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2025-79222NOD1の活性を阻害する又は発現を阻害する阻害剤を含む組成物及びこれらの阻害剤のスクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025079222
(43)【公開日】2025-05-21
(54)【発明の名称】NOD1の活性を阻害する又は発現を阻害する阻害剤を含む組成物及びこれらの阻害剤のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20250514BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20250514BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250514BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250514BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20250514BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250514BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250514BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20250514BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250514BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20250514BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20250514BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20250514BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K45/06
A61K48/00
A61P17/00
A61P17/10
A61P29/00
A61P31/00
A61P37/04
A61P43/00 121
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191782
(22)【出願日】2023-11-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り Biochemistry and Biophysics Reports Volume 36 ウェブ公開、https://www.sciencedirect.com/journal/biochemistry-and-biophysics-reports/vol/36/suppl/C、論文タイトル「Nucleotide-binding oligomerization domain protein-1 is expressed and involved in the inflammatory response in human sebocytes」、2023年10月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人 日本生化学会、「第96回日本生化学会大会要旨閲覧システム」、https://confit.atlas.jp/guide/event/jbs2023/top?lang=ja、2023年10月17日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】599098518
【氏名又は名称】株式会社ディーエイチシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 夏子
(72)【発明者】
【氏名】仲條 嵩久
(72)【発明者】
【氏名】片吉 健史
(72)【発明者】
【氏名】辻(内藤) 健太郎
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA901
4C084ZA902
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC751
4C084ZC752
(57)【要約】
【課題】本発明は皮膚の健全性を維持しつつ、NOD1の阻害剤を有効成分として含む皮膚炎症、特に尋常性ざ瘡の新たな予防又は治療する組成物を提供する。また、本発明は皮膚炎症を予防又は治療し得る物質のスクリーニング方法も併せて提供する。
【解決手段】本発明のスクリーニング方法は、例えば(a)ヒト皮脂腺細胞を被験物質で処理する工程、(b)NOD1の機能(即ち、活性又は発現)を阻害するか検定する工程、及び(c)上記(b)の比較結果に基づいて、NOD1の機能を阻害した被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOD1に対する阻害物質を有効成分として含有する、組成物。
【請求項2】
前記NOD1に対する阻害物質が、NOD1活性阻害物質及び/又はNOD1発現阻害物質を含む、請求項1に記載される組成物。
【請求項3】
前記NOD1に対する阻害物質は、NOD1活性阻害物質とするNOD1阻害剤、及び/又はNOD1発現阻害物質とするNOD1の発現を特異的に阻害可能なアンチセンス核酸若しくは小分子量干渉RNAを含む、請求項1に記載される組成物。
【請求項4】
さらにTLR2に対する阻害物質を有効成分として含有する、請求項1に記載される組成物。
【請求項5】
前記組成物は、皮膚炎症を予防する効果又は皮膚炎症を治療する効果がある医薬組成物である、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載される組成物。
【請求項6】
前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、外用医薬品又は外用医薬部外品である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、皮膚炎症を予防する効果又は皮膚炎症を治療する効果がある化粧料組成物である、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載される組成物。
【請求項10】
前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
以下の工程を含む、皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法。
(a)NOD1活性化剤を、被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる工程;
(b)炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;及び、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程
【請求項12】
以下の工程を含む、皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法。
(a)ヒト皮脂腺細胞を被験物質で処理する工程;
(b)NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞の発現量と比較する工程;及び、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程
【請求項13】
以下の工程を含む、皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法。
(a)NOD1活性化剤を、被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる工程;
