(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007936
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】風船振り落とし演出装置
(51)【国際特許分類】
A63J 5/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A63J5/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109706
(22)【出願日】2023-07-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】501406196
【氏名又は名称】株式会社エアロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002413
【氏名又は名称】弁理士法人ベリーベスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大曾根 康弘
(57)【要約】
【課題】イベント会場の規模に依らず、会場の上方の複数個所に仕掛けた多数の風船を演出空間全体にタイミングよく一斉に振り落とす風船振り落とし演出装置を提供する。
【解決手段】演出空間上方の水平材に懸架され、演出空間に振り落とす多数の風船を収容する複数の風船振り落とし幕と、複数の風船振り落とし幕のそれぞれと対になり振り落とすタイミングを制御する複数の制御ユニットと、制御ユニットに複数の風船振り落とし幕を一斉に振り落とすタイミングを電気信号により指示するタイミング指示ユニットと、制御ユニットを動作させる圧力を有する気体を供給する気体源とを備え、制御ユニットはタイミング指示ユニットからの電気信号に従い気体源から供給される気体の流れる方向を切換える電磁弁と、電磁弁から供給される気体をシリンダ容器に導入しピストンが気体圧力を受けることによりピストンロッドが直線的に移動するエアシリンダとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演出空間上方の水平材に懸架され、演出空間に振り落とす多数の風船を収容する複数の風船振り落とし幕と、
前記複数の風船振り落とし幕のそれぞれと対になり、振り落とすタイミングを制御する複数の制御ユニットと、
前記制御ユニットに、前記複数の風船振り落とし幕を一斉に振り落とすタイミングを電気信号により指示するタイミング指示ユニットと、
前記制御ユニットを動作させる圧力を有する気体を供給する気体源と、を備え、
前記制御ユニットは、
前記タイミング指示ユニットからの電気信号に従い、気体源から供給される気体の流れる方向を切換える電磁弁と、
前記電磁弁から供給される気体をシリンダ容器に導入し、シリンダ容器内のピストンが気体圧力を受けることによりピストンロッドが直線的に移動するエアシリンダと、を有し、
多数の風船を収容するために設けられている前記複数の風船振り落とし幕の開口部の端縁を、風船収容後に仕掛け紐で括り、括ったそれぞれの仕掛け紐を対になっている前記制御ユニットの前記ピストンロッドの先端部に引っ掛けておき、前記タイミング指示ユニットからの電気信号に従い、前記ピストンロッドが直線的に移動して前記仕掛け紐が前記ピストンロッドから外れることにより、前記複数の風船振り落とし幕が一斉に振り落とされ、収容されている多数の風船が演出空間中に放出されることを特徴とする風船振り落とし演出装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、さらに、前記ピストンロッドの先端部に嵌着されている、前記ピストンロッドの軸の中心線を含む一平面で切断した片側断面が横L字状の同心円筒形のロッドガイドと、
前記ピストンロッドの先端部の移動前後の位置にそれぞれ屹立し、前記ロッドガイドを摺動可能に穴が設けられている2つのロッドガイド支持金具と、
を備えることを特徴とする、請求項1記載の風船振り落とし演出装置。
【請求項3】
前記風船振り落とし幕は、風船を収容するための開口部を有する有底円筒形状の幕本体と、
前記幕本体の円形状の底面に、中心から所定距離の範囲に空気抜け用に形成されているメッシュ窓と、
前記幕本体の開口部の端縁に、開口部の開閉に用いられる前記仕掛け紐を通すために形成されている複数のハトメ穴と、
前記幕本体の胴体部に、円筒形状を維持するために維持するため配置されているばね性を有する円環状の枠状体と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の風船振り落とし演出装置。
【請求項4】
前記エアシリンダは、単動引込み形片ロッドシリンダであり、前記電磁弁は。ノーマルクローズ形3ポート2位置方向制御弁であることを特徴とする、請求項1又は2記載の風船振り落とし演出装置。
【請求項5】
前記気体源は、ヘリウム、アルゴン、窒素、空気、二酸化炭素のいずれかを組成とする圧縮ガス又は液化ガスを充填している移動可能な高圧ガス容器であることを特徴とする、請求項1又は2記載の風船振り落とし演出装置。
【請求項6】
前記風船振り落とし幕は、さらに、綿又は静電気防止処理済みの布からなることを特徴とする請求項3記載の風船振り落とし演出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンサートや披露宴、その他各種のイベントや式典での演出効果の1つとして「バルーンドロップ」と呼ばれる風船振り落とし技術に用いられる風船振り落とし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種イベント会場等で雰囲気を盛り上げる効果を得るため、演出空間に紙吹雪や多数の風船を上空から降らせる視覚的な演出方法が知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、2つの方法が開示されている。第1の方法は、大きなバルーンの中に小さい風船を多数詰めたものを必要数用意して天井に吊るし、大きなバルーンを割ることで中の小さな風船を演出空間に飛ばす方法である。