(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025080001
(43)【公開日】2025-05-23
(54)【発明の名称】電気コネクタおよび電気コネクタと回路基板との接続体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6585 20110101AFI20250516BHJP
H01R 13/6473 20110101ALI20250516BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20250516BHJP
【FI】
H01R13/6585
H01R13/6473
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192938
(22)【出願日】2023-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】TE Connectivity Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100229736
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 正章
(72)【発明者】
【氏名】辻 淳也
(72)【発明者】
【氏名】片野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】福崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】古平 善彦
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正宗
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩司
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FC23
5E021LA10
5E021LA15
5E223AB60
5E223BA07
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223CD15
5E223DA13
5E223DB13
5E223EB04
5E223EB15
5E223EB23
5E223EB32
(57)【要約】
【課題】信号コンタクトおよびグランドコンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、電気コネクタと回路基板との間のグランドの電気的接続を安定させることができる電気コネクタを提供すること。
【解決手段】本発明の電気コネクタは、複数の信号コンタクト13、複数のグランドコンタクト15、複数の信号コンタクト13および複数のグランドコンタクト15を支持するウエハ11と、を備え、ウエハ11に装着され、複数のグランドコンタクト15と導通するオーガナイザ30と、オーガナイザ30に装着され、オーガナイザ30と導通する少なくとも一つのグランドプレート40、を備え、グランドプレート40は、回路基板20と接する複数のばね体としての複数の板ばね42が形成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と接続される電気コネクタであって、
複数の信号コンタクトと、
複数のグランドコンタクトと、
複数の前記信号コンタクトおよび複数の前記グランドコンタクトを支持するウエハと、
前記ウエハに装着され、複数の前記グランドコンタクトと導通するオーガナイザと、
前記オーガナイザに装着され、前記オーガナイザと導通する少なくとも一つのグランド部材と、を備え、
前記グランド部材は、前記回路基板と接する複数のばね体が形成される、電気コネクタ。
【請求項2】
複数の前記ばね体のそれぞれは、片持ち支持構造に形成され、片持ち支持構造の少なくとも一部が前記回路基板に近づく方向に延びている、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
複数の前記ばね体のそれぞれは、
横方向(W)に延びる前記ばね体と、
縦方向(D)に延びる前記ばね体と、によって構成される、
請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
一対の前記信号コンタクトに対し、少なくとも一つの前記ばね体が形成される、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
複数の前記グランドコンタクトのそれぞれは、圧入型のコンタクトである、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記オーガナイザは、
前記グランドコンタクトとの導通部および前記グランド部材との装着部に形成される導電膜と、
