(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007826
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20250109BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G06T7/60 180A
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109475
(22)【出願日】2023-07-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフ ジョナサン ジェフリー
【テーマコード(参考)】
2C032
5L096
【Fターム(参考)】
2C032HB11
5L096AA06
5L096BA08
5L096BA18
5L096CA02
5L096DA01
5L096FA10
5L096FA19
5L096FA62
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096FA73
5L096GA51
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】規則ベースの処理により画像から道路ネットワークを精度良く作成する。
【解決手段】道路ネットワークを生成するための情報処理方法であって、道路に対応する位置を第1ポイントとして選択する第1選択ステップと、前記第1ポイントにおける道路情報を推定する推定ステップと、前記第1ポイントから所定距離進めた第2ポイントを選択する第2選択ステップと、前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合に、前記第1ポイントと前記第2ポイントの間を道路リンクとして記憶するステップと、を含み、前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合は、前記第2ポイントを新たな第1ポイントして前記推定ステップ以降の処理を再び実行する、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置によって実行される、道路ネットワークを生成するための情報処理方法であって、
各画素が道路に該当するか否かを表すマスク画像から道路に対応する位置を第1ポイントとして選択する第1選択ステップと、
前記第1ポイントにおける道路情報を推定する推定ステップと、
前記第1ポイントから所定距離進めた第2ポイントを選択する第2選択ステップと、
前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合に、前記第1ポイントと前記第2ポイントの間を道路リンクとして記憶するステップと、
を含み、
前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合は、前記第2ポイントを新たな第1ポイントして前記推定ステップ以降の処理を再び実行する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
前記推定ステップは、
複数の方向について、前記方向についての前記第1ポイントから道路以外の位置までの距離と前記方向と反対の方向についての前記第1ポイントから道路以外の位置までの距離との和を求めるステップと、
前記複数の方向のうち前記距離の和が最大の方向を道路方向として決定し、前記道路方向と直交する方向についての前記距離の和を道路幅として決定し、前記道路幅の中心位置を道路中心として決定するステップと、
を含み、
前記第2選択ステップでは、前記第1ポイントから前記道路方向に前記所定距離進めた位置を前記第2ポイントとして選択し、
前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合は、前記第1ポイントにおける道路中心から前記道路方向に前記所定距離延びる前記道路幅の幅を有する領域を道路として記憶する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記第2選択ステップは、
前記第1ポイントから所定距離進めた位置が道路ではない場合に、前記所定距離を増加させて前記第2ポイントを再選択し、
前記第2ポイントが道路であると判定されるか前記所定距離が閾値を超えるまで、前記再選択を繰り返し、
前記所定距離が閾値を超えた場合に、処理を終了するか、または、前記第1選択ステップに戻って新たな第1ポイントを選択するステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差すると判定される場合は、
