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特開2025-7935土壌流出及び雑草生長抑制シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007935
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】土壌流出及び雑草生長抑制シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20250109BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A01M21/00 A
E02D17/20 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109703
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000185178
【氏名又は名称】小泉製麻株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(74)【代理人】
【識別番号】100187399
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 敏文
(72)【発明者】
【氏名】安立 剛士
(72)【発明者】
【氏名】大西 郁
【テーマコード(参考)】
2B121
2D044
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CA59
2B121CA64
2D044DB04
(57)【要約】
【課題】本発明は、法面など美観を保護し、かつ強固な土壌が求められる土壌において、雑草の生育を防止するとともに環境要因による土壌崩落を防止する土壌流出及び雑草の生長抑制シートを提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、本発明の土壌流出及び雑草生長抑制シートは、透水性を有さず、かつ、弾性を有する樹脂シートと不織布シートとが接着された防草シートにおいて、一方の面から他方の面まで貫いて形成された貫通穴が、所定の間隔で設けられ、前記樹脂シートが、遮水性を備え、ごく少量の雨水を貫通穴から土壌側に流し、前記不織布シートが、流れ込んだ雨水を毛細管現象によって該不織布シート全体に拡散させた後、下側土壌に供給し、前記貫通穴が、雨水と一緒に流れ込んだ土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子を下側土壌に通過させること、を特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性を有さず、かつ、弾性を有する樹脂シートと不織布シートとが接着された防草シートにおいて、
一方の面から他方の面まで貫いて形成された貫通穴が、
所定の間隔で設けられ、
前記樹脂シートが、
遮水性を備え、ごく少量の雨水を貫通穴から土壌側に流し、
前記不織布シートが、
流れ込んだ雨水を毛細管現象によって該不織布シート全体に拡散させた後、下側土壌に供給し、
前記貫通穴が、
雨水と一緒に流れ込んだ土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子を下側土壌に通過させること、
を特徴とする土壌流出及び雑草生長抑制シート。
【請求項2】
未硬化の透水性を有さない樹脂シートと不織布シートとを重ねて圧着することにより前記樹脂シートと不織布繊維とを絡ませて接着した後、
パンチング加工又はレーザ穴あけ加工によって接着された前記樹脂シート及び前記不織布シートの一方の面から他方の面まで貫く貫通穴を所定の間隔で形成すること、
を特徴とする土壌流出及び雑草成長抑制シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面などにおいて、雑草の生育を防止するとともに環境要因によって土壌が崩落することを防止する土壌流出及び雑草生長抑制シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面には植生工を施し、雨水の表層流水によって浸食されることを防止してきた。しかしながら、緑化が完成するまでには時間が掛かるため、十分に植物で覆われる前に植物種子などの緑化基盤材が流れ出てしまう場合がある。また、長期間経過後は定期的に除草作業を行わなければ美観を損なうことになる。
【0003】
近年では、植生工に代わって樹脂製の防草シートで法面を覆う施工がなされるようになってきており、防草シートには、高い遮光性を備えた、透水性を有さない樹脂シートや一定の透水性を備えた不織布シートが採用されている。
