(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007990
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング装置及び電動パワーステアリング装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20250109BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B62D5/04
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109788
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】523207386
【氏名又は名称】NSKステアリング&コントロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂山 智史
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB12
3D333CC14
3D333CC30
3D333CD05
3D333CD06
3D333CD08
3D333CD16
3D333CD20
3D333CD21
3D333CE06
3D333CE12
3D333CE21
(57)【要約】
【課題】トルクセンサに用いられる永久磁石の破断を抑制すること。
【解決手段】内側に入力軸側孔部13aを有する入力軸13と、内側に出力軸側孔部16aを有する出力軸16と、一端側が入力軸側孔部13aの内側に配置され、他端側が出力軸側孔部16aの内側に配置されて入力軸13と出力軸16とを連結するトーションバー17と、永久磁石32を有し入力軸13の外周面13bに接続される磁石部材31を有するトルクセンサ30と、を備え、入力軸13は、入力軸側孔部13aに対してトーションバー17が圧入される圧入部14を有し、入力軸13における磁石部材31が接続される部分である接続部15は、入力軸13の軸方向における位置が圧入部14とは異なる位置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に入力軸側孔部を有する入力軸と、
内側に出力軸側孔部を有する出力軸と、
一端側が前記入力軸側孔部の内側に配置され、他端側が前記出力軸側孔部の内側に配置されて前記入力軸と前記出力軸とを連結するトーションバーと、
永久磁石を有し前記入力軸の外周面に接続される磁石部材を有するトルクセンサと、
を備え、
前記入力軸は、前記入力軸側孔部に対して前記トーションバーが圧入される圧入部を有し、
前記入力軸における前記磁石部材が接続される部分である接続部は、前記入力軸の軸方向における位置が前記圧入部とは異なる位置である電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記磁石部材は、前記永久磁石が配置されるマグネットスリーブを有し、
前記入力軸の前記接続部には、前記マグネットスリーブが接続される請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記入力軸の前記接続部には、前記磁石部材が有する前記永久磁石が接続される請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記磁石部材は、前記接続部の位置から前記軸方向において前記圧入部が位置する側に延びると共に前記入力軸の前記外周面から離隔する離隔部を有し、
前記圧入部は、少なくとも一部が前記入力軸の径方向における前記離隔部の内側に位置する請求項2または3に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記圧入部は、前記軸方向における位置が前記接続部の位置よりも前記出力軸側に位置する請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項6】
前記出力軸側孔部には、前記出力軸側孔部の内側に配置される前記トーションバーとの間にトーションバースリーブが配置される請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
内側に前記入力軸と前記出力軸とを配置するハウジングと、
少なくとも前記軸方向における一部の位置が前記トーションバースリーブの位置と同じ位置に配置され、前記出力軸を前記ハウジングに対して回転自在に支持する軸受と、
を備える請求項6に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項8】
前記入力軸には、前記入力軸の回転を規制するロック装置が有するキーロックカラーが前記外周面に配置され、
前記キーロックカラーは、前記軸方向における位置が前記圧入部とは異なる位置に配置される請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項9】
前記出力軸には、前記出力軸側孔部の内側に配置される前記トーションバーと前記出力軸とを連結する連結ピンが配置される請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項10】
内側に入力軸側孔部を有する入力軸と、
内側に出力軸側孔部を有する出力軸と、
一端側が前記入力軸側孔部の内側に配置され、他端側が前記出力軸側孔部の内側に配置されて前記入力軸と前記出力軸とを連結するトーションバーと、
前記入力軸の外周面に接続される磁石部材を有するトルクセンサと、
を備え、
前記入力軸は、前記入力軸側孔部に対して前記トーションバーが圧入される圧入部を有する電動パワーステアリング装置の製造方法において、
前記入力軸の前記圧入部は、鍛造を行って形成し、
前記入力軸における前記磁石部材を接続する部分である接続部は、前記入力軸の軸方向における位置を前記圧入部の位置とは異ならせる電動パワーステアリング装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動パワーステアリング装置及び電動パワーステアリング装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールを操舵した際の操舵トルクを検出するトルクセンサと、アシスト力を発生する電動モータとを有しており、トルクセンサで検出した操舵トルクに基づいて電動モータでアシスト力を発生することにより、運転者の操舵力をアシストすることが可能になっている。このような電動パワーステアリング装置では、入力軸と出力軸とがトーションバーを介して連結されており、トルクセンサは、操舵トルクがトーションバーを介して入力軸から出力軸に伝達される際におけるトーションバーの僅かな捩じれに伴う入力軸と出力軸との相対的な回転角度の変化を検出することにより、操舵トルクの検出が可能になっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された電動パワーステアリング装置では、入力軸にはトーションバーの基端が圧入固定され、トーションバーの先端は出力軸に固定ピンにより固定されており、出力軸の車両後方側にはトルクセンサ部が設けてある。また、特許文献2に記載されたステアリング装置では、トーションバーは入力軸の中心に設けられた孔に嵌ってピンを介して入力軸に固定され、出力軸に対しては出力軸の中心に設けられた孔に圧入されることでトーションバーは出力軸に固定されている。また、特許文献2に記載されたステアリング装置では、トルクセンサはマグネットとヨークとを有すると共に、マグネットは第1スリーブを介して入力軸に取り付けられ、ヨークは第2スリーブを介して出力軸に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-27350号公報
【特許文献2】国際公開第2019/059230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動パワーステアリング装置に用いられるトルクセンサでは永久磁石が用いられ、永久磁石は、入力軸または出力軸に配置される。しかし、永久磁石は延性が小さいため、永久磁石が取り付けられる軸が弾性変形した際に、破断してしまうことが考えられる。例えば、入力軸におけるトーションバーの圧入部分の外周面に、直接またはスリーブを介して永久磁石が取り付けられている状態で、入力軸に対してトーションバーを圧入した場合、入力軸はトーションバーの圧入によって僅かに膨らみ、径が僅かに大きくなる。この場合、入力軸の外周面に直接またはスリーブを介して取り付けられる永久磁石は、入力軸の膨らみに追随することができず、破断してしまう可能性がある。このように、永久磁石が破断した場合、トルクセンサは操舵トルクの検出を行うことができなくなるため、トルクセンサを有する電動パワーステアリング装置では、永久磁石の配置の仕方の観点で改良の余地があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、トルクセンサに用いられる永久磁石の破断を抑制することのできる電動パワーステアリング装置及び電動パワーステアリング装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電動パワーステアリング装置は、内側に入力軸側孔部を有する入力軸と、内側に出力軸側孔部を有する出力軸と、一端側が前記入力軸側孔部の内側に配置され、他端側が前記出力軸側孔部の内側に配置されて前記入力軸と前記出力軸とを連結するトーションバーと、永久磁石を有し前記入力軸の外周面に接続される磁石部材を有するトルクセンサと、を備え、前記入力軸は、前記入力軸側孔部に対して前記トーションバーが圧入される圧入部を有し、前記入力軸における前記磁石部材が接続される部分である接続部は、前記入力軸の軸方向における位置が前記圧入部とは異なる位置である。