前記第2ポイントが交差点領域内になければ、前記第2選択ステップに戻って前記所定の距離を短くして新たな第2ポイントを選択し、
前記第2ポイントが交差点領域内にあれば、前記第1ポイントと前記交差点領域内の交差点ノードに既に接続されている道路リンクのそれぞれとを接続する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項5】
プロセッサと記憶装置とを備える情報処理装置であって、
前記記憶装置は、前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに、請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理方法の各ステップを実行させる、プログラムを記憶している、
ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ボロノイ分割を用いて車線を検出して、車線を表す地図を作成することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の態様の一つは、規則ベースの処理に基づいて画像から道路ネットワークを精度良く作成可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、情報処理装置によって実行される、道路ネットワークを生成するための情報処理方法であって、各画素が道路に該当するか否かを表すマスク画像から道路に対応する位置を第1ポイントとして選択する第1選択ステップと、前記第1ポイントにおける道路情報を推定する推定ステップと、前記第1ポイントから所定距離進めた第2ポイントを選択する第2選択ステップと、前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合に、前記第1ポイントと前記第2ポイントの間を道路リンクとして記憶するステップと、を含み、前記第1ポイントと前記第2ポイントを結ぶリンクが既に記憶されている他の道路リンクと交差しないと判定される場合は、前記第2ポイントを新たな第1ポイントして前記推定ステップ以降の処理を再び実行する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の態様によれば、規則ベースの処理に基づいて画像から道路ネットワークを精度良く作成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)道路グラフ作成装置の構成、(B)道路ネットワーク作成処理の概要、(C)セグメンテーションマスク(マスク画像)、(D)道路ネットワーク、を説明する図。
【
図2】道路ネットワーク作成処理の流れを示すフローチャート。
【
図3】(A)道路情報取得処理を説明する図、(B)(C)道路領域を説明する図。
【
図4】交差点領域抽出処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
道路リンク同士の繋がりを表現した道路ネットワークの作成が求められている。道路を撮影した画像から道路ネットワークを作成するための機械学習技術の研究開発が進められているが、機械学習技術は確率的な処理であり必ずしも正確な結果を出力しない。また、機械学習のための学習データを用意する手間が大きい、要求される精度が得られるように
アルゴリズムを調整することが困難である、といった問題もある。
【0009】
そこで、本開示は、規則ベースの処理により道路ネットワークを生成可能な技術を提供する。なお、上述した課題は後述するセグメンテーションマスク(マスク画像)から道路ネットワークを作成する処理において特に問題となるので、本開示の一態様はセグメンテーションマスクから道路ネットワークを作成する処理に関わる。
【0010】
(全体構成)
図1(A)は、一実施形態における道路ネットワーク作成装置(情報処理装置)100の構成を示す図である。道路ネットワーク作成装置100は、プロセッサ110とメモリ120を備える。メモリ120は、プロセッサ110を画像入力部111、道路抽出部112、交差点抽出部113、道路ネットワーク作成部114として機能させるためのコンピュータプログラムを非一時的に格納する。
【0011】
図1(B)は、衛星画像や空撮画像などの道路画像から道路ネットワークを作成する処理を説明する図である。
図1(C)はセグメンテーションマスク132を説明する図である。
図1(D)は道路ネットワーク133を説明する図である。
図1(B)~
図1(D)を参照しながら道路ネットワーク作成装置100の各機能部の概略を説明する。
【0012】