第2の方法は、大きな矩形ネットの長辺側の両辺を釣り糸で緩く大きな波縫いで縫い合わせ、短辺側の開口から風船を多数詰めたものを、縫い目を下にして天井に括り付けておき、糸を引き抜くことで詰めておいた風船を天井から演出空間に降らせる方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】INTERIOR DESIGN BOXTET@EK海外の使えるインテリア術,「バルーンドロップの作り方 2種類 〔風船を降らせる方法〕」,[online],[令和5年6月5日検索],インターネット<URL:https://www.interiordesignbox.com/?p=3709>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし非特許文献1には、天井に吊るした必要数の大きなバルーンを具体的にどのような方法やタイミングで割るかやネットを縫い合わせている釣り糸をどのような方法で引き抜くかについては開示されていない。多くの場合、披露宴や比較的小規模なイベント会場では、少人数の担当者が合図に合わせ手動で行うことで可能であるが、コンサートのような大規模な会場では、大人数による人海戦術により手動で行う場合、音楽のある瞬間に合わせて演出空間全体に一斉に降らせることは、事前のリハーサルを行えず、人為的なミスを排除できないため至難の業となる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、イベント会場の規模に依らず、会場の上方の複数個所に仕掛けた多数の風船を演出空間全体にタイミングよく一斉に振り落とす風船振り落とし演出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の風船振り落とし演出装置は、演出空間上方の水平材に懸架され、演出空間に振り落とす多数の風船を収容する複数の風船振り落とし幕と、前記複数の風船振り落とし幕のそれぞれと対になり、振り落とすタイミングを制御する複数の制御ユニットと、前記制御ユニットに、前記複数の風船振り落とし幕を一斉に振り落とすタイミングを電気信号により指示するタイミング指示ユニットと、前記制御ユニットを動作させる圧力を有する気体を供給する気体源と、を備え、前記制御ユニットは、前記タイミング指示ユニットからの電気信号に従い、気体源から供給される気体の流れる方向を切換える電磁弁と、前記電磁弁から供給される気体をシリンダ容器に導入し、シリンダ容器内のピストンが気体圧力を受けることによりピストンロッドが直線的に移動するエアシリンダと、を有し、多数の風船を収容するために設けられている前記複数の風船振り落とし幕の開口部の端縁を、風船収容後に仕掛け紐で括り、括ったそれぞれの仕掛け紐を対になっている前記制御ユニットの前記ピストンロッドの先端部に引っ掛けておき、前記タイミング指示ユニットからの電気信号に従い、前記ピストンロッドが直線的に移動して前記仕掛け紐が前記ピストンロッドから外れることにより、前記複数の風船振り落とし幕が一斉に振り落とされ、収容されている多数の風船が演出空間中に放出されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の風船振り落とし演出装置は、前記制御ユニットは、さらに、前記ピストンロッドの先端部に嵌着されている、前記ピストンロッドの軸の中心線を含む一平面で切断した片側断面が横L字状の同心円筒形のロッドガイドと、前記ピストンロッドの先端部の移動前後の位置にそれぞれ屹立し、前記ロッドガイドを摺動可能に穴が設けられている2つのロッドガイド支持金具と、を備えることにより、ピストンロッドの先端部の移動前後の位置に、ピストンロッドが摺動可能に穴を設けたロッドガイド支持金具が屹立されてピストンロッドを支持することにより、ピストンロッドの許容横荷重が小さい小型のエアシリンダでも十分横荷重に耐えられ、ピストンロッドの先端部に嵌着されているロッドガイドにより、横荷重によるピストンロッド自体の歪み防止とピストンロッドを仕掛け紐を引っ掛ける際の指による前後の移動のし易さを実現している。
【0009】
請求項3に記載の風船振り落とし演出装置は、前記風船振り落とし幕は、風船を収容するための開口部を有する有底円筒形状の幕本体と、前記幕本体の円形状の底面に、中心から所定距離の範囲に空気抜け用に形成されているメッシュ窓と、前記幕本体の開口部の端縁に、開口部の開閉に用いられる前記仕掛け紐を通すために形成されている複数のハトメ穴と、前記幕本体の胴体部に、円筒形状を維持するために維持するため配置されているばね性を有する円環状の枠状体と、を備えることにより、単純な有底円筒形とすることにより数100個の風船を収容することができ、仕掛け紐をその太さに対して大きめの径のハトメ穴に通すことで開口部のスムーズな開閉が実現され、胴体部に配置されているばね性を有する円環状の枠状体により常に円筒形状を維持し、メッシュ窓から内部に空気が流入することにより、収容されている風船を一気に演出空間に放出することを可能とする。
【0010】
請求項4に記載の風船振り落とし演出装置は、前記エアシリンダは、単動引込み形片ロッドシリンダであり、前記電磁弁は、ノーマルクローズ形3ポート2位置方向制御弁であることにより、複動形のエアシリンダに比べ気体消費量が約半分で済み、複動形エアシリンダに用いる5ポート電磁弁に比べ小型で構造もシンプルで省電力が見込まれる。
【0011】
請求項5に記載の風船振り落とし演出装置は、前記気体源は、ヘリウム、アルゴン、窒素、空気、二酸化炭素のいずれかを組成とする圧縮ガス又は液化ガスを充填している移動可能な高圧ガス容器であることにより、高圧ガス容器に充填されている不燃性で不純物の少ない高圧ガスを使用するので、空気圧システムで一般に使用されるエアコンプレッサ、アフタークーラ、エアドライヤ、エアフィルタ、オイルミストセパレータ等を不要として装置全体の小型化を実現するとともに装置の安全性を高めることができる。
【0012】
