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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007842
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ接地状態測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20250109BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109497
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石神 直大
(72)【発明者】
【氏名】諫山 直生
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC57
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】タイヤの接地状態をコンパクトな装置構成で精度よく測定可能にする。
【解決手段】タイヤ接地状態測定装置10は、疑似路面12Aを持つ疑似路面板12と、その上方において疑似路面12Aにタイヤ1を接地可能に支持する支持軸16と、タイヤ1の軸方向両側で支持軸16を水平に支える一対の軸支え18と、一対の軸支え18に支持軸16を下方に引き寄せる引張り力を作用させてタイヤ1に荷重をかける荷重付与手段としての伸縮機構部52及び荷重調整部54と、一対の軸支え18に組み込まれて引張り力を検出する一対のロードセル60と、検出された引張り力に基づいてタイヤ1にかかる荷重を算出する荷重算出部62と、疑似路面板12の下方に配されて電磁波を検出して光学的撮影を行う撮影装置32と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実路面相当の凹凸を有する疑似路面を持つ疑似路面板と、
前記疑似路面板の上方において前記疑似路面にタイヤを接地可能に支持する支持軸と、
前記タイヤの軸方向両側で前記支持軸を水平に支える一対の軸支えと、
前記一対の軸支えに前記支持軸を下方に引き寄せる引張り力を作用させて前記タイヤに荷重をかける荷重付与手段と、
前記一対の軸支えに組み込まれて当該一対の軸支えに作用する引張り力を検出する一対の力検出装置と、
前記一対の力検出装置により検出された引張り力に基づいて前記タイヤにかかる荷重を算出する荷重算出部と、
前記疑似路面板の下方に配されて前記疑似路面板を透過した電磁波を検出して光学的撮影を行う撮影装置と、
を備えるタイヤ接地状態測定装置。
【請求項2】
前記疑似路面板の下方に配されて前記疑似路面板を介して前記タイヤと前記疑似路面との接地部分に電磁波を照射する照射装置を更に備える、請求項1に記載のタイヤ接地状態測定装置。
【請求項3】
前記疑似路面板の下方に配されて前記疑似路面板を介して前記タイヤと前記疑似路面との間に介在する蛍光液に対して励起光を照射する照射装置を更に備え、前記撮影装置が前記蛍光液から放出され前記疑似路面板を透過した蛍光を検出するものである、請求項1に記載のタイヤ接地状態測定装置。
【請求項4】
前記タイヤ接地状態測定装置を移動可能に支持する車輪を更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ接地状態測定装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ接地状態測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実路面を想定した凹凸路面に対するタイヤの接地状態を精度よく測定することが求められており、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、実路面相当の凹凸面を有する透明板上に蛍光液を介在させてタイヤを接地させ、透明板の下方から蛍光液に対して励起光を照射し、蛍光液から放出された蛍光を透明板の下方に配した撮影装置で撮影することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、平板上にタイヤを接地させて、平板の下方からタイヤにテラヘルツ波を照射し、タイヤからのテラヘルツ波の反射波を平板の下方に配した検出装置で検出して、反射波の画像を得ることが開示されている。
【0004】
特許文献3には、半透明材料からなる路面体の下側から、タイヤ接地部分の影を画像読取手段により読み取るようにしたタイヤ踏面の接地形状測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-084428号公報
【特許文献2】特開2018-119928号公報
