(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007872
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】電源制御装置、電源制御方法および電源制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20250109BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20250109BHJP
H02H 3/247 20060101ALI20250109BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250109BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20250109BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H02J1/00 301D
H02H3/16 A
H02H3/247
H02J7/00 S
H02J7/00 302C
H02J7/34 G
B60R16/02 650S
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109568
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神崎 雄大
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
5G004
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA01
5G004DC01
5G004EA01
5G165BB08
5G165JA09
5G165KA11
5G165MA10
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA10
5G503DA04
5G503DA05
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】地絡の誤判定を低減することができる電源制御装置、電源制御方法および電源制御プログラムを提供すること。
【解決手段】本願に係る電源制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御する。コントローラは、第1系統または第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、第1系統または第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、第1判定処理または第2判定処理のいずれかで地絡と判定した場合に接続部を遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、
前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する
電源制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記パラメータについて、前記第2の閾値を超えた閾値である第3の閾値を超えた場合に地絡と判定する第3判定処理をさらに行い、
前記第1判定処理、前記第2判定処理または前記第3判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1判定処理、前記第2判定処理または前記第3判定処理のいずれかで最も早く前記地絡と判定したタイミングで前記接続部を遮断する
請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記接続部を遮断した後に、前記パラメータに基づいて前記地絡が発生した系統を特定する
請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記第1判定処理、前記第2判定処理および前記第3判定処理をソフトウェアにより行う
請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記第1判定処理および前記第2判定処理をソフトウェアにより行い、前記第3判定処理をハードウェアにより行う
請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項7】
前記ハードウェアは、コンパレータであり、
前記コントローラは、
前記パラメータと、前記第3の閾値とが前記コンパレータへ入力され、前記コンパレータから前記第3判定処理の判定結果が出力される
請求項6に記載の電源制御装置。
【請求項8】
電源制御装置が実行する電源制御方法であって、
第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御し、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、
前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する
電源制御方法。
【請求項9】
第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御し、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、
前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断すること
をコンピュータに実行させる電源制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置、電源制御方法および電源制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主電源から負荷へ給電を行う第1系統と、主電源が失陥した場合に補助電源により負荷へ給電を行う第2系統とを備えた冗長電源システムが知られている。この冗長電源システムでは、地絡に相当する電圧低下を検出した場合、地絡が発生したと仮判定し、第1系統と第2系統との間を遮断することで、地絡が発生している系統を特定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の電圧低下には、地絡に起因する電圧低下以外にも、過負荷やノイズ等に起因する一時的な電圧低下等がある。このため、電圧低下により系統間を遮断したとしても、一時的な電圧低下であれば地絡ではないため、電圧復帰後に系統間を再度接続することとなる。つまり、従来は、一時的な電圧低下を誤って地絡と仮判定してしまい、系統間を不必要に遮断する可能性があった。
