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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007978
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20250109BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
F15B11/00 D
E02F9/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109760
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】東出 善之
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AB03
2D003CA02
2D003DA02
3H089AA71
3H089BB02
3H089CC01
3H089CC12
3H089DA03
3H089DB05
3H089DB13
3H089EE05
3H089GG02
3H089HH05
3H089HH16
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】建設機械の複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する弁装置において、作動油の流れの安定化を向上させる。
【解決手段】一実施形態に係る弁装置は、ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路、第2タンク通路、ロッド側通路、ヘッド側通路を有するハウジングとを備え、第1スプールの1つの小径部の周りの環状空間は、第1スプールが少なくとも第1中立位置にある場合に第1タンク通路と連通し、第2スプールの1つの小径部の周りの環状空間は、第2スプールが少なくとも第2中立位置にある場合に第2タンク通路と連通する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、
互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、
前記第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続される第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路および第2タンク通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのロッド側室に接続されるロッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのヘッド側室に接続されるヘッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴の両側に位置する第1パイロット室および第2パイロット室と、を有するハウジングと、を備え、
前記ブームシリンダ用スプール穴における前記第1スプールと前記第2スプールの間の部分が第3パイロット室を構成し、
前記第1タンク通路および前記第2タンク通路のそれぞれは、前記複数のスプール穴と交差しており、
前記第1スプールは、前記第1パイロット室と前記第3パイロット室との圧力差に応じて、前記ロッド側通路を前記第1ポンプ通路および前記第1タンク通路の双方から遮断する第1中立位置と、前記ロッド側通路を前記第1ポンプ通路と前記第1タンク通路とのいずれかと連通させる第1ブーム駆動位置との間で移動し、
前記第2スプールは、前記第2パイロット室と前記第3パイロット室との圧力差に応じて、前記ヘッド側通路を前記第2ポンプ通路および前記第2タンク通路の双方から遮断する第2中立位置と、前記ヘッド側通路を前記第2ポンプ通路と前記第2タンク通路とのいずれかと連通させる第2ブーム駆動位置との間で移動し、
前記第1スプールおよび前記第2スプールの各スプールは、前記軸方向に間隔をあけて並ぶ3つ以上のランド部と、隣接する前記ランド部を連結する2つ以上の小径部と、を含み、
前記第1スプールの前記2つ以上の小径部のうちの1つの前記小径部の周りの環状空間は、前記第1スプールが少なくとも前記第1中立位置にある場合に前記第1タンク通路と連通し、
前記第2スプールの前記2つ以上の小径部のうちの1つの前記小径部の周りの環状空間は、前記第2スプールが少なくとも前記第2中立位置にある場合に前記第2タンク通路と連通する、弁装置。
【請求項2】
前記第1スプールの前記3つ以上のランド部は、
前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を開閉する第1内側ランド部と、
前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を開閉する第1中間ランド部と、
前記第1タンク通路を第1パイロット室から遮断する第1外側ランド部と、を含み、
前記第1スプールの前記2つ以上の小径部は、
前記第1内側ランド部と前記第1中間ランド部とを連結する第1内側小径部と、
前記第1外側ランド部と前記第1中間ランド部とを連結する第1外側小径部と、を含み、
前記第2スプールの前記3つ以上のランド部は、
前記第2ポンプ通路を第3パイロット室から遮断する第2内側ランド部と、
前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を開閉し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を開閉する第2中間ランド部と、
前記第2タンク通路を第2パイロット室から遮断する第2外側ランド部と、を含み、
前記第2スプールの前記2つ以上の小径部は、
前記第2内側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2内側小径部と、
前記第2外側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2外側小径部と、を含む、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記第1スプールが少なくとも前記第1中立位置にある場合に、前記第1内側ランド部は、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を遮断し、且つ、前記第1中間ランド部は、前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を遮断し、
前記第2スプールが少なくとも前記第2中立位置にある場合に、前記第2中間ランド部は、前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を遮断し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を遮断する、請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記第1内側ランド部は、前記第1内側ランド部の外周面における前記第1内側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路とを連通させるための複数の第1ノッチを有し、
前記第1中間ランド部は、前記第1中間ランド部の外周面における前記第1内側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1タンク通路とを連通させるための複数の第2ノッチを有し、
前記第2中間ランド部は、前記第2中間ランド部の外周面における前記第2内側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路とを連通させるための複数の第3ノッチを有する、請求項2または3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記第2中間ランド部は、前記第2中間ランド部の外周面における前記第2外側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路とを連通させるための複数の第4ノッチを有し、
前記複数の第4ノッチの数は、前記複数の第3ノッチの数より多い、請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記複数の第1ノッチの少なくとも1つのノッチは、前記第1内側小径部が接続される前記第1内側ランド部の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する、請求項4に記載の弁装置。
【請求項7】
前記第2外側ランド部は、前記第2スプールが前記第2中立位置にある場合に前記第2パイロット室から前記第2タンク通路を遮断し、前記第2スプールが前記第2パイロット室から離れる方向に前記第2中立位置から所定距離以上移動した場合に前記第2パイロット室と前記第2タンク通路とを連通させるエア抜き通路を有する、請求項2または3に記載の弁装置。
【請求項8】
前記第1スプールは、前記第1内側ランド部の外周面上における、前記ブームシリンダ用スプール穴と前記第1ポンプ通路との接続箇所より前記第3パイロット室側に位置する部分から、前記第1外側小径部に至る第1リーク用通路を有し、
前記第2スプールは、前記第2内側ランド部の外周面上における、前記ブームシリンダ用スプール穴と前記第2ポンプ通路との接続箇所より前記第3パイロット室側に位置する部分から、前記第2外側小径部に至る第2リーク用通路を有する、請求項2または3に記載の弁装置。
【請求項9】
前記第1内側ランド部の外周面には、第1リーク用溝があり、
前記第1リーク用通路は、前記第1リーク用溝に配置された第1入口ポートと、前記第1外側小径部に配置された第1出口ポートと、を含み、
前記第2内側ランド部の外周面には、第2リーク用溝があり、
前記第2リーク用通路は、前記第2リーク用溝に配置された第2入口ポートと、前記第2外側小径部に配置された第2出口ポートと、を含む、請求項8に記載の弁装置。
【請求項10】
前記第1スプールおよび前記第2スプールの少なくとも1つのスプールは、前記少なくとも1つのスプールが有する前記小径部の外周面に、前記少なくとも1つのスプールを識別するための識別マークを有する、請求項2または3に記載の弁装置。