【特許文献3】特開2004-009880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤの接地状態を精度よく測定するためには、タイヤに精度よく荷重をかける必要があり、そのためにはタイヤにかかる荷重を精度よく計測することが求められる。その一方で、上記のような疑似路面板の裏面側から光学的撮影を行うためには疑似路面板の下方に撮影装置を配置させる必要があり、荷重計測のためのスペースが限られる。そのため、タイヤの接地状態をコンパクトな装置構成で精度よく測定することは容易ではない。
【0007】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、タイヤの接地状態をコンパクトな装置構成で精度よく測定することができるタイヤ接地状態測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 実路面相当の凹凸を有する疑似路面を持つ疑似路面板と、前記疑似路面板の上方において前記疑似路面にタイヤを接地可能に支持する支持軸と、前記タイヤの軸方向両側で前記支持軸を水平に支える一対の軸支えと、前記一対の軸支えに前記支持軸を下方に引き寄せる引張り力を作用させて前記タイヤに荷重をかける荷重付与手段と、前記一対の軸支えに組み込まれて当該一対の軸支えに作用する引張り力を検出する一対の力検出装置と、前記一対の力検出装置により検出された引張り力に基づいて前記タイヤにかかる荷重を算出する荷重算出部と、前記疑似路面板の下方に配されて前記疑似路面板を透過した電磁波を検出して光学的撮影を行う撮影装置と、を備えるタイヤ接地状態測定装置。
[2] 前記疑似路面板の下方に配されて前記疑似路面板を介して前記タイヤと前記疑似路面との接地部分に電磁波を照射する照射装置を更に備える、[1]に記載のタイヤ接地状態測定装置。
[3] 前記疑似路面板の下方に配されて前記疑似路面板を介して前記タイヤと前記疑似路面との間に介在する蛍光液に対して励起光を照射する照射装置を更に備え、前記撮影装置が前記蛍光液から放出され前記疑似路面板を透過した蛍光を検出するものである、[1]に記載のタイヤ接地状態測定装置。
[4] 前記タイヤ接地状態測定装置を移動可能に支持する車輪を更に備える、[1]~[3]のいずれか1項に記載のタイヤ接地状態測定装置。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、タイヤの接地状態をコンパクトな装置構成で精度よく測定することができるタイヤ接地状態測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るタイヤ接地状態測定装置の正面図。
図2】同タイヤ接地状態測定装置を構成する設置台の平面図。
図3】同タイヤ接地状態測定装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るタイヤ接地状態測定装置について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るタイヤ接地状態測定装置10(以下、単に「測定装置10」ということがある。)を示す図である。測定装置10は、疑似路面板12の疑似路面12Aに接地させたタイヤ1の接地状態を、当該疑似路面板12を透過した電磁波を検出することにより測定する装置である。
【0013】
電磁波は、電場と磁場の周期的な変化が空間を波動として伝播する現象をいう。電磁波としては、特に限定されず、例えば、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波(テラヘルツ波も含まれる。)などが挙げられる。
【0014】
一実施形態として、以下では、湿潤路面におけるタイヤの接地状態を測定する装置として、タイヤ1と疑似路面12Aとの間に介在する蛍光液に対して励起光を照射し、これにより蛍光液から放出される蛍光を検出してタイヤ1の接地状態を測定する測定装置10を例に挙げて説明する。蛍光特性を持つ物質には、各物質固有で特定の吸収波長域と蛍光波長域が存在する。イメージングに用いる蛍光は一般的には可視光域であるが、紫外線や赤外線のように人の目に見えない電磁波でもよい。励起光は一般に、紫外線、可視光線が用いられるが、着目する物質の吸収波長域に合わせて選択される。
【0015】
図1に示されるように、測定装置10は、疑似路面板12と、当該疑似路面板12が設置されるテーブル14と、タイヤ1を支持する支持軸16と、当該支持軸16を支える一対の軸支え18,18と、ベース台20とを備える。テーブル14と一対の軸支え18,18はベース台20上に設けられている。
【0016】
疑似路面板12は、図3に示されるように、表裏両面のうちの一方の面に実路面相当の凹凸を有する疑似路面12Aを持ち、疑似路面12Aとは反対側の面はこの例では平坦である。疑似路面板12は、図2に示されるように平面視で矩形状であり、一枚の板で図2に示す正方形状に形成されてもよく、帯状の板を複数組み合わせて当該正方形状に形成されてもよい。
【0017】
疑似路面板12は、電磁波が透過可能な平板であり、好ましくは透明板である。上記疑似路面12Aを備えた透明な疑似路面板12の作製方法は、特に限定されず、例えば、実際の路面に対応するアスファルトをシリコーンゴムで型取り、この型に透明樹脂を流し込み、真空脱気状態で硬化させることにより作製することができる。透明樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂を挙げることができる。
