起電圧が抑制され、電子部品の破壊や故障を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-228077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された永久磁石式回転電機のロータ(回転子)は、永久磁石式回転電機の誘起電圧を抑制することができるものの、高価な磁気特性可変素子を用いることで製作コストが嵩むという問題がある。また、ロータの回転時に磁気特性可変素子が変形すると、ロータに挿入されている永久磁石とロータとの間に隙間が生じ、ロータの強度が低下するおそれがある。なお、応力調整ブロックを磁気特性可変素子の径方向内側に設ける例も開示されているが、応力調整ブロックを必要とすることでさらに製作コストが増大する。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、製作コストの増大および強度低下を招くことなく回転時の誘起電圧の抑制を可能する回転電機のロータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、電磁鋼板の積層により形成されるロータコアと、前記ロータコアの中心に挿通され、前記ロータコアと一体化された回転軸と、前記ロータコアの磁極毎に形成され、前記回転軸の軸方向に沿って延在する磁石挿入孔と、前記磁石挿入孔に挿入される永久磁石と、前記磁石挿入孔において前記永久磁石と前記ロータコアにより形成される空隙と、を有する回転電機のロータにおいて、前記ロータコアには、前記ロータコアの周方向において隣り合う一対の前記磁石挿入孔が複数対形成され、互いに隣り合う前記空隙の間にブリッジが形成され、前記空隙に挿通され、前記ブリッジを前記回転軸の軸方向に沿って挟圧する挟圧体を有し、前記挟圧体は、非磁性体であって前記電磁鋼板よりも線膨張係数の大きい材料により形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、非磁性体の挟圧体が、永久磁石とロータコアにより形成される空隙に挿通され、ブリッジを回転軸の軸方向に沿って挟圧する。挟圧体は非磁性体であるため、挟圧体からの磁束の漏れは発生しない。ロータの回転が増大すると、鉄損の増大によりロータコアが発熱するが、挟圧体はロータコアを構成する電磁鋼板よりも線膨張係数が大きいので、発熱による挟圧体の軸方向の膨張量はロータコアよりも大きい。このため、挟圧体によるロータコアの軸方向の応力が低減される。挟圧体の挟圧によるロータコアの軸方向の応力が低減されると、漏れ磁束が大きくなるので、高回転時における誘起電圧を抑制することができる。ロータの低回転時には、高回転時と比較して鉄損による発熱が殆どないのでロータコアは軸方向に殆ど膨張せず、挟圧体の挟圧によるロータコアの軸方向の応力が維持される。その結果、ロータコアにおける漏れ磁束は抑制され、ロータの高トルクを得ることができる。
【0008】
また、上記の回転電機のロータにおいて、前記挟圧体は、前記ブリッジに巻回される巻線である構成としてもよい。
この場合、挟圧体がブリッジに巻回される巻線であるので、ブリッジを軸方向に挟圧し易い。
【0009】
また、上記の回転電機のロータにおいて、前記挟圧体は、前記ブリッジに複数回巻回されている構成としてもよい。
この場合、挟圧体である巻線が複数回ブリッジに巻回されるので、ロータの低回転時には、ブリッジにおける軸方向の応力が大きくなるので、漏れ磁束が抑制され、ロータのより高いトルクを得ることができる。
【0010】
また、上記の回転電機のロータにおいて、前記ブリッジは、前記ロータコアの径方向外側に形成される外側ブリッジと、前記ロータコアの径方向内側に形成される内側ブリッジと、からなり、前記挟圧体は、前記外側ブリッジおよび前記内側ブリッジのうち少なくとも前記外側ブリッジを挟圧する構成としてもよい。
この場合、挟圧体は、外側ブリッジおよび内側ブリッジのうち少なくとも外側ブリッジを挟圧することで、ロータの高回転時における誘起電圧を抑制することができるほか、ロータの低回転時には、漏れ磁束は抑制され、ロータの高トルクを得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製作コストの増大および強度低下を招くことなく回転時の誘起電圧の抑制を可能する回転電機のロータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る回転電機の横断面図である。
図2】第1の実施形態に係る回転電機のロータの斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る回転電機のロータの要部平面図である。
