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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007953
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20250109BHJP
   G01L 3/10 20060101ALI20250109BHJP
   F16C 35/077 20060101ALI20250109BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62D5/04
G01L3/10 305
F16C35/077
F16C19/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109729
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰伸
(72)【発明者】
【氏名】山村 浩之
【テーマコード(参考)】
3D333
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CC14
3D333CC30
3D333CC45
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD06
3D333CD08
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD21
3D333CE06
3D333CE09
3D333CE12
3D333CE17
3D333CE19
3D333CE21
3D333CE31
3D333CE34
3D333CE40
3J117AA01
3J117CA04
3J117DA01
3J117DB10
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701FA31
3J701GA01
(57)【要約】
【課題】軸受の寿命を高めることのできるステアリング装置を提供すること。
【解決手段】ステアリングホイール81から入力されるトルクにより回転するステアリングシャフト82と、内側にステアリングシャフト82を配置するハウジング20と、ステアリングシャフト82をハウジング20に対して回転自在に支持し、且つ、ハウジング20からステアリングシャフト82の軸方向における予圧が付与される軸受70と、ハウジング20の内側と外側とを連通し、軸方向における位置が互いに同じ位置でステアリングシャフト82の周方向に互いに離隔してハウジング20に設けられる複数の孔部45と、複数の孔部45のうちの1つの孔部45に集磁ヨークアッセンブリ61が挿入され、ステアリングシャフト82の回転に伴う物理量の変化を検出するトルクセンサ60と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールから入力されるトルクにより回転するステアリングシャフトと、
内側に前記ステアリングシャフトを配置するハウジングと、
前記ステアリングシャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持し、且つ、前記ハウジングから前記ステアリングシャフトの軸方向における予圧が付与される軸受と、
前記ハウジングの内側と外側とを連通し、前記軸方向における位置が互いに同じ位置で前記ステアリングシャフトの周方向に互いに離隔して前記ハウジングに設けられる複数の孔部と、
複数の前記孔部のうちの1つの前記孔部に少なくとも一部が挿入され、前記ステアリングシャフトの回転に伴う物理量の変化を検出するセンサと、
を備えるステアリング装置。
【請求項2】
複数の前記孔部は、前記周方向において等間隔で配置される請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記軸受を支持すると共に複数の前記孔部を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングに対してボルトにより前記軸方向に連結される第2ハウジングとを有し、
前記ボルトは、前記第1ハウジングが有する複数の前記孔部と同じ数が設けられる請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記ボルトは、前記周方向おいて隣り合う前記孔部同士の間の位置に1つずつ配置される請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記センサの前記一部が挿入される前記孔部と異なる前記孔部のうち少なくとも1つの前記孔部は、前記ハウジングの内側に入り込んだ液体を前記ハウジングの外側に排出するドレイン孔として用いられる請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項6】
補助操舵トルクを発生する電動モータと、
前記ステアリングシャフトに固定され、前記電動モータで発生した補助操舵トルクを前記ステアリングシャフトに伝達するウォームホイールと、
を備え、
前記ウォームホイールは、前記軸受に対して前記軸方向において前記ステアリングホイールが配置される側の反対側に配置され、
前記軸受は、シール部材を有する前記軸受である請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項7】
複数の前記孔部は、互いに同じ形状で形成される請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項8】
補助操舵トルクを発生する電動モータと、
前記ステアリングシャフトに固定され、前記電動モータで発生した補助操舵トルクを前記ステアリングシャフトに伝達するウォームホイールと、
を備え、
前記センサの前記一部は、複数の前記孔部のうち前記電動モータからの距離が最も近い前記孔部に挿入される請求項1または2に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の操舵をアシストする操舵装置では、運転者による操舵トルクをトルクセンサによって検出し、検出した操舵トルクに応じてモータの出力を出力軸に伝達することにより、運転者の操舵のアシストを行う。例えば、特許文献1に記載されたステアリング装置では、ウォームホイールが一体回転可能に連結される出力シャフトをベアリングによって回転自在に支持し、電動モータの回転軸に組み付けられたウォームをウォームホイールと噛合させて電動モータの出力を出力シャフトに伝えることが可能になっている。
【0003】
また、特許文献1に記載されたステアリング装置は、運転者による操舵トルクを検出するトルクセンサを備えており、トルクセンサで検出した操舵トルクに基づいて電動モータの出力を制御することにより、操舵トルクを補助する補助トルクを得ている。特許文献1では、操舵トルクを検出するトルクセンサは、出力シャフトを回転自在に支持するベアリングを支持する第一ケースに取り付けられており、第一ケースは、第一ケースが支持するベアリングとは異なるベアリングを支持する第二ケースに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-204755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャフトを回転自在に支持する軸受は、特許文献1のように、異なる軸受をそれぞれ異なるハウジングで支持し、軸受を支持するハウジング同士は、特許文献1において第一ケースと第二ケースとが連結されるように、ハウジング同士を互いに連結する。これにより、軸受を支持するハウジングは、軸受に対して軸方向の予圧を付与することができ、予圧で軸受の外輪と内輪との軸方向の相対移動を抑えることにより、軸受によってシャフトを支持する際における軸方向の支持剛性を高めることができる。
【0006】
ここで、軸受を支持するハウジングに、トルクセンサにおける検出部を取り付ける際には、ハウジングの内側と外側とを連通する孔をハウジングに形成し、ハウジングの孔にトルクセンサの検出部を挿入することによってハウジングに取り付けることになる。しかしながら、ハウジングに孔を形成した場合、当該ハウジングで支持するベアリングとは異なるベアリングを支持するハウジングに、孔が形成されるハウジングを連結する際に、孔が形成されるハウジングからベアリングに対して予圧を付与する際におけるハウジングの撓みが、ベアリングの周方向において不均衡になり易くなる。
【0007】
つまり、ベアリングの周方向におけるハウジングの一部分に、トルクセンサの検出部を挿入するための孔を形成した場合、周方向における孔が形成される部分と、孔が形成される部分以外の部分とでは、ハウジングの剛性に差が発生し易くなり、ハウジングの剛性は周方向において不均衡になり易くなる。この場合、ハウジング同士を連結することによって軸受に予圧を付与する際に、ハウジングから軸受に対して付与する予圧が、周方向におけるハウジングの剛性の不均衡に伴って不均衡になり易くなり、軸受は、不均衡な予圧が付与されることに起因して寿命が短くなる可能性がある。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、軸受の寿命を高めることのできるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のステアリング装置は、ステアリングホイールから入力されるトルクにより回転するステアリングシャフトと、内側に前記ステアリングシャフトを配置するハウジングと、前記ステアリングシャフトを前記ハウジングに対して回転自在に支持し、且つ、前記ハウジングから前記ステアリングシャフトの軸方向における予圧が付与される軸受と、前記ハウジングの内側と外側とを連通し、前記軸方向における位置が互いに同じ位置で前記ステアリングシャフトの周方向に互いに離隔して前記ハウジングに設けられる複数の孔部と、複数の前記孔部のうちの1つの前記孔部に少なくとも一部が挿入され、前記ステアリングシャフトの回転に伴う物理量の変化を検出するセンサと、を備える。
