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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025078222
(43)【公開日】2025-05-20
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20250513BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20250513BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20250513BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/42 088
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190640
(22)【出願日】2023-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 智子
(72)【発明者】
【氏名】仲矢 有紀
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG00
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QB14
4J034QC01
(57)【要約】
【課題】植物由来の原料を含む組成物から得られ所望の物性を有するポリウレタンフォームを提供できる。
【解決手段】ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られる。ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスが95以上である。ポリオールが植物由来ポリオールを含む。ポリウレタンフォーム用組成物において、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、植物由来ポリオールは、5質量部以上50質量部以下である。ポリウレタンフォームの密度(JIS K 7222)は、50kg/m以上65kg/m以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られ、
前記ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスが95以上であり、
前記ポリオールが植物由来ポリオールを含み、
前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、前記植物由来ポリオールは、5質量部以上50質量部以下であり、
密度(JIS K 7222)が50kg/m以上65kg/m以下である、ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)が90N以下である、請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
反発弾性(JIS K 6400-3:2011)が15%以下である、請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
密度(JIS K 7222)が50kg/m以上65kg/m以下であり、
硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)が90N以下であり、
反発弾性(JIS K 6400-3:2011)が15%以下であり
バイオマス度が5%以上30%以下である、ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタン原料から形成されるポリウレタンフォームが開示されている。ポリオールは、石油由来の原料を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-35617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境保護等の観点から、ポリウレタンフォームの原料として植物由来の原料を用いることが求められている。しかしながら、植物由来の原料を用いることによって所望の物性が得られなくなる懸念がある。
本開示は、植物由来の原料を含む組成物から得られ所望の物性を有するポリウレタンフォームを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られ、
前記ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスが95以上であり、
前記ポリオールが植物由来ポリオールを含み、
前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、前記植物由来ポリオールは、5質量部以上50質量部以下であり、
密度(JIS K 7222)が50kg/m以上65kg/m以下である、ポリウレタンフォーム。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、植物由来の原料を含む組成物から得られ所望の物性を有するポリウレタンフォームを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔1〕ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られ、
前記ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスが95以上であり、
前記ポリオールが植物由来ポリオールを含み、
前記ポリオールの全量を100質量部とした場合に、前記植物由来ポリオールは、5質量部以上50質量部以下であり、
密度(JIS K 7222)が50kg/m以上65kg/m以下である、ポリウレタンフォーム。
〔2〕硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)が90N以下である、〔1〕に記載のポリウレタンフォーム。
