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  • 特開-透明吸湿PTP用積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007829
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】透明吸湿PTP用積層体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20250109BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20250109BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250109BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D81/24 F
C08L101/00
C08L23/00
C08K3/22
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109480
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】東野 美玲
(72)【発明者】
【氏名】高杉 祐也
(72)【発明者】
【氏名】村山 達彦
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB32
3E067AB47
3E067AB49
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA11
3E067FA01
3E067FB02
3E067FB04
3E067FC01
3E067GA25
3E067GB20
3E086AB01
3E086AD07
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB12
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086CA31
3E086CA32
4F100AC03B
4F100AC03H
4F100AC10B
4F100AC10H
4F100AK03A
4F100AK04B
4F100AK15A
4F100AK16A
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA06A
4F100CA06H
4F100CA30B
4F100CA30H
4F100JN01
4F100JN08
4J002BB051
4J002DE146
4J002FD206
4J002GB01
4J002GC00
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、製造適性に優れ、簡易な層構成でありながら、吸湿性に優れ、吸湿前及び吸湿後においても透明性に優れていることから内容物の視認性に優れ、外部からの水分を遮蔽し、包装された内容物収容部空間の水分を吸収して、輸送中及び長期間の保管中に、内容物が水分によって劣化することを抑制することができる透明吸湿PTP用積層体、及び該透明吸湿PTP用積層体を用いて作製した、透明吸湿PTP包装材料、透明吸湿PTP包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】少なくとも特定の吸湿剤とバインダー樹脂とを含有する吸湿層を有し、高吸湿性と高全光線透過度と低ヘイズとに優れた、透明吸湿PTP用積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、吸湿層とを有する、透明吸湿PTP用積層体であって、
該吸湿層は、少なくとも、吸湿剤とバインダー樹脂とを含有し、
該吸湿剤はハイドロタルサイトであり、
該吸湿層中のハイドロタルサイトの含有量は、0.5質量%以上、70質量%以下であり、
25℃50%11日間静置する吸湿処理において、
吸湿量は、2.8g/m2以上であり、
吸湿処理前及び吸湿処理後の全光線透過度は、60%以上、99%以下であり、
吸湿処理前及び吸湿処理後のヘイズは、10%以上、85%以下であること、
を特徴とする透明吸湿PTP用積層体。
【請求項2】
前記基材層は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、環状オレフィン共重合体(COC)からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の透明吸湿PTP用積層体。
【請求項3】
前記バインダー樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載の透明吸湿PTP用積層体。
【請求項4】
フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の、透明吸湿PTP用積層体。
【請求項5】
ヒートシール層を、さらに前記吸湿層の片面または両面に隣接して有する、請求項1に記載の透明吸湿PTP用積層体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の透明吸湿PTP用積層体から作製された、透明吸湿PTP包装材料。
【請求項7】
請求項6に記載の透明吸湿PTP包装材料から作製された、透明吸湿PTP包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明であり、包装された内容物が吸湿することを抑制するための、吸湿性を有する透明吸湿プッシュ・スルー・パッケージ(PTP)用積層体、及び該透明吸湿PTP用積層体を用いて作製した、透明吸湿PTP包装材料、透明吸湿PTP包装体に関する。
