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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007845
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】シールドシステム、および電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250109BHJP
   H01R 9/03 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01R9/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109505
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】梶浦 直哉
(72)【発明者】
【氏名】十河 健司
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇
(72)【発明者】
【氏名】大岡 信治
【テーマコード(参考)】
5E077
5H770
【Fターム(参考)】
5E077BB18
5E077JJ17
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770JA11W
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA11
5H770QA13
5H770QA21
5H770QA28
5H770QA35
5H770QA40
(57)【要約】
【課題】樹脂筐体を採用しつつコモンモードノイズを低減すること。
【解決手段】シールドシステム10は、電池20、MG30、およびインバータ40を備える。インバータ40は、樹脂製の筐体41と、筐体41に収容された電気部品42と、リターン用導体43を有する。電池20は、金属製の筐体21を有する。MG30は、金属製の筐体31を有する。電池20とインバータ40とは、P線51PおよびN線51Nを介して接続されている。インバータ40とMG30とは、出力線61を介して接続されている。リターン用導体43は、筐体21,31に電気的に接続されており、コモンモード電流のリターン経路を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材(21,31)を有する第1機器(20,30)と、
樹脂筐体(41)と、前記樹脂筐体に収容された電気部品(42)と、を有する第2機器(40)と、
前記第1機器と前記第2機器とをつなぐ電力ライン(51,61)と、
を備え、
前記第2機器は、前記金属部材に電気的に接続され、コモンモード電流のリターン経路を提供するリターン用導体(43)を有する、シールドシステム。
【請求項2】
前記電力ラインは、シールド線(50,60)の内部導体であり、
前記リターン用導体は、前記シールド線の外部導体(52,62)を介して、前記金属部材に電気的に接続されている、請求項1に記載のシールドシステム。
【請求項3】
前記リターン用導体の少なくとも一部が、前記樹脂筐体に収容されている、請求項1または請求項2に記載のシールドシステム。
【請求項4】
前記リターン用導体は、前記樹脂筐体にインサートされている、請求項1または請求項2に記載のシールドシステム。
【請求項5】
前記リターン用導体の少なくとも一部が、前記樹脂筐体の外面に配置されている、請求項1または請求項2に記載のシールドシステム。
【請求項6】
前記金属部材は、金属筐体である、請求項1または請求項2に記載のシールドシステム。
【請求項7】
前記第2機器は、電力変換器である、請求項1または請求項2に記載のシールドシステム。
【請求項8】
前記電力変換器は、電力変換回路を構成する前記電気部品と、前記電気部品に電気的に接続された回路基板(425)と、を有し、
前記リターン用導体は、前記樹脂筐体に収容され、前記電気部品と前記回路基板との間に配置されている、請求項7に記載のシールドシステム。
【請求項9】
端子のひとつが前記電力ラインに接続され、前記端子の他のひとつが前記リターン用導体に接続されたYコンデンサ(80)を備える、請求項1または請求項2に記載のシールドシステム。
【請求項10】
前記第1機器として、電池と回転電機を備え、
前記第2機器として、電力変換器を備えており、
前記Yコンデンサは、前記リターン用導体の前記電池側の端部と前記回転電機側の端部とのうち、前記電池側の端部に近い位置で前記リターン用導体に接続されている、請求項9に記載のシールドシステム。
【請求項11】
前記第1機器として、電池と回転電機を備え、
前記第2機器として、電力変換器を備えており、
前記Yコンデンサは、前記リターン用導体の前記電池側の端部と前記回転電機側の端部とのうち、前記電池側の端部に近い位置で前記リターン用導体に接続されている、請求項9に記載のシールドシステム。
【請求項12】
前記第1機器として、電池と回転電機を備え、
前記第2機器として、半導体素子(4211)を含む電力変換器を備えており、
前記電池の金属部材、前記回転電機の金属部材、および前記電力変換器の前記リターン用導体は、ボディグランドに電気的に接続されており、
端子のひとつが前記電力ラインに接続され、前記端子の他のひとつが前記リターン用導体に接続されたYコンデンサ(80)と、
前記電池の金属部材と前記リターン用導体とを電気的に接続する第1接続線(52,53)と、
前記回転電機の金属部材と前記リターン用導体とを電気的に接続する第2接続線(62,63)と、を備え、
前記電池の金属部材と前記Yコンデンサとをつなぐ前記第1接続線および前記リターン用導体のインダクタンスと、前記Yコンデンサの静電容量との共振周波数がAM帯にあり、
前記電池の金属部材から、前記第1接続線、前記リターン用導体、および前記Yコンデンサを介して前記半導体素子までの第1経路の周波数fの関数であるインピーダンスZpn(f)と、前記電池の金属部材から、ボディグランドを介して前記半導体素子までの第2経路の周波数fの関数であるインピーダンスZmg(f)の関係が、AM帯の範囲でZpn(f)<Zmg(f)を満たす、請求項1に記載のシールドシステム。
【請求項13】
前記電力変換器は、前記電池との間の前記電力ラインに電気的に接続されるバスバー(427,428)を有し、
前記リターン用導体において前記第1接続線と前記Yコンデンサとを電気的に接続する部分が、前記バスバーに対向配置されている、請求項12に記載のシールドシステム。
【請求項14】
前記電力変換器を前記ボディグランドに接続するためのグランド線(45)、および、前記リターン用導体において前記グランド線との接続部分と前記第2接続線とを電気的に接続する部分、の少なくとも一方に対して並列接続されたコンデンサ(90)を備える、請求項12または請求項13に記載のシールドシステム。
【請求項15】
樹脂筐体(41)と、
前記樹脂筐体に収容され、電力ラインを通じて他の機器と電気的に接続される電気部品(42)と、
前記他の機器の金属部材に電気的に接続され、コモンモードノイズのリターン経路を提供するリターン用導体(43)と、
を備える、電気機器。
【請求項16】
前記電力ラインは、シールド線(50,60)の内部導体であり、