【0010】
この構成によれば、ハウジングには複数の孔部が設けられ、ハウジングに形成される複数の孔部のうちの1つの孔部には、ステアリングシャフトの回転に伴う物理量の変化を検出するセンサの少なくとも一部が挿入される。これにより、ハウジングにセンサの一部を配置するための孔部をハウジングに設けることに起因して、ハウジングの剛性が、周方向において孔部が形成される一部分のみで低くなることを抑制できる。このため、ハウジングの剛性が周方向における一部分のみで低くなることに起因して、ハウジングから軸受に付与する予圧が、周方向における一部のみで小さくなることを抑制することができる。従って、軸受に作用する荷重が、周方向における一部の位置で局所的に大きくなることを抑制することができ、軸受に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができる。この結果、軸受の寿命を高めることができる。
【0011】
望ましい形態として、複数の前記孔部は、前記周方向において等間隔で配置される。
【0012】
この構成によれば、複数の孔部は、周方向において等間隔で配置されるため、孔部によってハウジングの剛性が低くなる部分を、周方向において分散することができる。これにより、ハウジングから軸受に対して付与する予圧が局所的に低くなることを抑制することができるため、軸受に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができる。この結果、軸受の寿命を高めることができる。
【0013】
望ましい形態として、前記ハウジングは、前記軸受を支持すると共に複数の前記孔部を有する第1ハウジングと、前記第1ハウジングに対してボルトにより前記軸方向に連結される第2ハウジングとを有し、前記ボルトは、前記第1ハウジングが有する複数の前記孔部と同じ数が設けられる。
【0014】
この構成によれば、第1ハウジングと第2ハウジングとを連結するボルトは、第1ハウジングが有する複数の孔部と同じ数が設けられるため、第1ハウジングと第2ハウジングとをボルトによって連結した際に、軸受に対する予圧が大きくなる部分を、孔部の数と同じ数にして分散することができる。これにより、第1ハウジングから軸受に付与する予圧を、第1ハウジングに形成される複数の孔部に合わせて周方向において分散して付与することができる。従って、軸受に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができ、軸受の寿命を高めることができる。
【0015】
望ましい形態として、前記ボルトは、前記周方向おいて隣り合う前記孔部同士の間の位置に1つずつ配置される。
【0016】
この構成によれば、第1ハウジングと第2ハウジングとを連結するボルトは、周方向おいて隣り合う孔部同士の間の位置に1つずつ配置されるため、第1ハウジングの撓みにより軸受への予圧が小さくなる部分と、ボルトの締結力によって予圧が大きくなる部分とを、周方向において交互に発生させることができる。これにより、第1ハウジングから軸受に付与する予圧を、周方向において交互に配置される孔部とボルトとによって、周方向において分散して付与することができる。従って、軸受に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができ、軸受の寿命を高めることができる。
【0017】
望ましい形態として、前記センサの前記一部が挿入される前記孔部と異なる前記孔部のうち少なくとも1つの前記孔部は、前記ハウジングの内側に入り込んだ液体を前記ハウジングの外側に排出するドレイン孔として用いられる。
【0018】
この構成によれば、センサの一部が挿入される孔部と異なる孔部のうちの少なくとも1つの孔部はドレイン孔として用いられるため、ハウジングの内側に水等の液体が入り込んだ際に、液体をドレイン孔からハウジングの外側に排出することができる。これにより、ハウジングの内側に液体が入り込んだ場合でも、浸入した液体がハウジングの内側に溜まることを抑制でき、センサに液体が付着することを抑制することができる。この結果、ステアリングシャフトの回転に伴う物理量の変化をセンサによって検出する際に、センサに液体が付着することに起因する物理量の誤検知を抑制することができる。
【0019】
望ましい形態として、補助操舵トルクを発生する電動モータと、前記ステアリングシャフトに固定され、前記電動モータで発生した補助操舵トルクを前記ステアリングシャフトに伝達するウォームホイールと、を備え、前記ウォームホイールは、前記軸受に対して前記軸方向において前記ステアリングホイールが配置される側の反対側に配置され、前記軸受は、シール部材を有する前記軸受である。
【0020】
この構成によれば、ウォームホイールよりもステアリングホイールが配置される側に配置される軸受が、シール部材を有することにより、ハウジングの内側に水等の液体が入り込んだ場合でも、液体がウォームホイール側に流れることを、軸受によって抑制することができる。これにより、液体がウォームホイールに付着することによるウォームホイールの腐食を抑制することができ、ウォームホイールを含む減速装置の寿命を高めることができる。
【0021】
望ましい形態として、複数の前記孔部は、互いに同じ形状で形成される。
【0022】
この構成によれば、ハウジングに形成される複数の孔部は、互いに同じ形状で形成されるため、ステアリングシャフトの回転に伴う物理量の変化を検出するセンサの一部は、いずれの孔部に対しても挿入することができる。これにより、孔部にセンサの一部を挿入してセンサを配置する際における、レイアウトの自由度を高めることができる。これにより、例えば、右ハンドルの車両に搭載されるステアリング装置のハウジングの金型と、左ハンドルの車両に搭載されるステアリング装置のハウジングの金型とを、共用することができる。この結果、ステアリング装置の製造コストを抑えることができる。
【0023】
望ましい形態として、補助操舵トルクを発生する電動モータと、前記ステアリングシャフトに固定され、前記電動モータで発生した補助操舵トルクを前記ステアリングシャフトに伝達するウォームホイールと、を備え、前記センサの前記一部は、複数の前記孔部のうち前記電動モータからの距離が最も近い前記孔部に挿入される。
【0024】
この構成によれば、センサの一部を、複数の孔部のうち、電動モータからの距離が最も近い孔部に挿入するため、外部の磁性体がセンサの一部に近づくことを電動モータによって遮ることができる。これにより、外部の磁性体がセンサに近づくことに起因して、磁性体からの磁力によってセンサが誤検知をすることを抑制することができる。この結果、センサによる、ステアリングシャフトの回転に伴う物理量の変化の検出精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示に係るステアリング装置は、軸受の寿命を高めることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態に係るステアリング装置の模式図である。
図2図2は、実施形態に係るステアリングコラムの要部断面図である。
図3図3は、図2におけるトルクセンサが配置されている部分付近の詳細図である。
図4図4は、図3のA-A方向から見た孔部とボルトとの相対的な位置関係を示す模式図である。
図5図5は、第1ハウジングの本体部にセンサ挿入孔のみが形成される場合の模式図である。
図6図6は、第1ハウジングの本体部に孔部が複数形成される場合の模式図である。
図7図7は、右ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラムの集磁ヨークアッセンブリと電動モータの配置関係を示す説明図であり、図3のB-B方向から見た説明図である。
図8図8は、図3に示すステアリングコラムを左ハンドルの車両に搭載した場合の集磁ヨークアッセンブリの配置位置を示す要部断面図である。
図9図9は、図8のC-C方向から見た集磁ヨークアッセンブリと電動モータの配置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るステアリング装置80の模式図である。図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングコラム10と、電動モータ111と、減速装置112と、ユニバーサルジョイント101と、中間シャフト102と、ユニバーサルジョイント103と、を備えピニオンシャフト104に接合されている。以下の説明においては、ステアリングシャフト82の中心軸AXに沿った方向を「軸方向」と称し、軸方向に交差(直交)する方向を「径方向」と称し、軸方向を中心とする周方向を「周方向」と称する。また、以下の説明では、ステアリング装置80が搭載される車両の通常の使用状態における上側をステアリング装置80においても上側として説明し、車両の通常の使用状態における下側をステアリング装置80においても下側として説明し、車両の通常の使用状態における水平方向をステアリング装置80においても水平方向として説明する。
【0029】
ステアリングコラム10には、ステアリングシャフト82とトルクセンサ60とが配置される。ステアリングシャフト82は、アッパシャフト83と、ロアシャフト84(図2参照)と、出力軸85と、トーションバー86(図2参照)と、を備える。ステアリングコラム10については、詳細に後述する。