(b)NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;
(b1)炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;及び、
(c)上記(b)と(b1)の比較結果に基づいて、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質、及び炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程
【請求項14】
前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、請求項11乃至請求項13のうちいずれか一項に記載される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン含有タンパク質1(Nucleotide binding oligomerization domain protein-1、NOD1)の活性を阻害する又は発現を阻害する阻害剤を含む組成物及び該阻害剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Cutibacterium acnes(以下C.acnes)は皮膚常在細菌叢を構成しているグラム陽性嫌気性桿菌である。C.acnesは、尋常性ざ瘡(ニキビ)等の発症因子、あるいはその増悪因子として知られている。
【0003】
従来の日本における尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療は、抗菌薬療法が中心となっている。2008年に抗炎症作用を有し、レチノイド様作用を示すことで角化異常を是正するアダパレン(adapalen)が、2015年に強い殺菌作用を有する過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)が導入されたことで、従来の抗菌薬治療に加え、それら薬剤の単独または併用による治療という選択の幅が幾分か広がったが、依然として選択肢が少ない現況にある(非特許文献1)。
【0004】
近年、抗菌薬単独の長期使用は薬剤耐性C.acnesの出現を生み出すことが懸念されている(非特許文献1)。また、殺菌作用のある抗菌薬の長期使用は皮膚常在菌で構成されるヒト皮膚細菌叢を変化させてしまう懸念が指摘されている(非特許文献2)。そのため、抗菌薬の長期連用を回避するために新たな治療ターゲットの特定と治療法の確立が急務となっている。
【0005】
ヒト皮脂腺細胞は皮脂腺に常駐する主要な細胞であり、パターン認識受容体(Pattern Recognition Receptors、PRRs)という細菌感染に対するセンサーを持っている。尋常性ざ瘡(ニキビ)では、皮脂腺内でC.acnes(以下アクネ菌)が増殖し、ヒト皮脂腺細胞のPRRsを介して炎症を引き起こすことが症状悪化の要因として挙げられていた。
【0006】
上述細菌感染に対するセンサーとして機能するPRRsは何種類かあり、その一種類はシグナル伝達タイプのPRRsである。シグナル伝達タイプのPRRsは主に膜結合型のToll様受容体(Toll-like receptor,TLR)及び、C型レクチン受容体(C-type lectin receptor,CLR)、細胞質型のNOD様受容体(Nucleotide binding oligomerization
domain-like receptor,NLR)、RIG-I様受容体(RIG-I-like receptor,RLR)及びAIM2様受容体(AIM2-like receptor,ALR)に分類されると知られている。そのうち、NODはほとんどの細菌細胞壁の表面に存在するペプチドグリカンの一部の断片の構造を認識し先天免疫反応の重要な役割を果たすことで知られている。そして、NODはN-末端にCARDドメインが一個存在するNOD1およびCARDドメインが二個存在するNOD2タンパク質に分けることができる。
【0007】
これまでに、Toll様受容体2(TLR2)(非特許文献3)、NOD様受容体P3(NLRP3)(非特許文献4)がヒト皮脂腺細胞に発現しているPRRsとして特定されており、尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療ターゲットとしてこれらのPRRsに対する阻害
剤が有効であるとされていた。例えば、PRRsのTLR2の阻害剤などが開発されてきた(特許文献1)。
【0008】
NLRファミリーであるNOD1とNOD2も細胞質内の細菌の持つ成分を認識することで、細菌の侵入を感知するセンサーとして自然免疫において重要な役割を果たしていると考えられている。
そのうち、NOD1はグラム陰性菌に加えアクネ菌など一部のグラム陽性菌を感知するが、Staphylococcus.epidermidis(以下S.epidermidis)などの多くの皮膚常在菌は感知しない。また、皮膚常在菌は皮膚のPRRsを介して抗菌ペプチドを恒常的に産生しており、皮膚の健全性を維持していることが知られている(非特許文献5)。しかしながら、ヒト皮脂腺細胞においてNOD1が発現しているかについては不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-99015
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】生物試料分析 Vol.42,No3,152-156(2019)
【非特許文献2】Sci Transl Med Volume 13, 625(2021)
【非特許文献3】Life Sciences 139,123-131(2015)
【非特許文献4】Journal of Investigative Dermatology Volume 134, 2747-2756(2014)
【非特許文献5】Journal of Investigative Dermatology Volume 131, 1974-1980(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明者らは、新たにNOD1がヒト皮脂腺細胞のPRRsとして発現していることを見出した。ヒト皮脂腺細胞のNOD1は他のPRRsと同様に炎症を引き起こすほか、TLR2と相加的に炎症を引き起こすことが明らかとなった。NOD1はグラム陰性菌に加えアクネ菌など一部のグラム陽性菌を認識するが、多くの皮膚常在菌は感知しないこと、即ち、NOD1の阻害剤は増殖したアクネ菌による過剰炎症は抑制する一方で、皮膚常在菌の恒常的な役割は阻害しない点から、NOD1の阻害剤は尋常性ざ瘡(ニキビ)の新たな予防または治療剤として提供できると思われる。
そこで本発明の課題は、新たな治療ターゲットとしてNOD1を発見したことにより、NOD1活性を阻害する又はその遺伝子/タンパク質の発現を阻害する阻害剤を含む組成物及びこれらの阻害剤のスクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討した結果、新たにNOD1がヒト皮脂腺細胞のPRRsとして発現し、NOD1活性を阻害する及び/又はその遺伝子/タンパク質の発現を阻害する阻害剤を含む組成物及びこれらの阻害剤のスクリーニング方法を見出し、以下の発明を完成させた。
すなわち本発明は以下を包含する。
1 NOD1に対する阻害物質を有効成分として含有する、組成物に関する。
2.前記NOD1に対する阻害物質が、NOD1活性阻害物質及び/又はNOD1発現阻害物質を含む、前記1に記載される組成物に関する。
3.前記NOD1に対する阻害物質は、NOD1活性阻害物質とするNOD1阻害剤、及
び/又はNOD1発現阻害物質とするNOD1の発現を特異的に阻害可能なアンチセンス核酸若しくは小分子量干渉RNAを含む、前記1に記載される組成物に関する。
4.さらにTLR2に対する阻害物質を有効成分として含有する、前記1に記載される組成物に関する。
5.前記組成物は、皮膚炎症を予防する効果又は皮膚炎症を治療する効果がある医薬組成物である、前記1乃至前記4のうちいずれか一項に記載される組成物に関する。