画像入力部111は、道路画像131を取得してメモリ120に記憶する。道路画像131は、衛星画像や空撮画像などの道路を撮影した画像である。道路画像131は、正射変換や複数画像の連結、輝度調整などの前処理が施された画像であってよい。
【0013】
道路抽出部112は、道路画像131に対して道路抽出処理を行い、セグメンテーションマスク(マスク画像)312を作成する。道路抽出部112は、道路画像131の各画素が道路に該当するか否かを判定する。この判定処理は、機械学習ベースの処理によって行われてもよい。具体的には、道路抽出部112は、各画素が道路に該当するか否かのラベル付けがされた学習データを用いて機械学習された学習モデルを有し、この学習モデルを用いて入力された道路画像131の各画素が道路に該当するか否かを判定する。別の例では、道路抽出部112は、対象画素およびその周囲の画素の色や輝度に基づいて規則ベースの処理により対象画素が道路に該当するか否かを判定しても良い。セグメンテーションマスク(マスク画像)132は、各画素が道路に該当するか否かを表す画像である。
図1(C)は、道路に該当する画素は白(画素値「1」)、道路に該当しない画素は黒(画素値「0」)を有する二値画像のセグメンテーション画像の例を示す。
【0014】
交差点抽出部113は、セグメンテーションマスク132から交差点の領域を抽出する。交差点抽出部113の詳細は、
図4および
図5を参照して後ほど詳細に説明する。
【0015】
道路ネットワーク作成部114は、セグメンテーションマスク132から道路ネットワーク133を作成する。道路ネットワーク133は、道路を表すリンクが接続されたグラフ構造のデータである。道路ネットワーク作成部114の詳細は、
図2および
図3を参照して詳細に説明する。
【0016】
(道路ネットワーク作成処理)
図2は、道路ネットワーク作成処理全体の流れを示すフローチャートである。
【0017】
ステップS201において、画像入力部111が道路画像を取得する。ステップS202において、道路抽出部112が道路画像の各画素が道路に該当するか否かを判定して、セグメンテーションマスク(マスク画像)を作成する。
【0018】
ステップS203において、道路ネットワーク作成部114は、セグメンテーションマスクにおける道路に該当する画素群から任意の画素をランダムに選択する。なお、本開示において、「画素」、「位置」、「点(ポイント)」は交換可能な意味を持つ。ステップS203において選択された点を点P1と称する。点P1が本開示における「第1ポイント」に相当する。
【0019】
ステップS204において、道路ネットワーク作成部114は点P1が未処理の点であるか否かを判定する。点P1が未処理であれば処理はステップS205に進み、処理済であれば処理はステップS219に進む。なお、交差点抽出部113によって交差点領域があらかじめ抽出されている場合、交差点領域内の点は処理済と判断すればよい。
【0020】
なお、各画素が処理済であるか否かを記憶するために、道路ネットワーク作成部114は、セグメンテーションマスク132と同じ形状かつ同じ画素数の画像(補助画像と称する)を用いても良い。補助画像は全画素が未処理を表す値(例えば「0」)に初期化され、処理済の画素にはその他の値が設定される。処理済の画素に設定される値は、道路IDに応じた値としても良く、また、その画素が交差点である場合には交差点であることを示す値としても良い。なお、ステップS203で選択した点が未処理である場合、道路ネットワーク作成部114はステップS204の後に補助画像中の対応画素の値を、処理済を表す値に設定する。道路IDまたは交差点に応じた値を画素に設定するのは、この点が道路または交差点に該当すると判断された後である。
【0021】
ステップS205において、道路ネットワーク作成部114は、点P1における道路情報を推定する。本態様では、道路情報として、道路の幅、道路の方向、および道路の中心位置(センターライン位置)が推定される。ステップS205において、道路ネットワーク作成部114は、推定した道路情報をメモリ120に記憶する。
【0022】
図3(A)は道路情報を推定する処理を説明する図である。
図3(A)において300は道路を表し、301は点P1を表す。道路ネットワーク作成部114は、点P1を中心として各方向について、道路以外の点までの距離を求める。具体的には、道路ネットワーク作成部114は、方向302aについて点P1(301)から道路以外の位置までの距離Laと、方向302aと反対の方向302bについて点P1(301)から道路以外の位置までの距離Lbを求め、これらの距離の和を求める。なお、道路以外の位置とは、道路ではないと判定された画素と、マスク画像の端部を含む。道路ネットワーク作成部114は、上述の距離の和を、点P1(301)を中心として複数の方向(例えば5度間隔の全方向)について求める。
