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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007974
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】センサ素子および測距システム
(51)【国際特許分類】
   H10F 39/18 20250101AFI20250109BHJP
   H10D 84/83 20250101ALI20250109BHJP
   H10D 84/85 20250101ALI20250109BHJP
   H10D 89/60 20250101ALI20250109BHJP
   H10F 30/225 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L27/146 F
H01L27/088 E
H01L27/088 D
H01L27/092 G
H01L27/092 F
H01L27/04 H
H01L31/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109745
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】林 利起
【テーマコード(参考)】
4M118
5F038
5F048
5F149
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118AB03
4M118BA04
4M118BA14
4M118CA03
4M118FA06
4M118FA27
4M118FA28
4M118GA02
4M118GD04
4M118HA22
4M118HA33
5F038BH10
5F038BH19
5F038CA02
5F038CA16
5F038EZ20
5F048AA01
5F048AA07
5F048AB10
5F048AC01
5F048AC03
5F048BA19
5F048BA20
5F048BC01
5F048BC03
5F048BC18
5F048BE00
5F048BF12
5F048BF15
5F048BF16
5F048BG13
5F048BH05
5F048CB01
5F048CB03
5F048CB04
5F149AA08
5F149BB03
5F149EA04
5F149EA11
5F149JA12
5F149KA20
5F149XB38
(57)【要約】
【課題】画素サイズを維持しつつ、さらなる高機能化を図る。
【解決手段】本開示のセンサ素子は、SPADが画素毎に設けられたセンサ基板と、センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS基板と、CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、CMOS基板を貫通し、センサ基板のアノード領域とCMOS基板とを電気的に接続する貫通電極とを備える。本開示は、例えばCMOSイメージセンサに適用することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPAD(Single Photon Avalanche Diode)が画素毎に設けられたセンサ基板と、
前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板と、
前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、
前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板のアノード領域と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極と
を備えるセンサ素子。
【請求項2】
前記CMOS基板において、積層方向からの平面視で、前記トランジスタと前記貫通電極との間に、前記CMOS基板の既存構成要素がシールド領域として配置される
請求項1に記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記シールド領域は、積層方向からの平面視で、前記トランジスタのアクティブ領域とゲート電極とが重なる重複領域の頂点それぞれと、前記貫通電極の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置される
請求項2に記載のセンサ素子。
【請求項4】
前記シールド領域は、前記トランジスタの前記アクティブ領域のソース領域またはドレイン領域である
請求項3に記載のセンサ素子。
【請求項5】
前記シールド領域は、基板コンタクトのウェル領域である
請求項3に記載のセンサ素子。
【請求項6】
前記シールド領域は、エアギャップである
請求項3に記載のセンサ素子。
【請求項7】
前記貫通電極には、絶対値20V以上の電圧が印加される
請求項3に記載のセンサ素子。
【請求項8】
前記CMOS基板には、第1伝導型トランジスタと第2伝導型トランジスタが設けられ、
前記第1伝導型トランジスタと前記第2伝導型トランジスタとの間には、素子分離領域が形成される
請求項3に記載のセンサ素子。
【請求項9】
前記素子分離領域は、前記CMOS基板の表面から底面までを貫通するDTI(Deep Trench Isolation)領域により形成される
請求項8に記載のセンサ素子。