【0018】
疑似路面板12は、テーブル14上に取り替え可能に設置され、試験対象とする路面に応じて様々な凹凸形状を持たせたものを複数枚用意し、それらの中から選択して設置することができる。
【0019】
テーブル14は、疑似路面板12を水平に設置するための設置台22を備える。設置台22はテーブル14の天板に設けられている。疑似路面板12は、疑似路面12Aを上方に向けて設置台22の上面に設置される。
【0020】
図2に示すように、設置台22には、下方から疑似路面板12を介してタイヤ1と疑似路面12Aとの接地部分5を観察できるように、矩形状の開口である観察用窓24が設けられている。疑似路面板12は、該観察用窓24を上方から覆うように設置台22に設置される。符号26は、疑似路面板12を設置台22上に位置決めして固定するための固定ブロックである。接地部分5とは、タイヤ1が疑似路面板12に外観上接地しているとみなされる領域であり、タイヤ接地面とも称される。
【0021】
テーブル14には、その天板である設置台22の下方に、照射装置28を設置するための照射装置用スペース30と、撮影装置32を設置するための撮影装置用スペース34とが、棚板36により上下に区分けして設けられている。
【0022】
棚板36の上側の照射装置用スペース30には、疑似路面板12を介してタイヤ1と疑似路面12Aとの接地部分5に電磁波を照射するための照射装置28が設けられている。
【0023】
この例では、照射装置28は、図3に示されるように、光源38とフィルタ40とダイクロイックミラー42とを備える。光源38は、タイヤ1と疑似路面12Aとの間に介在する蛍光液2に対して励起光を照射する。フィルタ40は、光源38から照射される光から特定の波長の光のみを透過し分離する。ダイクロイックミラー42は、フィルタ40で分離された特定の波長の光のみを反射する。照射装置28は、上記接地部分5に対する励起光の照射位置を変更することができるように水平方向に移動可能に構成されてもよい。
【0024】
棚板36の下側の撮影装置用スペース34には、疑似路面板12を透過した電磁波を検出して光学的撮影を行うための撮影装置32が設けられている。撮影装置32は、ベース台20上に設けられた撮影装置設置台44上に設置されている。
【0025】
撮影装置32は、タイヤ1と疑似路面12Aとの接地部分5から疑似路面板12を透過して下方に進む電磁波を検出するものである。例えば、撮影装置32は、照射装置28から照射された電磁波が接地部分5で反射してなる反射波を検出するものでもよく、照射装置28から照射された電磁波に起因して接地部分5で放出された電磁波を検出するものでもよい。
【0026】
この例では、撮影装置32は、接地部分5に存在する蛍光液2から放出されて疑似路面板12を透過した蛍光を検出するものである。撮影装置32は、疑似路面板12を透過した蛍光から特定の波長の光のみを透過させて分離するフィルタ46と、フィルタ46を透過した蛍光を撮影するカメラ48とを備える(図3参照)。カメラ48としては、例えば一眼レフカメラを用いてもよい。撮影装置32は、照射装置28の上記移動に合わせて水平方向に移動可能に構成されてもよい。
【0027】
なお、光源38としては、蛍光液に含まれる蛍光色素の励起スペクトルに合わせて、適宜選択して使用することができ、当該励起スペクトルのピーク波長付近にピーク波長を有する光源(例えば水銀ランプや紫外線LED)が好ましく用いられる。
【0028】
ダイクロイックミラー42やフィルタ40,46は、使用する蛍光色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルに合わせて、適宜選択して使用することができる。フィルタ40,46としては、例えば、蛍光検出を行う際にノイズを除去する波長選択型の蛍光フィルタ、規定波長よりも短波長側の光をカットして長波長側の光を透過させるハイパスフィルタ(ロングパスフィルタ)、規定波長よりも長波長側の光をカットして短波長側の光を透過させるローパスフィルタ(ショートパスフィルタ)、一定の波長域の光のみ透過させ、それ以外の短波長側及び長波長側の光をカットするバンドパスフィルタなどが挙げられる。
【0029】
図1に示されるように、支持軸16は、疑似路面板12の上方において疑似路面12Aにタイヤ1を接地可能に支持する軸部材(シャフト)であり、設置台22の上方に設けられている。タイヤ1はホイール3のリムに装着され、支持軸16は当該ホイール3の中心を貫通した状態に取り付けられる。ホイール3は、ホイール固定ディスク50を用いて、支持軸16に固定されている。
【0030】