〔3〕反発弾性(JIS K 6400-3:2011)が15%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載のポリウレタンフォーム。
〔4〕密度(JIS K 7222)が50kg/m以上65kg/m以下であり、
硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)が90N以下であり、
反発弾性(JIS K 6400-3:2011)が15%以下であり
バイオマス度が5%以上30%以下である、ポリウレタンフォーム。
【0008】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0009】
1.第1実施形態のポリウレタンフォーム
第1実施形態のポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られる。ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、95以上である。ポリオールは、植物由来ポリオールを含む。ポリオールの全量を100質量部とした場合に、植物由来ポリオールは、5質量部以上50質量部以下である。ポリウレタンフォームの密度(JIS K 7222)は、50kg/m以上65kg/m以下である。
【0010】
1-1.植物由来ポリオール
植物由来ポリオールは、例えば、ヒマシ油系ポリオール、トウモロコシ油系ポリオール、大豆油系ポリオール、カシュー油系ポリオール、パーム油系ポリオール、パーム核油系ポリオール、ヤシ油系ポリオール、オリーブ油系ポリオール、綿実油系ポリオール、サフラワー油系ポリオール、ごま油系ポリオール、ひまわり油系ポリオール、アマニ油系ポリオールからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。植物由来ポリオールは、特にヒマシ油系ポリオールであることが好ましい。
【0011】
ヒマシ油系ポリオールは、ヒマシ油由来のポリオールである。本開示の「ヒマシ油」は、未変性ヒマシ油であることが好ましい。未変性ヒマシ油は、例えば、トウダイグサ科のトウゴマの種子から抽出し、精製したものである。未変性ヒマシ油は、脂肪酸とグリセリンとのエステルである。未変性ヒマシ油は、リシノレイン酸を主成分とし、その他の成分として、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸などを含有している。本開示の「ヒマシ油」には、二塩基酸等による架橋(変性)処理が施された変性ヒマシ油が含まれていてもよい。本開示の「ヒマシ油」には、脱水処理が施されて乾性油とされた脱水ヒマシ油が含まれていてもよい。
【0012】
植物由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、植物度を高める観点から、5質量部以上であり、10質量部以上が好ましく、14質量部以上がより好ましい。植物由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、低反発性を確保する観点から、50質量部以下であり、18質量部以下が好ましく、16質量部以下がより好ましい。これらの観点から、植物由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、5質量部以上50質量部以下であり、10質量部以上18質量部以下が好ましく、14質量部以上16質量部以下がより好ましい。ここで、植物由来ポリオールの植物度とは、原材料のうち植物由来の材料が占める割合である。
【0013】
植物由来ポリオールの水酸基価は、反応促進の観点から、110mgKOH/g以上が好ましく、130mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が更に好ましい。植物由来ポリオールの水酸基価は、発泡時の発熱抑制の観点から、190mgKOH/g以下であり、180mgKOH/g以下が好ましく、170mgKOH/g以下がより好ましい。これらの観点から、植物由来ポリオールの水酸基価は、110mgKOH/g以上190mgKOH/g以下であり、130mgKOH/g以上180mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以上170mgKOH/g以下がより好ましい。
【0014】
植物由来ポリオールの重量平均分子量は、500以上3000以下が好ましく、800以上2000以下がより好ましく、900以上1000以下が更に好ましい。
【0015】
植物由来ポリオールの官能基数は、2以上6以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。
【0016】
1-2.石油由来ポリオール
ポリオールは、石油由来ポリオールを含有することが好ましい。石油由来ポリオールは、特に限定されない。石油由来ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエステルポリオール等が例示される。
【0017】
ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、及びシュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールからなる群より選ばれることが好ましい。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、複数種類を併用することが好ましい。例えば、ポリエーテルポリオールは、3種類(第1ポリエーテルポリオール、第2ポリエーテルポリオール、第3ポリエーテルポリオール)を併用することが好ましい。
この場合、使用する第1ポリエーテルポリオールの水酸基価は、150mgKOH/g以上300mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以上250mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以上230mgKOH/g以下が更に好ましい。第1ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、600以上900以下が好ましく、650以上850以下がより好ましく、700以上800以下が更に好ましい。第1ポリエーテルポリオールの官能基数は、2以上6以下が好ましく、2又は3がより好ましく、3が更に好ましい。