前記導電膜を支持する電気的な絶縁材料からなる成形体と、を備える、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
回路基板と請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電気コネクタとの接続体であって、
前記回路基板は、
信号電極と、グランド電極と、を備え、
前記電気コネクタの前記信号コンタクトが前記回路基板の前記信号電極と電気的に接続され、
前記電気コネクタの前記グランドコンタクトが前記回路基板の前記グランド電極と電気的に接続される、電気コネクタと回路基板との接続体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と接続される電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタなどにおいてデータ通信の用途で用いられる接続システムにおけるサーバ、ルータでは、互いに90°の向きになった2枚の回路基板を接続することが要求される場合がある。この場合、2枚の回路基板のそれぞれに電気コネクタとしての雄コネクタおよび雌コネクタが接続され、雄コネクタと雌コネクタが接続されることにより2枚の回路基板が相互に接続される。この種の電気コネクタは、例えば特許文献1および特許文献2に開示されるが、信号を伝送するための信号コンタクトとグランド(GND)用のグランドコンタクトが高密度で配置されている。特許文献1および特許文献2の電気コネクタは、信号コンタクトおよびとグランドコンタクトを支持するウエハを必要な枚数だけ積層して構成されている。ウエハの一例について、例えば特許文献3に詳しい記載がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-527068号公報
【特許文献2】特表2008-535185号公報
【特許文献3】特開2021-2465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高いデータ転送速度が求められる、高密度で信号コンタクトおよびグランドコンタクトを備える電気コネクタと回路基板との接続体は、信号コンタクトの接続部と他の信号コンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、電気コネクタと回路基板との間のグランドの電気的接続を安定させる必要がある。
そこで、本発明は、信号コンタクトおよびグランドコンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、電気コネクタと回路基板との間のグランドの電気的接続を安定させることができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電気コネクタは、複数の信号コンタクト、複数のグランドコンタクト、複数の信号コンタクトおよび複数のグランドコンタクトを支持するウエハと、を備える。さらに電気コネクタは、ウエハに装着され、複数のグランドコンタクトと導通するオーガナイザと、オーガナイザに装着され、オーガナイザと導通する少なくとも一つのグランド部材と、を備え、グランド部材は、回路基板と接する複数のばね体が形成される。
【0006】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、ばね体のそれぞれは、片持ち支持構造に形成され、片持ち支持構造の少なくとも一部が回路基板に近づく方向に延びている。
【0007】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、ばね体のそれぞれは、横方向に延びるばね体と、縦方向に延びるばね体と、によって構成される。
【0008】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、一対の信号コンタクトに対し、少なくとも一つのばね体が形成される。
【0009】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、複数のグランドコンタクトのそれぞれは、圧入型のコンタクトである。
【0010】
本発明の電気コネクタにおいて、好ましくは、オーガナイザは、グランドコンタクトとの導通部およびグランド部材との装着部に形成される導電膜と、導電膜を支持する電気的な絶縁材料からなる成形体と、を備える。
【0011】
本発明は、以上のいずれかに記載の電気コネクタと回路基板との接続体を提供する。この接続体において、回路基板は、信号電極と、グランド電極と、を備え、電気コネクタの信号コンタクトが回路基板の信号電極と電気的に接続され、電気コネクタのグランドコンタクトが回路基板のグランド電極と電気的に接続される。
【発明の効果】
【0012】
