(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007822
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、および検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01N27/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109470
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 佑允
(72)【発明者】
【氏名】芦川 真也
(72)【発明者】
【氏名】増田 俊平
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA10
2G060AE01
2G060AE26
2G060AF03
2G060AF10
2G060AG03
2G060EA04
2G060EA06
2G060EB04
2G060HA02
2G060HC15
2G060HD01
2G060HD02
2G060JA05
2G060KA14
(57)【要約】
【課題】 絶縁継手を含む管の絶縁性を検査する。
【解決手段】第1の部分P1と第2の部分P2とを有し、第1の部分P1と第2の部分P2との間に絶縁継手IFにより接続された箇所を含む導電性の管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性を検査する際に、第1の部分P1に接触するための第1の端子110と第2の部分P2に接触するための第2の端子120との間の静電容量CAを測定し、測定工程において測定された静電容量CAの値に基づいて、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性を検査する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分と第2の部分とを有し、前記第1の部分と前記第2の部分との間に絶縁継手により接続された箇所を含む導電性の管の前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査する検査装置であって、
前記第1の部分に接触するための第1の端子と、
前記第2の部分に接触するための第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間の静電容量を測定し、当該測定された静電容量の値に基づいて前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査する検査部と、を有する、検査装置。
【請求項2】
前記検査部は、前記測定された静電容量の値が、第1の静電容量値より小さいならば、前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性が低下していると判断する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記検査部は、
前記測定された静電容量の値が、第2の静電容量値以上であり、かつ、前記第2の静電容量より大きい第3の静電容量値より小さいならば、前記第1の端子と前記第1の部分の間に、および/または前記第2の端子と前記第2の部分との間に、空隙が存在すると判断し、
前記測定された静電容量の値が、前記第3の静電容量以上であり、かつ、前記第3の静電容量より大きい第1の静電容量値より小さいならば、前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性が低下していると判断する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検査部は、
前記測定された静電容量の値が、第4の静電容量値以上であり、かつ、前記第4の静電容量より大きい第5の静電容量値より小さいならば、前記第1の部分の表面のうちの前記第1の端子に接触する部分、および/または第2の部分の表面のうちの前記第2の端子に接触する部分に酸化被膜が形成されていると判断し、
前記測定された静電容量の値が、前記第5の静電容量以上であり、かつ、前記第5の静電容量より大きい第1の静電容量値より小さいならば、前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性が低下していると判断する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記検査部は、
前記測定された静電容量の値が、第2の静電容量値以上であり、かつ、前記第2の静電容量より大きい第3の静電容量値より小さいならば、前記第1の端子と前記第1の部分の間に、および/または前記第2の端子と前記第2の部分との間に、空隙が存在すると判断し、
前記測定された静電容量の値が、前記第3の静電容量値より大きい第4の静電容量値以上であり、かつ、前記第4の静電容量より大きい第5の静電容量値より小さいならば、前記第1の部分の表面のうちの前記第1の端子に接触する部分、および/または前記第2の部分の表面のうちの前記第2の端子に接触する部分に酸化被膜が形成されていると判断し、
前記測定された静電容量の値が、前記第5の静電容量以上であり、かつ、前記第5の静電容量より大きい第1の静電容量値より小さいならば、前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性が低下していると判断する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記管は、ガス管または水道管である、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記検査部は、
前記第1の端子と前記第2の端子から、前記管に交流電圧を印可し、当該交流電圧により流れる電流の値を測定し、
前記第1の端子と前記第2の端子との間の静電容量またはインピーダンスを前記測定された電流の値を用いて算出することで、前記第1の端子と前記第2の端子との間の静電容量を測定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記検査部による検査の結果を通知する通知部をさらに有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
コンピュータにより実行される、第1の部分と第2の部分とを有し、前記第1の部分と前記第2の部分との間に絶縁継手により接続された箇所を含む導電性の管の前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査するための検査方法であって、