【0004】
土壌の表面では、通常土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子が間隙水の効果によって土塊を形成して強度を保持しているため、透水性を有さない樹脂シートに覆われた際には、土壌が乾燥して団粒としての構造が壊れやすくなって土塊としての強度を失うことになる。強度を失った土壌に、樹脂シート端部の隙間から水分が供給された場合、微細粒子が融解していき、水の路が形成されて最終的に法面などの土壌崩壊に至ることになる。
【0005】
一方で、従来の不織布の防草シートは、不織布シートは一定の透水性を備えており、防草シート全体を通して排水機能を有するため、防草シート本体には繊維間の毛細管現象により少なからず雨水を保持していた。そのため、土壌に対して雨水が供給されることになり、土壌の強度を保持することが可能である。しかし、不織布シートの表面は、粗面であり不織布シート上に植物の種子や土壌が堆積しやすく不織布シート下の土壌には水分も含まれているため、時間が経過するとともに、雑草の生育が始まることになる。
【0006】
また、不織布の毛細管現象を利用して不織布シート表面の雨水を排水する場合は、雨水と共に土壌の微細粒子やシルトも一緒に排水させ、繊維間に土壌の微細粒子やシルトを堆積させて目詰まりさせることが懸念される。
【0007】
以上の問題を解決するために、以下の先行技術文献が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6794122号公報
【特許文献2】特開2004-166620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、撥水剤を不織布表面に付着させた防草シートが開示されている。当該防草シートは、不織布が撥水剤を含むことにより、土壌からの水分の蒸発及びそれに伴う養分の滲出を撥水剤により抑制できるため、防草シート上での植物の生長を抑制できることとなっている。しかし、撥水剤により、不織布表面から透過する水分も抑制され、土壌の強度が低下する課題があった。
【0010】
特許文献2では、樹脂シート110と、機械的にからみ合された不織布シート120とが溶着され、樹脂シート110には所定の密度で樹脂シート穴130が設けられている従来の防草シート100が開示されている。図6に従来防草シート100の断面図を示した。また、図7には、従来防草シート100の樹脂シート穴130部分を示す断面拡大図を示した。従来の防草シート100では、樹脂シート穴130が設けられているが、当該穴は不織布シート120にまでは貫通されておらず、土壌にまで連通していない。樹脂シート穴130から流入した水分WAは不織布シート120内に拡散した後、土壌に供給されることになる。
【0011】
しかしながら、従来の防草シート100が設置された土壌基盤が強固な場合には、樹脂シート穴130からは主として雨水WAが流入することになるが、土壌基盤が軟弱な場合には、樹脂シート穴130から流入する物質は水分WAのみならず、土壌に含まれる微細粒子CLも流入することになり、不織布繊維122に付着する。
【0012】
長期間経過後は、樹脂シート穴130出口周辺は、流入した微細粒子CLにより目詰まりが発生することになる。目詰まりは、排水能力を低下させ、樹脂シート穴130から流入した水分WAを不織布シート120内部に浸透して拡散させることができず土壌に到達できなくする。防草シート100下の土壌への水分供給が減少していくと、前述したように、土壌が乾燥して土塊としての強度を失うことになる。
【0013】
強度を失った土壌に樹脂シート端部の隙間から雨水が供給されると、微細粒子が融解していき、水の路が形成されて最終的に土壌崩落に至る課題があった。
【0014】
目詰まりによる不織布シートの排水能力の低下については、敷設箇所の土壌の状態によって異なるため、防草シートの貫通穴は、不織布の排水能力を考慮して不織布部分の厚み又は繊維の密度、及び貫通穴の径または配置の密度に関して個別に設計する必要があり、大変な労力を有する課題があった。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、法面など美観を保護し、かつ強固な土壌が求められる土壌において、雑草の生育を防止するとともに環境要因による土壌崩落を防止する土壌流出及び雑草の生長抑制シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の土壌流出及び雑草生長抑制シートは、透水性を有さず、かつ、弾性を有する樹脂シートと不織布シートとが接着された防草シートにおいて、一方の面から他方の面まで貫いて形成された貫通穴が、所定の間隔で設けられ、前記樹脂シートが、遮水性を備え、ごく少量の雨水を貫通穴から土壌側に流し、前記不織布シートが、流れ込んだ雨水を毛細管現象によって該不織布シート全体に拡散させた後、下側土壌に供給して、土壌の強度を保持し、前記貫通穴が、 雨水と一緒に流れ込んだ土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子を下側土壌に通過させること、を特徴とする。