本発明の透明吸湿PTP用積層体は、湿気を嫌う様々な分野の製品に適用することができ、例えば、車載用のネジ、シャフト、金属板等の金属製品、及び電気部品等を防錆する為の包装材料や、食品や医薬品等の水分による劣化を抑制する為の包装材料に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
湿気を嫌う医薬品や食品の包装には、PTP包装、SP包装、ブリスター包装等が広く使われているが、従来品は防湿性が不十分なものが多く、それを補うためにアルミニウム箔ピロー袋を外袋として用い、更に乾燥剤を同梱している。
しかしながら、これらは外袋開封後の防湿性が不十分であり、また乾燥剤を同梱したものは乾燥剤の誤飲事故が多発している。
そこで、医薬品や食品の輸送、あるいは長期保管を目的とした包装袋が開発されており、さらに、内容物である医薬品や食品の品質を維持できるように、より安定した防湿防水性やバリア性を有し、且つシンプルな層構成で工程数の少ない製造工程によって製造し得る包装材料が求められている。
例えば、金属製品内容物への防錆を目的として、常温で揮発して防錆効果を発揮する気化性の高い防錆剤を樹脂に含有させた包装用積層体が、特許文献1~3で提案されている。
しかしながら、外装による密閉が必要であったり、気化した防錆剤が内容物に付着した場合に内容物が劣化したり、機能的障害を生じたり等、防錆効果以外の影響が懸念され、除去するにも手間が煩雑であるために用途が限定されていることから、揮発性の防錆剤を用いない防錆積層体が望まれている。
PTPまたはブリスター包装材料の防湿性を改良する為に、包装材料に乾燥剤やバリア層を含ませることが特許文献4で提案されているが、包装材料の透明性が不十分であり、内容物の変質状態を確認するための視認性に劣るものであった。
また、100nm程度の微粒の吸湿剤を包装材料に含有して透明度を高めることが引用文献5で提案されているが、吸湿剤が二次凝集を生じて高い透明度を得ることが困難であり、また透明性を高める為に吸湿剤の含有量を低くせざるを得ず、十分な吸湿能力を有することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-254350号公報
【特許文献2】特開2007-308726号公報
【特許文献3】特開2010-052751号公報
【特許文献4】特許5429948号公報
【特許文献5】特開2021-147086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決し、製造適性に優れ、簡易な層構成でありながら、吸湿性に優れ、吸湿前及び吸湿後においても透明性に優れていることから内容物の視認性に優れ
、外部からの水分を遮蔽し、包装された内容物収容部空間の水分を吸収して、輸送中及び長期間の保管中に、内容物が水分によって劣化することを抑制することができる透明吸湿PTP用積層体、及び該透明吸湿PTP用積層体を用いて作製した、透明吸湿PTP包装材料、透明吸湿PTP包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、特定の吸湿剤と特定のバインダー樹脂とを含有する吸湿層を含む透明吸湿PTP用積層体が、上記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、基材層と、吸湿層とを有する、透明吸湿PTP用積層体であって、
該吸湿層は、少なくとも、吸湿剤とバインダー樹脂とを含有し、
該吸湿剤はハイドロタルサイトであり、
該吸湿層中のハイドロタルサイトの含有量は、0.5質量%以上、70質量%以下であり、
25℃50%11日間静置する吸湿処理において、
吸湿量は、2.8g/m以上であり、
吸湿処理前及び吸湿処理後の全光線透過度は、60%以上、99%以下であり、
吸湿処理前及び吸湿処理後のヘイズは、10%以上、85%以下であること、
を特徴とする透明吸湿PTP用積層体。
2. 前記基材層は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、環状オレフィン共重合体(COC)からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする、上記1に記載の透明吸湿PTP用積層体。
3. 前記バインダー樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする、上記1または2に記載の透明吸湿PTP用積層体。
4. フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を含有することを特徴とする、上記1~3の何れかに記載の、透明吸湿PTP用積層体。
5. ヒートシール層を、さらに前記吸湿層の片面または両面に隣接して有する、上記1~4の何れかに記載の透明吸湿PTP用積層体。
6. 上記1~5の何れかに記載の透明吸湿PTP用積層体から作製された、透明吸湿PTP包装材料。
7. 上記6に記載の透明吸湿PTP包装材料から作製された、透明吸湿PTP包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造適性に優れ、簡易な層構成でありながら、吸湿性に優れ、吸湿前及び吸湿後においても透明性に優れていることから内容物の視認性に優れ、外部からの水分を遮蔽し、包装された内容物収容部空間の水分を吸収して、輸送中及び長期間の保管中に、内容物が水分によって劣化することを抑制することができる透明吸湿PTP用積層体、及び該透明吸湿PTP用積層体を用いて作製した、透明吸湿PTP包装材料、透明吸湿PTP包装体を得ることができる。
そして、本発明の透明吸湿PTP包装体を、薬剤用のPTP包装に用いることで、薬剤の劣化や変色を抑制できる。また、シリカゲル等が入った吸湿小袋を同梱する必要がなく、該吸湿小袋を誤飲する危険性を回避できる。さらに、錠剤の紛失、落薬、割れの判別によるリスクを軽減することができる。