【請求項10】
前記CMOS基板において、前記トランジスタと前記貫通電極との間には、深さ250nm程度のSTI(Shallow Trench Isolation)領域または前記DTI領域がさらに形成される
請求項9に記載のセンサ素子。
【請求項11】
照射光を照射する照明装置と、
前記照射光に対する反射光を検出するセンサ素子と
を備え、
前記センサ素子は、
SPAD(Single Photon Avalanche Diode)が画素毎に設けられたセンサ基板と、
前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板と、
前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、
前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板のアノード領域と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極とを有する
測距システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ素子および測距システムに関し、特に、画素サイズを維持しつつ、さらなる高機能化を図ることができるようにするセンサ素子および測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ToF(Time-of-Flight)法により距離計測を行う距離画像センサが知られている。距離画像センサでは、例えば、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)を用いた画素を行列状に配置した画素アレイが採用される。SPADでは、降伏電圧よりも大きい電圧を印加した状態で、高電界のPN接合領域へ1個の光子が入ると、アバランシェ増幅が発生する。その際の瞬間的に電流が流れたタイミングを検出することで、高精度に距離を計測することができる。
【0003】
従来、SPADを利用した測距システムでは、SPADが設けられたセンサ基板とロジック回路が設けられたロジック基板とが貼り合された積層構造で、半導体基板の裏面側から光が照射される裏面照射型のセンサ素子が採用されている。
【0004】
特許文献1には、積層構造のセンサ素子において、小型化かつ高機能化を図るために、SPADのカソード電圧またはアノード電圧に従った信号を出力するための複数のトランジスタの一部を、センサ基板の半導体基板に形成されたウェル内に設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-148028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、積層構造のセンサ素子においては、ロジック回路のさらなる高機能化が求められている。しかしながら、特許文献1に開示されているような2層構造のセンサ素子において、画素サイズを維持したまま、ロジック回路における演算のためのSRAM(Static Random Access Memory)などを増設することは容易ではなかった。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画素サイズを維持しつつ、さらなる高機能化を図ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のセンサ素子は、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)が画素毎に設けられたセンサ基板と、前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板と、前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板のアノード領域と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極とを備えるセンサ素子である。
【0009】
本開示の測距システムは、照射光を照射する照明装置と、前記照射光に対する反射光を検出するセンサ素子とを備え、前記センサ素子は、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)が画素毎に設けられたセンサ基板と、前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板と、前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板のアノード領域と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極とを有する測距システムである。
【0010】
本開示においては、SPADが画素毎に設けられたセンサ基板と、前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS基板と、前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板のアノード領域と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る技術を適用したセンサ素子の構成例を示す断面図である。
図2】CMOS基板の構成例を示す断面図である。
図3】CMOS基板の構成例を示す平面図である。