【0017】
また、本発明の土壌流出及び雑草生長抑制シートの製造方法は、未硬化の透水性を有さない樹脂シートと不織布シートとを重ねて圧着することにより前記樹脂シートと不織布繊維とを絡ませて接着した後、パンチング加工又はレーザ穴あけ加工によって接着された前記樹脂シート及び前記不織布シートの一方の面から他方の面まで貫く貫通穴を所定の間隔で形成すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の土壌流出及び雑草生長抑制シート(以下、「土壌保護シート1」という。)は、樹脂シートと不織布シートが積層されることにより、遮光性に優れ雑草の生育を防止することができる。土壌保護シート表面には雨水を保持しない撥水機能を有し、シートに雨水を滞留させることがないため、植物の生長を助長させるメカニズムは存在しない。したがって、植物の浸食によって土壌の強度を失うことを防止することができる。
【0019】
本発明の土壌保護シート1の表面材料には、撥水剤を塗布又はコーティングはしていないが、樹脂シート自体に撥水機能を有しているため、土壌保護シート表面は排水機能を備える。また、貫通穴は、不織布シートに雨水を含浸させる機能を持たせるのではなく、自重によって雨水と土の微細粒子やシルトとを土壌保護シート下の土壌まで落下する機能を持たせた。具体的には、樹脂シートから不織布シートまで貫いて土壌に連通した貫通穴が設けられることによって、貫通穴から雨水とともに流入した土の微細粒子やシルトは、貫通穴に停滞し目詰まりさせることはなく土壌面に排出することができるため、不織布の排水能力が低下することがない効果を奏する。
【0020】
一方で、樹脂シート貫通穴から流入した雨水は、毛細管現象によって不織布の繊維に付着して引き寄せられ、不織布内に広がった後に土壌保護シートの下側土壌に排出され、土壌は乾燥することがなく強度を保持することができる効果を奏する。したがって、風化によって土壌の強度を失うことを防止することができる。
【0021】
雨水とともに流入した土の微細粒子は、不織布シートにも設けられ土壌にまで連通した貫通穴を通過して土壌に至るため、目詰まりが生じるおそれはない効果を奏する。
【0022】
本発明の土壌保護シートは、上層に遮水性を有する樹脂シート、下層に毛細管現象を有する不織布シートを備えた土壌保護シートに微細な貫通穴を開けることで、雨水の供給と空気の排出とを実現して、高い遮水性に加えて土壌保護シートと土壌との密着性を備え、土壌崩壊を防止する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る土壌保護シートの斜視図である。
図2】本発明に係る土壌保護シートの平面図である。
図3図2におけるA-A断面図である。
図4】本発明に係る土壌保護シートの実施例である。
図5】本発明に係る土壌保護シートの貫通穴部分を示す断面拡大図である。
図6】従来防草シートの断面図である。
図7】従来防草シートの樹脂シート穴部分を示す断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る土壌保護シート1を実施するための形態について、図を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る土壌保護シート1の斜視図である。
【0025】
本発明に係る土壌保護シートは、透水性を有さない樹脂シートと不織布シートとが接着された二層の形状構造である。
【0026】
樹脂シートは、遮光性及び防水性を有する間隙がない面状のシートで構成される。一方、不織布シートは機械的に絡み合わせたシート状の繊維から構成される。
【0027】
樹脂シートは、シリコーン樹脂で形成されることが好ましい。樹脂シート自体が撥水機能を与え、土壌保護シート表面は排水機能を備えることができる。また、シリコーン樹脂は、弾性、耐候性、遮光性及び防水性に優れる。ポリ塩化ビニルの場合、シリコーン樹脂と同様に遮水性を有するが、弾性に関しては、ポリ塩化ビニルの伸度が、40-80%であるのに対して、シリコーン樹脂の伸度は、80-110%である。他の遮水性のある資材、例えばコンクリートは、伸度がないため、クラックや歪が生じやすい。クラックや歪みの原因となる振動に対しては、伸度が高い弾性を有する素材、一例としてシリコーン樹脂を樹脂シートとして使用することが好適である。しかしながら、シリコーン樹脂に限定されるものではなく、シリコーン樹脂と同等の弾性を有していればよい。