【0005】
本願は、上記に鑑みてなされたものであって、地絡の誤判定を低減することができる電源制御装置、電源制御方法および電源制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る電源制御装置は、コントローラを備える。前記コントローラは、第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御する。前記コントローラは、前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様によれば、地絡の誤判定を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電源制御装置の構成および動作の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示における仮判定処理を説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示における仮判定処理を説明するための図である。
【
図5C】
図5Cは、本開示における仮判定処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、コントローラが実行する全体処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、コントローラが実行する地絡判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、電源制御装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、電源制御装置、電源制御方法および電源制御プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、実施形態に係る電源制御装置が搭載される車両が電気自動車またはハイブリッド自動車である場合について説明する。
【0010】
なお、実施形態に係る電源制御装置が搭載される車両は、内燃機関によって走行するエンジン自動車であってもよい。実施形態に係る電源制御装置は、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する装置である。
【0011】
[電源制御装置の構成]
図1~
図4を参照して、実施形態に係る電源制御装置1の構成および動作について説明する。
図1~
図4は、実施形態に係る電源制御装置1の構成および動作の説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る電源制御装置1は、メイン電源10と、第1負荷101と、一般負荷102と、第2負荷103と、外部装置100とに接続される。
【0012】
電源制御装置1は、第1系統110と、第2系統120とを備える。第1系統110は、メイン電源10の電力を第1負荷101および一般負荷102に供給する電源系統である。第2系統120は、後述するバックアップ電源20の電力を第2負荷103に供給する電源系統である。
【0013】
第1負荷101は、自動運転用の負荷を含む。第1負荷101は、例えば、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、および車載カメラ等を含む。一般負荷102は、ディスプレイ、エアコン、オーディオ、ビデオ、および各種ライト等を含む。
【0014】
第2負荷103は、第1負荷101が備える自動運転用の機能の一部を備える。第2負荷103は、例えば、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、およびレーダ等のFOP(Fail Operation、退避走行制御)に最低限必要な装置を含む。第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103は、電源制御装置1から供給される電力によって動作する。
【0015】
外部装置100は、第1負荷101および第2負荷103を動作させることによって車両を自動運転制御する装置である。外部装置100は、車両の自動運転中に第1系統110で地絡などの電源失陥が発生した場合には、第2負荷103によってFOPを実施できる。また、外部装置100は、第2系統120で地絡などの電源失陥が発生した場合には、第1負荷101によってFOPを実施できる。
【0016】
具体的には、外部装置100は、自動運転中に電源失陥が発生した場合に、車両の退避走行制御を行い、車両を安全な場所まで走行させて停車させる。外部装置100は、正常に退避走行を完了させると、電源制御装置1にその旨を示す退避走行の完了通知を送信する。
【0017】
メイン電源10は、DC/DCコンバータ(以下、「DC/DC11」と記載する)と、鉛バッテリ(以下、「PbB12」と記載する)とを含む。なお、メイン電源10の電池は、PbB12以外の任意の2次電池であってもよい。
【0018】
DC/DC11は、発電機と、PbB12よりも電圧が高い高圧バッテリとに接続される。DC/DC11は、発電機および高圧バッテリの電圧を降圧して第1系統110に出力する。発電機は、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。高圧バッテリは、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0019】
メイン電源10は、エンジン自動車に搭載される場合、DC/DC11の代わりにオルタネータ(発電機)が設けられる。DC/DC11は、PbB12の充電、第1負荷101および一般負荷102への電力供給、第2負荷103への電力供給、および後述するバックアップ電源20の充電を行う。
【0020】
