(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007847
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】缶支持部材、シームレス缶の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B21D 51/26 20060101AFI20250109BHJP
B21D 45/08 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B21D51/26 W
B21D51/26 P
B21D45/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109509
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 猛
(57)【要約】
【課題】チャイム部を有する底部形状のシームレス缶の成形において、チャイム部の変形を生じることなく缶体を支持固定することが可能な支持部材を提供する。
【解決手段】製缶工程において缶体を支持固定するための缶支持部材であって、前記缶体は胴部及び底部を有するシームレス缶であり、前記底部が、接地部、及び該接地部から胴部下端に連なり缶軸方向上方に行くに従って外径が増加するテーパ状のチャイム部を少なくとも備えた底形状を有し、前記接地部及び前記チャイム部を缶外側から支持することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製缶工程において缶体を支持固定するための缶支持部材であって、
前記缶体は胴部及び底部を有するシームレス缶であり、前記底部が、接地部、及び該接地部から胴部下端に連なり缶軸方向上方に行くに従って外径が増加するテーパ状のチャイム部を少なくとも備えた底形状を有し、
前記接地部及び前記チャイム部を缶外側から支持することを特徴とする缶支持部材。
【請求項2】
前記接地部と当接して底部を受ける保持部と、該保持部の周縁部から延び且つ前記チャイム部と当接する内側面を有する環状側壁とを備えた缶支持部、及び該缶支持部を缶軸方向に移動させる可動軸を備える請求項1記載の缶支持部材。
【請求項3】
前記環状側壁には、缶軸方向に延び且つ環状側壁上端から下端に至る複数個のスリットが形成されており、前記スリットに干渉せず且つ缶体を缶支持部から離脱させるためストリッパがストリッパホイールに備えられている請求項2記載の缶支持部材。
【請求項4】
前記缶体が、底部中央に缶内方に突出するドーム部と、該ドーム部の外周縁から缶軸方向下方に延び且つ缶径方向内方に湾曲した内周壁を備え、前記内周壁下端及び前記チャイム部下端に前記接地部が位置する請求項1又は2記載の缶支持部材。
【請求項5】
缶体成形工程、ネッキング工程を少なくとも有するシームレス缶の製造方法において、
前記ネッキング工程において、缶支持部材により缶底部の接地部及びチャイム部を缶外側から支持固定した状態で、ネッキング加工が行われることを特徴とするシームレス缶の製造方法。
【請求項6】
前記ネッキング工程の前に、ボトムリフォーム工程を有し、該ボトムリフォーム工程において、缶体の内部に押圧体を挿入して、前記缶体の外面側に設置された成形型とで前記缶体の底部を押圧することにより、前記内周壁を缶径方向内方に湾曲させて、接地部を有する環状の湾曲端部を形成する請求項5記載のシームレス缶の製造方法。
【請求項7】
缶体成形手段、ネッキング手段、及び各手段間をつなぐ搬送手段を少なくとも有するシームレス缶の製造装置において、
前記ネッキング手段が、搬送手段から搬送された缶体の缶底を支持固定可能な缶支持部材を備えており、該缶支持部材が、缶底部の接地部及びチャイム部を缶外側から支持固定可能な缶支持部材であることを特徴とするシームレス缶の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製缶工程で使用される缶体の支持部材に関するものであり、より詳細には、シームレス缶の製造に際してネッキング工程で缶体の変形を生じることなく支持固定することが可能な缶支持部材、この缶支持部材を用いた製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や食品などを収納するための缶体としては、絞りしごき加工等により成形されるシームレス缶(DI缶)が広く使用されており、このようなシームレス缶においては、省資源化や軽量化のために、缶胴部の薄肉化が求められている。一般的な350mlの炭酸飲料のシームレス缶の場合、材料のアルミニウム合金の板厚は0.26mm以下であることがほとんどであり、このような薄肉の金属板を絞りしごき加工して成るシームレス缶は、特に底部の耐圧強度が低下しやすいことから、より高い耐圧強度を備えるように、缶底部の形状について種々の提案がされている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、底部と薄肉化された胴部とを有するアルミシームレス缶において、前記底部が、中央部に位置する上方に膨らんだドーム部と、該ドーム部周縁から降下した接地部と、該接地部から外方かつ上方に傾斜して延びて前記胴部下端に連なるチャイム部とからなるシームレス缶が記載されている。