6.前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、前記5に記載の組成物に関する。
7.前記組成物は、外用医薬品又は外用医薬部外品である、前記5に記載の組成物に関する。
8.前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、前記7に記載の組成物に関する。
9.前記組成物は、皮膚炎症を予防する効果又は皮膚炎症を治療する効果がある化粧料組成物である、前記1乃至前記4のうちいずれか一項に記載される組成物に関する。
10.前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、前記9に記載の組成物に関する。
11.以下の工程を含む、皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法に関する。(a)NOD1活性化剤を、被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる工程;(b)炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;及び、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程。
12.以下の工程を含む、皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法に関する。(a)ヒト皮脂腺細胞を被験物質で処理する工程;(b)NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞の発現量と比較する工程;及び、(c)上記(b)の比較結果に基づいて、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程。
13.以下の工程を含む、皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法に関する。(a)NOD1活性化剤を、被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる工程;(b)NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;(b1)炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;及び、(c)上記(b)と(b1)の比較結果に基づいて、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質、及び炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程。
14.前記皮膚炎症は尋常性ざ瘡である、前記11乃至前記13のうちいずれか一項に記載される方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は皮膚の健全性を維持しつつ、アクネ菌による皮膚炎症、特に尋常性ざ瘡の新たな予防又は治療する組成物を提供できる。また、本発明は皮膚炎症を予防又は治療し得る物質のスクリーニング方法も併せて提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ヒト皮脂腺細胞におけるNOD1及びNOD2の発現を示す。図1のAはNOD1、NOD2とGAPDH遺伝子発現を検出した電気泳動写真である。図1のBはNOD1、NOD2とNLRP3遺伝子の絶対発現量を示すグラフである。
図2図2は、ヒト皮脂腺細胞におけるNOD1又はNOD2の刺激による炎症惹起を示す。図2のAは定量リガンド(Tri-DAP及びMDP)の異なる時間の刺激による炎症性サイトカインIL-8(遺伝子名、CXCL8)の遺伝子発現量の変化を表すグラフである。図2のBは異なる濃度のリガンド(Tri-DAP及びMDP)で4時間刺激による炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現量の変化を表すグラフである。図2のCは異なる濃度のリガンド(Tri-DAP及びMDP)で24時間刺激による炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現量の変化を表すグラフである。図2のDは定量リガンド(Tri-DAP)の異なる時間の刺激によるp65、p38、JNK及びERKタンパク質のリン酸化変化を表すウエスタンブロッティング写真([1])及びp65、p38、JNK及びERKタンパク質のリン酸化比率を表すグラフ([2])である。
図3図3は、リガンドTri-DAP及びLTAの組み合わせ処理有無による、ヒト皮脂腺細胞における炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現量レベル及びタンパク質発現量レベルの炎症惹起を表すグラフである。図3のAは炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現量の変化を表すグラフである。図3のBは炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現量の変化を表すグラフである。
図4図4は、ヒト皮脂腺細胞をNOD1阻害剤ML130で処理有無の場合に、リガンドの刺激による遺伝子発現量レベル及びタンパク質発現量レベルの炎症惹起抑制を表すグラフである。図4のAはNOD1阻害剤ML130の処理有無の場合に、リガンドの刺激による炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現量の変化を表すグラフである。図4のBはNOD1阻害剤ML130の処理有無の場合に、リガンドの刺激による炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現量の変化を表すグラフである。
図5図5は、ヒト皮脂腺細胞をNOD1阻害剤ML130で処理有無の場合に、リガンドの刺激によるタンパク質リン酸化レベルの炎症惹起抑制を表す。図5のAはp65及びp38タンパク質のリン酸化変化を表すウエスタンブロッティング写真である。図5のBはp65及びp38タンパク質のリン酸化比率を表すグラフである。
図6図6は、ヒト皮脂腺細胞をNOD1のsiRNAで処理有無の場合に、リガンドの刺激による遺伝子発現量レベル及びタンパク質発現量レベルの炎症惹起抑制を表すグラフである。図6のAはNOD1のsiRNAで処理有無の場合に、リガンドの刺激による炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現量の変化を表すグラフである。図6のBはNOD1のsiRNAで処理有無の場合に、リガンドの刺激による炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現量の変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、NOD1の阻害剤を有効成分として含む皮膚炎症の新たな予防又は治療する組成物、及び皮膚炎症を予防又は治療し得る物質のスクリーニング方法について、具体的に説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0016】
[NOD1及びNOD2]
NLRファミリーであるNOD1とNOD2は細胞質内の細菌の持つ成分を認識している。具体的に、NOD2はほとんどの細菌ペプチドグリカンに存在するMDPを認識する。それに対して、NOD1はグラム陰性菌とアクネ菌など一部のグラム陽性菌のペプチドグリカンに存在するiE-DAPを認識するが、S.epidermidisなどの多くの皮膚常在菌は感知しない。NOD1やNOD2はRIPK2(receptor-interacting serine-threonine kinase 2,受容体相互作用蛋白質キナーゼ2)を介してNF-κB及びMAPK伝達経路の活性化を誘導することで様々なサイトカイン(例えば、IL-8等)や抗菌ペプチドの発現を誘導し、自然免疫の活性化に働く。
