(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007908
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】床形成方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/08 20060101AFI20250109BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20250109BHJP
C04B 41/63 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B28B11/08
C04B28/02
C04B41/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109632
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正雄
(72)【発明者】
【氏名】八十川 昭
(72)【発明者】
【氏名】三戸 春彦
【テーマコード(参考)】
4G028
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G028CA01
4G028CB01
4G028CC01
4G055AA01
4G055BA44
4G112PA02
4G112PC03
4G112PC08
4G112PE02
(57)【要約】
【課題】工期の短縮ができ、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が高い付着強度を有していながら、塗り床材やタイル等の仕上げ材を処理することができる床形成方法を提供すること。
【解決手段】下地材を打設し、下地材が終結する前に、下地材の表面全体を目荒らし処理し、目荒らし処理後に自己平滑性モルタルを打設する、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工工程と、下地材及び前記自己平滑性モルタルが硬化した後に、自己平滑性モルタルの硬化体表面に床仕上げ処理を行う仕上げ工程と、を備える、床形成方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材を打設し、前記下地材が終結する前に、前記下地材の表面全体を目荒らし処理し、前記目荒らし処理後に自己平滑性モルタルを打設する、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工工程と、
前記下地材及び前記自己平滑性モルタルが硬化した後に、前記自己平滑性モルタルの硬化体表面に床仕上げ処理を行う仕上げ工程と、を備える、床形成方法。
【請求項2】
前記床仕上げ処理が、合成樹脂系塗り床材の塗布又はタイル材の張付けである、請求項1に記載の床形成方法。
【請求項3】
前記仕上げ工程において、前記床仕上げ処理前に前記自己平滑性モルタルの硬化体表面を研磨する、請求項1又は2に記載の床形成方法。
【請求項4】
前記目荒らし処理が刷毛引き及び/又は脆弱層の除去作業である、請求項1又は2に記載の床形成方法。
【請求項5】
前記目荒らしが密である、請求項1又は2に記載の床形成方法。
【請求項6】
前記自己平滑性モルタルが、セメント、減水剤、増粘剤、細骨材及び水を含む、請求項1又は2に記載の床形成方法。
【請求項7】
施工場所で測定した際、前記自己平滑性モルタルが、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である、請求項1又は2に記載の床形成方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設後に平滑性を確保したい場合、自己平滑性モルタル(セルフレベリング材)を打設することがある。自己平滑性モルタルは、セメント及び細骨材を基材とし、各種混和材を配合したものに水を添加して混練したスラリー状の混練物であり、そのスラリー特有の高流動性を利用して平滑な床面を形成するものである。
【0003】
また、床面を形成する場合、美観や耐水性、耐摩耗性等の付与を目的として塗り床材を塗布したり、タイルや石板等の仕上げ材を処理して仕上げることが行われている。塗り床材としては一般的にエポキシ樹脂やウレタン樹脂等の有機樹脂系が用いられている。
【0004】
例えば特許文献1には、建築物のコンクリート床上面に、セルフレベリング材モルタル用プライマー層を設け、その上面にアルミナセメントと樹脂粉末とを含むセルフレベリング材と水とを混練して調製したスラリーを打設して硬化させ、セルフレベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材用プライマー層を設け、その上面に塗り床材用ベースコートを施工して硬化させることを特徴とするコンクリート床構造体の施工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自己平滑性モルタルを下地コンクリートに打設することにより平滑性は確保できるが、工程が増えることによる工期の長期化が問題となる。また、下地コンクリートと自己平滑性モルタル硬化体界面における付着強度が十分に確保できない場合、衝撃等による剥離のおそれが生じる。そのため、短期間で施工ができ、平滑性が確保でき、高い付着強度が得られる施工方法が求められる。