前記リターン用導体は、前記シールド線の外部導体(52,62)を介して、前記金属部材に電気的に接続される、請求項15に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、シールドシステム、および電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電気ユニットを開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-216845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、複数の電気機器、複数のバスバー、およびバスバーを保持する保持体が、金属フレームの一面上に配置された状態で金属ケースに収容されている。保持体には、バスバーとともに冷却バーが保持されている。冷却バーは互いに離間した複数箇所で金属フレームに接続されている。冷却バーにコモンモード電流が流れるため、ループ面積を小さくし、コモンモードノイズを低減できる。
【0005】
近年、軽量化、低コスト化、製造時におけるCO2排出量の削減などのために、電気機器が備える筐体の樹脂化が求められている。しかしながら、樹脂筐体を採用すると、コモンモード電流の経路が樹脂筐体によって分断されてしまう。つまり、シールドシステムのシールド構造が樹脂筐体によって分断されてしまう。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、シールドシステム、および電気部品にはさらなる改良が求められている。
【0006】
本開示の目的のひとつは、樹脂筐体を採用しつつコモンモードノイズを低減できるシールドシステム、および電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示のひとつの態様は、シールドシステムであって、
金属部材(21,31)を有する第1機器(20,30)と、
樹脂筐体(41)と、樹脂筐体に収容された電気部品(42)と、を有する第2機器(40)と、
第1機器と第2機器とをつなぐ電力ライン(51,61)と、
を備え、
第2機器は、金属部材に電気的に接続され、コモンモード電流のリターン経路を提供するリターン用導体(43)を有する。
【0008】
開示のシールドシステムによれば、第2機器が、樹脂筐体と、リターン用導体を有している。リターン用導体は、第1機器の金属部材に電気的に接続されている。第2機器から電力ラインを通じて第1機器へ流れたコモンモード電流は、金属部材およびリターン用導体を通じて第2機器に戻る。このように、リターン用導体は、コモンモード電流のリターン経路を提供する。よって、樹脂筐体を採用しつつ、コモンモードノイズを低減することができる。
【0009】
開示の他のひとつの態様は、電気機器であって、
樹脂筐体(41)と、
樹脂筐体に収容され、電力ラインを通じて他の機器と電気的に接続される電気部品(42)と、
他の機器の金属部材に電気的に接続され、コモンモードノイズのリターン経路を提供するリターン用導体(43)と、
を備える。
【0010】
開示の電気機器によれば、樹脂筐体と、リターン用導体を備えている。リターン用導体は、他の機器の金属部材に電気的に接続されている。電気機器から電力ラインを通じて他の機器へ流れたコモンモード電流は、金属部材およびリターン用導体を通じて電気機器に戻る。このように、リターン用導体は、コモンモード電流のリターン経路を提供する。よって、樹脂筐体を採用しつつ、コモンモードノイズを低減することができる。
【0011】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る電気機器、およびシールドシステムの一例を示すである。
図2】シールドシステムの参考例を示す図である。
図3】シールドシステムの参考例を示す図である。
図4】磁界計測の結果を示す図である。
図5】電界計測の結果を示す図である。
図6】シールドシステムの別例を示す図である。
図7】シールドシステムの別例を示す図である。
図8】電気機器の一例を示す断面図である。
図9】リターン用導体を示す平面図である。
図10】リターン用導体の別例を示す平面図である。
図11】リターン用導体の別例を示す平面図である。
図12】リターン用導体の別例を示す断面図である。
図13】リターン用導体の別例を示す断面図である。
図14】リターン用導体の別例を示す断面図である。
図15】リターン用導体の別例を示す断面図である。
図16】リターン用導体の別例を示す断面図である。
図17】インターフェースの一例を示す図である。
図18】インターフェースの別例を示す図である。
図19】インターフェースの別例を示す図である。
図20】インターフェースの別例を示す図である。
図21】リターン用導体と電気部品との電気的な接続例を示す図である。
図22】Yコンデンサを備えた構成の一例を示す図である。
図23】リターン用導体の電池側の部分のインダクタンスと伝導ノイズとの関係を示す図である。
図24】Yコンデンサを備えた構成の別例を示す図である。
図25】リターン用導体のMG側の部分のインダクタンスと伝導ノイズとの関係を示す図である。
図26】第2実施形態に係るシールドシステムの一例を示す図である。
図27】伝導ノイズの測定結果を示す図である。
図28】バスバーとリターン用導体との位置関係を示す平面図である。
図29】バスバーとリターン用導体との位置関係を示す側面図である。
図30】リターン用導体の幅、対向距離、およびインダクタンスの関係を示す図である。
図31】シールドシステムの別例を示す図である。
図32】伝導ノイズの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0014】
なお、Aおよび/またはBとの記載は、AおよびBの少なくともひとつを意味する。つまり、Aのみ、Bのみ、AとBの両方、を含み得る。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態に係るシールドシステムは、複数の電気機器と、電気機器をつなぐ電力ラインを備え、電気機器として樹脂筐体を有する機器を少なくともひとつ含む構成に適用することができる。シールドシステムは、シールド構造を有する電気ユニットと称されることがある。シールドシステムは、移動体に搭載されてもよい。樹脂筐体の採用により、軽量化、低コスト化、製造時におけるCO2排出量の削減などを図ることができる。
【0016】
移動体は、たとえば車両、飛行体、船舶、建設機械、農業機械などである。シールドシステムは、電気機器として、たとえば、インバータやDCDCコンバータなどの電力変換器、MG、電池、ESU、充電器、ヒータ、電動コンプレッサなどを含み得る。MGは、Motor Generatorの略称である。ESUは、Electricity Supply Unitの略称である。ESUは、電流を検知する電流センサー、充電、電力変換、電力分配の各機能を集約した装置である。MGに代えて、電動機および発電機の一方の機能のみを有する回転電機を含んでもよい。
【0017】
以下においては、シールドシステムが車両に搭載される例を示す。このようなシールドシステムは、車載システムと称されることがある。また、シールドシステムが、電池、車両の走行駆動源として機能するMG、およびインバータ(電力変換器)を備える例を示す。このようなシールドシステムは、電駆動システムと称されることがある。
【0018】
<基本構成>
図1は、本実施形態に係る、樹脂筐体を備えた電気機器、およびシールドシステムの一例を示している。図1では、明確化のために、金属製の筐体を実線で示し、樹脂製の筐体を破線で示している。図1に示すように、シールドシステム10は、電気機器として、電池(BAT)20、MG30、およびインバータ(INV)40を備えている。シールドシステム10は、複数の電気機器に加えて、電力ラインを提供するシールド線50,60を備えている。