【0008】
この構成によれば、入力軸において磁石部材が接続される接続部の軸方向における位置が圧入部とは異なる位置であるため、トーションバーを入力軸側孔部に対して圧入した際に圧入部の位置で入力軸の径が僅かに大きくなった場合でも、永久磁石を有する磁石部材は、入力軸の径が大きくなることの影響を受けることなく入力軸に取り付けることができる。従って、延性が小さい永久磁石を、トーションバーの圧入に伴う入力軸の径の拡大を回避しながら入力軸に取り付けることができる。この結果、トルクセンサに用いられる永久磁石の破断を抑制することができる。
【0009】
望ましい形態として、前記磁石部材は、前記永久磁石が配置されるマグネットスリーブを有し、前記入力軸の前記接続部には、前記マグネットスリーブが接続される。
【0010】
この構成によれば、入力軸の接続部には、永久磁石が配置されるマグネットスリーブが接続されるため、入力軸に磁石部材を配置する際に永久磁石に作用する力を、極力小さくすることができる。つまり、入力軸に磁石部材を配置する際に永久磁石に発生する応力を、極力小さくすることができる。この結果、トルクセンサに用いられる永久磁石の破断を抑制することができる。
【0011】
望ましい形態として、前記入力軸の前記接続部には、前記磁石部材が有する前記永久磁石が接続される。
【0012】
この構成によれば、磁石部材が有する永久磁石を入力軸の接続部に直接接続するため、部品点数を抑えることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
望ましい形態として、前記磁石部材は、前記接続部の位置から前記軸方向において前記圧入部が位置する側に延びると共に前記入力軸の前記外周面から離隔する離隔部を有し、前記圧入部は、少なくとも一部が前記入力軸の径方向における前記離隔部の内側に位置する。
【0014】
この構成によれば、入力軸の圧入部は、少なくとも一部が、磁石部材が有する離隔部の内側に位置するため、入力軸における磁石部材が接続される接続部と圧入部とで軸方向における位置を異ならせつつ、トーションバーを圧入する入力軸側孔部の深さを浅くすることができる。これにより、入力軸に入力軸側孔部を形成する際における切削工程を簡易なものにしつつ、磁石部材が有する永久磁石を、トーションバーの圧入に伴う入力軸の径の拡大を回避しながら入力軸に取り付けることができる。この結果、製造コストの低減を図りつつ、トルクセンサに用いられる永久磁石の破断を抑制することができる。
【0015】
望ましい形態として、前記圧入部は、前記軸方向における位置が前記接続部の位置よりも前記出力軸側に位置する。
【0016】
この構成によれば、入力軸におけるトーションバーを圧入する圧入部は、軸方向における位置が、入力軸において磁石部材を接続する接続部の位置よりも出力軸側に位置しているため、入力軸の端部からの入力軸側孔部の深さを浅くすることができる。これにより、入力軸に対して切削によって入力軸側孔部を形成する際における切削範囲を小さくすることができ、入力軸側孔部を形成する際における切削工程を簡易に行うことができる。また、入力軸の端部からの入力軸側孔部の深さを浅くすることにより、入力軸側孔部にトーションバーを圧入する際に、入力軸側孔部に対してトーションバーを押し込む距離を短くすることができる。これにより、入力軸にトーションバーを組み付ける際における組み立て性を向上することができ、組み立て工程での作業性を高めることができる。これらの結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
望ましい形態として、前記出力軸側孔部には、前記出力軸側孔部の内側に配置される前記トーションバーとの間にトーションバースリーブが配置される。
【0018】
この構成によれば、出力軸の出力軸側孔部にトーションバースリーブが配置されるため、トーションバーを出力軸側孔部内でトーションバースリーブによって支持することができる。これにより、出力軸側孔部内でのトーションバーの倒れ込みを抑制することができる。例えば、トーションバーを出力軸側孔部内に配置した状態で入力軸の入力軸側孔部にトーションバーを圧入する際に、トーションバーをトーションバースリーブによって支持することにより、出力軸側孔部内でのトーションバーの倒れ込みを抑えつつ、トーションバーを入力軸側孔部に圧入することができる。この結果、電動パワーステアリング装置の組み立て性を向上させることができる。
【0019】
望ましい形態として、内側に前記入力軸と前記出力軸とを配置するハウジングと、少なくとも前記軸方向における一部の位置が前記トーションバースリーブの位置と同じ位置に配置され、前記出力軸を前記ハウジングに対して回転自在に支持する軸受と、を備える。
【0020】
この構成によれば、出力軸を回転自在に支持する軸受は、少なくとも軸方向における一部の位置がトーションバースリーブの位置と同じ位置に配置されるため、トーションバーからトーションバースリーブに対して作用する荷重を、トーションバースリーブから短い距離で配置される軸受によって受けることができる。これにより、軸受に作用する荷重を小さくすることができ、軸受に径方向の大きな荷重が作用することに起因して、軸受の内輪と外輪との相対回転が行われ難くなることを抑制することができる。従って、軸受で支持する出力軸を回転させる際における回転抵抗が大きくなることを抑制でき、出力軸を有するステアリングシャフトを回転させる際の回転抵抗を小さくすることができる。この結果、ステアリングホイールを回転させて操舵を行う際の操舵トルクを軽減することができ、電動パワーステアリング装置の操作性を向上させることができる。
【0021】
望ましい形態として、前記入力軸には、前記入力軸の回転を規制するロック装置が有するキーロックカラーが前記外周面に配置され、前記キーロックカラーは、前記軸方向における位置が前記圧入部とは異なる位置に配置される。
【0022】
この構成によれば、キーロックカラーは軸方向における位置が圧入部とは異なる位置に配置されるため、キーロックカラーと入力軸との圧入部分が、入力軸におけるトーションバーの圧入部に対して軸方向において同じ位置になることを抑制することができる。このため、トーションバーを入力軸側孔部に圧入した際に圧入部の位置で入力軸の径が僅かに大きくなることに起因して、入力軸に対するキーロックカラーの嵌合力が、設計時に設定した嵌合力から変化することを抑制することができる。これにより、入力軸とキーロックカラーとを相対回転させる方向の力がキーロックカラーに付与された際に入力軸に対してキーロックカラーが相対回転をしてしまう大きさのトルクであるスリップトルクが、設定したスリップトルクから変動することを抑制することができる。従って、キーロックカラーが入力軸に対して、想定外の小さなトルクで相対回転してしまうことを抑制することができ、入力軸に対してキーロックカラーを適切に嵌合させることができる。この結果、キーロックカラーを有するロック装置を適切に動作させることができる。
【0023】
望ましい形態として、前記出力軸には、前記出力軸側孔部の内側に配置される前記トーションバーと前記出力軸とを連結する連結ピンが配置される。
【0024】
この構成によれば、トーションバーは出力軸には圧入せず、連結ピンによって連結するため、出力軸側孔部にトーションバーを挿入して出力軸に連結する際における、トーションバーに対して付与する軸方向の力を小さくすることができる。これにより、出力軸に対するトーションバーの圧入部分から離れた位置から軸方向の大きな力がトーションバーに付与されることに起因して、トーションバーに座屈が発生することを抑制することができる。従って、出力軸にトーションバーを組み付ける際における組み立て性を向上することができ、組み立て工程での作業性を高めることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0025】
本開示の電動パワーステアリング装置の製造方法は、内側に入力軸側孔部を有する入力軸と、内側に出力軸側孔部を有する出力軸と、一端側が前記入力軸側孔部の内側に配置され、他端側が前記出力軸側孔部の内側に配置されて前記入力軸と前記出力軸とを連結するトーションバーと、前記入力軸の外周面に接続される磁石部材を有するトルクセンサと、を備え、前記入力軸は、前記入力軸側孔部に対して前記トーションバーが圧入される圧入部を有する電動パワーステアリング装置の製造方法において、前記入力軸の前記圧入部は、鍛造を行って形成し、前記入力軸における前記磁石部材を接続する部分である接続部は、前記入力軸の軸方向における位置を前記圧入部の位置とは異ならせる。
【0026】
この構成によれば、入力軸の圧入部は鍛造を行って形成するため、圧入部の剛性を高めることができる。このため、入力軸の入力軸側孔部にトーションバーを圧入することによって連結する入力軸とトーションバーとの連結を強固なものにすることができ、入力軸に操舵トルクが付与された際に、入力軸とトーションバーとが相対回転することを抑制できる。これにより、入力軸に付与された操舵トルクを、トーションバーを介して適切に出力軸に伝達することができると共に、操舵トルクの大きさに応じたトーションバーの僅かな捩じれによって入力軸と出力軸とを相対回転させることができる。従って、入力軸と出力軸との相対回転をトルクセンサで検出することにより、操舵トルクの大きさを検出することができる。この結果、入力軸に入力された操舵トルクの大きさを適切に検出することができる。
【発明の効果】
【0027】
本開示に係る電動パワーステアリング装置及び電動パワーステアリング装置の製造方法は、トルクセンサに用いられる永久磁石の破断を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置の要部断面図である。