使用する第2ポリエーテルポリオールの水酸基価は、40mgKOH/g以上70mgKOH/g以下が好ましく、45mgKOH/g以上65mgKOH/g以下がより好ましく、50mgKOH/g以上60mgKOH/g以下が更に好ましい。第2ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、1500以上2500以下が好ましく、1800以上2200以下がより好ましく、1900以上2100以下が更に好ましい。第2ポリエーテルポリオールの官能基数は、2以上6以下が好ましく、2又は3がより好ましく、2が更に好ましい。
使用する第3ポリエーテルポリオールの水酸基価は、30mgKOH/g以上60mgKOH/g以下が好ましく、35mgKOH/g以上50mgKOH/g以下がより好ましく、40mgKOH/g以上45mgKOH/g以下が更に好ましい。第3ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、3500以上4500以下が好ましく、3800以上4200以下がより好ましく、3900以上4100以下が更に好ましい。第3ポリエーテルポリオールの官能基数は、2以上6以下が好ましく、2又は3がより好ましく、3が更に好ましい。
【0019】
ポリマーポリオールは、例えば、ベースポリオールとしての官能基数2又は3のポリエーテルポリオール中でアクリロニトリル及びスチレン等のビニルモノマーをグラフト共重合させてなるポリマーポリオールを好適に用いることができる。上記ベースポリオールとしては、例えば、AO単位(アルキレンオキサイド単位)としてPO単位(プロピレンオキサイド単位)とEO単位(エチレンオキサイド単位)を含むポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0020】
ポリエステルポリオールは、例えば、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、アジペート系ポリエステルポリオール等を用いることが好ましい。ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオールは、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を開環付加重合させて得たポリエステルポリオールを用いることが好ましい。アジペート系ポリエステルポリオールは、例えば、多官能カルボン酸と多官能ヒドロキシ化合物との重縮合によって得られるポリエステルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールは、ポリウレタンフォームのセルを微細化及び均一化する作用も有している。
【0021】
石油由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、所望の物性(硬さ、反発性等)を得る観点から、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上が更に好ましい。石油由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、所望の物性を得る観点から、95質量部以下が好ましく、92質量部以下がより好ましく、90質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、石油由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、60質量部以上95質量部以下が好ましく、70質量部以上92質量部以下がより好ましく、80質量部以上90質量部以下が更に好ましい。
【0022】
1-3.イソシアネート
イソシアネートは、イソシアネート基を2以上有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、ポリウレタンフォーム用のものが使用可能である。イソシアネートは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。イソシアネートは、芳香族系、脂肪族系、脂環族系のイソシアネート化合物、及びこれらの変性物からなる群より選ばれることが好ましい。
【0023】
芳香族系イソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシレンジイソジアネート(TMXDI)、トリジンイソシアネート(TODI)等が挙げられる。脂肪族系イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、及びリジントリイソシアネート(LTI)からなる群より選ばれることが好ましい。脂環族系イソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、及び水添化MDI(H12MDI)からなる群より選ばれることが好ましい。変性イソシアネート化合物は、イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、及びイソシアネート基末端プレポリマーからなる群より選ばれることが好ましい。
【0024】
イソシアネートは、例えば芳香族系イソシアネート化合物を用いることが好ましい。芳香族系イソシアネート化合物の中でも、反応性を考慮して(ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)よりも反応性が高いため)、トルエンジイソシアネート(TDI)を用いることがより好ましい。トルエンジイソシアネート(TDI)は、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、及び2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)と2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)との混合物からなる群より選ばれることが好ましい。2,4-TDIと2,6-TDIとの混合物の混合比(2,4-TDI/2,6-TDI、質量比)は、好ましくは50/50-90/10であり、より好ましくは75/25-85/15である。
