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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007963
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びこれを用いた偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J11/06
C09J4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109730
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】樋口 健二
(72)【発明者】
【氏名】小林 知由
【テーマコード(参考)】
2H149
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AB01
2H149AB12
2H149AB13
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA13
2H149BA14
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA01X
2H149FA04X
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA12X
2H149FA13X
2H149FA15X
2H149FA58Z
2H149FA66
2H149FA69
2H149FD25
4J040DF021
4J040EF182
4J040EF282
4J040FA131
4J040GA05
4J040JB07
4J040KA13
4J040LA08
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB05
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】
本発明は、高温環境下に曝された場合に、ポリエン化による、偏光子の着色が生じず、また、高温高湿環境下においても、接着剤を介して貼合された保護フィルムと偏光子が剥がれない偏光板を提供することを目的とする。
【解決手段】
ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる
偏光子と保護フィルムとの貼り合わせに用いる接着剤であって、接着剤組成物100重量部に対して、
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが25重量%以上、65重量%以下、及び、
(b)イソシアネート化合物が20重量%より多く、70重量%以下、
を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる
偏光子と保護フィルムとの貼り合わせに用いる接着剤であって、接着剤組成物100重量部に対して、
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが25重量%以上、65重量%以下、及び、
(b)イソシアネート化合物が20重量%より多く、70重量%以下、
を含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットより少なくとも1種選択されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ウレタンアクリレートを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物を用いて、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムの片面または両面に保護フィルムを貼り合わせたことを特徴とする偏光板。
【請求項6】
前記保護フィルムとして、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかの透明樹脂のフィルムが偏光子の少なくとも片面に貼合されてなる、請求項5に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐高温高湿性および接着性を有した接着剤組成物、該接着剤組成物を用いて偏光子の片面または両面に保護膜を貼合してなる偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種液晶表示装置は、携帯電話やタブレット端末等のモバイル機器に加えて、カーナビゲーション装置やバックモニター等の車載用の画像表示装置としても使用される等その用途は広がっている。これに伴い、前記画像表示装置には、従来要求されてきたよりも過酷な環境下(例えば、高温環境下)における高い耐久性が求められている。
【0003】
偏光板は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用である。偏光板は通常、偏光子の両面に保護膜が積層された構造を有し、液晶表示装置に組み込まれて使用される。これまでは保護膜の多くにトリアセチルセルロースフィルムが使用されてきた。トリアセチルセルロースの透湿度は高く、これを保護膜として貼合した偏光板は、湿熱下例えば、温度85℃、相対湿度85%のような条件下では劣化を引き起こす等の問題があった。
【0004】
そこで、トリアセチルセルロース樹脂フィルムよりも透湿度の低い樹脂フィルムを保護膜とすることで、かかる問題を解決する方法も提案されており、例えば、非晶性ポリオレフィン樹脂を保護膜とすることが知られている。具体的には、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シートを偏光子の少なくとも一方の面に保護膜として積層することが、特許文献1に記載されている。
【0005】
このような透湿度の低い保護膜を従来の装置で貼合する場合、水を主な溶媒とする接着剤、例えば、ポリビニルアルコール水溶液を使用して、ポリビニルアルコール系の偏光子に保護膜を貼合した後に溶媒を乾燥させるいわゆるウェットラミネーションでは、十分な接着強度が得られなかったり、外観が不良になったりする等の問題があった。これは、透湿度の低いフィルムは一般的にトリアセチルセルロースフィルムよりも疎水性であることや透湿度が低いために溶媒である水を十分に乾燥できないこと等の理由による。
【0006】
そこで、特許文献2には、芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分とする接着剤が開示されており、加熱または活性エネルギー線の照射によるカチオン重合による接着法が提案されている。しかしながら、これらの接着剤は、発生するカチオンの影響により、接着力は向上するが、耐久性試験の際に偏光子がポリエン化により褐色に変色してしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献3には、ヒドロキシ基含有アクリレートとイソシアネート化合物を用いた接着剤が開示されており、当該接着組成では酸を使わないため、ポリエン化による偏光子の変色を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-51117号公報