【0030】
中間シャフト102は、ユニバーサルジョイント101とユニバーサルジョイント103とを連結している。中間シャフト102は、一方の端部がユニバーサルジョイント101に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント103に連結される。ピニオンシャフト104は、一方の端部がユニバーサルジョイント103に連結され、他方の端部がステアリングギヤ105に連結される。ユニバーサルジョイント101及びユニバーサルジョイント103は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト82の回転が中間シャフト102を介してピニオンシャフト104に伝わる。従って、中間シャフト102はステアリングシャフト82と共に回転可能である。
【0031】
ステアリングギヤ105は、ピニオンギヤ105aと、ラックバー105bとを備える。ピニオンギヤ105aは、ピニオンシャフト104に連結される。ラックバー105bは、ピニオンギヤ105aに噛み合う。ステアリングギヤ105は、ピニオンギヤ105aに伝達された回転運動をラックバー105bで直進運動に変換する。ラックバー105bは、タイロッド106に連結される。ラックバー105bが移動することで車輪の角度が変化する。即ち、ステアリング装置80は、ラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置である。
【0032】
ステアリング装置80は、ECU(Electronic Control Unit)110と、車速センサ115と、を更に備える。電動モータ111、車速センサ115及びトルクセンサ60は、ECU110と電気的に接続される。減速装置112は、電動モータ111に取り付けられる。トルクセンサ60は、ステアリングシャフト82に伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU110に出力する。車速センサ115は、ステアリング装置80が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ115は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU110に出力する。
【0033】
ECU110は、電動モータ111の動作を制御する。ECU110は、トルクセンサ60及び車速センサ115のそれぞれから信号を取得する。ECU110には、イグニッションスイッチ116がオンの状態で、電源装置117(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU110は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU110は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ111へ供給する電力値を調節する。ECU110は、電動モータ111の誘起電圧の情報または電動モータ111に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU110が電動モータ111を制御することで、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0034】
次に、ステアリングコラム10について説明する。図2は、実施形態に係るステアリングコラム10の要部断面図である。ステアリングコラム10は、ハウジング20と、ステアリングシャフト82と、トルクセンサ60とを有している。ステアリングシャフト82は、一端にステアリングホイール81(図1参照)が取り付けられるステアリングホイール取付部82aを有し、ステアリングホイール81から入力されるトルクにより回転可能に配置される。ステアリングシャフト82は、アッパシャフト83と、ロアシャフト84と、出力軸85と、トーションバー86とを有しており、アッパシャフト83とロアシャフト84と出力軸85とトーションバー86とは、同軸上に配置されている。
【0035】
ステアリングコラム10は、車両の平面視においてステアリングシャフト82の軸方向が車両の前後方向に沿い、ステアリングホイール81が位置する側が車両の前後方向における後ろ側となり、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82が前側に延びる向きで車両に搭載される。
【0036】
アッパシャフト83は、中空箇所を有する円筒形状のシャフトになっている。本実施形態では、アッパシャフト83は、軸方向における位置によって径が異なりつつ、全体的に中空となった略円筒形の形状で形成されている。ステアリングシャフト82が有するステアリングホイール取付部82aは、アッパシャフト83に設けられており、アッパシャフト83の一端に形成されている。
【0037】
ロアシャフト84は、中実軸になっており、アッパシャフト83に対して、ステアリングホイール取付部82aが位置する側の反対側に配置されている。ロアシャフト84は、アッパシャフト83寄りの部分がアッパシャフト83の内側に入り込んで、アッパシャフト83に連結されている。これらのアッパシャフト83とロアシャフト84とは、アッパシャフト83の内周面83cの一部と、ロアシャフト84の外周面84bの一部とが当接することにより、軸方向に相対変位が可能で、且つ、相対回転が不可となって組み合わされている。本実施形態では、アッパシャフト83とロアシャフト84とは、ロアシャフト84におけるアッパシャフト83の内側に入り込んでいる部分の外周面84bと、アッパシャフト83の内周面83cとをスプライン係合させることにより、アッパシャフト83とロアシャフト84とは、軸方向に相対変位が可能で、且つ、相対回転が不可となって組み合わされている。即ち、相対回転が不可となって組み合わされるアッパシャフト83とロアシャフト84とは、軸方向に伸縮することが可能になっている。
【0038】
出力軸85は、ロアシャフト84におけるアッパシャフト83に連結される側の反対側に配置されており、ロアシャフト84と出力軸85とは、トーションバー86を介して連結されている。トーションバー86は、軸方向に延びる中実状の弾性部材になっており、ロアシャフト84と出力軸85とには、それぞれトーションバー86が入り込む孔が形成されている。トーションバー86は、一方の端部がロアシャフト84に挿入されてロアシャフト84に固定されており、他方の端部が出力軸85に挿入されて出力軸85に固定されている。これにより、ロアシャフト84と出力軸85とは、トーションバー86を介して連結されている。
【0039】
ハウジング20は、ステアリングシャフト82を内側に配置して、ステアリングシャフト82を回転自在に支持する。ハウジング20は、アッパハウジング30とロアハウジング40とを有している。アッパハウジング30とロアハウジング40とは、それぞれ筒状の部分を有する部材になっており、ステアリングシャフト82は、筒状に形成されるアッパハウジング30及びロアハウジング40の内側に配置される。
【0040】
アッパハウジング30は、ロアハウジング40に対して、軸方向において、ロアシャフト84に対してアッパシャフト83が配置される側に配置されている。つまり、アッパハウジング30は、ロアハウジング40に対して、軸方向においてアッパシャフト83に形成されるステアリングホイール取付部82aが位置する側に配置されている。アッパハウジング30の内側に配置されるアッパシャフト83は、ステアリングホイール取付部82a寄りの部分がアッパハウジング30の内側から露出して配置されている。ステアリングホイール81(図1参照)は、このようにアッパシャフト83における、アッパハウジング30の内側から露出しているステアリングホイール取付部82aに取り付けられる。
【0041】
アッパハウジング30の内側には、軸方向におけるアッパシャフト83が露出している端部寄りの位置に、軸受35が配置されている。軸受35は、アッパハウジング30の内周面とアッパシャフト83の外周面との間に配置されている。これにより、アッパハウジング30は、軸受35を介してアッパシャフト83を回転自在に支持している。
【0042】
ロアハウジング40は、アッパハウジング30における、軸方向においてアッパシャフト83が露出する側の端部の反対側の端部寄りの部分を覆っている。即ち、アッパハウジング30は、軸方向においてアッパシャフト83が露出する側の端部の反対側の端部寄りの部分が、ロアハウジング40の内側に挿入されている。ロアハウジング40の内側に一部が挿入されるアッパハウジング30は、ロアハウジング40に対して、軸方向に相対移動することが可能になっている。このため、ステアリングコラム10が有するハウジング20は、アッパハウジング30とロアハウジング40とが軸方向に相対移動をすることにより、軸方向に伸縮することが可能になっている。これにより、アッパハウジング30とロアハウジング40とは、アッパシャフト83とロアシャフト84とが軸方向に伸縮する際には、アッパシャフト83とロアシャフト84との伸縮に合わせて、アッパハウジング30とロアハウジング40も軸方向に伸縮することができる。
【0043】
つまり、アッパシャフト83とロアシャフト84とは、軸方向における相対移動が可能になっており、アッパハウジング30とロアハウジング40とも、軸方向における相対移動が可能になっている。一方、ロアシャフト84は、ロアハウジング40に対して軸方向における相対移動が不可となって配置されており、アッパシャフト83は、アッパハウジング30に対して軸方向における相対移動が不可となって配置されている。これらのため、アッパシャフト83がロアシャフト84に対して軸方向に伸縮する際には、ロアシャフト84に対するアッパシャフト83の伸縮に合わせて、アッパハウジング30もロアハウジング40に対して軸方向に伸縮する。