【
図3】
図3は、トルクセンサが有する永久磁石とステータ及び集磁ヨークの概要を説明する模式図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置の要部断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置の変形例であり、磁石部材がマグネットスリーブを有さない場合を示す電動パワーステアリング装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置10の模式図である。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置10は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール11と、ステアリングシャフト12と、トルクセンサ30と、電動モータ91と、減速装置92と、ユニバーサルジョイント81と、中間シャフト82と、ユニバーサルジョイント83と、を備え、スタブシャフト84に接合されている。以下の説明においては、ステアリングシャフト12の中心軸AXに沿った方向を「軸方向」と称し、軸方向に交差(直交)する方向を「径方向」と称する。
【0031】
ステアリングシャフト12には一端にステアリングホイール11が取り付けられ、ステアリングシャフト12の他端にはユニバーサルジョイント81を介して中間シャフト82が連結される。ステアリングシャフト12は、ステアリングホイール11から入力されるトルクにより回転する。ステアリングシャフト12は、入力軸13と、出力軸16と、トーションバー17(
図2参照)と、を含む。トーションバー17は、入力軸13と出力軸16との双方に連結されており、入力軸13と出力軸16とは、トーションバー17を介して連結されている。ステアリングホイール11は、入力軸13の一端に連結されることによりステアリングシャフト12に取り付けられており、入力軸13の他端からは出力軸16が位置する側に向けてトーションバー17が延びている。出力軸16は、一端側からトーションバー17が延びており、他端がユニバーサルジョイント81を介して中間シャフト82に連結されている。入力軸13と出力軸16との間では、双方に連結されるトーションバー17を介して回転トルクが伝達される。
【0032】
中間シャフト82の延在方向における両端には、ユニバーサルジョイント81とユニバーサルジョイント83とが配置されている。中間シャフト82は、一方の端部がユニバーサルジョイント81に連結され、他方の端部がユニバーサルジョイント83に連結される。ユニバーサルジョイント81とユニバーサルジョイント83とのうち、ユニバーサルジョイント81は、中間シャフト82とステアリングシャフト12とを連結している。ユニバーサルジョイント83は、中間シャフト82とスタブシャフト84とを連結している。スタブシャフト84は、一方の端部がユニバーサルジョイント83に連結され、他方の端部がステアリングギヤ85に連結される。中間シャフト82は、ユニバーサルジョイント81とユニバーサルジョイント83とを介して、一端がステアリングシャフト12に連結され、他端がスタブシャフト84に連結されている。ユニバーサルジョイント81及びユニバーサルジョイント83は、例えばカルダンジョイントである。ステアリングシャフト12の回転が中間シャフト82を介してスタブシャフト84に伝わる。従って、中間シャフト82はステアリングシャフト12と共に回転可能である。
【0033】
ステアリングギヤ85は、ピニオンギヤ85aと、ラックバー85bとを備える。ピニオンギヤ85aは、スタブシャフト84に連結される。ラックバー85bは、ピニオンギヤ85aに噛み合う。ステアリングギヤ85は、ピニオンギヤ85aに伝達された回転運動をラックバー85bで直進運動に変換する。ラックバー85bは、タイロッド86に連結される。ラックバー85bが移動することで車輪の角度が変化する。即ち、電動パワーステアリング装置10は、ラックアンドピニオン式の電動パワーステアリング装置である。
【0034】
電動パワーステアリング装置10は、ECU(Electronic Control Unit)90と、車速センサ95と、を更に備える。電動モータ91、車速センサ95及びトルクセンサ30は、ECU90と電気的に接続される。減速装置92は、電動モータ91に取り付けられる。トルクセンサ30は、入力軸13に伝達された操舵トルクをCAN(Controller Area Network)通信によりECU90に出力する。車速センサ95は、電動パワーステアリング装置10が搭載される車体の走行速度(車速)を検出する。車速センサ95は、車体に備えられ、車速をCAN通信によりECU90に出力する。
【0035】
ECU90は、電動モータ91の動作を制御する。ECU90は、トルクセンサ30及び車速センサ95のそれぞれから信号を取得する。ECU90には、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置99(例えば車載のバッテリ)から電力が供給される。ECU90は、操舵トルク及び車速に基づいて補助操舵指令値を算出する。ECU90は、補助操舵指令値に基づいて電動モータ91へ供給する電力値を調節する。ECU90は、電動モータ91の誘起電圧の情報または電動モータ91に設けられたレゾルバ等から出力される情報を取得する。ECU90が電動モータ91を制御することで、ステアリングホイール11の操作に要する力が小さくなる。
【0036】
次に、電動パワーステアリング装置10の要部について詳細に説明する。
図2は、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置10の要部断面図である。電動パワーステアリング装置10は、
図2に示すように、第1のシャフトである入力軸13と、第2のシャフトである出力軸16と、トーションバー17と、トルクセンサ30と、ハウジング20と、軸受60、65とを備える。入力軸13、出力軸16及びトーションバー17は、同一の中心軸AXを有する。入力軸13と出力軸16とは、軸方向において連結され、トーションバー17は、入力軸13と出力軸16の内側に配置される。
【0037】
入力軸13は、例えば中実状のシャフトである。入力軸13は、中心軸AXの軸回り方向に回転可能である。入力軸13における出力軸16に連結される側の反対側の端部には、スプライン軸部(図示省略)が形成されており、スプライン軸部にはステアリングホイール11(
図1参照)が直接または、他の軸を介して連結される。入力軸13は、径方向における内側に、出力軸16に連結される側の端部から軸方向に延びる孔である入力軸側孔部13aを有している。
【0038】
出力軸16は、径方向における内側に、軸方向に延びる出力軸側孔部16aと連結孔16bとを有する筒状部材である。出力軸16は、入力軸13における入力軸側孔部13aが形成される端部が位置する側に入力軸13に対して位置する。出力軸16は、中心軸AXの軸回り方向に回転可能である。連結孔16bは、出力軸側孔部16aよりも内径が大きくなっており、出力軸16における入力軸13が連結される側の端部から、入力軸13が位置する側の反対側に向かって所定の深さで形成されている。出力軸側孔部16aは、出力軸16における連結孔16bの端部から、入力軸13が位置する側の反対側に向かって延びている。連結孔16bの内側には、入力軸13の端部付近の部分が挿入される。
【0039】
電動モータ91(
図1参照)で発生した駆動力は、減速装置92が有するウォーム(図示省略)とウォームホイール94を介して出力軸16に伝達される。即ち、電動モータ91で発生した駆動力は、ウォームを介してウォームホイール94に伝達され、ウォームホイール94を回転させる。ウォーム及びウォームホイール94は、電動モータ91で発生した駆動力の回転速度を減速し、トルクを増加させる。
【0040】
ウォームホイール94は、芯金部94aと、ホイール歯部94bとを有している。芯金部94aは、例えば、金属材料からなり、略円環状の形状で形成されている。ホイール歯部94bは、例えば、樹脂材料からなり、芯金部94aと一体となって芯金部94aの外周に配置される。ウォームホイール94は、芯金部94aが出力軸16に圧入されることにより、出力軸16に固定されている。ウォームは、電動モータ91の出力軸に直接、或いは間接的に連結され、電動モータ91の出力軸と一体となって回転をする。電動モータ91で発生する駆動力により回転をするウォームは、ウォームホイール94のホイール歯部94bと噛み合っている。このため、減速装置92は、電動モータ91で発生した駆動力を、トルクを増大させて出力軸16に伝達し、出力軸16に補助操舵トルクを与える。即ち、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置10は、ステアリングシャフト12に補助操舵トルクが付与されるコラムアシスト方式の電動パワーステアリング装置になっている。
【0041】
トーションバー17は、軸方向に延びる中実状の弾性部材である。トーションバー17は、軸方向における一端側が入力軸13の入力軸側孔部13aの内側に配置され、軸方向における他端側が出力軸16出力軸側孔部16aの内側に配置されて入力軸13と出力軸16とを連結する。トーションバー17における、入力軸13の入力軸側孔部13aの内側に配置される側の部分は、端部付近が入力軸側孔部13aに圧入される。これにより、トーションバー17は入力軸13に対して、相対回転付加となって固定される。
【0042】