ウエハに装着され、複数のグランドコンタクトと導通するオーガナイザと、オーガナイザに装着され、オーガナイザと導通する少なくとも一つのグランド部材と、を備え、グランド部材は、回路基板と接する複数のばね体が形成されている、本発明の電気コネクタによれば、信号コンタクトおよびグランドコンタクトのそれぞれの機能を確保しつつ、オーガナイザと回路基板との間のグランドの電気的接続を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電気コネクタを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る電気コネクタと回路基板との関係を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るグランド部材と回路基板のグランドとの関係を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る電気コネクタであって、回路基板のグランドにグランド部材が設置された図を示す。
【
図5】第1実施形態に係る回路基板の一部を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る電気コネクタの信号コンタクトとグランドコンタクトとオーガナイザの一部を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係るオーガナイザとグランド部材を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係るオーガナイザとグランド部材を示す図である。
【
図9】第3実施形態に係るオーガナイザとグランド部材を示す図である。
【
図10】第4実施形態に係る電気コネクタの信号コンタクトとグランドコンタクトとオーガナイザとグランド部材の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気コネクタと回路基板との接続体を説明する。この接続とは、電気的な接続と機械的な接続とを伴うことを意味する。
〔第1実施形態:
図1~
図7参照〕
第1実施形態の電気コネクタ10は、
図1に示されるように、ウエハ11と、複数の信号コンタクト13と、複数のグランドコンタクト15と、オーガナイザ30と、を備える。また、
図2に示されるように、電気コネクタ10は、回路基板20と接続されることにより、接続体となる。図示を省略するが、一例として、電気コネクタ10と他の電気コネクタとが互いに嵌合されることにより、回路基板20と他の回路基板とが互いの向きが直交するDPO(Direct Plug Orthogonal)を構成する。DPOにおいて、本実施形態の接続体の回路基板20と他の接続体の回路基板との間で送受信される電気信号が電気コネクタ10と他の電気コネクタとの間で受け渡しされる。本実施形態における電気コネクタ10は、複数のグランドコンタクト15と導通するオーガナイザ30と、オーガナイザ30に装着され、オーガナイザ30と導通する少なくとも一つのグランド部材としてのグランドプレート40と、を備え、グランド部材としてのグランドプレート40は、回路基板20と接する複数のばね体としての複数の板ばね42が形成されている。
【0015】
[電気コネクタ10:
図1,
図2,
図3,
図6参照]
電気コネクタ10は、複数枚のウエハ11が積層されて構成されている。ウエハ11の概略の構成例を説明すると、2枚の配線板と2枚のシールド板を備えている。配線板とシールド板は、平面視して概ね矩形状をなしている。
2枚の配線板は、配列された複数の個別配線からなる金属配線が樹脂板にインサートモールドされた板状の部材である。金属配線を構成している各々の個別配線の一端部には、相手コネクタである他の電気コネクタのコンタクトと接するコンタクトが形成されている。また、これら各々の個別配線の他端部には、回路基板20に形成される複数の信号電極パッド23のそれぞれに電気的に接触される複数の圧接型の信号コンタクト13が配列されている(
図2)。なお、信号電極パッド23は、本発明の信号電極に該当する。
2枚のシールド板は、互いに重ねられた状態の2枚の配線板を両側から挟むように配置される。これら2枚のシールド板のそれぞれの1つの側面には、嵌合相手となる他の電気コネクタのグランドコンタクトと接続される複数のグランドコンタクトが配列されている。また、これら2枚のシールド板14(
図3)の他の側面には、複数のグランド電極としての複数のスルーホール電極25に差し込まれる複数のグランドコンタクト15が配列されている。スルーホール電極25は、回路基板20に形成されるグランド電極として機能する。
【0016】
信号コンタクト13は、一例として、圧接型(Spring Contact)のコンタクトが適用されている。信号コンタクト13において、接点部側を先端とする。電気コネクタ10と回路基板20とを互いに組み付ける過程で、接点部が信号電極パッド23に押し付けられると、接点部は信号電極パッド23に圧接される。