図4】(a)は図3におけるA-A線の矢視図であって高回転時のロータコアと巻線を示す要部断面図であり、(b)は同矢視図であって低回転時のロータコアと巻線を示す要部断面図である。
図5】第2の実施形態に係る回転電機のロータの斜視図である。
図6】(a)はロータ外周から見た高回転時のロータコアと巻線を示す要部断面図であり、(b)はロータ外周から見た低回転時のロータコアと巻線を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る回転電機のロータについて図面を参照して説明する。本実施形態の回転電機は、永久磁石埋込型同期モータであり、車両に搭載される。図面に示される回転電機および回転電機のロータはいずれも模式図であって形状を誇張して表現している。
【0014】
図1に示すように、永久磁石式回転電機(以下、単に「回転電機」と称する)10は、ステータ11およびロータ12を備えている。ステータ11は円筒状のステータコア13を有している。ステータコア13の内周側に複数のスロット14が形成されている。各スロット14は、ステータコア13の内周面に開口している。各スロット14の間には、ティース15が形成されている。ティース15には、コイル16が巻回されている。ロータ12は、ステータコア13の内周面との間に隙間(ギャップ)が形成されるように設けられている。
【0015】
ステータ11の内側には、ロータ12が配置されている。図2に示すように、ロータ12は、円板状の電磁鋼板17を複数枚(例えば数十枚)積層することにより形成されるロータコア18を有している。ロータコア18の中心には、軸孔19が貫通して形成されている。軸孔19には回転軸20が貫挿されるとともに、回転軸20はロータコア18に対して固定されている。ロータコア18は回転軸20と一体的に回転可能である。回転軸20はモータハウジング(図示せず)に対して軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。なお、図2では、説明の便宜上、回転軸20の図示を省略している。
【0016】
図3に示すように、ロータコア18には、ロータコア18の周方向において隣り合う一対の磁石挿入孔21が複数対形成されている。磁石挿入孔21は、ロータコア18の磁極毎に形成され、ロータコア18を軸孔19の貫通方向に沿って貫通している。一対の磁石挿入孔21には、同極の一対の永久磁石22が各々挿入されている。複数対の永久磁石22は、対単位でロータコア18の周方向に交互に異なる磁極となるようにロータコア18に埋設されている。
【0017】
具体的には、ステータ11側がN極の永久磁石(以下、「N極磁石」と表記する)22と、ステータ11側がS極の永久磁石(以下、「S極磁石」と表記する)22と、を備えるとともに、2個のS極磁石22が隣り合って配置されて構成される第1の組と、2個のN極磁石22が隣り合って配置されて構成される第2の組とが、ロータコア18の周方向に交互に配置されるようにロータコア18に固定されている。
【0018】
詳述すると、ロータコア18には、周方向に複数(この実施形態では6個)に等分割された各仮想領域に、第1の組を成す2個のS極磁石22が挿通される磁石挿入孔21と、第2の組を成す2個のN極磁石22が挿通される磁石挿入孔21がそれぞれ2個ずつ交互に形成されている。したがって、本実施形態の回転電機10は、6極の回転電機である。なお、永久磁石22について、N極磁石とS極磁石との区別をしない場合には、永久磁石22と表記する。
【0019】
図3に示すように、磁石挿入孔21は、永久磁石22およびロータコア18によって形成され、ロータコア18の外周側に位置する空隙23と、永久磁石22およびロータコア18によって形成され、ロータコア18の内周側に位置する空隙24と有する。各空隙23は、フラックスバリア(磁束障壁)として磁石磁束を効果的にトルクに作用させる。互いに隣り合う空隙23の間には、ブリッジとしてのロータコア18の径方向外側に形成される外側ブリッジ25が形成されている。空隙23とロータコア18の外周面との間には外縁部26が形成されている。
【0020】
空隙24は、磁石挿入孔21における非磁性領域を形成する。互いに隣り合う空隙24の間には、ブリッジとしてのロータコア18の径方向内側に形成される内側ブリッジ27が形成されている。
【0021】