また、内容物が金属機器等の金属製品である場合には、金属製品の錆の発生を防止することができ、従来から用いられていた油紙等により保護する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の透明吸湿PTP用積層体、透明吸湿PTP包装材料の層構成の一例を示す概略的断面図である。
図2】本発明の透明吸湿PTP用積層体、透明吸湿PTP包装材料の層構成の別態様の一例を示す概略的断面図である。
図3】本発明の透明吸湿PTP包装体の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【0008】
各図においては、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
また、各図においては省略されているが、各層の間に接着剤層を設けることもできる。
さらに、必要に応じて、各層間の接着強度(密着強度)を強固にするために、各層の積層面に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、グロー放電処理、サンドブラスト処理等のなどの物理的な表面処理や、化学薬品を用いた酸化処理などの化学的な表面処理を予め施しておくこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の透明吸湿PTP用積層体、透明吸湿PTP包装材料、透明吸湿PTP包装体について、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明においては、フィルムとシートとは同義として扱い、吸水または吸湿は、気体および/または液体の水を吸収することを指す。
【0010】
I.透明吸湿PTP用積層体
本発明の透明吸湿PTP用積層体は、少なくとも、基材層と、吸湿層とを有する積層体である。吸質層や基材層は、それぞれが単層であってもよく、多層であっても良い。
また、吸湿層は、単層でヒートシール性を有したシーラント層を構成していてもよく、吸湿層の片面または両面にヒートシール層を有して、シーラント層を構成していてもよい。
本発明の透明吸湿PTP用積層体は、吸湿層を有していることによって、透過して来た水蒸気を捕捉することができる。
本発明の透明吸湿PTP用積層体は、吸湿前、および温度25℃、湿度50%RH、または温度40℃、湿度90%RHの環境下に、11日間静置して吸湿させた後等の吸湿後においても、透明性を示すことができる。
【0011】
本発明の透明吸湿PTP用積層体の吸湿量は、例えば、25℃50%11日間静置するという環境下において、2.8g/m2以上であることが好ましい。上記範囲よりも吸湿量が小さいと、内容物の劣化を抑制することが困難になり易く、上記範囲よりも吸湿量が大きいものを得ることは実質的に困難である。
【0012】
また、本発明の透明吸湿PTP用積層体は、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤をさらに含有することができる。
【0013】
本発明の透明吸湿PTP用積層体は、吸湿剤が微細であることと、吸湿剤とバインダー樹脂との屈折率差が小さいことによって、界面反射や散乱を抑制して、高い透明性を得ている。
【0014】
本発明の透明吸湿PTP用積層体の全光線透過度は、吸湿前および吸湿後において、下限は、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。上記範囲よりも全光線透過度が小さいと、透明性が低下し易い。
上限は、100%が最も好ましいが、実質的には、99%以下であることが好ましく、95%以下がより好ましい。
ここで、全光線透過度とは、JIS K7361(プラスチックの光学的特性試験法)
に規定された方法によって、色彩情報測定機器等を用いて測定する、光線の透過率のことである。
【0015】
本発明の透明吸湿PTP用積層体のヘイズは、吸湿前および吸湿後において、85%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。上記範囲よりもヘイズが大きい場合は透明性が低下し易くなる。
下限は、0%が最も好ましいが、実質的には、10%以上であることが好ましく、14%以上がより好ましい。
【0016】
透明吸湿PTP用積層体は、支持性(剛性)が不足している場合には、補強層をさらに含むことができる。
【0017】
本発明の透明吸湿PTP用積層体の厚みに特に制限は無いが、200μm以上、500μm以下が好ましく、250μm以上、400μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと吸湿効果およびそれによる吸湿効果を充分に発揮し難く、上記範囲よりも厚くても吸湿効果はそれほど向上せず、透明吸湿PTP用積層体の剛性が強くなりすぎて、包装材料の用途としての使い勝手が悪くなり易く、透明性が低下し易い。

そして、透明吸湿PTP用積層体を構成する各層は、接着剤層やアンカーコート層を介して積層されていてもよい。
【0018】
<透明吸湿PTP用積層体の製造方法>
本発明の透明吸湿PTP用積層体を製造する方法について説明する。下記に示す透明吸湿PTP用積層体の作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
透明吸湿PTP用積層体を構成する各層の製膜、積層は、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
そして、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理を各層の表面に施すことができる。また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等のアンカーコート剤等を任意に使用することができる。