【請求項11】
前記第1外側小径部の径は、前記第1内側小径部の径より大きい、請求項2または3に記載の弁装置。
【請求項12】
ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、
互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、
前記第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続される第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路および第2タンク通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのロッド側室に接続されるロッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのヘッド側室に接続されるヘッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴の両側に位置する第1パイロット室および第2パイロット室と、を有するハウジングと、を備え、
前記ブームシリンダ用スプール穴における前記第1スプールと前記第2スプールの間の部分が第3パイロット室を構成し、
前記第1スプールは、
前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を開閉する第1ポンプ側ランド部と、
前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を開閉する第1タンク側ランド部と、
前記第1ポンプ側ランド部と前記第1タンク側ランド部とを連結する第1小径部と、を含み、
前記第2スプールは、
前記第2ポンプ通路を第3パイロット室から遮断する第2内側ランド部と、
前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を開閉し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を開閉する第2中間ランド部と、
前記第2タンク通路を第2パイロット室から遮断する第2外側ランド部と、
前記第2内側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2内側小径部と、
前記第2外側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2外側小径部と、を含み、
前記第1ポンプ側ランド部は、前記第1ポンプ側ランド部の外周面における前記第1小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路とを連通させるための複数の第1ノッチを有し、
前記複数の第1ノッチの少なくとも1つのノッチは、前記第1小径部が接続される前記第1ポンプ側ランド部の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する、弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建設機械が備える複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ通路、第1給排通路、第2給排通路およびタンク通路を有するとともに、内部に第1パイロット室、第2パイロット室および第3パイロット室が形成されたハウジングと、互いに独立した第1スプールおよび第2スプールを含む弁装置が開示されている。なお、弁装置は、特許文献1では「方向・流量制御弁」と呼ばれている。この弁装置では、第1スプールと第2スプールとが互いに独立しているため、第1パイロット室と第3パイロット室との圧力差に応じて第1スプールを移動させることができるとともに、第2パイロット室と第3パイロット室との圧力差に応じて第2スプールを移動させることができる。これにより、液圧アクチュエータがどちらの方向に作動するときでも、メータイン側またはメータアウト側で独立メータリング制御を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/080311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ショベルや油圧クレーンなどの建設機械は、複数の油圧アクチュエータを備える。特許文献1の弁装置を、建設機械の複数の油圧アクチュエータを個別に動かすべく弁装置に適用する場合、作動油の流れを安定化させる観点から改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、建設機械の複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する弁装置において、作動油の流れの安定化を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る弁装置は、ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、前記第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続される第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路および第2タンク通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのロッド側室に接続されるロッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのヘッド側室に接続されるヘッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴の両側に位置する第1パイロット室および第2パイロット室と、を有するハウジングと、を備え、前記ブームシリンダ用スプール穴における前記第1スプールと前記第2スプールの間の部分が第3パイロット室を構成し、前記第1タンク通路および前記第2タンク通路のそれぞれは、前記複数のスプール穴と交差しており、前記第1スプールは、前記第1パイロット室と前記第3パイロット室との圧力差に応じて、前記ロッド側通路を前記第1ポンプ通路および前記第1タンク通路の双方から遮断する第1中立位置と、前記ロッド側通路を前記第1ポンプ通路と前記第1タンク通路とのいずれかと連通させる第1ブーム駆動位置との間で移動し、前記第2スプールは、前記第2パイロット室と前記第3パイロット室との圧力差に応じて、前記ヘッド側通路を前記第2ポンプ通路および前記第2タンク通路の双方から遮断する第2中立位置と、前記ヘッド側通路を前記第2ポンプ通路と前記第2タンク通路とのいずれかと連通させる第2ブーム駆動位置との間で移動し、前記第1スプールおよび前記第2スプールの各スプールは、前記軸方向に間隔をあけて並ぶ3つ以上のランド部と、隣接する前記ランド部を連結する2つ以上の小径部と、を含み、前記第1スプールの前記2つ以上の小径部のうちの1つの前記小径部の周りの環状空間は、前記第1スプールが少なくとも前記第1中立位置にある場合に前記第1タンク通路と連通し、前記第2スプールの前記2つ以上の小径部のうちの1つの前記小径部の周りの環状空間は、前記第2スプールが少なくとも前記第2中立位置にある場合に前記第2タンク通路と連通する。
【0007】
本開示の別の態様に係る弁装置は、ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、前記第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続される第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路および第2タンク通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのロッド側室に接続されるロッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのヘッド側室に接続されるヘッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴の両側に位置する第1パイロット室および第2パイロット室と、を有するハウジングと、を備え、前記ブームシリンダ用スプール穴における前記第1スプールと前記第2スプールの間の部分が第3パイロット室を構成し、前記第1スプールは、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を開閉する第1ポンプ側ランド部と、前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を開閉する第1タンク側ランド部と、前記第1ポンプ側ランド部と前記第1タンク側ランド部とを連結する第1小径部と、を含み、前記第2スプールは、前記第2ポンプ通路を第3パイロット室から遮断する第2内側ランド部と、前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を開閉し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を開閉する第2中間ランド部と、前記第2タンク通路を第2パイロット室から遮断する第2外側ランド部と、前記第2内側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2内側小径部と、前記第2外側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2外側小径部と、を含み、前記第1ポンプ側ランド部は、前記第1ポンプ側ランド部の外周面における前記第1小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路とを連通させるための複数の第1ノッチを有し、前記複数の第1ノッチの少なくとも1つのノッチは、前記第1小径部が接続される前記第1ポンプ側ランド部の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、建設機械の複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する弁装置において、作動油の流れの安定化を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る弁装置が搭載される油圧ショベルの側面図である。