信号コンタクト13は、例えば、導電性および弾性に優れた銅合金からなる板材を打ち抜き加工および曲げ加工することで形成される。グランドコンタクト15も同様である。
【0017】
グランドコンタクト15は、一例として、圧入型(Press Fit)のコンタクトが適用される。グランドコンタクト15は、ニードルアイ型とも称され、
図6に示すように、プレスフィット部15Aと、プレスフィット部15Aの一方に連なる案内部15Bと、プレスフィット部15Aの他方に連なる基部15Cと、から構成される。プレスフィット部15Aは、一対の弾性圧接片15A1,15A1と、弾性圧接片15A1,15A1の間に挟まれる空隙15A2と、を備える。弾性圧接片15A1,15A1は、各々、両持ち支持構造をなしており、空隙15A2を挟んで外側へ弧状に湾曲して形成されている。したがって、弾性圧接片15A1,15A1は、空隙15A2を間に挟んで、内側又は外側へ撓み、弾性変形が可能とされる。また、グランドコンタクト15がスルーホール電極25に挿入されると、空隙15A2を撓み空隙として弾性圧接片15A1,15A1が内側へ弾性変形し、その反力により弾性圧接片15A1,15A1の各々の外周面がスルーホール電極25に押し付けられる。
【0018】
[回路基板20:
図2,
図3,
図5参照]
回路基板20は、おもて面21Aとうら面21Bを有する基板本体21と、基板本体21のおもて面21Aに形成される複数の信号電極パッド23と、基板本体21のおもて面21Aとうら面21Bとを貫通して形成される複数のスルーホール電極25と、を備える。
【0019】
基板本体21は、複数枚の基板素材を積層して構成される。基板素材にはおもて面21Aに形成される複数の信号電極パッド23に接続される図示が省略される信号経路が形成される。
基板本体21は、おもて面21Aに、隣接して並ぶ一対の信号電極パッド23,23の周囲、およびノンスルーホール(Non Plated Through Hole)の開口の周囲を除き、例えばメッキによる導電膜CPが形成される。
【0020】
信号電極パッド23には回路基板20に組み付けられる電気コネクタ10の信号コンタクト13が圧接されることで、電気コネクタ10と回路基板20との間で電気信号の送受信が行われる。なお、
図2,
図3,
図5において、信号電極パッド23は基板本体21のおもて面21Aに記載されているが、基板本体21の内部には複数の信号電極パッド23のそれぞれに電気的に繋がる電気信号の送受信に関わる信号経路が基板本体21の平面方向に沿って形成されている。この信号経路は、スルーホール電極25を避けて形成される。
【0021】
なお、ここでは信号電極パッド23を用いて圧接型の信号コンタクト13と電気的に接続される例を示しているが、信号コンタクト13をグランドコンタクト15と同様に圧入型とし、回路基板20に形成されるスルーホール電極にこの圧入型の信号コンタクト13を挿入してもよい。ただし、信号電極パッド23であれば基板本体21に貫通孔を形成する必要がないので基板本体21の機械的な強度を確保する上で有利であるのに加えて、おもて面21Aに信号電極パッド23が形成されていたとしても基板本体21の内部には信号経路を形成できる。
【0022】
スルーホール電極25は、
図5に示すように、基板本体21に形成される貫通孔THと、貫通孔THを取り囲む基板本体21の厚さ方向の壁面に形成され例えばメッキによる導電膜CPと、から構成される。導電膜CPは、通常、おもて面21Aおよびうら面21Bにおけるスルーホール電極25の開口の周囲にも形成される。
グランドコンタクト15がスルーホール電極25に挿入されると、
図6に示される、プレスフィット部15Aの弾性圧接片15A1,15A1が内側の空隙に向けて弾性変形する。その反力により弾性圧接片15A1,15A1の各々の外周面がスルーホール電極25の導電膜CPに押し付けられることで、電気コネクタ10と回路基板20との間でグランド(GND)が図られる。
【0023】
[オーガナイザ30:
図6,
図7参照]
オーガナイザ30は、グランド部材としてのグランドプレート40を介して、グランドコンタクト15との間でグランド(GND)として機能し、両者が同電位とされる。
オーガナイザ30は、一例として、電気的な絶縁材料である樹脂材料を射出成形することにより一体として形成される。また、オーガナイザ30は、グランドコンタクト15との導通部およびグランド部材としてのグランドプレート40との装着部に、メッキによる導電膜CPが形成される。本実施形態においては、オーガナイザ30の全面に、メッキによる導電膜CPが形成される。
導電膜CPを構成するメッキは、金メッキ、銀メッキなどの公知のメッキが適用される。また、導電膜CPは、メッキに限るものではなく、他の手段、例えば蒸着、スパッタリングなどによる導電膜CPを適用することができる。信号電極パッド23も同様の導電膜から形成される。
また、説明の便宜上、
図6などに示すように、横方向W、縦方向Dおよび高さ方向Hを定義する。