【0019】
例えば、基材層/接着剤層/シーラント層[ヒートシール層1/吸湿層/ヒートシール層2]という層構成を有する透明吸湿PTP用積層体を作製する場合については以下の様に作製できる。
まず、ヒートシール層1用の樹脂組成物と、吸湿層用の樹脂組成物と、ヒートシール層2用の樹脂組成物とを、共押し出しラミネーション法によって製膜及び積層して、シーラント層用の透明吸湿フィルムを作製する。
そして、基材層用の樹脂フィルムと、上記で得たシーラント層用の透明吸湿フィルムとを、接着剤層用の樹脂組成物を介して接着し、透明吸湿PTP用積層体を作製することができる。
得られた透明吸湿PTP用積層体には、透明性及び吸湿性を維持できる範囲内で、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
【0020】
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等
)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、透明吸湿シーラントフィルムに、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施すこともできる。
【0021】
<透明吸湿PTP用積層体の各層について>
【0022】
I-1.基材層
基材層は、ポリ塩化ビニル系樹脂および/または環状オレフィン共重合体(COC:Cycloolefin Copolymer)を含有することが好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC:Polyvinylidene Chloride)が好ましい。
したがって、基材層は、PVC、PVDC、COCからなる群から選ばれる1種以上を含有することが、より好ましい。
基材層が、これら透湿性が低い樹脂を含有していることによって、PTP包装体内の被包装物が吸湿によって劣化することを防止することができる。
【0023】
基材層は、組成が同じ又は異なる多層によって構成されていてもよく、基材層内の層間は、接着剤層を介して積層されていてもよい。
また、基材層は、吸湿層、ヒートシール層、補強層等の他層と、直接積層されていてもよく、接着剤層やアンカーコート層等を介して積層されていてもよい。
【0024】
基材層の全光線透過度は、60%以上、99%以下が好ましく、65%以上、95%以下がより好ましい。上記範囲よりも低いと、透明吸湿PTP用積層体全体の透明性が劣る傾向になり、内容物の視認が困難になり易い。上記範囲よりも高くすることは困難であり、生産工程や品質管理が複雑になって生産性が劣り易い。
【0025】
そして、基材層のヘイズは、吸湿前および吸湿後において、0%以上、70%以下が好ましく、0%以上、30%以下がより好ましい。上記範囲よりも高いと、透明吸湿PTP用積層体全体の透明性が劣る傾向になり、内容物の視認が困難になり易い。
【0026】
(ポリ塩化ビニル系樹脂)
ポリ塩化ビニル系樹脂の具体例としては、PVC、PVDC、さらには、塩化ビニルモノマーと各種重合性モノマーとの共重合体である塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデンモノマーと各種重合性モノマーとの共重合体である塩化ビニリデン共重合体、等が挙げられる。これらの中でも、PVC、PVDCが好ましい。
【0027】
(環状オレフィン共重合体(COC))
環状オレフィン共重合体(COC)は、環状オレフィンモノマーがアルケンモノマー等の共重合性モノマーと共重合して得られた、環状構造を有する樹脂である。ここで、環状オレフィンモノマーとアルケンモノマーのそれぞれは、単独種であっても、複数種の混合物であってもよい。
環状オレフィン共重合体は、ガスバリア性及び低吸着性に優れる。
環状オレフィン共重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に制限は無いが、60℃以上、170℃以下が、包装材料用の原料樹脂として扱い易く、好ましい。
【0028】
環状オレフィンモノマーの具体例としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]-3-デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5]-3-ウンデセン及びその誘導体、テトラシ
クロ[4.4.0.12.5.17.10]-3-ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4-ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]-4,10-ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]-3-ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
アルケンモノマーとしては、α-オレフィンモノマーが好ましい。
アルケンモノマーの具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられるが、これらの中でも、エチレンが好ましい。
これらの化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
環状オレフィン共重合体は、環状オレフィンモノマーとしてノルボルネン系モノマーが用いられたポリノルボルネン系樹脂が好ましく、ノルボルネン系モノマーとアルケンモノマーとの共重合体であることがより好ましい。
ノルボルネン系モノマーは、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(ノルボルネン)骨格を有する化合物である。