【0007】
したがって、本発明は、工期の短縮ができ、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が高い付着強度を有していながら、塗り床材やタイル等の仕上げ材を処理することができる床形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、下地材と自己平滑性モルタルを連続して施工した後に仕上げ処理を行うことにより、短期間で、下地材、自己平滑性モルタル硬化体、床仕上げ層という床構造全体として高い付着強度を有している床形成方法ができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]下地材を打設し、下地材が終結する前に、下地材の表面全体を目荒らし処理し、目荒らし処理後に自己平滑性モルタルを打設する、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工工程と、下地材及び前記自己平滑性モルタルが硬化した後に、自己平滑性モルタルの硬化体表面に床仕上げ処理を行う仕上げ工程と、を備える、床形成方法。
[2]床仕上げ処理が、合成樹脂系塗り床材の塗布又はタイル材の張付けである、[1]に記載の床形成方法。
[3]仕上げ工程において、床仕上げ処理前に自己平滑性モルタルの硬化体表面を研磨する、[1]又は[2]に記載の床形成方法。
[4]目荒らし処理が刷毛引き及び/又は脆弱層の除去作業である、[1]又は[2]に記載の床形成方法。
[5]目荒らしが密である、[1]又は[2]に記載の床形成方法。
[6]自己平滑性モルタルが、セメント、減水剤、増粘剤、細骨材及び水を含む、[1]又は[2]の床形成方法。
[7]施工場所で測定した際、自己平滑性モルタルが、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である、[1]又は[2]に記載の床形成方法
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工期の短縮ができ、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が高い付着強度を有していながら、塗り床材やタイル等の仕上げ材を処理することができる床形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[床形成方法]
本実施形態の床形成方法は、下地材を打設し、下地材が終結する前に、下地材の表面全体を目荒らし処理し、目荒らし処理後に自己平滑性モルタルを打設する、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工工程と、下地材及び自己平滑性モルタルが硬化した後に、自己平滑性モルタルの硬化体表面に床仕上げ処理を行う仕上げ工程と、を備える。
【0013】
(連続施工工程)
下地材は特に限定されるものではなく、通常のコンクリートやモルタル等を使用することができる。下地材を打設後、以降の工程については下地材が終結する前に行う。
本明細書において「下地材が終結する前」とは、下地材の凝結の始発から終結までの時間を指す。凝結を判断する方法は特に限定されず、例えば、JIS A 1147:2019「コンクリートの凝結時間試験方法」に準拠してプロクター貫入抵抗試験で判断してもよく、JIS A 1101:2020「コンクリートのスランプ試験方法」に用いる付き棒を一定の高さから落下させてその貫入深さを測定するN式貫入試験による貫入値で判断してもよく、ボール等を一定の高さから落下させて下地材の陥没深さやボールへの下地材の付着量等から判断してもよい。
下地材が終結する前の目荒らし作業に好適なタイミングとしては、例えば、施工場所で測定した際に、N式貫入試験による貫入値で1~40mmであることが好ましく、5~35mmであることがより好ましく、10~30mmであることが更に好ましい。貫入値が上記範囲内であれば、下地材に対して目荒らしがしやすく、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が一体化して付着が一層良好になる。また、貫入値を施工現場で測定することで、温度により変化する打設からの経過時間等よりも正確な施工管理を行うことができる。本明細書において、「N式貫入試験による貫入値」は、JIS A 1101:2020「コンクリートのスランプ試験方法」に用いる付き棒を高さ750mm地点から落下させたときの貫入深さを指す。
【0014】
下地材打設後、上記方法により確認したタイミングで下地材の目荒らし処理を行う。目荒らしを行う前に、下地材からブリーディング水が発生している場合はウェスやスポンジ等を用いてその水分を除去してもよい。ブリーディング水を除去すると、自己平滑性モルタルが材料分離しにくくなる。