【0024】
オーガナイザ30は、
図7に示すように、オーガナイザ本体31と、収容スペース32と、挿通孔33と、隙間部34と、を備える。収容スペース32、挿通孔33および隙間部34は、それぞれ横方向Wおよび縦方向Dに格子状またはマトリックス状に並んで配置される。
【0025】
収容スペース32は、高さ方向Hに貫通する空隙となっており、この空隙に一対の信号コンタクト13,13が収容される。
挿通孔33は、開口形状が矩形であり、オーガナイザ30の表裏を貫通しグランドコンタクト15が挿通される。挿通孔33は、二つずつ設けられており、二つの挿通孔33は、縦方向Dに間隔をあけて設けられている。したがって、全体として、複数の挿通孔33は、縦方向Dおよび横方向Wに並んでいる。また、オーガナイザ30は、挿通孔33よりも奥に、図示を省略するが、グランドコンタクト15の基部15Cが圧入される圧入支持部を備えている。圧入支持部は、基部15Cが圧入されると、基部15Cを機械的に拘束することにより、グランドコンタクト15を位置決めする。また、圧入支持部にグランドコンタクト15の基部15Cが圧入されることで、オーガナイザ30の全面に形成されている導電膜CPは、グランドコンタクト15と電気的に接続される。
隙間部34は、高さ方向Hに貫通する隙間となっており、この隙間にグランド部材としてのグランドプレート40を装着する。
【0026】
[グランドプレート40:
図3,
図4,
図7]
グランド部材としてのグランドプレート40は、オーガナイザ30に形成される導電膜CPを介して、グランドコンタクト15との間でグランド(GND)として機能し、両者が同電位とされる。
グランドプレート40は、
図7に示すように、グランドプレート本体41と、回路基板20と接する複数のばね体としての複数の板ばね42と、複数の装着部43と、を備える。
グランドプレート40は、例えば、導電性および弾性に優れた銅合金からなる板材を打ち抜き加工および曲げ加工することで形成される。
【0027】
グランドプレート本体41は、本実施形態においてグランドプレート本体41を平面視したときに、概ね梯子状をなしている。梯子状のグランドプレート本体41は、梯子の踏桟に相当する横部材45と、梯子の支柱に相当する縦部材46と、によって構成される。本実施形態においては、梯子状のグランドプレート本体41は、9本の横部材45と、2本の縦部材46と、によって構成される。複数の横部材45は、縦方向Dに互いに等間隔で配置されている。一対の縦部材46は、複数の横部材45の横方向Wの両端部に接続されている。グランドプレート本体41の2本の隣接する横部材45および2本の縦部材46に囲まれた開口は、横方向Wに並べられた収容スペース32および二つの挿通孔33が配置される配置スペース44である。配置スペース44は、グランドプレート本体41の縦方向Dに複数配置される。横部材45は、横方向Wに並べられた収容スペース32および二つの挿通孔33と、概ね平行に設けられている。
【0028】
横部材45には、回路基板20と接する複数のばね体としての複数の板ばね42および二つの装着部43が形成される。板ばね42は、グランドプレート40をオーガナイザ30へ装着したときに、一対の信号コンタクト13,13が収容される収容スペース32の縦方向D側に、一つ形成されている。縦方向Dに複数配置される一対の信号コンタクト13,13に対し、一つの板ばね42が形成されることにより、一対の信号コンタクト13,13の縦方向Dの両側に、板ばね42がそれぞれ配置される。また、一対の信号コンタクト13,13の横方向Wの両側に、グランドコンタクト15がそれぞれ配置されることにより、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されるときに、信号コンタクト13と信号電極パッド23との接続部を囲むように、電気コネクタ10と回路基板20との間のグランドが機能する。これにより、電気コネクタ10と回路基板20との接続体において、信号コンタクトゾーン周辺のシールド機能を有し、インピーダンス調整をすることができる。
【0029】
板ばね42は、本実施形態において、片持ち支持構造に形成され、片持ち支持構造の自由端が回路基板20に近づくように延びている。
図4に示すように、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されているときに、片持ち支持構造の板ばね42の自由端側が、回路基板20のおもて面21Aに形成された導電膜CPと接触することで、電気コネクタ10と回路基板20との間にグランドが機能される。板ばね42は、回路基板20に近づくように延びている片持ち支持構造の一部のうち横方向Wのいずれかの位置で回路基板20と接触するとグランドが機能するため、電気的接続の信頼性を向上させる。なお、本実施形態においては、片持ち支持構造の自由端が回路基板20に近づくように延びているが、これに限らず、例えば、片持ち支持構造の一部が回路基板20に近づくように延び、その後自由端の先端側が垂れ下がる構造のように、片持ち支持構造の少なくとも一部が回路基板20に近づくように延びてもよい。