また、NOD2は、造血細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞)と非造血細胞(例えば、パネート細胞、幹細胞、杯細胞、腸細胞)を含む様々
な細胞型において発現されている。それに対して、NOD1は胃、大腸、口腔の上皮細胞、膵臓、肺、腎臓、脾臓のマクロファージ、樹状細胞等の細胞型において、発現されているが、ヒト皮脂腺細胞ではNOD1の発現がまだ証明されていない。
【0017】
本発明の発明者らは、新たにNOD1がヒト皮脂腺細胞のPRRsとして発現していることを見出した。
【0018】
発明者らは、異なる3つのロットのヒト皮脂腺細胞とポジティブコントロールとしてのTHP-1細胞のRNAを抽出し、得られたRNAを用いて、cDNAを作成した。得られたcDNAについてDNAポリメラーゼと各合成プライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の後、NOD1、NOD2とGAPDH遺伝子発現を検出した(図1のAを参照)。さらに絶対定量を行い、NOD1、NOD2とNLRP3遺伝子の絶対発現量を確認した(図1のBを参照)。図1のBにおいて、NOD1遺伝子の絶対発現量は、NOD2とNLRP3遺伝子より多いと分かる。
【0019】
さらに、発明者らはNOD1への刺激により炎症惹起を確認した。図2のAにより、定量のNOD1リガンド(Tri-DAP)又はNOD2リガンド(MDP)でヒト皮脂腺細胞を異なる時間で刺激し、その後RNA抽出方法、cDNA合成方法、リアルタイム定量PCRに従って、炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現を確認した結果、NOD1刺激のみ4時間をピークとする発現の上昇が見られた。図2のBとCにより、異なる濃度のリガンド(Tri-DAP又はMDP)で4時間ヒト皮脂腺細胞を刺激した結果、NOD1刺激のみ炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現の上昇が確認され、刺激から24時間後において遺伝子と同様にNOD1刺激のみ炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現量の上昇も確認された。図2のDは定量リガンド(Tri-DAP)の異なる時間の刺激によるヒト皮脂腺細胞におけるp65、p38、JNK及びERKタンパク質のリン酸化変化を表すウエスタンブロッティング写真([1])及びp65、p38、JNK及びERKタンパク質のリン酸化比率を表すグラフ([2])である。
【0020】
以上、図1及び図2で示された結果から、ヒト皮脂腺細胞においてもNOD1が存在する。さらにヒト皮脂腺細胞がリガンドに刺激されることにより、p65、p38タンパク質のリン酸化比率が上がり、炎症惹起刺激に応じて産生されるIL-8が確認されることで、NOD1がヒト皮脂腺細胞においてPRRsとして機能することが明らかである。
【0021】
[NOD1に対する阻害物質]
本発明の組成物における有効成分である、「NOD1に対する阻害物質」には、NOD1タンパク質の活性を阻害する物質(以下、NOD1活性阻害物質ともいう)及び/又はNOD1の発現を阻害する物質(以下、NOD1発現阻害物質ともいう)が含まれる。なお、本明細書において用語「阻害」とは、阻害対象(例えば、活性又は発現)を完全に或いは部分的に抑制又は減少させることを意味する。
前記のように、NOD1の刺激により炎症が引き起こされるため、NOD1に対する阻害物質が炎症を抑える効果があると想定できる。
【0022】
(NOD1活性阻害物質)
本発明の組成物で用いることのできるNOD1活性阻害物質としては、例えば、アクネ菌など細菌と拮抗し、NOD1と細菌との結合を阻害することでNOD1活性を阻害する物質、NOD1に対する特異的抗体などが挙げられる。具体的にML130、CID-1088439のような2-アミノベンジミダゾイル誘導体を挙げることができ、ML130がより好ましい。また、NOD1とNOD2の二重阻害剤、例えば、エチル-1-(4-トルエンスルフォニル)-1H-インドール-2-カルボキシレートおよびエチル-1-(4-メチルベンジル)-1H-インドール-2-カルボキシレートなどもNOD1活
性阻害物質として用いることができる。NOD1活性阻害物質は、後述するスクリーニング方法を用いて、選択、同定又は確認することができる。
【0023】
(NOD1発現阻害物質)
本発明の組成物で用いることのできるNOD1発現阻害物質としては、例えば、NOD1の発現を特異的に阻害可能なアンチセンス核酸若しくは小分子量干渉RNA(small interfering RNA;siRNA)、マイクロRNA、NOD1 mRNAを特異的に切断可能なリボザイム、これらを哺乳動物細胞内において発現可能な発現ベクターなどを挙げることができる。また、NOD1発現阻害物質の例として、シクロスポリンAなどの免疫抑制剤などを挙げることができる。NOD1発現阻害物質は、後述するスクリーニング方法を用いて、選択、同定又は確認することができる。
【0024】
上記アンチセンス核酸としては、NOD1の転写産物(mRNA又は初期転写産物)と特異的にハイブリダイズして、NOD1の翻訳を阻害し得る核酸をいう。核酸としては、DNAであっても、RNAであっても、或いはDNA/RNAキメラであっても良い。
【0025】
アンチセンス核酸の長さとしては、NOD1の転写産物と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はないが、合成の容易さや抗原性の観点などから、下限としては通常10塩基以上、好ましくは15塩基以上のものが挙げられ、上限としては通常100塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは24塩基以下のものが挙げられる。従って、アンチセンス核酸としては、例えば10塩基以上100塩基以下、好ましくは15塩基以上30塩基以下、より好ましくは15塩基以上24塩基以下のオリゴヌクレオチドが使用され得る。
【0026】
また、アンチセンス核酸の標的配列についても、アンチセンス核酸がハイブリダイズすることによりNOD1の翻訳が阻害される配列であれば特に制限はなく、mRNAの全配列であっても部分配列(通常10塩基以上、好ましくは15塩基以上;且つ通常100塩基以下、好ましくは30塩基以下、より好ましくは24塩基以下)であってもよいし、あるいは初期転写産物のイントロン部分であってもよいが、アンチセンス核酸としてオリゴヌクレオチドを使用する場合は、標的配列はNOD1のmRNAの5’末端からコード領域のC末端までに位置することが望ましい。
【0027】
上記アンチセンス核酸の合成は自体公知の方法で行えば良く、例えば、所望の塩基配列を持つオリゴヌクレオチドを市販のDNA/RNA自動合成機を用いて合成すれば良い。
【0028】
上記siRNAは、NOD1の転写産物(mRNA又は初期転写産物)のコード領域内の部分配列(通常18塩基以上、好ましくは21塩基以上、且つ通常30塩基以下、好ましくは27塩基以下、より好ましくは23塩基以下;初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な配列を有する二本鎖オリゴRNAであり、当該転写産物を特異的に認識して切断することによりNOD1の発現を阻害し得るものであれば特に制限されない。siRNAの長さは、通常21~23塩基である。当業者は、ヒトNOD1のmRNA配列をもとに、ヒトNOD1の発現を阻害するために使用され得るsiRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の配列を決定することができる。
siRNAの合成は自体公知の方法で行えば良く、例えば、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、それらをアニーリングさせることにより合成することができる。
【0029】
また、上記発現ベクターとしては、当該技術分野で使用される任意のものを使用することができ、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC19