電源制御装置1は、バックアップ電源20と、系統間スイッチ41と、電池用スイッチ42と、コントローラ3と、第1電圧センサ51と、第2電圧センサ52とを備える。バックアップ電源20は、メイン電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。バックアップ電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。バックアップ電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0021】
系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続する系統間ライン130に設けられる。系統間スイッチ41は、第1系統110と第2系統120とを接続および遮断可能な接続部の一例である。
【0022】
本実施形態では、系統間スイッチ41によって第1系統110と第2系統120とを電気的に接続することを、系統間スイッチ41を導通する、または、系統間スイッチ41をオンすると称する。
【0023】
また、本実施形態では、系統間スイッチ41によって第1系統110と第2系統120との電気的な接続を切断することを、系統間スイッチ41を遮断する、または、系統間スイッチ41をオフすると称する。
【0024】
なお、系統間スイッチ41は、DC/DCコンバータであってもよい。この場合、DC/DCコンバータは、コントローラ3によって制御される。DC/DCコンバータは、動作を開始することによって、第1系統110と第2系統120とを電気的に接続し、動作を停止することによって、第1系統110と第2系統120との電気的な接続を切断する。
【0025】
電池用スイッチ42は、バックアップ電源20を第2系統120に接続するスイッチである。実施形態では、電池用スイッチ42によってバックアップ電源20と第2系統120とを電気的に接続することを、電池用スイッチ42を導通する、または、電池用スイッチ42をオンすると称する。
【0026】
また、本実施形態では、電池用スイッチ42によってバックアップ電源20と第2系統120との電気的な接続を切断することを、電池用スイッチ42を遮断する、または、電池用スイッチ42をオフすると称する。
【0027】
第1電圧センサ51は、第1系統110に設けられる。第1電圧センサ51は、第1系統110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統120に設けられる。第2電圧センサ52は、第2系統120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0028】
コントローラ3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0029】
コントローラ3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより電源制御装置1の動作を制御する。コントローラ3は、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。
【0030】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20から状態監視ライン22を介してバックアップ電源20の充電状態を示す状態値を取得する。バックアップ電源20の充電状態を示す状態値は、例えば、LiB21のSOC(State Of Charge)である。
【0031】
LiB21は、SOCが100%のときが、充電残量が最大の状態である。LiB21は、SOCが0%のときが、充電残量がない状態である。コントローラ3は、バックアップ電源20の充電状態を示す状態値として、例えば、LiB21のSOCを取得する。コントローラ3は、LiB21のSOCに基づいて、バックアップ電源20の充電残量を監視する。
【0032】
また、コントローラ3は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52から入力される検出結果に基づいて、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出する。例えば、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の失陥を検出する。メイン電源10の失陥は、第1系統110の地絡および第1系統110の断線を含む。バックアップ電源20の失陥は、第2系統120の地絡を含む。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の失陥を検出した場合、その旨を外部装置100に通知する。
【0033】
具体的には、コントローラ3は、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出した場合、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力する。また、コントローラ3は、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出していない場合、自動運転が可能な状態である旨を示す自動運転許可信号を外部装置100に出力する。
【0034】
また、コントローラ3は、メイン電源10またはバックアップ電源20の失陥を検出した場合、その旨を示すダイアグ情報を不揮発性メモリに記憶させる。そして、コントローラ3は、次回の起動時にダイアグ情報が不揮発性メモリに記憶されていれば、外部装置100による自動運転を禁止する。
【0035】
具体的には、コントローラ3は、自動運転が不可能な状態である旨を示す自動運転禁止信号を外部装置100に出力することによって、外部装置100による自動運転を禁止する。これにより、電源制御装置1は、退避走行が完了した後、次回の起動時にメイン電源10またはバックアップ電源20の失陥が解消していないにも関わらず、外部装置100によって間違って自動運転が実施されることを防止できる。
【0036】
[電源制御装置の通常時動作]
コントローラ3は、メイン電源10およびバックアップ電源20に失陥が発生していない通常時には、