【0019】
電池20は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの充放電可能な二次電池で構成された高圧の直流電源である。電池20は、筐体21と、筐体21に収容された図示しない電池セル(電気部品)を備えている。電池20は、複数の電池セルにより構成される組電池を少なくともひとつ備えている。複数の電池セルの個数や配置は特に限定されない。複数の電池セルは、直列接続されてもよいし、並列接続かつ直列接続されてもよい。各電池セルは、発電要素と、発電要素を収容する電池ケースを有している。電池20は、各電池セルが有する電極端子を接続するバスバーを備えている。
【0020】
電池20は、後述のリターン用導体と電気的に接続されて、コモンモード電流の経路を提供する金属部材を備えている。電池20は、金属部材として金属製の筐体21を備えてもよいし、筐体21に代えて、または付加して他の金属部材、たとえばバスバーや金属製の電池ケースなどを備えてもよい。電池20は、図1に示すようにボディグランドに電気的に接続されてもよいし、ボディグランドに対して未接続でもよい。ボディグランドは、車両における基準電位であり、たとえば車両のフレーム(シャーシ)により提供される。たとえば金属製の筐体21が、フレームに電気的に接続されてもよい。金属製の筐体21は、電池20において基準電位を提供する。電池20における基準電位は、ケースグランド、電源グランドなどと称されることがある。図1では、ボディグランドをボディGNDと示している。
【0021】
MG30は、三相交流方式の回転電機である。MG30は、車両の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。MG30は、回生時に発電機として機能する。MG30は、筐体31と、筐体31に収容された巻線32などの回転電機要素(電気部品)を備えている。
【0022】
MG30も、電池20同様、リターン用導体と電気的に接続されて、コモンモード電流の経路を提供する金属部材を備えている。MG30は、金属部材として金属製の筐体31を備えてもよいし、筐体31に代えて、または付加して他の金属部材を備えてもよい。MG31は、ボディグランドに電気的に接続されてもよいし、ボディグランドに対して未接続でもよい。たとえば金属製の筐体31が、フレームに電気的に接続されてもよい。金属製の筐体31は、MG30において基準電位を提供する。
【0023】
インバータ40は、直流電源である電池20とMG30との間で電力変換を行う。インバータ40は、DC-AC変換回路である。インバータ40は、図示しない回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、MG30へ出力する。これにより、MG30は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ40は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてMG30が発電した三相交流電圧を、上記回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、電池20側へ出力する。このように、インバータ40は、電池20とMG30との間で双方向の電力変換を行う。
【0024】
インバータ40は、三相分の上下アーム回路を備えて構成されている。各アームは、MOSFETやIGBTなどのスイッチング素子を備えて構成されている。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。インバータ40は、三相分の上下アーム回路に加えて、平滑用のコンデンサを備えてもよい。
【0025】
インバータ40は、樹脂製の筐体41と、筐体41に収容された電気部品42を備えている。電気部品42は、たとえば上記したスイッチング素子や、コンデンサ素子である。インバータ40は、さらにリターン用導体43を備えている。リターン用導体43は、他の電気機器の金属部材に電気的に接続され、コモンモード電流の経路、具体的にはリターン経路を提供する。インバータ40は、ボディグランドに電気的に接続されてもよいし、ボディグランドに対して未接続でもよい。
【0026】
シールド線50,60は、周知の構造をなしている。シールド線50,60のそれぞれは、内部導体、内部導体を取り囲む絶縁材、絶縁材を介して内部導体を取り囲むように配置された外部導体、および外部導体を覆う絶縁被覆を備えている。シールド線50は、内部導体51であるP線51PおよびN線51Nと、外部導体52を備えている。P線51Pは、電池20の正極端子とインバータ40の上下アーム回路の高電位側端子とを電気的に接続している。N線51Nは、電池20の負極端子とインバータ40の上下アーム回路の低電位側端子とを電気的に接続している。内部導体51、つまりP線51PおよびN線51Nは、電池20とインバータ40とをつなぐ電力ラインである。P線51PおとN線51Nは、絶縁材を介して対向配置されている。P線51PおよびN線51Nは、並走している。
【0027】
外部導体52は、P線51PおよびN線51Nに対する電磁シールドとして機能するため、PNシールド線と称されることがある。上記したように、外部導体52は、内部導体51の近傍に配置されている。外部導体52は、内部導体51に対し、絶縁材を介して対向配置されている。外部導体52は、内部導体51と並走している。外部導体52の端部のひとつは、電池20の金属部材、たとえば金属製の筐体21に電気的に接続されている。外部導体52の端部の他のひとつは、リターン用導体43に電気的に接続されている。
【0028】
シールド線60は、内部導体である出力線61と、外部導体62を備えている。以下では、出力線61を、内部導体61と示すことがある。出力線61は、インバータ40の上下アーム回路の出力端子(中点)とMG30の対応する相の巻線32とを電気的に接続している。出力線61は、U相の出力線、V相の出力線、W相の出力線を含む。出力線61は、インバータ40とMG30とをつなぐ電力ラインである。
【0029】
外部導体62は、出力線61に対する電磁シールドとして機能するため、MGシールド線、モータシールド線などと称されることがある。上記したように、外部導体62は、出力線61の近傍に配置されている。外部導体62は、出力線61に対し、絶縁材を介して対向配置されている。外部導体62の端部のひとつは、リターン用導体43に電気的に接続されている。外部導体62の端部の他のひとつは、MG30の金属部材、たとえば金属製の筐体31に電気的に接続されている。
【0030】
上記した構成では、電池20およびMG30が第1機器に相当する。インバータ40が第2機器に相当する。インバータ40が、樹脂筐体を備える電気機器に相当する。
【0031】
図2および図3は、シールドシステムの参考例を示す図である。図2および図3は、図1に対応している。参考例では、本実施形態の関連する要素の符号末尾にrを付加して示している。
【0032】
図2に示す参考例では、インバータ40rが金属製の筐体41rを備えている。インバータ40rは、リターン用導体を備えていない。シールド線50rの外部導体52rは、筐体41rに電気的に接続されている。シールド線60rの外部導体62rも、筐体41rに電気的に接続されている。その他の構成は、図1に示す構成と同様である。
【0033】