4)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが挙げられる。
【0030】
[皮膚炎症]
本明細書において、用語「皮膚炎症」には、これらに限定されないが、なかでも、尋常性ざ瘡(ニキビ)、酒さ、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、薬疹、乾癬、脂漏性皮膚炎、結合組織疾患(例えば、狼瘡および強皮症)、水疱形成疾患(例えば、水疱性類天疱瘡および天疱瘡)といったその他の自己免疫障害、色素性疾患(例えば、炎症後色素沈着過度、肝斑および白斑)、蕁麻疹または蕁麻疹性丘疹、体部白癬または手指もしくは足指爪の真菌感染症といった皮膚感染症を伴う炎症が含まれる。炎症は、これらの疾患の大部分にとって重要なステップである。
本発明が提供するNOD1に対する阻害物質を有効成分として含有する組成物は、特に尋常性ざ瘡、即ちニキビの予防や治療に効果的である。
【0031】
[NOD1の阻害剤を有効成分として含む組成物]
本発明のNOD1の阻害剤を有効成分として含む組成物は、具体的に医薬組成物及び化粧料組成物の形態で提供することができる。
【0032】
(医薬組成物)
本発明の組成物は医薬組成物の場合に、NOD1の阻害剤をそのままあるいは薬理学的に許容し得る担体を配合し、経口的または非経口的に投与することができる。薬理学的に許容し得る担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などが挙げられ、また、非経口投与する場合の剤形としては、例えば、塗布剤、注射剤、注入剤、点滴剤などが挙げられる。また、適当な基剤(例、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸-グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物、ポリグリセロール脂肪酸エステルなど)と組み合わせて徐放性製剤とすることも有効である。
【0034】
本発明の医薬組成物中のNOD1に対する阻害物質の含有量は、製剤の形態に応じて相違するが、通常製剤全体に対して2ないし85重量%、好ましくは5ないし70重量%である。
【0035】
NOD1に対する阻害物質を上記の剤形に製する方法としては、当該分野で一般的に用いられている公知の製造方法を適用することができる。また、上記の剤形に製する場合には、必要に応じて、その剤形に製する際に製剤分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などの担体、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤などの各種製剤添加物などを適宜、適量含有させて製造することができる。
【0036】
例えば、NOD1に対する阻害物質を錠剤に製する場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤などを含有させて製造することができ、丸剤および顆粒剤に製する場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤などを含有させて製造することができる。また、散剤およびカプセル剤に製する場合には賦形剤などを、シロップ剤に製する場合には甘味剤などを、乳剤ま
たは懸濁剤に製する場合には懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤などを含有させて製造することができる。
【0037】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、ショ糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
結合剤の例としては、5ないし10重量%デンプンのり液、10ないし20重量%アラビアゴム液またはゼラチン液、1ないし5重量%トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液、グリセリンなどが挙げられる。
崩壊剤の例としては、でんぷん、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルクなどが挙げられる。
甘味剤の例としては、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップなどが挙げられる。
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40などが挙げられる。
懸濁化剤の例としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ベントナイトなどが挙げられる。
乳化剤の例としては、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80などが挙げられる。
【0038】
更に、NOD1に対する阻害物質を上記の剤形に製造する場合には、所望により、製剤分野において通常用いられる着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤などを適量添加することができる。
【0039】
NOD1に対する阻害物質を含有する本発明の医薬組成物は、安定かつ低毒性で安全に使用することができる。その1日の投与量は患者の状態や体重、NOD1に対する阻害物質の種類、投与経路などによって異なるが、当業者はこれらの要素を考慮して適切な量を決定することができる。また、投与は、1日1回の投与であっても、或いは2ないし3回に分けての投与であってもよい。
【0040】
NOD1に対する阻害物質を非経口的に投与する場合は、通常、液剤(例、注射剤)の形で投与する。その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形にして、通常体重1kgあたり約0.1mg~約100mgを静脈注射により投与するのが好都合である。注射剤としては、静脈注射剤のほか、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などが含まれ、また持続性製剤としては、イオントフォレシス経皮剤などが含まれる。かかる注射剤は、自体公知の方法、すなわち、NOD1に対する阻害物質を無菌の水性液もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製される。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80、HCO-50)などと併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤(例、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなど)などと併用してもよい。また、緩衝剤(例、リン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例、ベンジルアルコール、フェノールなど)などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、アンプルに充填される。
【0041】
本発明の医薬組成物からなる剤は、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などのような皮膚