【0044】
ロアハウジング40は、第1ハウジング41と第2ハウジング51とを有している。第1ハウジング41と第2ハウジング51とは、軸方向において第1ハウジング41が第2ハウジング51よりもアッパハウジング30が位置する側に位置している。これらの第1ハウジング41と第2ハウジング51とは、締結部材であるボルト52によって軸方向に連結されている。また、ロアハウジング40は、第1ハウジング41が第2ハウジング51よりもアッパハウジング30が位置する側に配置されているため、軸方向におけるアッパハウジング30の端部寄りの部分を覆うロアハウジング40は、第1ハウジング41がアッパハウジング30を覆っている。
【0045】
第2ハウジング51は、軸方向における、第1ハウジング41に対してアッパハウジング30が位置する側の反対側に配置され、ボルト52により第1ハウジング41に連結されている。このため、第2ハウジング51は、主にステアリングシャフト82の出力軸85を覆っている。このように、ステアリングシャフト82の出力軸85を覆う第2ハウジング51は、減速装置112のハウジング20としても設けられている。
【0046】
第2ハウジング51の内側には、減速装置112が有するウォームホイール114が配置される。減速装置112は、ウォーム(図示省略)と、ウォームと噛み合うウォームホイール114とからなり、ウォームは、電動モータ111(図1参照)の駆動軸に直接、或いは間接的に取り付けられる。ウォームホイール114は、ステアリングシャフト82が有する出力軸85に圧入されることにより、出力軸85に固定される。
【0047】
このため、電動モータ111で発生した駆動力は、ウォームを介してウォームホイール114に伝達され、出力軸85に伝達される。その際に、ウォーム及びウォームホイール114は、電動モータ111で発生した駆動力の回転速度を減速し、トルクを増大させる。減速装置112は、このように電動モータ111で発生した駆動力を、トルクを増大させて出力軸85に伝達し、出力軸85に補助操舵トルクを与えることが可能になっている。つまり、出力軸85に固定されるウォームホイール114は、電動モータ111で発生した駆動力を、補助操舵トルクとしてステアリングシャフト82の出力軸85に伝達することが可能になっている。これらのように構成される、本実施形態に係るステアリング装置80は、電動モータ111で発生した補助操舵トルクがステアリングシャフト82に付与される、コラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置になっている。
【0048】
軸方向におけるウォームホイール114の両側には、2つの軸受70、75が配置されており、出力軸85は、2つの軸受70、75によって支持されている。一方の軸受70は、ウォームホイール114に対して、軸方向においてロアシャフト84が位置する側に配置されており、ロアハウジング40の第1ハウジング41と出力軸85との間に位置している。また、他方の軸受75は、ウォームホイール114に対して、軸方向においてロアシャフト84が位置する側の反対側に配置されており、ロアハウジング40の第2ハウジング51と出力軸85との間に位置している。換言すると、ウォームホイール114は、軸受70に対して、軸方向においてステアリングホイール81が配置される側の反対側に配置されており、軸受75に対しては、軸方向においてステアリングホイール81が配置される側に配置されている。
【0049】
これらのように軸受70、75が配置されることにより、出力軸85は、2つの軸受70、75を介して、ロアハウジング40の第1ハウジング41及び第2ハウジング51に対して、回転自在に支持されている。即ち、ステアリングシャフト82は、アッパハウジング30との間に配置される軸受35と、第1ハウジング41との間に配置される軸受70と、第2ハウジング51との間に配置される軸受75とにより、ハウジング20に対して回転自在に支持されている。
【0050】
これらのように、ステアリングシャフト82を回転自在に支持するハウジング20は、水平方向に延びる回動軸Rを中心として、ステアリングシャフト82と一体となって回動自在に車両に取り付けられる。詳しくは、ロアハウジング40の第2ハウジング51には、ピボットブラケット53が設けられており、ピボットブラケット53には、水平方向に向かって開口する挿通孔53aが形成されている。ピボットブラケット53の挿通孔53aには枢支ボルト(図示省略)が通され、枢支ボルトは、車体側の固定部材(図示省略)に螺合する。これにより、ハウジング20は、ピボットブラケット53の挿通孔53aに通される枢支ボルトを中心として車両に対して回動することが可能となり、回動自在に車両に取り付けられる。つまり、ハウジング20は、水平方向に延びる枢支ボルトの軸心、或いは、ピボットブラケット53の挿通孔53aの軸心を回動軸Rとし、水平方向に延びる回動軸Rを中心として回動自在に車両に取り付けられる。
【0051】
トルクセンサ60は、ステアリングシャフト82の回転に伴う物理量の変化を検出するセンサになっている。トルクセンサ60は、集磁ヨークアッセンブリ61と、磁石65とステータ66とを有している。磁石65とステータ66とは、ハウジング20の内側における、ロアシャフト84と出力軸85とが連結される付近に配置されており、出力軸85を回転自在に支持する軸受70よりも、軸方向においてロアシャフト84が位置する側に配置されている。磁石65は、環状の形状で形成され、ロアシャフト84に固定されている。ステータ66は、軸方向における位置が磁石65と同じ位置となる部分を有し、径方向において磁石65の外側に配置されて出力軸85に固定されている。
【0052】
集磁ヨークアッセンブリ61は、ロアハウジング40が有する第1ハウジング41における、軸方向において磁石65とステータ66が配置される位置と同じ位置となる部分を有する位置に配置され、第1ハウジング41に取り付けられている。集磁ヨークアッセンブリ61は、トルクセンサ60における検出部として設けられており、ステアリングシャフト82の回転に伴う物理量の変化を電気的な信号に変換する機能を持った差し込み式部品になっている。
【0053】
集磁ヨークアッセンブリ61は、集磁ヨーク(図示省略)とホールIC(図示省略)とを有しており、ECU110と電気的に接続されている。集磁ヨークは、磁石65からステータ66に作用する磁束の変化を検出するための部材になっており、ステータ66の近傍に配置される。ホールICは、集磁ヨークに作用する磁束密度の変化を検出し、検出した磁束密度の変化を電気信号に変換して電気信号として出力することが可能になっている。ホールICで検出する磁束密度は、操舵トルクの大きさに応じて変化するため、集磁ヨークアッセンブリ61は、磁束密度の変化を変換した電気信号をECU110に出力することにより、検出した操舵トルクの大きさをECU110に伝達する。これにより、トルクセンサ60は、操舵トルクを検出し、ECU110に出力することが可能になっている。
【0054】
集磁ヨークアッセンブリ61は、ロアハウジング40に形成される、径方向におけるロアハウジング40の内側と外側とを連通する孔部45に挿入される。つまり、トルクセンサ60は少なとも一部が孔部45に挿入され、本実施形態では、トルクセンサ60における検出部である集磁ヨークアッセンブリ61が、孔部45に挿入される。孔部45は、ロアハウジング40の第1ハウジング41に互いに同じ形状で複数が形成されており、複数の孔部45は、軸方向における位置が互いに同じ位置で、ステアリングシャフト82の周方向に互いに離隔して第1ハウジング41に設けられている。具体的には、複数の孔部45は、トルクセンサ60が有する磁石65及びステータ66と軸方向における位置が同じ位置となる部分を有して形成されている。本実施形態では、孔部45は2つが第1ハウジング41に設けられており、2つの孔部45は、周方向において等間隔となる位置に配置されている。つまり、2つの孔部45は、周方向において互いに約180°離れた位置に形成されている。
【0055】
集磁ヨークアッセンブリ61は、このようにロアハウジング40に形成される複数の孔部45のうちの1つの孔部45に挿入されており、集磁ヨークアッセンブリ61の一部は孔部45を通り抜けてロアハウジング40の内側に配置されている。即ち、第1ハウジング41に形成される2つの孔部45のうち、1つの孔部45はセンサ挿入孔46として用いられ、集磁ヨークアッセンブリ61はセンサ挿入孔46に挿入され、一部がロアハウジング40の内側に位置している。具体的には、第1ハウジング41に形成される2つの孔部45は、ステアリングコラム10が車両に搭載された状態において、一方の孔部45が上下方向における上端に位置し、他方の孔部45が下端に位置する位置に形成される。第1ハウジング41に形成される2つの孔部45のうち、センサ挿入孔46は、ステアリングコラム10が車両に搭載された状態において上端側に位置する側の孔部45になっており、集磁ヨークアッセンブリ61は、上端側に位置する側のセンサ挿入孔46に挿入される。
【0056】
一方、ステアリングコラム10が車両に搭載された状態において下端側に位置する側の孔部45は、ハウジング20の内側に入り込んだ液体をハウジング20の外側に排出するドレイン孔47として用いられる。このため、第1ハウジング41に形成されるドレイン孔47は、軸方向における位置が、第2ハウジング51の内側に配置されるウォームホイール114よりも、軸方向においてアッパハウジング30やアッパシャフト83が位置する側に形成されている。