【0015】
目荒らしは下地材の表面に細かい凹凸をつけることを指す。凹凸とは、ある程度フラットな下地材に箒や刷毛引き等による線や傷、ピンホール等により窪みを発生させた状態をいう。目荒らしする手段は特に限定されるものではなく、例えば、箒、刷毛、トンボ等による刷毛引き、ポリッシャー等を用いた脆弱層の除去が挙げられる。
目荒らしは下地材表面全体に対して行うが、その際の凹凸の密度は密であることが好ましい。目荒らしが密であるとは、凹凸の間隔が数cmも離れておらず、1cm2内に少なくとも1個以上の凹凸がついている状態を指す。より具体的には、1cm2内に5個以上の凹凸がついている状態とするのが好ましく、10個以上の凹凸がついているのがより好ましく、15個以上の凹凸がついているのがさらに好ましい。また、凹凸の幅は特に限定されないが、0.1mm以上であるのが好ましく、0.5mm以上3.0mm以下がより好ましい。凹凸の深さも特に限定されないが、0.2mm以上であるのが好ましく、0.5mm以上4.0mm以下がより好ましい。
目荒らしを行うことにより下地材と自己平滑性モルタル硬化体との付着が強固になり、目荒らしが密であるほど付着がより強固になりやすい。密に目荒らしを行うためには、箒や刷毛等の先端が密集しているもので表面全面を刷毛引きするか、ポリッシャー等で表面全面の脆弱層を除去するか、表面全面を繰り返し目荒らしする等の方法が挙げられる。
【0016】
目荒らし処理後で、かつ下地材の終結前に自己平滑性モルタルを打設する。自己平滑性モルタルは硬化時にその層の厚さが1~50mmであることが好ましく、1.5~40mmであることがより好ましく、2~30mmであることが更に好ましい。自己平滑性モルタル硬化体の厚さが上記範囲内であれば、平滑性を確保しやすく、耐久性にも優れる傾向にある。
【0017】
自己平滑性モルタルは、セルフレベリング性がある材料であれば特に限定されるものではない。自己平滑性モルタルとしては、例えば、セメント、減水剤、増粘剤、細骨材及び水を含むものが挙げられる。
【0018】
セメントは種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント、フライアッシュセメント等が挙げられる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0019】
セメントの含有量は、自己平滑性モルタルの粉体成分100質量部に対し、20~45質量部であることが好ましく、25~40質量部であることがより好ましく、27~38質量部であることが更に好ましい。セメントの含有量が上記範囲内であれば、セルフレベリング材として十分な流動性と各種強度発現性を確保しやすい。粉体成分とは、自己平滑性モルタルを構成する粉体の全体を指し、細骨材等の骨材も含むものである。
【0020】
減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの中では、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0021】
減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~3質量部であることがより好ましく、0.4~1.5質量部であることが最も好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすく、圧縮強度も向上しやすい。
【0022】
増粘剤の種類は特に限定されず、例えば、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤が挙げられる。増粘剤としてはセルロース系増粘剤が好ましい。セルロース系増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のメチルセルロース系、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。増粘剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0023】
増粘剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.01~1質量部であることが好ましく、0.03~0.8質量部であることがより好ましく、0.05~0.5質量部であることが更に好ましい。増粘剤の含有量が上記範囲内であれば、適度な骨材分離抑制効果を発揮しやすい。
【0024】
細骨材としては、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。細骨材は、これらの中から、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度に調整した珪砂、石灰石等の骨材を用いることが好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。細骨材は、通常用いられる粒径1.2mm以下のもの(1.2mmふるい通過分)を使用するのが好ましい。
【0025】