図3に示す参考例では、インバータ40rが樹脂製の筐体41rを備えている。インバータ40rは、リターン用導体を備えていない。このため、シールド線50rの外部導体52rは、インバータ40rの要素に対して電気的に接続されていない。シールド線60rの外部導体62rも、インバータ40rの要素に対して電気的に接続されていない。その他の構成は、図1に示す構成と同様である。
【0034】
図1図2、および図3では、コモンモード電流の流れを一点鎖線の矢印で示している。図2に示す参考例では、上記したように金属製の筐体41rを用いている。このため、筐体41rが、コモンモード電流の経路、具体的にはリターン経路を提供する。スイッチング動作に起因して生じるコモンモード電流は、インバータ40rからP線51PrおよびN線51Nrを通じて電池20rに流れ、電池20rの金属部材を通じて外部導体52rに伝わる。さらに、外部導体52rから筐体41rおよび外部導体62rを通じてMG30rに流れ、出力線61rを通じてインバータ40rに戻る。
【0035】
電磁ノイズの大きさは、流れる電流の大きさとループ面積に比例し、アンテナ距離の3乗に反比例する。図2に示す構成では、金属製の筐体41rを備えることで、リターンラインが電力ラインに近い。これにより、コモンモード電流のループ面積が小さい。よって、放射ノイズ(コモンモードノイズ)を低減することができる。
【0036】
図3に示す参考例では、上記したように樹脂製の筐体41rを用いている。このため、コモンモード電流は、インバータ40rからP線51PrおよびN線51Nrを通じて電池20rに流れ、電池20rからボディグランドを通じてMG30rに伝わる。そして、出力線61rを通じてインバータ40rに戻る。図3に示す構成では、インバータ40rと外部導体52r,62rとの間でシールド構造が分断されているため、リターンラインが電力ラインに対して離れた位置にある。これにより、コモンモード電流のループ面積が大きい。よって、図2に示す構成に較べて放射ノイズ(コモンモードノイズ)が大きくなる。つまり、ノイズが漏洩する虞がある。
【0037】
図1に示す本実施形態の構成では、樹脂製の筐体41に代えて、リターン用導体43がコモンモード電流の経路、具体的にはリターン経路を提供する。コモンモード電流は、インバータ40からP線51PおよびN線51Nを通じて電池20に流れ、電池20の金属部材を通じて外部導体52に伝わる。さらに、外部導体52からリターン用導体43および外部導体62を通じてMG30に流れ、出力線61を通じてインバータ40に戻る。図1に示す構成は、リターン用導体43を備えることで、リターンラインが電力ラインに近い。これにより、コモンモード電流のループ面積が小さい。ループ面積は、図2に示した参考例と同等以下である。よって、放射ノイズ(コモンモードノイズ)を低減することができる。
【0038】
図4は、磁界の測定結果を示している。図中において金属筐体は図2の参考例の構成、樹脂筐体は図3の参考例の構成、リターン用導体は図1の構成に対応している。金属筐体とリターン用導体は、ほぼ同じ結果であった。樹脂筐体にリターン用導体を加えることで、たとえば1MHzにおいて40dBのノイズ低減が確認された。図5は、電界の測定結果を示している。樹脂筐体にリターン用導体を加えることで、たとえば1MHzにおいて38dBの強度低下を確認できた。このように、磁界、電界の測定結果からも、リターン用導体43による効果を確認できた。
【0039】
シールドシステム10は、図1に示す構成に限定されない。図1では、シールド線50,60の外部導体52,62を介して、電池20およびMG30それぞれの金属部材とリターン用導体43とを電気的に接続する例を示したが、これに限定されない。つまり、シールド線50,60を用いる例に限定されない。たとえば図6に示すように、P線51PおよびN線51Nとは別に設けられた接続線53を用いて、リターン用導体43を電池20の金属部材に電気的に接続してもよい。出力線61とは別に設けられた接続線63を用いて、リターン用導体43をMG30の金属部材に電気的に接続してもよい。
【0040】
図示を省略するが、リターン用導体43を延設し、外部導体52,62や接続線53,63を介さずに、電池20やMG30の金属部材に電気的に接続してもよい。つまり、直接的に接続してもよい。
【0041】
リターン用導体を備える電気機器は、上記シールドシステム10においてインバータ40に限定されない。インバータ40に代えて、電池20やMG30にリターン用導体を設けてもよい。リターン用導体は、電池20、MG30、およびインバータ40の少なくともひとつに設ければよい。たとえば図7に示すように、電池20が樹脂製の筐体21とリターン用導体23を備えてもよい。図7では、電池20とインバータ40がリターン用導体23,43を備えている。コモンモード電流は、P線51PおよびN線51Nからリターン用導体23を通じて外部導体52に流れる。電池20、MG30、およびインバータ40のすべてにリターン用導体を設けてもよい。電池20、MG30、およびインバータ40の一部が第1機器に相当し、他の一部が第2機器に相当する。第1機器のリターン用導体が金属部材に相当する。
【0042】
<リターン用導体および電気機器>
リターン用導体43の材料、配置、形状などは、特に限定されない。他の電気機器の金属部材に電気的に接続可能でればよい。リターン用導体43は、導電性に優れる材料、たとえば銅、アルミニウム、鉄などの金属材料を用いて形成してもよい。金属以外の導電性に優れる材料を用いてもよい。
【0043】
図8および図9は、リターン用導体43、およびリターン用導体43を備えるインバータ40(電気機器)の一例を示している。図8および図9では、インバータ40の高さ方向をZ方向、Z方向に直交する一方向をX方向、Z方向およびX方向の両方向に直交する方向をY方向としている。図8では、便宜上、電気部品同士を電気的に接続する部材、たとえばバスバーを省略している。
【0044】
図8に示すように、インバータ40は、樹脂製の筐体41に収容された電気部品42として、半導体モジュール421、出力端子台422、平滑コンデンサを提供するコンデンサ素子423、入力端子台424、回路基板425などを有している。半導体モジュール421は、上下アーム回路を提供する。半導体モジュールの出力端子は、出力端子台422を介して、出力バスバー426に電気的に接続されている。インバータ40は、三相分の出力バスバー426を備える。出力バスバー426は、筐体41の外に突出している。出力バスバー426の突出部分に、出力線61が接続される。
【0045】
半導体モジュール421の高電位側端子、低電位側端子は、バスバーなどの導電部材を介してコンデンサ素子423の対応する端子に接続されている。コンデンサ素子423の端子は、入力端子台424を介して、Pバスバー427や図示しないNバスバーに接続されている。Pバスバー427およびNバスバーは、筐体41の外に突出している。Pバスバー427の突出部分にP線51Pが接続される。同様に、Nバスバーの突出部分にN線51Nが接続される。回路基板425は、半導体モジュール421が備えるスイッチング素子を駆動するための回路などが形成されている。
【0046】
リターン用導体43は、その少なくとも一部が樹脂製の筐体41に収容されてもよい。図8に示す例では、リターン用導体43の一部が筐体41内の空間に配置され、他の一部が筐体41の外に突出している。図8および図9に示すように、リターン用導体43は、筐体41内に配置される本体部431と、本体部431に連なり、本体部431の端部から延びる端子部432を有している。
【0047】