また、下記特許文献2には、薄肉化された底部の耐圧強度を向上させるために、ドーム部に連なる内周壁には、缶軸に直交する径方向の外側へ向けて凹む曲線状をなす第1凹曲面部が形成され、ドーム部には、缶軸上に位置するドームトップと、前記ドームトップの前記径方向の外側に接続し、該ドームトップよりも曲率半径が小さい凹曲線状をなす第2凹曲面部と、前記ドーム部の外周縁部に配置され、前記第1凹曲面部と前記第2凹曲面部とを接続するとともに、前記第1凹曲面部及び前記第2凹曲面部に接する直線状をなすテーパ部と、が形成されたシームレス缶が記載されている。
【0004】
一方、上記のような薄肉の金属板を絞りしごき加工して成るシームレス缶においても、絞りしごき成形後の缶体をネッキング加工によりネック部を縮径することが行われており、この際、下記特許文献3に示すような、ネック形成用のダイに対して缶軸方向に移動可能な容器支持体を用い、これを移動させることにより加工を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-177289号公報
【特許文献2】特開2016-043991号公報
【特許文献3】特表2000-503260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、工業的な製缶工程において、特にネッキング加工においては、缶体上部をネッキングツールに押し込んで加工を行うことから、缶体には缶軸方向に大きな圧縮荷重がかかる。そのため、特許文献1に記載されたようなチャイム部を有する薄肉の缶体では、支持部材により支持されていないチャイム部は接地部にかかる軸方向荷重によって座屈変形を生じるおそれがあり、特に上記特許文献2に記載されたようなボトムリフォーム加工により、環状凸部の内周壁等の形状を調整して成るシームレス缶においては、外周壁(チャイム部)においても緩やかな凹曲面として形成されており、ネッキング加工による変形が更に生じやすくなる。
【0007】
従って本発明の目的は、チャイム部を有するシームレス缶の成形において、チャイム部の変形を生じることなく缶体を支持固定することが可能な支持部材を提供することである。
本発明の他の目的は、薄肉化されたシームレス缶を成形不良を生じることなく製造可能な製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、製缶工程において缶体を支持固定するための缶支持部材であって、前記缶体は胴部及び底部を有するシームレス缶であり、前記底部が、接地部、及び該接地部から胴部下端に連なり缶軸方向上方に行くに従って外径が増加するテーパ状のチャイム部を少なくとも備えた底形状を有し、前記接地部及び前記チャイム部を缶外側から支持することを特徴とする缶支持部材が提供される。
【0009】
本発明の缶支持部材においては、
(1)前記接地部と当接して底部を受ける保持部と、該保持部の周縁部から延び且つ前記チャイム部と当接する内側面を有する環状側壁とを備えた缶支持部、及び該缶支持部を缶軸方向に移動させる可動軸を備えること、
(2)前記環状側壁には、缶軸方向に延び且つ環状側壁上端から下端に至る複数個のスリットが形成されており、前記スリットに干渉せず且つ缶体を缶支持部から離脱させるためストリッパがストリッパホイールに備えられていること、
(3)前記缶体が、底部中央に缶内方に突出するドーム部と、該ドーム部の外周縁から缶軸方向下方に延び且つ缶径方向内方に湾曲した内周壁を備え、前記内周壁下端及び前記チャイム部下端に前記接地部が位置すること、
が好適である。
【0010】
本発明によればまた、缶体成形工程及びネッキング工程を少なくとも有するシームレス缶の製造方法において、前記ネッキング工程において、缶支持部材により缶底部の接地部及びチャイム部を缶外側から支持固定した状態で、ネッキング加工が行われることを特徴とするシームレス缶の製造方法が提供される。
本発明のシームレス缶の製造方法においては、前記ネッキング工程の前に、ボトムリフォーム工程を有し、該ボトムリフォーム工程において、缶体の内部に押圧体を挿入して、前記缶体の外面側に設置された成形型とで前記缶体の底部を押圧することにより、前記内周壁を缶径方向内方に湾曲させて、接地部を有する環状の湾曲端部を形成することが好適である。
【0011】