前記第1の部分に接触するための第1の端子と前記第2の部分に接触するための第2の端子との間の静電容量を測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された静電容量の値に基づいて、前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査する検査工程と、を有する、検査方法。
【請求項10】
請求項9に記載の検査方法をコンピュータに実行させる検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査方法、および検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
異種金属の2つの鋼管を接続する際には、ガルバニック腐食が生じることを防ぐために、絶縁継手が使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
落雷などにより絶縁継手に非常に強い電圧がかかった場合、絶縁破壊が起こり、絶縁継手の絶縁性が低下することがある。
【0005】
そこで、本発明は、絶縁継手を含む管の絶縁性を検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る検査装置は、第1の部分と第2の部分とを有し、前記第1の部分と前記第2の部分との間に絶縁継手により接続された箇所を含む導電性の管の前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査する検査装置であって、前記第1の部分に接触するための第1の端子と、前記第2の部分に接触するための第2の端子と、前記第1の端子と前記第2の端子との間の静電容量を測定し、当該測定された静電容量の値に基づいて前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査する検査部と、を有する。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る検査方法は、コンピュータにより実行される、第1の部分と第2の部分とを有し、前記第1の部分と前記第2の部分との間に絶縁継手により接続された箇所を含む導電性の管の前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査するための検査方法であって、前記第1の部分に接触するための第1の端子と前記第2の部分に接触するための第2の端子との間の静電容量を測定する測定工程と、前記測定工程において測定された静電容量の値に基づいて、前記第1の部分と前記第2の部分との間の絶縁性を検査する検査工程と、を有する
【0008】
また、本発明の一実施形態に係るプログラムは、上記検査方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁継手を含む管の絶縁性を検査することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置100を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る検査装置100を示す図である。
【
図3】第1の端子110(第2の端子120)が管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触した状態を説明する図である。
【
図4】第1の端子110(第2の端子120)と管SPとの間に生じる空隙Gを説明する図である。
【
図5】第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量を説明する図である。
【
図6】第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量を説明する図である。
【
図7】検査装置100において実行される処理動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<検査装置100>
図1、2は、本発明の一実施形態に係る検査装置100を示す図である。検査装置100は、第1の部分P1と第2の部分P2とを有し、第1の部分P1と第2の部分P2との間に絶縁継手IFにより接続された箇所を含む管SPの絶縁性を検査する。管SPは、導電性の管であり、例えば、鋼管(例えば、ガス管、水道管)である。
【0012】
図1に示した例では、管SPは、第1の部分P1と第2の部分P2と1つの絶縁継手IFを有しており、この1つの絶縁継手IFが第1の部分P1と第2の部分P2を接続している。管SPは、
図2に示すように、第1の部分P1と第2の部分P2との間に第1の部分P1、第2の部分P2以外の他の部分OPを有し、2以上の絶縁継手IFを有していても良く、この2以上の絶縁継手IFの各々が、第1の部分P1と他の部分OPや、第2の部分P2と他の部分OP、他の部分OP同士を接続するようにしても良い。
【0013】
検査装置100は、第1の端子110と、第2の端子120と、検査部130と、を有する。
【0014】
第1の端子110は、
図1、2に示すように、管SPの第1の部分P1に接触するための端子であり、第2の端子120は、管SPの第1の部分P1に接触するための端子である。第1の端子110(第2の端子120)は、例えば、器具(
図3の示した端子固定器具)により、管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触した状態に保たれる。
【0015】
検査部130は、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量(つまり、第1の端子110が接触した管SPの第1の部分P1と第2の端子120が接触した管SPの第2の部分P2との間の静電容量)CAを測定し、当該測定された静電容量CAの値に基づいて管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性を検査する。検査部130は、例えば、所定の時間間隔で、上記処理(静電容量CAの測定および管SPの絶縁性の検査)を行う。
【0016】
検査部130は、例えば、第1の端子110、第2の端子120から、菅SPに交流電圧を印可し、この交流電圧により発生する電流を測定する。検査部130は、例えば、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量またはインピーダンスをこの測定された電流を用いて算出することで、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAを測定する。