リターン用導体43は、たとえばZ方向を板厚方向とする金属板である。リターン用導体43は、ねじ締結などにより、筐体41に固定されている。本体部431は、X方向を長手方向、Y方向を短手方向とする平面略矩形状をなしている。本体部431は、Z方向の平面視において半導体モジュール421やコンデンサ素子423などの電気部品と重なるように配置されている。本体部431は、筐体41内の空間を、半導体モジュール421やコンデンサ素子423などが配置される空間と、回路基板425が配置される空間とに区画している。つまりパワー回路要素とパワー回路を駆動する駆動回路要素とを区画している。本体部431は、パワー回路要素と駆動回路要素との間においてシールド機能を提供する。
【0048】
このような本体部431を有するリターン用導体43は、金属ステーなどと称されることがある。本体部431には、図示しない貫通孔が形成されている。貫通孔には、たとえば半導体モジュール421の図示しない信号端子が貫通孔を挿通し、回路基板425に接続されている。本体部431には、電気部品42の少なくともひとつが固定されてもよい。
【0049】
端子部432は、本体部431のX方向における端部のそれぞれからX方向に延びている。端子部432の少なくとも一部は、筐体41の外に突出している。そして、端子部432のひとつにシールド線50の外部導体52が接続され、端子部432の他のひとつにシールド線60の外部導体62が接続される。リターン用導体43は、外部導体52,62と面接続される。リターン用導体43と外部導体52,62とは、板面同士が重なるようにして接続される。リターン用導体43の一部は、Z方向において内部導体51、および/または、Pバスバー427、Nバスバーと対向している。リターン用導体43の一部は、Z方向において内部導体61、および/または、出力バスバー426と対向している。
【0050】
なお、筐体41に収容されるリターン用導体43の形状や配置は、上記した例に限定されない。たとえば図10に示すように、線状のリターン用導体43を用いてもよい。リターン用導体43は、金属細線でもよい。リターン用導体43は、金属細線をひとつのみ含んでもよいし、図10に示すように複数含んでもよい。金属細線それぞれの一端は外部導体52に接続され、他端は外部導体62に接続される。リターン用導体43は、外部導体52,62と線接続される。線接続よりも上記した面接続のほうが、インダクタンスを低減することができる。面接続のほうが、コモンモードノイズを低減する効果が高い。
【0051】
図11に示すように、本体部431がメッシュ状をなすリターン用導体43を用いてもよい。リターン用導体43は、平板状に限定されない。屈曲部を有していてもよいし、部分的に厚みが異なってもよい。
【0052】
リターン用導体43として、筐体41内に配置される金属ステーを利用する例を示したが、これに限定されない。筐体41内に配置される別の金属部材を利用してもよい。たとえば冷却器を内蔵する構成において、冷却器を構成する金属ベースを利用してもよい。
【0053】
図12に示すように、リターン用導体43は筐体41にインサートされてもよい。つまり、リターン用導体43の一部が樹脂製の筐体41に埋設されていてもよい。リターン用導体43が、筐体41と一体的に成形されていてもよい。図12は、図10に対応している。リターン用導体43は、筐体41に埋まっている埋設部433と、埋設部433に連なり、筐体41に外に突出する端子部434を有している。
【0054】
図13に示すように、リターン用導体43は、筐体41の外面41aに配置されてもよい。図13は、図10に対応している。リターン用導体43は、めっき処理などによって、外面41a上に設けられている。リターン用導体43は、筐体41の外部に位置しているため、電力ラインに接続するための端子部を設けなくてもよい。もちろん、端子部を設けてもよい。
【0055】
図14に示すように、リターン用導体43は、筐体41の内面41bに配置されてもよい。図14は、図10に対応している。リターン用導体43は、めっき処理などによって、内面41b上に設けられている。リターン用導体43は、内面41bに配置された本体部435と、本体部435に連なり、筐体41に外に突出する端子部436を有している。
【0056】
図15に示すように、インバータ40は、複数のリターン用導体43を備えてもよい。複数のリターン用導体43は、互いに異なる種類、たとえば金属ステーと外面配置の組み合わせでもよいし、同じ種類でもよい。図15では、リターン用導体43が、半導体モジュール421やコンデンサ素子423をZ方向における上下から覆っている。図示を省略するが、半導体モジュール421やコンデンサ素子423を囲うようにリターン用導体43を設けてもよい。たとえば、Z方向だけでなく、Y方向においても半導体モジュール421やコンデンサ素子423を覆うように、リターン用導体43を設けてもよい。コモンモード電流が流れる経路のインダクタンスを低減することで、コモンモードノイズの低減効果を高めることができる。
【0057】
図16に示すように、回路基板425のグランド層425Gをリターン用導体43として用いてもよい。グランド層425Gが、リターン用導体43の本体部431を提供する。グランド層425Gに端子部432が接合されている。グランド層425Gは、いわゆるベタグランドである。図16に示すように、グランド層425Gを回路基板425の裏面のほぼ全域に設けてもよい。
【0058】
<入出力インターフェース>
リターン用導体を備える電気機器において、他の電気機器と電気的に接続するための入出力のインターフェース部の位置は、特に限定されない。リターン用導体43を備えるインバータ40において、電池20とのインターフェース部とMG30とのインターフェース部とを、筐体41の互いに異なる面に設けてもよい。
【0059】
たとえば図17に示すように、筐体41は、第1面41cと第2面41dを有している。第2面41dは、第1面41cとは一方向において反対の面である。リターン用導体43は、一方向、つまり第1面41cと第2面41dとの対向方向に延びている。インバータ40は、第1面41cと第2面41dに、インターフェース部を有してもよい。図1図8などに示したインバータ40が、図17に示す構成に相当する。
【0060】
図18に示す例では、第2面41dが、第1面41cの隣に位置している。リターン用導体43は、第1面41cから第2面41dに向けて延びている。リターン用導体43は、たとえば屈曲部を有してもよい。インバータ40は、第1面41cと第2面41dに、インターフェース部を有している。
【0061】
インバータ40において、電池20とのインターフェース部とMG30とのインターフェース部とを、筐体41の共通する面に設けてもよい。図19に示す例では、インバータ40が、第1面41cに、2つのインターフェース部を有している。
【0062】
図20に示すように、インバータ40が、インターフェース部をひとつのみを備えてもよい。インバータ40は、第1面41cにひとつのインターフェース部を有している。図8に示した電池20が、図20に示す構成に相当する。
【0063】
なお、インターフェース部をひとつのみを有する構成では、図21に一点鎖線の矢印で示すように、コモンモード電流が、リターン用導体43から寄生容量70を介して電気部品42に戻る構成でもよい。寄生容量70は、たとえば上下アーム回路の出力端子に接続されたバスバーとリターン用導体43との間に形成されてもよい。寄生容量70に代えて、コンデンサを設けてもよい。
【0064】
図17図20では、いずれもインバータ40の例を示したが、これに限定されない。樹脂製の筐体とリターン用導体を備える電気機器であれば適用することができる。
【0065】
