(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007887
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】エッジワイズ曲げ方法及びエッジワイズ曲げ装置
(51)【国際特許分類】
B21D 11/20 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
B21D11/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109599
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】392031424
【氏名又は名称】株式会社佐藤精機
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊臣
(57)【要約】
【課題】バスバー等になる帯板に対して90°に近いエッジワイズ曲げを変形を抑えながら実現する。
【解決手段】帯板Xが真っ直ぐになった状態から、押圧片23を押下げると一対のクランプ部7、7は「C」を共通の支点として互いに反対方向に同じ周速度で回動して、左側のクランプ部7の側辺縁9bと、右側のクランプ部7の側辺縁9bは板面が左右方向を向いた合掌状態から徐々に離れていく。すなわち、それぞれの凹溝部13、13の間が扇状に広がって隙間が形成されていく。その過程で内側面13bと内側面13bが直線状に連なった状態から山状に隆起していく。この徐々に隆起していく面が「角面」であり、この「角面」に帯板Xのエッジワイズ方向一方側の板厚面Xbが押し当てられて曲げられていき、この当接側が曲げ内面となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性加工可能な帯板を両側でクランプしながら、そのクランプ角度を徐々に前記帯板の折返し方向に変えていくことで、曲げ部となる中間部の面圧を徐々に上げながら、前記中間部をエッジワイズ方向に曲げていくことを特徴とするエッジワイズ曲げ方法。
【請求項2】
請求項1に記載したエッジワイズ曲げ方法において、
曲げ部の曲げ内面を変化していくクランプ角度を押当て面として利用して作り上げることを特徴とするエッジワイズ曲げ方法。
【請求項3】
塑性加工可能な帯板を中間部を挟んで直列に並んだ凹溝部に嵌め込んでクランプする一対の左右対称のクランプ部と、前記一対のクランプ部を共通の支点でそれぞれ反対方向に回動させる回動手段を備え、
前記帯板の中間部は、回動により前記一対のクランプ部のそれぞれの凹溝部の間が扇状に広がって隙間が形成されていく過程で山状に隆起していく前記凹溝部の角面にエッジワイズ方向の一方側が押当てられて曲げ内面になり、他方側が曲げ外面になることを特徴とするエッジワイズ曲げ装置。
【請求項4】
請求項3に記載したエッジワイズ曲げ装置において、
クランプ部には、支点を挟んで両側に対向面が設けられて一方側の対向面が凹溝部の角面を構成しており、一対のクランプ部のそれぞれの凹溝部が直状に延びて連なった状態では、それぞれの他方側の対向面が合掌され、前記角面が最大鋭角になった状態では、前記それぞれの他方側の対向面が開くことを特徴とするエッジワイズ曲げ装置。
【請求項5】
請求項4に記載したエッジワイズ曲げ装置において、
クランプ部の一方側の対向面が合掌した端側に左右対称の三角状の隙間が形成されており、三角形の先端部を有する押圧片が前記隙間に進入していくことで、前記の三角形の頂角から合掌した対向面どうしの境界に続く方向に力が与えられて、一対のクランプ部が回動することを特徴とするエッジワイズ曲げ装置。
【請求項6】
請求項5に記載したエッジワイズ曲げ装置において、
押圧片の先端部は隅面と内底面でなる凹隅部を有しており、
最終的には、回動により前記一対のクランプ部のそれぞれの凹溝部の間が扇状に広がって隙間に前記内底面が進入して、前記凹隅部と一対の凹溝部とで、L形に連続した凹溝が形成され、前記隅面が曲げ外面側を押圧することを特徴とするエッジワイズ曲げ装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかに記載したエッジワイズ曲げ装置において、