細骨材の粒度は特に限定されるものではなく、必要とする細骨材の粒度の範囲内で調整することができる。細骨材は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」により規定される粗粒率からその粒度を考慮することができる。より良好な流動性が得られやすく、ブリーディングを抑制しやすいという観点から、細骨材の粗粒率は、1~3であることが好ましく、1.5~2.8であることがより好ましく、1.8~2.4であることが更に好ましい。
【0026】
細骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、100~300質量部であることが好ましく、120~250質量部であることがより好ましく、140~200質量部であることが更に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であれば、セルフレベリング材として十分な流動性と圧縮強度を確保しやすい。
【0027】
水の含有量は、セメント100質量部に対し、60~100質量部であることが好ましく、65~95質量部であることがより好ましく、70~90質量部であることが更に好ましい。水の量が上記範囲内であると、良好な流動性が得られやすい。
【0028】
自己平滑性モルタルには、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、膨張材、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤が挙げられる。
【0029】
自己平滑性モルタルは、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであることが好ましく、240~280mmであることがより好ましく、250~275mmであることが更に好ましい。フロー値が上記範囲内であれば、一層セルフレベリング性に優れ、終結していない下地材に自己平滑性モルタルを施工する場合でも材料分離することなく施工できる傾向にある。
【0030】
自己平滑性モルタルは、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒であることが好ましく、12~25秒であることがより好ましく、14~20秒であることが更に好ましい。流下時間が上記範囲内であれば、一層セルフレベリング性に優れ、終結していない下地材に自己平滑性モルタルを施工する場合でも材料分離することなく施工できる傾向にある。
自己平滑性モルタルのフロー値及び流下時間は、モルタル打設前に施工場所で測定することが好ましい。施工場所での自己平滑性モルタルの性質が上記範囲内であることで、環境温度によらず連続施工を管理できる。
【0031】
自己平滑性モルタルの調製は、一般的なモルタル等と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。
【0032】
連続施工工程において下地材の打設から自己平滑性モルタルの打設までを連続で行うことにより、従来は下地材が完全に硬化してから自己平滑性モルタルを打設していたのに対し、下地材が硬化するまでの時間を省くことができるため施工期間の短縮や費用の軽減ができる。また、連続施工により、下地材と自己平滑性モルタルが一体化することでこれらの付着強度も向上する。本実施形態に係る連続施工では、通常求められる自己平滑性モルタルを打設する際のプライマー塗布処理が不要となり、工期の短縮や費用の軽減だけでなく、プライマーに起因すると考えられる、自己平滑性モルタル打設後の気泡の発生も減らすことができる。
【0033】
(仕上げ工程)
上記連続施工工程において下地材と自己平滑性モルタルを連続して打設した後、これらが硬化するまで養生する。硬化が完了したら、自己平滑性モルタルの硬化体表面に床仕上げ処理を行う。ここで、硬化の完了は、硬化後の仕上げ材に人が載り、窪みや足跡が付かないことより確認することができる。また、スプリング硬度計で測定針が動くことでも確認することができる。
【0034】
床仕上げ処理としては、例えば、塗り床材の塗布、タイル材、石板の貼り付け、塩化ビニルシート、フローリング材等の張り床材の張り付けが挙げられる。塗り床材としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、メタクリル酸メチル(MMA)樹脂系、アクリル樹脂系、ビニルエステル樹脂系、ポリエステル樹脂系、水性硬質ウレタン樹脂系等の合成樹脂系塗り床材が好ましい。合成樹脂系塗り床材を用いる場合は、予め自己平滑性モルタル硬化体表面にプライマーを塗布してもよく、耐摩耗性や耐衝撃性等の耐久性を向上させるために塗り床材を複数回塗布してもよい。
【0035】
仕上げ工程において、床仕上げ処理を行う前に、自己平滑性モルタルの硬化体表面をポリッシャー等で研磨してもよい。研磨を行うと、自己平滑性モルタル硬化体と塗り床材やタイル等の床仕上げ処理材がより強固に付着し、床構造体としての耐剥離性、耐摩耗性、耐衝撃性等が一層向上する。
【0036】