本発明によれば更に、缶体成形手段、ネッキング手段、及び各手段間をつなぐ搬送手段を少なくとも有するシームレス缶の製造装置において、前記ネッキング手段が、搬送手段から搬送された缶体の缶底を支持固定可能な缶支持部材を備えており、該缶支持部材が、缶底部の接地部及びチャイム部を缶外側から支持固定可能な缶支持部材であることを特徴とするシームレス缶の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の缶支持部材においては、缶体の底形状に合致する保持部及び環状側壁を有することから、缶体の底部を外側から軸方向のみならず、水平方向にも支持可能であり、ネッキング工程における加工を確実に行うことができる。また缶底部のチャイム部と当接する環状側壁の内側面がチャイム部と合致した形状を有することから、ネッキング加工において、缶底を缶軸方向に押圧してネッキングツールに缶体を押し込んだ場合にも、薄肉で変形を生じやすいチャイム部を環状側壁の内側面で支えながら押圧するため、変形を生じることが有効に防止されている。
更に、缶支持部材の環状側壁に複数個のスリットが形成され、このスリットに干渉しないストリッパをストリッパホイールに備えていることにより、ストリッパが相対的にスリット内を移動し、ストリッパ上端が環状側壁上端と同じ位置或いはそれよりも上方になることにより、缶支持部材から缶体を容易に分離することが可能となる。
【0013】
また本発明の缶支持部材を用いたシームレス缶の製造方法及び製造装置においては、缶体が缶支持部材により缶底部の接地部及びチャイム部が缶外側から軸方向及び水平方向にぶれることなく支持固定された状態でネッキング加工可能であることから、ネッキング加工を効率よく確実に行うことが可能である。またストリッパが相対的にスリット内を移動し、ストリッパ上端が環状側壁上端と同じ位置或いはそれよりも上方になることにより、缶体を缶支持部材から分離した後は、缶体の進行方向において環状側壁部の干渉がなくなるため、次工程への缶体の移送もスムーズに行うことができる。
更にボトムリフォーム加工に付されたシームレス缶においても本発明の缶支持部材を用いることにより、チャイム部の変形を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の缶支持部材の一例を説明するための図であり、(A)は缶底部を支持した状態を示す側断面図、(B)は斜視図である。
【
図2】本発明の缶支持部材の動作を説明するための図である。
【
図3】本発明のシームレス缶の製造装置におけるネッキング工程の一例を説明するための一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(缶支持部材)
本発明の缶支持部材を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)は、本発明の缶支持部材の一例にシームレス缶が支持された状態を示す側断面図であり、
図1(B)は、缶支持部材の一例の斜視図である。
本発明の缶支持部材に適用されたシームレス缶1は、概略的に言って、底部2及び胴部3から成り、底部2には、環状の接地部4、接地部4から内側壁5を介して缶軸方向上方に凹んだドーム部6、接地部4から胴部3の下端に連なり缶軸方向上方に行くに従って外径が増加するテーパ状のチャイム部7が形成されている。
缶支持部材10は、基部11に設置され、缶軸方向に移動可能な駆動軸12、駆動軸12の先端に設置された缶支持部13から成っている。缶支持部13は、缶底部の接地部4と当接する缶軸方向に対して水平方向の平面部14aを備えた保持部14、保持部14の外周縁を取り囲むように軸方向に延びる環状側壁15から成っている。
図1(A)から明らかなように、環状側壁15は、その内側面15aが缶底部のチャイム部7とほぼ合致する形状を有しており、この内側面15aがチャイム部7を缶外側から取り囲んでいることから、チャイム部7全体を支持すると共に缶体1は缶軸方向に対して水平方向への移動が制限される。
また
図1(B)から明らかなように、環状側壁15には、缶軸方向に延び且つ環状側壁15の上端から下端にまで至るスリット16、16・・・が3カ所に形成されており、このスリット16に干渉しない後述するストリッパが、ストリッパホイールに備えられていることによって、缶支持部材10の上下動に応じて、缶体の缶支持部材10への設置及び分離を容易に行うことが可能となる。
【0016】
図2は、本発明の缶支持部材のネッキング加工における動作を説明するための図である。
図2(A)は、移送スターホイール(図示せず)から缶体1が供給され、缶支持部材10に載置された状態を示す図であり、この状態では、ストリッパ20は、環状側壁15のスリット16に挿入されており、環状側壁15の上端とストリッパ20の上端面は同じ位置にあるか、或いはストリッパ20の上端面が環状側壁15の上端よりも上方の位置にあり、缶底部の接地部4がストリッパの上端面によって支持された状態になっている。