ベース台に設けられて上下方向に貫通する円形の貫通穴に、クランプ部側に設けられて円弧周面を有する支持部が回動自在に嵌込まれて、前記クランプ部の回動が実現されていることを特徴とするエッジワイズ曲げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性加工可能な帯板に対して施すエッジワイズ曲げ方法およびそのエッジワイズ曲げ方法の実施に用いるエッジワイズ曲げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塑性加工可能な帯板として代表的なバスバー(銅板)は大容量の電流が流れる部分に使用される導体であり、操作盤、配電盤、電池などに従来から広く使用されている。
最近では、電気自動車の普及に伴い、電気配線の主流である高圧ハーネスに代わる部品としてバスバーが注目されている。
而して、高圧ハーネスと異なり、バスバーは形状が固定されているため、予め所定の形状に成形しておく必要があるが、大容量電池などの搭載で車載スペースが限られる中、他の電気部品等の配置のための空間を作り出したり、狭い隙間に通したりすることを可能とするために、立体的な成形要求が益々過酷になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブランク抜きの段階で板幅変化部を作り出すのでは、ブランクの歩留まりが低くなって、製作コストを大幅に引き上げてしまう。
一方、ブランク抜きした後に、特許文献1に記載のようなフォーミング加工によりエッジワイズ曲げを施そうとしても、従来のV曲げ用のパンチとダイを用いたのでは、尖ったパンチの先端が柔らかい銅素材に食い込んで割れると共にその周囲が盛り上がって変形してしまうため、厚みのあるバスバーでは特に曲げ加工性が不十分となる。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目してなされたものであり、バスバー等の塑性加工可能な帯板に対して90°に近いエッジワイズ曲げを変形を抑えながら実現できる、新規且つ有用なエッジワイズ曲げ方法およびそのエッジワイズ曲げ方法の実施に用いるエッジワイズ曲げ装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、塑性加工可能な帯板を両側でクランプしながら、そのクランプ角度を徐々に前記帯板の折返し方向に変えていくことで、曲げ部となる中間部の面圧を徐々に上げながら、前記中間部をエッジワイズ方向に曲げていくことを特徴とするエッジワイズ曲げ方法である。
好ましくは、曲げ部の曲げ内面を変化していくクランプ角度を押当て面として利用して作り上げる。
【0007】
本発明は、塑性加工可能な帯板を中間部を挟んで直列に並んだ凹溝部に嵌め込んでクランプする一対の左右対称のクランプ部と、前記一対のクランプ部を共通の支点でそれぞれ反対方向に回動させる回動手段を備え、前記帯板の中間部は、回動により前記一対のクランプ部のそれぞれの凹溝部の間が扇状に広がって隙間が形成されていく過程で山状に隆起していく前記凹溝部の角面にエッジワイズ方向の一方側が押当てられて曲げ内面になり、他方側が曲げ外面になることを特徴とするエッジワイズ曲げ装置である。
【0008】
好ましくは、クランプ部には、支点を挟んで両側に対向面が設けられて一方側の対向面が凹溝部の角面を構成しており、一対のクランプ部のそれぞれの凹溝部が直状に延びて連なった状態では、それぞれの他方側の対向面が合掌され、前記角面が最大鋭角になった状態では、前記それぞれの他方側の対向面が開く。
好ましくは、クランプ部の一方側の対向面が合掌した端側に左右対称の三角状の隙間が形成されており、三角形の先端部を有する押圧片が前記隙間に進入していくことで、前記三角形の頂角から合掌した対向面どうしの境界に続く方向に力が与えられて、一対のクランプ部が回動する。
好ましくは、押圧片の先端部は隅面と内底面でなる凹隅部を有しており、最終的には、回動により前記一対のクランプ部のそれぞれの凹溝部の間が扇状に広がって隙間に前記内底面が進入して、前記凹隅部と一対の凹溝部とで、L形に連続した凹溝が形成され、前記隅面が曲げ外面側を押圧する。
好ましくは、ベース台に設けられて上下方向に貫通する円形の貫通穴に、クランプ部側に設けられて円弧周面を有する支持部が回動自在に嵌込まれて、前記クランプ部の回動が実現されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエッジワイズ曲げ方法によれば、バスバー等の塑性加工可能な帯板に対して90°に近いエッジワイズ曲げを変形を抑えながら実現できる。
また、そのエッジワイズ曲げ方法を実施する装置として、単純な構造で耐久性良く構成されたものが提案されており、その使用を前提とすれば、ブランクの歩留まりの格段の向上により、曲げ加工方法を十分にコスト的に見合う形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るエッジワイズ曲げ装置の斜視図である。