これらのノルボルネン系モノマーは、置換基として、エステル基、カルボキシル基、及びカルボン酸無水物基等の極性基を有していてもよい。
ノルボルネン系モノマーとしては、これらの中でも、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン(ノルボルネン)が好ましい。
【0031】
I-2.吸湿層
吸湿層は、吸湿剤およびバインダー樹脂を含有する層であり、吸湿剤がバインダー樹脂中に分散している。
そして、吸湿層は、吸湿層を含む透明吸湿フィルムから形成されていることが好ましく、更に他の層を含んでいてもよい。
吸湿層は、バインダー樹脂以外の熱可塑性樹脂を、透明性、吸湿性、分散性等を損なわない範囲で含有してもよい。
吸湿層中の吸湿剤の含有量は、0.5質量%以上、70質量%以下が好ましく、吸湿剤としてハイドロタルサイトを0.5質量%以上、70質量%以下含有していることがより好ましく、20質量%以上、60質量%以下含有していることが更に好ましく、35質量%以上、50質量%以下含有していることが特に好ましくい。
上記範囲よりも少ないと、吸湿効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多いと、製膜性が劣り易い。
【0032】
吸湿層の厚みに特に制限は無いが、30μm以上、150μm以下が好ましく、50μm以上、100μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと吸湿効果を充分に発揮し難く、上記範囲よりも厚くても吸湿効果はそれほど向上せず、透明吸湿PTP用積層体の剛性が強くなりすぎて、包装材料の用途としての使い勝手が悪くなり易い。
【0033】
吸湿剤は、熱可塑性樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチの作成を経て、吸湿層に含有されることが好ましい。
具体的には、吸湿剤を熱可塑性樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、所望の吸湿層中の濃度になるように、マスターバッチとバインダー樹脂とをドライブレンドして用いることが好ましい。
メルトブレンドされる熱可塑性樹脂は、1種であっても2種以上であってもよい。また、バインダー樹脂と同一であってもよい。
【0034】
マスターバッチ中の吸湿剤の含有量は、20質量%以上、90質量%以下が好ましく、30質量%以上、70質量%以下がより好ましい。上記の範囲であれば、吸湿層中に必要かつ十分な量の吸湿剤を分散した状態で含有させることが容易である。
【0035】
[吸湿剤]
吸湿剤の数平均粒子径に特に制限は無い。しかしながら、安定した製膜性を得る為には、吸湿剤の数平均粒子径は、10μm以下が好ましく、7μm以下が好ましく、1μm以下が更に好ましい。上記範囲よりも大きいと、製膜性が低下し易く、透明吸湿PTP用積層体の透明性も低下し易い。
また、吸湿剤の数平均粒子径は、0.1μm以上が好ましい。上記範囲よりも小さな吸湿剤を安定的に得ることは困難である。
吸湿剤の屈折率に特に制限は無いが、バインダー樹脂との屈折率差が小さい方が、吸湿層や透明吸湿PTP用積層体の透明性を高めることができる。
吸湿剤とバインダー樹脂との屈折率の差は、0.07以下が好ましい。
本発明において、吸湿剤は、ハイドロタルサイトを含有することが好ましい。
【0036】
(ハイドロタルサイト)
本発明で吸湿剤として用いられるハイドロタルサイトは、焼成タイプのハイドロタルサイトと、焼成タイプのハイドロタルサイトをさらに加熱分解させた酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体とがある。
ハイドロタルサイトの屈折率は、1.51~1.57程度である。
焼成タイプのハイドロタルサイトは、次式で示される化合物であり、結合水をさらに含んでいてもよい。
Mg1-xAlx(OH)2(CO3x/2
上式において、xは、0.1~0.4の数である。
酸化マグネシウム・酸化アルミニウム固溶体は、次式で示される化合物であり、焼成タイプのハイドロタルサイトよりも吸湿性は高い。
Mg0.7Al0.31.15
【0037】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、吸湿剤を分散させることができる樹脂であることが必要であり、ヒートシール性を有していてもよい。
バインダー樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましく、ポリオレフィン系樹脂の中でもポリエチレン系樹脂を含有することがより好ましく、ポリエチレン系樹脂の中でも直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有することが更に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の屈折率は、1.49~1.54程度である。
バインダー樹脂がこれらの樹脂を含有していることによって、吸湿剤を分散させ、安定した吸湿性と透明性を発揮することができる。
【0038】
(ポリオレフィン系樹脂)
バインダー樹脂として用いられるポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)系樹脂、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等及びこれらの樹脂の混合物が挙げられる。
【0039】
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエ
チレン(LLDPE)、汎用ポリエチレン(汎用PE)、ポリエチレン(PE)系共重合体等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂の中でも、LDPE、LLDPE、汎用PE、PE系共重合体等がより好ましく、LLDPEが更に好ましい。
