(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007909
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 15/12 20060101AFI20250109BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20250109BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20250109BHJP
C04B 24/38 20060101ALI20250109BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20250109BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20250109BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04F15/12 E
C04B28/02
C04B24/26 E
C04B24/38 D
C04B14/06 Z
C04B22/06 Z
C04B22/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109633
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 昌範
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰平
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正雄
(72)【発明者】
【氏名】八十川 昭
(72)【発明者】
【氏名】三戸 春彦
【テーマコード(参考)】
2E220
4G112
【Fターム(参考)】
2E220AA51
2E220FA11
2E220GB14X
2E220GB17X
2E220GB22Y
2E220GB23X
2E220GB23Y
4G112MD01
4G112PB40
4G112PC03
4G112PC08
4G112PC09
(57)【要約】
【課題】施工環境条件によらない施工の管理と工期の短縮ができ、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が高い付着強度を有している下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法を提供すること。
【解決手段】下地材を打設し、施工場所で測定した際に、下地材のN式貫入試験による貫入値が1~40mmを示しているときに、下地材から発生するブリーディング水を除去する水分除去工程と、水分除去工程後に下地材の表面全体を目荒らしする表面処理工程と、表面処理工程後に、施工場所で測定した際に、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である自己平滑性モルタルを施工するモルタル打設工程と、をこの順で行う、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材を打設し、施工場所で測定した際に、前記下地材のN式貫入試験による貫入値が1~40mmを示しているときに、
前記下地材から発生するブリーディング水を除去する水分除去工程と、
前記水分除去工程後に前記下地材の表面全体を目荒らしする表面処理工程と、
前記表面処理工程後に、施工場所で測定した際に、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である自己平滑性モルタルを施工するモルタル打設工程と、をこの順で行う、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法。
【請求項2】
前記表面処理工程が、刷毛引き及び/又は脆弱層の除去作業である、請求項1に記載の連続施工方法。
【請求項3】
前記表面処理工程における、前記目荒らしが密である、請求項1又は2に記載の連続施工方法。
【請求項4】
前記自己平滑性モルタルが、セメント、減水剤、増粘剤、細骨材及び水を含む、請求項1又は2に記載の連続施工方法。
【請求項5】
膨張材及び/又は石膏類を更に含む、請求項4に記載の連続施工方法。
【請求項6】
前記減水剤がポリカルボン酸系減水剤である、請求項4に記載の連続施工方法。
【請求項7】
前記増粘剤がセルロース系増粘剤である、請求項4に記載の連続施工方法。
【請求項8】
前記水の含有量が前記セメント100質量部に対し、60~100質量部である、請求項4に記載の連続施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物の床は、コンクリートを打設したままでは床面の表面精度が乏しく、確実な水平面が形成されない。
【0003】
コンクリート打設後に平滑性を確保したい場合、一般的に自己平滑性モルタル(セルフレベリング材)を打設することが実用化されている。自己平滑性モルタルは、セメント及び細骨材を基材とし、各種混和材を配合したものに水を添加して混練したスラリー状の混練物であり、そのスラリー特有の高流動性を利用して平滑な床面を形成するものである。