【0023】
道路ネットワーク作成部114は、上述の距離の和が最大の方向を道路300の道路方向として決定し、道路方向と直交する方向の距離の和を道路幅として決定し、道路幅の中心位置を道路中心(センターライン位置)として決定する。
図3(A)の例では、方向302a、302bが道路方向として決定される。そして、方向302a、302bと直交する方向303a、303bの幅Wa、Wbの和が道路300の幅として決定される。また、道路幅Wa,Wbの中心の位置304が道路300の中心位置として決定される。
【0024】
ステップS207において、道路ネットワーク作成部114は、点P1からステップS206で求めた道路方向に沿って所定距離Xだけ進めた位置を点P2として選択する。点P2が本開示における「第2ポイント」に相当する。所定距離Xはシステムの要求精度に応じた任意の値であってよく、例えば1m、2m、5m、10m、20m(あるいはこれに相当する画素数)である。
【0025】
ステップS208において、道路ネットワーク作成部114は、点P2が道路であるか
否かを判定する。点P2が道路ではない場合は、道路ネットワーク作成部114は、ステップS215において所定距離Xを増加させ、増加後のXが最大値(閾値)を超えない場合(S216-NO)は、処理S207に戻って点P2を再選択する。増加後のXが最大値を超える場合(S216-YES)は、処理はステップS219に進み、処理を継続するか判断し、継続する場合にはステップS203に戻って新たな点P1を選択する。ステップS215における増分は、固定値(例えば、50cm、1mなど)であってもよいし、現在のXに応じた値(例えば、Xの10%、20%など)であってもよいし、繰返し回数に応じた値(例えば、n回目は2n-2m)であってもよい。このように点P2が道路であると判定されるか所定距離Xが閾値を超えるまで所定距離を増加させて点P2を再選択することで、ステップS202において点P2が道路ではないと誤判定された場合や点P1が道路であると誤判定された場合に、迅速に処理を回復させることができる。
【0026】
ステップS209において、道路ネットワーク作成部114は、点P1と点P2を結ぶリンクが既に見つけられ記憶されている他の道路リンクと交差しているか判定する。この判定は、点P1と点P2を結ぶ直線上のいずれかの画素が、補助画像において道路IDが割り当てられているか否か確認することにより行える。他の道路と交差していない場合、処理はステップS210に進み、交差している場合、処理はステップS213に進む。なお、ステップS209の処理において、点P1と点P2を結ぶリンクが交差点抽出部113によって抽出された交差点領域と重なる場合も、肯定判定とみなしてステップS213に処理を進めても良い。
【0027】
ステップS210において、道路ネットワーク作成部114は、点P1と点P2を接続して道路リンクとして記憶する。すなわち、点P1と点P2をそれぞれノードとし、これらのノードを両端する新たな道路リンクが生成および記憶される。なお、別の実施形態では、ステップS205からS212のループ処理において、2度目以降は、処理済の道路リンクの終点ノード(現在の点P1)に点P2を接続してもよいし、処理済の道路リンクの起点ノード(初回の点P1)に点P2を接続してもよい。
【0028】
ステップS211において、道路ネットワーク作成部114は、点P1と点P2を接続する道路リンクの領域を処理済として記憶する。例えば、道路ネットワーク作成部114は、補助画像において点P1と点P2を結び、幅がステップS205で求めた道路幅の領域を処理済とする。この際、補助画像における当該領域の画素は、道路IDに応じた値が設定される。なお、道路リンクの領域は、上記以外にも、
図3(B)に示すように、点P1(301)における道路中心304から道路方向に所定距離Xだけ延び、ステップS205で求めた道路幅の幅を有する領域として決定されてもよい。あるいは、
図3(C)に示すように、点P1(301)における道路中心304から道路方向とその反対方向にそれぞれ所定距離Xの半分だけ延び、ステップS205で求めた道路幅の幅を有する領域として決定されてもよい。
【0029】
ステップS212において、現在の点P2を新たな点P1に設定して、ステップS205に戻ってステップS205(道路情報推定処理)以降の処理を再び実行する。
【0030】
ステップS213は、ステップS209において点P1と点P2を結ぶリンクが他の道路と交差していると判定された場合に実行される処理である。ステップS213において、道路ネットワーク作成部114は、点P2が交差点領域内に位置するか否か判定する。この判定は、点P2が交差点抽出部113によって抽出された交差点領域に位置するか否かを確認することにより行える。他の実施形態では、交差点抽出部113を用いずに、点P2が処理済の道路リンク上に位置するか否かに応じて点P2が交差点領域に位置するか否か判定しても良い。点P2が交差点領域内ではない場合(S213-NO)は、道路ネットワーク作成部114は、ステップS217において所定距離Xを減少させ、減少後の