【
図2】
図1のエッジワイズ曲げ装置の上面図及び2方向の側面図である。
【
図3】
図1のエッジワイズ曲げ装置の上面図、並びにA-A断面図及びB-B断面図である。
【
図4】
図1のエッジワイズ曲げ装置を用いた帯板のエッジワイズ曲げ方法のイメージ図である。
【
図5】
図1のエッジワイズ曲げ装置の動作説明図である。
【
図6】
図5のエッジワイズ曲げ装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るエッジワイズ曲げ装置1を、図面にしたがって説明する。
このエッジワイズ曲げ装置1は、バスバーとしての用途が想定されている銅板が塑性加工可能な帯板Xとして加工対象になっており、
図1~
図6に示す構造を有している。
説明の便宜上、
図1の矢印に示す方向を前後左右上下方向と定義する。
図1から
図3に示すように、このエッジワイズ曲げ装置1の上面3aが平面になっている扁平な四角形のベース台3上に、帯板Xが載せられてセットされる。
【0012】
ベース台3の上下方向に、断面円形の貫通穴5が直状に貫通しており、上面3aには貫通穴5の穴縁が見えている。この貫通穴5は上下方向の途中で円環状の段差面5aが設けられており、その段差面5aを介して上側が小径穴5b、下側が大径穴5cになって、同軸状に上下で並んでいる。エッジワイズ曲げ装置1は左右対称に構成されており、ベース台3の前半部の中央に貫通穴5が配置されている。
この貫通穴5を上方から覆うように、一対のクランプ部7、7が配置されている。クランプ部7の主部は一つの平板体で成形されており、2つの四角片が鈍角で交わったような輪郭を有している。
【0013】
右側のクランプ部7に着目すると、後側に位置する四角片9はほぼ正方形になっており、その後辺縁9aと左右の側辺縁9b、9cがクランプ7の輪郭の一部になっている。また、後辺縁9aと左側に位置する側辺縁9bとの間の角部は45°斜め方向に小さく切除されて短い斜辺縁9dになっている。
四角片9より前側では、長方形がその長辺方向を右前から左後に向かう斜め方向にした向きで、その右後の角部が四角片9の前部分に重なったような輪郭になっている。その長方形の短辺は四角片9の辺縁よりも短くなっているが、四角片9の前辺縁に相当する箇所に対してその長方形は斜め方向で交わっており、前辺縁11aと左右の側辺縁11b、11cがクランプ7の輪郭の一部になって現れており、左右の側辺縁11b、11cが左右の側辺縁9b、9cとそれぞれ連続している。左側の側辺縁9bと側辺縁11b、右側の側辺縁9cと側辺縁11cは、それぞれ上下方向の同じ位置で、同じ135°の鈍角で交わっている。
【0014】
全体から四角片9を除いた領域、すなわち、前辺縁11aと左右の側辺縁11b、11cと四角片9の前辺縁に相当する箇所で囲まれる領域が、四角片11になっている。
四角片9と四角片11は、物理的には別体になっており、後述する支持部15を介して連結されて一体化されている。
クランプ部7の上面7aを凹ませて凹溝部13が設けられている。この凹溝部13は断面が横長の長方形の凹面になって上方に開放されている。凹溝部13は直状に延びており、凹面が一対の平行に対向する内側面13a、13bと内底面13cとで構成されている。
【0015】
この凹溝部13は、四角片9側を凹ませて形成されており、内側面13a、13bのうち前側に位置する内側面13bが四角片11の後辺縁で構成されて、左右方向に延びている。そして、左右方向両端ではその凹面がそのまま開放されている。四角片11は強度確保のために上下二層構造になっており、強度の高い上層側が内側面13bになっている。
この凹溝部13に帯板Xがその一方の板面Xaを内底面13cに重ねた状態に僅かなクリアランスを残して嵌り込む。その際には、他方の板面Xaはクランプ部7の上面7aとほぼ面一になる。
【0016】
クランプ部7の下側には、支持部15が取付けられている。この支持部15は円弧柱状になっており、円弧の角度は上記したクランプ7の鈍角である135°になっている。また、周面には、途中で円環状の段差面15aが設けられており、その段差面15aを介して上側が小径面15b、下側が大径面15cになって、同軸状に上下方向に並んでいる。上方から見ると、支持部15はその全体がクランプ部7に隠れている。
支持部15は貫通穴5に嵌込まれて、小径面15bが小径穴5bに、大径面15cが大径穴5cに対して相対する。