<Yコンデンサ>
シールドシステム10は、Yコンデンサを備えてもよい。Yコンデンサの端子のひとつは電力ラインに接続され、端子の他のひとつはリターン用導体に接続される。たとえば上記したシールドシステム10において、図22に示すように、Yコンデンサ80を設けてもよい。図22は、シールドシステム10のうち、インバータ40の周辺を示している。
【0066】
Yコンデンサ80のひとつは、P線51Pとリターン用導体43との間に設けられている。Yコンデンサ80の他のひとつは、N線51Nとリターン用導体43との間に設けられている。Yコンデンサ80(コンデンサ素子)に対して抵抗などの受動素子を直列に接続してもよいし、並列接続してもよい。電池20の電圧によっては、Yコンデンサ80を、P線51Pとリターン用導体43との間、および、N線51Nとリターン用導体43の一方のみに設けてもよい。Yコンデンサ80を設けることで、一点鎖線の矢印で示すように、Yコンデンサ80を含むコモンモード電流の経路が形成される。この経路のループ面積は、Yコンデンサ80を介さない経路のループ面積よりも小さい。
【0067】
図22に示すように、Yコンデンサ80を、リターン用導体43における電池20側の端部に近い位置で、リターン用導体43に接続してもよい。図22では、リターン用導体43における外部導体52との接続端と外部導体62との接続端のうち、外部導体52との接続端に近い位置で、Yコンデンサ80をリターン用導体43に接続している。これにより、Yコンデンサ80を2つの接続端の中間位置や外部導体62との接続端に対して近い位置に接続する構成に較べて、リターン用導体43におけるYコンデンサ80より電池20側の部分のインダクタンスを小さくすることができる。
【0068】
以下では、リターン用導体43におけるYコンデンサ80との接続部分よりも電池20側の部分を、リターン用導体43の電池20側の部分と示すことがある。リターン用導体43におけるYコンデンサ80との接続部分よりもMG30側の部分を、リターン用導体43のMG30側の部分と示すことがある。
【0069】
図23は、リターン用導体43の電池20側の部分のインダクタンスと伝導ノイズとの関係を示している。縦軸に示す伝導ノイズは、図中において上方ほど強度が高い。インダクタンスは3水準示しており、実線のインダクタンスがもっとも小さく、一点鎖線のインダクタンスがもっとも大きい。破線のインダクタンスは、実線と一点鎖線の間の値である。図23に示すように、リターン用導体43の電池20側の部分のインダクタンスを小さくするほど、1MHz以下においてコモンモードノイズの低減効果が高くなることが確認できた。
【0070】
図24に示すように、Yコンデンサ80を、リターン用導体43におけるMG30側の端部に近い位置で、リターン用導体43に接続してもよい。図24では、リターン用導体43における外部導体52との接続端と外部導体62との接続端のうち、外部導体62との接続端に近い位置で、Yコンデンサ80をリターン用導体43に接続している。これにより、Yコンデンサ80を2つの接続端の中間位置や外部導体52との接続端に対して近い位置に接続する構成に較べて、リターン用導体43のMG30側の部分のインダクタンスを小さくすることができる。
【0071】
図25は、リターン用導体43のMG30側の部分のインダクタンスと伝導ノイズとの関係を示している。図23同様、縦軸に示す伝導ノイズは、図中において上方ほど強度が高い。インダクタンスは3水準示しており、実線のインダクタンスがもっとも小さく、一点鎖線のインダクタンスがもっとも大きい。破線のインダクタンスは、実線と一点鎖線の間の値である。図25に示す0.1MHz~10MHz超の広い周波数域において、リターン用導体43のMG30側の部分のインダクタンスを小さくするほど、コモンモードノイズの低減効果が高くなることが確認できた。
【0072】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、インバータ40(第2機器、電気機器)が、樹脂製の筐体41と、リターン用導体43を有している。リターン用導体43は、電池20やMG30(第1機器、他の機器)の金属部材に電気的に接続されている。インバータ40から電力ラインを通じて電池20へ流れたコモンモード電流は、金属部材およびリターン用導体43を通じてインバータ40に戻る。このように、リターン用導体43は、コモンモード電流のリターン経路を提供する。リターン用導体43を経由するコモンモード電流の経路のループ面積は、ボディグランドを経由するコモンモード電流の経路のループ面積よりも小さい。よって、樹脂製の筐体41を採用しつつ、コモンモードノイズを低減することができる。シールドシステム10は、少なくともひとつの第1機器と、少なくともひとつの第2機器を備えればよい。
【0073】
電力ラインがシールド線50,60の内部導体51,61であり、リターン用導体43が、シールド線50,60の外部導体52,62を介して、金属部材に電気的に接続された構成としてもよい。シールド線50,60の外部導体52,62を利用して、リターン用導体43と金属部材とを接続する。外部導体52,62は、内部導体51,61に対して対向配置されている。つまり外部導体52,62は、内部導体51,61の近傍で並走している。よって、コモンモード電流の経路のループ面積をより小さくすることができる。
【0074】
このように、リターン用導体43と金属部材とを接続する部材を、電力ラインに対して並走、つまり電力ラインに沿って配策すると、相互インダクタンスを利用して、接続部材のインダクタンス(寄生インダクタンス)を小さくすることができる。これにより、リターン用導体43の経路にコモンモード電流が流れやすくなり、コモンモードノイズを低減することができる。
【0075】
また、内部導体51がP線51PとN線51Nを含む構成において、P線51PとN線51Nとが対向配置されることで、ノーマルモードノイズについても効果的に低減することができる。
【0076】
リターン用導体43の配置は特に限定されない。リターン用導体43の少なくとも一部が、筐体41に収容されてもよい。リターン用導体43は、筐体41にインサートされていてもよい。リターン用導体43の少なくとも一部が、筐体41の外面に配置されてもよい。筐体41に収容されたリターン用導体43や筐体41にインサートされたリターン用導体43を用いると、ループ面積をより小さくすることができる。特に筐体41に収容されたリターン用導体43を用いると、ループ面積縮小の効果が高い。また、筐体41に収容されている金属部材をリターン用導体43として利用することで、構成を簡素化することができる。
【0077】
第1機器(他の機器)の金属部材は、特に限定されない。コモンモード電流の経路を提供するものであればよい。金属部材として金属製の筐体21,31を用いてもよい。筐体21,31は、それぞれの機器における基準電位、ケースグランドを提供し、コモンモード電流の経路を提供する。
【0078】
第2機器は、インバータ40(電力変換器)でもよい。スイッチング素子を備えるインバータ40が、樹脂製の筐体41と、リターン用導体43を有する。よって、スイッチングにともなって生じるコモンモード電流を、リターン用導体43を利用した経路に流すことができる。
【0079】
インバータ40において、筐体41に収容されたリターン用導体43が、半導体モジュール421などの電気部品と、電気部品に電気的に接続された回路基板425との間に配置されてもよい。インバータ40において、電気部品と回路基板との間に配置される金属部材(金属ステー)をリターン用導体43として利用することで、構成を簡素化することができる。