図1に示すように系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。具体的には、コントローラ3は、電池用スイッチ42を遮断し、系統間スイッチ41を導通する。これにより、メイン電源10から第1負荷101、一般負荷102、および第2負荷103に電力が供給される。コントローラ3は、メイン電源10およびバックアップ電源20の失陥が発生していない通常時には、外部装置100に自動運転許可信号を出力する。
【0037】
[電源制御装置の電源失陥発生時動作]
次に、
図2~
図4を参照して、電源制御装置1の電源失陥発生時動作について説明する。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の失陥に関するパラメータと閾値とを比較して電源失陥の発生を検出する。
【0038】
ここでは、メイン電源10の失陥に関するパラメータが第1系統110の電圧であり、バックアップ電源20の失陥に関するパラメータが第2系統120の電圧である場合について説明する。以下では、第1電圧センサ51によって検出される第1系統110の電圧を第1系統電圧V1と称する。また、第2電圧センサ52によって検出される第2系統120の電圧を第2系統電圧V2と称する。
【0039】
なお、メイン電源10の失陥に関するパラメータは、第1系統110を流れる電流または第2系統120を流れる電流であってもよい。この場合、電源制御装置1は、第1系統110を流れる電流を検出する電流センサと、第2系統120を流れる電流を検出する電流センサとを備える。そして、コントローラ3は、第1系統110を流れる電流、または、第2系統120を流れる電流が過電流閾値を超えると、地絡の発生を検出する。
【0040】
図2に示すように、電源制御装置1では、例えば、第1系統110で地絡300が発生した場合、または、第2系統120で地絡301が発生した場合、地絡点に向けて過電流が流れる。このため、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2は、地絡閾値以下になる。
【0041】
コントローラ3は、第1系統電圧V1または第2系統電圧V2が地絡閾値未満になった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡300または地絡301が発生したと仮判定する。その後、コントローラ3は、外部装置100に自動運転禁止信号を出力する。なお、コントローラ3が行う仮判定処理は、複数の地絡閾値を用いて行うが、かかる点の詳細については、
図5A~
図5Cを用いて後述する。
【0042】
そして、コントローラ3は、地絡300または地絡301が発生したと仮判定すると、系統間スイッチ41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにする。これにより、第1系統110と第2系統120との接続が切断されるので、メイン電源10から第1系統110へ電力が供給され、バックアップ電源20から第2系統120へ電力が供給される。以下、仮判定の結果に基づく系統間スイッチ41の遮断をプレ遮断とも称する。
【0043】
コントローラ3は、プレ遮断後、第1系統電圧V1が所定期間以上継続して地絡閾値未満であり、かつ第2系統電圧V2が所定期間以上継続して地絡閾値より大きい正常閾値以上になるまで復帰した場合、第2系統120は正常であって第1系統110に地絡300が発生したと本判定する。ここでの所定期間は、例えば、100msである。なお、所定期間は、100msに限定されるものではない。また、正常閾値は、地絡閾値よりも高い値である。
【0044】
コントローラ3は、第1系統110に地絡300が発生したと本判定した場合、
図3に示すように、バックアップ電源20から第2負荷103に電力を供給するフェイルセーフ制御を行い、その旨を外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、バックアップ電源20から供給される電力によって第2負荷103を動作させ、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。なお、フェイルセーフ制御には、仮判定による系統間スイッチ41の遮断、電池用スイッチ42の導通、および本判定時の外部装置100への通知も含まれてよい。
【0045】
また、コントローラ3は、プレ遮断後、第1系統電圧V1が所定期間以上継続して正常閾値以上になるまで復帰し、かつ第2系統電圧V2が所定期間以上継続して地絡閾値未満である場合に、第1系統110は正常であって第2系統120に地絡301が発生したと本判定する。
【0046】
コントローラ3は、第2系統120に地絡301が発生したと本判定した場合、
図4に示すように、電池用スイッチ42をオフにして、メイン電源10から第1負荷101および一般負荷102に電力を供給するフェイルセーフ制御を行う。そして、コントローラ3は、その旨を外部装置100に通知する。これにより、外部装置100は、メイン電源10から供給される電力によって第1負荷101を動作させ、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0047】
なお、上述では、第1系統110または第2系統120に地絡が発生した場合について説明した。しかしながら、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2は、地絡以外にも、過負荷やノイズ等に起因して一時的に電圧値が低下する場合がある。
【0048】
また、コントローラ3は、以下で説明する仮判定処理において地絡を高精度に判定できるため、仮判定後の本判定で地絡系統を特定する際に、各系統の電圧が地絡閾値以上に復帰するか否かの判定時間を短くしてもよい。つまり、コントローラ3は、本判定において、電圧が地絡閾値未満である系統を即座に地絡が発生した系統として特定してもよい。
【0049】
従来の仮判定処理では、過負荷やノイズ等に起因して一時的に電圧値が閾値未満まで低下した場合であっても、系統間スイッチ41を遮断して電圧異常が発生している系統を特定する処理を行うこととなる。なお、この場合には、第1系統110および第2系統120ともに電圧が正常値に復帰するため、系統間スイッチ41を再接続して通常制御に戻ることとなる。すなわち、従来の仮判定処理では、一時的な電圧低下を誤って地絡と仮判定してしまい、系統間を不必要に遮断してしまうこととなる。その結果、運転者にとって、通常制御に戻るまでの一定期間は自動運転機能を使用できなくなってしまうおそれがあった。