【0004】
現状において行われているセルフレベリング工法は、既に施工済みの下地コンクリート面に自己平滑性モルタルを打設する工法がとられている。すなわち、コンクリート打設後少なくとも2週間以上経過後にセルフレベリング材を使用するのが一般的であった。
【0005】
そのため、自己平滑性モルタルを下地コンクリートに打設することにより平滑性は確保できるが、工期の長期化が問題となる。また、下地コンクリートと自己平滑性モルタル硬化体界面における付着強度が十分に確保できない場合、衝撃等による剥離のおそれが生じる。そのため、短期間で施工ができ、平滑性が確保でき、高い付着強度が得られる施工方法が求められる。
【0006】
例えば特許文献1には、下地コンクリートを打設した後、2~10時間内にセルフレベリング材を打設する工法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような工法は工期の短縮ができるものの、下地コンクリートは配合や環境条件における温度や湿度に影響を受けるため凝結時間が変動してしまう可能性がある。下地コンクリートの状態が一定化しない状態でセルフレベリング材を打設することにより、下地コンクリートとセルフレベリング材との接着性が損なわれる恐れがある。
【0009】
自己平滑性モルタルを下地コンクリートに打設することにより平滑性は確保できるが、工程が増えることによる工期の長期化が問題となる。また、下地コンクリートと自己平滑性モルタル硬化体界面における付着強度が十分に確保できない場合、衝撃等による剥離のおそれが生じる。そのため、短期間で施工ができ、平滑性が確保でき、高い付着強度が得られる施工方法が求められる。
【0010】
したがって、本発明は、施工環境条件によらない施工の管理と工期の短縮ができ、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が高い付着強度を有している下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した結果、下地材を施工した後にN式貫入試験による貫入値により自己平滑性モルタルの適切な施工タイミングを見極め、特定の自己平滑性モルタルを打設することにより、連続した下地材及び自己平滑性モルタルの施工ができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]下地材を打設し、施工場所で測定した際に、下地材のN式貫入試験による貫入値が1~40mmを示しているときに、下地材から発生するブリーディング水を除去する水分除去工程と、水分除去工程後に下地材の表面全体を目荒らしする表面処理工程と、表面処理工程後に、施工場所で測定した際に、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である自己平滑性モルタルを施工するモルタル打設工程と、をこの順で行う、下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法。
[2]表面処理工程が、刷毛引き及び/又は脆弱層の除去作業である、[1]に記載の連続施工方法。
[3]表面処理工程における、目荒らしが密である、[1]又は[2]に記載の連続施工方法。
[4]自己平滑性モルタルが、セメント、減水剤、増粘剤、細骨材及び水を含む、[1]又は[2]に記載の連続施工方法。
[5]膨張材及び/又は石膏類を更に含む、[4]に記載の連続施工方法。
[6]減水剤がポリカルボン酸系減水剤である、[4]に記載の連続施工方法。
[7]増粘剤がセルロース系増粘剤である、[4]に記載の連続施工方法。
[8]水の含有量がセメント100質量部に対し、60~100質量部である、[4]に記載の連続施工方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工環境条件によらない施工の管理と工期の短縮ができ、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が高い付着強度を有している下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態の下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法は、下地材を打設し、施工場所で測定した際に、下地材のN式貫入試験による貫入値が1~40mmを示しているときに、下地材から発生するブリーディング水を除去する水分除去工程と、水分除去工程後に前記下地材の表面全体を目荒らしする表面処理工程と、表面処理工程後に、20℃環境下において、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である自己平滑性モルタルを施工するモルタル打設工程と、をこの順で行う。
【0016】
(下地材の施工工程)
下地材は特に限定されるものではなく、通常のコンクリートやモルタル等を使用することができる。
【0017】