【0057】
なお、この場合におけるドレイン孔47は、軸方向における孔部45が形成される部分を、車両へ搭載する状態におけるステアリングコラム10の軸方向に見た場合において、上下方向における最下部となる部分を含んで形成されるのが好ましい。また、ドレイン孔47は、上下方向における最下部となる部分を含まない場合でも、極力最下部となる部分の近傍に配置されるのが好ましい。
【0058】
図3は、図2におけるトルクセンサ60が配置されている部分付近の詳細図である。図4は、図3のA-A方向から見た孔部45とボルト52との相対的な位置関係を示す模式図である。ロアハウジング40が有する第1ハウジング41と、第2ハウジング51とは、ボルト52によって連結されている。第1ハウジング41は、孔部45が形成される本体部41aと、本体部41aにおける軸方向においてアッパハウジング30が位置する側の反対側の端部寄りに位置し、径方向における大きさが本体部41aよりも大きい略円形の板状の形状で形成されたフランジ部41bとを有している。第2ハウジング51における第1ハウジング41に連結される部分は、径方向における大きさが第1ハウジング41のフランジ部41bと同程度の大きさになっている。第1ハウジング41と第2ハウジング51とは、第1ハウジング41のフランジ部41bと第2ハウジング51とがボルト52によって連結される。
【0059】
第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結するボルト52は、第1ハウジング41が有する複数の孔部45と同じ数が設けられており、周方向おいて隣り合う孔部45同士の間の位置に1つずつ配置されている。本実施形態では、孔部45は2つが形成されているため、第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結するボルト52も、2つが設けられている。また、2つのボルト52は、周方向における位置が、周方向おいて隣り合う孔部45同士の間の位置となる位置に配置されるため、2つのボルト52は、2つの孔部45に対して周方向に約90°ずれた位置に配置されている。
【0060】
なお、図2図3では、径方向におけるボルト52の配置位置を示すため、便宜上、孔部45とボルト52とを同じ断面に図示しているが、実際にはボルト52は、図2図3の位置に対して、ステアリングシャフト82の軸心を中心とする周方向に約90°ずれた位置に配置されている。
【0061】
ステアリングシャフト82を回転自在に支持する軸受70と軸受75とは、いわゆる転がり軸受になっている。つまり、ロアハウジング40の第1ハウジング41に支持される軸受70は、第1ハウジング41に固定される外輪71と、ステアリングシャフト82に固定される内輪72と、外輪71と内輪72との間に配置される複数の転動体73とを有している。同様に、ロアハウジング40の第2ハウジング51に支持される軸受75は、第2ハウジング51に固定される外輪76と、ステアリングシャフト82に固定される内輪77と、外輪76と内輪77との間に配置される複数の転動体78とを有している。
【0062】
また、ロアハウジング40とステアリングシャフト82は、軸受70の外輪71が第1ハウジング41に固定されて内輪72がステアリングシャフト82に固定される状態において、軸受70の外輪71と内輪72とに対してステアリングシャフト82の軸方向における互いに反対方向に付与する予圧である軸方向予圧を軸受70に対して付与する。ロアハウジング40とステアリングシャフト82は、軸受75に対しても同様に、軸受75の外輪76が第2ハウジング51に固定されて内輪77がステアリングシャフト82に固定される状態において、軸受75の外輪76と内輪77とに対してステアリングシャフト82の軸方向における互いに反対方向に付与する予圧である軸方向予圧を軸受75に対して付与する。
【0063】
ステアリングシャフト82を回転自在に支持する軸受70と軸受75とのうち、軸受70は、出力軸85を第1ハウジング41に対して回転自在に支持し、軸受75は、出力軸85を第2ハウジング51に対して回転自在に支持する。つまり、軸受70は、出力軸85を回転自在に支持すると共に、第1ハウジング41と出力軸85とは、軸受70に対して軸方向予圧を付与し、軸受75は、出力軸85を回転自在に支持すると共に、第2ハウジング51と出力軸85とは、軸受75に対して軸方向予圧を付与する。
【0064】
詳しくは、第1ハウジング41は、軸方向における、軸受70の外輪71に対して第2ハウジング51が位置する側の反対側の部分の直径が外輪71の外径よりも小さくなっており、軸受70の外輪71に対して、第2ハウジング51が位置する側の反対側から軸方向に当接する。また、第2ハウジング51は、軸方向における、軸受75の外輪76に対して第1ハウジング41が位置する側の反対側の部分の直径が外輪76の外径よりも小さくなっており、軸受75の外輪76に対して、第1ハウジング41が位置する側の反対側から軸方向に当接する。
【0065】
また、出力軸85における軸受70が固定される部分と軸受75が固定される部分との間の部分は、直径が軸受70の内輪72の内径や軸受75の内輪77の内径よりも大きくなっている。このため、出力軸85は、軸受70の内輪72に対して、第2ハウジング51が位置する側から軸方向に当接し、軸受75の内輪77に対して、第1ハウジング41が位置する側から軸方向に当接する。
【0066】
さらに、本実施形態では、第1ハウジング41における軸受70の外輪71に対して軸方向に当接する部分と、第2ハウジング51における軸受75の外輪76に対して軸方向に当接する部分との軸方向における距離は、出力軸85における軸受70と軸受75との間の部分の軸方向における幅と、軸受70の軸方向における幅と、軸受75の軸方向における幅とを足した幅よりも小さくなっている。このため、第1ハウジング41と第2ハウジング51とがボルト52によって連結された状態では、軸受70の外輪71と軸受75の外輪76との軸方向における距離は、軸受70の内輪72と軸受75の内輪77との軸方向における距離よりも小さくなる。
【0067】
従って、軸受70には、外輪71を内輪72よりも第2ハウジング51が位置する側に近付かせる方向の付勢力、或いは、内輪72を外輪71よりも第2ハウジング51が位置する側の反対側に向かわせる方向の付勢力が、軸方向予圧として付与される。同様に、軸受75には、外輪76を内輪77よりも第1ハウジング41が位置する側に近付かせる方向の付勢力、或いは、内輪77を外輪76よりも第1ハウジング41が位置する側の反対側に向かわせる方向の付勢力が、軸方向予圧として付与される。
【0068】
第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結した状態では、第1ハウジング41で支持する軸受70と第2ハウジング51で支持する軸受75とには、これらのように、軸方向における予圧がロアハウジング40とステアリングシャフト82とから付与される。これにより、軸受70は、軸方向予圧によって外輪71と内輪72とがそれぞれ転動体73に接触する状態が維持され、軸受75は、軸方向予圧によって外輪76と内輪77とがそれぞれ転動体78に接触する状態が維持される。
【0069】
これらのように、軸受70に対して軸方向予圧を付与する第1ハウジング41に形成される孔部45は、径方向における位置が、第1ハウジング41における軸受70の外輪71に対して軸方向に当接する部分の径方向における位置と、径方向において同じ位置となる部分を有して形成されている。つまり、第1ハウジング41に形成される孔部45は、第1ハウジング41における軸受70の外輪71に対して軸方向に当接する部分に対して、軸方向において重なる部分を有して形成されている。
【0070】
次に、ステアリング装置80の作用について説明する。ステアリング装置80が搭載される車両の運転時に、ステアリングホイール81が操作をされた場合は、ステアリングホイール81に付与された操舵力は、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に伝えられる。ステアリングシャフト82に伝えられた操舵力は、操舵トルクとしてステアリングシャフト82から中間シャフト102に伝達され、中間シャフト102からピニオンシャフト104を経てピニオンギヤ105aに伝達される。これにより、ピニオンギヤ105aを有するステアリングギヤ105は、ピニオンギヤ105aから伝達された回転運動を、ラックバー105bの直線運動に変換し、タイロッド106を動作させる。
【0071】
また、本実施形態に係るステアリング装置80は、運転者の操舵をアシストする補助操舵トルクを発生させる電動モータ111を有している。電動モータ111は、ステアリングシャフト82のロアシャフト84と出力軸85と間に亘って配置されるトルクセンサ60により検出した操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを発生する。
【0072】
トルクセンサ60は、ステアリングホイール81からステアリングシャフト82に付与された操舵トルクを、ロアシャフト84と出力軸85とが相対回転した際における相対回転の角度に基づいて検出する。即ち、ロアシャフト84と出力軸85とは、トーションバー86を介して連結されているため、ステアリングホイール81が取り付けられるアッパシャフト83を介してロアシャフト84に操舵トルクが付与された際には、ロアシャフト84と出力軸85との間では、トーションバー86を介して操舵トルクが伝達される。その際に、トーションバー86が僅かに捩じれることにより、ロアシャフト84と出力軸85とは、僅かに相対回転をする。