【0017】
第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAの値が大きいほど、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性は大きい。そこで、検査部130は、例えば、測定された静電容量CAの値が、第1の静電容量値C1より小さいならば、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性(つまり、絶縁継手IFの絶縁性)が低下していると判断する。ここで、第1の静電容量値C1は、適宜設定される。
【0018】
以上のように、本実施形態では、絶縁継手を含む管の絶縁性を検査することが可能である。特に、本実施形態では、下記で詳述するように、第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に接触不良が生じているのか否か(つまり、下記で詳述する空隙Gの発生や酸化被膜の形成が生じているのか否か)を判別した上で、絶縁継手を含む管の絶縁性を検査することが可能である。
【0019】
なお、第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に接触不良が生じていないのであれば、第1の端子110と第2の端子120により管SPに直流電圧を印可し、第1の端子110と第2の端子120の間の抵抗値を測定することでも、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の検査をすることができる。第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に接触不良が生じていない場合、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が正常であれば、第1の端子110と第2の端子120の間(つまり、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2の間)は導通していないが、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下すると、第1の端子110と第2の端子120の間は導通し始め、第1の端子110と第2の端子120の間の抵抗値が低下する。
【0020】
しかしながら、第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に接触不良が生じた場合、上記の直流電圧を印可する方法では、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の検査をすることができない。第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に接触不良が生じた場合、この接触不良のため、第1の端子110と第2の端子120の間は導通していない状態が保たれ、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下したとしても、第1の端子110と第2の端子120の間の抵抗値が低下せず、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の低下を検知することができない。
【0021】
<空隙の発生による静電容量値の低下>
第1の端子110(第2の端子120)は、例えば、
図3に示すような端子固定器具を用いて、管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触した状態に保たれる。
図3に示すように、保護カバーなどの保護層により管SPが覆われている場合、例えば、管SPの第1の部分P1(第2の部分SP2)を覆う保護層の一部を除去し、この保護層が除去された部分において、第1の端子110(第2の端子120)を、管SPの第1の部分P1(第2の部分SP2)に接触させる。
【0022】
図3に示された端子固定器具では、第1の端子110(第2の端子120)は、ばねSの復元力により管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)に押し付けられる。よって、
図3に示された端子固定器具では、ばねSが損傷し、ばねSの復元力により第1の端子110(第2の端子120)を管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)に押し付けることができない場合、
図4に示すように、第1の端子110(第2の端子120)が、管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触せず、第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に、空隙Gが生じることがある。
【0023】
第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に空隙Gが生じた場合、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAは、
図5に示すように、絶縁継手IFの静電容量CFと、この空隙Gによる静電容量CGと、が直列に接続されたものになる。第1の端子110(第2の端子120)の表面のうちの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触する部分の面積がπmm
2であり、空隙Gが数mm程度であるとすると、空隙Gによる静電容量CGの値は、数pFであり、正常であるときの絶縁継手IFの静電容量CFの値(数百pF(例えば、300pF))に比べてかなり小さい(CG≪CF)。
【0024】
よって、第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に空隙Gが生じた場合、絶縁継手IFの静電容量CFが正常であれば、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAの値は、空隙Gによる静電容量CGの値とほぼ同じ値になる(CA≒CG)。このため、第1の端子110(第2の端子120)と管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)との間に空隙Gが生じた場合、絶縁継手IFの静電容量CFが正常であったとしても、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAの値は、正常であるときの絶縁継手IFの静電容量CFの値に比べてかなり小さくなる(CA≪CF)。