また、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されているときに、片持ち支持構造の板ばね42の自由端側が回路基板20に押し付けられるため、片持ち支持構造の板ばね42に応力が発生する。
【0030】
板ばね42は、本実施形態において、片持ち支持構造の自由端に向かうにつれて先細り形状である。このような板ばね42は、支持端から自由端に向けて、板ばね42の厚さ方向の剛性が小さくなる。これにより、板ばね42を回路基板20に押し付ける際に、剛性の小さい自由端に近い領域は回路基板20に倣ってたわむので、回路基板20に対して面での接触をさせやすくなる。また、剛性の大きい支持端部分が存在することにより、回路基板20と接触する圧力を確保できるので、板ばね42と回路基板20との安定した面接触を実現し、電気コネクタ10と回路基板20との接続部の安定的な電気的接続を維持することができる。
【0031】
板ばね42により、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されているときに、
図4における高さ方向Hに、温度変化による熱膨張および熱収縮や、振動等によって電気コネクタ10と回路基板20との接続部に微小な変位が発生したとしても、発生した高さ方向Hの変位に板ばね42が弾性変形し追従することで、信号コンタクト13と信号電極パッド23との接続部を囲むような、電気コネクタ10と回路基板20との間のグランド機能が維持される。よって、グランド部材としてのグランドプレート40は、導電膜CPを形成されたオーガナイザ30と、回路基板20のおもて面21Aに形成された導電膜CPとの間の安定的な電気的接続を維持することができる。
【0032】
また、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されるときに、グランドプレート40の板ばね42によって、電気コネクタ10と回路基板20とが離れようとする反力が発生する。しかしながら、グランドコンタクト15がスルーホール電極25に挿入される際に、プレスフィット部15Aの弾性圧接片15A1,15A1が内側の空隙に向けて弾性変形し、その反力により弾性圧接片15A1,15A1の各々の外周面がスルーホール電極25の導電膜CPに押し付けられることで、グランドプレート40の板ばね42による反力に対して、電気コネクタ10と回路基板20との接続部の保持力を生み出すことができる。
【0033】
本実施形態においては、圧入型のグランドコンタクト15と、圧接型の信号コンタクト13と、を電気的な接続として例示しているが、上述の通り、信号コンタクト13をグランドコンタクト15と同様に圧入型とすることで、グランドプレート40の板ばね42による反力に対して、電気コネクタ10と回路基板20との接続部の保持力をさらに強くすることができる。これにより、電気コネクタ10と回路基板20との接続部はさらに安定的に電気的接続を維持することができる。
【0034】
グランドプレート40は、装着部43をオーガナイザ30の隙間部34に挿入されることで、オーガナイザ30に装着される。装着部43は、
図7に示すように、横部材45の平面に対し、垂直に延びるように形成されている。本実施形態においては、一つの横部材45に対し、二つの装着部43が形成される。また、オーガナイザ30の隙間部34に装着部43を挿入したときの装着安定性を向上させるために、装着部43は、装着部43の高さ方向Hと横方向Wとの中央付近に突起43Aが形成される。本実施形態においては、一つの装着部43に一つの突起43Aが形成されているが、装着安定性をさらに向上させるために、一つの装着部43に二つ以上の突起43Aが形成されてもよい。
【0035】
グランドプレート40を平面視したときに、横部材45の縦方向Dの一方側に板ばね42が形成され、横部材45の縦方向Dの他方側に装着部43が形成されている。横部材45の横方向Wにおいて、板ばね42と装着部43とは交互に形成されている。また、装着部43は、グランドプレート40をオーガナイザ30へ装着したときに、二つのグランドコンタクト15の縦方向D側に形成されている。
【0036】
一つグランドプレート40は、一つのオーガナイザ30に装着される。したがって、グランドプレート40をオーガナイザ30へ装着する工程は簡略化される。
【0037】
[電気コネクタ10が奏する効果]
以上説明した、第1実施形態に係る電気コネクタ10は、以下の効果を奏する。
電気コネクタ10は、オーガナイザ30に装着され、オーガナイザ30と導通する少なくとも一つのグランド部材としてのグランドプレート40、を備え、グランド部材としてのグランドプレート40は、複数のばね体としての複数の板ばね42が形成される。