図2】弁装置を含む油圧回路の一部を示す図である。
図3】弁装置の上面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】弁装置における離間型スプールがブーム下げ位置にある状態を説明する図である。
図6】弁装置における離間型スプールがブーム上げ位置にある状態を説明する図である。
図7】軸方向に平行な面で切断した離間型スプールの側面断面図である。
図8】ブーム下げ時のスプールのストローク量とメータイン流路の開口面積との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態に係る弁装置について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る弁装置が搭載される油圧ショベル1の側面図である。油圧ショベル1は自走式であり、走行体2を含む。また、油圧ショベル1は、走行体2に旋回可能に支持された旋回体3と、旋回体3に対して俯仰するブームを含む。ブームの先端にはアームが揺動可能に連結されており、アームの先端にはバケットが揺動可能に連結されている。旋回体3には、運転席が設置されたキャビン4が配置されている。なお、油圧ショベル1は自走式でなくてもよい。
【0012】
油圧ショベル1は、複数の油圧アクチュエータ5を備える。具体的には、油圧ショベル1は、油圧アクチュエータ5として、ブームを俯仰させるブームシリンダ5Aと、アームを揺動させるアームシリンダ5Bと、バケットを揺動させるバケットシリンダ5Cを含む。また、図示は省略するが、油圧ショベル1は、双方向に作動する油圧アクチュエータとして、走行体2の左クローラを駆動する左走行モータおよび右クローラを駆動する右走行モータと、旋回体3を旋回させる旋回モータなども含み得る。これら複数の油圧アクチュエータ5に給排される作動油の流れは、本実施形態の弁装置により制御される。
【0013】
図2は、本実施形態の弁装置10を含む油圧回路の一部を示す図である。具体的には、図2では、複数の油圧アクチュエータ5のうちブームシリンダ5Aに対する給排制御に関する回路のみ示し、他の油圧アクチュエータ5に対する給排制御に関する回路は省略している。弁装置10は、油圧ポンプ6から複数の油圧アクチュエータ5へ供給される作動油の流れを制御する。弁装置10は、油圧回路において油圧ポンプ6と複数の油圧アクチュエータ5との間に介在する。
【0014】
図2に示すように、ブームシリンダ5Aは、ブームを下げる方向、すなわちブームを重力方向に駆動するときに作動油が供給されるロッド側室5aと、ブームを上げる方向、すなわちブームを反重力方向に駆動するときに作動油が供給されるヘッド側室5bとを含む。
【0015】
図3は、弁装置10の上面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。図3に示すように、弁装置10は、ハウジング11と、ハウジング11に摺動可能に保持される複数のスプール12とを含む。
【0016】
ハウジング11は、略直方体状のハウジング本体11Aと、ハウジング本体11Aの一辺に沿って延びるブロック11Bを含む。また、ハウジング11は、スプール12と同数の第1カバー11Cおよび第2カバー11Dとを含む。ただし、ハウジング11の構成はこれに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0017】
ハウジング本体11Aは、下方を向く第1面21および上方を向く第2面22を含む。また、ハウジング本体11Aは、複数のスプール穴23を含む。図4に示すように、各スプール穴23は、上下方向に延在する。各スプール穴23は、ハウジング本体11Aを上下方向に貫通しており、第1面21および第2面22に開口する。複数のスプール穴23は、互いに平行である。すなわち、スプール穴23と同様に、複数のスプール12も、互いに平行であり、上下方向に延在する。
【0018】
また、図3に示すように、複数のスプール穴23は、上下方向に垂直な方向に一列に並んで配置されている。また、複数のスプール12は、上下方向に垂直な方向に一列に並んだ状態でハウジング本体11Aに保持されている。
【0019】
複数のスプール穴23は、それぞれ、複数の油圧アクチュエータ5に対応している。すなわち、スプール穴23の数は、油圧アクチュエータ5の数と同じである。各スプール穴23内を摺動するスプール12によって、対応する油圧アクチュエータ5が制御される。図3に示すように、スプール穴23の数が5つである。例えば複数のスプール穴23は、ブームシリンダ5A用のスプール穴23Aを含む。また、複数のスプール穴23は、アームシリンダ5B用のスプール穴や、バケットシリンダ5C用のスプール穴などを含む。なお、スプール穴23の数は、4以下または6以上であってもよい。スプール穴23の数は、油圧アクチュエータ5の数と異なってもよい。
【0020】
図4の断面図は、複数のスプール穴23のうちのブームシリンダ5A用のスプール穴23Aの中心線に沿って切断した図である。図4に示すように、ブームシリンダ用スプール穴23Aに挿入されるブームシリンダ用のスプール12Aは、離間型スプールである。すなわち、ブームシリンダ用スプール12Aは、スプール穴23A内で互いに軸方向に離間する第1スプール50および第2スプール60を含む。第1スプール50は、第2スプール60より下方に位置する。第1スプール50および第2スプール60の詳細は後述する。
【0021】
本実施形態では、図3および4には示されていないが、ハウジング本体11Aのある面上には、ポンプポート24aおよびタンクポート24bが配置されている。図2に示すように、ポンプポート24aは配管により油圧ポンプ6と接続され、タンクポート24bは配管によりタンク7と接続される。
【0022】
図2に示すように、ハウジング本体11Aは、ポンプポート24aから全てのスプール穴23に至る供給通路25を有する。供給通路25は、スプール穴23の中央近傍でスプール12の並び方向に延びる横断路25cと、横断路25cからブームシリンダ用スプール穴23Aに作動油を導く第1ポンプ通路25aおよび第2ポンプ通路25bを含む。供給通路25における横断路25cと、第1ポンプ通路25aおよび第2ポンプ通路25bとの間に、逆止弁26が配置されている。逆止弁26は、スプール穴23Aから横断路25cに作動油が逆流するのを防止する。図4に示すように、第2ポンプ通路25bは、第1ポンプ通路25aより上方でスプール穴23Aに接続されている。
【0023】
図2に示すように、ハウジング本体11Aは、全てのスプール穴23からタンクポート24bに至る排出通路27を有する。排出通路27は、各スプール穴23の両端部を通るようにスプール12の並び方向に延びる2つの第1タンク通路27aおよび第2タンク通路27bと、第1タンク通路27aおよび第2タンク通路27bをタンクポート24bと連通する出口通路27cを含む。
【0024】
図3に破線で示すように、第1タンク通路27aおよび第2タンク通路27bのそれぞれは、複数のスプール穴23を横断するように延びている。言い換えれば、第1タンク通路27aおよび第2タンク通路27bのそれぞれは、複数のスプール穴23と交差している。
【0025】
図4に示すように、第1タンク通路27aおよび第2タンク通路27bは、ブームシリンダ用スプール穴23Aの軸方向における第1ポンプ通路25aおよび第2ポンプ通路25bよりも外側でスプール穴23Aに接続されている。より詳しくは、第1タンク通路27aは、第1ポンプ通路25aより下方でスプール穴23Aに接続されており、第2タンク通路27bは、第2ポンプ通路25bより上方で、スプール穴23Aに接続されている。
【0026】
図4に示すように、ハウジング本体11Aのある面上に、ブームシリンダ用スプール12Aに対応するロッド側ポート24cおよびヘッド側ポート24dが配置されている。図2に示すように、ロッド側ポート24cは、配管によりブームシリンダ5Aのロッド側室5aと接続され、ヘッド側ポート24dは、配管によりブームシリンダ5Aのヘッド側室5bと接続される。
【0027】
ハウジング本体11Aは、ロッド側通路28を含む。ロッド側通路28は、ロッド側ポート24cとスプール穴23Aとの間を接続する。すなわち、ロッド側通路28は、ロッド側ポート24cを通じてブームシリンダ5Aのロッド側室5aに接続される。図4に示すように、ロッド側通路28は、スプール穴23Aの軸方向における第1ポンプ通路25aに対し第2ポンプ通路25bの反対側、即ち第1ポンプ通路25aの下方で、スプール穴23Aに接続される。ロッド側通路28は、スプール穴23Aの軸方向における第1ポンプ通路25aと第1タンク通路27aとの間でスプール穴23Aに接続される。
【0028】
ハウジング本体11Aは、ヘッド側通路29を含む。ヘッド側通路29は、ヘッド側ポート24dとスプール穴23Aとの間を接続する。すなわち、ヘッド側通路29は、ヘッド側ポート24dを通じてブームシリンダ5Aのヘッド側室5bに接続される。図4に示すように、ヘッド側通路29は、スプール穴23Aの軸方向における第2ポンプ通路25bに対し第1ポンプ通路25aの反対側、即ち第2ポンプ通路25bの上方でスプール穴23Aに接続される。ヘッド側通路29は、スプール穴23Aの軸方向における第2ポンプ通路25bと第2タンク通路27bとの間でスプール穴23Aに接続される。
【0029】
ハウジング11は、スプール穴23Aの両側に位置する第1パイロット室P1および第2パイロット室P2を有する。具体的には、第1カバー11Cが容器状の形状を有している。第1カバー11Cは、第1カバー11Cの開口縁がスプール穴23Aの下端部の開口を囲むように、第1面21に取り付けられている。こうして、第1カバー11Cの開口がハウジング本体11Aの第1面21で閉塞されることで第1パイロット室P1が構成されている。また、第2カバー11Dが容器状の形状を有している。第2カバー11Dは、第2カバー11Dの開口縁がスプール穴23Aの上端部の開口を囲むように、第2面22に取り付けられている。こうして、第2カバー11Dの開口がハウジング本体11Aの第2面22で閉塞されることで第2パイロット室P2が構成されている。
【0030】