Xが最小値(閾値)より小さくない場合(S218-NO)は、処理S207に戻って点P2を再選択する。減少後のXが最小値より小さい場合(S218-YES)は、処理はステップS219に進み、処理を継続するか判断し、継続する場合にはステップS203に戻って新たな点P1を選択する。ステップS217における減分は、固定値(例えば、50cm、1mなど)であってもよいし、現在のXに応じた値(例えば、Xの10%、20%など)であってもよいし、繰返し回数に応じた値(例えば、n回目は21-nm)であってもよい。このように、点P1と点P2のリンクが他の道路と交差しているが、点P2が交差点領域ではないときに、点P2の位置を戻すことで点P2を交差点領域内の点とすることができる。
【0031】
ステップS214は、ステップS213で点P2が交差点領域内の点であると判定された時に実行される処理である。ステップS214において、道路ネットワーク作成部114は交差点を生成する。具体的には、道路ネットワーク作成部114は、交差点領域に交差点ノードが生成されていない場合には新たに生成した上で、点P1と交差点ノードとを接続する。また、道路ネットワーク作成部114は、交差点ノードに既に接続されている道路リンクが存在する場合には、点P1とそれぞれの道路リンクと接続する複数の道路リンクを新たに生成する。例えば、交差点に既に3つの道路リンクが接続されている場合には、道路ネットワーク作成部114は、点P1と上記3つの道路リンクの端点とを接続する3つの道路リンクを生成する。
【0032】
ステップS219における処理を継続するか否かの判定は、適宜定めれば良い。一例として、点P1の選択処理(S203)を所定回数実行したら処理完了と判定することが考えられる。この所定回数は、マスク画像において道路と判定されている画素数に応じた値(例えば10%)とすることができる。
【0033】
(交差点領域抽出処理)
図4は、セグメンテーションマスク(マスク画像)から交差点領域(intersection area)を抽出する処理を説明する図である。交差点領域抽出処理は、例えば、道路ネットワ
ーク作成処理に先立って行われ、道路ネットワーク作成処理において処理対象の点が交差点領域に含まれるか否かの判断に用いられる。
【0034】
ステップS400において、交差点抽出部113は、道路抽出部112が作成したセグメンテーションマスク(マスク画像)を取得する。
【0035】
ステップS401以降の処理は、大きく2つに分けられる。1つは、ステップS401~S405からなる1つの点(処理対象点)が交差点ポイント(intersection point)であるか否かを判定する処理である。もう1つは、ステップS407~S408からなる交差点ポイントに基づいて交差点領域を抽出するステップである。
【0036】
ステップS401において、交差点抽出部113は、セグメンテーションマスク(マスク画像)132の道路領域中の点から、処理対象点を選択する。選択方法は任意であってよく、例えば、ランダム選択を採用可能である。
【0037】
ステップS402において、交差点抽出部113は、処理対象点から道路境界までの距離を複数の方向について求める。例えば、交差点抽出部113は、処理対象点を中心として360度全方向にわたって、処理対象点から道路境界までの距離を求める。例えば、5度おきに道路境界までの距離が求められる。道路境界とはセグメンテーションマスクにおいて非道路とされている点およびセグメンテーションマスクの端部である。
【0038】
ステップS403において、交差点抽出部113は、ステップS402で求めた距離を
、方向(角度)を横軸として道路境界までの距離を縦軸とするグラフにおけるピーク数を取得する。
図5(A)~
図5A(C)はこのようなグラフのいくつかの例であり、それぞれピーク数が2個、3個、4個の場合を示している。なお、グラフにおけるピークを求める処理は、既存の任意のピーク検出アルゴリズムを利用可能である。一例として、Python言語のSciPyライブラリに含まれるfind_peaks関数が利用可能である。
【0039】
ステップS404において、交差点抽出部113はピークの数が2よりも大きいか判定する。肯定判定であれば処理はステップS405に進み、否定判定であれば処理はステップS406に進む。
【0040】