【0073】
トルクセンサ60は、磁石65がロアシャフト84に取り付けられ、ステータ66が出力軸85に取り付けられることにより、ロアシャフト84と出力軸85とが相対回転をした際には、トルクセンサ60が有する磁石65とステータ66も、相対的に回転をする。磁石65とステータ66と相対回転の角度は、ロアシャフト84と出力軸85との間で作用する操舵トルクが大きくなるに従って相対回転の角度が大きくなる。
【0074】
磁石65とステータ66とが相対回転した場合は、磁石65からステータ66に作用する磁束が変化する。第1ハウジング41のセンサ挿入孔46に挿入される集磁ヨークアッセンブリ61が有する集磁ヨークは、磁石65からステータ66に作用する磁束の変化を検出することが可能になっている。このため、ロアシャフト84と出力軸85との相対回転に伴って磁石65とステータ66が相対回転をした際には、集磁ヨークアッセンブリ61が有する集磁ヨークは、磁石65からステータ66に作用する磁束の変化を検出することができる。
【0075】
このように、集磁ヨークアッセンブリ61が有する集磁ヨークで検出する、磁石65からステータ66に対して作用する磁束は、磁石65とステータ66との相対回転の角度に応じて変化する。集磁ヨークと共に集磁ヨークアッセンブリ61が有しているホールICは、集磁ヨークによって検出した磁石65とステータ66との相対回転の角度に応じて変化する磁束を、ホール素子で検出すると共に出力回路で電気信号に変換する。集磁ヨークアッセンブリ61は、このようにホールICで変換した電気信号を、トルクセンサ60からの出力信号としてECU110に伝達する。つまり、トルクセンサ60は、磁石65からステータ66に作用する磁束の変化を集磁ヨークアッセンブリ61で検出することにより、ステアリングホイール81からアッパシャフト83、ロアシャフト84を経て出力軸85に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクを電気信号としてECU110に伝達する。
【0076】
ECU110は、トルクセンサ60から伝達された電気信号に基づいて電動モータ111を作動させ、電動モータ111に補助操舵トルクを発生させる。つまり、トルクセンサ60の集磁ヨークアッセンブリ61からECU110に伝達された電気信号は、磁石65とステータ66との相対回転の角度に応じて変化し、ロアシャフト84と出力軸85との間で作用する操舵トルクに基づいて変化する。このため、ECU110は、トルクセンサ60の集磁ヨークアッセンブリ61から伝達された電気信号を、ロアシャフト84及び出力軸85に作用する操舵トルクによって変化する情報として使用し、集磁ヨークアッセンブリ61から伝達される電気信号に基づいて電動モータ111へ供給する電力値を調節し、電動モータ111に補助操舵トルクを発生させる。
【0077】
即ち、ECU110は、トルクセンサ60から操舵トルクの信号を取得し、車速センサ115から車両の車速信号を取得し、さらに、電動モータ111に設けられた回転検出装置から電動モータ111の動作情報を取得し、これらの動作情報と操舵トルクと車速信号とに基づいて電動モータ111に補助操舵トルクを発生させる。電動モータ111で発生した補助操舵トルクは、電動モータ111の駆動軸に取り付けられるウォームとウォームホイール114を介してステアリングシャフト82の出力軸85に伝達される。これにより、運転者がステアリングホイール81に付与した操舵力は、電動モータ111で発生した補助操舵トルクによりアシストされる。
【0078】
また、ステアリング装置80が有するステアリングコラム10は、ステアリングホイール81の高さ位置や前後位置を調整することが可能になっている。即ち、ステアリングコラム10は、ステアリングホイール81のチルト位置やテレスコピック位置を調整することが可能になっている。ステアリングホイール81の高さ位置の調整や前後位置の調整は、電動または手動によって行われる。ステアリングホイール81の高さ位置の調整や前後位置の調整が電動により行われる場合は、これらの位置の調整時にステアリングコラム10を動作させるための駆動力を発生する電動モータ(図示省略)がステアリングコラム10に搭載される。
【0079】
ステアリングシャフト82に取り付けられるステアリングホイール81の高さ位置を調整する際には、水平方向に延びる回動軸Rを中心として、ハウジング20とステアリングシャフト82とを一体で回動させる。これにより、ステアリングシャフト82の一端に取り付けられるステアリングホイール81も回動軸Rを中心として回動するため、ステアリングホイール81の高さ位置、即ち、チルト位置を調整することができる。
【0080】
ステアリングシャフト82に取り付けられるステアリングホイール81の前後位置を調整する際には、ステアリングホイール81が取り付けられるアッパシャフト83を、ロアシャフト84に対して軸方向に相対移動させる。これにより、ステアリングホイール81をアッパシャフト83と共に前後方向に移動させることができ、ステアリングホイール81の前後位置、即ち、テレスコピック位置を調整することができる。
【0081】
また、このようにロアシャフト84に対してアッパシャフト83を軸方向に相対移動させる際には、アッパシャフト83と共にアッパハウジング30も、ロアハウジング40に対して軸方向に相対移動をする。アッパシャフト83は、軸受35を介してアッパハウジング30によって回転自在に支持されているため、アッパシャフト83と共にアッパハウジング30も軸方向に移動することにより、アッパシャフト83は、アッパハウジング30によって回転自在に支持される状態が維持される。これにより、ステアリングコラム10は、ステアリングシャフト82を回転自在に支持する状態を維持しつつ、ステアリングホイール81の前後位置を調整することができる。
【0082】
また、運転者がステアリングホイール81を操舵した際には、ステアリングシャフト82の出力軸85は、軸受70、75によって支持されながら回転をする。その際に、軸受70には、第1ハウジング41と出力軸85とより軸方向の予圧が付与されており、軸受75には、第2ハウジング51と出力軸85とより軸方向の予圧が付与されている。このため、軸受70は、外輪71と転動体73、及び転動体73と内輪72とが、それぞれ接触した状態で維持され、軸受75は、外輪76と転動体78、及び転動体78と内輪77とが、それぞれ接触した状態で維持される。
【0083】
ここで、軸受70に付与される軸方向の予圧は、軸受70の外輪71に軸方向から当接する第1ハウジング41より付与されるが、第1ハウジング41には、集磁ヨークアッセンブリ61が挿入されるセンサ挿入孔46が形成されている。このため、第1ハウジング41は、周方向におけるセンサ挿入孔46が形成されている部分とそれ以外の部分とで剛性に差が発生し易くなっている。これにより、第1ハウジング41は、軸受70に予圧を付与しながら第2ハウジング51に連結した際に、軸受70に予圧を付与することに伴う反力による第1ハウジング41の撓みが、周方向において不均衡になり易くなる。
【0084】
図5は、第1ハウジング41の本体部41aにセンサ挿入孔46のみが形成される場合の模式図である。第1ハウジング41の本体部41aに、図5に示すようにセンサ挿入孔46のみが形成される場合、第1ハウジング41の剛性は、周方向において不均衡になる。この場合、第1ハウジング41から軸受70に対して軸方向の予圧を付与する際に、第1ハウジング41は、周方向におけるセンサ挿入孔46が形成される位置では、周方向におけるそれ以外の位置と比較して撓みが大きくなり易くなる。このため、第1ハウジング41から軸受70に対して付与する軸方向の予圧は、周方向におけるセンサ挿入孔46が形成される部分では、第1ハウジング41が大きく撓むことによって、軸受70に付与する予圧が小さくなり易くなる。
【0085】
つまり、第1ハウジング41から軸受70に付与される予圧は、周方向における一部の位置での予圧が小さくなるため、予圧が付与された軸受70は、図5に示すように、外輪71が内輪72に対して傾き易くなる。即ち、軸受70の外輪71は、軸心が内輪72に対して傾いた状態になり易くなる。このように、軸受70の外輪71が内輪72に対して傾いている場合、外輪71や内輪72と転動体73との間の荷重は、周方向において不均衡になり易くなり、周方向における一部の位置での荷重が、外輪71と内輪72とが平行に配置される場合と比較して大きく易くなる。また、軸受70の外輪71が内輪72に対して傾いている場合、転動体73を介して外輪71と内輪72とが相対回転をする際に、外輪71と内輪72とが平行に配置される場合と比較して、回転抵抗が大きくなり易くなる。これにより、軸受70は、摩耗が発生し易くなったり、故障が発生し易くなったりするため、軸受70の寿命が短くなり易くなる。
【0086】
図6は、第1ハウジング41の本体部41aに孔部45が複数形成される場合の模式図である。本実施形態では、第1ハウジング41の本体部41aには、図6に示すように、孔部45は複数が形成されており、そのうちの1つの孔部45が、センサ挿入孔46として用いられている。このため、本実施形態では、第1ハウジング41の剛性は、周方向における一部分のみ剛性が低くなることが抑制される。これにより、第1ハウジング41から軸受70に対して軸方向の予圧を付与する際に、第1ハウジング41は、撓みが大きくなる部分が分散され、第1ハウジング41から軸受70に対して付与する軸方向の予圧が、周方向における一部分のみで小さくなることが抑制される。
【0087】