【0038】
これにより、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されているときに、温度変化による熱膨張および熱収縮や、振動等による電気コネクタ10と回路基板20との接続部の微小な変位が発生したとしても、発生した変位に板ばね42が弾性変形し追従することで、信号コンタクト13と信号電極パッド23との接続部を囲むような、電気コネクタ10と回路基板20との間のグランド機能が維持される。よって、グランド部材としてのグランドプレート40は、導電膜CPを形成されたオーガナイザ30と、回路基板20との間の安定的な電気的接続を維持することができる。
【0039】
また、電気コネクタ10において、複数のばね体としての複数の板ばね42のそれぞれは、片持ち支持構造に形成され、片持ち支持構造の少なくとも一部が回路基板20に近づくように延びている。
これにより、ばね42は、回路基板20に近づくように延びている片持ち支持構造の一部のうち横方向Wのいずれかの位置で回路基板20と接触するとグランドが機能するため、電気的接続の信頼性を向上できる。
【0040】
電気コネクタ10において、板ばね42は、片持ち支持構造の自由端に向かうにつれて先細り形状である。このような板ばね42は、支持端から自由端に向けて、板ばね42の厚さ方向の剛性が小さくなる。これにより、板ばね42を回路基板20に押し付ける際に、剛性の小さい自由端に近い領域は回路基板20に倣ってたわむので、回路基板20に対して面での接触をさせやすくなる。また、剛性の大きい支持端部分が存在することにより、回路基板20と接触する圧力を確保できるので、板ばね42と回路基板20との安定した面接触を実現し、電気コネクタ10と回路基板20との接続部の安定的な電気的接続を維持することができる。
【0041】
板ばね42は、片持ち支持構造に形成され、片持ち支持構造の少なくとも一部が回路基板20に近づくように延びているが、これに限らない。板ばね42は、両持ち構造に形成され、両持ち支持構造の板ばねの少なくとも一部が、回路基板20に近づくように形成されてもよい。両持ち支持構造の板ばねの構造であっても、片持ち支持構造の板ばね42と同様の効果を奏する。
【0042】
電気コネクタ10において、グランドコンタクト15のそれぞれは、圧入型のコンタクトである。
これにより、電気コネクタ10と回路基板20との接続部の保持力を生み出すことができる。
【0043】
電気コネクタ10において、オーガナイザ30は、グランドコンタクト15との導通部およびグランド部材としてのグランドプレート40が装着部に形成される導電膜CPと、導電膜CPを支持する電気的な絶縁材料からなる成形体と、を備える。
これにより、オーガナイザ30を、電気的な絶縁材料である樹脂材料を射出成形することにより一体として形成することができ、オーガナイザ30の一部に導電膜CPを形成することができる。このようなオーガナイザ30は、オーガナイザ30全体を導電性材料から構成するよりもコスト的に有利である。
【0044】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本発明は電気コネクタ10と回路基板20との接続体だけを対象にできる。つまり、電気コネクタ10の嵌合相手は他の回路基板と組み付けられる他の電気コネクタに限るものではなく、回路基板と接続されない電気コネクタを電気コネクタ10の嵌合相手にできる。
【0045】
オーガナイザ30について、樹脂材料からなる成形体に導電膜CPを形成する複合体から構成される例を示したが、本発明はオーガナイザ30の全体を導電性材料から構成することもできる。この場合、導電性の樹脂材料を射出成形することによりオーガナイザ30を得ることができるし、導電性の金属粉末をMIMによりオーガナイザ30を得ることができる。導電性の樹脂材料は、樹枝材料自体が導電性を備えているものではなく、導電性を備える粉末、繊維などを樹脂材料に分散させることにより得ることができる。
【0046】
〔第2実施形態:
図8参照〕
第2実施形態の電気コネクタ10に装着されるグランドプレート50は、第1実施形態の電気コネクタ10に装着される一体で形成されているグランドプレート40と異なり、縦方向Dに分割されて成形され、複数のグランドプレート50が電気コネクタ10に装着されている。
図8に示されるように、グランドプレート50は、グランドプレート本体51と、複数のばね体としての複数の板ばね52と、装着部53と、を備える。
このようなグランドプレート50においても、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されているときに、