請求項6に記載の風船振り落とし演出装置は、前記風船振り落とし幕は、さらに、綿又は静電気防止処理済みの布からなることにより、内部に収容されている風船と風船振り落とし幕との間で静電気を帯びて風船振り落とし幕に風船が吸い付くことを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、イベント会場の規模に依らず、特に、劇場、イベントホール、ドーム等の大面積の演出空間に、従来は大人数による人海戦術で風船を入れた大きなバルーンを割るか縫い合わせているネットの釣り糸を引くか手動で降らせていたので、時間的空間的にばらつきが生じていたものを、ボタンを押してからメトロノーム記号200(速度標語プレスティッシモ:極めて速く、約0.3秒以下)に相当するタイミングで多数の風船を一斉にかつ均一に放出することを可能とし、演出空間全体に演奏されている音楽等に合わせた優れた演出効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】風船振り落とし演出装置の全体構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示した空気回路記号で表した制御ユニットの構成例を示す図である。
【
図3】通常時の状態を表した制御ユニットの具体的な構造例を示す図である。
【
図4】動作時の状態を表した制御ユニットの具体的な構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
図1から
図5は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表し、基本的構成及び動作は同様であるものとする。
【実施例0016】
図1は、風船振り落とし演出装置の全体構成例を示す図である。
実施例1の風船振り落とし演出装置1は、気体源2、制御ユニット3、チューブ4、2分岐形チューブ継手5及び圧力計6からなる空気圧回路系、タイミング指示ユニット7、商用AC電源8、L(ライブ)線74、N(ニュートラル)線75及び分岐コネクタ76からなる電気回路系、及び風船振り落とし幕9で構成される。
図1は、空気圧回路系、電気回路系及び風船振り落とし幕9とこれら回路系との相対的な物理的位置関係を表し、上下2段に配置させた例を挙げ、便宜的に、上段側に通常時の状態、下段側に動作時又は動作後の状態を示している。
【0017】
まず、空気圧回路系について概要を説明する。なお、空気圧回路系は、JIS規格(B0125-1、2)に即して図記号及び回路図を表している。
気体源2は、高圧ガス容器21、減圧器(圧力制御弁)22及び圧力計23の最小機器で構成されている。この構成は、一般に、高圧ガス容器21に取付けられている高圧ガスバルブ(不図示)に、圧力計23付減圧器(圧力制御弁)22を直接取り付けることで実現され、高圧ガス容器21に充填されている非常に高い圧力状態の圧縮ガスを空気圧回路系で使用する圧力状態に減圧し、その圧力状態のガスを空気圧回路系に安定に維持して供給するためのものである。
【0018】
産業分野等で使用される空気圧システムでは、一般に、圧縮空気を作り出すエアコンプレッサ、圧縮直後で高温になっている圧縮空気を冷却するアフタークーラ、圧縮空気の水分を除去するエアドライヤ、圧縮空気中のゴミを除去するエアフィルタ、圧縮空気中の油粒子を分離除去するオイルミストセパレータ等を必要とするが、本実施例ではヘリウム、アルゴン、窒素、空気、二酸化炭素のいずれかを組成とする圧縮ガス又は液化ガスを充填している移動可能な高圧ガスボンベを高圧ガス容器21として採用することにより不燃性で不純物の少ない高純度な高圧ガスを使用できるので、これらの空気圧機器を不要としている。ここで「高圧ガス」とは、高圧ガス保安法に規定されている、常温において圧力が1MPa以上となる圧縮ガス、又は常温において圧力が0.2MPa以上となる液化ガスをいう。
【0019】
気体源2から供給される圧縮ガスは、要所要所を2分岐形チューブ継手5で繋いだチューブ4を通して複数の制御ユニット3に供給される。また、2分岐形チューブ継手5でチューブ4を分岐して繋ぐため、要所要所に圧縮ガスの圧力状態を計測する圧力計6が挿入されている。
【0020】
制御ユニット3は、筐体31、エアシリンダ32、電磁弁33及びチューブ34で主に構成されている。エアシリンダ32と電磁弁33は筐体31内に組み込まれ、両者間はチューブ34で繋がれている。
チューブ4を通して供給される圧縮ガスは、電磁弁33の入口ポート及び出口ポートを介しチューブ34を通じてエアシリンダ32に供給されることになる。
制御ユニット3のより具体的な構造及び動作については、
図2乃至4を用いて後述する。
【0021】
つぎに電気回路系について概要を説明する。なお電気回路系は、図記号について規定されているJIS規格(C0617)に即して表している。
タイミング指示ユニット7は、開閉器71、遮断器72及び押しボタン73で構成されている。タイミング指示ユニット7は、外部の商用AC電源8と接続され、要所要所を分岐コネクタ76で分岐接続したL線74及びN線75を介して複数の制御ユニット3の電磁弁33に接続され、押しボタン73が押されたときに電気信号を供給する。
供給される電気信号による電磁弁33の動作については、
図2乃至4を用いて後述する。
【0022】
つぎに風船振り落とし幕9について概要を説明する。
風船振り落とし幕9は、幕本体91、枠状体92、吊りロープ93及び仕掛け紐94で主に構成されている。
幕本体91は、内部に風船95を収容するための開口部を有する有底円筒形状をしており、風船95の収容や放出の際にその円筒形状を維持するために、少なくとも胴体部にばね性を有する円環状の枠状体92が嵌め込まれている。
幕本体91の底面側は、吊りロープ93でイベント会場のキャットウォークの欄干や照明バトン等の水平材96に懸架され、開口部は、風船95を収容後に仕掛け紐94で閉じられる。
風船振り落とし幕9の開口部を閉じた仕掛け紐94は、風船振り落とし幕9と対になる制御ユニット3のエアシリンダ32に引っ掛けられることにより、事前の仕掛けが完成する。
なお、風船振り落とし幕9と対になる制御ユニット3は、水平材96上に落下防止策を施して固定され、空気圧回路系のチューブ4、電気回路系のL線74及びN線75は、水平材96上に敷設されている。
【0023】
このように、風船振り落とし幕9と対になる制御ユニット3の設置数及び位置が決まれば、チューブ4を2分岐形チューブ継手5で繋ぎ合わせることで空気圧回路系が、またL線74及びN線75を分岐コネクタ76で分岐接続することで電気回路系が柔軟に構築可能であるため、風船振り落とし演出装置1をイベント会場の規模に依らず設置することができる。