図4】第1の実施形態のCMOS基板の構成例を示す平面図である。
図5】第1の実施形態のCMOS基板の他の構成例を示す平面図である。
図6】第2の実施形態のCMOS基板の構成例を示す断面図である。
図7】第2の実施形態のCMOS基板の構成例を示す平面図である。
図8】第2の実施形態のCMOS基板の他の構成例を示す平面図である。
図9】第3の実施形態のCMOS基板の構成例を示す断面図である。
図10】第3の実施形態のCMOS基板の構成例を示す平面図である。
図11】測距システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態(以下、実施形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
【0013】
1.従来技術とその問題点
2.本開示に係る技術を適用したセンサ素子の構成例
3.第1の実施形態(ソース領域/ドレイン領域をシールド領域とする構成)
4.第2の実施形態(基板コンタクトのウェル領域をシールド領域とする構成)
5.第3の実施形態(エアギャップをシールド領域とする構成)
6.測距システムの構成例
【0014】
<1.従来技術とその問題点>
従来、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)を利用した測距システムでは、SPADが設けられたセンサ基板とロジック回路が設けられたロジック基板とが貼り合された積層構造で、半導体基板の裏面側から光が照射される裏面照射型のセンサ素子が採用されている。
【0015】
特許文献1(特開2022-148028号公報)には、積層構造のセンサ素子において、小型化かつ高機能化を図るために、SPADのカソード電圧またはアノード電圧に従った信号を出力するための複数のトランジスタの一部を、センサ基板の半導体基板に形成されたウェル内に設けることが提案されている。
【0016】
近年、積層構造のセンサ素子においては、ロジック回路のさらなる高機能化が求められている。しかしながら、特許文献1に開示されているような2層構造のセンサ素子において、画素サイズを維持したまま、ロジック回路における演算のためのSRAM(Static Random Access Memory)などを増設することは容易ではなかった。
【0017】
そこで、本開示に係る技術においては、SPADが画素毎に設けられたセンサ基板と、ロジック回路が設けられたロジック基板との間に、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板を積層することで、ロジック回路の面積を確保することを実現する。
【0018】
一方で、このような3層構造のセンサ素子においては、CMOS基板を貫通するアノード電極に-20乃至-25Vの高電圧が印加されるため、CMOS基板に設けられるトランジスタのON-OFF特性への影響が懸念される。
【0019】
これに対して、国際公開第2020/262558号(公知例2という)には、第1基板のフローティングディフュージョンと第2基板の画素回路とを電気的に接続する貫通電極と、画素回路を構成する各トランジスタとの間に、シールド電極を設けるようにした撮像装置が開示されている。シールド電極は、画素回路を構成する各トランジスタに対する、貫通配線に印加されるバイアスの影響を低減するためのものである。
【0020】
しかしながら、公知例2では、画素サイズの縮小については考慮されておらず、面積効率の観点で課題があった。
【0021】
そこで、本開示に係る技術においては、CMOS基板において、積層方向からの平面視で、トランジスタと貫通電極との間に、CMOS基板の既存構成要素をシールド領域として配置することで、シールド電極のような新たな部材を設けることなく、画素サイズを維持することを実現する。
【0022】
<2.本開示に係る技術を適用したセンサ素子の構成例>
図1乃至図3を参照して、本開示に係る技術を適用したセンサ素子の構成について説明する。
【0023】
図1は、本開示に係る技術を適用したセンサ素子1が有する画素10の断面的な構成例の一例を示している。
【0024】
センサ素子1は、例えば、CMOSイメージセンサなどとして構成される。図1に示されるように、センサ素子1は、画素10毎にSPAD31が設けられたセンサ基板11、センサ基板11に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS基板12、および、CMOS基板12に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板13からなる3層構造を有する。センサ基板11は、半導体基板21の上面(裏面)に対してオンチップレンズ層22が積層されて構成される。ロジック基板13は、半導体基板23の上面に対して配線層24が積層されて構成される。オンチップレンズ層22には、画素10毎にマイクロレンズ25が設けられる。
【0025】
画素10は、半導体基板21のウェル層32が画素分離部33によって隣接する他の画素10のウェル層32と電気的に分離されて構成される。また、図示はしないが、画素10には、ウェル層32の側面と上面を囲うように、ホールを蓄積するためのP型半導体領域が設けられる。そのP型半導体領域が形成される領域に対応する半導体基板21の下面側には、P型半導体領域よりもP型の不純物濃度が高いアノード領域34が形成される。
【0026】