詳しくは、トーションバー17は、入力軸13の入力軸側孔部13aの内側に配置される側の端部付近に、拡径部17aが形成されている。拡径部17aは、トーションバー17における入力軸側孔部13aの内側に配置される側の端部から軸方向における所定の範囲に配置され、直径が入力軸側孔部13aの内径よりも僅かに大きくなっている。拡径部17aは、トーションバー17における拡径部17a以外の部分よりも直径が大きくなっており、トーションバー17における拡径部17a以外の部分は、入力軸側孔部13aの内径よりも直径が小さくなっている。トーションバー17は、拡径部17aが入力軸13の入力軸側孔部13aに圧入されることにより、入力軸側孔部13aに対して圧入されて固定される。
【0043】
入力軸13は、このようにトーションバー17が圧入されるため、入力軸側孔部13aに対してトーションバー17が圧入される部分である圧入部14を有している。入力軸13の圧入部14は、入力軸側孔部13aに対してトーションバー17が圧入された状態における、軸方向において拡径部17aが位置する範囲になっている。つまり、圧入部14は、トーションバー17が圧入された入力軸側孔部13aにおいて、トーションバー17の拡径部17aが圧入されている部分の軸方向における範囲になっている。
【0044】
トーションバー17における、出力軸16の出力軸側孔部16aの内側に配置される側の部分は、連結ピン70によって出力軸16と連結されている。つまり、出力軸16には、出力軸側孔部16aの内側に配置されるトーションバー17と出力軸16とを連結する連結ピン70が配置されている。
【0045】
詳しくは、トーションバー17における出力軸16の出力軸側孔部16aに挿入される側の端部には、径方向に貫通する貫通孔が形成される。トーションバー17は、出力軸16の出力軸側孔部16aの内側に配置される側の端部付近にも拡径部17bが形成されており、貫通孔は、拡径部17bに形成されている。また、出力軸16における、軸方向においてトーションバー17の貫通孔が形成される位置にも、径方向に貫通する貫通孔が形成される。トーションバー17の拡径部17bに形成される貫通孔と、出力軸16に形成される貫通孔とは、互いに連通する。トーションバー17に形成される貫通孔と出力軸16に形成される貫通孔とには、連結ピン70が挿入される。これにより、トーションバー17における出力軸16の出力軸側孔部16aに挿入される側の端部は、連結ピン70を介して出力軸16に固定される。
【0046】
また、出力軸16の出力軸側孔部16aには、出力軸側孔部16aの内側に配置されるトーションバー17との間に、トーションバースリーブ71が配置されている。トーションバースリーブ71は、略円筒形の形状で形成され、出力軸側孔部16aの内側における、軸方向において入力軸13が位置する側の端部寄りの位置に配置されている。トーションバースリーブ71は、外径が、出力軸側孔部16aにおけるトーションバースリーブ71が配置される部分の内径と同程度の大きさになっており、内径が、トーションバー17におけるトーションバースリーブ71の内側に位置する部分の外径よりも僅かに大きくなっている。また、トーションバースリーブ71の内径は、トーションバー17における、トーションバースリーブ71の内側に位置する部分から、連結ピン70が貫通する拡径部17bが位置する端部側の部分のいずれの部分の外径よりも内径が大きくなっている。
【0047】
このように形成されるトーションバースリーブ71は、出力軸側孔部16aの内側で出力軸側孔部16aに嵌合され、トーションバー17は、トーションバースリーブ71の内側を通って出力軸側孔部16aの内側に配置される。トーションバー17における、トーションバースリーブ71の内側に位置する部分とトーションバースリーブ71との径方向における隙間は、トーションバースリーブ71が配置される部分と、連結ピン70が貫通する拡径部17bとの間に位置するトーションバー17と出力軸側孔部16aとのいずれの部分の隙間よりも小さくなっている。
【0048】
ステアリングシャフト12は、少なくとも一部がハウジング20の内側に配置される。ハウジング20は、ステアリングシャフト12やトルクセンサ30の筐体になっており、入力軸13と出力軸16とは、ハウジング20の内側に配置される。ハウジング20は、第1ハウジング21と第2ハウジング25とを有している。第1ハウジング21は、軸方向における入力軸13寄りに位置し、第2ハウジング25は、軸方向における出力軸16寄りに位置しており、第1ハウジング21と第2ハウジング25とは、連結ボルト28によって軸方向において連結される。第2ハウジング25は、内側にウォーム(図示省略)とウォームホイール94とを配置する空間を有しており、第2ハウジング25は、ギヤボックスとしても設けられている。
【0049】
ハウジング20とステアリングシャフト12との間には、軸受60、65が介在しており、ステアリングシャフト12は、軸受60、65によって回転自在に支持されている。軸受60は、出力軸16を第1ハウジング21に対して回転自在に支持する第1の軸受として設けられている。軸受65は、出力軸16を第2ハウジング25に対して回転自在に支持する第2の軸受として設けられている。
【0050】
軸受60と軸受65は、出力軸16における、ウォームホイール94が固定されている位置の軸方向における両側に配置されている。軸受60は、出力軸16におけるウォームホイール94の芯金部94aが固定されている位置に対して、軸方向における入力軸13が位置する側に配置され、軸受65は、ウォームホイール94の芯金部94aが固定されている位置に対して、軸方向における入力軸13が位置する側の反対側に配置されている。即ち、軸受65は、軸方向においてウォームホイール94に対して軸受60が位置する側の反対側に配置されている。
【0051】
詳しくは、出力軸16は、出力軸16における軸受60や軸受65が配置されている部分に対して径方向における外側に突出する径方向凸部16cを有している。径方向凸部16cは、軸方向における幅が、ウォームホイール94の芯金部94aにおける出力軸16に固定される部分の軸方向における幅と同程度で、芯金部94aの幅よりも僅かに大きくなっている。ウォームホイール94は、芯金部94aが径方向凸部16cに圧入されることにより、出力軸16における径方向凸部16cの部分に固定される。
【0052】
軸受60と軸受65は、径方向凸部16cに対して軸方向における互いに反対側に配置されている。これにより、軸受60と軸受65は、ウォームホイール94に対して軸方向における互いに反対側に配置されている。
【0053】
トルクセンサ30は、永久磁石32と、ステータ40と、集磁ヨーク50(
図3参照)と、ホールIC55(
図3参照)とを有している。このうち、永久磁石32とステータ40とは、ステアリングシャフト12に固定され、集磁ヨーク50とホールIC55とは、ハウジング20に固定されている。
【0054】
図3は、トルクセンサ30が有する永久磁石32とステータ40及び集磁ヨーク50の概要を説明する模式図である。トルクセンサ30が有する永久磁石32とステータ40とは、一方が第1のシャフトに取り付けられており、他方が第2のシャフトに取り付けられている。第1実施形態では、永久磁石32は、第1のシャフトである入力軸13に取り付けられており、ステータ40は、第2のシャフトである出力軸16に取り付けられている。このうち、永久磁石32は、略円筒状の形状で形成されており、複数のN極とS極とが周方向に交互に配置された多極磁石になっている。
【0055】
ステータ40は、フランジ部41と、ティース部42とを有している。フランジ部41は、厚み方向が軸方向となる、円環状の板状の形状で形成されている。ティース部42は、円環状のフランジ部41の内周部分からフランジ部41の軸方向に向かって延出し、板の厚み方向がフランジ部41の径方向となる向きとなる板状の形状で形成されている。また、ティース部42は、複数のティース部42が間隔をあけてフランジ部41の周方向に並んで配置されている。
【0056】
このように形成されるステータ40は、同等の形状で形成される一対のステータ40である第1ステータ40aと第2ステータ40bとを有しており、第1ステータ40aと第2ステータ40bとは、それぞれフランジ部41とティース部42とを有している。即ち、第1ステータ40aは、円環状の第1フランジ部41aと複数の第1ティース部42aとを有しており、第2ステータ40bは、円環状の第2フランジ部41bと複数の第2ティース部42bとを有している。第1ステータ40aと第2ステータ40bとは、双方のフランジ部41が同軸上に位置し、且つ、フランジ部41が他方のステータ40から離れる方向に位置する向きで、いずれも同じ軸に取り付けられ、第1実施形態ではいずれも出力軸16に取り付けられる。
【0057】
つまり、第1ステータ40aは、第1ティース部42aが第1フランジ部41aから第2ステータ40b側に向かって延出する向きで配置され、第2ステータ40bは、第2ティース部42bが第2フランジ部41bから第1ステータ40a側に向かって延出する向きで配置される。その際に、第1ティース部42aと第2ティース部42bとは、いずれも複数が間隔をあけて第1フランジ部41aや第2フランジ部41bに設けられるため、第1ステータ40aと第2ステータ40bとは、周方向において他方のステータ40のティース部42が位置しない部分に、自己のステータ40のティース部42が位置するように組み合わされる。
【0058】
入力軸13に取り付けられる永久磁石32は、このように組み合わされる第1ステータ40aと第2ステータ40bとの、径方向における内側に配置される。また、永久磁石32とステータ40とは、軸方向が入力軸13や出力軸16の軸方向と一致する向きで配置される。これらのため、永久磁石32とステータ40とは、永久磁石32の外周面がステータ40のティース部42に対して対向する位置関係となる状態で、入力軸13と出力軸16とに取り付けられて配置される。永久磁石32とステータ40とは、これらの位置関係で配置されることにより、入力軸13と出力軸16との間でトーションバー17を介してトルクが伝達されて入力軸13と出力軸16とが相対的に微小に回転をした際には、永久磁石32とステータ40との相対的な位置関係が変化することに伴って、永久磁石32からステータ40に作用する磁束が変化する。