軸支え18,18は、タイヤ1を支持した支持軸16を、タイヤ1の軸方向両側で水平に支えることができるように左右一対で設けられている。一対の軸支え18,18は、ベース台20上に直立して設けられて支持軸16を支持する柱である。軸支え18の上端には軸チャック51が設けられ、該軸チャック51を用いて、軸支え18の上端に支持軸16が取り付けられている。一対の軸支え18,18は、テーブル14を挟んだ両側に設けられて支持軸16の両端を支持する。従って、左右一対の軸支え18,18の間にテーブル14が設けられている。
【0031】
測定装置10には、一対の軸支え18,18に支持軸16を下方に引き寄せる引張り力を作用させてタイヤ1に荷重をかけるための荷重付与手段が設けられている。この例では、荷重付与手段は、一対の軸支え18,18の長さを伸縮可能な一対の伸縮機構部52,52と、一対の伸縮機構部52,52を上下方向に伸縮させることで荷重を調整する荷重調整部54とを備える。一対の軸支え18,18の長さを縮めることにより、支持軸16が下方に引き寄せられて、タイヤ1にかかる荷重を高めることができる。また、一対の軸支え18,18の長さを伸ばすことにより、支持軸16が上方に移動して、タイヤ1にかかる荷重を低くすることができる。
【0032】
詳細には、各軸支え18は、外周にネジが切ってある雄ネジ部56Aを少なくとも上端に有する回転可能な下側柱部材56と、雄ネジ部56Aと螺合する雌ネジ部58Aを下端に有する上側柱部材58とを、上下に連結することで構成されている。下側柱部材56を回転させることにより、雄ネジ部56Aと雌ネジ部58Aとの螺合位置が変わって各軸支え18が伸縮する。従って、各伸縮機構部52は、回転可能な雄ネジ部56Aとこれに螺合する雌ネジ部58Aとにより構成されている。なお、回転可能な下側柱部材56に雄ネジ部56Aを設ける代わりに雌ネジ部を設け、これに螺合する雄ネジ部を上側柱部材58の下端に設けてもよい。
【0033】
荷重調整部54は、下側柱部材56の回転を制御することにより一対の伸縮機構部52,52を伸縮させるものであり、この例では手動のハンドル54Aにより構成されている。
【0034】
一対の軸支え18,18の伸縮機構部52,52は同期して伸縮するように構成されている。そのため、ハンドル54Aを回転させると、一対の軸支え18,18で同期して下側柱部材56が回転し、これにより一対の軸支え18,18は同期して伸縮し、軸支え18,18にかかる力が左右均等になる。
【0035】
なお、荷重調整部54は、ハンドル54Aではなく、モーター制御により下側柱部材56の回転を制御するようにしてもよい。
【0036】
測定装置10には、一対の軸支え18,18に作用する引張り力を検出する力検出装置として一対のロードセル60,60が設けられている。ロードセル60は、各軸支え18にそれぞれ組み込まれており、詳細には上側柱部材58に組み込まれている。ロードセル60は、軸支え18に作用する上下方向の力を検出する。
【0037】
図1に示されるように、ロードセル60の両側には左右一対の支え棒61,61が設けられている。支え棒61は、ロードセル60での引張り力の検出を可能にするために、その両端が上下の部材に固定されておらず、すなわち上下フリーに構成されている。
【0038】
測定装置10には、一対のロードセル60,60により検出された引張り力に基づいてタイヤ1にかかる荷重を算出する荷重算出部62が設けられている。荷重算出部62は、一対の軸支え18,18の長さを縮めることで発生する引張り力を左右で合計し、当該引張り力によってタイヤ1にかかる荷重を計算するものであり、例えば簡易マイクロプロセッサなどのコンピュータにより構成することができる。
【0039】
測定装置10には、荷重算出部62により求められたタイヤ1への荷重を表示する荷重表示部64が設けられている。荷重表示部64は一般的なディスプレイで構成することができ、この例では、上記の荷重算出部62及びハンドル54Aとともにベース台20上に設けられている。
【0040】
測定装置10は、当該測定装置10を移動可能に支持する車輪66を備える。車輪66は、ベース台20の下面に取り付けられており、例えば矩形状をなすベース台20の四隅にそれぞれ設けられる。
【0041】
一実施形態において、測定装置10を用いてタイヤ接地状態を測定する際には、設置台22に疑似路面板12を固定し、疑似路面12A上に蛍光液2を注ぐ。蛍光液2としては、例えば、励起スペクトルと蛍光スペクトルとのピーク波長の差が100nm以上である親水性蛍光色素(例えばピラニン)を含有する水溶液が用いられる。
【0042】
次いで、ホイール3に装着したタイヤ1を支持軸16に固定し、該支持軸16を一対の軸支え18,18間に架け渡すように取り付けて、疑似路面12Aにタイヤ1を接地させる。これにより、タイヤ1と疑似路面12Aとの間に蛍光液2が介在した状態で、タイヤ1は疑似路面12Aに接地する。
【0043】
次いで、荷重調整部54のハンドル54Aを回すことにより、一対の軸支え18,18の下側柱部材56,56が回転して上側柱部材58,58が左右で同期しつつ下方に移動し、一対の軸支え18,18が縮む。これにより、一対の軸支え18,18には、支持軸16を下方に引き寄せる力(引張り力)が作用し、タイヤ1に荷重がかかる。その際、各軸支え18に組み込まれたロードセル60により軸支え18に作用する引張り力を検出し、それに基づき荷重算出部62がタイヤ1にかかる荷重を算出し、算出した荷重が荷重表示部64に表示される。そのため、表示された荷重を見ながら、タイヤ1に指定の荷重(例えば、実車相当荷重)を正確にかけることができる。