次いで、缶支持部材10が軸方向上方に移動することにより、缶支持部材10の上昇に追従しないストリッパ20の上端面が缶支持部材10の平面部14aと同じ位置に来た時点で、缶底部の接地部4が保持部14の平面部14aに当接すると共に、チャイム部7も環状側壁15の内側面15aに当接する。この状態でさらに缶支持部材10が軸方向上方に移動することによって、
図2(B)に示すように、缶体1の上方開口部がネッキングツール30に挿入されネッキング加工される。この状態では、缶体の接地部4は保持部14の平面部14aで軸方向に支持されていると共に、チャイム部7が環状側壁15の内側面15aによって支持されているため、チャイム部7に変形を生じさせるような応力は生じない。また缶体は、缶底で軸方向及び水平方向に支持されているため、ネッキング加工の際に缶体が水平方向にぶれることもなく、確実なネッキング加工が行われる。
【0017】
図2(C)は、ネッキング加工が終了し、缶支持部材10が軸方向下方に移動して、缶体がネッキングツール30から取り外れた状態を示す図である。この状態では、缶底部は接地部4及びチャイム部7が缶支持部材10で支持されている。
次いで
図2(D)に示すように、缶支持部材10が軸方向下方に移動して、ストリッパ20の上端面が缶支持部材10の環状側壁15の上端と同じ位置に来た時点で、ストリッパ20の上端面によって缶底の接地部4が支持される。これにより缶体1は缶支持部材10から排出可能となり、移送スターホイール(図示せず)により、次段階のネッキング加工へ容易に供給することが可能となる。
【0018】
(シームレス缶の製造方法)
本発明のシームレス缶の製造方法は、缶体成形工程及びネッキング工程を少なくとも有するシームレス缶の製造方法において、前記ネッキング工程において、前述した缶支持部材を用い、缶底部の接地部及びチャイム部を缶外側から支持固定した状態で、ネッキング加工が行われることが重要な特徴である。
すなわち、前述した通り、ネッキング工程において、本発明の缶支持部材により缶体を支持することにより、缶底部の接地部のみならず、チャイム部もチャイム部の形状に合致する面で支持されているため、缶体の軸方向に荷重をかけられても、チャイム部に変形を生じることが有効に防止できる。また缶外側から軸方向及び水平方向で支持しているため、缶体がぶれることなくしっかりと支持固定された状態でネッキング加工可能であることから、ネッキング加工を効率よく確実に行うことが可能である。
【0019】
また前述した通り、環状側壁に複数個のスリットが形成され、このスリットに干渉しないストリッパがストリッパホイールに備えられることにより、移送スターホイールから缶支持部材への缶体の供給、缶体の缶支持部材への設置及びネッキングツールへの押し込み、缶支持部材から缶体の取り出し、及び移送スターホイールへの供給、を容易に行うことが可能である。
【0020】
また本発明の製造方法においては、缶成形工程及びネッキング工程以外に、トリミング工程、洗浄工程、印刷工程、フランジ加工工程等、シームレス缶の製造方法において従来公知の工程を必要に応じて備えることができる。これに限定されるものではないが、缶成形工程、トリミング工程、洗浄工程、印刷工程、ネッキング工程、フランジ加工工程、の順で各工程が行われることが好適である。
また本発明の製造方法においては、ネッキング工程の前にボトムリフォーム工程を備えることが特に好適である。すなわち、ボトムリフォーム工程は、特に薄肉の缶体の缶底部における耐圧強度を向上させるために、缶体の内部に押圧体を挿入して、前記缶体の外面側に設置された成形型とで前記缶体の底部を押圧することにより、前記内周壁を缶径方向内方に湾曲させて、接地部を有する環状の湾曲端部を形成するものであるが、湾曲端部と共に、チャイム部においても緩やかな凹曲面として形成されており、成形時に変形を生じやすい形状を有している。従って、本発明の缶支持部材を用いて缶体を支持する場合には、このような形状のチャイム部であっても、チャイム部の形状に合致した内側面を有する環状側壁を備えているため、ネッキング加工に付された場合でもチャイムの変形を有効に抑制することが可能である。
【0021】
本発明のシームレス缶の製造方法においては、ネッキング工程において、上述した缶支持部材を使用してネッキング加工を行う以外は、従来公知のシームレス缶の製造方法における手法を採用することができる。
例えば、缶体成形工程としては、絞り加工、絞り・深絞り加工、絞り・しごき加工、絞り・曲げ伸ばし加工・しごき加工等の従来公知の方法を採用することができる。
また、シームレス缶の形状も底部形状が上述した形状である限り、