画素10において、半導体基板21の下面側には、N型増倍領域とP型増倍領域のPN接合領域によりSPAD31が構成されている。SPAD31は、画素10に光が入射したのに応じて発生する電子がアバランシェ増幅されることで流れる電流によってカソード電位が降下するフォトダイオードである。また、SPAD31において、PN接合を形成するN型増倍領域には、N型増倍領域よりも不純物濃度が高いN型の不純物濃度が高いカソード領域35が形成される。
【0027】
CMOS基板12には、SPAD31のカソード電圧に従った信号の読み出しのためのトランジスタ50とトランジスタ60が設けられる。トランジスタ50とトランジスタ60は、それぞれ異なる伝導型のトランジスタで構成される。トランジスタ50とトランジスタ60の一方は、PMOSトランジスタで構成され、トランジスタ50とトランジスタ60の他方は、NMOSトランジスタで構成されればよい。
【0028】
例えば、トランジスタ50がPMOSトランジスタで構成される場合、Nウェルに対して設けられるP型領域であるソース領域51とドレイン領域52の間に、酸化膜などの絶縁膜を介して積層するようにゲート電極53が設けられて構成される。同様に、トランジスタ60がNMOSトランジスタで構成される場合、Pウェルに対して設けられるN型領域であるソース領域61とドレイン領域62の間に、酸化膜などの絶縁膜を介して積層するようにゲート電極63が設けられて構成される。
【0029】
トランジスタ50とトランジスタ60は、プレナー構造のトランジスタとして構成されるものとするが、これに限らず、トレンチ構造のトランジスタとして構成されてもよい。
【0030】
CMOS基板12には、CMOS基板12を貫通し、センサ基板11とCMOS基板12とを電気的に接続する貫通電極71,72が設けられる。
【0031】
貫通電極71は、センサ基板11に形成されるアノード領域34とCMOS基板12に設けられる各トランジスタとを、ロジック基板13に形成される図示せぬSPAD回路を介して接続するアノード電極として形成される。また、貫通電極72は、SPAD31のN型増倍領域に形成されるカソード領域35とCMOS基板12に設けられる各トランジスタとを、ロジック基板13に形成される図示せぬSPAD回路を介して接続するカソード電極として形成される。
【0032】
以上のように、SPAD31が画素10毎に設けられたセンサ基板11と、ロジック回路が設けられたロジック基板13との間に、信号の読み出しのためのトランジスタ50,60が設けられるCMOS基板12を積層することで、ロジック回路の面積を確保することが可能となる。すなわち、画素サイズを維持しつつ、ロジック回路における演算のためのSRAMなどを増設することができ、センサ素子1のさらなる高機能化を実現することが可能となる。
【0033】
図2を参照して、CMOS基板12の詳細な構成について説明する。
【0034】
図2には、CMOS基板12においてトランジスタ50が設けられている一部領域の断面が示されている。なお、図2に示される断面構成は、図1に示される断面構成を上下反転したものである。
【0035】
CMOS基板12において、トランジスタ50と貫通電極71との間には、素子分離領域81が形成されている。素子分離領域81は、例えば、Si酸化膜などの絶縁膜で形成された深さ250nm程度のSTI(Shallow Trench Isolation)領域、または、CMOS基板12のSi表面から底面までを貫通するSi酸化膜などで形成されたDTI(Deep Trench Isolation)領域などとして形成されるが、イオン注入により形成されてもよい。
【0036】
また、互いに異なる伝導型トランジスタ50とトランジスタ60(不図示)との間には、素子分離領域82が形成される。素子分離領域82は、例えば、CMOS基板12のSi表面から底面までを貫通するSi酸化膜などで形成されたDTI領域などとして形成されるが、イオン注入により形成されてもよい。
【0037】
さて、アノード領域34に接続される貫通電極71には、絶対値20V以上の電圧が印加される。具体的には、貫通電極71には、-20乃至-25Vの高電圧が印加される。そのため、CMOS基板12に設けられる各トランジスタのON-OFF特性への影響が懸念される。
【0038】
そこで、図3に示されるように、CMOS基板12において、積層方向からの平面視で、トランジスタ50と貫通電極71との間に、CMOS基板12の既存構成要素をシールド領域100として配置する。
【0039】
シールド領域100は、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のソース領域51/ドレイン領域52が形成されるアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域OLの頂点それぞれと、貫通電極71の中心(2次元図形上の重心)とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されるものとする。トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なって形成される重複領域OLの2次元形状は、図3の例では矩形で示されているが、実際には矩形以外の多角形などの形状となる。
【0040】
以上のように、CMOS基板12の既存構成要素をシールド領域100として配置することで、CMOS基板12に設けられるトランジスタ50の高い信頼性を保つこと、すなわち、貫通電極71に高電圧が印加されることによるトランジスタ50への影響を低減することが可能となる。また、公知例2のシールド電極のような新たな部材を設けることなく、画素サイズを維持することが可能となる。