【0044】
このようにしてタイヤ1に所定の荷重をかけてから、図3に示されるように、照射装置28の光源38から励起光を照射する。光源38から照射された励起光は、フィルタ40によって所定波長(例えば400nm)以下の光が分離される。分離された励起光は、ダイクロイックミラー42で反射されて、疑似路面板12の下面から、タイヤ1と疑似路面12Aとの間に介在する蛍光液2に対して照射される。これにより、蛍光液2に含まれる蛍光色素を基底状態から励起状態へと遷移させる。その後、励起状態の蛍光色素は基底状態へと戻り、その際、蛍光が放出される。
【0045】
放出された蛍光は、疑似路面板12を透過し、ダイクロイックミラー42を透過した後、フィルタ46によって、所定以上の波長(例えば480nm以上)の蛍光が分離され、分離された蛍光が撮影装置32のカメラ48で撮影される。これにより、蛍光の輝度分布(蛍光強度画像)が得られる。
【0046】
得られた輝度分布を、公知の方法により、蛍光液2の膜厚分布に変換し、得られた膜厚分布を基準に、任意の膜厚を閾値として2値化を行う。そして、閾値以下である領域をタイヤ1と疑似路面12Aとが接触している領域とし、例えば、実際にタイヤ1と疑似路面12Aが接触している面積を算出することができる。これにより、実路面を想定した凹凸路面に対するタイヤの真実接触面積を精度よく測定することができる。
【0047】
以上よりなる実施形態に係る測定装置10であると、タイヤ1の接地状態をコンパクトな装置構成で精度よく測定することができる。詳細には、疑似路面板12の上方においてタイヤ1を支持する支持軸16を、タイヤ1の軸方向両側において左右一対の軸支え18,18で支持するようにしたうえで、各軸支え18に作用する引張り力を検出するロードセル60を当該軸支え18に組み込んでいる。これにより、コンパクトな構成でありながら、引張り力を検出可能として、タイヤにかかる荷重を計測することができる。また、荷重算出部62により荷重を計測しながら、荷重付与手段としての伸縮機構部52及び荷重調整部54によりタイヤ1に荷重を付与することができる。そのため、指定された荷重をタイヤ1に精度よくかけることができ、タイヤ接地状態を精度のよく測定することができる。
【0048】
タイヤを支持する構成としては、上記のような左右一対の軸支え18,18ではなく、例えば、片持ち梁によりタイヤの荷重を支えることも考えられる。しかしながら、片持ち梁の場合、剛性を確保するために軸支えに十分な補強が必要になって質量が増加するとともに、荷重を計測するために力検出装置として直交する3方向の力を同時に計測する3分力計が必要になり、コストアップとなる。
【0049】
また、タイヤにかかる荷重を計測するための構成としては、上記のように各軸支え18にロードセル60を組み込むのではなく、例えば、疑似路面板12の底面や装置本体の底面にロードセルを組み込んで圧縮の力を検出し、これによりタイヤにかかる荷重を計測することも考えられる。しかしながら、上記実施形態のように疑似路面板12の下方に撮影装置32を設け、更に照射装置28を設ける場合、疑似路面板12の下方はスペースが限られる。疑似路面板12の底面や装置本体の底面にロードセルを組み込む構成では、その分、タイヤ1を支持する支持軸16の高さが高くなる。そのため、タイヤ1を着脱する際の作業性が損なわれることがある。ロードセル60を各軸支え18に組み込むことにより、例えば支持軸16の高さを100~140cm程度と低くすることができ、タイヤ1を着脱する際の作業性に優れる。また、支持軸16の高さが高くなると、その分、一対の軸支え18,18が高くなるので、軸支え18,18の補強が必要となり、質量増加につながるが、上記実施形態によればこのような質量増加も抑えることができる。
【0050】
以上より、本実施形態によれば、上記のタイヤ支持構成及び荷重計測構成を採用することにより、コストダウン、コンパクト化、軽量化、及び作業性の向上が図られる。
【0051】
上記実施形態に係る測定装置10であると、また、ベース台20に車輪66を設けて移動可能にしたことにより、例えば、低温室や高温室などの試験環境の異なる部屋への移動が容易であり、様々な試験環境での測定が容易になる。また、この場合、測定装置10全体をエレベータに乗せることができるサイズとすることが好ましく、これにより測定装置10の利便性を更に向上することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…タイヤ、2…蛍光液、5…接地部分、10…タイヤ接地状態測定装置、12…疑似路面板、12A…疑似路面、16…支持軸、18…軸支え、28…照射装置、32…撮影装置、52…伸縮機構部(荷重付与手段)、54…荷重調整部(荷重付与手段)、60…ロードセル(力検出装置)、62…荷重算出部、66…車輪
図1
図2
図3