【0050】
そこで、本開示では、仮判定処理において複数の閾値を設定することで、仮判定処理における地絡の誤判定を低減する。
図5A~
図5Cは、本開示における仮判定処理を説明するための図である。
【0051】
図5A~
図5Cに示すように、本開示では、3つの地絡閾値(第1閾値TH1~第3閾値TH3)を用いて仮判定処理を行う。第1閾値TH1は、電圧値が最も高い閾値である。第2閾値TH2は、第1閾値TH1よりも電圧値が低い閾値である。第3閾値TH3は、第2閾値TH2よりも電圧値が低い閾値である。なお、以下において「閾値を超える」という表現は、地絡を検出するためのパラメータを電圧とした場合には、「電圧値が閾値未満に低下した状態」を指し、かかるパラメータを電流とした場合には、「電流値が閾値以上に増加した状態」を指す。以下では、地絡を検出するためのパラメータが電圧である場合を例に挙げて説明する。
【0052】
コントローラ3は、第1閾値TH1を用いた第1判定処理と、第2閾値TH2を用いた第2判定処理と、第3閾値TH3を用いた第3判定処理とを並行して実行する。第1判定処理とは、第1系統110または第2系統120の電圧値について、第1閾値TH1を超えた状態が第1時間閾値以上継続した場合に地絡が発生したと仮判定する処理である。第2判定処理とは、第1系統110または第2系統120の電圧値について、第2閾値TH2を超えた状態が第1時間閾値よりも短い第2時間閾値以上継続した場合に地絡が発生したと仮判定する処理である。第3判定処理とは、第1系統110または第2系統120の電圧値について、第3閾値TH3を超えた場合に直ちに地絡が発生したと仮判定する処理である。
【0053】
図5A~
図5Cでは、電圧低下をパターン別に示し、各パターンにおける仮判定処理を説明する。
【0054】
まず、
図5Aでは、第1系統110または第2系統120の電圧値の低下が第1閾値TH1未満、かつ、第2閾値TH2以上であるパターンを示している。また、
図5Aにおける左側のパターンAは、電圧値が第1閾値TH1以上に復帰した場合を示し、右側のパターンBは、電圧値が第1閾値TH1未満において上昇および下降を繰り返すパターンを示している。
【0055】
図5Aの場合、コントローラ3は、電圧値の低下が第1閾値TH1未満、かつ、第2閾値TH2以上であるため、第1判定処理のみ行い、第2判定処理および第3判定処理は行わない。具体的には、
図5AのパターンAの場合、コントローラ3は、第1判定処理において、電圧値が第1閾値TH1未満となった後の第1時間閾値T1以内に、再び第1閾値TH1以上に復帰しているため、第1判定処理の処理結果として地絡無しと仮判定する。これにより、過負荷やノイズ等による一時的な電圧低下が行った場合であっても、仮判定処理において地絡無しと判定することができる。この結果、コントローラ3は、一時的な電圧低下によって不必要に系統間スイッチ41を遮断することを減らすことができる。
【0056】
一方、
図5AのパターンBの場合、コントローラ3は、電圧値が第1閾値TH1未満となった状態が第1時間閾値T1以上継続しているため、第1判定処理の処理結果として地絡有りと仮判定する。なお、この場合、第1時間閾値T1が経過したタイミングで地絡有りと仮判定する。これにより、例えば、電圧が下降上昇を繰り返しながら徐々に低下していく地絡を高精度に検出することができる。
【0057】
次に、
図5Bでは、第1系統110または第2系統120の電圧値の低下が第2閾値TH2未満、かつ、第3閾値TH3以上であるパターンを示している。また、
図5Bにおける左側のパターンAは、電圧値が第1閾値TH1以上に復帰した場合を示す。中央のパターンBは、電圧値が第2閾値TH2以上、第1閾値TH1未満までで上昇が止まった場合を示す。右側のパターンCは、電圧値が第2閾値TH2以上まで上昇した後、再び第2閾値TH2未満に下降した場合を示す。
【0058】
図5Bの場合、コントローラ3は、電圧値の低下が第2閾値TH2未満、かつ、第3閾値TH3以上であるため、第1判定処理および第2判定処理を行い、第3判定処理は行わない。
【0059】
具体的には、
図5BのパターンAの場合、コントローラ3は、電圧値が第1閾値TH1未満となったタイミングで第1判定処理における時間計測を開始する。そして、コントローラ3は、電圧値が第1閾値TH1以上となったタイミングで第1判定処理における時間計測を終了し第1判定処理の判定結果を出す。すなわち、コントローラ3は、第1判定処理において、電圧値が第1閾値TH1未満となった後の第1時間閾値T1以内に、再び第1閾値TH1以上に復帰しているため、第1判定処理の処理結果として地絡無しと仮判定する。
【0060】
また、
図5BのパターンAにおいて、コントローラ3は、電圧値が第2閾値TH2未満となったタイミングで第2判定処理における時間計測を開始する。そして、コントローラ3は、電圧値が第2閾値TH2以上となったタイミングで第2判定処理における時間計測を終了し第2判定処理の判定結果を出す。すなわち、コントローラ3は、電圧値が第2閾値TH2未満となった後の第2時間閾値T2以内に、再び第2閾値TH2以上に復帰しているため、第2判定処理の処理結果として地絡無しと仮判定する。
【0061】
図5BのパターンAについて、コントローラ3は、第1判定処理および第2判定処理ともに地絡無しと判定したため、最終的な判定結果として地絡無しを確定させる。これにより、過負荷やノイズ等によって比較的大きな電圧低下が一時的に行った場合であっても、仮判定処理において地絡無しと判定することができる。
【0062】
次に、
図5BのパターンBの場合、コントローラ3は、第1判定処理において、電圧値が第1閾値TH1未満となった状態が第1時間閾値T1以上継続しているため、第1判定処理の処理結果として地絡有りと仮判定する。
【0063】
また、
図5BのパターンBにおいて、コントローラ3は、第2判定処理において、電圧値が第2閾値TH2未満となった後の第2時間閾値T2以内に、再び第2閾値TH2以上に復帰しているため、第2判定処理の処理結果として地絡無しと仮判定する。
【0064】