【0040】
(熱可塑性樹脂)
吸湿層中に含有されるバインダー樹脂以外の熱可塑性樹脂は、バインダー樹脂の吸湿剤分散性や、透明吸湿PTP用積層体の吸湿性や透明性を大きく低下させず、包装材料の用途に耐え得る樹脂であれば、特に制限は無いが、ヒートシール性に優れることが好ましい。
【0041】
例えば、熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であってよい。
ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂およびポリメチルペンテンがより好ましい。
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、LDPE、MDPE、HDPE、LLDPE、汎用PE、PE系共重合体等が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂の中でも、LDPE、LLDPE、汎用PE、PE系共重合体等がより好ましく、LLDPEが更に好ましい。
【0042】
(酸化防止剤)
本発明の透明吸湿PTP用積層体は酸化防止剤を含有することができるが、フェノール系酸化防止剤は、透明吸湿PTP用積層体を黄変させ易いことから、フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤を含有することが好ましい。
好ましい酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、および/またはチオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。
【0043】
リン系酸化防止剤の具体例としては、アデカスタブPEP-8(ADEKA)、アデカスタブPEP-36(ADEKA)、アデカスタブHP-10(ADEKA)、アデカスタブ2112(ADEKA)、アデカスタブ1178(ADEKA)、アデカスタブ1500(ADEKA)、Irgafos168(BASF)等が挙げられる。
【0044】
チオエーテル系酸化防止剤の具体例としては、アデカスタブAO-412S(ADEKA)、アデカスタブAO-26(ADEKA)、KEMINOX PLS(ケミプロ化成)、RIANOX(Rianlin)等が挙げられる。
【0045】
I-3.ヒートシール層、
ヒートシール層は、ヒートシール性樹脂を含有し、ヒートシール性に優れた層である。
ヒートシール層は、ヒートシール性が劣化しない範囲で吸湿剤を含有することができるが、吸湿剤を含有しない場合が最もヒートシール性が高く、好ましい。
ヒートシール層は、吸湿層の片面または両面に隣接して積層されていることが好ましい。
【0046】
また、ヒートシール層および吸湿層を合わせて、シーラント層として扱ってもよい。
そして、シーラント層は、上記のような層構成を有する、透明吸湿フィルムから形成されていることが好ましく、更に他の層を含んでもよい。
【0047】
(シーラント層または透明吸湿フィルム)
シーラント層または透明吸湿フィルムの厚さは、透明吸湿PTP用積層体が、良好なヒートシール性、適度な剛性、必要に応じた吸湿性を示す為に、50μm以上、200μm
以下が好ましく、80μm以上、150μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと、ヒートシール性や吸湿性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても、ヒートシール性や吸湿性はさほど向上せず、剛性が強くなり過ぎて作業性が低下するおそれがある。
【0048】
また、シーラント層または透明吸湿フィルムは、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、任意の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、樹脂フィルムの成形加工性や生産性、各種の物性を調製するために一般に使用される種々の樹脂用添加剤、例えばアンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、流動制御材、難燃剤、充填剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
さらに、シーラント層または透明吸湿フィルムには、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
【0050】
シーラント層または透明吸湿フィルムの吸湿量は、例えば、25℃50%11日間という環境下において、2.8g/m2以上であることが好ましい。上記範囲よりも吸湿量が小さいと、透明吸湿PTP用積層体が内容物の劣化を抑制することが困難になり易く、上記範囲よりも吸湿量が大きいものを得ることは実質的に困難である。
【0051】
シーラント層または透明吸湿フィルムの全光線透過度は、吸湿前および吸湿後において、下限は、60%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。上記範囲よりも全光線透過度が小さいと、透明吸湿PTP用積層体の透明性が低下し易い。
上限は、100%が最も好ましいが、実質的には、99%以下であることが好ましく、95%以下がより好ましい。
ここで、全光線透過度とは、JIS K7361(プラスチックの光学的特性試験法)に規定された方法によって、色彩情報測定機器等を用いて測定する、光線の透過率のことである。
【0052】