【0024】
つぎに、
図1に示した制御ユニット3の空気回路記号について
図2を用いて説明する。
図2は、
図1に示した空気回路記号で表した制御ユニットの構成例を再掲したものである。
図2(A)は、通常時の状態を表した制御ユニットの空気回路記号による表示例である。
図2(B)は、動作時の状態を表した制御ユニットの空気回路記号による表示例である。
【0025】
空気回路記号はJIS規格(B0125-1)に即しており、エアシリンダ32は片ロッドシリンダ(単動引込み形、スプリングリターン)仕様を表している。
ピストン323の左側にのみピストンロッド322が設けられていることから片ロッドシリンダであることを示している。
シリンダ容器321内にから圧縮ガスが供給されると、
図2(A)の状態から
図2(B)の状態のように、ピストン323が右側に移動してピストンロッド322がシリンダ容器321内に引き込まれるので、ピストンロッド322が動く方向は一方向であることから単動、動く際にシリンダ容器321に引き込まれるので引込み形であることを示している。
また、圧縮ガスの供給が途絶えるとシリンダ容器321の右下隅に示す下三角印の排気口から供給された圧縮ガスが排気されてリターンスプリング324でピストン323の位置が
図2(B)の状態から
図2(A)の状態に戻るので、スプリングリターン仕様であることを示している。
【0026】
電磁弁33は、3ポート2位置方向制御弁(ノーマルクローズ形、電磁操作、スプリングリターン)仕様を表している。
中央に2つの正方形が横並びに並んでいることから2位置方向制御弁であることを示している。
そして、右側の正方形にはスプリング336でリターンされた通常状態が表され、左側の正方形にはソレノイド331が作動したときの状態が表されていることから、電磁操作、スプリングリターン仕様であることを示している。
右側の正方形から、入口ポート(P)332、排気ポート(R)333及び出口ポート(A)334の3ポートがあり、出口ポート(A)334から排気ポート(R)333に向けて矢印が描かれ、入口ポート(P)332に閉路を表すT字印が描かれていることからノーマルクローズ形仕様であることを示している。
また左側の正方形から、ソレノイド331が作動したとき入口ポート(P)332から出口ポート(A)334に向けて圧縮ガスが供給されることを示している。
【0027】
したがって、通常時はエアシリンダ32のピストンロッド322は、
図2(A)に示すように外に押し出された状態にあり、気体源2からチューブ4を通じて制御ユニット3に供給される圧縮ガスは、電磁弁33の入口ポート(P)332でストップした状態が維持される。
そしてリード線339を通じて電気信号が供給されると、電磁弁33のソレノイド331が作動して、圧縮ガスが入口ポート(P)332から出口ポート(A)334を経由してエアシリンダ32の配管ポート329に供給され、ピストンロッド322がシリンダ容器321内に引き込まれる状態になる。
【0028】
つぎに、
図3および
図4を用いて、制御ユニット3の具体的な構造例を説明する。
図3は、通常時の状態を表した制御ユニットの具体的な構造例を示す図である。
図3(A)は、通常時の状態を表した制御ユニットの断面構造例とエアシリンダの片側断面構造例を示す正面図である。
図3(B)は、通常時の状態を表した電磁弁の断面構造例を示す上面図である。
図4は、動作時の状態を表した制御ユニットの具体的な構造例を示す図である。
図4(A)は、動作時の状態を表した制御ユニットの断面構造例とエアシリンダの片側断面構造例を示す正面図である。
図4(B)は、動作時の状態を表した電磁弁の断面構造例を示す上面図である。
【0029】
実際の制御ユニット3は、
図3(A)及び
図4(A)から、筐体31、エアシリンダ32、電磁弁33、チューブ34の他に、基台35及び2つのロッドガイド支持金具36で構成されている。
また、実際のエアシリンダ32は、シリンダ容器321、ピストンロッド322、ピストン323、リターンスプリング324、配管ポート329の他に、ヘッドカバー325、ロッドカバー326、取付用ナット327、スプリング座328及びシリンダ容器321内部をシールする各種パッキン等で構成され、さらにピストンロッド322先端部にロッドガイド37が嵌着されている。
【0030】
エアシリンダ32は、筐体31の一端側の壁面に設けられた穴にピストンロッド322が外部に突き出るように取付用ナット327で固定されている。
電磁弁33は、筐体31内に組み込まれ、チューブ継手を介して圧縮ガスが供給されるように入口ポート(P)332が筐体31の側面に設けられた穴に固定され、また筐体31の他端側の壁面に設けられた穴(不図示)からリード線339を外部に取り出し分岐コネクタ76でL線74及びN線75に接続されている。
そしてエアシリンダ32の配管ポート329は、電磁弁33の出口ポート(A)334とチューブ継手を介してチューブ34で接続されている。
【0031】
筐体31は、水平材96上に制御ユニット3を確実に固定できるように、厚みのある基台35にネジ等で固定されており、基台35は、その両端に落下防止用の結束バンド等を挿通する穴が設けられている。
また、2つのロッドガイド支持金具36は、断面構造がL字形の板状金具でロッドガイド37が摺動可能なように穴が設けられており、その1つが
図3(A)に示すように通常時のピストンロッド322の先端位置に合わせて屹立して基台35にネジ等で固定され、もう1つが
図4(A)に示すように動作時のピストンロッド322の先端位置に合わせて屹立して固定されている。
【0032】
ロッドガイド37は、
図3(A)のように、ピストンロッド322の軸の中心線を含む一平面で切断したときの片側断面構造が横L字状の同心円筒形をしている。ピストンロッド322を嵌着している円筒部は、2本の細いロープを緩く鎖状に撚り合わせた仕掛け紐94を引っ掛けた際の横荷重に十分耐え、ピストンロッド322自体の歪みを防止するために軸を太くするものであり、後端の円板部は、指で把持して、仕掛け紐94をロッドガイド37に引っ掛ける際にピストンロッド322全体を前後に移動し易くするためのものである。