【特許文献2】特開2004-245925号公報
【特許文献3】特開2010-8928号公報
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3に記載の接着組成では、高温高湿環境下において、接着剤を介して貼合された保護フィルムと偏光子が剥がれてしまう問題があった。
【0011】
本発明の目的は、高温環境下に曝された場合に、ポリエン化による、偏光子の着色が生じず、また、高温高湿環境下においても、接着剤を介して貼合された保護フィルムと偏光子が剥がれない偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが、鋭意検討したところ、接着剤組成物として、特定の量のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートおよびイソシアネート化合物を必須成分として含有した酸発生剤を用いない接着剤組成物により偏光子と保護膜を貼合することにより、高温高湿化においても接着性を保ちつつ、かつ、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子を着色させないことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
【0013】
[1]
ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護フィルムとの貼り合わせに用いる接着剤であって、該接着剤組成物100重量部に対して、
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが25重量%以上、65重量%以下、及び
(b)イソシアネート化合物が20重量%より多く、70重量%以下、
を含むことを特徴とする接着剤組成物。
[2]
光重合開始剤を含有することを特徴とする前項[1]に記載の接着剤組成物。
[3]
前記イソシアネート化合物がヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットより少なくとも1種選択されたものであることを特徴とする前項[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]
ウレタンアクリレートを含有することを特徴とする前項[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[5]
前項[1]又は[2]に記載の接着剤組成物を用いて、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムの片面または両面に保護フィルムを貼り合わせたことを特徴とする偏光板。
[6]
前記保護フィルムとして、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂から選ばれる少なくともいずれかの透明樹脂のフィルムが偏光子の少なくとも片面に貼合されてなる、前項[5]に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接着剤組成物を用い、偏光板を作製することにより、保護膜と偏光子は十分な接着力を有しながら偏光板は高温高湿環境下においても高い耐久性を確保することができる。
【0015】
以下、本発明に従う実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明のいくつかの代表的な実施形態の例示であり、本発明の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子と保護膜との貼り合わせに用いる接着剤であって、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートおよびイソシアネート化合物を必須成分として含有することを特徴とする。
【0017】
上記接着剤組成物は、組成物100重量部に対して、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが、25重量%以上、65重量%以下であり、(b)イソシアネート化合物が20重量%より多く、70重量%以下を含んでいることを特徴とする。該接着剤は、必要に応じてラジカル重合成分(c)及び光ラジカル重合開始剤(d)を接着剤の成分として用いることができる。
【0018】
本発明の接着剤組成物に含有されるは(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとは、ヒドロキシ基を有する1つまたは2つのアクリロイル基有する(メタ)アクリレートであり、具体的に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートまたは3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートまたは2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートまたは1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートまたは5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート又は6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、1,6-ヘキサネジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ビサクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、1-(アクリロイルオキシ)-3-(メタクリロイルオキシ)-2-プロパノール、グリセロールジ(メタ)アクリラート等から少なくとも1つ選ばれる。前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、接着剤としての接着力を高めるばかりでなく、接着剤組成物の粘度を低下させ、保護フィルムへの塗布性を向上させる作用を有するために必須の成分である。さらに、これらヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシ基が、(b)イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応することにより、高い架橋密度を有した接着層となるため、接着力が高く、かつ、耐久性に優れた偏光板を提供することができる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの中でも、アルキル基の炭素数が2~6のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを適宜組み合わせることが、偏光フィルムや保護フィルムとの塗液の濡れ性や光硬化後の硬化物の可塑性を調整する上で好適であり、特に炭素数4の4-ヒドロキシブチルアクリレートは、硬化直後の密着性を上げることができるため、フィルム加工の観点から特に好ましい。また、2つ以上のヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレートを接着剤組成物に添加する場合は、架橋密度が高くなるため、耐久性を向上させることができるが、経時における接着剤組成物の粘度上昇が速くなるため、50重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