つまり、第1ハウジング41から軸受70に付与される予圧は、周方向における一部の位置でのみ小さくなることが抑制され、予圧が付与された軸受70は、図6に示すように、軸方向の予圧が付与されつつ、外輪71が内輪72に対して平行な状態が維持される。このように、軸受70の外輪71と内輪72とが平行な状態が維持されることにより、外輪71や内輪72と転動体73との間の荷重は、周方向において均衡になる。また、軸受70の外輪71と内輪72とが平行な状態が維持されることにより、転動体73を介して外輪71と内輪72とが相対回転をする際における回転抵抗が小さくなる。これにより、軸受70は、摩耗し難くなるため、軸受70の寿命が長くなり易くなる。
【0088】
また、ロアハウジング40と出力軸85とによって軸受70と軸受75とに対して軸方向の予圧を付与することにより、軸受70と軸受75とで出力軸85を支持する際の軸方向の支持剛性を高めることができる。これにより、出力軸85に固定されるステータ66と、集磁ヨークアッセンブリ61が有する集磁ヨークとの軸方向における相対的な位置関係を一定に維持することができる。従って、トルクセンサ60によって検出する操舵トルクの出力特性が、集磁ヨークアッセンブリ61が有する集磁ヨークとステータ66との軸方向における相対的な位置関係が変化することに起因して変化することを抑制することができる。
【0089】
また、軸受70、75は、それぞれ外輪71、76と転動体73、78、及び転動体73、78と内輪72、77とが接触した状態で維持されるため、車両の走行時の振動が軸受70、75に伝わった場合でも、外輪71、76と転動体73、78や、転動体73、78と内輪72、77とが衝突しないようになっている。これにより、軸受70、75は、振動が軸受70、75に伝わった場合でも、外輪71、76や内輪72、77と転動体73、78とが衝突した際における騒音を発生することなく、ステアリングシャフト82を回転自在に支持することができる。
【0090】
ここで、ステアリングシャフト82におけるステアリングホイール81側の部分付近は、軸受35を介してアッパハウジング30によって回転自在に支持されているため、軸受35が配置されている部分には、ハウジング20の内側の空間と外側の空間とを連通する僅かな隙間が形成されている。つまり、軸受35は、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に配置される複数の転動体とを有して構成されているため、転動体同士の間の部分は、ハウジング20の内側の空間と外側の空間とを連通する隙間になっている。
【0091】
また、ステアリングコラム10が車両に搭載されている状態では、ステアリングコラム10は、出力軸85側よりもアッパシャフト83側の方が上側に位置するように、ステアリングシャフト82が水平方向に対して傾斜する向きで車両に取り付けられている。つまり、ステアリング装置80は、ステアリングホイール81よりも、ステアリングギヤ105の方が下側に位置して車両に搭載される。このため、ステアリングコラム10は、アッパシャフト83側よりも出力軸85側の方が下側に位置するように、ステアリングシャフト82が水平方向に対して傾斜する向きで配置される。このため、例えば、ステアリングホイール81の付近に水等の液体がかかり、軸受35の隙間からハウジング20の内側に液体が浸入した場合は、ハウジング20内に液体は、重力によって下側の方向に向かって流れる。
【0092】
軸受35の隙間からハウジング20の内側に液体が入り込んだ場合、液体は、ハウジング20の内面やステアリングシャフト82の表面を伝わりながら重力によって下側の方向に向かって流れる。このため、ハウジング20の内側に入り込んだ液体は、ハウジング20の内面やステアリングシャフト82の表面を伝わりながら、ロアハウジング40やロアシャフト84が位置する側に向かって流れる。
【0093】
ロアハウジング40が有する第1ハウジング41には、2つの孔部45が形成されており、そのうちの1つの孔部45は、ステアリングコラム10が車両に搭載された状態において第1ハウジング41の下端側に位置するドレイン孔47として用いられる。このため、ハウジング20の内側に入り込み、ロアハウジング40の位置まで流れた液体は、ロアハウジング40の第1ハウジング41に形成されるドレイン孔47を通ってハウジング20の内側から外側に排出され、重力方向における下側に向かって落下する。これにより、アッパシャフト83を支持する軸受35の隙間からハウジング20の内側に浸入した液体が、ハウジング20の内側に溜まることを抑制でき、トルクセンサ60に液体が付着することを抑制できる。
【0094】
以上のように、本実施形態に係るステアリング装置80では、ステアリングシャフト82を回転自在に支持する軸受70は、ハウジング20から軸方向における予圧が付与され、ハウジング20には、軸方向における位置が互いに同じ位置で周方向に互いに離隔する複数の孔部45が設けられている。また、ステアリングシャフト82に入力される操舵トルクを検出するトルクセンサ60は、ハウジング20に形成される複数の孔部45のうちの1つの孔部45に、トルクセンサ60の一部である集磁ヨークアッセンブリ61が挿入される。このため、トルクセンサ60が有する集磁ヨークアッセンブリ61をハウジング20に配置するための孔部45をハウジング20に設けることに起因して、ハウジング20の剛性が、周方向において孔部45が形成される一部分のみで低くなることを抑制できる。
【0095】
これにより、ハウジング20の剛性が周方向における一部分のみで低くなることに起因して、ハウジング20から軸受70に付与する予圧が、周方向における一部のみで小さくなることを抑制することができる。従って、ハウジング20から予圧を付与する軸受70の外輪71を、内輪72に対して平行な状態で維持することができるため、外輪71や内輪72と転動体73との間で作用する荷重が、周方向における一部の位置で局所的に大きくなることを抑制することができる。この結果、軸受70に局所的な荷重が作用することに起因して軸受70に早期の摩耗や故障が発生することを抑制でき、軸受70の寿命を高めることができる。
【0096】
また、ハウジング20に形成される複数の孔部45は、周方向において等間隔で配置されるため、孔部45によってハウジング20の剛性が低くなる部分を、周方向において分散することができる。これにより、ハウジング20から軸受70に対して付与する予圧が局所的に低くなることを抑制することができるため、ハウジング20より予圧を付与する軸受70の外輪71を、内輪72に対して平行な状態で維持することができる。この結果、軸受70に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができ、軸受70の寿命を高めることができる。
【0097】
また、第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結するボルト52は、第1ハウジング41が有する複数の孔部45と同じ数が設けられるため、第1ハウジング41と第2ハウジング51とをボルト52によって連結した際に、軸受70に対する予圧が大きくなる部分を、孔部45の数と同じ数にして分散することができる。これにより、第1ハウジング41から軸受70に付与する予圧を、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45に合わせて、周方向において分散して付与することができる。従って、第1ハウジング41により予圧を付与する軸受70の外輪71を、内輪72に対して平行な状態で維持することができるため、軸受70に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができる。この結果、軸受70の寿命を高めることができる。
【0098】
また、第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結するボルト52は、周方向おいて隣り合う孔部45同士の間の位置に1つずつ配置されるため、第1ハウジング41の撓みにより軸受70への予圧が小さくなる部分と、ボルト52の締結力によって予圧が大きくなる部分とを、周方向において交互に発生させることができる。これにより、第1ハウジング41から軸受70に付与する予圧を、周方向において交互に配置される孔部45とボルト52とによって、周方向において分散して付与することができる。従って、第1ハウジング41により予圧を付与する軸受70の外輪71を、内輪72に対して平行な状態で維持することができるため、軸受70に早期の摩耗や故障が発生することを抑制することができる。この結果、軸受70の寿命を高めることができる。
【0099】
また、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45のうち、トルクセンサ60の集磁ヨークアッセンブリ61が挿入される孔部45と異なる孔部45は、ドレイン孔47として用いられるため、ハウジング20の内側に水等の液体が入り込んだ際に、液体をドレイン孔47からハウジング20の外側に排出することができる。これにより、ハウジング20の内側に液体が入り込んだ場合でも、浸入した液体がハウジング20の内側に溜まることを抑制でき、トルクセンサ60に液体が付着することを抑制することができる。この結果、トルクセンサ60によって操舵トルクを検出する際に、トルクセンサ60に液体が付着することに起因する操舵トルクの誤検知を抑制することができる。
【0100】
また、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45は、互いに同じ形状で形成されるため、トルクセンサ60の集磁ヨークアッセンブリ61は、いずれの孔部45に対しても挿入することができる。これにより、孔部45に集磁ヨークアッセンブリ61を挿入して集磁ヨークアッセンブリ61を配置する際における、レイアウトの自由度を高めることができる。このため、例えば、右ハンドルの車両に搭載されるステアリング装置80のロアハウジング40の金型と、左ハンドルの車両に搭載されるステアリング装置80のロアハウジング40の金型とを、共用することができる。