【0025】
ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、機械的強度(引張り強さ)や硬さを確保する観点から、95以上であり、98以上が好ましく、100以上がより好ましい。ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、硬くなりすぎることを抑制するとともに反応熱の発生を抑制する観点から、115以下が好ましく、110以下がより好ましく、105以下が更に好ましい。これらの観点から、ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、95以上であり、95以上115以下が好ましく、98以上110以下がより好ましく、100以上105以下が更に好ましい。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0026】
イソシアネートの含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、20質量部以上60質量部以下が好ましく、25質量部以上55質量部以下がより好ましく、30質量部以上40質量部以下が更に好ましい。
【0027】
1-4.発泡剤
発泡剤は、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独又は組み合わせて使用できる。発泡剤としては、特に水が好ましい。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。
【0028】
発泡剤としての水の量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、0.6質量部以上2.4質量部以下が好ましく、0.8質量部以上2.2質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上2.0質量部以下が更に好ましい。
【0029】
1-5.触媒
触媒は、主としてポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を促進するためのものである。触媒は、ポリウレタンフォームに通常使用される公知の触媒、例えば、トリエチレンジアミン、6-ジメチルアミノ-1-ヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N´,N´-トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸第一錫、スタナスオクトエート等の有機金属化合物、酢酸塩、及びアルカリ金属アルコラートからなる群より選ばれることが好ましい。
【0030】
触媒としてのトリエチレンジアミンの含有量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、0.6質量部以上2.0質量部以下が好ましく、0.8質量部以上1.8質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上1.5質量部以下が更に好ましい。
【0031】
1-6.整泡剤
ポリオール含有組成物は、整泡剤を含むことが好ましい。整泡剤は、具体的には、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、ポリオキシアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン、シリコーン-グリース共重合体等のシリコーン系化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。これらの整泡剤は単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0032】
整泡剤の配合量は、特に限定されない。整泡剤の配合量は、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、0.5質量部以上3.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上2.5質量部以下が更に好ましい。
【0033】
1-7.その他の添加剤
ポリウレタンフォーム用組成物には、適宜その他の添加剤、例えば架橋剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、脱泡剤、相溶化剤、着色剤、安定剤、抗菌剤、防カビ剤、脱臭剤、消臭剤、芳香剤、香料等を配合することができる。架橋剤は、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、及びトリメチロールプロパン等の短鎖ジオール系の架橋剤からなる群より選ばれることが好ましい。
【0034】
1-8.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームは、上記ポリウレタンフォーム用組成物を攪拌混合してポリオールとポリイソシアネートを反応させる公知の発泡方法によって製造することができる。発泡方法には、スラブ発泡とモールド発泡とがあり、スラブ発泡が好ましい。スラブ発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。他方、モールド発泡は、混合したポリウレタン樹脂組成物をモールド(成形型)に充填してモールド内で発泡させる方法である。
【0035】
1-9.ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
【0036】
(1)密度(見掛け密度)
ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)は、50kg/m以上65kg/m以下であり、52kg/m以上60kg/m以下が好ましく、54kg/m以上56kg/m以下がより好ましい。
【0037】
(2)硬さ(40%ILD硬さ)