炎を予防及び治療する効果を有する公知の化合物と並行して投与することができる。NOD1に対する阻害物質と他の薬剤を併用する場合、NOD1に対する阻害物質と併用薬剤の投与形態は特に限定されず、投与時に、NOD1に対する阻害物質と併用薬剤とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、(1)NOD1に対する阻害物質と併用薬剤とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)NOD1に対する阻害物質と併用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)NOD1に対する阻害物質と併用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)NOD1に対する阻害物質と併用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)NOD1に対する阻害物質と併用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例、本発明の医薬組成物からなる剤→併用薬剤の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)などが挙げられる。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、NOD1に対する阻害物質と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、NOD1に対する阻害物質1重量部に対し、併用薬剤を0.01乃至100重量部用いればよい。
【0042】
該医薬組成物は、尋常性ざ瘡、即ちニキビの予防や治療に利用されるため、外用医薬品、外用医薬部外品の外用組成物として、非常に有効であると想定できる。
【0043】
(化粧料組成物)
また、本発明の組成物は、化粧料組成物でもある。本発明の化粧料組成物は、本発明のNOD1に対する阻害物質と一緒に化粧料組成物の製造分野で一般的に使用される1つ以上の賦形剤及び添加剤を含めて当分野の公知の方法により容易に製造されることができる。
【0044】
本発明の化粧料組成物は、NOD1に対する阻害物質を有効成分として含有し、皮膚学的に許容可能な賦形剤と一緒に基礎化粧料組成物(化粧水、乳液、クリーム、美容液、クレンジングフォーム及びクレンジングウォーターのような洗顔剤、パック、ボディオイル)、色調化粧料組成物(ファンデーション、口紅、マスカラ、メイクアップベース)、頭髪製品組成物(シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアゲル)及び石鹸などの形態で製造することができる。前記化粧料組成物における賦形剤としてはこれに限定されないが、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含むことができる。また、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤などをさらに含むことができ、物性改善を目的として増粘剤、無機塩類、合成高分子物質などを含むことができる。
【0045】
前記化粧料組成物における賦形剤としては、これに限定されないが、例えば、皮膚軟化剤、皮膚浸透増強剤、着色剤、芳香剤、乳化剤、濃化剤及び溶媒を含むことができる。また、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤及び保湿剤などをさらに含むことができ、物性改善を目的として増粘剤、無機塩類、合成高分子物質などを含むことができる。例えば、本発明の化粧料組成物でクリームを製造する場合には、一般的な水中油滴型(O/W)のクリームベースにNOD1に対する阻害物質を添加して製造することができる。ここで香料、キレート剤、色素、酸化防止剤、防腐剤などと物性改善を目的としたタンパク質、ミネラル、ビタミンなどの合成又は天然素材を追加して添加することができる。
【0046】
本発明の化粧料組成物に含有されるNOD1に対する阻害物質の含有量は、これに限定されないが、全体組成物の総重量に対して、0.0005~10重量%であることが好ましく、0.001~5重量%であることがより好ましい。前記含量が0.001重量%未満では、目的とする皮膚炎症の予防又は治療効果を期待することができず、10重量%を
超えると安全性又は全ての剤形状製造に困難がありうる。
【0047】
また、本発明の化粧料組成物は、NOD1に対する阻害物質と共に皮膚炎症の緩和や皮膚保護に効果があると知られている他の成分と一緒に混合して製造することができる。
【0048】
また、前記のように、尋常性ざ瘡(ニキビ)の治療ターゲットとしてこれらのTLR2に対する阻害剤が有効であると知られているため、本発明のNOD1の阻害剤を有効成分として含む組成物には、さらにTLR2の阻害剤を含んでもよい。
【0049】
[皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法]
本発明は皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法を提供する。該スクリーニング方法は主に下記の工程を含む。
(a)ヒト皮脂腺細胞を被験物質で処理する工程;
(b)NOD1の機能(即ち、活性又は発現)を阻害するか検定する工程;及び、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、NOD1の機能を阻害した被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程。
当該スクリーニング方法において、用語「皮膚炎症」は、前記NOD1の阻害剤を有効成分として含む組成物の説明において記述したものと同義である。
以下、本発明のスクリーニング方法を詳述する。
【0050】
スクリーニング方法に供される被験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。被験物質は、標識されていても未標識であってもよく、また、標識体と未標識体を所定の割合で含む混合物も被験物質として使用できる。標識用物質としては、例えば、FITC、FAM等の蛍光物質、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質、H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体、ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質などが挙げられる。
【0051】
(NOD1活性阻害物質のスクリーニング方法-スクリーニング方法A)
NOD1の活性を阻害する物質(NOD1活性阻害物質)のスクリーニング方法について説明する。
【0052】
NOD1活性阻害物質のスクリーニング方法Aは、以下の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)NOD1活性化剤を、被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる工程;
(b)炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、炎症性サイトカインの遺伝子のmRNA発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程。
【0053】
スクリーニング方法Aの工程(a)では、まず、被験物質でヒト皮脂腺細胞を処理する。その後、NOD1活性化剤を該被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる。NOD1活性化剤は、例えばNOD1リガンド等が挙げられる。Tri-DAP等は代表的なNOD1リガンドである。
【0054】
被験物質がNOD1活性阻害物質である場合に、その添加により、NF-κBおよびM
APK伝達経路の活性化が阻害される。そこで、NF-κBおよびMAPK伝達経路の活性化に誘導されるさまざまな炎症性サイトカインの発現も阻害される。
スクリーニング方法Aの工程(b)では、まず、これらの炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量が測定される。遺伝子の発現量及びタンパク質発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考え、公知の方法により行われる。