【0101】
図7は、右ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラム10の集磁ヨークアッセンブリ61と電動モータ111の配置関係を示す説明図であり、図3のB-B方向から見た説明図である。例えば、図3に示すステアリングコラム10が、右ハンドルの車両の搭載されるステアリング装置80であり、集磁ヨークアッセンブリ61は、上側の孔部45に挿入され、下側の孔部45は、ドレイン孔47として用いられているとする。また、図3に示すステアリングコラム10では、電動モータ111は、図7に示すように、上下方向における上側に配置されているものとする。本実施形態では、電動モータ111は、図7に示すように、上下方向における上側に配置されつつ、車両の幅方向における外側に向かって突出する方向に配置されている。
【0102】
つまり、集磁ヨークアッセンブリ61は、外部の磁性体が集磁ヨークアッセンブリ61に近づいた際に、磁性体からの磁力によって誤検知をする可能性がある。このため、図3図7に示すステアリングコラム10では、外部の磁性体が集磁ヨークアッセンブリ61に近づき難くするために、集磁ヨークアッセンブリ61は、電動モータ111が配置される側に配置している。即ち、集磁ヨークアッセンブリ61は、ロアハウジング40に形成される複数の孔部45のうち電動モータ111からの距離が最も近い孔部45に挿入されている。これにより、集磁ヨークアッセンブリ61の近傍には電動モータ111が配置されることになるため、外部の磁性体は、電動モータ111に阻まれて集磁ヨークアッセンブリ61に近づき難くなる。
【0103】
図8は、図3に示すステアリングコラム10を左ハンドルの車両に搭載した場合の集磁ヨークアッセンブリ61の配置位置を示す要部断面図である。図9は、図8のC-C方向から見た集磁ヨークアッセンブリ61と電動モータ111の配置関係を示す説明図である。左ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラム10において、図7に示す右ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラム10と同等のものを左ハンドルの車両に搭載する際には、電動モータ111の配置位置を上下方向に入れ替えて、図9に示すように上下方向における下側に配置する必要がある。
【0104】
このように、電動モータ111を下側に配置する場合において、外部の磁性体が集磁ヨークアッセンブリ61に近づき難くするためには、集磁ヨークアッセンブリ61も、電動モータ111が配置される側に配置する必要がある。つまり、集磁ヨークアッセンブリ61も、電動モータ111と同様に下側に配置する必要があり、集磁ヨークアッセンブリ61は、複数の孔部45のうち電動モータ111からの距離が最も近い、上下方向における下側の孔部45に挿入して配置する。これにより、外部の磁性体は、左ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラム10においても、電動モータ111に阻まれて集磁ヨークアッセンブリ61に近づき難くなる。
【0105】
なお、このように、下側の孔部45をセンサ挿入孔46として集磁ヨークアッセンブリ61を下側の孔部45に挿入する場合は、上側の孔部45には蓋48を挿入し、上側の孔部45は蓋48によって閉塞する。
【0106】
このように、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45を、互いに同じ形状で形成することにより、いずれの孔部45にも集磁ヨークアッセンブリ61を挿入することができる。これにより、右ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラム10においても、左ハンドルの車両に搭載されるステアリングコラム10においても、第1ハウジング41を同じ形状にすることができ、第1ハウジング41の金型に同じものを用いることができる。この結果、ステアリング装置80の製造コストを抑えることができる。
【0107】
また、集磁ヨークアッセンブリ61を、ロアハウジング40に形成される複数の孔部45のうち、電動モータ111からの距離が最も近い孔部45に挿入することにより、外部の磁性体が集磁ヨークアッセンブリ61に近づくことを電動モータ111によって遮ることができる。これにより、外部の磁性体が集磁ヨークアッセンブリ61に近づくことに起因して、磁性体からの磁力によって集磁ヨークアッセンブリ61が誤検知をすることを抑制することができる。この結果、トルクセンサ60による操舵トルクの検出精度を確保することができる。
【0108】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45は、2つになっているが、孔部45は2つ以外でもよく、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45は、3つ以上であってもよい。第1ハウジング41に形成される複数の孔部45は、孔部45の数に関わらず、孔部45同士の形状が同じ形状で、軸方向における位置が互いに同じ位置に配置され、周方向において等間隔で配置されていれば、その数は問わない。
【0109】
また、第1ハウジング41に形成される孔部45は、その数に関わらず、トルクセンサ60の集磁ヨークアッセンブリ61が挿入される孔部45と異なる孔部45のうち少なくとも1つの孔部45は、ドレイン孔47として用いられるのが好ましい。
【0110】
また、第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結するボルト52は、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45と同じ数が設けられ、それぞれのボルト52は、周方向おいて隣り合う孔部45同士の間の位置に1つずつ配置されるのが好ましい。このように、複数の孔部45と同じ数のボルト52を、周方向おいて隣り合う孔部45同士の間の位置に1つずつ配置して第1ハウジング41と第2ハウジング51とを連結することにより、第1ハウジング41から軸受70に付与する予圧を、周方向において分散して付与することができる。これにより、孔部45やボルト52の数に関わらず、第1ハウジング41により予圧を付与する軸受70の外輪71を、内輪72に対して平行な状態で維持することができるため、軸受70の寿命を高めることができる。
【0111】
また、ウォームホイール114に対して、軸方向においてステアリングホイール81が配置される側に配置される軸受70は、シール部材を有する軸受70であるのが好ましい。つまり、軸受70には、軸受にシール部材が組み込まれた、いわゆるシール付き軸受が用いられるのが好ましい。このように、ウォームホイール114よりもステアリングホイール81が配置される側に配置される軸受70に、シール付き軸受を用いることにより、ハウジング20の内側に水等の液体が入り込んだ場合でも、液体がウォームホイール114側に流れることを、軸受70によって抑制することができる。これにより、液体がウォームホイール114に付着することによるウォームホイール114の腐食を抑制することができ、減速装置112の寿命を高めることができる。
【0112】
また、上述した実施形態では、ステアリングコラム10にはトルクセンサ60が設けられているが、ステアリングコラム10に設けられるセンサは、トルクセンサ60以外であってもよい。ステアリングコラム10に設けられるセンサは、例えば、ステアリングシャフト82の回転角度を検出する舵角センサであってもよい。この場合、第1ハウジング41に形成される複数の孔部45のうち、センサ挿入孔46として用いられる孔部45には、舵角センサの一部である、舵角センサにおける検出部が挿入される。このように、ステアリングコラム10に設けられるセンサは、センサ挿入孔46に挿入されるセンサの一部が、ステアリングシャフト82の回転に伴う物理量の変化を電気的な信号に変換する機能を持った差し込み式部品である検出部となるものであれば、その種類は問わない。
【0113】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0114】
10 ステアリングコラム
20 ハウジング
30 アッパハウジング
35 軸受
40 ロアハウジング
41 第1ハウジング
41a 本体部
41b フランジ部
45 孔部
46 センサ挿入孔
47 ドレイン孔
51 第2ハウジング
52 ボルト
53 ピボットブラケット
60 トルクセンサ
61 集磁ヨークアッセンブリ
65 磁石
66 ステータ
70、75 軸受
71、76 外輪
72、77 内輪
73、78 転動体
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
82a ステアリングホイール取付部
83 アッパシャフト
84 ロアシャフト
85 出力軸
86 トーションバー
101、103 ユニバーサルジョイント
102 中間シャフト
104 ピニオンシャフト
105 ステアリングギヤ
105a ピニオンギヤ
105b ラックバー
106 タイロッド
110 ECU
111 電動モータ
112 減速装置
114 ウォームホイール
115 車速センサ
116 イグニッションスイッチ
117 電源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9