第1パイロット室P1内には、第1スプール50に当該第1スプール50を中立位置に維持するための付勢力を与える第1スプリング31が配置されている。第1スプリング31は、第1スプール50を、スプリング座を介して第2スプール60に向かって直接的に付勢する。一方、第2スプール60とは反対側の第1スプール50の端面には頭部付ロッド32が取り付けられており、第1スプリング31は、第1スプール50を、スプリング座および頭部付ロッド32を介して第2スプール60と反対向きに付勢する。
【0031】
同様に、第2パイロット室P2内には、第2スプール60に当該第2スプール60を中立位置に維持するための付勢力を与える第2スプリング33が配置されている。第2スプリング33は、第2スプール60を、スプリング座を介して第1スプール50に向かって直接的に付勢する。一方、第1スプール50とは反対側の第2スプール60の端面には頭部付ロッド34が取り付けられており、第2スプリング33は、第2スプール60を、スプリング座および頭部付ロッド34を介して第1スプール50と反対向きに付勢する。
【0032】
第1スプリング31と第2スプリング33は互いに同じ構成を有する。すなわち、第1スプリング31が第1スプール50に与える付勢力と、第2スプリング33が第2スプール60に与える付勢力は等しい。なお、第1スプリング31と第2スプリング33は互いに異なる構成でもよく、第1スプリング31が第1スプール50に与える付勢力と、第2スプリング33が第2スプール60に与える付勢力とは異なってもよい。
【0033】
ブームシリンダ用スプール穴23Aにおける第1スプール50と第2スプール60との間の部分が第3パイロット室P3を構成している。離間型スプールであるブームシリンダ用のスプール12Aは、第1パイロット室P1、第2パイロット室P2および第3パイロット室P3の各パイロット室の圧力に応じて、ブームシリンダ5Aに対して作動油を給排したり、ブームシリンダ5Aに対する作動油の給排を禁止したりする。
【0034】
図2に示すように、弁装置10は、第1パイロット室P1の圧力を調整するための第1電磁比例弁41と、第2パイロット室P2の圧力を調整するための第2電磁比例弁42と、第3パイロット室P3の圧力を調整するための第3電磁比例弁43を含む。第1電磁比例弁41は、パイロット通路44により、第1パイロット室P1と接続されている。第2電磁比例弁42は、パイロット通路45により、第2パイロット室P2と接続されている。第3電磁比例弁43は、パイロット通路46により、第3パイロット室P3と接続されている。
【0035】
弁装置10は、一次圧通路47およびドレン通路48を含む。一次圧通路47に、第1電磁比例弁41、第2電磁比例弁42および第3電磁比例弁43が接続されている。一次圧通路47は、ハウジング11は、一次圧ポート24eを有する。この一次圧ポート24eが一次圧配管により副ポンプ8と接続される。ドレン通路48に、第1電磁比例弁41、第2電磁比例弁42および第3電磁比例弁43が接続されている。ドレン通路48は、例えばタンク7に接続されている。
【0036】
第1電磁比例弁41は、ブームシリンダ用スプール12Aの第1パイロット室P1へ二次圧を出力するか、第1パイロット室P1をドレン通路48と連通させる。第2電磁比例弁42は、ブームシリンダ用スプール12Aの第2パイロット室P2へ二次圧を出力するか、第2パイロット室P2をドレン通路48と連通させる。第3電磁比例弁43は、ブームシリンダ用スプール12Aの第3パイロット室P3へ二次圧を出力するか、第3パイロット室P3をドレン通路48と連通させる。
【0037】
複数のスプール12は、ブームシリンダ用のスプール12A以外にも、離間型スプールを含み得る。弁装置10は、離間型スプールにつき、第1電磁比例弁41、第2電磁比例弁42および第3電磁比例弁43のセットを含む。また、複数のスプール12のうち、離間型スプール以外のスプールは、一体型スプールである。一体型スプールは、当該一体型スプールの下端部に面する第1パイロット室と、当該一体型スプールの上端部に面する第2パイロット室の圧力に応じて、当該一体型スプールに対応する油圧アクチュエータ5に対して作動油を給排したり作動油の給排を禁止したりする。弁装置10は、一体型スプールにつき、第1電磁比例弁41および第2電磁比例弁42のセットを含む。
【0038】
本実施形態では、図3に示すように、各スプール12に対応する第2電磁比例弁42は、ブロック11Bに取り付けられている。また、同様に、離間型スプール12に対応する第3電磁比例弁43も、ブロック11Bに取り付けられている。一方、各スプール12に対応する第1電磁比例弁41は、第1カバー11Cに取り付けられている。ただし、第1電磁比例弁41、第2電磁比例弁42および第3電磁比例弁43のハウジング11への取付方法はこれに限定されない。例えば第1電磁比例弁41は、第2電磁比例弁42および第3電磁比例弁43とともにブロック11Bに取り付けられてもよいし、あるいは、ハウジング本体11Aに直接取り付けられてもよい。
【0039】
(ブームシリンダ用スプールの詳細)
次に、ブームシリンダ用スプール12Aの詳細について、図4乃至7を参照して、より詳しく説明する。ブームシリンダ用スプール12Aは、第1パイロット室P1、第2パイロット室P2および第3パイロット室P3の各パイロット室の圧力に応じて、ブームシリンダ5Aに対して作動油を給排したり、ブームシリンダ5Aに対する作動油の給排を禁止したりする。
【0040】
第1スプール50は、ロッド側通路28を供給通路25と排出通路27のどちらと連通させるかを切り換え、第2スプール60は、ヘッド側通路29を供給通路25と排出通路27のどちらと連通させるかを切り換える。
【0041】
第1スプール50は、第1パイロット室P1と第3パイロット室P3との圧力差に応じて、第1中立位置と、第1ブーム下げ位置と、第1ブーム上げ位置との間で移動する。第2スプール60は、第2パイロット室P2と第3パイロット室P3との圧力差に応じて、第2中立位置と、第2ブーム下げ位置と、第2ブーム上げ位置との間で移動する。図4は、第1スプール50が第1中立位置にあり、第2スプール60が第2中立位置にある状態を示す。図5は、第1スプール50が第1ブーム下げ位置にあり、第2スプール60が第2ブーム下げ位置にある状態を示す。図6は、第1スプール50が第1ブーム上げ位置にあり、第2スプール60が第2ブーム上げ位置にある状態を示す。第1ブーム下げ位置および第1ブーム上げ位置とは、第1ブーム駆動位置に対応し、第2ブーム下げ位置および第2ブーム上げ位置とは、第2ブーム駆動位置に対応する。なお、図5および6では、ハウジング11の一部は省略している。
【0042】
図4に示すように、第1スプール50が第1中立位置にあり、第2スプール60が第2中立位置にある状態では、ブームシリンダ5Aに対する作動油の給排が禁止され、ブームは駆動しない。より詳しくは、第1スプール50が第1中立位置にあるとき、第1スプール50は、ロッド側通路28を第1ポンプ通路25aおよび第1タンク通路27aの双方から遮断し、第2スプール60が第2中立位置にあるとき、ヘッド側通路29を第2ポンプ通路25bおよび第2タンク通路27bの双方から遮断する。
【0043】
図5に示すように、第1スプール50と第2スプール60が互いに近づくように移動すると、第1スプール50の位置が第1ブーム下げ位置となり、第2スプール60の位置が第2ブーム下げ位置となる。第1スプール50が第1ブーム下げ位置にあるとき、第1スプール50は、ロッド側通路28を第1ポンプ通路25aと連通させ、第2スプール60が第2ブーム下げ位置にあるとき、ヘッド側通路29を第2タンク通路27bと連通させる。これにより、ブームシリンダ5Aのロッド側室5aへ作動油が供給され、ヘッド側室5bから作動油が排出される。その結果、ブームは下がる方向に駆動される。
【0044】
図6に示すように、第1スプール50と第2スプール60が互いに遠ざかるように移動すると、第1スプール50の位置が第1ブーム上げ位置となり、第2スプール60の位置が第2ブーム上げ位置となる。第1スプール50が第1ブーム上げ位置にあるとき、第1スプール50は、ロッド側通路28を第1タンク通路27aと連通させ、第2スプール60が第2ブーム上げ位置にあるとき、ヘッド側通路29を第2ポンプ通路25bと連通させる。これにより、ブームシリンダ5Aのヘッド側室5bへ作動油が供給され、ロッド側室5aから作動油が排出される。その結果、ブームは上がる方向に駆動される。
【0045】
(第1スプールの構造)
第1スプール50は、第1内側ランド部51、第1内側小径部52、第1中間ランド部53、第1外側小径部54および第1外側ランド部55を含む。第1内側ランド部51、第1内側小径部52、第1中間ランド部53、第1外側小径部54および第1外側ランド部55は、第3パイロット室P3から第1パイロット室P1に向かう方向にこの順に並んでいる。すなわち、第1内側小径部52は、第1内側ランド部51と第1中間ランド部53とを連結し、第1外側小径部54は、第1中間ランド部53と第1外側ランド部55とを連結している。なお、第1内側ランド部51は、第1ポンプ側ランド部に対応し、第1中間ランド部53は、第1タンク側ランド部に対応し、第1内側小径部52は、第1小径部に対応する。
【0046】
第1内側ランド部51、第1中間ランド部53、および第1外側ランド部55は、スプール穴23Aに対して摺動する。第1内側小径部52および第1外側小径部54は、スプール穴23Aの径、言い換えれば第1スプール50の各ランド部51,53,55の径より小さい。すなわち、スプール穴23Aにおける第1内側小径部52の周りと、スプール穴23Aにおける第1外側小径部54の周りとには、それぞれ、作動油が流入出する環状空間S1,S2が構成されている。第1外側小径部54の径は、第1内側小径部52の径より大きい。
【0047】
第1内側ランド部51は、第1ポンプ通路25aを第3パイロット室P3から遮断する。また、第1内側ランド部51は、ロッド側通路28と第1ポンプ通路25aとの間を開閉する。第1中間ランド部53は、ロッド側通路28と第1タンク通路27aとの間を開閉する。第1外側ランド部55は、第1タンク通路27aを第1パイロット室P1から遮断する。
【0048】
第1スプール50が少なくとも第1中立位置にある場合に、第1内側ランド部51は、ロッド側通路28と第1ポンプ通路25aとの間を遮断し、且つ、第1中間ランド部53は、ロッド側通路28と第1タンク通路27aとの間を遮断する。図4に示すように、第1スプール50が第1中立位置にある場合には、第1内側ランド部51の外周面によって、第1ポンプ通路25aの端部が閉塞された状態となっている。