本発明の実施形態では、下地材の施工後、施工場所で測定した際に、N式貫入試験による貫入値が1~40mmであるときに、水分除去工程と表面処理工程を行う。N式貫入試験による貫入値が上記範囲外であると、下地材と自己平滑性モルタルが一体化せずに付着強度が低下する。下地材に対して目荒らしがしやすく、下地材と自己平滑性モルタル硬化体が一体化して付着が一層良好になるという観点から、N式貫入試験による貫入値が1~40mmは、5~35mmであることがより好ましく、10~30mmであることが更に好ましい。本明細書において、「N式貫入試験による貫入値」は、JIS A 1101:2020「コンクリートのスランプ試験方法」に用いる付き棒を高さ750mm地点から落下させたときの貫入深さを指す。N式貫入試験による貫入値を施工場所で測定することで、温度により変化する打設からの経過時間等よりも正確な施工管理を行うことができる。
【0018】
(水分除去工程)
下地材の状態について上記N式貫入試験による貫入値で確認した後、下地材から発生するブリーディング水を除去する。ブリーディング水を除去することにより、自己平滑性モルタルが材料分離しにくくなる。ブリーディング水の除去手段は特に限定されるものではなく、ウェス、スポンジ等を用いることができる。
【0019】
(表面処理工程)
水分除去工程後に前記下地材の表面全体を目荒らしする。目荒らしは下地材の表面に細かい凹凸をつけることを指す。凹凸とは、ある程度フラットな下地材に箒や刷毛引き等による線や傷、ピンホール等により窪みを発生させた状態をいう。目荒らしする手段は特に限定されるものではなく、例えば、箒、刷毛、トンボ等による刷毛引き、ポリッシャー等を用いた脆弱層の除去が挙げられる。
目荒らしは下地材表面全体に対して行うが、その際の凹凸の密度は密であることが好ましい。目荒らしが密であるとは、凹凸の間隔が数cmも離れておらず、1cm2内に少なくとも1個以上の傷がついている状態を指す。より具体的には、1cm2内に5個以上の凹凸がついている状態とするのが好ましく、10個以上の凹凸がついているのがより好ましく、15個以上の凹凸がついているのがさらに好ましい。また、凹凸の幅は特に限定されないが、0.1mm以上であるのが好ましく、0.5mm以上3.0mm以下がより好ましい。凹凸の深さも特に限定されないが、0.2mm以上であるのが好ましく、0.5mm以上4.0mm以下がより好ましい。
目荒らしを行うことにより下地材と自己平滑性モルタル硬化体との付着が強固になり、目荒らしが密であるほど付着がより強固になりやすい。密に目荒らしを行うためには、箒や刷毛等の先端が密集しているもので表面全面を刷毛引きするか、ポリッシャー等で表面全面の脆弱層を除去するか、表面全面を繰り返し目荒らしする等の方法が挙げられる。
【0020】
(モルタル打設工程)
表面処理工程後に自己平滑性モルタルを打設する。自己平滑性モルタルは硬化時にその層の厚さが1~50mmであることが好ましく、1.5~40mmであることがより好ましく、2~30mmであることが更に好ましい。自己平滑性モルタル硬化体の厚さが上記範囲内であれば、平滑性を確保しやすく、耐久性にも優れる傾向にある。
【0021】
自己平滑性モルタルは、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmである。自己平滑性モルタルのフロー値が上記範囲外であると、材料分離しやすく、自己平滑性モルタルの硬化後の表面の美観も優れない。一層セルフレベリング性に優れ、終結していない下地材に自己平滑性モルタルを施工する場合でも材料分離することなく施工しやすいという観点から、自己平滑性モルタルのフロー値は240~280mmであることが好ましく、250~275mmであることがより好ましい。
【0022】
自己平滑性モルタルは、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロートの流下時間が10~30秒である。自己平滑性モルタルの流下時間が上記範囲外であると、自己平滑性モルタルの施工に時間がかかり、下地材との接着が不十分となり、自己平滑性モルタルの硬化後の表面の美観も優れない。自己平滑性モルタルの流下時間は12~25秒であることが好ましく、14~20秒であることがより好ましい。
自己平滑性モルタルのフロー値及び流下時間は、モルタル打設前に施工場所で測定することが好ましい。施工場所での自己平滑性モルタルの性質が上記範囲内であることで、環境温度によらず連続施工を管理できる。
【0023】
自己平滑性モルタルは、セルフレベリング性がある材料であれば特に限定されるものではない。自己平滑性モルタルとしては、例えば、セメント、減水剤、増粘剤、細骨材及び水を含むものが挙げられる。
【0024】
セメントは種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント、フライアッシュセメント等が挙げられる。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0025】