【0025】
そこで、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第2の静電容量値C2以上であり、かつ、第3の静電容量値C3より小さいならば、第1の端子110と管SPの第1の部分P1の間に、および/または第2の端子120と管SPの第2の部分P2との間に、空隙Gが存在すると判断するようにすると良い。ここで、第3の静電容量値C3は、第1の静電容量値C1より小さく、第2の静電容量値C2より大きい(C2<C3<C1)。第2の静電容量値C2、第3の静電容量値C3は、生じ得る空隙Gの大きさや第1の端子110(第2の端子120)の表面のうちの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触する部分の面積などの空隙Gによる静電容量CGの値を決定するパラメータに基づいて適宜設定される。
【0026】
そして、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第3の静電容量C3以上であり、かつ、第1の静電容量値C1より小さいならば、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していると判断するようにすると良い。
【0027】
このようにすることで、検査部130により測定された静電容量CAの低下が生じたときに、この静電容量の低下が、絶縁継手IFの静電容量CFの低下(つまり、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の低下)によるものであるのか、空隙Gの発生によるものであるのかを判別した上で、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の検査をすることが可能になる。
【0028】
<酸化被膜の形成による静電容量値の低下>
管SPの表面は、空気に触れることで、酸化被膜が形成される。管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)の表面のうちの第1の端子110(第2の端子120)に接触する部分に酸化被膜が形成された場合、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAは、
図6に示すように、絶縁継手IFの静電容量CFと、この酸化被膜による静電容量COと、が直列に接続されたものになる。第1の端子110(第2の端子120)の表面のうちの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触する部分の面積がπmm
2であり、酸化被膜の厚さが数十nm程度であるとすると、酸化被膜による静電容量COの値は、数pFであり、正常であるときの絶縁継手IFの静電容量CFの値(数百pF(例えば、300pF))に比べてかなり小さい(CO≪CF)。
【0029】
よって、管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)の表面のうちの第1の端子110(第2の端子120)が接する部分に酸化被膜が形成された場合、絶縁継手IFの静電容量CFが正常であれば、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAの値は、酸化被膜による静電容量COの値とほぼ同じ値になる(CA≒CO)。このため、管SPの第1の部分P1(第2の部分P2)の表面のうちの第1の端子110(第2の端子120)が接する部分に酸化被膜が形成された場合、絶縁継手IFの静電容量CFが正常であったとしても、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAの値は、正常であるときの絶縁継手IFの静電容量CFの値に比べてかなり小さくなる(CA≪CF)。
【0030】
そこで、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第4の静電容量値C4以上であり、かつ、第5の静電容量値C5より小さいならば、第1の部分P1の表面のうちの第1の端子110に接触する部分、および/または第1の部分P2の表面のうちの第2の端子120に接触する部分に酸化被膜が形成されていると判断するようにすると良い。第5の静電容量値C5は、第1の静電容量値C1より小さく、第4の静電容量値C4より大きい(C4<C5<C1)。第4の静電容量値C4、第5の静電容量値C5は、第1の部分P1(第2の部分P2)の表面のうちの第1の端子110(第2の端子120)に接触する部分に形成され得る酸化被膜の厚さや第1の端子110(第2の端子120)の表面のうちの第1の部分P1(第2の部分P2)に接触する部分の面積などの酸化被膜による静電容量COの値を決定するパラメータに基づいて適宜設定される。
【0031】
そして、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第5の静電容量C5以上であり、かつ、第1の静電容量値C1より小さいならば、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していると判断するようにすると良い。
【0032】
このようにすることで、検査部130により測定された静電容量CAの低下が生じたときに、この静電容量の低下が、絶縁継手IFの静電容量CFの低下(つまり、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の低下)によるものであるのか、酸化被膜の形成によるものであるのかを判別した上で、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の検査をすることが可能になる。
【0033】
<空隙の発生と酸化被膜の形成の判別>
空気の比誘電率をε1とし、酸化被膜の比誘電率をε2とすると、ε1<ε2である。よって、空隙Gが数mm程度であり、酸化被膜の厚さが数十nm程度であるとすると、空隙Gによる静電容量CGの値は、酸化被膜による静電容量COの値より小さい(CG<CO)。そこで、第3の静電容量値C3は、第4の静電容量値C4より小さい値にすると良い(C3<C4)。
【0034】