【0041】
以下では、シールド領域100として配置されるCMOS基板12の既存構成要素の具体例について説明する。
【0042】
<3.第1の実施形態>
図4は、本開示に係る技術を適用した第1の実施形態のCMOS基板12の構成例を示す平面図である。
【0043】
なお、本実施形態のCMOS基板12の断面構成は、図2に示される断面構成と同様であるので、その説明は省略する。
【0044】
図4の例では、CMOS基板12において、積層方向からの平面視で、トランジスタ50と貫通電極71との間に、シールド領域100として、トランジスタ50のアクティブ領域のうちのドレイン領域52が配置される。
【0045】
ドレイン領域52は、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域の頂点それぞれと、貫通電極71の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されるものとする。これにより、貫通電極71から伝播する電界の影響が、ドレイン領域52に吸収されるようになる。
【0046】
以上のように、トランジスタ50と貫通電極71との間に、トランジスタ50のアクティブ領域を配置することで、貫通電極71に高電圧が印加されることによるトランジスタ50への影響を低減しつつ、画素サイズを維持することが可能となる。
【0047】
なお、図4の例では、トランジスタ50と貫通電極71との間に、トランジスタ50のアクティブ領域のうちのドレイン領域52が配置されるものとしたが、トランジスタ50のアクティブ領域のうちのソース領域51が配置されるようにしてもよい。
【0048】
また、トランジスタ50のアクティブ領域の平面視での形状は、図4に示されるものに限られない。すなわち、例えばドレイン領域52は、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域の頂点それぞれと、貫通電極71の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されればよく、トランジスタ50と貫通電極71の位置関係に応じて、任意の形状を採ることができる。
【0049】
例えば、図5のA図に示されるように、貫通電極71が、トランジスタ50のアクティブ領域の長手方向の延長線上に設けられていない場合には、ドレイン領域52(またはソース領域51)がL字型に形成されるようにしてもよい。
【0050】
また、同B図に示されるように、2つの貫通電極71a,71bが設けられている場合には、それらの配置に応じて、ドレイン領域52(またはソース領域51)がコの字型に形成されてもよい。
【0051】
図5の例においても、トランジスタ50と貫通電極71との間に、トランジスタ50のアクティブ領域が配置されるので、貫通電極71に高電圧が印加されることによるトランジスタ50への影響を低減しつつ、画素サイズを維持することが可能となる。
【0052】
<4.第2の実施形態>
図6は、本開示に係る技術を適用した第2の実施形態のCMOS基板12の構成例を示す断面図であり、図7は、その平面図である。
【0053】
図6に示される断面構成においては、図2に示される断面構成に加え、基板コンタクト121とそのウェル領域122が形成されている。ウェル領域122は、基板コンタクト用のN型またはP型の拡散層であり、基板コンタクト121によって一定の電位に固定されている。
【0054】
そして、図7の例では、CMOS基板12において、積層方向からの平面視で、トランジスタ50と貫通電極71との間に、シールド領域100として、基板コンタクト121のウェル領域122が配置される。
【0055】
基板コンタクト121のウェル領域122は、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域の頂点それぞれと、貫通電極71の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されるものとする。これにより、貫通電極71から伝播する電界の影響が、基板コンタクト121のウェル領域122に吸収されるようになる。
【0056】
以上のように、トランジスタ50と貫通電極71との間に、基板コンタクト121のウェル領域122を配置することで、貫通電極71に高電圧が印加されることによるトランジスタ50への影響を低減しつつ、画素サイズを維持することが可能となる。
【0057】
また、基板コンタクト121のウェル領域122の平面視での形状は、図7に示されるものに限られない。すなわち、基板コンタクト121のウェル領域122が、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域の頂点それぞれと、貫通電極71の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されればよく、トランジスタ50と貫通電極71の位置関係に応じて、任意の形状を採ることができる。
【0058】
例えば、図8に示されるように、貫通電極71の配置に応じて、基板コンタクト121のウェル領域122がL字型に形成されるようにしてもよい。
【0059】
図8の例においても、トランジスタ50と貫通電極71との間に、基板コンタクト121のウェル領域122が配置されるので、貫通電極71に高電圧が印加されることによるトランジスタ50への影響を低減しつつ、画素サイズを維持することが可能となる。