【0019】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの含有量は、接着剤組成物100重量部に対して、25重量%以上、65重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以上、60重量%以下であり、さらに好ましくは35重量%以上、55重量%以下である。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの含有量が25重量%より少ないと、接着性が低くなり偏光子と保護フィルムの界面において剥がれが発生する恐れがある。また、65重量%より多いと、硬化後の接着層の架橋密度が低く、耐久性が低下する恐れがある。
【0020】
本発明の接着剤組成物に含有されるは(b)イソシアネート化合物を添加することにより、イソシアネート基が偏光子に用いられるポリビニルアルコールのヒドロキシ基を反応するため高い密着性を示し、また、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシ基とも反応するため、架橋密度が高くなり、高い耐久性を示す。
【0021】
イソシアネート化合物とは具体的に、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または6)-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アクリロイルアルキルイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアネートの変性体であるポリイソシアネートを用いることができ、具体的にはトリメチロールプロパン,ペンタエリスリトールなどの多価アルコールと変性してなるアダクト体、イソシアヌレート体、ビウレット体、アロファネート体等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、1,6-ヘキサンジイソシアネートイソシアヌレート体、1,6-ヘキサンジイソシアネートアダクト体、1,6-ヘキサンジイソシアネートビウレット体より少なくとも1種選択されたものを組み合わせた場合が特に良好である。具体的な製品名としては、旭化成社製デュラネート24A-100、デュラネートTPA-100、デュラネートE402-100などが挙げられる。
【0023】
イソシアネート化合物の含有量は、接着剤組成物100重量部に対して、20重量%より多く、70重量%以下を含んでいることが好ましく、より好ましくは30重量%より多く、65重量%以下であり、さらに好ましくは40重量%以上、60重量%以下である。イソシアネート化合物の含有量が20重量%以下になると、イソシアネート基が少ないため接着性が低下する。また、架橋密度の低下に伴い、耐久性試験において偏光子が保護フィルムから剥がれ収縮し、端部に保護フィルムのみの状態が目視にて観察される。70重量%より多いと、同様に接着層の架橋密度が低下するため、耐久性が低下する恐れがあり、また、経時における接着剤組成物の粘度上昇が速くなり、加工性に適さない。
【0024】
本発明の接着剤組成物はその他成分として、ラジカル重合成分(c)を用いることができる。
ラジカル重合性成分としては、種々の化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、ウレタンアクリレート類、エポキシアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート類、マレイミド類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアルデヒド、N-ビニル-2-ピロリドン、トリアリルイソシアヌレート、アジピン酸ジビニル、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。入手のしやすさや扱いやすさの点から(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類が好ましく、ウレタンアクリレート類が硬化直後の密着性を上げることができるため、フィルム加工の観点から特に好ましい。
【0025】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアルコールのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-イソブチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(1,4-ジオキサスピロ[4,5]デカン-2-イル)メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、アリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0026】