ポリウレタンフォームの40%ILD硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)は、68N以上90N以下が好ましく、70N以上80N以下がより好ましく、72N以上75N以下が更に好ましい。
【0038】
(3)反発弾性
ポリウレタンフォームの反発弾性(JIS K 6400-3:2011)は、6%以上15%以下が好ましく、7%以上13%以下がより好ましく、8%以上10%以下が更に好ましい。
【0039】
(4)圧縮残留ひずみ
ポリウレタンフォームの50%圧縮時の圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4 4.5.2 A法)は、1.5%以上3.5%以下が好ましく、2.0%以上3.2%以下がより好ましく、2.5%以上3.0%以下が更に好ましい。
【0040】
1-10.ポリウレタンフォームのバイオマス度
ポリウレタンフォームのバイオマス度は、5%以上30%以下が好ましく、8%以上25%以下がより好ましく、10%以上20%以下が更に好ましい。ポリウレタンフォームのバイオマス度は、以下の(1)式を用いて算出できる。
【0041】
【数1】

【0042】
式(1)中、「植物由来ポリオールの植物度」とは、原材料のうち植物由来の材料が占める割合である。式(1)中、「ポリウレタンフォーム用組成物の全添加部数」とは、ポリウレタンフォーム用組成物の全ての原材料の合計の添加部数である。全ての原材料とは、植物由来ポリオール、石油由来ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒等である。「植物由来ポリオールの添加部数」「ポリウレタンフォーム用組成物の全添加部数」の単位は、質量部である。「植物由来ポリオールの植物度」の単位は、%である。
【0043】
1-11.ポリウレタンフォームの用途
ポリウレタンフォームは、例えば、枕、マットレス、布団等の寝具等に用いられる。
【0044】
1-12.第1実施形態の効果
SDGs(持続可能な開発目標)、カーボンニュートラル等の観点より、植物由来の原料を用いたポリウレタンフォームが求められている。しかし、石油由来の原料から植物由来の原料に切り替えると、不純物等の影響により反応性や物性に影響が及んでしまう。
【0045】
そこで、第1実施形態のポリウレタンフォームでは、上記の構成とすることによって、植物由来の原料を含む組成物から得られ所望の物性(具体的には、低反発性等)を有するポリウレタンフォームを提供できる。
【0046】
2.第2実施形態のポリウレタンフォーム
第2実施形態のポリウレタンフォームの密度(JIS K 7222)は、50kg/m以上65kg/m以下である。ポリウレタンフォームの硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)は、90N以下である。ポリウレタンフォームの反発弾性(JIS K 6400-3:2011)は、15%以下である。ポリウレタンフォームのバイオマス度は、5%以上30%以下である。
【0047】
ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られることが好ましい。ポリオールは、石油由来ポリオールを含有することが好ましい。
【0048】
2-1.第1実施形態のポリウレタンフォームの記載の引用
ポリウレタンフォーム用組成物において、「石油由来ポリオール」「発泡剤」「触媒」「整泡剤」「その他の添加剤」「ポリウレタンフォームの製造方法」「ポリウレタンフォームの用途」については、「第1実施形態のポリウレタンフォーム」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。すなわち、「第1実施形態のポリウレタンフォーム」の項目で説明した「石油由来ポリオール」「発泡剤」「触媒」「整泡剤」「その他の添加剤」「ポリウレタンフォームの製造方法」「ポリウレタンフォームの用途」をそのまま適用する。
【0049】
2-1-2.植物由来ポリオール
植物由来ポリオールについては、「第1実施形態のポリウレタンフォーム」の項目で説明した「植物由来ポリオール」における含有量の記載以外の記載をそのまま適用する。
【0050】
植物由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、植物度を高める観点から、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、14質量部以上が更に好ましい。植物由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、低反発性を確保する観点から、50質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、16質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、植物由来ポリオールは、ポリオールの全量を100質量部とした場合に、5質量部以上50質量部以下が好ましく、10質量部以上18質量部以下がより好ましく、14質量部以上16質量部以下が更に好ましい。
【0051】
2-1-3.イソシアネート
イソシアネートについては、「第1実施形態のポリウレタンフォーム」の項目で説明した「イソシアネート」におけるイソシアネートインデックスの記載以外の記載をそのまま適用する。
【0052】
ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、機械的強度(引張り強さ)や硬さを確保する観点から、95以上が好ましく、98以上がより好ましく、100以上が更に好ましい。ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、硬くなりすぎることを抑制するとともに反応熱の発生を抑制する観点から、115以下が好ましく、110以下がより好ましく、105以下が更に好ましい。これらの観点から、ポリウレタンフォーム用組成物のイソシアネートインデックスは、95以上115以下が好ましく、98以上110以下がより好ましく、100以上105以下が更に好ましい。
【0053】
2-2.ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
【0054】