ステップS405において、交差点抽出部113は、処理対象点を交差点ポイント(intersection point)としてメモリ120に記憶する。この際、ステップS403で求めたピーク数も交差点ポイントに関連付けられて記憶される。
図5(A)~
図5(C)のうち、
図5(A)はピーク数が2なので交差点ポイントではないと判断され、
図5(B)および
図5(C)はピーク数が3および4なので交差点ポイントであると判断される。
【0041】
ステップS406において、交差点抽出部113は次の処理対象点を処理するか否かを判定する。例えば、ステップS401からS405の処理を所定数回繰り返したらステップS407に進むようにすることができる。所定数は、例えば、セグメンテーションマスク(マスク画像)において道路と判定されている画素数に応じた値(例えば10%)とすることができる。
【0042】
ステップS408において、交差点抽出部113は、交差点ポイントに対してクラスタリングアルゴリズムを適用して、複数のクラスタを生成する。ここでは、生成するクラスタ数を指定することなく実行可能なアルゴリズム、例えばDBSCANが好適に利用可能である。
【0043】
ステップS408において、交差点抽出部113は、得られたクラスタのそれぞれの領域を交差点領域(intersection area)としてメモリ120に記憶する。交差点領域は、
クラスタに含まれる交差点ポイントを全て包含する最小の凸多角形(凸包、Convex hull
)として決定されても良いし、クラスタに含まれる交差点を全て包含する最小矩形(バウンディングボックス)として決定されても良い。また、交差点抽出部113は、クラスタ重心を交差点の中心として記憶する。また、交差点抽出部113は、クラスタに含まれる交差点ポイントのピーク数の最頻値に基づいて、交差点領域の交差数あるいは交差点タイプを決定する。例えば、ピーク数の最頻値が3の交差点領域は三叉路またはT字タイプ交差点であると決定され、ピーク数の最頻値が4の交差点領域は四叉路または十字タイプ交差点であると決定される。なお、ピーク数の最頻値が5以上の交差点は全て、複雑な交差点(complex intersection)と決定しても良い。
【0044】
図5(D)はクラスタリング処理の結果を示す図であり、セグメンテーションマスクに、交差点ポイントと、クラスタリングの結果を表している。三角形で示される点はピーク数が3の交差点ポイントであり、四角形で示される点はピーク数が4の交差点ポイントである。この例では、クラスタリング処理の結果2つのクラスタ541,542が得られている。クラスタ541は、ピーク数4の交差点ポイントを最も多く含むので、十字タイプの交差点であると判定される。クラスタ542は、ピーク数3の交差点ポイントを最も多く含むので、T字タイプの交差点であると判定される。
図5(E)は、1つのクラスタに含まれる交差点ポイントと、これら全てを包含する凸包550を示す。凸包550の内部が交差点領域として記憶される。
【0045】
(補助画像について)
補助画像は、道路ネットワーク作成処理の際に補助的に用いられる画像であり、セグメンテーションマスク132と同じ形状の画像である。補助画像は、コンパニオン画像とも称される。補助画像の全画素の初期値は未処理を表す値であり、処理対象として選択された画素の値は、処理済を表す値に更新される。また、道路ネットワーク作成処理において道路リンクであると決定された画素は、道路IDまたはそれに応じた値が設定される。
【0046】
このような補助画像を用いることで、セグメンテーションマスク内の各点(位置、画素)が既に処理済であるか未処理であるかを容易に判別可能となる。また、補助画像の画素値には道路IDに応じた値が設定されていることから、特定の道路IDを有する道路リンクがどの領域であるか、および、特定の点(位置、画素)がどの道路リンクに属しているか、を容易に判別可能である。
【0047】
(実施形態の効果)
上記の実施形態によれば、規則ベースの処理により交差点領域の抽出および道路ネットワークの作成が行える。規則ベースの処理であるため、比較的高速に処理を実行可能であり、また、事前の学習処理や学習データの収集が不要となる。また、規則ベースの処理であるため、要求される精度に応じた設定が容易であり、すなわち、要求される品質に合致した高精度な交差点領域の抽出および道路ネットワークの作成が可能となる。
【0048】
(その他の実施形態)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
【0049】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0050】
100:道路ネットワーク作成装置(情報処理装置) 110:プロセッサ
111:画像入力部 112:道路抽出部
113:交差点抽出部 114:道路ネットワーク作成部