【0059】
また、ステータ40の近傍には、トルクセンサ30が有する集磁ヨーク50が配置される。集磁ヨーク50は、永久磁石32からステータ40に作用する磁束の変化を検出するための部材になっており、ステータ40が有するフランジ部41の近傍に配置される。ステータ40としては、第1ステータ40aと第2ステータ40bとの一対が設けられているため、これに対応して集磁ヨーク50も、第1集磁ヨーク50aと第2集磁ヨーク50bとの一対が設けられている。即ち、集磁ヨーク50は、第1ステータ40aが有する第1フランジ部41aの近傍には第1集磁ヨーク50aが配置され、第2ステータ40bが有する第2フランジ部41bの近傍には第2集磁ヨーク50bが配置されている。
【0060】
一対の集磁ヨーク50は、ステータ40が有する2箇所のフランジ部41同士の間に位置しており、軸方向において隙間を有してステータ40のフランジ部41と重なっている。つまり、第1集磁ヨーク50aは、第1ステータ40aが有する第1フランジ部41aにおける第2フランジ部41bが位置する面側の近傍に配置され、第2集磁ヨーク50bは、第2ステータ40bが有する第2フランジ部41bにおける第1フランジ部41aが位置する面側の近傍に配置されている。このように、フランジ部41の近傍に集磁ヨーク50が位置することにより、集磁ヨーク50は、入力軸13と出力軸16とが相対的に微小に回転をした際における、永久磁石32からステータ40に作用する磁束が変化を検出することが可能なっている。
【0061】
さらに、2つの集磁ヨーク50の間には、ホールIC55が配置されている。ホールIC55は、集磁ヨーク50におけるステータ40のフランジ部41の近傍に位置する部分から離れた位置で、集磁ヨーク50同士の間に配置されている。ホールIC55は、2つの集磁ヨーク50に作用する磁束密度の変化を検出し、検出した磁束密度の変化を電気信号に変換して電気信号として出力することが可能になっている。なお、ホールICに代えて、磁気抵抗効果やトンネル磁気抵抗効果を応用した磁気センサを用いることができる。要するに、集磁ヨーク50の間に生じる磁束密度の変化を、電気信号として出力することができればよい。
【0062】
これらの集磁ヨーク50とホールIC55は、ハウジング20に取り付けられている。集磁ヨーク50とホールIC55は、例えば、これらを保持するハウジング(図示省略)に固定され、当該ハウジングが、集磁ヨーク50とホールIC55を第1ハウジング21の内側に配置する状態で第1ハウジング21に取り付けられる。これにより、集磁ヨーク50は、ステータ40が有する2箇所のフランジ部41同士の間に一対の集磁ヨーク50が位置し、2つの集磁ヨーク50の間にホールIC55が配置される状態で、第1ハウジング21の内側に配置される。
【0063】
トルクセンサ30が有する永久磁石32は、マグネットスリーブ33によって入力軸13に取り付けられている。これらの永久磁石32とマグネットスリーブ33は、トルクセンサ30における磁石部材31を構成しており、磁石部材31が入力軸13の外周面13bに接続されることにより、永久磁石32は入力軸13に取り付けられる。磁石部材31が有する永久磁石32とマグネットスリーブ33とのうち、マグネットスリーブ33は筒状の部材になっており、マグネットスリーブ33は、マグネットスリーブ33に対して入力軸13を圧入することにより入力軸13に取り付けられている。永久磁石32は、マグネットスリーブ33の外周面に配置されており、永久磁石32は、例えば接着剤によりマグネットスリーブ33固定されている。
【0064】
永久磁石32を有する磁石部材31は、このようにマグネットスリーブ33に対して入力軸13を圧入することにより入力軸13に取り付けられる。このため、入力軸13における磁石部材31が接続される部分である接続部15では、磁石部材31は、磁石部材31が有するマグネットスリーブ33が入力軸13に接続される。接続部15は、入力軸13の外周面13bにおける、磁石部材31が接続されることによって取り付けられる部分になっている。磁石部材31は、例えば入力軸13の接続部15に対して圧入によって接続され、取り付けられる。永久磁石32は、永久磁石32を有する磁石部材31が入力軸13に取り付けられることにより、入力軸13と一体となって回転可能になっている。
【0065】
また、入力軸13に取り付けられる磁石部材31は、入力軸13の外周面13bから離隔する離隔部34を有している。離隔部34は、軸方向における位置が接続部15とは異なる位置になっており、第1実施形態では、離隔部34は、接続部15に対して軸方向において出力軸16が位置する側に位置している。詳しくは、第1実施形態では入力軸13は、接続部15の位置では、磁石部材31における離隔部34が位置する部分よりも、外径が大きくなっている。つまり、入力軸13における、軸方向において離隔部34が位置する部分と同じ位置では、外径が接続部15の位置における外径よりも小さくなっている。
【0066】
これに対し、磁石部材31は、接続部15の位置における内径と離隔部34の位置における内径とで同じ大きさになっている。即ち、磁石部材31は、磁石部材31が有するマグネットスリーブ33の内径が、接続部15の位置と離隔部34の位置とで同じ大きさになっている。このため、磁石部材31における、離隔部34の位置での内周面は、入力軸13の外周面13bから、径方向における外側に離隔している。
【0067】
入力軸13における磁石部材31が接続される接続部15は、入力軸13の軸方向における位置が、圧入部14とは異なる位置になっている。電動パワーステアリング装置10の製造時において磁石部材31を入力軸13に取り付ける際には、入力軸13における磁石部材31を接続する部分である接続部15の軸方向における位置を、圧入部14の位置とは異ならせて取り付ける。これにより、永久磁石32を有する磁石部材31は、トーションバー17を入力軸13の入力軸側孔部13aに対して圧入することによる、圧入部14の位置での入力軸13の径の僅かな拡大に影響を受けることなく、入力軸13に取り付けることができる。
【0068】
第1実施形態では、入力軸13における磁石部材31が接続される接続部15は、軸方向における圧入部14が位置する位置に対して、出力軸16が位置する側に位置している。つまり、入力軸13におけるトーションバー17の圧入部14は、軸方向における位置が接続部15の位置よりも出力軸16側に位置する側の反対側に位置している。
【0069】
ステータ40は、ステータスリーブ43とキャリア44とによって出力軸16に取り付けられている。ステータスリーブ43は、筒状の部材になっており、ステータスリーブ43に対して出力軸16を圧入することにより、ステータスリーブ43は出力軸16に取り付けられている。キャリア44は、筒状の部材になっており、射出成形によりステータスリーブ43と一体に形成されている。このため、キャリア44は、ステータスリーブ43が出力軸16に取り付けられることにより、ステータスリーブ43と共にキャリア44も出力軸16に取り付けられる。
【0070】
ステータスリーブ43によって出力軸16に取り付けられるキャリア44は、ステータスリーブ43に支持されることにより、出力軸16から入力軸13側に向かった位置に配置され、入力軸13の径方向における外側の位置に配置される。さらに、キャリア44は、軸方向において、磁石部材31が有する永久磁石32が位置する位置と同じ位置に配置されており、永久磁石32の径方向に外側に配置されている。
【0071】
ステータ40は、このように配置されるキャリア44に取り付けられている。詳しくは、第1ステータ40aと第2ステータ40bとのそれぞれのステータ40は、ティース部42がキャリア44の径方向における内側に位置し、フランジ部41が、キャリア44の径方向における内側から外側に向かって突出する形態で、キャリア44に取り付けられている。これにより、一対のステータ40である第1ステータ40aと第2ステータ40bはいずれも、軸方向において永久磁石32が位置する位置と同じ位置に配置され、永久磁石32の径方向に外側に配置される。
【0072】
また、第1ステータ40aと第2ステータ40bとは、出力軸16に取り付けられるステータスリーブ43と一体に形成されるキャリア44に取り付けられるため、出力軸16と一体となって回転可能になっている。このように出力軸16と一体となって回転可能に配置されるステータ40は、換言すると、出力軸16の径方向における外側に突出するフランジ部41を備え、且つ、出力軸16に固定されている。
【0073】
これらのように、永久磁石32は入力軸13に固定され、ステータ40は出力軸16に固定されることにより、永久磁石32とステータ40とは、入力軸13や出力軸16と共にハウジング20の内側に配置される。第1実施形態では、永久磁石32とステータ40とは、第1ハウジング21の内側に配置される。
【0074】
また、ステアリングシャフト12には、ステアリングシャフト12の回転を規制するロック装置(図示省略)が有するキーロックカラー75が取り付けられている。キーロックカラー75は、スリーブ状の形状になっており、入力軸13における、軸方向において圧入部14が位置する部分の近傍で入力軸13の外周面13bに配置されている。このため、ステアリングシャフト12の回転を規制するロック装置は、ステアリングシャフト12が有する入力軸13の回転を規制する。入力軸13は、キーロックカラー75に圧入されており、これによりキーロックカラー75は、入力軸13に対して相対回転不可となって取り付けられている。ロック装置は、例えば、車両の運転者がキーを抜くと、ハウジング20からキーロックカラー75に向かってピンが突出し、ピンがキーロックカラー75に嵌合する。これにより、ハウジング20と入力軸13とが相対回転できないように固定され、キーが抜かれた状態ではステアリングホイール11を回転させることが不可となる。