分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類〔以下、「多官能(メタ)アクリレート」という〕の具体例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメチロールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサ(メタ)アクリレート、及び水素添加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰返し数8以上)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(繰返し数6以上)ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリルアミド類の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(3-N,N-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどが挙げられる。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールまたはポリテトラメチレングリコール等のポリオール類と、ヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートまたは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート類と、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン付加物またはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基含有エチレン性不飽和化合物類との反応物であるウレタン(メタ)アクリレート類が挙げられる。ウレタンアクリレートを含有させることにより、硬化直後の密着性を上げることができるため、フィルム加工の観点から好ましい。
【0029】
エポキシ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテルまたはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどのポリグリシジル化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0030】
ポリエステルアクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートなどのポリエステルアクリレート類が挙げられる。
【0031】
トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート類としては、例えば、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびトリスアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0032】
マレイミド類の具体例としては、N-メチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルシトラコンイミド、N-ヒドロキシエチルシトラコンイミドとイソホロンジイソシアネートのウレタン化反応物などが挙げられる。
【0033】
本発明の接着剤組成物に用いられる光ラジカル重合開始剤(d)の具体例として、例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0034】
4’-フェノキシ-2,2-ジクロロアセトフェノン、4’-tert-ブチル-2,2-ジクロロアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α,α-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オンの如き、アセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及びベンゾインイソブチルエーテルの如き、ベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの如き、ベンゾフェノン系光重合開始剤;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンの如き、チオキサントン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドの如き、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオフェニル)〕-,2-(O-ベンゾイルオキシム)の如き、オキシム・エステル系光重合開始剤;カンファーキノンなど。
【0035】
(d)成分は、1種類を単独で、又は2種類以上を所望の性能に応じて配合し、用いることができる。(d)成分の光ラジカル重合開始剤を配合する場合、その含有割合は、組成物全体を基準として、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは0.1~10重量部であり、さらに好ましくは0.1~5重量部である。光ラジカル重合開始剤(d)の含有割合を上記範囲とすることで、十分な接着強度が得られ、又、硬化性にも優れる。
【0036】
さらに、本発明の効果を損なわない限り、接着剤組成物にはその他の添加剤、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、連鎖移動剤、増感剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、有機溶剤、染料、顔料、処理剤、紫外線遮断剤などを配合することができる。イオントラップ剤には、例えば、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系などの無機化合物が包含され、酸化防止剤には、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが包含される。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸及びロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂並びに石油樹脂等が挙げられる。
【0037】
本発明の接着剤組成物の製造方法としては、前記成分を、常法に従い攪拌及び混合することにより製造することができる。この場合、必要に応じて加熱することもできる。加熱温度および時間としては、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良いが、30~80℃で30分~2時間程度が好ましい。
【0038】
組成物の粘度としては、基材に対する塗工性に優れる点で、10~1000mPa・sが好ましい。
【0039】
偏光板の接着剤層の厚みは、0.05~100μmの範囲が好ましい。0.05μm未満であると接着力が弱くなる。また、100μmを超えると透過光の低下や、透過画像が歪み、光学特性が低下する恐れがある。光学特性を重視する用途については、厚みを薄くすることによって、光学特性が向上するため、接着力の低下が許容できる範囲で、できる限り薄くするのが好ましい。好ましくは5μm以下であり、より好ましくは2.5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下であり、最も好ましくは0.5μm以下である。本発明の接着剤は、粘度を低くすることもできるので薄い厚みとすることができる。また、偏光板に一定の強度を求める用途では、接着層は厚い方が好ましい。好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは25μm以上であり、最も好ましくは50μm以上である。本発明の接着剤は、粘度を高くすることもできるので厚い厚みとすることもできる。