【0060】
<5.第3の実施形態>
図9は、本開示に係る技術を適用した第3の実施形態のCMOS基板12の構成例を示す断面図であり、図10は、その平面図である。
【0061】
図9に示される断面構成においては、図2に示される断面構成に加え、エアギャップ131が形成されている。エアギャップ131は、例えば、真空の空洞で構成される。
【0062】
そして、図10の例では、CMOS基板12において、積層方向からの平面視で、トランジスタ50と2つの貫通電極71a,71bそれぞれとの間に、シールド領域100として、エアギャップ131が配置される。
【0063】
エアギャップ131は、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域の頂点それぞれと、貫通電極71a,71bそれぞれの中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されるものとする。これにより、貫通電極71a,71bそれぞれからの電界は、誘電率の低いエアギャップ131を避けて伝播するようになる。
【0064】
以上の構成によれば、トランジスタ50と貫通電極71a,71bそれぞれとの間に、エアギャップ131を配置することで、貫通電極71に高電圧が印加されることによるトランジスタ50への影響を低減しつつ、画素サイズを維持することが可能となる。
【0065】
また、エアギャップ131の平面視での形状は、図10に示されるものに限られない。すなわち、エアギャップ131が、積層方向からの平面視で、トランジスタ50のアクティブ領域とゲート電極53とが重なる重複領域の頂点それぞれと、貫通電極71(71a,71b)の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置されればよく、トランジスタ50と貫通電極71の位置関係に応じて、任意の形状を採ることができる。
【0066】
<6.測距システムの構成例>
上述したような各実施形態のセンサ素子1は、ToF法を用いて、被写体までの奥行き方向の距離を画素毎に検出し、検出した距離に基づく距離画素信号からなる画像である距離画像の撮像を行う測距システムに適用することができる。
【0067】
図11は、本開示に係る技術を適用した測距システム211の一実施形態の構成例を示すブロック図である。
【0068】
図11に示されるように、測距システム211は、照明装置221と撮像装置222を備える。
【0069】
照明装置221は、照明制御部231と光源232を備える。
【0070】
照明制御部231は、撮像装置222の制御部242の制御の下、光源232が光を照射するパターンを制御する。具体的には、照明制御部231は、制御部242から供給される照射信号に含まれる照射コードに従って、光源232が光を照射するパターンを制御する。例えば、照射コードは、1(High)と0(Low)の2値からなり、照明制御部231は、照射コードの値が1のときに光源232を点灯させ、照射コードの値が0のときに光源232を消灯させる。
【0071】
光源232は、照明制御部231の制御の下、所定の波長域の光を発する。光源232は、例えば、赤外線レーザダイオードからなる。光源232の種類と、照射光の波長域は、測距システム211の用途などに応じて任意に設定することが可能である。
【0072】
撮像装置222は、照明装置221から照射された光(照射光)が被写体212や被写体213などにより反射された反射光を受光する装置である。撮像装置222は、撮像部241、制御部242、表示部243、および記憶部244を備える。
【0073】
撮像部241は、レンズ251、受光素子252、および信号処理回路253を備える。
【0074】
レンズ251は、入射光を受光素子252の受光面に結像させる。レンズ251の構成は任意であり、例えば、複数のレンズ群によりレンズ251を構成することも可能である。
【0075】
受光素子252には、本開示に係る技術を適用したセンサ素子1が適用される。受光素子252は、制御部242の制御の下、被写体212や被写体213などからの反射光を受光し、その結果得られた画素信号を信号処理回路253に供給する。この画素信号は、照明装置221が照射光を照射してから、受光素子252が受光するまでの時間をカウントしたデジタルのカウント値を表す。光源232が発光するタイミングを示す発光タイミング信号は、制御部242から受光素子252にも供給される。
【0076】
信号処理回路253は、制御部242の制御の下、受光素子252から供給される画素信号の処理を行う。例えば、信号処理回路253は、受光素子252から供給される画素信号に基づいて、画素毎に被写体までの距離を検出し、画素毎の被写体までの距離を示す距離画像を生成する。具体的には、信号処理回路253は、光源232が光を発光してから受光素子252の各画素が光を受光するまでの時間(カウント値)を画素毎に複数回(例えば、数千乃至数万回)取得する。信号処理回路253は、取得した時間に対応するヒストグラムを作成する。そして、信号処理回路253は、ヒストグラムのピークを検出することで、光源232から照射された光が被写体212や被写体213で反射して戻ってくるまでの時間を判定する。さらに、信号処理回路253は、判定した時間と光速に基づいて、物体までの距離を求める演算を行う。信号処理回路253は、生成した距離画像を制御部242に供給する。
【0077】