【0028】
不織布シートは、ポリエステル(PET)不織布が好ましい。PET不織布は、クッション性を利用して土壌からの突き上げを緩和する効果を得ることができる。クッション性は、樹脂シート単体では劣る強度を高める効果を併せて有する。また、不織布繊維は毛細管現象を有し、樹脂シートの土壌側に流れた雨水を不織布シート全体に拡散させた後、自重によって土壌まで落下する特徴がある。
【0029】
土壌保護シートの厚みは、樹脂シートをシリコーン樹脂、不織布シートをPETで形成した場合には、強度、クッション性及び不織布の毛細管現象による保水性を考慮すると、シリコーン樹脂シートが0.8mm以上、PET不織布シートが1.0mm以上であって、土壌保護シート全体の厚みは、1.8mm以上であることが好ましい。なお、柔軟性を考慮すると、4.0mm以下に留めることが好ましい。
【0030】
図2は、本発明に係る土壌保護シートの平面図である。防草を図る目的で法面などの土壌に土壌保護シートを設置する場合には、樹脂シートを上面に、不織布シートを土壌側に向けて設置を行う。図3には、図2におけるA-A断面図を示した。本発明に係る土壌保護シートは、一方の面から他方の面まで貫いて形成された貫通穴が、所定の間隔で形成されている。防水性に優れている樹脂シートは、表層に雨水による水溜まりが生じやすく、当該水溜まりの部分にさらに土砂が流れ込み、雑草が生えやすくなる。そのため、土壌保護シートに所定の間隔で貫通穴を形成し、土壌保護シートの表層に溜まる雨水を土壌保護シートの下側の土壌に導き、水溜まりを防止する。
【0031】
貫通穴径は、小さすぎると表面張力により雨水が貫通穴に流れ込まない。本願発明者の実験によれば、0.3mm以上の穴径であれば、表面張力が発生しないことが判明した。一方で、貫通穴径が大きすぎると、土壌保護シート下側の土壌に多量の雨水が流れ込み水の路を生じさせることになり、土壌の強度が失われていくことになる。本願発明者の実験によれば、穴径が1.2mmより大きい場合には、前述の厚みを備えた不織布シートの保水性の限度を超え、土壌保護シート下側の土壌に水流が生じ水の路が形成されることになる。したがって、貫通穴径は、0.3mm以上1.2mm以下が好適である。
【0032】
図2において、所定の間隔で貫通穴が設けられた例を示した。貫通穴の間隔は、不織布シートの毛細管現象による水分の拡がりを考慮する必要がある。間隔が狭すぎると、保水能力を超え、土壌保護シート下側の土壌に水流が生じ水の路が形成されることになる。本願発明者の実験によれば、貫通穴の間隔は、10.0mm以上であれば、不織布シートが保水性を維持できることが分かった。一方で、間隔が20.0mmを超えた場合には、不織布シート内に水分が拡がらず、土壌保護シート下の土壌に均等に行き渡ることができず後述する不織布シートに求められる役割を果たすことができない。したがって、貫通穴の間隔は、10.0mm以上20.0mm以下が好適である。
【0033】
貫通穴の配置パターンは、図2で示した均等ピッチの対称形でもよいが、図4に示した千鳥格子のように一定の貫通穴の配置の繰り返しパターンでもよい。その場合であっても、単位面積当たりの貫通穴の数を一定とすることが好ましい。
【0034】
単位面積当たりの貫通穴の数を変更する場合には、穴径を変更することが好ましい。例えば、図2の一定した間隔、例えば、10.0mm間隔の貫通穴の配置パターンの場合は穴径を1.0mmとし、図4の千鳥格子のように対角線の間隔が短くなるような場合には、穴径を0.5mmとすることが好ましい。
【0035】
背景技術において前述したように、土壌の表面では、通常土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子が間隙水の効果によって土塊を形成して強度を保持しているため、透水性を有さない樹脂シートに覆われた際には、土壌が乾燥して団粒としての構造が壊れやすくなって土塊としての強度を失うことになる。本発明に係る土壌保護シートの貫通穴は、土壌保護シート下側の土壌に均等かつ一定の水分を与えることを目的としている。
【0036】
図5は、本発明に係る土壌保護シートの貫通穴部分を示す断面拡大図である。土壌保護シートの表層に載った雨水は、所定の間隔で設けられた貫通穴から侵入し、樹脂シート部分を通過し、不織布シートに到達する。その際、不織布の毛細管現象により、大半の雨水は不織布シート内部に誘引されることになる。誘引された水は、不織布シートに拡散されたのち、土壌に到達する。当該水分が、土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子に浸透し土塊を形成して強度を保持するのである。その結果、風化や植物の浸食による土壌の強度を失うことを防止することができる。