【0040】
[偏光板]
本発明に係る偏光板は、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光子の片面又は両面に、保護フィルムを貼合したものである。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体として、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%であり、好ましくは98~100モル%の範囲である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000であり、好ましくは1,500~10,000の範囲である。
【0041】
偏光板は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色して、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに保護フィルムを貼合する工程を経て、製造される。
【0042】
一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。またもちろん、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸するには、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤により膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常4~8倍程度である。
【0043】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、二色性色素を含有する水溶液に浸漬すればよい。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性染料が用いられる。
【0044】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は通常、水100重量部あたり0.01~0.5重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり0.5~10重量部程度である。この水溶液の温度は、通常20~40℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30~300秒程度である。
【0045】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、通常、水100重量部あたり1×10-3~1×10-2重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を含有していてもよい。この水溶液の温度は、通常20~80℃程度であり、また、この水溶液への浸漬時間は、通常30~300秒程度である。
【0046】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬することにより行われる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は通常、水100重量部あたり2~15重量部程度、好ましくは3~8重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有するのが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は通常、水100重量部あたり2~20重量部程度、好ましくは5~15重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常100~1,200秒程度であり、好ましくは150~600秒程度であり、さらに好ましくは200~400秒程度である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃である。
【0047】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行われる。水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃程度であり、浸漬時間は、通常2~120秒程度である。その後に行われる乾燥処理は通常、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行われる。乾燥温度は、通常40~100℃である。乾燥処理における処理時間は、通常120~600秒程度である。
【0048】
こうして、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子が得られる。次いで、この偏光子は、本発明の接着剤組成物を用いて、片面又は両面に保護フィルムが貼合される。
【0049】
本発明の偏光板は、典型的には、本発明の接着剤組成物を未硬化の状態で保護フィルムに塗工して接着剤塗工面を形成する塗工工程と、保護フィルムの該接着剤塗工面に偏光子を貼合する貼合工程と、接着剤組成物を硬化させる硬化工程とを含む方法によって製造することができる。
【0050】
なお、本発明において偏光子を製造する他の方法としては、偏光子と保護フィルムとの間に本発明の接着剤組成物を未硬化の状態で滴下した後、ロール等で均一に押し広げながら圧着させ、次いで上記の接着剤組成物を硬化させて接着剤層を形成する方法等も採用できる。
【0051】
[塗工工程]
偏光子への接着剤の塗工方法に特別な限定はなく、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなど、種々の塗工方式が利用できる。また、各塗工方式には各々最適な粘度範囲があるため、溶剤を用いて粘度調整を行うことも有用な技術である。このための溶剤には、偏光子の光学性能を低下させることなく、接着剤組成物を良好に溶解するものが用いられるが、その種類にも特別な限定はない。例えば、トルエンに代表される炭化水素類、酢酸エチルに代表されるエステル類などの有機溶剤が使用できる。接着剤層の厚さは、通常100μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。接着剤層が薄ければ薄いほど偏光板としての歪みが抑えられる。
【0052】
[貼合工程]
保護フィルムに本発明の接着剤組成物を塗工したときは、次いでその接着剤塗工面に偏光子が貼合される。本発明の偏光板に用いられる保護フィルムは、典型的には透明性を有するフィルムである。保護フィルムは特に限定されず、具体的には、現在偏光板の保護フィルムとして最も広く用いられているトリアセチルセルロース等のアセチルセルロース系樹脂のフィルムや、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムを用いることができる。耐湿熱性の向上の観点から、透湿度の低い透明樹脂のフィルムを用いることが好ましい。