【0080】
シールドシステム10が、Yコンデンサ80を備えてもよい。Yコンデンサ80の端子のひとつは電力ライン(P線51P、N線51N)に接続され、端子の他のひとつはリターン用導体43に接続される。これにより、Yコンデンサ80を経由するコモンモード電流の経路が形成される。Yコンデンサ80を経由する経路のループ面積は小さいため、コモンモードノイズをさらに低減することができる。
【0081】
Yコンデンサ80を備える構成において、第1機器として電池20とMG30(回転電機)を備え、第2機器としてインバータ40を備えてもよい。電駆動システムにシールドシステム10を適用することで、電駆動システムにおいて生じるコモンモードノイズを低減することができる。
【0082】
Yコンデンサ80は、リターン用導体43の電池20側の端部とMG30側の端部とのうち、電池20側の端部に近い位置でリターン用導体43に接続されてもよい。リターン用導体43において、Yコンデンサ80の接続部分より電池20側の部分のインダクタンスを小さくすることができる。これにより、1MHz以下のコモンモードノイズを低減することができる。
【0083】
Yコンデンサ80は、リターン用導体43の電池20側の端部とMG30側の端部とのうち、MG30側の端部に近い位置でリターン用導体43に接続されてもよい。リターン用導体43において、Yコンデンサ80の接続部分よりMG30側の部分のインダクタンスを小さくすることができる。これにより、広い周波数域において、コモンモードノイズを低減することができる。
【0084】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、Yコンデンサの静電容量とリターン経路のインダクタンスとの共振周波数について特に言及しなかった。これに代えて、上記した共振周波数が所定の周波数帯となるようにしてもよい。
【0085】
図26は、本実施形態に係るシールドシステム10の等価回路図である。図26は、図1および図22に示す構成に対応している。図26では、便宜上、インバータ40の筐体41、MG30の巻線32を省略している。図26では、各線の寄生インダクタンスを示している。図26に示す実線矢印、破線矢印、および一点鎖線の矢印は、コモンモード電流の流れ、つまり経路を示している。電池20から半導体素子4211にリターンする経路(第1リターン経路)を破線矢印で示し、電池20からボディグランドを介して半導体素子4211に戻る経路(第2リターン経路)を一点鎖線の矢印で示している。図26では、出力線61として、U相出力線61U、V相出力線61V、W相出力線61Wを明示している。
【0086】
シールドシステム10は、先行実施形態の同様、電駆動システムである。シールドシステム10は、電池20、MG30、およびインバータ40(電力変換器)を備えている。電池20は、電池20において基準電位を提供する金属部材を備えている。金属部材は、たとえば金属製の筐体21である。金属部材は、ボディグランドに電気的に接続されている。MG30は、MG30において基準電位を提供する金属部材を備えている。金属部材は、たとえば金属製の筐体31である。金属部材は、ボディグランドに電気的に接続されている。
【0087】
インバータ40は、図示しない樹脂製の筐体41を備えている。インバータ40は、筐体41に収容される電気部品42として、上記した半導体モジュール421を備えている。半導体モジュール421は、半導体基板にスイッチング素子が形成された半導体素子4211を含んでいる。インバータ40は、リターン用導体43を備えている。リターン用導体43は、グランド線45を介してボディグランドに電気的に接続されている。リターン用導体43は、接続線53を介して電池20の金属部材に電気的に接続されている。リターン用導体43は、接続線63を介してMG30の金属部材に電気的に接続されている。なお、接続線53,63に代えて、外部導体52,62を用いてもよい。外部導体52および接続線53が第1接続線に相当し、外部導体62および接続線63第2接続線に相当する。
【0088】
リターン用導体43は、PNリターン部437、MGリターン部438、および残部439を備えている。PNリターン部437は、リターン用導体43において接続線53との接続部からYコンデンサ80との接続部までの部分である。MGリターン部438は、リターン用導体43において接続線63との接続部からグランド線45との接続部までの部分である。残部439は、リターン用導体43のうち、PNリターン部437およびMGリターン部438を除く部分である。
【0089】
たとえば金属ステーにおいて、本体部431が残部439の少なくとも一部を提供し、端子部432のひとつがPNリターン部437の少なくとも一部を提供し、端子部432の他のひとつがMGリターン部438の少なくとも一部を提供してもよい。残部439を有さない構成としてもよい。
【0090】
Yコンデンサ80のひとつは、電力ラインであるP線51Pとリターン用導体43との間に配置されている。Yコンデンサ80の他のひとつは、電力ラインであるN線51Nとリターン用導体43との間に配置されている。
【0091】
コモンモード電流は、インバータ40(半導体素子4211)から電力ラインであるP線51PおよびN線51Nを通じて電池20に流れる。そして、電池20から半導体素子4211に戻る経路は、第1リターン経路(第1経路)と第2リターン経路(経路)がある。破線矢印で示す第1リターン経路は、リターン用導体43およびYコンデンサ80を介する経路である。第1リターン経路において、コモンモード電流は、電池20の金属部材から、接続線53、PNリターン部437、およびYコンデンサ80を通じて半導体素子4211に流れる。
【0092】
一点鎖線の矢印で示す第2リターン経路は、ボディグランドを介する経路である。第2リターン経路のひとつにおいて、コモンモード電流は、電池20の金属部材から、ボディグランド、およびグランド線45を通じて半導体素子4211に流れる。第2リターン経路の他のひとつにおいて、コモンモード電流は、電池20の金属部材から、ボディグランド、MG30の金属部材、接続線63、およびMGリターン部438を通じて半導体素子4211に流れる。
【0093】
図27は、伝導ノイズの測定結果を示している。図27に示す破線は、参考例の結果を示している。参考例では、インバータが樹脂筐体を備えるものの、リターン用導体を備えない構成としている。この場合、コモンモード電流は、電池20から、ボディグランド、MG30、および出力線61を介して、半導体素子4211に戻る。ループ面積が大きいため、図27に示すように、コモンモードノイズのレベルが高い。
【0094】
図27に示す一点鎖線は、上記した第1リターン経路のインダクタンス、グランド線45を経由する第2リターン経路のインダクタンスを、接続線63を経由する第2リターン経路のインダクタンスを、互いに等しい値(10nH)とした場合の結果を示している。破線に示す構成較べてコモンモードノイズを低減することができる。しかしながら、特にAM帯の低周波域(500kHz付近)において、ノイズレベルを二点鎖線で示す所定の閾値Thよりも低くすることが困難である。
【0095】
そこで上記した構成において、接続線53およびPNリターン部437のインダクタンスと、Yコンデンサ80の静電容量との共振周波数がAM帯(530kHz~1.8MHz)となるようにLとCを設定するとよい。特に、ノイズ低減が困難な低周波域(500kHz付近)に共振周波数を設定するとよい。第1リターン経路のインピーダンスZpn(f)は、式(1)で示すことができる。