ロータコア18は、一対の磁石挿入孔21とロータコア18の外周面との間であって磁石挿入孔21よりも外周側の部位であるコア外周部28と、ロータコア18における磁石挿入孔21よりも内周側の部位であるコア内周部29と、を有している。外側ブリッジ25は、コア内周部29からロータコア18の外周面に向かって直線状に延びている。コア外周部28は、内側ブリッジ27および外縁部26より支持されている。内側ブリッジ27は、コア内周部29からロータコア18の外周面に向かって直線状に延びている。一対の永久磁石22は、内側ブリッジ27の延在方向に対してV字形状に配置されている。コア外周部28およびコア内周部29は、永久磁石22によって発生する主磁束成分が流れる主磁束領域に相当する。また、外側ブリッジ25および内側ブリッジ27は漏れ磁束が生じる漏れ磁束領域に相当する。
【0022】
ところで、本実施形態では、挟圧体としての金属製の巻線30が互いに隣り合う空隙23に挿通され、外側ブリッジ25に複数回巻回されている。図示はされないが、巻線30の両端が互いに固定されている。巻回された巻線30は、外側ブリッジ25に対して回転軸20の軸方向に沿って挟圧する。本実施形態の巻線30は、非磁性体であるアルミニウム合金により形成されており、巻線30の線膨張係数が電磁鋼板17よりも大きい。
【0023】
本実施形態の巻線30の横断面は円形であるが、巻線30の横断面の形状については特に制限はなく、例えば、矩形でもよい。巻線30の巻回数は、巻線30の直径にもよるが数回程度が好ましい。数回程度の巻線30の巻回により、外側ブリッジ25における軸方向の応力をより適切に設定し易くなる。また、巻線30の直径は、空隙23に挿入可能な直径であればよい。
【0024】
次に、本実施形態の回転電機10の作用について説明する。回転電機10が負荷状態で駆動される場合は、ロータ12のコイル16に電流が供給されてステータ11に回転磁界が発生し、ロータ12に回転磁界が作用する。そして、回転磁界と永久磁石22との間の磁気的な吸引力及び反発力によりロータ12が回転磁界と同期して回転する。
【0025】
ロータ12の回転数が増大し、ロータ12が高回転になるにつれて、ロータ12に生じる遠心力は増大する。ロータコア18は鉄損の増大に伴い発熱する。図4(a)に示すように、ロータ12および巻線30は、ロータ12の発熱により膨張する。巻線30の線膨張係数は、ロータコア18を構成する電磁鋼板17の線膨張係数よりも大きいので、回転軸20の軸方向における巻線30の伸びは、外側ブリッジ25の軸方向の膨張よりも大きくなる。その結果、巻線30による外側ブリッジ25に対する挟圧は緩和され、ロータコア18は、発熱に応じて軸方向に膨張する。
【0026】
ロータコア18における軸方向の膨張は、空隙23を介した漏れ磁束を増大させ、主磁束が低減される。その結果、ロータ12の高回転時における誘起電圧が抑制され、回転電機10のトルクが小さくなる。
【0027】
一方、ロータ12の低回転時には、遠心力が高回転時と比較して小さく、ロータ12における鉄損による発熱は殆どない。このため、図4(b)に示すように、ロータコア18は軸方向に殆ど膨張せず、巻線30による外側ブリッジ25に対する挟圧はほぼ保たれる。このため、ロータコア18には、巻線30により軸方向の応力が維持され、空隙23を介した漏れ磁束の増大は抑制されるので、回転電機10のトルクが大きくなる。
【0028】
本実施形態に係る回転電機10のロータ12は以下の効果を奏する。
(1)非磁性体の挟圧体が、永久磁石22とロータコア18により形成される空隙23に挿通され、ロータコア18の外側ブリッジ25を回転軸20の軸方向に沿って挟圧する。挟圧体は非磁性体であるため、挟圧体からの磁束の漏れは発生しない。ロータ12の回転が増大すると、鉄損の増大によりロータコア18が発熱するが、挟圧体がロータコア18を構成する電磁鋼板17よりも線膨張係数が大きいので、発熱による挟圧体の軸方向の膨張量はロータコア18よりも大きい。このため、挟圧体によるロータコア18の外側ブリッジ25の軸方向の応力が低減される。挟圧体の挟圧による外側ブリッジ25の軸方向の応力が低減されると、漏れ磁束が大きくなるので、高回転時における誘起電圧を抑制することができる。ロータ12の低回転時には、遠心力が高回転時と比較して小さいのでロータコア18は軸方向に殆ど膨張せず、挟圧体によるロータコア18の軸方向の応力が維持されるので、ロータコア18における漏れ磁束は抑制され、ロータ12の高トルクを得ることができる。このように、ロータ12は、可変界磁ロータであり、高回転時に低回転時の界磁と異なる界磁とすることが可能である。また、挟圧体を用いることで、高価な磁気特性可変素子を用いる必要がなく、ロータ12の製作コストを抑制することができるほか、ロータコア18の強度を低下させることがない。
【0029】
(2)挟圧体は、外側ブリッジ25に巻回される巻線30であるので、ロータコア18の外側ブリッジ25を軸方向に挟圧し易い。また、挟圧体が巻線30であることから挟圧体を空隙23に挿入し易い。
【0030】