【0075】
出力軸16を回転自在に支持する軸受60と軸受65とは、いわゆる転がり軸受になっている。軸受60と軸受65とのうち、軸受60は、出力軸16を第1ハウジング21に対して回転自在に支持する。即ち、軸受60は、内周面が出力軸16に嵌合し、外周面が第1ハウジング21に嵌合することにより出力軸16と第1ハウジング21との間に配置され、出力軸16を第1ハウジング21に対して回転自在に支持する。軸受60が嵌合する第1ハウジング21の内周面22には、内周面22における径方向における大きさが異なる部分同士を接続する段差部23が形成されている。段差部23は、軸方向に面しており、軸受60は、段差部23に対して軸方向に当接する。これにより、軸受60は、段差部23によって、第1ハウジング21に対する軸方向の相対移動が規制される状態で第1ハウジング21に嵌合する。
【0076】
また、軸受60は、少なくとも軸方向における一部の位置がトーションバースリーブ71の位置と同じ位置に配置されている。つまり、軸受60は、少なくとも軸方向における一部の位置がトーションバースリーブ71の位置と同じ位置で、トーションバースリーブ71の径方向における外側に配置されて出力軸16を第1ハウジング21に対して回転自在に支持する。
【0077】
一方、軸受65は、出力軸16を第2ハウジング25に対して回転自在に支持する。即ち、軸受65は、内周面が出力軸16に嵌合し、外周面が第2ハウジング25に嵌合することにより出力軸16と第2ハウジング25との間に配置され、出力軸16を第2ハウジング25に対して回転自在に支持する。軸受65が嵌合する第2ハウジング25の内周面26には、径方向における内側に突出する突出部27が形成されており、軸受65は、突出部27に対して軸方向に当接する。これにより、軸受65は、突出部27によって、第2ハウジング25に対する軸方向の相対移動が規制される状態で第2ハウジング25に嵌合する。
【0078】
次に、電動パワーステアリング装置10の作用について説明する。電動パワーステアリング装置10が搭載される車両の運転時に、ステアリングホイール11が操作をされた場合は、ステアリングホイール11に付与された操舵力は、ステアリングホイール11からステアリングシャフト12に伝えられる。ステアリングシャフト12に伝えられた操舵力は、操舵トルクとしてステアリングシャフト12から中間シャフト82に伝達され、中間シャフト82からスタブシャフト84を経てピニオンギヤ85aに伝達される。これにより、ピニオンギヤ85aを有するステアリングギヤ85は、ピニオンギヤ85aから伝達された回転運動を、ラックバー85bの直線運動に変換し、タイロッド86を動作させる。
【0079】
また、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置10は、運転者の操舵をアシストする補助操舵トルクを発生させる電動モータ91を有している。電動モータ91は、ステアリングシャフト12の入力軸13と出力軸16と間に亘って配置されるトルクセンサ30により検出した操舵トルクに基づいて補助操舵トルクを発生する。
【0080】
トルクセンサ30は、ステアリングホイール11からステアリングシャフト12に付与された操舵トルクを、入力軸13と出力軸16とが相対回転した際における相対回転の角度に基づいて検出する。即ち、入力軸13と出力軸16とは、トーションバー17を介して連結されているため、ステアリングシャフト12の入力軸13に操舵トルクが付与された際には、入力軸13と出力軸16との間では、トーションバー17を介して操舵トルクが伝達される。
【0081】
つまり、トーションバー17は、入力軸13の入力軸側孔部13aに対して、圧入部14で圧入されており、トーションバー17は、圧入部14の位置では、入力軸13と一体となって回転をする。このため、入力軸13が回転をした際には、入力軸13からトーションバー17に対しては、圧入部14の位置で入力軸13からトーションバー17に対して操舵トルクが伝達される。また、トーションバー17は、出力軸16に対しては、出力軸側孔部16aの内側で連結ピン70によって連結されており、トーションバー17と出力軸16とは、連結ピン70によって連結される位置では、互いに一体となって回転をする。このため、トーションバー17が回転をした際には、トーションバー17から出力軸16に対しては、連結ピン70によって連結される位置でトーションバー17から出力軸16に対して操舵トルクが伝達される。
【0082】
これにより、ステアリングシャフト12の入力軸13に操舵トルクが付与された際には、トーションバー17を介して、入力軸13から出力軸16に対して操舵トルクが伝達される。その際に、トーションバー17が僅かに捩じれることにより、入力軸13と出力軸16とは、相対回転をする。
【0083】
トルクセンサ30は、永久磁石32を有する磁石部材31が入力軸13に取り付けられ、ステータ40が出力軸16に取り付けられることにより、入力軸13と出力軸16とが相対回転をした際には、トルクセンサ30が有する永久磁石32とステータ40も、相対的に回転をする。永久磁石32とステータ40と相対回転の角度は、入力軸13と出力軸16との間で作用する操舵トルクが大きくなるに従って相対回転の角度が大きくなる。
【0084】
永久磁石32とステータ40とが相対回転した場合は、永久磁石32からステータ40に作用する磁束が変化する。ステータ40の近傍に配置される集磁ヨーク50は、永久磁石32からステータ40に作用する磁束の変化を検出することが可能になっている。このため、入力軸13と出力軸16との相対回転に伴って永久磁石32とステータ40が相対回転をした際には、ステータ40の近傍に配置される集磁ヨーク50は、永久磁石32からステータ40に作用する磁束の変化を検出することができる。
【0085】
このように、集磁ヨーク50で検出する、永久磁石32からステータ40に対して作用する磁束は、永久磁石32とステータ40と相対回転の角度に応じて変化する。ホールIC55は、集磁ヨーク50によって検出した永久磁石32とステータ40との相対回転の角度に応じて変化する磁束を、ホール素子で検出すると共に出力回路で電気信号に変換し、トルクセンサ30からの出力信号としてECU90に伝達する。つまり、トルクセンサ30は、永久磁石32からステータ40に作用する磁束の変化を集磁ヨーク50とホールIC55とで検出することにより、入力軸13に付与された操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクを電気信号としてECU90に伝達する。
【0086】
ECU90は、トルクセンサ30から伝達された電気信号に基づいて電動モータ91を作動させ、電動モータ91に補助操舵トルクを発生させる。つまり、トルクセンサ30のホールIC55からECU90に伝達された電気信号は、永久磁石32とステータ40との相対回転の角度に応じて変化し、入力軸13と出力軸16との間で作用する操舵トルクに基づいて変化する。このため、ECU90は、トルクセンサ30のホールIC55から伝達された電気信号を、入力軸13及び出力軸16に作用する操舵トルクによって変化する情報として使用し、ホールIC55から伝達される電気信号に基づいて電動モータ91へ供給する電力値を調節し、電動モータ91に補助操舵トルクを発生させる。
【0087】
即ち、ECU90は、トルクセンサ30から操舵トルクの信号を取得し、車速センサ95から車両の車速信号を取得し、さらに、電動モータ91に設けられた回転検出装置から電動モータ91の動作情報を取得し、これらの動作情報と操舵トルクと車速信号とに基づいて電動モータ91に補助操舵トルクを発生させる。電動モータ91で発生した補助操舵トルクは、電動モータ91の出力軸に連結されるウォーム(図示省略)とウォームホイール94とを介してステアリングシャフト12の出力軸16に伝達される。これにより、運転者がステアリングホイール11に付与した操舵力は、電動モータ91で発生した補助操舵トルクによりアシストされる。
【0088】
以上のように、第1実施形態に係る電動パワーステアリング装置10では、トーションバー17は入力軸13の入力軸側孔部13aに対して圧入部14で圧入され、トルクセンサ30が有する磁石部材31は、入力軸13における磁石部材31が接続される部分である接続部15の軸方向における位置が、圧入部14の位置とは異なっている。これにより、永久磁石32を有する磁石部材31は、トーションバー17を入力軸13の入力軸側孔部13aに対して圧入した際に圧入部14の位置で入力軸13の径が僅かに大きくなった場合でも、入力軸13の径が大きくなることの影響を受けることなく、入力軸13に取り付けることができる。従って、延性が小さい永久磁石32を、トーションバー17の圧入に伴う入力軸13の径の拡大を回避しながら入力軸13に取り付けることができる。この結果、トルクセンサ30に用いられる永久磁石32の破断を抑制することができる。
【0089】
また、磁石部材31は、永久磁石32が配置されるマグネットスリーブ33を有し、入力軸13の接続部15には、マグネットスリーブ33が接続されるため、入力軸13に磁石部材31を配置する際に永久磁石32に作用する力を、極力小さくすることができる。つまり、入力軸13に磁石部材31を配置する際に永久磁石32に発生する応力を、極力小さくすることができる。この結果、トルクセンサ30に用いられる永久磁石32の破断を抑制することができる。
【0090】