Zpn(f)=ω(Lpns+Lpnr)-1/(ωCy)・・・(1)
【0096】
式(1)において、ω=2πf、fは周波数、Lpnsは接続線53の寄生インダクタンス、LpnrはPNリターン部437の寄生インダクタンス、CyはYコンデンサ80の静電容量である。インピーダンスZpn(f)は、共振周波数において極小値をとる。これにより、インピーダンスZpn(f)が、第2リターン経路のインピーダンスZmg(f)よりも小さくなり、第1リターン経路を流れるコモンモード電流が増加する。よって、図27に実線で示すように、AM帯の低周波域(500kHz付近)において、ノイズレベルを所定の閾値Thよりも低くすることができる。これにより、AM帯の全域において、ノイズレベルを閾値Thよりも低くすることができる。
【0097】
なお、図27に実線で示す例では、第1リターン経路のインダクタンスを10nH、グランド線45を経由する第2リターン経路のインダクタンスを80nH、接続線63を経由する第2リターン経路のインダクタンスを80nHとした。たとえばPNリターン部437に対してグランド線45やMGリターン部438の断面積を小さくしてもよい。PNリターン部437を平板状、グランド線45やMGリターン部438を線状としてもよい。
【0098】
図28および図29に示すように、インバータ40は、Pバスバー427およびNバスバー428を備えている。図28は、インバータ40においてバスバー427周辺を拡大した平面図である。図29は、側面図である。Pバスバー427の端部付近には、P線51Pを接続するための締結孔427aが設けられている。Nバスバー428の端部付近には、N線51Nを接続するための締結孔428aが設けられている。図28および図29に示すように、リターン用導体43のPNリターン部437は、上記した端子部432により提供されてもよい。
【0099】
PNリターン部437は、Z方向の平面視において、Pバスバー427およびNバスバー428それぞれの少なくとも一部と重なるように設けられるとよい。図28に示す例では、Pバスバー427およびNバスバー428を内包するように、PNリターン部437を設けている。PNリターン部437は、幅Wを有している。PNリターン部437と、Pバスバー427およびNバスバー428のそれぞれとを、板面同士が対向するように設けるとよい。このような構成において、PNリターン部437と、Pバスバー427およびNバスバー428のそれぞれとは、所定の距離dを介して対向している。距離dは、対向間隔である。
【0100】
図30は、幅W、距離d、およびインダクタンスの関係を示している。図30は、シミュレーション結果を示している。このとき、X方向における長さを70mmとした。距離d=10mmを一点鎖線、距離d=5mmを破線、距離d=1mmを実線で示している。幅Wを長くするほど、インダクタンスを小さくすることができる。しかしながら、幅Wが長くなるほど、インダクタンス低減の効果が小さくなる。距離dを短くするほど、インダクタンスを小さくすることができる。
【0101】
上記したようにLC共振周波数をAM帯で設定し、AM帯においてインピーダンスZpn(f)をインピーダンスZmg(f)よりも小さくすると、図27に示すように、FM帯(76.1MHz~94.9MHz)のノイズが悪化する。そこで図31に示すように、コンデンサ90を、グランド線45に並列接続してもよい。図31は、シールドシステム10(電駆動システム)の別例を示している。図31に示すように、コンデンサ90を、グランド線45に並列接続してもよい。コンデンサ90を、MGリターン部438に並列接続してもよい。コンデンサ90は、グランド線45およびMGリターン部438の少なくとも一方に対して設ければよい。たとえばグランド線45のみに設けてもよいし、MGリターン部438のみに設けてもよい。FM帯などの高周波域において、コンデンサ90が主な電流の経路となる。これにより、インピーダンスが低下する。
【0102】
図32は、伝導ノイズの測定結果を示している。図32に示す一点鎖線は、図27に示した一点鎖線と同様の構成の測定結果を示している。実線は、グランド線45およびMGリターン部438のそれぞれにコンデンサ90を並列接続した構成の測定結果を示している。図32に示すように、コンデンサ90を追加することで、FM帯のノイズレベルが低下する。
【0103】
<第2実施形態のまとめ>
上記したように、接続線53およびPNリターン部437のインダクタンスと、Yコンデンサ80の静電容量との共振周波数をAM帯で設定し、AM帯においてインピーダンスZpn(f)をインピーダンスZmg(f)よりも小さくしてもよい。これにより、ループ面積の小さい第1リターン経路にコモンモード電流が流れやすくなる。よって、AM帯のコモンモードノイズを低減することができる。特に、共振周波数をAM帯の低周波域(500kHz付近)で設定するとよい。これにより、ノイズを低減し難いAM帯の低周波域において、コモンモードノイズを低減することができる。
【0104】
インバータ40のPバスバー427およびNバスバー428と対向するように、リターン用導体43のPNリターン部437を設けるとよい。相互インダクタンスを利用して、PNリターン部437の寄生インダクタンスを下げることができる。これにより、ループ面積の小さい第1リターン経路にコモンモード電流が流れやすくなる。よって、コモンモードノイズをさらに低減することができる。
【0105】
グランド線45およびMGリターン部438の少なくとも一方に対して並列接続されるコンデンサ90を設けてもよい。FM帯などの高周波域において、コンデンサ90が主な電流の経路となり、インピーダンスが低下する。よって、AM帯だけでなく、FM帯においても、コモンモードノイズを低減することができる。
【0106】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0107】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0108】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0109】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【符号の説明】
【0110】
10…シールドシステム、20…電池、21…筐体、23…リターン用導体、30…MG、31…筐体、32…巻線、40…インバータ、41…筐体、41a…外面、41b…内面、41c…第1面、41d…第2面、42…電気部品、421…半導体モジュール、4211…半導体素子、422…出力端子台、423…コンデンサ素子、424…入力端子台、425…回路基板、425G…グランド層、426…出力バスバー、427…Pバスバー、427a…締結孔、428…Nバスバー、428a…締結孔、43…リターン用導体、431,435…本体部、432,434,436…端子部、433…埋設部、437…PNリターン部、438…MGリターン部、439…残部、44…コンデンサ、45…グランド線、50…シールド線、51…内部導体、51P…P線、51N…N線、52…外部導体、53…接続線、60…シールド線、61,61U,61V,61W…出力線、62…外部導体、63…接続線、70…寄生容量、80…Yコンデンサ、90…コンデンサ
図1
図2
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図4
図5
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