例えば、炎症性サイトカインIL-8遺伝子の発現量は、IL-8遺伝子の産物、例えば、転写産物(mRNA)又は翻訳産物(タンパク質)を対象として自体公知の方法により測定できる。例えば、転写産物の発現量は、細胞からtotal RNAを調製し、RT-PCR、ノザンブロッティング等により測定され得る。また、翻訳産物の発現量は、細胞から抽出液を調製し、免疫学的手法により測定され得る。免疫学的手法としては、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA法(Methods in Enzymol.70:419-439(1980))、蛍光抗体法などが使用できる。
次いで、被験物質を接触させた細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量が、被験物質を接触させない対照細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を接触させない対照細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量は、被験物質を接触させた細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
【0055】
スクリーニング方法Aの工程(c)では、炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択される。
【0056】
(NOD1発現阻害物質のスクリーニング方法-スクリーニング方法B、C)
NOD1の発現を阻害する物質(NOD1発現阻害物質)のスクリーニング方法について説明する。
【0057】
NOD1発現阻害物質のスクリーニング方法Bは、以下の工程(a)、(b)及び(c)を含む:
(a)ヒト皮脂腺細胞を被験物質で処理する工程;
(b)NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞の発現量と比較する工程;及び、
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程。
【0058】
スクリーニング方法Bの工程(a)では、まず、被験物質でヒト皮脂腺細胞を処理する。
【0059】
被験物質がNOD1発現阻害物質である場合に、その添加により、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量が影響される。
スクリーニング方法Bの工程(b)では、先ず、被験物質を接触させたヒト皮脂腺細胞におけるNOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量が測定される。発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考慮し、自体公知の方法により行われ得る。具体的な測定方法は、スクリーニング方法Aの工程(b)と同様である。
次いで、被験物質を接触させた細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量が、被験物質を接触させない対照細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/
又タンパク質の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を接触させない対照細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量は、被験物質を接触させた細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
【0060】
スクリーニング方法Bの工程(c)では、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択される。
【0061】
NOD1発現阻害物質のスクリーニング方法Cは、以下の工程(a)、(b)、(b1)及び(c)を含む:
(a)NOD1活性化剤を、被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる工程;
(b)NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;
(b1)炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量を定量し、これらの発現量を、NOD1活性化剤を被験物質で処理しなかったヒト皮脂腺細胞に接触させた場合の発現量と比較する工程;及び、
(c)上記(b)と(b1)の比較結果に基づいて、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質、及び炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択する工程
【0062】
スクリーニング方法Cの工程(a)では、まず、被験物質でヒト皮脂腺細胞を処理する。その後、NOD1活性化剤を該被験物質で処理したヒト皮脂腺細胞に接触させる。NOD1活性化剤はスクリーニング方法Aと同様でもよい。
【0063】
被験物質がNOD1発現阻害物質である場合に、その添加により、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量が影響される。
スクリーニング方法Cの工程(b)では、先ず、工程(a)を経たヒト皮脂腺細胞におけるNOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量が測定される。発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考慮し、自体公知の方法により行われ得る。具体的な測定方法は、スクリーニング方法Aの工程(b)と同様である。
次いで、被験物質を接触させた細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量が、被験物質を接触させない対照細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を接触させない対照細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量は、被験物質を接触させた細胞におけるNOD1遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
【0064】
NOD1発現が阻害されるとともに、通常、シグナル伝達経路におけるNOD1下流のシグナル伝達も影響され、NF-κB及びMAPK伝達経路の活性化及びNF-κB及びMAPK伝達経路の活性化に誘導されるさまざまな炎症性サイトカインの発現も阻害されると考えられる。
スクリーニング方法Cの工程(b1)は、スクリーニング方法Aの工程(b)と同様である。即ち、スクリーニング方法Cの工程(b)に、さらにスクリーニング方法Aの工程
(b)を加え、最終的に両方の結果を踏まえて、被験物質が皮膚炎症の予防又は治療のための物質として使用できるかどうかを判断することができる。ただし、スクリーニング方法Cの工程(b)及び工程(b1)は前後の順序が関係なく、スクリーニング時に同時に実施してもよい。
【0065】
具体的に、スクリーニング方法Cの工程(b1)では、まず、炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量が測定される。遺伝子の発現量及びタンパク質発現量の測定は、用いた細胞の種類などを考え、公知の方法により行われる。
次いで、被験物質を接触させた細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量が、被験物質を接触させない対照細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量と比較される。発現量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被験物質を接触させない対照細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量は、被験物質を接触させた細胞におけるIL-8遺伝子の発現量及び/又タンパク質の発現量の測定に対し、事前に測定した発現量であっても、同時に測定した発現量であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した発現量であることが好ましい。