【0049】
第1外側小径部54の周りの環状空間S2は、第1スプール50が少なくとも第1中立位置にある場合に第1タンク通路27aと連通している。図4に示すように、本実施形態では、第1タンク通路27aにおけるスプール穴23Aに交差する部分と、第1外側小径部54とで、スプール穴23Aの軸方向における幅が同じである。また、第1スプール50が第1中立位置にある状態では、スプール穴23Aの軸方向に垂直に見たときに、第1外側小径部54の全部が、第1タンク通路27aにおけるスプール穴23Aとの交差箇所と重なっている。
【0050】
ただし、第1タンク通路27aにおけるスプール穴23Aに交差する部分と、第1外側小径部54とで、スプール穴23Aの軸方向における幅が異なってもよい。また、第1スプール50が第1中立位置にある状態では、スプール穴23Aの軸方向に垂直に見たときに、第1外側小径部54の半分以上が、第1タンク通路27aにおけるスプール穴23Aとの交差箇所と重なることが好ましい。
【0051】
(第2スプールの構造)
第2スプール60は、第2内側ランド部61、第2内側小径部62、第2中間ランド部63、第2外側小径部64および第2外側ランド部65を含む。第2内側ランド部61、第2内側小径部62、第2中間ランド部63、第2外側小径部64および第2外側ランド部65は、第3パイロット室P3から第2パイロット室P2に向かう方向にこの順に並んでいる。すなわち、第2内側小径部62は、第2内側ランド部61と第2中間ランド部63とを連結し、第2外側小径部64は、第2中間ランド部63と第2外側ランド部65とを連結している。
【0052】
第2内側ランド部61、第2中間ランド部63、および第2外側ランド部65は、スプール穴23Aに対して摺動する。第2内側小径部62および第2外側小径部64は、スプール穴23Aの径、言い換えれば第2スプール60の各ランド部61,63,65の径より小さい。すなわち、スプール穴23Aにおける第2内側小径部62の周りと、スプール穴23Aにおける第2外側小径部64の周りとには、それぞれ、作動油が流入出する環状空間S3,S4が構成されている。
【0053】
第2内側ランド部61は、第2ポンプ通路25bを第3パイロット室P3から遮断する。第2中間ランド部63は、ヘッド側通路29と第2ポンプ通路25bとの間を開閉し、且つ、ヘッド側通路29と第2タンク通路27bとの間を開閉する。第2外側ランド部65は、第2タンク通路27bを第2パイロット室P2から遮断する。
【0054】
第2外側小径部64の周りの環状空間S4は、第2スプール60が少なくとも第2中立位置にある場合に第2タンク通路27bと連通している。図4に示すように、本実施形態では、第2外側小径部64の方が、第2タンク通路27bにおけるスプール穴23Aに交差する部分より、スプール穴23Aの軸方向における幅が大きい。また、第2スプール60が第2中立位置にある状態では、スプール穴23Aの軸方向に垂直に見たときに、第2外側小径部64の半分以上が、第2タンク通路27bにおけるスプール穴23Aとの交差箇所と重なっている。
【0055】
第2スプール60が少なくとも第2中立位置にある場合に、第2中間ランド部63は、ヘッド側通路29と第2ポンプ通路25bとの間を遮断し、且つ、ヘッド側通路29と第2タンク通路27bとの間を遮断する。図4に示すように、第2スプール60が第2中立位置にある場合には、第2中間ランド部63の外周面によって、ヘッド側通路29の端部が閉塞された状態となっている。
【0056】
(ノッチ)
図4に示すように、第1内側ランド部51は、ロッド側通路28と第1ポンプ通路25aとを連通させるための複数の第1ノッチ51aを有する。複数の第1ノッチ51aは、第1内側ランド部51の外周面における第1内側小径部52側の端部において周方向に間隔をあけて並んでいる。複数の第1ノッチ51aは、それぞれ、第1内側小径部52側の第1内側ランド部51の端面から、スプール穴23Aの軸方向に延びている。
【0057】
第1中間ランド部53は、ロッド側通路28と第1タンク通路27aとを連通させるための複数の第2ノッチ53aを有する。複数の第2ノッチ53aは、第1中間ランド部53の外周面における第1内側小径部52側の端部において周方向に間隔をあけて並んでいる。複数の第2ノッチ53aは、それぞれ、第1内側小径部52側の第1中間ランド部53の端面から、スプール穴23Aの軸方向に延びている。
【0058】
第2中間ランド部63は、ヘッド側通路29と第2ポンプ通路25bとを連通させるための複数の第3ノッチ63aを有する。複数の第3ノッチ63aは、第2中間ランド部63の外周面における第2内側小径部62側の端部において周方向に間隔をあけて並んでいる。複数の第3ノッチ63aは、それぞれ、第2内側小径部62側の第2中間ランド部63の端面から、スプール穴23Aの軸方向に延びている。
【0059】
第2中間ランド部63は、ヘッド側通路29と第2タンク通路27bとを連通させるための複数の第4ノッチ63bを有する。複数の第4ノッチ63bは、第2中間ランド部63の外周面における第2外側小径部64側の端部において周方向に間隔をあけて並んでいる。複数の第4ノッチ63bは、それぞれ、第2外側小径部64側の第2中間ランド部63の端面から、スプール穴23Aの軸方向に延びている。複数の第4ノッチ63bの数は、複数の第3ノッチ63aの数より多い。
【0060】
図7は、軸方向に平行な面で切断した離間型スプールの側面断面図である。なお、図7では、第1ノッチ51a、第2ノッチ53a、第3ノッチ63a、第4ノッチ63b、並びに、後述するエア抜き通路65aやリーク用通路81,82の形状が理解されやすいように、これらを切断して示している。
【0061】
図7に示すように、第1ノッチ51aおよび第2ノッチ53aと、第3ノッチ63aおよび第4ノッチ63bとで、底面の形状が互いに異なる。第1ノッチ51aおよび第2ノッチ53aの各底面は、各ランド部の端面から軸方向中央側へと離れるほど、径方向外方へ向かうように傾斜している。より詳しくは、第1ノッチ51aは、第1内側小径部52が接続される第1内側ランド部51の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する。第2ノッチ53aは、第1内側小径部52が接続される第1中間ランド部53の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する。一方、第3ノッチ63aおよび第4ノッチ63bの各底面は、軸方向の一端から他端に至るまで、スプール12Aの軸中心から一定の距離に保たれている。
【0062】
(エア抜き通路)
第2外側ランド部65は、エア抜き通路65aを有する。エア抜き通路65aは、第2外側ランド部65の第2パイロット室P2に面する端面から、第2スプール軸方向に延びている。図4に示すように、エア抜き通路65aは、第2外側ランド部65の外周面に配置されている。すなわち、エア抜き通路65aは、第2パイロット室P2に面する第2外側ランド部65の端面から、第2外側ランド部65の外周面において軸方向に延びるノッチである。なお、エア抜き通路65aは、第2外側ランド部65の内部を通過してもよい。
【0063】
エア抜き通路65aは、第2スプール60が第2中立位置にある場合、第2パイロット室P2から第2タンク通路27bを遮断し、第2スプール60が中立位置から第2パイロット室P2から離れる方向に所定距離以上移動した場合に、第2パイロット室P2と第2タンク通路27bとを連通させる。
【0064】
エア抜き通路65aの作用について説明する。より詳しく説明すれば、本実施形態の弁装置10において、第2スプール60は第1スプール50より上方に位置する。例えば建設機械を一定期間放置する場合など、スプール12Aが移動しない状態で時間が経過すると、第1パイロット室P1やスプール穴23A内の作動油中の気泡が、スプール穴23Aの内周面とスプール12Aの外周面との間の隙間を通って、第1パイロット室P1や、第3パイロット室P3を含むスプール穴23Aよりも上方に位置する第2パイロット室P2へと徐々に上昇していく。このため、第2パイロット室P2には、エアが時間の経過とともに溜まっていく。このように、第2パイロット室P2にエアが溜まった場合でも、油圧ショベル1の使用を開始する際に第2スプール60を第1スプール50に近づける方向に例えばフルストロークさせることによって、エア抜き通路65aを介して、第2パイロット室P2に溜まったエアを、第2パイロット室P2より低圧の第2タンク通路27bへ逃すことができる。
【0065】
(リーク用通路)
図7に示すように、第1スプール50は、第1内側ランド部51の外周面上における、ブームシリンダ用スプール穴23Aと第1ポンプ通路25aとの接続箇所より第3パイロット室P3側に位置する部分から、第1外側小径部54に至る第1リーク用通路81を有する。第1リーク用通路81は、第1入口ポート81aと第1出口ポート81bを含む。第1入口ポート81aは、第1内側ランド部51における第1ポンプ通路25aと第3パイロット室P3とを遮断する部分に配置されている。第1出口ポート81bは、第1外側小径部54に配置されている。第1リーク用通路81における第1入口ポート81aと第1出口ポート81bの間の部分は、第1スプール50の内部を通過する。
【0066】
より詳しくは、第1内側ランド部51の外周面には、第1リーク用溝51bがある。第1リーク用溝51bは、第1スプール50および第2スプール60が互いに遠ざかるように移動した場合にも、常に第3パイロット室P3と、ブームシリンダ用スプール穴23Aにおける第1ポンプ通路25aの接続箇所との間に位置するよう、第1内側ランド部51の外周面に位置付けられている。第1リーク用溝51bに第1入口ポート81aが配置されている。
【0067】
第2スプール60は、第2内側ランド部61の外周面上における、ブームシリンダ用スプール穴23Aと第2ポンプ通路25bとの接続箇所より第3パイロット室P3側に位置する部分から、第2外側小径部64に至る第2リーク用通路82を有する。第2リーク用通路82は、第2入口ポート82aと第2出口ポート82bを含む。第2入口ポート82aは、第2内側ランド部61における第2ポンプ通路25bと第3パイロット室P3とを遮断する部分に配置されている。第2出口ポート82bは、第2外側小径部64に配置されている。第2リーク用通路82における第2入口ポート82aと第2出口ポート82bの間の部分は、第2スプール60の内部を通過する。