本実施形態の床形成方法によれば、下地材と自己平滑性モルタルを連続して施工できるため工期の短縮や費用の削減ができるだけでなく、付着強度も向上するため、床仕上げを行うための平滑性と強固な付着強度を持つ土台を短期間で形成することができる。したがって、本実施形態の床形成方法は、短期施工や高い耐久性が求められる場面での床形成に好適に用いることができる。
【実施例0037】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
[材料]
自己平滑性モルタルA及びB
セメント:普通ポルトランドセメント(市販品)
減水剤:ポリカルボン酸系減水剤(市販品)
増粘剤:メチルセルロース系増粘剤(市販品)
細骨材:珪砂混合品、粗粒率0.4
表1に示す配合割合で各材料を配合し、ハンドミキサー(回転数1000rpm)で90秒間混練することで自己平滑性モルタルA及びBを調製した。
仕上げ材
・塗り床材A(市販品、エポキシ樹脂系)
塗り床材A用プライマー(市販品、エポキシ樹脂系)
・塗装剤B(市販品、ウレタン樹脂系)
塗り床材B用プライマー(市販品、ウレタン樹脂系)
【0039】
【0040】
[床形成方法]
各試験とも施工区画は、4.5mx3.0mで行い、下地コンクリートの厚みは100mm、自己平滑性モルタル硬化体の厚みは10mmとなるように施工した。環境温度は20℃だった。
(実施例1)
4.5mx3.0mの区画に下地コンクリートを打設した。下地コンクリートを打設して4.5時間後(N式貫入試験による貫入値30mm)、ブリーディング水を除去し、下地コンクリートの表面全体を箒にて刷毛引きして目荒らし処理した。目荒らし処理により形成された凹凸は、1cm2内に10~20個、幅0.2~3.0mm、深さ0.5~3.0mmであった。目荒らし処理後に自己平滑性モルタルAを連続打設し、室温で35日間養生した。
養生後、自己平滑性モルタルの硬化体表面の研磨、塗り床材A用プライマーの塗布を行い、塗り床材Aを2回に分けて塗布して床仕上げ処理を行った。
(実施例2)
4.5mx3.0mの区画に下地コンクリートを打設した。下地コンクリート打設して5時間後(N式貫入試験による貫入値18mm)にブリーディング水の除去し、下地コンクリートの表面全体を箒にて刷毛引きして目荒らし処理した。目荒らし処理により形成された凹凸は、1cm2内に10~20個、幅0.2~3.0mm、深さ0.5~3.0mmであった。目荒らし処理後に自己平滑性モルタルAを連続打設し、室温で35日間養生した。
養生後、自己平滑性モルタルの硬化体表面の研磨を行い、塗り床材B用プライマーの塗布を行い、塗り床材Bを2回に分けて塗布して床仕上げ処理を行った。
(実施例3)
自己平滑性モルタルBを用いたこと以外は実施例1と同等の方法で連続施工及び床仕上げ処理を行った。
(実施例4)
床仕上げ処理工程で自己平滑性モルタルの硬化体表面の研磨を行わなかったこと以外は実施例3と同等の方法で連続施工及び床仕上げ処理を行った。
(比較例1)
下地コンクリートを打設し、室温で7日間養生した。養生後、下地コンクリートに自己平滑性モルタル用プライマー(市販品、エポキシ樹脂系)を塗布し、次いで自己平滑性モルタルB打設し、室温で27日間養生した。
養生後、自己平滑性モルタルの硬化体表面の研磨、塗り床材A用プライマーの塗布を行い、塗り床材Aを2回に分けて塗布して床仕上げ処理を行った。
【0041】
評価結果を表2に示す。
[評価方法]
・流動性(フロー試験、流下試験)
フロー値は、社団法人日本建築学会のJASS-15M-103(セルフレベリング材の品質基準)に従い測定した。
流下時間は、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠し、J10ロート試験器を用いて測定した。
測定は環境温度下(20℃)、自己平滑性モルタル混練後0時間に行った。
・下地接着強度
社団法人日本建築学会のJASS-15M-103:2019(セルフレベリング材の品質基準)に従い、モルタル打設後から材齢13日の接着強度を測定した。試験器は、「油圧ジャッキによる建研式接着力試験器」を用いて試験を実施した。
・自己平滑性モルタル表面美観
自己平滑性モルタル硬化体の表面を目視し、気泡がほとんどない、又は仕上げ処理に影響がない程度にしか気泡が出ないものを〇、気泡が多いものを×と評価した。
・強制剥離試験
電動カッターで5cm角となるように切れ込みを入れ、自己平滑性モルタル硬化体と塗り床材層の界面に皮すきをあて、皮すきの後部をハンマーで叩き、剥離形態を観察した。
【0042】
【0043】
実施例の床形成方法は、下地コンクリートと自己平滑性モルタルを連続して施工できるため施工時間が短縮でき、高い引張強度を有していることから下地コンクリートと自己平滑性モルタル硬化体がより強固に付着していた。また、実施例の床形成方法は、自己平滑性モルタル硬化体に気泡も少ないため、より綺麗な床仕上げをすることもできた。特に自己平滑性モルタル硬化体を研磨した実施例1~3では、塗り床材層界面での剥離も見られなかった。
一方、比較例の床形成方法は、下地コンクリートと自己平滑性モルタル硬化体との付着が弱く、また自己平滑性モルタルが硬化する際に気泡が発生してしまった。