図5BのパターンBについて、コントローラ3は、第1判定処理および第2判定処理のうち、第1判定処理において地絡有りと判定されたため、最終的な判定結果として地絡有りを確定させる。これにより、例えば、初期に比較的大きな電圧低下が起こって一旦復帰した後に電圧が下降上昇を繰り返しながら徐々に低下していく地絡を高精度に検出することができる。
【0065】
次に、
図5BのパターンCの場合、コントローラ3は、第1判定処理において、電圧値が第1閾値TH1未満となった状態が第1時間閾値T1以上継続しているため、第1判定処理の処理結果として地絡有りと仮判定する。
【0066】
また、
図5BのパターンCにおいて、コントローラ3は、第2判定処理において、電圧値が第2閾値TH2未満となった状態が第2時間閾値T2以上継続しているため、第2判定処理の処理結果として地絡有りと仮判定する。
【0067】
図5BのパターンCについて、コントローラ3は、第1判定処理および第2判定処理それぞれにおいて地絡有りと判定されたため、最終的な判定結果として地絡有りを確定させる。なお、
図5BのパターンCの場合、コントローラ3は、第2判定処理において地絡有りと仮判定しているため、第2時間閾値T2が経過したタイミングで最終的な判定結果として地絡有りを確定させる。これにより、例えば、初期に比較的大きな電圧低下が起こって一旦復帰した後に電圧が本格的に低下していく地絡の場合に、初期段階で高精度に地絡を検出することができる。
【0068】
次に、
図5Cでは、第1系統110または第2系統120の電圧値の低下が第3閾値TH3未満であるパターンを示している。
図5Cに示すパターンの場合、コントローラ3は、電圧値が第3閾値TH3未満であるため、第3判定処理の処理結果として地絡有りと仮判定し、第1判定処理および第2判定処理の処理結果を待たずに最終的な判定結果として地絡有りを確定させる。これにより、地絡を早期かつ高精度に検出することができる。
【0069】
コントローラ3は、少なくとも、第1閾値TH1と第1時間閾値T1を用いた第1判定処理、および第2閾値TH2と第1時間閾値T2を用いた第2判定処理により地絡を確定させる。すなわち、コントローラ3は、第1判定処理および第2判定処理を行い、どちらかの判定処理で先に地絡と判定した場合に地絡を確定させる。これにより、従来の単一の地絡閾値を用いた地絡判定に比べ、地絡の誤判定を低減することができる。
【0070】
但し、第1判定処理と第2判定処理は時間計測を要するため、第1系統110または第2系統120に実際に地絡が発生していた場合に、若干地絡の検出遅れが生じる。そこで、コントローラ3は、第1判定処理、第2判定処理、および時間判定のない第3判定処理を並行して実施することで、実際に地絡が発生した場合に地絡を早期に検出することができる。すなわち、コントローラ3は、第1判定処理、第2判定処理、第3判定処理を行い、いずれかの判定処理で最も早く地絡を判定した場合に、地絡を確定させることにより、地絡の誤判定を低減しつつ、早期に地絡を検出することができる。
【0071】
なお、コントローラ3は、第3判定処理によって地絡有りと仮判定される前に、第1判定処理または第2判定処理によってすでに地絡有りと仮判定された場合には、第3判定処理の判定結果を待たずに地絡有りを確定させて系統間スイッチ41を遮断する。つまり、コントローラ3は、第1判定処理、第2判定処理および第3判定処理のいずれかで最も早く地絡と仮判定したタイミングで系統間スイッチ41を遮断する。これにより、より早く地絡を確定させることができるため、フェイルセーフ制御をより早く行うことができる。
【0072】
[コントローラが実行する処理]
次に、
図6および
図7を参照して、コントローラ3が実行する処理について説明する。
図6は、コントローラ3が実行する全体処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、コントローラ3が実行する地絡判定処理の一例を示すフローチャートである。
図6および
図7に示す処理は、車両のIG(イグニッションスイッチ)がオンされてからオフされるまで繰り返し実行される。
【0073】
図6に示すように、コントローラ3は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52により第1系統110および第2系統120の電圧をモニターする(ステップS101)。
【0074】
つづいて、コントローラ3は、第1系統110および第2系統120の電圧に基づいて、仮判定処理である地絡判定処理を行う(ステップS102)。なお、地絡判定処理については
図7で後述する。
【0075】
つづいて、コントローラ3は、地絡判定処理において地絡有りと判定された場合(ステップS103:Yes)、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を接続する(ステップS104)。つまり、コントローラ3は、第1系統110および第2系統120を切り離すとともに、第2系統120にLiB21を接続する。なお、コントローラ3は、地絡判定処理において地絡無しと判定された場合(ステップS103:No)、処理を終了する。
【0076】
つづいて、コントローラ3は、地絡した系統を特定する(ステップS105)。コントローラ3が、系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を接続することで、地絡している系統の電圧はそのまま低下を続けるが、地絡していない系統の電圧は回復する。
【0077】
そこでコントローラ3は、第1系統110および第2系統120の電圧を復帰判定用の閾値(地絡判定用の第1閾値TH1と同じ値、またはTH1以上の値)と比較する。コントローラ3は、電圧が復帰判定用の閾値を先に上回った方の系統を正常な系統として特定し、他の系統を地絡した系統として特定する。
【0078】
なお、地絡系統の特定方法はこれに限らない。例えば、コントローラ3は、ステップ104で系統間スイッチ41を遮断し、電池用スイッチ42を接続した後の第1系統110の電圧と第2系統120の電圧の変化状態から地絡系統を特定してもよい。具体的には、コントローラ3は、電圧が回復傾向を示す系統を正常な系統であると特定し、電圧が低下傾向を示す系統を地絡している系統であると特定する。
【0079】