このように、2つのロッドガイド支持金具36及びロッドガイド37を採用したことにより、ピストンロッド322の許容横荷重が小さい小型のエアシリンダ32でもピストンロッド322自体の歪みを防止し、大きな横荷重でも十分耐えられる構造を実現している。
【0033】
実際の電磁弁33は、
図3(B)及び
図4(B)から、ソレノイド331、入口ポート(P)332、排気ポート(R)333、出口ポート(A)334、スプリング336、リード線339の他に、ソレノイド331に流れる電気信号により移動するプランジャ335、流路に設けられている弁座337、及びプランジャ335の両端に設けられている弁体338で構成されている。
【0034】
つづいて、制御ユニット3の動作について、
図3及び
図4を用いて説明する。
エアシリンダ32は、通常時、
図3(A)のようにリターンスプリング324の力でピストンロッド322が外に押し出された状態である。リターンスプリング324の力は、ロッドガイド37の円板部を指で把持してピストンロッド322をシリンダ容器321方向に容易に移動できる程度である。ロッドガイド37を指で後ろに引いて、2本の細いロープを緩く鎖状に撚り合わせた仕掛け紐94のロープ間にロッドガイド37を通して指を離すことで仕掛けが完成する。
仕掛け紐94からピストンロッド322が受けるべき横荷重は、ピストンロッド322の先端部を覆っているロッドガイド37が2つのロッドガイド支持金具36に支持され受けているため、ピストンロッド322には直接かからない構造となっている。
【0035】
電磁弁33は、通常時、
図3(B)のように外部から圧縮ガスが供給されている入口ポート(P)332が閉じられている状態である。プランジャ335に設けられている一方の弁体338は、スプリング336で弁座337に押し付けられている。
出口ポート(A)334は、内部は排気ポート(R)333と矢印の流路で接続されており、外部はエアシリンダ32の配管ポート329とチューブ34で接続されているので、エアシリンダ32内の圧縮ガスを排気ポート(R)333から外部に排出するようになっている。
【0036】
電磁弁33は、動作時、
図4(B)のようにリード線339から電気信号(電流)がソレノイド331に供給されるとプランジャ335が磁化し右上がり斜線部の固定鉄心に吸着されることにより、他方の弁体338が排気ポート(R)333の流路を閉じ、弁座337が開いて入口ポート(P)332と出口ポート(A)334とが矢印の流路で接続される。
したがって、外部から供給されている圧縮ガスは、エアシリンダ32の配管ポート329に供給される。
【0037】
エアシリンダ32は、動作時、
図4(A)のように配管ポート329から内部に圧縮ガスが導入され、その圧力でピストン323が押し込まれるのに従いピストンロッド322がシリンダ容器321内に引き込まれる。
それに伴い、仕掛け紐94がロッドガイド37から外れる。
【0038】
リード線339からソレノイド331に供給される電気信号(電流)が途切れると、プランジャ335が非磁化されスプリング336の力で
図3(B)の元の位置に戻り、エアシリンダ32内の圧縮ガスは、配管ポート329とチューブ34で接続されている電磁弁33の出口ポート(A)334を経由して排気ポート(R)333から外部へ排出される。そして、
図3(A)のように、ピストンロッド322は、リターンスプリング324の力で外に押し出され元の位置に戻る。
【0039】
つぎに、風船振り落とし幕9について
図5の具体例を用いて説明する。
図5は、風船振り落とし幕の構造例を示す図である。
図5(A)は、空の状態を表した風船振り落とし幕の構造例を示す図である。
図5(B)は、風船を収容し開口端縁を仕掛け紐で括っている状態の風船振り落とし幕の構造例を示す図である。
【0040】
実際の風船振り落とし幕9は、幕本体91、枠状体92、吊りロープ93、仕掛け紐94及び開口部911で構成され、幕本体91には、さらにハトメ穴912、メッシュ窓913、枠状体挿入筒部914、帯体915及び吊りロープ用フック916が形成されている。
【0041】
幕本体91は、具体的には、例えば外径が780mm~2000mmで長さが900mm~2200mmの黒布からなる。幕本体91は、シングル幅(900mm程度)~ダブル幅(1400mm程度)の生地を何枚か縫い合わせて形成されている。
図5(B)のように、幕本体91の内部に風船95を収容すると、風船95同士や幕本体91と風船95とが擦れて静電気が発生し、
図5(A)のように開口部911が開いても風船95が落ちないこともあるため、黒布は、静電気を生じ難い綿又は静電気防止処理済みの布を採用する。
【0042】
ハトメ穴912は、幕本体91の開口部911付近の端縁に、一定間隔おき(例えば300mmピッチ)に形成されている。2本の細いロープを緩く鎖状に撚り合わせた仕掛け紐94を
図5(A)のように通して、仕掛け紐94の両端を引っ張ることで
図5(B)のように括るようにして容易に開口部911を閉じて仕掛け、制御ユニット3から仕掛け紐94が外れた際に
図5(A)の形状に素早く戻ることができるように、仕掛け紐94の太さに比べ内径が十分大きいハトメ(例えば内径8mm~18mm)が採用されている。
メッシュ窓913は、
図5(B)のように幕本体91内部に多数の風船を収容していても外部から視認し難く、かつ
図5(A)のように開口部911が開いた際に収容されている風船が一斉に外に掃き出されるように外部から内部に空気が入る仕様とする。メッシュ窓913は、具体的には例えば幕本体91の外径の約半分程度の400mm~900mmで、メッシュ数400の合成繊維が用いられている。
【0043】
枠状体挿入筒部914は、幕本体91の内周に例えば幅70mm程度の別布を縫い代を考慮して縫い付けて筒状部を形成し、その表面の一部に開閉可能なファスナーを設けている。枠状体92は、ファスナー開口部から筒状部内に弾力を有する円筒状のエンジニアリングプラスチック(例えば直径6mm~20mm×長さ2000mm)を挿通して周回させることにより形成される。この枠状体92があることで、開口部911の開閉に拘わらず常に幕本体91は円筒形状を維持するので、収容されている風船の進路を塞ぐことなく一気に放出することができる。
【0044】