【0053】
本発明の偏光板において、典型的には、アセチルセルロース系樹脂のフィルムやトリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムが、偏光子の少なくとも片面に貼合される。
【0054】
なお、上記のトリアセチルセルロースの透湿度は、概ね400g/m/24hr程度である。偏光子の両面に保護膜を貼合する場合、2枚の保護膜を段階的に片面ずつ貼合してもよいし、両面を一段階で貼合してもよい。
【0055】
アセチルセルロース系樹脂のフィルムとしては、前述のトリアセチルセルロースフィルムの他、ジアセチルセルロースフィルム、アセチルブチルセルロースフィルム等が挙げられる。
【0056】
トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムの例としては、非晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂等から選ばれる少なくともいずれかの透明樹脂のフィルムが挙げられる。中でも非晶性ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムが特に好ましい。非晶性ポリオレフィン系樹脂は通常、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィンの重合単位を有するものであり、環状オレフィンと鎖状オレフィンとの共重合体であってもよい。このような非晶性ポリオレフィン系樹脂としては、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂がある。また、極性基が導入されているものも有効である。市販されている非晶性ポリオレフィン系樹脂としては、ジェイエスアール(株)の「アートン」、日本ゼオン(株)の「ZEONEX」および「ZEONOR」、三井化学(株)の「APO」および「アペル」等がある。非晶性ポリオレフィン系樹脂を製膜してフィルムとする際、製膜には、溶剤キャスト法、溶融押出法等、公知の方法が適宜用いられる。これらの非晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、概ね300g/m/24hr以下の透湿度を有する。
【0057】
本発明において偏光子の両面に保護フィルムを貼合する場合、偏光子の一方の面と他方の面とに貼合される保護フィルムは、同じ種類でも異なる種類でもよい。偏光子の両面に相異なる種類の保護フィルムを貼合する場合には、たとえば、一方の保護フィルムとして、アセチルセルロース系樹脂のフィルムを用い、他方の保護フィルムとして、トリアセチルセルロースよりも透湿度の低い透明樹脂のフィルムを用いることができる。アセチルセルロース系保護フィルムと偏光子との接着には、従来、水を溶媒とする接着剤を用いるウェットラミネーションが採用されていたが、この場合は長大な乾燥炉が必要となる。一方、本発明では乾燥炉を全く必要としない。この場合の利点としては、前述の通り、乾燥炉への設備投資が必要ないことや、偏光子および/または接着剤層の熱劣化が起きないことや、カールの抑制が可能であること等が挙げられる。
【0058】
なお、偏光子の一方の面にアセチルセルロース系樹脂フィルムのような透湿度の比較的高い保護フィルムを設ける場合、該保護フィルムと偏光子との貼合面には、ポリビニルアルコール系接着剤等、本発明の接着剤組成物以外の接着剤を用いてもよい。
【0059】
保護フィルムにおける偏光子への貼合面となる面には、偏光子との貼合に先立って、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、アンカーコーティング処理、プラズマ処理、火炎処理等の易接着処理が施されてもよい。また、保護フィルムの偏光子への貼合面と反対側の表面には、ハードコート層、反射防止層、防眩層等の各種処理層を有していてもよい。保護フィルムの厚みは、通常5~300μm程度の範囲であり、好ましくは10~200μmであり、さらに好ましくは10~100μmである。
【0060】
[硬化工程]
以上のように、未硬化の状態の接着剤組成物を介して偏光子と保護フィルムとを貼合した後、活性エネルギー線を照射することによって接着剤組成物を硬化させ、保護フィルムを偏光子上に固着させる。
【0061】
活性エネルギー線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する活性エネルギー線が好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が好ましい。接着剤組成物への光照射強度は、該接着剤組成物の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1~6000mW/cmであることが好ましい。該照射強度が0.1mW/cm以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6000mW/cm以下である場合、光源から輻射される熱および接着剤組成物の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光子の劣化を生じるおそれが少ない。接着剤組成物への光照射時間は、硬化させる接着剤組成物ごとに制御されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10~10000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。接着剤組成物への積算光量が10mJ/cm以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10000mJ/cm以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できる。
【0062】
活性エネルギー線の照射によって接着剤組成物を硬化させる場合、偏光子の偏光度、透過率および色相、ならびに保護フィルムの透明性といった偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行なうことが好ましい。
【0063】
硬化工程は、貼合工程より先に行ってもよく、この場合、硬化工程により硬化された接着剤組成物を、偏光子または保護フィルムと貼合することで、保護フィルムを偏光子上に固着させる。
【実施例0064】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例において「部」は重量部を意味する。
【0065】
(接着組成物の作製)
[実施例1]