(3)挟圧体である巻線30が外側ブリッジ25に複数回巻回されるので、ロータ12の低回転時には、ロータコア18の外側ブリッジ25における軸方向の応力が大きくなるので、漏れ磁束が抑制され、ロータ12のより高いトルクを得ることができる。なお、巻線30の直径を大きくして1回の巻回により、外側ブリッジ25を回転軸20の軸方向に挟圧するようにしてもよい。
【0031】
(4)巻線30は、アルミニウム系合金であるので、非磁性体であって電磁鋼板17よりも線膨張係数が大きい挟圧体を実現しやすい。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る永久磁石式回転電機のロータについて説明する。本実施形態に係るロータは、挟圧体の構成が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0033】
図5に示す回転電機40のロータ41では、ロータコア18に形成された空隙23に挟圧体としての金属体42が挿入され、金属体42は、外側ブリッジ25を挟圧する。金属体42は、空隙23に挿入される挿入部43と、挿入部43の両端から挿入方向と直交する方向へ延在する押さえ部44と、を有する。金属体42は、非磁性体であるアルミニウム系合金により形成されている。したがって、金属体42は、電磁鋼板17の線膨張係数よりも大きい。
【0034】
挿入部43は、角柱状の棒体であり、空隙23に挿入可能な断面積に設定されている。押さえ部44は、外側ブリッジ25と当接し、外側ブリッジ25に軸方向の応力を発生させる部位である。つまり、金属体42は、外側ブリッジ25に巻回されることなく外側ブリッジ25に軸方向の応力を発生させる。
【0035】
本実施形態では、ロータ41の回転数が増大し、ロータ12が高回転になるにつれて、ロータ41は鉄損の増大に伴い発熱する。図6(a)に示すように、ロータ41および金属体42は、ロータ41の発熱により膨張する。金属体42の線膨張係数は、ロータコア18を構成する電磁鋼板17の線膨張係数よりも大きいので、軸方向における金属体42の伸びは、外側ブリッジ25の軸方向の膨張よりも大きくなる。その結果、金属体42による外側ブリッジ25に対する挟圧は緩和され、ロータコア18は、発熱に応じて軸方向に膨張する。
【0036】
一方、ロータ41の低回転時には、高回転時と比較して鉄損によるロータ41における発熱は殆どない。このため、図6(b)に示すように、ロータコア18は軸方向に殆ど膨張せず、金属体42による外側ブリッジ25に対する挟圧はほぼ保たれる。このため、ロータコア18には、金属体42により軸方向の応力が維持され、空隙23を介した漏れ磁束の増大は抑制されるので、回転電機40のトルクが大きくなる。
【0037】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0038】
○ 上記の実施形態では、挟圧体の材料としてアルミニウム合金としたが、これに限定されない。挟圧体の材料は、例えば、亜鉛系の合金でもよく、線膨張係数が電磁鋼板よりも大きく、ブリッジに対して軸方向へ挟圧することが可能な非磁性体材料であればよく、金属材料に限定されない。
○ 上記の実施形態では、ロータコアにおける外側ブリッジを挟圧する外側ブリッジ用の挟圧体を例示して説明したが、これに限定されない。挟圧体は、外側ブリッジを挟圧する外側ブリッジ用の挟圧体だけでなく、例えば、内側ブリッジを挟圧するように内側ブリッジ用の挟圧体を設けてもよい。あるいは、内側ブリッジを挟圧する内側ブリッジ用の挟圧体のみを設けるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、挟圧体がフラックスバリアとしての空隙に挿通し、空隙において挟圧体とロータコアとの間に隙間が残るようにしたが、これに限らない。例えば、空隙を埋めるように挟圧体を空隙に挿通させてもよい。
○ 上記の実施形態では、ロータが備える永久磁石の数を12個としたが、これに限定されない。永久磁石の数は、例えば、4個、8個、16個でもよく、特に限定されない。また永久磁石の配置は、V字状の配置に限定されない。
【符号の説明】
【0039】
10、40 永久磁石式回転電機
11 ステータ
12、41 ロータ
13 ステータコア
14 スロット
15 ティース
16 コイル
17 電磁鋼板
18 ロータコア
19 軸孔
20 回転軸
21 磁石挿入孔
22 永久磁石
23 空隙(外側)
24 空隙(内側)
25 外側ブリッジ
26 外縁部
27 内側ブリッジ
28 コア外周部
29 コア内周部
30 巻線(挟圧体)
42 金属体(挟圧体)
43 挿入部
44 押さえ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6