【0066】
スクリーニング方法Cの工程(c)では、NOD1の遺伝子発現量及び/又はNOD1のタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質、及び炎症性サイトカインの遺伝子発現量及び/又は炎症性サイトカインのタンパク質発現量の低下をもたらす被験物質を前記の皮膚炎症を予防又は治療し得る物質として選択される。
【実施例0067】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0068】
(ヒト皮脂腺細胞の培養)
ヒト皮脂腺細胞は6ウェルプレートに1.0×10cells/ウェル、12ウェルプレートに5.0×10cells/ウェルとなるように播種し、37℃、5%COの条件下で培養した。培地はDMEM/F-12に添加剤を加えたものを使用した。該添加剤はGlutaMAXTM(2mM)、2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(10mM)、ヒト上皮成長因子(50ng/mL)及び10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)からなる。
【0069】
(実施例1 NOD1タンパク質活性の阻害)
5μMのNOD1阻害剤ML130でヒト皮脂腺細胞を30分間処理した後、10μg/mLのTri-DAPで刺激を行った。Tri-DAP刺激4時間後のサンプルについて、RNeasy Mini Kit(QIAGEN製)を用いてRNAを抽出した。得られたRNAとPrimeScriptTM II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ製)を用いて、GeneAmp(登録商標)
PCR System 9700(Applied Biosystems製)を使用して、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行い、cDNAを作成した。双方の操作はメーカー推奨の方法に従って行った。IL-8遺伝子のmRNA発現レベルは、Applied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems製)を使用して、得られたcDNAを用いてTaqMan(登録商標)遺伝子発現アッセイで測定した。操作はメーカー推奨の方法に従って行った。リアルタイム定量PCRはApplied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems製)を使用して、50℃で2分間のUNG incubationステップ、95℃で10分間の酵素活性化ステ
ップの後に、95℃で15秒間の熱変性ステップ、60℃で1分間のアニーリング/伸長ステップを含むサイクルを50回繰り返した。図4のAから、炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現誘導を確認した。
【0070】
Tri-DAP刺激24時間後の細胞培養上清について、培養上清中のIL-8量は、Human IL-8 ELISA Kit(Proteintech製)を用いてELISA法により定量した。操作はメーカー推奨の方法に従って行った。図4のBから、炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現誘導を確認した。
以上、ML130は、NOD1活性化剤(Tri-DAP)によって誘導される炎症性サイトカインIL-8のmRNA発現とタンパク質分泌の両方を有意に抑制した。
【0071】
5μMのNOD1阻害剤ML130でヒト皮脂腺細胞を30分間処理した後、10μg/mLのTri-DAPで1時間刺激を行った。その後、ヒト皮脂腺細胞を溶解バッファー(Tris-HCl(20 mM、pH 7.5)、NaCl(150 mM)、エデテートカルシウム二ナトリウム(10mM 、pH8.0)、1% Triton-X 100)で溶解し、サンプルバッファー(Tris-HCl(250 mM、pH6.8)、20% 2-メルカプトエタノール、8%ドデシル硫酸ナトリウム、20%スクロース、ブロモフェノールブルー(40μg/μL))で調整した。調整したサンプルを10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、セミドライブロッティング装置(Bio-Rad Laboratories製)を使用して、タンパク質をポリフッ化ビニリデンメンブレンに100mVで1時間転写した。メンブレンをブロッキング溶液(0.1%のTween-20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS-T)を用いた5%スキムミルク溶液)で1時間ブロッキングした。TBS-Tで3回洗浄した後、メンブレンを4℃で一晩各抗体に当てた。TBS-Tで3回洗浄した後、メンブレンを室温で2時間 HRP標識二次抗体に当てた。ECL Primeウエスタンブロッティング検出試薬(Cytiva製)またはImmunoStar LD(和光製)をメーカー推奨の方法に従って使用し、ウエスタンブロッド解析法によって、p65とp38タンパク質のリン酸化を確認した(図5のAとB)。即ち、ML130は、Tri-DAPによって誘導される炎症性の細胞シグナリングであるp65およびp38のリン酸化を阻害した。
【0072】
以上、ML130の使用により、NOD1タンパク質に対する活性を阻害する方法はアクネ菌などによる炎症を抑制する手段として有効であることが示された。
【0073】
(実施例2 NOD1遺伝子発現及びタンパク質発現の阻害)
19.2nMのNOD1遺伝子のsiRNA(以後、siNOD1とも称する)(Horizon Discovery製)をLipofectamin 2000(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いてヒト皮脂腺細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入から48時間後のサンプルについて、前記のRNA抽出方法、cDNA合成方法、リアルタイム定量PCRに従って、NOD1遺伝子発現量を約50%減少したことを確認した。さらに遺伝子導入から48時間後の細胞溶解液について、前記のウエスタンブロッティング法に従って、NOD1のタンパク質発現量も30%減少したことを確認した。
さらに、NOD1発現が阻害されるとともに、シグナル伝達経路におけるNOD1下流のシグナル伝達も影響されると想定し、前記のRNA抽出方法、cDNA合成方法、リアルタイム定量PCRに従ってTri-DAP刺激4時間後における炎症性サイトカインIL-8の遺伝子発現誘導も確認した(図6のA)。Tri-DAP刺激24時間後の細胞培養上清について、前記のELISA法に従って、炎症性サイトカインIL-8のタンパク質発現誘導を確認した(図6のB)。
その結果、siNOD1の使用により、NOD1活性化剤(Tri-DAP)によって誘導される炎症性サイトカインIL-8のmRNA発現およびタンパク質分泌を完全に無
効にした。
以上、siNOD1の使用により、NOD1遺伝子発現及びタンパク質の発現を阻害する方法はアクネ菌などによる炎症を抑制する手段として有効であることが示された。
【0074】
<化粧料の処方例>
化粧水及び化粧用クリームを、下記表1及び表2の処方例より作製することができる。
【表1】
【0075】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の皮膚炎症を予防又は治療する物質のスクリーニング方法により、直接的にまた間接的にNOD1の機能を阻害する物質を選択することができる。そこで、アクネ菌などによる皮膚炎症特に尋常性ざ瘡の皮膚炎症を抑制する手段が得られ、尋常性ざ瘡の皮膚炎症を予防又は治療する効果が期待できると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6