【0017】
左側のクランプ部7は右側のクランプ部7と同様に構成されており、左右方向を逆にして共通の符号が付けられている。
それぞれの支持部15、15が貫通穴5に嵌込まれると、左側のクランプ部7については側辺縁9bと側辺縁11bの境界の「C」が支点となり、右側のクランプ部7についても側辺縁9bと側辺縁11bの境界の「C」が支点となり、それぞれベース台3に対して回動可能に保持される。このように、左右のクランプ部7、7の回動支点は共通の「C」になっている。また、支持部15の段差面15aとクランプ部7の下面とでベース台3を挟込み、且つ、それぞれの支持部15、15で貫通穴5の半分以上のスペースを占めるので、クランプ部7、7は貫通穴5から脱着されない。
また、クランプ部7の側辺縁9cと側辺縁11cが「C」を挟んだ対向面になっている。
【0018】
クランプ部7、7は互いに「C」を共通の支点で回動可能になっているが、左側のクランプ部7の側辺縁9bと、右側のクランプ部7の側辺縁9bが合掌するとそれ以上の合掌方向への回動が阻止され、左側のクランプ部7の側辺縁11bと右側のクランプ部7の側辺縁11bについても同様の関係になっている。
【0019】
クランプ部7、7の回動を規制するために、一対の規制ブロック17、17がベース台3の上面3aに固定されている。この規制ブロック17は長方形で長辺方向が前後方向になっている。
規制ブロック17は上段板19と下段板21に分かれており、下段板21は上段板19より幅方向の寸法が短くなっており、その分だけ、左右方向内側に段差が形成されており、ベース台3の上面3aとの間で凹溝17aが前後方向に延びている。
規制ブロック17、17は左右方向に間隔をあけて配置されており、右側の規制ブロック17の前端面17bの左側部位は、右側のクランプ部7の後辺縁9aの右側部位に前後方向で僅かなクリアランスを残して近接している。また、規制ブロック17は上下方向に厚みがあり、平板状のクランプ部7よりも一段上方に突出している。
【0020】
規制ブロック17が上記したように配置されているので、右側のクランプ部7は
図1~
図3に示す姿勢から反時計周り方向での回動は規制ブロック17に当たって阻止される。左側の規制ブロック17と左側のクランプ部7との関係も左右逆転で同様の関係になっている。
【0021】
一対の規制ブロック17、17の間の左右方向の隙間に、押圧片23が配置されている。この押圧片23は二つの角が直角かつ連続している直角五角形をなしており、領域は四角部25と鋭角を含む三角部27に分けられ、三角部27が押圧方向先端部になっている。四角部25の平行に対向している左右の側辺縁25a、25aが規制ブロック17、17のそれぞれの凹溝17a、17aに遊嵌されており、二等辺の三角部27の鋭角になった頂角27aを挟んで、その挟辺縁27b、27bが前方を向いている。
【0022】
挟辺縁27b、27bを二辺縁とするほぼ正方形状の凹隅部31が形成されている。この凹隅部31は「く」の字状に立った内側面31aと内底面31bで構成されており、内側面31aで45°の「隅面」が構成されている。この「く」の曲がり部は丸みが付けられている。また、内底面31bは凹溝部13の内底面13cと同じ高さになっている。また、内底面31bの辺縁の長さは凹溝部13の内底面13cの幅寸法と同じになっている。
【0023】
押圧片23の四角部25の後半部の上面に補強板29が重ねられて取付けられている。この補強板29は長方形で対向する短辺縁29a、29aが一対の規制ブロック17、17の上段板19、19のそれぞれの対向する面に相対している。
押圧片23の後端には電動シリンダの伸縮ロッド(図示省略)が固定されており、押圧片23は前進後退可能になっており、移動の際には左右の側辺縁25a、25aが規制ブロック17、17のそれぞれの凹溝17a、17aに摺接ガイドされ、補強板29の短辺縁29a、29aが一対の規制ブロック17、17の上段板19、19のそれぞれの対向する面に摺接ガイドされる。従って、移動軌道は一定に保持される。
そして、押圧片23の前進方向先端が凹隅部31になっている。
【0024】
エッジワイズ曲げ装置1は上記したように構成されており、帯板Xを、
図1から
図3に示すように、一方の板面Xaを一対のクランプ部7、7のそれぞれの凹溝部13、13に嵌め込んでセットすると、帯板Xは中間部を挟んで一対のクランプ部7、7でエッジワイズ方向での曲げが可能にクランプされた状態になる。この状態では、帯板Xは上方に持ち上げることでクランプ部7、7から取り出し可能であるが、エッジワイズ方向では曲げを強制できる程度にクランプされた状態になっている。本明細書では、「クランプ」をこの理解で用いている。