シーラント層または透明吸湿フィルムのヘイズは、吸湿前および吸湿後において、90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。上記範囲よりもヘイズが大きい場合は、透明吸湿PTP用積層体の透明性が低下し易くなる。
下限は、0%が最も好ましいが、実質的には、10%以上であることが好ましく、14%以上がより好ましい。
【0053】
(ヒートシール性樹脂)
ヒートシール性樹脂は、ヒートシール性に優れた樹脂である。
ヒートシール層が含有するヒートシール性樹脂のMFRは、0.2g/10分以上、10.0g/10分以下が好ましく、0.5g/10分以上、7g/10分以下がより好ましい。上記範囲よりも低いと製膜性やヒートシール性が劣り易く、上記範囲よりも高いとヒートシール性樹脂の分解による臭気物質の発生量が高くなり易く、耐黄変性に劣り易い。
【0054】
ヒートシール性樹脂としては、LDPE、MDPE、HDPE、LLDPE、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が好ましく、LLDPEがより好ましい。
そして、LLDPEの中でも、単段重合気相法メタロセン系LLDPEは耐黄変性に優れることから、更に好ましい。
同じメタロセン系LLDPEであっても、多段重合気相法LLDPEは、分子量分布が広く、ポリスチレン換算重量平均分子量7万以下の低分子量成分が多いため、耐黄変性に優れない。
また、単段重合気相法メタロセン系LLDPEは、C6-LLDPEであることが特に好ましい。
【0055】
(単段重合気相法メタロセン系LLDPE)
単段重合気相法メタロセン系LLDPEは、メタロセン触媒を用いて、気相での単段重合によって合成されたLLDPEであり、従来のチーグラー・ナッタ触媒を用いた多段重合によって合成されたLLDPEよりも、低分子量成分を少なくすることができる。
【0056】
LLDPEは、エチレンと共重合させたモノマー種によって、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPE等の種類に分類される。
C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C6-LLDPEは、エチレンと1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C8-LLDPEは、エチレンと1-オクテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンである。
C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEは、エチレン由来のポリエチレンの主鎖に、それぞれ、1-ブテン、1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン由来の、炭素数が4個、6個、8個の側鎖が存在する分子構造を有する。
【0057】
I-4.接着剤層
透明吸湿PTP用積層体中の接着剤層に用いられる接着剤には、例えば、DL(ドライラミネート)用接着剤、EC(エクストルージョンコート)用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、等を用いることができる。
また、接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のいずれであってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
【0058】
このような接着剤層を形成する成分としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエチレン共重合体系樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステルポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、LDPE等のポリオレフィン系樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、エポキシ系樹脂、反応型(メタ)アクリル系樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系樹脂、シリコーン系樹脂、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系樹脂等が挙げられる。
【0059】
II.透明吸湿PTP包装材料
本発明の透明吸湿PTP包装材料は、本発明の透明吸湿PTP用積層体から作製された、PTP包装体中の、内容物を収容する為の凹部を有する底材部用の包装材料である。
【0060】
III.透明吸湿PTP包装体
本発明の透明吸湿PTP包装体は、蓋材部と、本発明の透明吸湿PTP包装材料から作製されたPTP底材部とからなるPTP包装体である。
【実施例0061】
以下の実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
<原材料>
実施例に用いた原材料の詳細は下記のとおりである。
【0063】
[基材層用樹脂フィルム]
・PVCフィルム1:三菱ケミカル株式会社製PVCフィルム、F―9450。240μm厚。
・PVDCフィルム1:三菱ケミカル株式会社製PVDCフィルム、F-9254。225μm厚。
・PPフィルム1:三菱ケミカル株式会社製PP(ポリプロピレン)フィルム、E0025NA。250μm厚。
・COCフィルム1:大成化工株式会社製 TAS-225。CPP(30μm厚)/COC(190μm厚)/CPP(30μm厚)の3層構造。
【0064】
[吸湿剤]
・吸湿剤1:協和化学工業(株)社製金属酸化物系吸湿剤、DHT-4C。ハイドロタルサイト(マグネシウム・アルミニウム)焼成体、数平均粒子径380nm、屈折率1.51。