つづいて、コントローラ3は、ステップS105の特定結果に基づき、第1系統110で地絡が発生しているか否かを判定する(ステップS106)。コントローラ3は、第1系統110で地絡が発生していると判定した場合(ステップS106:Yes)、系統間スイッチ41の遮断を継続するとともに、電池用スイッチ42の接続を継続し(ステップS107)、処理を終了する。つまり、コントローラ3は、LiB21から第2系統120を介して第2負荷103へ電力を供給する。
【0080】
一方、ステップS106において、コントローラ3は、第1系統110で地絡が発生していない、すなわち第2系統120で地絡が発生していると判定した場合(ステップS106:No)、系統間スイッチ41の遮断を継続するとともに、電池用スイッチ42を遮断し(ステップS108)、処理を終了する。つまり、コントローラ3は、メイン電源10から第1系統110を介して第1負荷101および一般負荷102へ電力を供給する。
【0081】
次に、
図7を用いて、地絡判定処理について説明する。
【0082】
図7に示すように、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第1閾値TH1未満まで低下したか否かを判定する(ステップS201)。
【0083】
コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第1閾値TH1未満まで低下した場合(ステップS201:Yes)、第1タイマのカウントアップを行い(ステップS202)、第1タイマ値が第1時間閾値T1以上であるか否かを判定する(ステップS203)。一方、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第1閾値TH1以上である場合(ステップS201:No)、第1タイマ値をクリアし(ステップS204)、後述するステップS205に移行する。
【0084】
ステップS203において、コントローラ3は、第1タイマ値が第1時間閾値T1以上である場合(ステップS203:Yes)、地絡有りと判定する(ステップS210)。一方、ステップS203において、コントローラ3は、第1タイマ値が第1時間閾値T1未満である場合(ステップS203:No)、ステップS205に移行する。ステップS201~S204およびS210が第1判定処理に対応する。
【0085】
次いで、ステップS205において、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第2閾値TH2未満まで低下したか否かを判定する。
【0086】
コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第2閾値TH2未満まで低下した場合(ステップS205:Yes)、第2タイマのカウントアップを行い(ステップS206)、第2タイマ値が第2時間閾値T2以上であるか否かを判定する(ステップS207)。一方、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第2閾値TH2以上である場合(ステップS205:No)、第2タイマ値をクリアし(ステップS208)、後述するステップS209に移行する。
【0087】
ステップS207において、コントローラ3は、第2タイマ値が第2時間閾値T2以上である場合(ステップS207:Yes)、地絡有りと判定する(ステップS210)。一方、ステップS207において、コントローラ3は、第2タイマ値が第2時間閾値T2未満である場合(ステップS207:No)、ステップS209に移行する。ステップS205~S208およびS210が第2判定処理に対応する。
【0088】
次いで、ステップS209において、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第3閾値TH3未満まで低下したか否かを判定する。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第3閾値TH3未満まで低下した場合(ステップS209:Yes)、地絡有りと判定する(ステップS210)。一方、コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の電圧が第3閾値TH3以上である場合(ステップS209:No)、処理を終了する。ステップS209およびS210が第3判定処理に対応する。
【0089】
次に、
図8を用いて、電源制御装置1の構成例について説明する。
図8は、電源制御装置1の構成例を示す図である。
図8に示すように、電源制御装置1のコントローラ3は、第1判定部31と、第2判定部32と、第3判定部33とを備える。
【0090】
第1判定部31は、第1閾値TH1と第1時間閾値T1を用いて第1判定処理を行うソフトウェアとして構成される。ソフトウェアとしての第1判定部31は、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52から取得した電圧に基づいて第1判定処理を行い、処理結果に基づいて、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。
【0091】
第2判定部32は、第2閾値TH2と第2時間閾値T2を用いて第2判定処理を行うソフトウェアとして構成される。ソフトウェアとしての第2判定部32は、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52から取得した電圧に基づいて第2判定処理を行い、処理結果に基づいて、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。
【0092】
第3判定部33は、第3閾値TH3を用いて第3判定処理を行うソフトウェアとして構成される。ソフトウェアとしての第3判定部33は、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52から取得した電圧に基づいて第3判定処理を行い、処理結果に基づいて、系統間スイッチ41および電池用スイッチ42を制御する。このように、第1判定部31、第2判定部32および第3判定部33をソフトウェアで構成することで、電源制御装置1の回路構成を簡略化することができる。