凹溝部13に帯板Xが僅かな隙間をあけて遊嵌されている。
【0025】
帯板Xは長手方向を左右方向にした姿勢で真っ直ぐになっているので、それに対応して、一対のクランプ部7、7はそれぞれの凹溝部13、13が直列に並んで内底面13c、13cが直状に連続した姿勢になっており、左側のクランプ部7の側辺縁9bと、左側のクランプ部7の側辺縁9bが合掌している。
この状態から、
図4(1)の矢印に示すように押圧片23に推力を与えて押下げて、前進させると、クランプ部7、7の斜辺縁9d、9dで囲まれた三角状の隙間9eに押圧片23が頂角27aを先頭にして進入し、挟辺縁27b、27bが左右均等に斜辺縁9d、9dに当たって合掌面を開く方向に力が作用する。従って、
図4(2)の矢印に示すように、一対のクランプ部7、7は「C」を共通の支点として互いに反対方向に、すなわち、左側のクランプ部7が反時計周りに、右側のクランプ部7は時計回りに、同じ周速度で回動して、左側のクランプ部7の側辺縁9bと、右側のクランプ部7の側辺縁9bは板面が左右方向を向いた合掌状態から徐々に離れていく。すなわち、それぞれの凹溝部13、13の間が扇状に広がって隙間が形成されていく。その過程で内側面13bと内側面13bが直線状に連なった状態から山状に隆起していく。
【0026】
この徐々に隆起していく面が「角面」であり、この「角面」に帯板Xのエッジワイズ方向一方側の板厚面Xbが押し当てられて曲げられていき、この当接側が曲げ内面となる。
また、扇状に広がっていく隙間には、押圧片23の凹隅部31が進入していく。
図5、
図6に示すように、一対のクランプ部7、7は、左側のクランプ部7の側辺縁11bと右側のクランプ部7の側辺縁11bが、板面が左右方向を向いた合掌状態になって回動が終了して、「角面」は最終的にほぼ90°に曲がった面になる。
【0027】
また、回動が終了して最終的に広がった隙間は丁度凹隅部31が嵌り込むサイズになっており、その隙間に凹隅部31が進入して嵌り込む。挟辺縁27b、27bが凹溝部13の開放端面に当接して、内底面31bと内底面13c、13cが滑らかに連なり、内側面31aと内側面13a、13aが滑らかに連なる。すなわち、凹隅部31と一対の凹溝部13、13とで、L形に連続した凹溝が形成される。
この位置にきた「隅面」に帯板Xのエッジワイズ方向他方側の板厚面Xbが当接され受止められることで偏肉が調整されていく。すなわち、押圧片23は曲げ外面となる部位を受止めて矯正する役目を兼ねている。
【0028】
帯板Xをその両側をクランプしながらそのクランプ角度を徐々に帯板Xの折返し方向に変えていくことで中間部を折り曲げるよう曲げを、このエッジワイズ曲げ装置1では曲げ内面側が徐々に鋭角化していく角面に押し当てられていくようにすることで実現しており、曲げ内面の中心となる部位の面圧が徐々に高くなっていので、割れやその周囲の肉盛りの発生が阻止される。しかも、その部位を挟んだ曲げ内面は、凹溝部13の内側面13a、13aに当接するので、塑性流動により肉は最終的には凹隅部31の内底面31b側に流れ込んで堰き止められる。従って、曲げ内面の隅部と曲げ外面の角部は共にほぼ直角(=90°)になる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記のエッジワイズ曲げ装置1は、エッジワイズ曲げ方法を実現するために創案された一例の装置であり、エッジワイズ曲げ方法の実施がこの装置の利用を前提とするものには限定されない。
また、エッジワイズ曲げ装置1の各部の形状・サイズ・配置関係も、素材の種類、形状、サイズ等によりその都度最適に設計されることになる。
【符号の説明】
【0030】
1…エッジワイズ曲げ装置
3…ベース台 3a…上面 5…貫通穴
5a…段差面 5b…小径穴 5c…大径穴
7…クランプ部 7a…上面 9…四角片
9a…後辺縁 9b…側辺縁 9c…側辺縁
9d…斜辺縁 9e…三角状の隙間
11…四角片 11a…前辺縁 11b…側辺縁
11c…側辺縁 13…凹溝部 13a…内側面
13b…内側面 13c…内底面 15…支持部
15a…段差面 15b…小径面 15c…大径面
17…規制ブロック 17a…凹溝 17b…前端面
19…上段板 21…下段板 23…押圧片
25…四角部 25a…側辺縁 27…三角部
27a…頂角 27b…挟辺縁 29…補強板
29a…短辺縁 31…凹隅部 31a…内側面
31b…内底面
X…帯板 Xa…板面 Xb…板厚面
C…回動支点