帯体915は、幕本体91の底面上に、例えば幅25mm、厚さ1.2mm程度のナイロン平ベルトを直接縫い付けて形成されている。帯体915は、幕本体91が吊りロープ93で吊下げられた際に、幕本体91の底面の形状が円板状を保持するための補強材としての役割を果たすため、底面に直交して2本縫い付けられている。
【0045】
吊りロープ用フック916は、帯体915を幕本体91の底面上に縫い付ける際に、帯体915を一部折り返して帯体915上に縫い付けることで円環状に形成されている。吊りロープ用フック916は、底面に直交して縫い付けられている2本の帯体915上で、例えば底面の中心から半径の1/2程度の等距離の位置に設けられ、全体で4カ所ある。このように配置することで、吊りロープ93を4つの吊りロープ用フック916に通して幕本体91が吊下げられると、幕本体91の底面全体にできるだけ均一の力が掛かるようになる。
【0046】
吊りロープ93は、例えばポリエステル製又は混紡、綿製で太さ6mm程度の金剛打ちロープを採用している。金剛打ちロープは、一般的な3打ちロープに比べ強度は低下するものの表面のゴツゴツ感が少なくよじれ難く耐摩耗性が優れており、中芯が入っているという特長を有しているからである。
仕掛け紐94は、例えばポリエチレン製で太さ3mm~4.5mm程度の細い2本のロープを緩く鎖状に撚り合わせたロープを採用している。仕掛け紐94は、2本の細いロープが撚り合わされた緩い鎖状間のどの位置にロッドガイド37を差し込んでも、ロープを結ぶなどの手間を要することなく仕掛けが完了できるという特長を有している。
【0047】
以上のような構成及び構造の風船振り落とし幕9は、それ自体として例えば約2kgの重量を有している。
例えば9インチサイズのゴム風船の場合、一般に直径が23cmで容積が7リットル程度であるので、風船振り落とし幕9には、200~400個の風船を収容することができる。ゴム風船の素材は2g、温度25℃のゴム風船内の圧縮空気の重さは1リットル当たり1.2gでゴム風船の容積は7リットル程度の場合、ゴム風船1個の重さは、約10.4gとなる。したがって、300個の風船を収容した風船振り落とし幕9の場合、2kg+10.4g×300=5.12kgとなる。この荷重が制御ユニット3の横荷重となる。
【0048】
つぎに、本実施例に用いる具体的な空気圧機器の仕様選定手順について説明する。
まずエアシリンダ32は、使用する圧縮ガスの圧力、負荷率η及び取り扱う荷重などを考慮してJIS規格(B8366-1)に準拠した市販品から選定するのが一般的である。
【0049】
使用する圧縮ガスの圧力は、減圧器22の2次側圧力範囲内で市販のエアシリンダの使用圧力範囲内となり、一般に0.5MPaで使用されることが多い。
【0050】
エアシリンダの負荷率ηは、以下の式で定義されている。
負荷率η=実際の負荷Fr/エアシリンダの理論推力Ft … (1)
負荷率ηは0~1の値で、一般的な目安として、クランプなどの静的作業の場合は0.7以下、負荷を水平・垂直に移動する動的作業の場合は0.5以下、負荷を水平に移動する際にリニアガイドを使用する動的作業の場合は1.0以下となる。
【0051】
本実施例では、エアシリンダ32を水平に移動する動的作業で、ロッドガイド37及び2つのロッドガイド支持金具36がリニアガイドの役割を果たしているとして、負荷率ηは0.5~1以下となる。
また、負荷を押して水平に移動させている訳ではないが、前述の横荷重5.12kgf(50N)がロッドガイド37にかかっている状態でピストンロッド322を水平に移動させているので、この横荷重を取り扱う荷重を実際の負荷Frとして計算することにする。
一般に、許容される横荷重は、実際の負荷Frの1/20以下が推奨されているが、ロッドガイド37及び2つのロッドガイド支持金具36があるため、この制約を受けないことになる。
【0052】
エアシリンダの理論推力Ftは、密閉された容器内では、圧力は容器内のすべての面に垂直に等しい大きさで伝わるというパスカルの原理に基づき、以下の式で定義される。
エアシリンダの理論推力Ft=使用圧力P×エアシリンダの受圧面積A … (2)
【0053】
本実施例のエアシリンダ32は、単動引込み形片ロッドシリンダであるので、シリンダ容器321内に配管ポート329から圧縮ガスが導入される際の受圧面積Aは、シリンダ容器321の内径=ピストン323の直径をD(mm)とし、ピストンロッド322の外径をd(mm)とすると、以下の式で定義される。
A=π×(D2-d2)/4 … (3)
【0054】
式(1)~(3)より、シリンダ容器321の内径Dとピストンロッド322の外径dは、次式のように表せる。
√(D2-d2)=√[4×Fr/(P×π×η)] … (4)
実際の負荷Frが50N、使用圧力Pが0.5MPa、負荷率ηが0.5とすると、式(4)から、
√(D2-d2)=√[4×50/(0.5×π×0.5)]
≒√254.8
≒16mm … (5)
負荷率ηを1.0とすると、
√(D2-d2)=√[4×50/(0.5×π×1.0)]
≒√127.4
≒11mm … (6)
【0055】
JIS規格(B8366-1)では、シリンダ容器321の内径Dは、8mm、10mm、12mm、16mm、20mm、…、ピストンロッド322の外径dは、4mm、5mm、6mm、…と規定されており、これらの組合せの中から式(5)~(6)の値を満足する市販品の仕様を選定することになる。
例えば、シリンダ容器321の内径Dを16mm、ピストンロッド322の外径dを5mmとする市販品であれば、負荷率ηを0.6~1.0の範囲で満足することになる。
【0056】
そして上記のシリンダ容器321の内径D及びピストンロッド322の外径dの値を満たす市販品のうち、ピストンロッド322の水平移動量(ストロークL)ができるだけ短い15mmで、ピストン323の移動速度vが50~750mm/s、最高使用圧力Pmaxが0.7MPaのものを選定した(例えば、SMC株式会社製CJ2B16-15TZ)。したがって、2つのロッドガイド支持金具36間の間隔は、15mmとなる。
これは、ピストンロッド322を1回水平移動させるときの瞬間ガス消費量を少なくし、コンサート会場に流れる楽曲の一瞬のタイミングに合わせられるようにメトロノーム記号200(速度標語プレスティッシモ:極めて速く)に相当する約0.3秒以下でピストンロッド322の水平移動を完了させるという観点からである。
【0057】