【0037】
貫通穴には泥やコロイドなどの微細粒子が入り込む場合がある。微細粒子は、樹脂シートから不織布シートに連通した貫通穴を通過し土壌保護シート下側の土壌に到達する。その際には、不織布繊維に誘引されることはなく、不織布シートに泥やコロイドなどの微細粒子が留まることはない。
【0038】
その結果、従来の防草シートにおいて発生する穴の目詰まりの問題を解決することができた。
【0039】
本発明に係る土壌保護シートの性能試験を行った。試験条件を表1に示す。
【表1】
上記の試験の結果、土壌保護シートの遮水率値は97%超であった。当該数値はコンクリートと同等である。
【0040】
法面に敷設された従来の樹脂シート下側の土壌に空気が溜まると、樹脂シート周囲の土壌との水分率及び空気率(大気率)が異なることになり、土質のバランスが崩れ、土壌が崩壊していくメカニズムが知られている。貫通穴は、雨水が土壌保護シート表面の貫通穴から侵入し土壌に到達して浸透した後に土壌中に存在する空気を集め、貫通穴を通じて地表に空気を逃がすように作用する。土壌中の空気が貫通穴の各々から土壌保護シート上側に排出されることで土壌保護シートと土壌とが密着することによって、土壌崩壊を抑制するのである。
【0041】
透水性を有するシートを使用した場合は、雨水と空気の両方が排出されるが、シートの上から大量の雨水が供給されると、シート下側の土壌に大量の雨水が浸透し水の路をつくり、土壌浸食が発生する。一方、100%の遮水性を備えたシートを使用した場合は、シート下側が乾燥して土壌浸食を招く。本発明に係る土壌保護シートは、上層に遮水性を有する樹脂シート、下層に毛細管現象を有する不織布シートを備えた土壌保護シートに微細な貫通穴を開けることで、水分の供給と空気の排出とを実現して、97%を超える遮水性を備えるとともに、土壌保護シートと土壌との密着性を備えたものである。
【0042】
本発明に係る土壌保護シートの製造方法を以下に説明する。
【0043】
本発明に係る土壌保護シートは、樹脂材料と加硫剤を練り合わせ厚みを整えたのちにロール機から押し出された未硬化の樹脂シートに、繊維を重ね合わせたウェブを例えばニードルパンチ法によって突起のついた針を突き刺し繊維同士を絡ませて形成した不織布シートを重ねて圧着して貼り合わせ樹脂シートと不織布繊維とを絡ませて接着する工程を行う。異種の素材を接着させる場合、接着剤やポリプロピレンなどの合成樹脂を接着材料として使用することが一般的であるが、土壌保護シートは長期間屋外環境に曝露されるため、微量ながらも紫外線や水分による加水分解が生じ、接合部材が剥離することが懸念される。一方、未硬化の状態の樹脂シートと不織布と貼り合わせる方法においては、接着剤等を使用する際の剥離の懸念はない。
【0044】
その後、パンチング加工又はレーザ穴あけ加工によって接着された前記樹脂シート及び前記不織布シートの一方の面から他方の面まで貫く貫通穴を所定の間隔で形成する工程を行い土壌保護シートが製造される。穴あけ加工は、レーザ加工が好ましい。針を不織布に刺すパンチング加工の場合には、不織布繊維が針から逃れ、貫通穴の形状が不揃いになり、土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子によって目詰まりする可能性がある。一方で、レーザ加工の場合には、不織布繊維をレーザで焼き切るため、貫通穴は安定した形状に加工され、穴径が狭まり土壌中の沈泥やコロイドなどの微細粒子の目詰まりが生じる可能性を抑制することができる。
【0045】
本発明に係る土壌保護シートは、交通インフラの近くに設置される場合が多いため、コンクリートや石の風合いを再現し自然光による反射が少ない不揃いのエンボス加工を樹脂シートの表面に施すことが好ましい。また、交通インフラに馴染むよう灰色系の色合いにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の土壌保護シートは、道路、造成地、遊休管理地等の平地や法面などにおいて、雑草の生育を防止する。特に、法面においては雨水によって土壌が崩落することを併せて防止する。
【符号の説明】
【0047】
1 防草シート
10 樹脂シート
20 不織布シート
22 不織布糸
30 貫通穴
100 従来の防草シート
110 樹脂シート
120 不織布シート
122 不織布繊維
130 樹脂シート穴

CL 土泥(土壌に含まれる微細粒子)
WA 水分(雨水)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7