セメントの含有量は、自己平滑性モルタルの粉体成分100質量部に対し、20~45質量部であることが好ましく、25~40質量部であることがより好ましく、27~38質量部であることが更に好ましい。セメントの含有量が上記範囲内であれば、セルフレベリング材として十分な流動性と各種強度発現性を確保しやすい。粉体成分とは、自己平滑性モルタルを構成する粉体の全体を指し、細骨材等の骨材も含むものである。
【0026】
減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの中では、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0027】
減水剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.1~5質量部であることが好ましく、0.3~3質量部であることがより好ましく、0.4~1.5質量部であることが最も好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、モルタルとした際により良好な流動性が得られやすく、圧縮強度も向上しやすい。
【0028】
増粘剤の種類は特に限定されず、例えば、セルロース系増粘剤、アクリル系増粘剤、グアーガム系増粘剤が挙げられる。増粘剤としてはセルロース系増粘剤が好ましい。セルロース系増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のメチルセルロース系、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。増粘剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0029】
増粘剤の含有量は、セメント100質量部に対し、固形分換算で0.01~1質量部であることが好ましく、0.03~0.8質量部であることがより好ましく、0.05~0.5質量部であることが更に好ましい。増粘剤の含有量が上記範囲内であれば、適度な骨材分離抑制効果を発揮しやすい。
【0030】
細骨材としては、例えば、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材等が挙げられる。細骨材は、これらの中から、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度に調整した珪砂、石灰石等の骨材を用いることが好ましい。細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。細骨材は、通常用いられる粒径1.2mm以下のもの(1.2mmふるい通過分)を使用するのが好ましい。
【0031】
細骨材の粒度は特に限定されるものではなく、必要とする細骨材の粒度の範囲内で調整することができる。細骨材は、JIS A 1102:2014「骨材のふるい分け試験方法」により規定される粗粒率からその粒度を考慮することができる。より良好な流動性が得られやすく、ブリーディングを抑制しやすいという観点から、細骨材の粗粒率は、1~3であることが好ましく、1.5~2.8であることがより好ましく、1.8~2.4であることが更に好ましい。
【0032】
細骨材の含有量は、セメント100質量部に対し、100~300質量部であることが好ましく、120~250質量部であることがより好ましく、140~200質量部であることが更に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲内であれば、セルフレベリング材として十分な流動性と圧縮強度を確保しやすい。
【0033】
水の含有量は、セメント100質量部に対し、60~100質量部であることが好ましく、65~95質量部であることがより好ましく、70~90質量部であることが更に好ましい。水の量が上記範囲内であると、良好な流動性が得られやすい。
【0034】
自己平滑性モルタルには、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和剤(材)を配合してもよい。混和剤(材)としては、例えば、膨張材、消泡剤、防水剤、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、撥水剤、白華防止剤が挙げられる。
【0035】
自己平滑性モルタルの調製は、一般的なモルタル等と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。
【0036】
本実施形態の連続施工工程において下地材の打設から自己平滑性モルタルの打設までを連続で行うことにより、下地材が硬化する時間を省くことができるため施工期間の短縮や費用の軽減ができる。また、連続施工により、下地材と自己平滑性モルタルが一体化することでこれらの付着強度も向上する。本実施形態に係る連続施工では、通常求められる自己平滑性モルタルを打設する際のプライマー塗布処理が不要となり、工期の短縮や費用の軽減だけでなく、プライマーに起因すると考えられる、自己平滑性モルタル打設後の気泡の発生も減らすことができる。したがって、本実施形態の連続施工方法は、短期施工や高い耐久性が求められる場面での施工に好適に用いることができる。