移動時間tは、次式で表される。
t=ストロークL/移動速度v … (7)
選定したエアシリンダ32では、移動速度vが一番遅い50mm/sの場合に、移動時間t=15/50=0.3秒となるので仕様を満足する。
【0058】
エアシリンダ当たりの瞬間ガス消費量Qの計算は、一般に、20℃、1気圧(0.1MPa)、相対湿度65%という標準状態(ANR)の空気において、以下の式で定義される。
Q=受圧面積A×ストロークL
×[(使用圧力P+0.1)/0.1]×10-6 … (8)
式(3)の受圧面積Aから、
Q=π×(D2-d2)/4×L×[(P+0.1)/0.1]×10-6 …(9)
=π×(162-52)/4×15×0.6/0.1×10-6
≒0.016リットル(ANR)
【0059】
つぎに、電磁弁33、チューブ4及びチューブ34のサイズ(有効断面積)の選定について説明する。
空気圧回路系の流路が一部で狭くなっていると、その前後で圧縮ガスの流れる状態が変化するため圧力差が生じ、エアシリンダ32への供給量が制限されることになる。
流路の最小面積を有効断面積S、上流側の圧力をP1、下流側の圧力をP2とすると、瞬間ガス消費量Qと有効断面積S(mm2)との関係は、実用上、以下の簡易式で表される。
Q=226×有効断面積S×√[P2×(P1-P2)] … (10)
S=Q/[226×√{P2×(P1-P2}] … (11)
P1を使用圧力P=0.5MPa、P2を15%程度降下すると仮定して0.42MPaとすると、
S=0.016リットル(ANR)/[226×√(0.42×0.08)]
=0.016/41.4
≒0.0004mm2 … (12)
【0060】
実際の電磁弁33のカタログには、音速コンダクタンスC(dm3/(s・bar))が記載されており、有効断面積Sから次式で換算される。
C=0.2×有効断面積S … (13)
C=0.2×0.0004
≒0.00008dm3/(s・bar) … (14)
したがって、音速コンダクタンスCが0.00008dm3/(s・bar)以上の仕様を有するノーマルクローズ形の3ポート2位置方向制御弁を市販品の中から選定すればよく、例えば、使用圧力範囲が0~0.7MPa、管接続口径がM5×0.8、音速コンダクタンスCが1300倍以上の裕度がある0.11dm3/(s・bar)の市販品を採用した(例えば、SMC株式会社製VZ110-1G-M5-F)。
【0061】
チューブについての有効断面積Stの計算は、チューブの内径をdt(mm)、チューブの摩擦係数をλ、チューブの長さLt(mm)とすると次式で表される。
St=π×dt2/[4×√{λ×(Lt/dt)+1] … (16)
樹脂製チューブの摩擦係数λは0.013で、例えばチューブの長さLtが1m~20mで内径dtが2.5mmのとき、上式から有効断面積Stは1.97~0.48mm2、内径dtが4mmのとき、有効断面積Stは6.1~1.55mm2と式(12)の値の6000倍から1900倍以上の裕度を有するので、チューブ4には外径6mm×内径4mmの樹脂チューブを採用し(例えば、ニッタ株式会社製U2-6-4)、チューブ34には筐体31内部の取り回しのし易さから外径4mm×2.5mmを採用した(例えば、ニッタ株式会社製U2-4-4×2.5)。
チューブ4は、2分岐形チューブ継手5(例えば、ニッタ株式会社製ワンタッチ継手EUT6)で多段に接続され総延長距離がかなり長くなる場合があるが、仮に総延長距離が800mの場合でも、式(16)によれば有効断面積Stは0.25となり、式(12)の値の3000倍以上の裕度を有することになる。
【0062】
今回採用したエアシリンダ32の仕様は、外形寸法としてシリンダ容器321の長さが73.5mm、外径18.3mm、ピストンロッド322の外径5mm、ストローク15mm、配管ポート329径M5×0.8、使用圧力範囲0.15MPa~0.7MPaである。そして横荷重に耐えるため、ロッドガイド37の円筒部の外径は8mm~9mm、円板部の外径は20mm程度とした。
電磁弁33の仕様は、外形寸法48mm×23mm×15mm、管接続口径M5×0.8、使用圧力範囲0~0.7MPa、皮相電力4.5VA/50Hzである。
なお、電磁弁33の応答時間は0.015秒以下で、本来は、エアシリンダ32の移動時間とともに考慮しなければならないが、メトロノーム記号200に相当する約0.3秒の1/20以下なので本実施例では無視できる範囲である。
【0063】
筐体31は、これらの機器を内部に無理なくコンパクトに収容するため、厚さ2mm程度のアルミ製で外形115mm×62mm×60mmとし、厚さ5mm程度で190mm×60mmの基台35上にねじ止めしている。
チューブ4から圧縮ガスの供給を受け入れる電磁弁33の入口ポート(P)332には管接続口径M5×0.8、チューブ外径6mmに合うコネクタ(例えば、ニッタ株式会社製ワンタッチ継手EC6-M5)が直に付けられ、筐体31の側面から突出できるように10mm程度の穴が設けられている。
また電磁弁33の出口ポート(A)334及び配管ポート329にもそれぞれ管接続口径M5×0.8、チューブ外径4mmに合うコネクタ(例えば、ニッタ株式会社製ワンタッチ継手EC4-M5)が直に付けられ、長さ150mm程度のチューブ34で接続されている。
【0064】
つぎに、具体的な気体源2の選定手順について説明する。
まず、実際の風船振り落とし演出装置は、
図1のように複数台の制御ユニット3が配置されているので、装置全体のガス消費量を見積もる。
制御ユニット3内で圧縮ガスを消費するものとしては、エアシリンダ32、電磁弁33及びチューブ34がある。エアシリンダ32の瞬間ガス消費量をQ1、電磁弁33の瞬間ガス消費量Q2をエアシリンダ32と同量と仮定し、チューブ34の長さLtを150mm程度としたときのチューブの瞬間ガス消費量をQ3とすると、制御ユニット3当たりの瞬間ガス消費量Q0は、式(9)に基づき以下のように見積もる。
Q0=Q1+Q2+Q3 … (16)
Q1=Q2=0.016リットル(ANR) … (17)
Q3=π×dt
2/4×Lt×[(P+0.1)/0.1]×10
-6 … (18)
=π×2.5
2/4×150×0.6/0.1×10
-6
≒0.143リットル(ANR)
したがって制御ユニット3当たりの瞬間ガス消費量Q0は、0.032+0.143=0.175と見積もれる。