【0093】
なお、第3判定部33は、ソフトウェアによって構成される場合に限らず、ハードウェアによって構成されてもよい。ハードウェアとしての第3判定部33は、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52の電圧と、第3閾値TH3とを比較するコンパレータである。その場合、コンパレータが、第1電圧センサ51または第2電圧センサ52の電圧が第3閾値TH3以下になったことを検出すると、その検出信号をラッチ回路でラッチし、ラッチ回路の出力が系統間スイッチ41を遮断する。コンパレータとしての第3判定部33は、第1電圧センサ51および第2電圧センサ52の電圧が第3閾値TH3未満となったことを、ソフトウェアである場合に比べて速く検出することができる。第1判定部31と第2判定部32は、電圧比較の処理と時間計測の処理を有するため、これらの処理をハードウェアで構成すると回路構成が複雑になる。その点第3判定部33は電圧比較の処理のみであって時間計測の処理がないため、第1判定部31と第2判定部32をソフトウェアで構成し、第3判定部33をハードウェアで構成することにより、回路構成を複雑にすることなく地絡検出の応答性を確保できる。
【0094】
上述したように、実施形態に係る電源制御装置1は、コントローラ3を備える。コントローラ3は、第1電源(メイン電源10)から第1負荷101(および一般負荷102)へ給電する第1系統110と、第2電源(バックアップ電源20)から第2負荷103へ給電する第2系統120とを接続および遮断可能な接続部(系統間スイッチ41)を制御する。コントローラ3は、第1系統110または第2系統120の地絡を検出するためのパラメータ(電圧または電流)について、第1の閾値TH1を超えた状態が第1時間閾値T1以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、第1系統110または第2系統120の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値TH1を超えた閾値である第2の閾値TH2を超えた状態が第1時間閾値T1より小さい第2時間閾値T2以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、第1判定処理または第2判定処理のいずれかで地絡と判定した場合に接続部を遮断する。これにより、電源制御装置1は、過負荷やノイズ等に起因する一時的な電圧低下を排除しつつ、地絡を高精度に検出できるため、地絡の誤判定を低減することができる。
【0095】
[付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、
前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する
電源制御装置。
(2)
前記コントローラは、
前記パラメータについて、前記第2の閾値を超えた閾値である第3の閾値を超えた場合に地絡と判定する第3判定処理をさらに行い、
前記第1判定処理、前記第2判定処理または前記第3判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する
(1)に記載の電源制御装置。
(3)
前記コントローラは、
前記第1判定処理、前記第2判定処理または前記第3判定処理のいずれかで最も早く前記地絡と判定したタイミングで前記接続部を遮断する
(2)に記載の電源制御装置。
(4)
前記コントローラは、
前記接続部を遮断した後に、前記パラメータに基づいて前記地絡が発生した系統を特定する
(1)~(3)のいずれか1つに記載の電源制御装置。
(5)
前記コントローラは、
前記第1判定処理、前記第2判定処理および前記第3判定処理をソフトウェアにより行う
(2)~(4)のいずれか1つに記載の電源制御装置。
(6)
前記コントローラは、
前記第1判定処理および前記第2判定処理をソフトウェアにより行い、前記第3判定処理をハードウェアにより行う
(2)~(5)のいずれか1つに記載の電源制御装置。
(7)
前記ハードウェアは、コンパレータであり、
前記コントローラは、
前記パラメータと、前記第3の閾値とを前記コンパレータへ入力し、前記コンパレータから前記第3判定処理の判定結果を出力する
(6)に記載の電源制御装置。
(8)
電源制御装置が実行する電源制御方法であって、
第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御し、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、
前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断する
電源制御方法。
(9)
第1電源から第1負荷へ給電する第1系統と、第2電源から第2負荷へ給電する第2系統とを接続および遮断可能な接続部を制御し、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた状態が第1の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第1判定処理と、
前記第1系統または前記第2系統の地絡を検出するためのパラメータについて、第1の閾値を超えた閾値である第2の閾値を超えた状態が第1の時間閾値より小さい第2の時間閾値以上継続した場合に地絡と判定する第2判定処理と、を行い、
前記第1判定処理または前記第2判定処理のいずれかで前記地絡と判定した場合に前記接続部を遮断すること
をコンピュータに実行させる電源制御プログラム。
【0096】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 電源制御装置
3 コントローラ
10 メイン電源
11 DC/DC
12 PbB
20 バックアップ電源
21 LiB
22 状態監視ライン
31 第1判定部
32 第2判定部
33 第3判定部
41 系統間スイッチ
42 電池用スイッチ
51 第1電圧センサ
52 第2電圧センサ
100 外部装置
101 第1負荷
102 一般負荷
103 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統
130 系統間ライン