制御部242は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array),DSP(Digital Signal Processor)などの制御回路やプロセッサなどにより構成される。制御部242は、照明制御部231と受光素子252の制御を行う。具体的には、制御部242は、照明制御部231に照射信号を供給するとともに、発光タイミング信号を受光素子252に供給する。光源232は、照射信号に応じて照射光を発光する。発光タイミング信号は、照明制御部231に供給される照射信号でもよい。また、制御部242は、撮像部241から取得した距離画像を表示部243に表示させる。さらに、制御部242は、撮像部241から取得した距離画像を記憶部244に記憶させる。また、制御部242は、撮像部241から取得した距離画像を外部に出力する。
【0078】
表示部243は、例えば、液晶表示装置や有機EL(Electro Luminescence)表示装置などのパネル型表示装置からなる。
【0079】
記憶部244は、任意の記憶装置や記憶媒体などにより構成することができ、距離画像などを記憶する。
【0080】
このように構成されている測距システム211では、本開示に係る技術を適用したセンサ素子1を適用することで、例えば、より小型化かつ高機能化を図ることができる。
【0081】
本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0082】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0083】
また、本開示に係る技術を適用した実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示に係る技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0084】
さらに、本開示は以下のような構成をとることができる。
(1)
SPAD(Single Photon Avalanche Diode)が画素毎に設けられたセンサ基板と、
前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板と、
前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、
前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極と
を備えるセンサ素子。
(2)
前記CMOS基板において、積層方向からの平面視で、前記トランジスタと前記貫通電極との間に、前記CMOS基板の既存構成要素がシールド領域として配置される
(1)に記載のセンサ素子。
(3)
前記シールド領域は、積層方向からの平面視で、前記トランジスタのアクティブ領域とゲート電極とが重なる重複領域の頂点それぞれと、前記貫通電極の中心とを結ぶ全ての線分と交差するように配置される
(2)に記載のセンサ素子。
(4)
前記シールド領域は、前記トランジスタの前記アクティブ領域のソース領域またはドレイン領域である
(3)に記載のセンサ素子。
(5)
前記シールド領域は、基板コンタクトのウェル領域である
(3)に記載のセンサ素子。
(6)
前記シールド領域は、エアギャップである
(3)に記載のセンサ素子。
(7)
前記貫通電極には、絶対値20V以上の電圧が印加される
(3)乃至(6)のいずれかに記載のセンサ素子。
(8)
前記CMOS基板には、第1伝導型トランジスタと第2伝導型トランジスタが設けられ、
前記第1伝導型トランジスタと前記第2伝導型トランジスタとの間には、素子分離領域が形成される
(3)乃至(7)のいずれかに記載のセンサ素子。
(9)
前記素子分離領域は、前記CMOS基板の表面から底面までを貫通するDTI(Deep Trench Isolation)領域により形成される
(8)に記載のセンサ素子。
(10)
前記CMOS基板において、前記トランジスタと前記貫通電極との間には、深さ250nm程度のSTI(Shallow Trench Isolation)領域または前記DTI領域がさらに形成される
(9)に記載のセンサ素子。
(11)
照射光を照射する照明装置と、
前記照射光に対する反射光を検出するセンサ素子と
を備え、
前記センサ素子は、
SPAD(Single Photon Avalanche Diode)が画素毎に設けられたセンサ基板と、
前記センサ基板に積層され、信号の読み出しのためのトランジスタが設けられるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)基板と、
前記CMOS基板に積層され、ロジック回路が設けられたロジック基板と、
前記CMOS基板を貫通し、前記センサ基板と前記CMOS基板とを電気的に接続する貫通電極とを有する
測距システム。
【符号の説明】
【0085】
1 センサ素子, 10 画素, 11 センサ基板, 12 CMOS基板, 13 ロジック基板, 31 SPAD, 34 アノード領域, 35 カソード領域, 50 トランジスタ, 51 ソース領域, 52 ドレイン領域, 53 ゲート電極, 60 トランジスタ, 61 ソース領域, 62 ドレイン領域, 63 ゲート電極, 71,72 貫通電極, 81,82 素子分離領域, 100 シールド領域, 121 基板コンタクト , 122 ウェル領域, 131 エアギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11