そして、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第2の静電容量値C2以上であり、かつ、第3の静電容量値C3より小さいならば、第1の端子110と第1の部分P1の間に、および/または第2の端子120と第2の部分P2との間に、空隙Gが存在すると判断し、測定された静電容量CAの値が、第4の静電容量値C4以上であり、かつ、第5の静電容量値C5より小さいならば、第1の部分P1の表面のうちの第1の端子110に接触する部分、および/または第2の部分P2の表面のうちの第2の端子120に接触する部分に酸化被膜が形成されていると判断するようにすると良い。このとき、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第5の静電容量C5以上であり、かつ、第1の静電容量値C1より小さいならば、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していると判断するようにすると良い。
【0035】
このようにすることで、検査部130により測定された静電容量CAの低下が生じたときに、この静電容量の低下が、絶縁継手IFの静電容量CFの低下(つまり、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の低下)によるものであるのか、空隙Gの発生によるものであるのか、酸化被膜の形成によるものであるのかを判別した上で、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性の検査をすることが可能になる。
【0036】
空隙Gの発生や酸化被膜の形成以外の異常が検査装置100に発生し、測定された静電容量CAの値が、上記の範囲以外の値を取る可能性がある。そこで、例えば、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第3の静電容量値C3以上であり、かつ、第4の静電容量値C4より小さいならば、空隙Gの発生や酸化被膜の形成以外の異常が検査装置100に発生したと判断するようにすると良い。同様に、検査部130は、測定された静電容量CAの値が、第2の静電容量値C2より小さいならば、空隙Gの発生や酸化被膜の形成以外の異常が検査装置100に発生したと判断するようにすると良い。
【0037】
<通知部140>
検査装置100は、検査部130による検査の結果を通知する通知部140をさらに有するようにしても良い。通知部140は、例えば、ディスプレイなどの情報を表示する表示装置や、プリンタなどの情報を印刷した物を出力する印刷装置、スピーカなどの情報に関する音声を出力する音声出力装置である。
【0038】
通知部140は、例えば、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していると検査部130が判断したならば、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していることを通知する。また、通知部140は、例えば、第1の端子110と第1の部分P1の間に、および/または第2の端子120と第2の部分P2との間に、空隙Gが存在すると検査部130が判断したならば、空隙Gが存在することを通知する。また、通知部140は、例えば、第1の部分P1の表面のうちの第1の端子110に接触する部分、および/または第2の部分P2のうちの第2の端子120に接触する部分に酸化被膜が形成されていると検査部130が判断したならば、酸化被膜が形成されていることを通知する。
【0039】
また、通知部140は、例えば、検査部130が空隙Gの発生や酸化被膜の形成以外の異常が検査装置100に発生したと判断したならば、検査装置100に異常が発生したことを通知する。
【0040】
<検査装置100において実行される処理動作>
図7は、検査装置100において実行される処理動作の一例を示す図である。
図7に示した処理動作は、例えば、所定の時間間隔で実行される。
【0041】
検査部130が、第1の端子110と第2の端子120との間の静電容量CAを測定する(ステップS701)。測定された静電容量CAの値が第1の静電容量値C1以上であるならば(ステップS702、YES)、処理を終了する。
【0042】
測定された静電容量CAの値が第1の静電容量値C1より小さく(ステップS702、NO)、第5の静電容量値C5以上であるならば(ステップS703、YES)、検査部130が、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していると判断し(ステップS704)、通知部140が、管SPの第1の部分P1と第2の部分P2との間の絶縁性が低下していることを通知する(ステップS705)。
【0043】
測定された静電容量CAの値が第5の静電容量値C5より小さく(ステップS703、NO)、第4の静電容量値C4以上であるならば(ステップS706、YES)、検査部130が、第1の部分P1の表面のうちの第1の端子110に接触する部分、および/または第2の部分P2の表面のうちの第2の端子120に接触する部分に酸化被膜が形成されていると判断し(ステップS707)、通知部140が、酸化被膜が形成されていることを通知する(ステップS708)。
【0044】
測定された静電容量CAの値が第4の静電容量値C4より小さく(ステップS706、NO)、第3の静電容量値C3以上であるならば(ステップS709、YES)、検査部130が、空隙Gの発生や酸化被膜の形成以外の異常が検査装置100に発生したと判断し(ステップS710)、通知部140が、検査装置100に異常が発生したことを通知する(ステップS711)。
【0045】
測定された静電容量CAの値が第3の静電容量値C3より小さく(ステップS709、NO)、第2の静電容量値C2以上であるならば(ステップ712、YES)、検査部130が、第1の端子110と第1の部分P1の間に、および/または第2の端子120と第2の部分P2との間に、空隙Gが存在すると判断し(ステップS713)、通知部140が、空隙Gが存在することを通知する(ステップS714)。
【0046】
測定された静電容量CAの値が第2の静電容量値C2より小さいならば(ステップS712、NO)、検査部130が、空隙Gの発生や酸化被膜の形成以外の異常が検査装置100に発生したと判断し(ステップS710)、通知部140が、検査装置100に異常が発生したことを通知する(ステップS711)。
【0047】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 検査装置
110 第1の端子
120 第2の端子
130 検査部
140 通知部