【0068】
より詳しくは、第2内側ランド部61の外周面には、第2リーク用溝61aがある。第2リーク用溝61aは、第1スプール50および第2スプール60が互いに遠ざかるように移動した場合にも、常に第3パイロット室P3と、ブームシリンダ用スプール穴23Aにおける第2ポンプ通路25bの接続箇所との間に位置するよう、第2内側ランド部61の外周面に位置付けられている。第2リーク用溝61aに第2入口ポート82aが配置されている。
【0069】
(識別マーク)
図4に示すように、第1スプール50は、第1スプール50を識別するための第1識別マーク91を有する。第1識別マーク91は、第1内側小径部52の外周面に配置されている。第1識別マーク91は、例えば刻印である。第1識別マーク91は、第1スプール50の小径部に直接刻印されていてもよい。あるいは、第1識別マーク91は、第1スプール50の小径部に対して取り付けられる、銘板などの別の部材に対して刻印されていてもよい。刻印は、例えばレーザ刻印であってもよいし、ポンチまたはエアペンを用いた打刻であってもよい。第1識別マーク91により第1スプール50の型式が把握可能である。
【0070】
第1識別マーク91は、第1スプール50を識別するための情報だけでなく、第1スプール50を付勢する第1スプリング31を識別するための情報も含む。具体的には、本実施形態では、第1カバー11C、第1スプリング31、頭部付ロッド32および第1スプール50が、ハウジング本体11Aに対して一体的に取り付けられる1つのユニットを構成しており、第1識別マーク91は当該ユニットの識別を可能にする。すなわち、第1識別マーク91により第1スプリング31の型式なども把握可能である。
【0071】
本実施形態では、第1内側小径部52が、第1外側小径部54よりも軸線方向に長い。このため、第1内側小径部52の外周面の方がマークを配置するスペースが広いため、第1識別マーク91は、第1内側小径部52の外周面に配置されたが、第1識別マーク91は、第1外側小径部54に配置されてもよい。
【0072】
第2スプール60は、第2スプール60を識別するための第2識別マーク92を有する。第2識別マーク92は、第2外側小径部64の外周面に配置されている。第2識別マーク92は、例えば刻印である。例えば、第2識別マーク92は、第2スプール60の小径部に直接刻印されていてもよい。あるいは、第2識別マーク92は、第2スプール60の小径部に対して取り付けられる、銘板などの別の部材に対して刻印されていてもよい。刻印は、例えばレーザ刻印であってもよいし、ポンチまたはエアペンを用いた打刻であってもよい。第2識別マーク92により第2スプール60の型式が把握可能である。
【0073】
第2識別マーク92は、第2スプール60を識別するための情報だけでなく、第2スプール60を付勢する第2スプリング33を識別するための情報も含む。具体的には、本実施形態では、第2カバー11D、第2スプリング33、頭部付ロッド34および第2スプール60が、ハウジング本体11Aに対して一体的に取り付けられる1つのユニットを構成しており、第2識別マーク92は当該ユニットの識別を可能にする。すなわち、第2識別マーク92により第2スプリング33の型式なども把握可能である。
【0074】
本実施形態では、第2内側小径部62と第2外側小径部64とで、軸線方向の長さがほぼ同じである。第2内側小径部62の周りの環状空間S3の油圧が、第2外側小径部64の周りの環状空間S4の油圧より低いため、本実施形態では、第2識別マーク92ができるだけ高圧にさらされないよう、第2外側小径部64の外周面に配置されたが、第2識別マーク92は、第2内側小径部62に配置されてもよい。
【0075】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態の弁装置10では、第1スプール50が第1中立位置にある場合に、第1外側小径部54の周りの環状空間S2が第1タンク通路27aと連通し、第2スプール60が第2中立位置にある場合に、第2外側小径部64の周りの環状空間S4が第2タンク通路27bと連通している。このため、第1タンク通路27aおよび第2タンク通路27bの各タンク通路におけるブームシリンダ用スプール穴23Aとの交差箇所での流路断面積を確保することができ、第1タンク通路27aと第2タンク通路27bを流れる作動油の圧力損失を低減することができる。これにより、作動油の流れの安定化を向上させることができる。
【0076】
ところで、ブームを下げるべく、第2スプール60を移動させて、ヘッド側通路29から第2タンク通路27bへ作動油を流す際、ヘッド側通路29から第2タンク通路27bへの作動油の流量は大きい。本実施形態では、第2スプール60が第2中立位置にある場合には、第2中間ランド部63の外周面によって、ヘッド側通路29の端部が閉塞された状態となっている。このため、ヘッド側通路29から第2タンク通路27bへ作動油が流れるときに、ヘッド側通路29の圧力が第2中間ランド部63の外周面で受けられて、第2外側小径部64の周りの環状空間S4の圧力は低く保たれる。このため、ブーム下げの際に、第2スプール60が作動油から受ける軸方向の流体力を受けにくくすることができる。
【0077】
また、本実施形態では、複数の第4ノッチ63bの数は、複数の第3ノッチ63aの数より多いため、ブーム下げを行う際の複数の第4ノッチ63bを通じてヘッド側室5bからタンク7へ送られる作動油の流量を大きくすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、複数の第1ノッチ51aは、第1内側小径部52が接続される第1内側ランド部51の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する。このため、ブーム下げを行う際の第1スプール50のストロークに対する開口面積の変化量が大きくなるのを防ぐことができる。図8は、ブーム下げ時の第1スプール50のストローク量と、メータイン流路の開口面積、言い換えれば第1ポンプ通路25aからロッド側通路28へ向かう流路の開口面積との関係を示すグラフである。図8に示すように、第1ノッチ51aを前述のテーパを有する形状とすることによって、第1スプール50のストローク量に対する、第1ノッチ51aとスプール穴23Aの内周面とに囲まれる流路断面積の上昇率を一定または略一定に保っている。これにより、ブーム下げ時にロッド側室5aに大量に作動油が流れ込むのを抑制できる。
【0079】
また、本実施形態では、第1ポンプ通路25a側から第1内側ランド部51の外周面とブームシリンダ用スプール穴23Aの内周面との間にリークした作動油を、第1リーク用通路81を通じて第1タンク通路27aに逃がすことができ、第2ポンプ通路25b側から第2内側ランド部61の外周面とブームシリンダ用スプール穴23Aの内周面との間にリークした作動油を、第2リーク用通路82を通じて第2タンク通路27bに逃がすことができる。
【0080】
また、本実施形態では、第1スプール50が第1識別マーク91を有し、第2スプール60が第2識別マーク92を有するため、第1スプール50および第2スプール60を識別可能にする。また、第1識別マーク91および第2識別マーク92が、ハウジング11との接触がない箇所に配置されるため、各識別マークの劣化を抑制できる。
【0081】
また、本実施形態では、第1外側小径部54の径は、第1内側小径部52の径より大きい。このように第1外側小径部54の径を大きくすることで、ロッド側通路28から第1タンク通路27aへ作動油が流れる際に、第1外側小径部54と反対側の第1中間ランド部53の端面が軸方向に受ける油圧を支えることができる。
【0082】
(その他の実施形態)
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、または削除することができる。
【0083】
上記実施形態では、弁装置が油圧ショベルに搭載されたが、弁装置が搭載される建設機械はこれに限定されない。例えば建設機械は、油圧クレーンなど、ブームシリンダを備える別の建設機械であってもよい。
【0084】
上記実施形態では、複数のスプール12は、上下方向に延在していたが、スプール12の向きはこれに限定されない。例えば、弁装置が組み込まれる建設機械に応じて、弁装置の姿勢は自由に決められる。例えば弁装置における複数のスプールおよび複数のスプール穴は、上下方向に対して傾斜していたり、水平方向に延在していたりしてもよい。
【0085】
上記実施形態では、複数のスプール12の全てが、一列に並んでいたが、複数のスプール12の配置態様は、これに限定されない。複数のスプール12が二列以上に並んでいてもよい。
【0086】
第1スプール50および第2スプール60の形状は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば、第1スプール50および第2スプール60が含む複数のランド部および複数の小径部に関して、軸方向の幅や径の大きさなどは適宜変更可能である。例えば、第1外側小径部54の径は、第1内側小径部52の径と同じでもよいし、第1内側小径部52の径より小さくてもよい。
【0087】
上記実施形態では、第1スプール50が、3つのランド部51,53,55を備える構成であったが、第1スプール50は、ランド部を4つ以上備えてもよい。例えば第1内側ランド部51は、小径部により軸方向に互いに接続された第1サブランド部と第2サブランド部とを含む構成であってもよい。この場合、第1サブランド部は、ロッド側通路28と第1ポンプ通路25aとの間を開閉し、第2サブランド部は、第1ポンプ通路25aを第3パイロット室P3から遮断してもよい。また、第1サブランド部と第2サブランド部とを連結する小径部の周りの環状空間は、第1スプール50が少なくとも第1中立位置にある場合に第1ポンプ通路25aと連通していてもよい。また、第1リーク用溝51bは、第2サブランド部の外周面に配置されてもよい。このように、第1内側ランド部が、上記実施形態で説明された機能、すなわち、ロッド側通路と第1ポンプ通路との間を開閉し、且つ、第1ポンプ通路と第3パイロット室との間を遮断する機能を有する限り、複数のサブランド部を含んでいてもよい。同様に、第1中間ランド部や第1外側ランド部の各ランド部も、上記実施形態で説明された各ランド部の機能を有する限り、複数のサブランド部を含んでもよい。
【0088】