また、出力軸16の出力軸側孔部16aには、出力軸側孔部16aとトーションバー17との間にトーションバースリーブ71が配置されるため、トーションバー17を出力軸側孔部16a内でトーションバースリーブ71によって支持することができる。これにより、出力軸側孔部16a内でのトーションバー17の倒れ込みを抑制することができる。例えば、トーションバー17を出力軸側孔部16a内に配置した状態で入力軸13の入力軸側孔部13aにトーションバー17を圧入する際に、トーションバー17をトーションバースリーブ71によって支持することにより、出力軸側孔部16a内でのトーションバー17の倒れ込みを抑えつつ、トーションバー17を入力軸側孔部13aに圧入することができる。この結果、電動パワーステアリング装置10の組み立て性を向上させることができる。
【0091】
また、ハウジング20に対して出力軸16を回転自在に支持する軸受60は、少なくとも軸方向における一部の位置がトーションバースリーブ71の位置と同じ位置に配置されるため、トーションバー17からトーションバースリーブ71に対して作用する荷重を、軸受60によって効率良く受けることができる。つまり、トーションバー17からトーションバースリーブ71に対して作用する荷重を、トーションバースリーブ71から短い距離で配置される軸受60によって受けることができる。これにより、軸受60に作用する荷重を小さくすることができ、軸受60に径方向の大きな荷重が作用することに起因して、軸受60の内輪と外輪との相対回転が行われ難くなることを抑制することができる。従って、軸受60で支持する出力軸16を回転させる際における回転抵抗が大きくなることを抑制でき、出力軸16を有するステアリングシャフト12を回転させる際の回転抵抗を小さくすることができる。この結果、ステアリングホイール11を回転させて操舵を行う際の操舵トルクを軽減することができ、電動パワーステアリング装置10の操作性を向上させることができる。
【0092】
また、出力軸16には、出力軸側孔部16aの内側に配置されるトーションバー17と出力軸16とを連結する連結ピン70が配置されるため、トーションバー17に座屈が発生することを抑制することができる。つまり、入力軸13に対して圧入するトーションバー17を出力軸16に対しても圧入する場合、トーションバー17に対して軸方向の力を付与する位置が、トーションバー17における出力軸16に対して圧入する部分から離れた位置から力を付与することになり易くなる。この場合、トーションバー17は、軸方向における力を付与する部分と圧入部分との距離が大きくなることに起因して、座屈が発生することが考えられる。
【0093】
これに対し、第1実施形態では、トーションバー17と出力軸16とを連結ピン70によって連結するため、出力軸側孔部16aにトーションバー17を挿入して出力軸16に連結する際における、トーションバー17に対して付与する軸方向の力を小さくすることができる。これにより、出力軸16に対するトーションバー17の圧入部分から離れた位置から軸方向の大きな力がトーションバー17に付与されることに起因して、トーションバー17に座屈が発生することを抑制することができる。従って、出力軸16にトーションバー17を組み付ける際における組み立て性を向上することができ、組み立て工程での作業性を高めることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0094】
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置10について説明する。第1実施形態と同一の構成部位には、同一符号を付けて説明を省略する。以下、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
【0095】
図4は、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置10の要部断面図である。第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置10では、第1実施形態と同様に、トーションバー17は入力軸13の入力軸側孔部13aに圧入され、入力軸13における磁石部材31が接続される部分である接続部15は、入力軸13の軸方向における位置が圧入部14とは異なる位置になっている。
【0096】
第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、入力軸13における磁石部材31が接続される接続部15は、軸方向における圧入部14が位置する位置に対して、出力軸16が位置する側の反対側に位置している。つまり、入力軸13におけるトーションバー17の圧入部14は、軸方向における位置が接続部15の位置よりも出力軸16側に位置している。詳しくは、圧入部14は、軸方向における位置が接続部15の位置の近傍で、且つ、軸方向における位置が接続部15と同じ位置となる部分を有することなく、接続部15の位置よりも僅かに出力軸16寄りに位置している。
【0097】
また、第2実施形態では、磁石部材31は、入力軸13の外周面13bから離隔する離隔部34が、接続部15の位置から入力軸13の軸方向において圧入部14が位置する側に延びている。このため、軸方向における位置が接続部15の位置の近傍に位置する圧入部14は、少なくとも一部が、入力軸13の径方向における、磁石部材31が有する離隔部34の内側に位置している。つまり、圧入部14は、軸方向における少なくとも一部の位置が、磁石部材31が有する離隔部34の軸方向における位置と同じ位置になっている。
【0098】
詳しくは、磁石部材31の離隔部34には、マグネットスリーブ33に取り付けられる永久磁石32が配置されている。このため、圧入部14は、磁石部材31の離隔部34に配置される永久磁石32に対して、少なくとも一部が径方向における永久磁石32の内側に位置している。
【0099】
また、第2実施形態では、入力軸13に形成される入力軸側孔部13aは、実質的に圧入部14のみに形成されており、圧入部14に形成される入力軸側孔部13aが、入力軸13における出力軸16側の端部に開口している。換言すると、圧入部14は、入力軸13における出力軸16側の端部から、軸方向における出力軸16が位置する側の反対側に向かって形成されている。
【0100】
このように、入力軸13における出力軸16側の端部寄りに位置する入力軸13の圧入部14は、鍛造により形成されている。つまり、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置10の製造方法では、入力軸13の軸方向における圧入部14が形成される範囲に対して、外周面13b側から鍛造を行う。入力軸13は、鍛造された圧入部14を有する。また、入力軸側孔部13aは、外周面13b側から鍛造を行った入力軸13の圧入部14に対して、入力軸13における出力軸16が位置する側の端部側から切削加工を施す。これにより、入力軸13の圧入部14は、外周面13b側の剛性が向上し、トーションバー17を圧入する入力軸側孔部13aの精度が高い精度で形成される。
【0101】
図5は、
図4のA部詳細図である。入力軸13の圧入部14に形成される入力軸側孔部13aに圧入されるトーションバー17は、トーションバー17において入力軸側孔部13aに圧入される拡径部17aにおける、出力軸16が位置する側の部分に押し込み部17cが形成されている。押し込み部17cは、拡径部17aにおける出力軸16が位置する側の端部が、入力軸13の軸方向、即ち、トーションバー17の軸方向に対して直交する平面となって形成されている。つまり、トーションバー17の押し込み部17cは、拡径部17aよりも細い径で拡径部17aに連結される部分との段差部になっており、当該段差部が、トーションバー17の軸方向に対して直交する平面となって形成されている。
【0102】
このように形成されるトーションバー17の押し込み部17cは、拡径部17aが入力軸13の入力軸側孔部13aに圧入された状態における押し込み部17cの軸方向における位置が、入力軸13における出力軸16側の端部の位置と略同じ位置となって形成されている。
【0103】
第2実施形態においても、入力軸13の外周面13bにはキーロックカラー75が配置されている。キーロックカラー75は、軸方向における位置が圧入部14とは異なる位置に配置されており、キーロックカラー75は、軸方向において圧入部14に対して出力軸16が位置する側の反対の位置に配置されている。つまり、キーロックカラー75は、入力軸13に配置される磁石部材31に対して、軸方向において出力軸16が位置する側の反対の位置に配置されている。
【0104】
第2実施形態では、キーロックカラー75は第1実施形態とは異なり、スリップリング76を介して入力軸13の外周面13bに配置されている。スリップリング76は、略円環状に形成される板ばね状になっており、キーロックカラー75の内周面と、入力軸13の外周面13bとの間に配置されている。スリップリング76は、板ばねの弾性力により、キーロックカラー75の内周面とスリップリング76の外周面との間、及び入力軸13の外周面13bとスリップリング76の内周面との間で摩擦力を発生させつつ、キーロックカラー75を入力軸13の外周面13bに保持する。
【0105】
このように配置されるスリップリング76は、キーロックカラー75と入力軸13とを相対回転させる方向の大きな力が入力された場合に、スリップしてキーロックカラー75と入力軸13と相対回転させることができる。このため、キーロックカラー75は、所定値以上の大きさでキーロックカラー75と入力軸13とを相対回転させる方向の大きな力が入力された場合に、スリップリング76のスリップによって入力軸13に対して相対回転可能に配置されている。
【0106】