仮に、制御ユニット3を80台設置し、チューブ4の総延長距離が800mの場合、装置全体の瞬間ガス消費量Qalは、式(18)に基づき以下のように見積もる。
Qal=制御ユニット3当たりの瞬間ガス消費量Q0×ユニット台数
+チューブ4の瞬間ガス消費量Q4 … (18)
Q4=π×4
2/4×800×10
3×0.6/0.1×10
-6 … (19)
≒60リットル(ANR)
Qal=0.175×80+60 … (20)
≒14+60=74リットル(ANR)
したがって、高圧ガス容器21の高圧ガスバルブ(不図示)を開き減圧器22の圧力計23の圧力計が使用圧力値0.5MPaを示した通常時に、まずチューブ4の瞬間ガス消費量Q4の60リットルが消費され、タイミング指示ユニット7の押しボタン73が押された動作時に制御ユニット3での14リットルが消費されると見積もれる。
【0065】
市販されている空気ボンベの仕様は、内容積4リットル、6リットルで充填圧力29MPa(290気圧)のものと、内容積8リットルで充填圧力15MPa(150気圧)のものが一般的であり、使用可能な空気量は、それぞれ1160リットル、1740リットル、1200リットルとなる。
したがって、本実施例の風船振り落とし演出装置で、高圧ガス容器21として6リットルの空気ボンベを採用した場合、1本で23.5回程度使用できる。
【0066】
減圧器22は、空気や酸素などに使用する通常の圧力計23付減圧器22を採用した(例えば、小池酸素工業株式会社製セフティゴールド(登録商標)-V)。
【0067】
最後に電気回路系について説明する。
イベント会場から供給される電源は、国内では電源1系統当たり、通常100V交流(AC)15Aである。
そこでタイミング指示ユニット7を構成する開閉器71及び遮断器72には、この仕様に即した市販品を選定する。例えば、開閉器71として定格15Aのスリムサーキットブレーカ(例えば、日東工業株式会社製NX51A 2P 15A)、遮断器72として定格15Aのサーキットブレーカ(例えば、日東工業株式会社製NE52C 2P 15A)を採用した。
押しボタン73については、前述したように電磁弁33の1台当たりの皮相電力が4.5VA/50Hzで、80台を同時に動作させると360VA、すなわち3.6A以上の仕様を有し、ボタンを押している間だけON状態になるモーメンタリ形が求められ、例えば、定格10Aの(例えば、IDEC株式会社製φ22HWシリーズ)を採用した。
実際のタイミング指示ユニット7は、これらの機器をある程度の大きさの平板上に木ネジ等で固定し、例えばアタッシュケース等に収納して使用している。
【0068】
L線74及びN線75については、例えば、交流300V以下、定格12A、撚り線の導体の断面積が1.25mm2で塩化ビニルコンパウンドで絶縁被覆された平行線コード(例えば、VFF1.25)を取り回しのしやすさから採用した。
また、分岐コネクタ76については、敷設現場の作業のし易さ及び安全性の観点から、平行線コードの撚り線の導体を挿入口に挿入後レバーを倒すことで簡単かつ確実にクランプされるコネクタ(例えば、ワゴジャパン株式会社製222-413)を採用した。
【0069】
このように、本発明の実施例1によれば、上記構成を採用することで、劇場、イベントホール、ドーム等の大面積の演出空間に、約0.3秒以下のタイミングで合計例えば100個~32000個以上の多数の風船を一斉にかつ均一に放出する装置の構築を可能とし、演出空間に演奏されている音楽等に合わせた優れた演出効果を提供することができる。
コンサートツアーの場合等、同一会場又は複数の会場で連日行われることもあるので、ボンベ1本でより多くの回数使用できるように、本実施例では空気に代えて炭酸ガス(CO2)を使用する。
炭酸ガス(CO2)の分子量は44なので、0℃、1気圧の状態で、モル質量が44g/mol、モル体積が22.4リットル/モルであるから、20℃のときの炭酸ガス1kg当たりの容量Vは、次式で換算できる。
V=(モル体積/モル質量)×1000g×(273+温度℃)/273 …(21)
=(22.4/44)×1000×(273+20)/273
≒546.3リットル
したがって炭酸ガス(CO2)1kg当たりで7.3回程度使用できることになる。
市販されている炭酸ガスボンベで持ち運びし易い仕様には、CO2充填量が1kg、2.5kg、5kg、7kgがあるので、本実施例では、高圧ガス容器21として7kgの炭酸ガスボンベを採用した。7kgの炭酸ガスボンベの容量は3824リットルになるので、ボンベ1本で51回程度使用できる。
炭酸ガスボンベには、液化炭酸ガスが充填されるため、連続して使用すると断熱膨張でボンベ内の温度と圧力が下がり、減圧器22が凍結してガスが流れなくなる場合があるため、通常、ヒーター付きや加温器付きの減圧器22が必要になるが、本実施例では、ガスの使用量も少なく、瞬間的な使用に限られるので、空気や酸素などに使用する通常の圧力計23付減圧器22で構わない。また、空気圧回路系のどこかで漏れがあるとその部分が白く凍結するので、漏洩個所を早期発見できるなど系統チェックにも便利である。
なお、空気や炭酸ガスのほか、不活性ガスであるヘリウム、アルゴン、窒素を用いてもよい。
このように、高圧ガスの種類やガスボンベの容量を変えることにより、1本のガスボンベで多数回の使用が可能となり、気体源2の小型化と装置の安全性を高めることができる。
以上、本発明の風船振り落とし演出装置について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態又は他の実施形態にかかる発明の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
例えば、本発明の実施例1によれば、エアシリンダ32として単動引込み形片ロッドシリンダを、また電磁弁33としてノーマルクローズ形3ポート2位置方向制御弁を採用したが、エアシリンダ32として複動形片ロッドシリンダを、また電磁弁33として5ポート2位置方向制御弁又は3ポート2位置方向制御弁2台を採用することも可能である。
複動形シリンダは、押し引き両方向の動作に圧縮空気を用いるため、圧縮空気の消費量が倍になるが、最も普及している部品で入手しやすいという利点がある。