・吸湿剤2:戸田工業(株)社製金属酸化物系吸湿剤、LT015B。ハイドロタルサイト(マグネシウム・アルミニウム)焼成体、数平均粒子径200nm、屈折率1.51。・吸湿剤3:協和化学工業(株)社製金属酸化物系吸湿剤、KW2000。ハイドロタルサイト(マグネシウム・アルミニウム)固溶体、数平均粒子径7μm、屈折率1.57。・吸湿剤4:佐々木化学薬品(株)社製金属酸化物系吸湿剤、S-KID ZK50PP。酸化カルシウム。数平均粒子径10μm、屈折率1.84。
【0065】
[バインダー樹脂]
・LLDPE1:株式会社プライムポリマー社製LLDPE、SP2020。密度0.916g/cm3、MFR2.3g/10分、屈折率1.50。
【0066】
[接着剤]
・接着剤1:ロックペイント(株)製ポリエステル/ポリオール系接着剤。質量比ロックボンドJ RU77T/アドロックH-7=10/1。
【0067】
<マスターバッチの調製>
[マスターバッチ1~4の調製]
表1の配合に従って、吸湿剤とバインダー樹脂とをメルトブレンドし、マスターバッチ1~4(MB1~4)を得た。
【0068】
【表1】
【0069】
<吸湿層用樹脂組成物の調製>
【0070】
[吸湿層用樹脂組成物1~4の調製]
表2の記載に従って、マスターバッチとバインダー樹脂とをドライブレンドし、吸湿層用樹脂組成物1~4を得た。
【0071】
【表2】
【0072】
<シーラント層用のフィルムの作製>
【0073】
[透明吸湿フィルムAの作製]
ヒートシール層1用にLLDPE1、吸湿層用に吸湿層用樹脂組成物1、ヒートシール層2用にLLDPE1を用いて、180℃でインフレーション製膜によって積層した。
次いで、ヒートシール層1面にコロナ処理を施して、下記層構成の透明吸湿フィルムAを得た。
層構成:ヒートシール層1(15μm厚、表面コロナ処理)/吸湿層(90μm厚)/ヒートシール層2(15μm厚)
【0074】
[透明吸湿フィルムB~C、吸湿フィルムDの作製]
吸湿層用樹脂組成物の種類と、各層の厚みを表3の記載に従って変更したこと以外は、透明吸湿フィルムAと同様に操作して、透明吸湿フィルムB~C、吸湿フィルムDを作製した。
【0075】
[非吸湿フィルムEの作製]
LLDPE1を用いて、180℃でインフレーション製膜し、片面にコロナ処理を施して、60μm厚の非吸湿フィルムEを得た。
【0076】
【表3】
【0077】
(透明吸湿PTP用積層体の作製と評価)
[実施例1]
【0078】
基材層用のPVCフィルム1の片面にコロナ処理を施し、コロナ処理面に接着剤1を3μm厚で塗布、乾燥し、該塗布面に、上記で作製したシーラント層用の透明吸湿フィルムAのコロナ処理面を貼り合わせて、透明吸湿PTP用積層体を得た。
そして、各種評価を実施した。
層構成:PVCフィルム1(240μm厚)/接着剤1(3μm厚)/シーラント層[ヒートシール層1(15μm厚)/吸湿層(90μm厚)/ヒートシール層2(15μm厚)]
【0079】
[実施例2~9、比較例1~6]
表4、5、6の記載に従って、基材層用のフィルムとシーラント層用のフィルムとを変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、透明吸湿PTP用積層体を作製し、同様に評価した。
【0080】
<評価方法>
【0081】
[製膜性]
シーラント層用のフィルムの外観を肉眼で観察し、不良の有無を下記評価基準で評価した。
〇:皺、ぶつ、剥離が無かった。合格。
△:皺、ぶつ、剥離が少し有った。合格。
×:皺、ぶつ、剥離が多く有った。不合格。
【0082】
[吸湿量]
シーラント層用のフィルムまたは透明吸湿PTP用積層体を縦100mm×横100mmの寸法に切断して試験片を作製した。
得られた試験片を、温度25℃、湿度50%RHの環境下に11日間静置し、試験片の重量の変化量から、1m2当たりの吸湿量を求めた。
【0083】
[全光線透過率及びヘイズ]
シーラント層用のフィルムまたは透明吸湿PTP用積層体を縦50mm×横50mmの寸法に切断して試験片を作製した。
そして、吸湿前及び吸湿後(温度25℃、湿度50%RHの環境下に11日間静置)の試験片について、JIS K7361(プラスチックの光学的特性試験法)に準拠して、色彩情報測定機器ヘーズメーター(株式会社村上色彩技術研究所製HM-150)により、全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0084】
[水蒸気透過度]
MOCON 日立ハイテク製Mocon酸素透過率測定装置を用いて、40℃90%における、吸湿前及び吸湿後(温度25℃、湿度50%RHの環境下に11日間静置)の、シーラント層用のフィルムまたは透明吸湿PTP用積層体の水蒸気透過度を測定した。
【0085】
[耐熱性]
透明吸湿PTP用積層体から、縦100mm×横100mmの寸法に切り出した試験片を2枚作成し、シーラント層同士が対向するように重ね合わせ、ヒートシール機を用いて、一方の基材層面側から、180℃、1kg/cm2、1秒の条件で熱を加えて、外観変化を下記評価基準で判定した。
合 格:加熱前と同等の透明性が維持された。
不合格:白化して透明性が低下した。
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
<結果まとめ>
全実施例は、良好な、高吸湿性、吸湿前および吸湿後の高透明性(高全光線透過率および低ヘイズ)、低水蒸気透過性、高耐熱性のバランスを示した。
一方、ハイドロタルサイトを含有しない吸湿剤を用いた比較例1~3は劣った透明性を示し、吸湿剤を含有しない比較例4~6は劣った吸湿性を示した。
【符号の説明】
【0090】
1 透明吸湿PTP用積層体、透明吸湿PTP包装材料
2 基材層
3 接着剤層
4 吸湿層
5 ヒートシール層
6 シーラント層
7 透明吸湿PTP包装体
8 透明吸湿PTP包装体底材部
9 接着剤層2
10 透明吸湿PTP包装体蓋材部
図1
図2
図3