(a)成分として大阪有機化学工業社製4-ヒドロキシブチルアクリレートを28.8部、(d)成分としてIGM社製Omnirad TPO Hを3.8部加え、25℃で1時間攪拌し、次いで(b)成分として旭化成社製24A-100を67.3部加えた後、25℃で5分攪拌し、接着剤組成物を得た。
【0066】
[実施例2~13]
表1に記載の配合に変更した以外は実施例1と同様に調整し、接着剤組成物を得た。
【0067】
[実施例14]
(a)成分として大阪有機化学工業社製4-ヒドロキシブチルアクリレートを33.3部、(c)成分として日本化薬社製KAYARAD PET30を8.8部、(d)成分としてIGM社製Omnirad TPO Hを3.5部加え、25℃で1時間攪拌し、次いで(b)成分として旭化成社製24A-100を54.4部加えた後、25℃で5分攪拌し、接着剤組成物を得た。
【0068】
[実施例15~19]
表2に記載の配合に変更した以外は実施例14と同様に調整し、接着剤組成物を得た。
[実施例20]
(a)成分として大阪有機化学工業社製4-ヒドロキシブチルアクリレートを36.9部、(c)成分として日本化薬社製KAYARAD UX-0937を9.2部加え、60℃で30分間攪拌した後、30分間室温で冷却し、次いで(d)成分としてIGM社製Omnirad TPO Hを3.8部加え、25℃で1時間攪拌し、次いで(b)成分として旭化成社製24A-100を50.0部加えた後、25℃で5分攪拌し、接着剤組成物を得た。
【0069】
[実施例21~31]
表3~4に記載の配合に変更した以外は実施例20と同様に調整し、接着剤組成物を得た。
【0070】
[比較例1~4]
表4に記載の配合の各成分に変更した以外は実施例1と同様に調整し、接着剤組成物を得た。
【0071】
[比較例5]
脂環式エポキシ化合物であるダイセル社製セロキサイド2021Pを97.6部、光酸発生剤であるサンアプロ社製CPI-110Pを2.4部加え、25℃で4時間攪拌し、接着剤組成物を得た。
【0072】
(偏光素子の作製)
特開平11-218611号公報の実施例1に記載に基づいて、以下染料1~4を準備し、染料1~4と芒硝を水に溶解させ染着液を作成した。
染料1:
C.I.Direct Orange 39(日本化薬社製Kayafect Orange G)を使用した。
染料2:
C.I.Direct Red 81(日本化学工業所社製Red 4BL)を使用した。
染料3:
特開平11-218611号公報に記載の化学式の染料を当該公報に従い合成した。
【0073】
【化1】
【0074】
染料4:
特開昭60-156759号公報の実施例38において開示されている化学式の染料を当該公報に従い合成した。
【0075】
【化2】
【0076】
次に、PVA系樹脂フィルム(クラレ社製VF-PS#7500)を一軸延伸しながら水に浸漬させ膨潤させた後、前記染着液中に浸漬させ、ホウ酸水溶液で延伸することにより、樹脂フィルム中に色素を配向させた。膨潤からホウ酸処理までの間の一軸延伸の倍率は合計で4~5倍とした。延伸後、張力を保持した状態で70℃の乾燥器内で3分間乾燥させることで、偏光素子を形成した。得られた偏光素子は、グレー系色を呈し、日立ハイテクサイエンス社製分光光度計UH-4150を用いて測定したところ、その光学特性は、Ys=60.5%、Py=47.7%、L*a*b*色空間による色相は、L*s=82.1、a*s=0.4、及びb*s=-0.2であった。
【0077】
(偏光板の製造)
厚さ50μmの非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム〔商品名ゼオノアZF14、日本ゼオン(株)製、以下「ZF14」という〕上に、易接着処理としてコロナ処理(春日電機社製AGF-B10、出力0.3kW、速度3m/分)を実施した。
その後、「ZF14」のコロナ処理面側に、バーコーターを用いて、表1~4に記載の各接着組成物を塗布した。これに、偏光子をラミネートした後、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製HX4000L)を120W、5m/min、1パスの条件で硬化しラミネートフィルムを得た。次に、同じくコロナ処理した「ZF14」上に同じ接着剤組成物をバーコーターにより塗布し、得られたラミネートフィルムの偏光子側とラミネートした後、高圧水銀ランプを同条件で硬化し、偏光板を得た。
最後に、接着層中のヒドロキシ基とイソシアネート基を反応させるために、得られた偏光板を35度乾燥機に7日間投入し、エージングを行った。
【0078】
得られた接着組成物および偏光板を用いて以下評価を実施し、結果を表1~4に記載した。
(粘度測定)
E型粘度計を用いて、25℃環境下で接着剤組成物の粘度を測定した。
(厚み測定)
フジワーク社製高精度厚み測定機HKT-1202を用いて、偏光板の厚みを測定し、該測定値および偏光子、保護フィルムの厚みを用いて接着層の厚みを算出した。
(耐高温高湿性評価)
50mm×50mmの大きさに裁断した偏光板を、85℃、85%RHの恒温恒湿機に投入して1000時間処理し、偏光板端面の状態を下記の基準で評価した。
○:偏光子が保護フィルムから剥がれず、端部に保護フィルムのみの状態が目視にて観察されない。
×:偏光子が保護フィルムから剥がれ収縮し、端部に保護フィルムのみの状態が目視にて観察される。
【0079】
<着色評価>
偏光板を、85℃、85%RHの恒温恒湿機および105℃乾燥機に投入して1000時間処理した後、取り出してその色相を目視で評価した。評価基準は下記の通り。
(評価基準)
〇;無色(偏光子の褐変無し)
×;黄色~褐色
(接着性評価)
偏光板の偏光子と保護フィルムの間にカッターの刃を入れ、接着性を下記基準にて評価した。
◎;基材破壊(カッター刃が入らない)
○;基材破壊(カッター刃は入る)
×;手で剥がれる
(硬化直後の接着性評価)
高圧水銀ランプによる接着剤組成物の硬化直後に、偏光子、接着層、保護フィルムの接着性を評価するために、手で剥がし、以下基準で評価した。
◎;剥がれる際に強い抵抗を感じる
〇;剥がれる際に抵抗を感じる
×;容易に剥がれる
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表1~4からわかるように、本発明を用いた実施例1~31は、高い耐高温高湿性を示し、また、高い密着性を示した。さらに、本実施例に用いた接着剤組成物はいずれも酸を含まないため、耐久試験後においてもポリエン化による褐色化は見られなかった。一方で、イソシアネート化合物が20%以下である比較例1~4は、いずれも高温高湿耐久試験後において保護基材と偏光子の剥がれが生じ、低い耐高温高湿性を示した。また、光酸発生剤およびエポキシ化合物から成る接着剤組成物を用いた比較例5は、発生する酸の影響により、耐久試験後にポリエン化による偏光子の変色が生じた。
【0085】
以上より、本発明の接着組成物を用いることにより、高い耐高温高湿性、高い接着性およびポリエン化による偏光子の変色が生じない接着組成物および偏光板を提供することができる。