【実施例0037】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。試験及び評価試験は20℃環境下にて行った。
【0038】
[材料]
セメント〔C〕:普通ポルトランドセメント
石膏〔G〕:無水石膏、ブレーン比表面積:7100cm2/g
膨張材〔EX〕:石灰系膨張材
増粘剤〔MC〕:水溶性セルロースエーテル(20℃、2質量%水溶液の粘度:4820mPa・s)
減水剤〔AD〕:ポリカルボン酸系高性能減水剤
細骨材〔S〕:6号及び7号、9号珪砂を混合して粗粒率を0.15~0.5に粒度調整した混合砂
【0039】
[自己平滑性モルタルの調合]
表1に示す配合割合で各材料を配合し、予め計量した練混ぜ水の入ったペール缶に材料を投入しながら高速ハンドミキサー(回転数1000rpm)用いて混錬し、材料投入完了後1分間混錬することで自己平滑性モルタルを調合した。尚、自己平滑性モルタルは、打設を開始する直前に混錬した。
【0040】
【0041】
[下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法]
下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工方法は、以下手順にて実施した。
[1]下地材の調合・打設
配合21―15―20N(呼び強度―スランプ―粗骨材の最大寸法)のコンクリートを、鉄筋(D10異形鋼棒)を施した木製型枠(寸法450mm×600mm)に、厚み100mmとなるように下地コンクリートを打設後、タッピングを行いコテや木尺を用いて表面を平滑化した。
[2]水分除去工程
下地材から発生したブリーディング水を、下地材の表層より回収し、ウエス、スポンジ等により吸い取り水分を除去した。
[3]表面処理工程
水分除去工程後に下地材の表面全体をブラシ(箒)を用いて目荒らしを行った(細かな節目を前面に付ける)。目荒らし処理により形成された凹凸は、1cm2内に10~20個、幅0.2~3.0mm、深さ0.5~3.0mmであった。
[4]モルタル打設工程
表面処理工程後に、日本建築学会規格「セルフレベリング材の品質基準」JASS 15M-103:2019に規定するフロー値が230~290mmであり、且つ、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠して測定するJ10ロート流下時間が10~30秒である自己平滑性モルタルを下地材の上に10mmの厚さで自己平滑モルタルを打設した。一部参考品(自己平滑性モルタルE、F、G)については、フロー値またはJ10ロート流下時間が上記記載値を満たさないモルタルを用いて打設した。
[2]~[4]を実施するタイミングは、下地材のN式貫入試験による貫入値が以下のタイミング(時点)で実施した。N式貫入試験による貫入値は、JIS A 1101:2020「コンクリートのスランプ試験方法」に用いる付き棒を高さ750mm地点から落下させたときの貫入深さを測定した。
・タイミング1:N式貫入試験による貫入値 70mm
・タイミング2:N式貫入試験による貫入値 33mm
・タイミング3:N式貫入試験による貫入値 20mm
・タイミング4:N式貫入試験による貫入値 9mm
【0042】
[評価方法]
[自己平滑性モルタルのフレッシュ性状評価方法]
・流動性(フロー試験、流下試験)
フロー値は、社団法人日本建築学会のJASS-15M-103:2019(セルフレベリング材の品質基準)に従い測定した。流下時間は、土木学会基準「PCグラウトの流動性試験方法(案)」JSCE-F531:2018に準拠し、J10ロート試験器を用いて測定した。
・材料分離抵抗性
練混ぜ直後のモルタルが入った容器に手を入れ、容器底部に細骨材が沈下しているかを確認し、沈下が認められないものを無し、沈下が認められたものを有りとした。
測定は20℃環境温度下、自己平滑性モルタル混練直後に行った。
【0043】
[下地材及び自己平滑性モルタルの連続施工後のモルタル評価方法]
・自己平滑性モルタル表面美観
モルタル打設から材齢14日に、自己平滑性モルタル硬化体の表面を目視し、ひび割れ及び浮き、気泡がほとんどない、又は仕上げ処理に影響がない程度にしかひび割れ、気泡が出ないものを〇、ひび割れ又は気泡が多いものを×と評価した。
・下地材との接着強度
社団法人日本建築学会のJASS-15M-103:2019(セルフレベリング材の品質基準)に従い、モルタル打設後から材齢14日の接着強度を測定した。評価基準として、0.7N/mm2とした。試験器は、「油圧ジャッキによる建研式接着力試験器」を用いて試験を実施した。
・下地材との破断面
下地材との接着強度試験実施後の破断面を目視確認し、断面の80%以上が下地コンクリート層で破断しているものを〇、それ以外のものを×とした。
【0044】
使用した自己平滑性モルタル、施工手順、施工タイミング、及び各種評価結果を表2及び表3に示す。
【0045】
【0046】
【0047】
実施例の施工方法は、材料分離抵抗性のある高流動の自己平滑性モルタルを使用することと、下地コンクリートの水分除去及び表面処理工程を行うことで、下地材との接着強度が優れ且つ表面美観が良好であることを確認した。一方、比較例の施工方法は、接着強度が弱く、表面の美観にも優れなかった。