図1に示した形状のシームレス缶に限定されず、首部を大きく縮径し、螺子部を設けたいわゆるボトル缶等、種々の形状のシームレス缶として製造することができる。
さらに、シームレス缶を構成する金属板も、表面処理鋼板やアルミニウム合金板等、従来シームレス缶に用いられていたすべての金属板を使用することができるが、特に、薄肉化により変形が生じやすいアルミニウム合金板であることが好適である。これらの金属板はポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂による樹脂被覆が施された樹脂被覆金属板であってもよい。このような樹脂被覆金属板を用いる場合には、外面塗装工程や内面塗装工程を省略することも可能である。
【0022】
(シームレス缶の製造装置)
本発明によれば更に、缶体成形手段、ネッキング手段、及び各手段間をつなぐ搬送手段を少なくとも有するシームレス缶の製造装置において、前記ネッキング手段において、搬送手段から搬送された缶体の缶底を支持固定可能な缶支持部材を備えており、該缶支持部材が、缶底部の接地部及びチャイム部を缶外側から支持固定可能な缶支持部材であることが重要な特徴である。
【0023】
図3は、本発明の製造装置におけるネッキング手段の一例を説明するための図であり、多段で行われるネッキング加工の一つのステーションについて表しており、説明の便宜上、缶体がない状態で、駆動軸がネッキングツール側に移動した状態(缶体がネッキング加工を受けるときの位置)で示している。また、前述した
図1及び2に示した具体例においては、図面上下方向が缶軸方向として缶支持部材が配置されていたが、
図3に示すように、缶支持部材は缶軸方向が水平方向となる装置に設置されていてももちろんよく、製造装置における各手段の配列や搬送方法等によって適宜変更できることは言うまでもない。
【0024】
図3に示すネッキング手段の一例においては、全体を30で示すネッキングツール、缶体胴部を保持する複数個のポケット41が形成されたスターホイール40、3つの缶支持部材10、及び、ストリッパ20を配置するためストリッパホイール50が設置されている。
缶支持部材10は、
図1に示した通り、缶軸方向に移動可能な駆動軸12、駆動軸12の先端に設置された缶支持部13から成り、缶支持部13の保持部14の平面部14aで缶底の接地部、環状側壁15の内側面15aチャイム部を支持している。但し、缶支持部材10の構造はこれに限定されるものではなく、缶支持部13と平面部14aが一つの部品で構成されてもよく、更に駆動軸12とも一体化した一つの部品から構成されてもよい。またストリッパホイール50には、缶支持部材10を缶軸方向に移動可能に配置するための孔51が形成されており、この孔51の周縁にストリッパ20が設置されている。尚、
図3ではストリッパ20がストリッパホイール50に脱着可能に設置されているが、孔51に一体的に形成されていても良い。
【0025】
ストリッパ20は、
図2に示した通り、缶支持部材10の環状側壁15に形成されたスリット16と缶軸方向に一致した位置に形成されており、缶支持部材10の缶軸方向の移動によって、スリット16に干渉しないように形成されている。すなわち、缶支持部材10が
図2の上方に移動することによってストリッパ20が相対的に平面部14aよりも下に移動すると、缶体1は缶支持部材10により、接地部は缶支持部13の平面部14aで支持された状態となり、この状態で缶支持部材10により缶体1の開口上部がネッキングツール30に押し込まれ、ネッキング加工に付される。ネッキング加工を終えた後、缶支持部材10が
図2の下方に移動することによってストリッパ20がスリット16内に移動すると、缶体1はストリッパ20の上端面で支持され、缶支持部材10から分離可能な状態となり、スターホイール40により支持された状態で、移送スターホイール(図示せず)に乗り移り、次のネッキング手段に供給されることになる。
【0026】
本発明のシームレス缶の製造装置においては、ネッキング手段が前述した本発明の缶支持部材を備えている以外は、従来公知のシームレス缶の製造装置における、トリミング手段、洗浄手段、印刷手段、ネッキング手段、フランジ加工手段等の各手段を必要に応じて採用することができる。
本発明のシームレス缶の製造装置においては、これに限定されるものではないが、缶体成形手段、トリミング手段、洗浄手段、印刷手段、ボトムリフォーム手段、ネッキング手段、フランジ加工手段の各手段がこの順に配置され、各手段間に搬送手段を備えていることが好適である。
【符号の説明】
【0027】
1 シームレス缶、2 底部、3 胴部、4 接地部、5 内側壁、6 ドーム部、7 チャイム部、10 缶支持部材、11 基部、12 駆動軸、13 缶支持部、14 保持部、15 環状側壁、16 スリット、20 ストリッパ、30 ネッキングツール、40 スターホイール、50 ストリッパホイール。