(1)密度(見掛け密度)
ポリウレタンフォームの密度(JIS K7222:2005)は、50kg/m以上65kg/m以下であり、52kg/m以上60kg/m以下が好ましく、54kg/m以上56kg/m以下がより好ましい。
【0055】
(2)硬さ(40%ILD硬さ)
ポリウレタンフォームの40%ILD硬さ(JIS K 6400-2 6.4 A法)は、90N以下であり、68N以上80N以下が好ましく、70N以上78N以下がより好ましく、72N以上75N以下が更に好ましい。
【0056】
(3)反発弾性
ポリウレタンフォームの反発弾性(JIS K 6400-3:2011)は、15%以下であり、6%以上15%以下が好ましく、7%以上13%以下がより好ましく、8%以上10%以下が更に好ましい。
【0057】
(4)圧縮残留ひずみ
ポリウレタンフォームの50%圧縮時の圧縮残留ひずみ(JIS K6400-4.5.2 A法)は、1.5%以上3.5%以下が好ましく、2.0%以上3.2%以下がより好ましく、2.5%以上3.0%以下が更に好ましい。
【0058】
2-3.ポリウレタンフォームのバイオマス度
ポリウレタンフォームのバイオマス度は、5%以上30%以下であり、8%以上25%以下が好ましく、10%以上20%以下がより好ましい。ポリウレタンフォームのバイオマス度は、上記の(1)式を用いて算出できる。
【0059】
2-3.第2実施形態の効果
第2実施形態のポリウレタンフォームは、上記の構成とすることによって、植物由来の原料を含む組成物から得られ所望の物性(具体的には、低反発性等)を有するポリウレタンフォームを提供できる。
【実施例0060】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0061】
1.ポリウレタンフォームの作製
表1に示す配合割合で、実施例1-8及び比較例1-4のポリウレタンフォームを作製した。表1において、配合割合はポリオールを100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1におけるポリウレタンフォームの原料の詳細を以下に示す。
・ポリオール1…ポリエーテルポリオール、品名:GP-750K(三洋化成社製)、OHV:220mgKOH/g、官能基数:3、重量平均分子量:750
・ポリオール2…ポリエーテルポリオール、品名:PP-2000NS(三洋化成社製)、OHV:56.1mgKOH/g、官能基数:2、重量平均分子量:2000
・ポリオール3…ポリエーテルポリオール、品名:F-3140(万華化学ジャパン社製)、OHV:41mgKOH/g、官能基数:3、重量平均分子量:4000、EO含有率:80%
・ポリオール4…ヒマシ油系ポリオール、品名:DR(豊国製油社製)、OHV:160mgKOH/g、官能基数:2.7、重量平均分子量:947、植物度:100%
・ポリオール5…ヒマシ油系ポリオール、品名:H-30(伊藤製油社製)、OHV:160mgKOH/g、官能基数:2.7、重量平均分子量:947、植物度:100%
・触媒…アミン触媒、品名:DABCO 33LSI(エボニック・ジャパン社製)、OHV:982mgKOH/g
・整泡剤…シリコン整泡剤、品名:B-8239F(エボニック・ジャパン社製)
・添加剤…架橋剤、品名:DPG(ADEKA社製)、OHV:836mgKOH/g
・発泡剤…水
・イソシアネート…トルエンジイソシアネート(TDI)、品名:コスモネートT-80(三井化学社製)、2,4-TDIと2,6-TDIとが80:20(モル比)の割合からなる
【0064】
2.物性評価
(2-1)密度(見掛け密度)
密度は、JIS K7222:2005を用いて測定した。
密度の評価は、以下の基準とした。
「A」:50kg/m以上65kg/m以下
「B」:50kg/m未満、又は65kg/mより大きい
【0065】
(2-2)硬さ(40%ILD硬さ)
硬さ(40%ILD硬さ)は、JIS K 6400-2 6.4 A法を用いて測定した。
硬さの評価は、以下の基準とした。
「A」:90N以下
「B」:90Nより大きい
【0066】
(2-3)反発弾性
反発弾性は、JIS K6400-3:2011を用いて測定した。
反発弾性の評価は、以下の基準とした。
「A」:15%以下
「B」:15%より大きい
【0067】
(2-4)圧縮残留ひずみ
50%圧縮時の圧縮残留ひずみは、JIS K6400-4 4.5.2: A法を用いて測定した。
【0068】
(2-5)バイオマス度
バイオマス度は、上記(1)式を用いて算出した。
【0069】
3.結果
結果を表1に併記する。
表1に示すように、実施例1-8のポリウレタンフォームでは、ポリウレタンフォーム用組成物に植物由来ポリオール(ヒマシ油系ポリオール)を含んでいるが、密度の評価が「A」であり、反発弾性の評価が「A」であった。比較例1のポリウレタンフォームでは、ポリウレタンフォーム用組成物に植物由来ポリオール(ヒマシ油系ポリオール)を含んでおらず、密度の評価が「A」であり、反発弾性の評価が「A」であった。したがって、実施例1-8では、ポリウレタンフォーム用組成物に植物由来ポリオール(ヒマシ油系ポリオール)を含まない比較例1と同様の低反発性が得られた。
【0070】
表1に示すように、実施例2-8のポリウレタンフォームでは、密度の評価が「A」であり、硬さの評価が「A」であり、反発弾性の評価が「A」であった。実施例1のポリウレタンフォームでは、密度の評価が「A」であり、硬さの評価が「B」であり、反発弾性の評価が「A」であった。したがって、実施例4-8では、実施例1-3に対してポリオール等の配合割合を調整することで、より好ましい硬さとなる良好な低反発性が得られた。
【0071】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、植物由来の原料を含むポリウレタンフォーム用組成物から得られ低反発性を有するポリウレタンフォームを実現できた。具体的には、物性(低反発性等)を維持したまま、ポリオールの一部を植物由来の原料に置き換えることができた。また、ポリオール等の配合割合を調整することで、所望の物性のポリウレタンフォームを実現できた。
【0072】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。