上記実施形態では、第2スプール60が、3つのランド部61,63,65を備える構成であったが、第2スプール60は、ランド部を4つ以上備えてもよい。例えば第2中間ランド部63は、小径部により軸方向に互いに接続された第3サブランド部と第4サブランド部とを含む構成であってもよい。この場合、第3サブランド部は、ヘッド側通路29と第2ポンプ通路25bとの間を開閉し、第4サブランド部は、ヘッド側通路29と第2タンク通路27bとの間を開閉してもよい。第3サブランド部と第4サブランド部とを連結する小径部の周りの環状空間は、第2スプール60が少なくとも第2中立位置にある場合にヘッド側通路29と連通していてもよい。このように、第2中間ランド部が、上記実施形態で説明された機能、すなわち、ヘッド側通路と第2ポンプ通路との間を開閉し、且つ、ヘッド側通路と第2タンク通路との間を開閉する機能を有する限り、複数のサブランド部を含んでいてもよい。同様に、第2内側ランド部や第2外側ランド部の各ランド部も、上記実施形態で説明された各ランド部の機能を有する限り、複数のサブランド部を含んでもよい。
【0089】
第1スプール50が、2つのランド部のみを備えてもよい。例えば、第1スプールは、ロッド側通路と第1ポンプ通路との間を開閉する第1ポンプ側ランド部と、ロッド側通路と第1タンク通路との間を開閉する第1タンク側ランド部と、第1ポンプ側ランド部と第1タンク側ランド部とを連結する第1小径部とを含む構成であってもよい。この場合、第1スプールが、ロッド側通路を第1ポンプ通路および第1タンク通路の双方から遮断する第1中立位置にある場合には、第1タンク側ランド部の外周面によって、第1タンク通路の端部が閉塞された状態となってもよい。
【0090】
第1スプールおよび第2スプールが各スプールの機能を有する範囲内であれば、第1スプールおよび第2スプールの各スプールのランド部の外周面に、溝があってもよい。例えばランド部の外周面上の溝は、周方向に延びていてもよいし、軸方向に延びていてもよい。例えば上記実施形態では、第1内側ランド部51の外周面に、第1リーク用溝51bがあったが、第1内側ランド部51の外周面に、第1リーク用溝51b以外の溝があってもよい。また、例えば上記実施形態では、第2内側ランド部61の外周面には、第2リーク用溝61aがあったが、第2内側ランド部61の外周面に、第2リーク用溝61a以外の溝があってもよい。
【0091】
第2外側ランド部65は、エア抜き通路65aを有していたが、第2外側ランド部65がエア抜き通路65aを有する代わりに、または、第2外側ランド部65がエア抜き通路65aを有することに加えて、第1外側ランド部55が、エア抜き通路を有していてもよい。
【0092】
上記実施形態では、第2中間ランド部63は、ヘッド側通路29と第2タンク通路27bとを連通させるための複数の第4ノッチ63bを有さなくてもよい。また、第1ノッチ51a、第2ノッチ53a、第3ノッチ63a、第4ノッチ63bの各ノッチの形状や数なども、上記説明や図面の内容に限定されない。例えば全ての第1ノッチ51aが、前述のテーパを有してもよいし、複数の第1ノッチの一部のノッチは、テーパを有さなくてもよい。複数の第1ノッチの少なくとも1つのノッチがテーパを有していればよい。
【0093】
第1スプール50および第2スプール60の一方のみが識別マークを有していてもよいし、第1スプール50および第2スプール60の双方とも、識別マークを有さなくてもよい。第1識別マーク91および第2識別マーク92は、スプリングを識別するための情報を含まなくてもよい。
【0094】
上記実施形態とは逆に、第1スプール50と第2スプール60が互いに近づくように移動したときにロッド側通路28およびヘッド側通路29がそれぞれ供給通路25および排出通路27と連通し、第1スプール50および第2スプール60が互いに遠ざかるように移動したときにヘッド側通路29およびロッド側通路28がそれぞれ供給通路25および排出通路27と連通してもよい。
【0095】
上記実施形態では、スプール穴23Aに対して、第1ポンプ通路25a、ロッド側通路28、第1タンク通路27aが、第3パイロット室P3から第1パイロット室P1に向かう方向にこの順に接続されていたが、第1ポンプ通路25aとスプール穴23Aとの接続箇所と、第1タンク通路27aとスプール穴23Aとの接続箇所とは逆でもよい。また、上記実施形態では、スプール穴23Aに対して、第2ポンプ通路25b、ヘッド側通路29、第2タンク通路27bが、第3パイロット室P3から第2パイロット室P2に向かう方向にこの順に接続されていたが、第2ポンプ通路25bとスプール穴23Aとの接続箇所と、第2タンク通路27bとスプール穴23Aとの接続箇所とは逆でもよい。
【0096】
[開示態様]
以下の態様のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0097】
[態様1]
ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、
互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、
前記第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続される第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路および第2タンク通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのロッド側室に接続されるロッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのヘッド側室に接続されるヘッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴の両側に位置する第1パイロット室および第2パイロット室と、を有するハウジングと、を備え、
前記ブームシリンダ用スプール穴における前記第1スプールと前記第2スプールの間の部分が第3パイロット室を構成し、
前記第1タンク通路および前記第2タンク通路のそれぞれは、前記複数のスプール穴と交差しており、
前記第1スプールは、前記第1パイロット室と前記第3パイロット室との圧力差に応じて、前記ロッド側通路を前記第1ポンプ通路および前記第1タンク通路の双方から遮断する第1中立位置と、前記ロッド側通路を前記第1ポンプ通路と前記第1タンク通路とのいずれかと連通させる第1ブーム駆動位置との間で移動し、
前記第2スプールは、前記第2パイロット室と前記第3パイロット室との圧力差に応じて、前記ヘッド側通路を前記第2ポンプ通路および前記第2タンク通路の双方から遮断する第2中立位置と、前記ヘッド側通路を前記第2ポンプ通路と前記第2タンク通路とのいずれかと連通させる第2ブーム駆動位置との間で移動し、
前記第1スプールおよび前記第2スプールの各スプールは、前記軸方向に間隔をあけて並ぶ3つ以上のランド部と、隣接する前記ランド部を連結する2つ以上の小径部と、を含み、
前記第1スプールの前記2つ以上の小径部のうちの1つの前記小径部の周りの環状空間は、前記第1スプールが少なくとも前記第1中立位置にある場合に前記第1タンク通路と連通し、
前記第2スプールの前記2つ以上の小径部のうちの1つの前記小径部の周りの環状空間は、前記第2スプールが少なくとも前記第2中立位置にある場合に前記第2タンク通路と連通する、弁装置。
【0098】
前記構成によれば、第1スプールが第1中立位置にある場合に、第1スプールの小径部の周りの環状空間が第1タンク通路と連通し、第2スプールが第2中立位置にある場合に、第2スプールの小径部の周りの環状空間が第2タンク通路と連通している。このため、第1タンク通路および第2タンク通路の各タンク通路におけるブームシリンダ用スプール穴との交差箇所での流路断面積を確保することができ、第1タンク通路および第2タンク通路を流れる作動油の圧力損失を低減することができる。これにより、作動油の流れの安定化を向上させることができる。
【0099】
[態様2]
前記第1スプールの前記3つ以上のランド部は、
前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を開閉する第1内側ランド部と、
前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を開閉する第1中間ランド部と、
前記第1タンク通路を第1パイロット室から遮断する第1外側ランド部と、を含み、
前記第1スプールの前記2つ以上の小径部は、
前記第1内側ランド部と前記第1中間ランド部とを連結する第1内側小径部と、
前記第1外側ランド部と前記第1中間ランド部とを連結する第1外側小径部と、を含み、
前記第2スプールの前記3つ以上のランド部は、
前記第2ポンプ通路を第3パイロット室から遮断する第2内側ランド部と、
前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を開閉し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を開閉する第2中間ランド部と、
前記第2タンク通路を第2パイロット室から遮断する第2外側ランド部と、を含み、
前記第2スプールの前記2つ以上の小径部は、
前記第2内側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2内側小径部と、
前記第2外側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2外側小径部と、を含む、態様1に記載の弁装置。
【0100】
ブームを下げるべく、第2スプールを移動させて、ヘッド側通路から第2タンク通路へ作動油を流す際、ヘッド側通路から第2タンク通路への作動油の流量は大きい。前記構成によれば、第2スプールが第2中立位置にある場合に、ヘッド側通路が第2中間ランド部に閉塞される。このため、ヘッド側通路から第2タンク通路へ作動油が流れるときに、ヘッド側通路の圧力が第2中間ランド部の外周面で受けられて、第2外側小径部の周りの環状空間の圧力は低く保たれる。このため、ブーム下げの際に、第2スプールが作動油から受ける流体力を受けにくくすることができる。
【0101】
[態様3]
前記第1スプールが少なくとも前記第1中立位置にある場合に、前記第1内側ランド部は、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を遮断し、且つ、前記第1中間ランド部は、前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を遮断し、