以上のように、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置10では、実施形態1と同様に、入力軸13においてトルクセンサ30の磁石部材31が接続される部分である接続部15の軸方向における位置が、入力軸13におけるトーションバー17を圧入する圧入部14とは異なる位置になっている。このため、磁石部材31が有し延性が小さい永久磁石32を、トーションバー17の圧入に伴う入力軸13の径の拡大を回避しながら入力軸13に取り付けることができる。この結果、トルクセンサ30に用いられる永久磁石32の破断を抑制することができる。
【0107】
また、入力軸13におけるトーションバー17を圧入する圧入部14は、入力軸13の軸方向における位置が、入力軸13において磁石部材31を接続する接続部15の位置よりも出力軸16側に位置している。このため、入力軸13の端部からの入力軸側孔部13aの深さを浅くすることができ、入力軸13に対して切削によって入力軸側孔部13aを形成する際における切削範囲を小さくすることができる。従って、入力軸側孔部13aを形成する際における切削工程を簡易に行うことができる。
【0108】
また、入力軸13の端部からの入力軸側孔部13aの深さを浅くすることにより、入力軸側孔部13aにトーションバー17を圧入する際に、入力軸側孔部13aに対してトーションバー17を押し込む距離を短くすることができる。これにより、入力軸13にトーションバー17を組み付ける際における組み立て性を向上することができ、組み立て工程での作業性を高めることができる。これらの結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0109】
また、トーションバー17には拡径部17aに押し込み部17cが形成されているため、入力軸13の入力軸側孔部13aにトーションバー17を圧入する際に、押し込み部17cに負荷を与えながら圧入することにより、入力軸側孔部13aに対してトーションバー17を容易に圧入することができる。これにより、入力軸13の入力軸側孔部13aにトーションバー17を圧入する際に、トーションバー17における拡径部17aから離れた位置に対して負荷を与えることに起因してトーションバー17に座屈が発生することを抑制することができる。従って、入力軸13にトーションバー17を組み付ける際における組み立て性を向上することができ、組み立て工程での作業性を高めることができる。この結果、製造コストの低減を図ることができる。
【0110】
また、入力軸13の圧入部14は、少なくとも一部が、磁石部材31が有する離隔部34の径方向における内側に位置するため、入力軸13における磁石部材31が接続される接続部15と圧入部14とで軸方向における位置を異ならせつつ、トーションバー17を圧入する入力軸側孔部13aの深さを浅くすることができる。これにより、入力軸13に入力軸側孔部13aを形成する際における切削工程を簡易なものにしつつ、磁石部材31が有する永久磁石32を、トーションバー17の圧入に伴う入力軸13の径の拡大を回避しながら入力軸13に取り付けることができる。この結果、製造コストの低減を図りつつ、トルクセンサ30に用いられる永久磁石32の破断を抑制することができる。
【0111】
また、入力軸13の圧入部14は鍛造を行って形成するため、圧入部14の剛性を高めることができる。このため、入力軸13の入力軸側孔部13aにトーションバー17を圧入することによって連結する入力軸13とトーションバー17との連結を強固なものにすることができ、入力軸13に操舵トルクが付与された際に、入力軸13とトーションバー17とが相対回転することを抑制できる。これにより、入力軸13に付与された操舵トルクを、トーションバー17を介して適切に出力軸16に伝達することができると共に、操舵トルクの大きさに応じたトーションバー17の僅かな捩じれによって入力軸13と出力軸16とを相対回転させることができる。従って、入力軸13と出力軸16との相対回転をトルクセンサ30で検出することにより、操舵トルクの大きさを検出することができる。この結果、ステアリングシャフト12に入力された操舵トルクの大きさを適切に検出することができる。
【0112】
また、入力軸13の外周面13bに配置されるキーロックカラー75は、入力軸13の軸方向における位置が圧入部14とは異なる位置に配置されるため、スリップリング76を介してキーロックカラー75が入力軸13に配置されている部分が、入力軸13におけるトーションバー17の圧入部14に対して軸方向において同じ位置になることを抑制することができる。このため、トーションバー17を入力軸13の入力軸側孔部13aに圧入した際に圧入部14の位置で入力軸13の径が僅かに大きくなることに起因して、入力軸13に対する、スリップリング76を介するキーロックカラー75の嵌合力が、設計時に設定した嵌合力から変化することを抑制することができる。これにより、ロック装置(図示省略)によって入力軸13とキーロックカラー75とを相対回転させる方向の力がキーロックカラー75に付与された際に、入力軸13に対してキーロックカラー75が相対回転をしてしまう大きさのトルクであるスリップトルクが、設定したスリップトルクから変動することを抑制することができる。従って、キーロックカラー75が入力軸13に対して、想定外の小さなトルクで相対回転してしまうことを抑制することができ、入力軸13に対してキーロックカラー75を適切に嵌合させることができる。この結果、キーロックカラー75を有するロック装置を適切に動作させることができる。
【0113】
[変形例]
なお、上述した第1実施形態や第2実施形態では、入力軸13に接続される磁石部材31はマグネットスリーブ33を有し、マグネットスリーブ33に永久磁石32が配置されているが、磁石部材31はマグネットスリーブ33を有していなくてもよい。
【0114】
図6は、第2実施形態に係る電動パワーステアリング装置10の変形例であり、磁石部材31がマグネットスリーブ33を有さない場合を示す電動パワーステアリング装置10の要部断面図である。磁石部材31は、マグネットスリーブ33を有さず、永久磁石35単体で構成されていてもよい。つまり、入力軸13の接続部15には、磁石部材31が有する永久磁石35が、マグネットスリーブ33を介さずに直接接続されていてもよい。入力軸13の接続部15に直接接続する永久磁石35は、
図3に示す永久磁石32と同様に、略円筒状の形状で形成されて複数のN極とS極とが周方向に交互に配置された多極磁石を用いる。
【0115】
また、永久磁石35には、第1実施形態や第2実施形態における磁石部材31と同様に、入力軸13の外周面13bから離隔する離隔部36を設けてもよい。この場合、永久磁石35が有する離隔部36は、
図6に示すように、接続部15の位置から入力軸13の軸方向において圧入部14が位置する側に延びて形成され、圧入部14は、少なくとも一部が径方向における離隔部36の内側に位置するのが好ましい。
【0116】
磁石部材31は、これらのように磁石部材31が有する永久磁石35を入力軸13の接続部15に直接接続することにより、部品点数を抑えることができる。これにより、製造コストの低減を図ることができる。
【0117】
また、永久磁石35を入力軸13の接続部15に直接接続する場合においても、永久磁石35に離隔部36を形成し、入力軸13の圧入部14の少なくとも一部を、永久磁石35が有する離隔部36の径方向における内側に位置させることにより、接続部15と圧入部14の位置を軸方向で異ならせつつ、入力軸側孔部13aの深さを浅くすることができる。これにより、入力軸13に入力軸側孔部13aを形成する際の切削工程を簡易なものにすることができ、また、永久磁石35を、トーションバー17の圧入に伴う入力軸13の径の拡大を回避しながら入力軸13に取り付けることができる。この結果、製造コストの低減を図りつつ、トルクセンサ30に用いられる永久磁石35の破断を抑制することができる。
【0118】
また、上述した第1実施形態や第2実施形態では、トーションバー17は出力軸16に対して連結ピン70により連結されているが、トーションバー17は、出力軸16に対して連結ピン70以外によって連結されていてもよい。トーションバー17は、例えば、出力軸側孔部16aに圧入することによって、出力軸16に連結されていてもよい。
【0119】
また、上述した第1実施形態や第2実施形態では、電動パワーステアリング装置10は、ステアリングシャフト12に補助操舵トルクが付与されるコラムアシスト方式になっているが、電動パワーステアリング装置10は、コラムアシスト方式以外であってもよい。電動パワーステアリング装置10は、電動モータ91で発生した駆動力によってピニオンギヤ85aを回転させるシングルピニオン方式であってもよく、電動モータ91で発生した駆動力を、ピニオンギヤ85aとは異なる位置からラックバー85bに対して付与する第2ピニオンギヤを有する、デュアルピニオン方式であってもよい。
【0120】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
12 ステアリングシャフト
13 入力軸
13a 入力軸側孔部
13b 外周面
14 圧入部
15 接続部
16 出力軸
16a 出力軸側孔部
17 トーションバー
17a、17b 拡径部
20 ハウジング
21 第1ハウジング
25 第2ハウジング
30 トルクセンサ
31 磁石部材
32、35 永久磁石
33 マグネットスリーブ
34、36 離隔部
40 ステータ
43 ステータスリーブ
50 集磁ヨーク
55 ホールIC
60、65 軸受
70 連結ピン
71 トーションバースリーブ
75 キーロックカラー
81、83 ユニバーサルジョイント
82 中間シャフト
84 スタブシャフト
85 ステアリングギヤ
85a ピニオンギヤ
85b ラックバー
86 タイロッド
90 ECU
91 電動モータ
92 減速装置
94 ウォームホイール
95 車速センサ
99 電源装置