前記第2スプールが少なくとも前記第2中立位置にある場合に、前記第2中間ランド部は、前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を遮断し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を遮断する、態様2に記載の弁装置。
【0102】
前記構成によれば、第1スプールが第1中立位置にあり、且つ、第2スプールが第2中立位置にある場合に、ブームシリンダに対する作動油の給排が行われないため、ブームを止めておくことができる。
【0103】
[態様4]
前記第1内側ランド部は、前記第1内側ランド部の外周面における前記第1内側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路とを連通させるための複数の第1ノッチを有し、
前記第1中間ランド部は、前記第1中間ランド部の外周面における前記第1内側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1タンク通路とを連通させるための複数の第2ノッチを有し、
前記第2中間ランド部は、前記第2中間ランド部の外周面における前記第2内側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路とを連通させるための複数の第3ノッチを有する、態様2または3に記載の弁装置。
【0104】
前記構成によれば、第1ポンプ通路からロッド側通路への作動油の流れ、ロッド側通路から第1タンク通路への作動油の流れ、および、第2ポンプ通路からヘッド側通路への作動油の流れの各流れにおける流量の制御性を向上できる。
【0105】
[態様5]
前記第2中間ランド部は、前記第2中間ランド部の外周面における前記第2外側小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路とを連通させるための複数の第4ノッチを有し、
前記複数の第4ノッチの数は、前記複数の第3ノッチの数より多い、態様4に記載の弁装置。
【0106】
前記構成によれば、ブーム下げを行う際の複数の第4ノッチを通じてヘッド側室からタンクへ送られる作動油の流量を大きくすることができる。
【0107】
[態様6]
前記複数の第1ノッチの少なくとも1つのノッチは、前記第1内側小径部が接続される前記第1内側ランド部の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する、態様4または5に記載の弁装置。
【0108】
前記構成によれば、ブーム下げを行う際の第1スプールのストロークに対する開口面積の変化量が大きくなるのを防ぐことができる。このため、ブーム下げ時にロッド側室に大量に作動油が流れ込むのを抑制できる。
【0109】
[態様7]
前記第2外側ランド部は、前記第2スプールが前記第2中立位置にある場合に前記第2パイロット室から前記第2タンク通路を遮断し、前記第2スプールが前記第2パイロット室から離れる方向に前記第2中立位置から所定距離以上移動した場合に前記第2パイロット室と前記第2タンク通路とを連通させるエア抜き通路を有する、態様2乃至6のいずれかに記載の弁装置。
【0110】
前記構成によれば、例えば弁装置が第2スプールは前記第1スプールより上方に位置するように配置された状態で時間が経過すると、ブームシリンダ用スプール穴の上方に位置する第2パイロット室には、エアが時間の経過とともに溜まっていく。このような場合に、第2スプールの移動によって、エア抜き通路を介して、第2パイロット室に溜まったエアを外部の第2タンク通路へ逃すことができる。
【0111】
[態様8]
前記第1スプールは、前記第1内側ランド部の外周面上における、前記ブームシリンダ用スプール穴と前記第1ポンプ通路との接続箇所より前記第3パイロット室側に位置する部分から、前記第1外側小径部に至る第1リーク用通路を有し、
前記第2スプールは、前記第2内側ランド部の外周面上における、前記ブームシリンダ用スプール穴と前記第2ポンプ通路との接続箇所より前記第3パイロット室側に位置する部分から、前記第2外側小径部に至る第2リーク用通路を有する、態様2乃至7のいずれかに記載の弁装置。
【0112】
前記構成によれば、第1ポンプ通路側から第1内側ランド部の外周面とブームシリンダ用スプール穴の内周面との間にリークした作動油を、第1リーク用通路を通じて第1タンク通路に逃がすことができ、第2ポンプ通路側から第2内側ランド部の外周面とブームシリンダ用スプール穴の内周面との間にリークした作動油を、第2リーク用通路を通じて第2タンク通路に逃がすことができる。
【0113】
[態様9]
前記第1内側ランド部の外周面には、第1リーク用溝があり、
前記第1リーク用通路は、前記第1リーク用溝に配置された第1入口ポートと、前記第1外側小径部に配置された第1出口ポートと、を含み、
前記第2内側ランド部の外周面には、第2リーク用溝があり、
前記第2リーク用通路は、前記第2リーク用溝に配置された第2入口ポートと、前記第2外側小径部に配置された第2出口ポートと、を含む、態様8に記載の弁装置。
【0114】
[態様10]
前記第1スプールおよび前記第2スプールの少なくとも1つのスプールは、前記少なくとも1つのスプールが有する前記小径部の外周面に、前記少なくとも1つのスプールを識別するための識別マークを有する、態様2乃至9のいずれかに記載の弁装置。
【0115】
前記構成によれば、第1スプールおよび第2スプールの少なくとも1つのスプールを、識別マークにより識別可能にする。また、識別マークが、ハウジングとの接触がない小径部に配置されるため、識別マークの劣化を抑制できる。
【0116】
[態様11]
前記第1外側小径部の径は、前記第1内側小径部の径より大きい、態様2乃至10のいずれかに記載の弁装置。
【0117】
前記構成によれば、第1外側小径部の径を大きくすることで、ロッド側通路から第1タンク通路へ作動油が流れる際に、第1外側小径部と反対側の第1中間ランド部の端面が軸方向に受ける油圧を支えることができる。
【0118】
[態様12]
ブームシリンダを含む複数の油圧アクチュエータに給排される作動油の流れを制御する建設機械用の弁装置であって、
互いに軸方向に離間する第1スプールおよび第2スプールと、
前記第1スプールおよび第2スプールが挿入されるブームシリンダ用スプール穴を含む複数のスプール穴と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続される第1ポンプ通路、第2ポンプ通路、第1タンク通路および第2タンク通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのロッド側室に接続されるロッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴に接続され、且つ、前記ブームシリンダのヘッド側室に接続されるヘッド側通路と、前記ブームシリンダ用スプール穴の両側に位置する第1パイロット室および第2パイロット室と、を有するハウジングと、を備え、
前記ブームシリンダ用スプール穴における前記第1スプールと前記第2スプールの間の部分が第3パイロット室を構成し、
前記第1スプールは、
前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路との間を開閉する第1ポンプ側ランド部と、
前記ロッド側通路と前記第1タンク通路との間を開閉する第1タンク側ランド部と、
前記第1ポンプ側ランド部と前記第1タンク側ランド部とを連結する第1小径部と、を含み、
前記第2スプールは、
前記第2ポンプ通路を第3パイロット室から遮断する第2内側ランド部と、
前記ヘッド側通路と前記第2ポンプ通路との間を開閉し、且つ、前記ヘッド側通路と前記第2タンク通路との間を開閉する第2中間ランド部と、
前記第2タンク通路を第2パイロット室から遮断する第2外側ランド部と、
前記第2内側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2内側小径部と、
前記第2外側ランド部と前記第2中間ランド部とを連結する第2外側小径部と、を含み、
前記第1ポンプ側ランド部は、前記第1ポンプ側ランド部の外周面における前記第1小径部側の端部において周方向に間隔をあけて並ぶ、前記ロッド側通路と前記第1ポンプ通路とを連通させるための複数の第1ノッチを有し、
前記複数の第1ノッチの少なくとも1つのノッチは、前記第1小径部が接続される前記第1ポンプ側ランド部の端面から離れるほど深さを小さくするテーパを有する、弁装置。
【0119】
前記構成によれば、ブーム下げを行う際の第1スプールのストロークに対する開口面積の変化量が大きくなるのを防ぐことができる。このため、ブーム下げ時にロッド側室に大量に作動油が流れ込むのを抑制できる。従って、作動油の流れの安定化を向上させることができる。
【符号の説明】
【0120】
5A :ブームシリンダ
5a :ロッド側室
5b :ヘッド側室
10 :弁装置
11 :ハウジング
12 :スプール
12A :ブームシリンダ用スプール
23 :スプール穴
23A :ブームシリンダ用スプール穴
25a :第1ポンプ通路
25b :第2ポンプ通路
27a :第1タンク通路
27b :第2タンク通路
28 :ロッド側通路
29 :ヘッド側通路
50 :第1スプール
51 :第1内側ランド部
51a :第1ノッチ
51b :第1リーク用溝
52 :第1内側小径部
53 :第1中間ランド部
53a :第2ノッチ
54 :第1外側小径部
55 :第1外側ランド部
60 :第2スプール
61 :第2内側ランド部
61a :第2リーク用溝
62 :第2内側小径部
63 :第2中間ランド部
63a :第3ノッチ
63b :第4ノッチ
64 :第2外側小径部
65 :第2外側ランド部
65a :エア抜き通路
81 :第1リーク用通路
81a :第1入口ポート
81b :第1出口ポート
82 :第2リーク用通路
82a :第2入口ポート
82b :第2出口ポート
91 :第1識別マーク
92 :第2識別マーク
P1 :第1パイロット室
P2 :第2パイロット室
P3 :第3パイロット室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8