図8における高さ方向Hに、温度変化による熱膨張および熱収縮や、振動等による電気コネクタ10と回路基板20との接続部に微小な変位が発生したとしても、発生した高さ方向Hの変位に板ばね52が弾性変形し追従することで、信号コンタクト13と信号電極パッド23との接続部を囲むような、電気コネクタ10と回路基板20との間のグランド機能が維持される。よって、グランド部材としてのグランドプレート50は、導電膜CPを形成されたオーガナイザ30と、回路基板20のおもて面21Aに形成された導電膜CPとの間の安定的な電気的接続を維持することができる。
【0047】
また、第1実施形態に係るグランドプレート40は一体で形成されているが、第2実施形態に係るグランドプレート50は、縦方向Dに分割されて形成されている。本実施形態においては、グランドプレート50は、縦方向Dに9個に分割されている。グランドプレート50は、オーガナイザ30の横方向Wに配置されている一対の信号コンタクト13,13が収容される収容スペース32の一列に対し、一つのグランドプレート50が対応するように形成される。第1実施形態に係るグランドプレート40では、グランドプレート40の平面視したときの、大きな面積の部材を一体で加工する必要があったが、第2実施形態に係るグランドプレート50は、小さな面積の部材を加工することとなるため、小型の加工装置を使用することができ、また、一つ一つのグランドプレート50がグランドプレート40よりも小さいため、加工精度を安定させることができ、加工工程で発生するコストにおいて、第1実施形態に係るグランドプレート40よりも有利となる。
【0048】
〔第3実施形態:
図9参照〕
第3実施形態の電気コネクタ10に装着されるグランドプレート60は、第1実施形態の電気コネクタ10に装着される一体で形成されているグランドプレート40と異なり、縦方向Dに分割され、横方向Wに分割されて形成され、複数のグランドプレート60が電気コネクタ10に装着されている。
図9に示されるように、グランドプレート60は、グランドプレート本体61と、複数のばね体としての複数の板ばね62と、装着部63と、を備える。
このようなグランドプレート60においても、電気コネクタ10と回路基板20とが接続されているときに、
図9における高さ方向Hに、温度変化による熱膨張および熱収縮や、振動等による電気コネクタ10と回路基板20との接続部の微小な変位が発生したとしても、発生した高さ方向Hの変位に板ばね62が弾性変形し追従することで、信号コンタクト13と信号電極パッド23との接続部を囲むような、電気コネクタ10と回路基板20との間のグランド機能が維持される。よって、グランド部材としてのグランドプレート60は、導電膜CPを形成されたオーガナイザ30と、回路基板20のおもて面21Aに形成された導電膜CPとの間の安定的な電気的接続を維持することができる。
【0049】
また、第1実施形態に係るグランドプレート40は一体で形成されているが、第3実施形態に係るグランドプレート60は、縦方向Dに複数分割され、横方向Wに二分割されて形成されている。本実施形態においては、グランドプレート60は、縦方向Dに9個に分割され、横方向Wに2個に分割されている。グランドプレート60は、オーガナイザ30の横方向Wに配置されている一対の信号コンタクト13,13が収容される収容スペース32の、隣接する収容スペース32,32に対し、一つのグランドプレート60が対応するように成形される。第2実施形態に係るグランドプレート50では、収容スペース32の一列に対し、一つのグランドプレート50が対応するように成形されていたが、第3実施形態に係るグランドプレート60は、第2実施形態に係るグランドプレート50よりも約半分の面積の部材を加工することとなる。これにより、小型の加工装置を使用することができ、また、一つ一つのグランドプレート60がグランドプレート50よりも小さいため、さらに加工精度を安定させることができ、加工コストにおいて、第2実施形態に係るグランドプレート50よりも有利となる。
【0050】
〔第4実施形態:
図10参照〕
第4実施形態の電気コネクタ10に装着されるグランドプレート70は、第1実施形態に係るグランドプレート40の板ばね42が横方向Wに延びているのに対し、グランドプレート70の板ばね72は、縦方向Dに延びる板ばね72Aおよび横方向Wに延びる板ばね72Bによって構成されている。
図10に示されるように、グランドプレート70は、グランドプレート本体71と、複数のばね体としての複数の板ばね72と、複数の装着部73と、を備える。本実施形態においては、複数の板ばね72は、縦方向Dおよび高さ方向Hに延びる板ばね72Aと、横方向Wおよび高さ方向Hに延びる板ばね72Bと、によって構成されている。板ばね72Aは、縦方向Dに並んでいるグランドコンタクト15と同じ方向に複数並んでいる。グランドコンタクト15とスルーホール電極25との電気的接続部と、板ばね72Aと回路基板20のおもて面21Aの導電膜CPとの電気的接続部が、高密度で配置されることとなる。グランドプレート70を平面視したときに、一対の信号コンタクト13A,13Aに対し、隣接する一対の信号コンタクト13B,13Bのほうが、隣接する一対の信号コンタクト13C,13Cよりも、距離が近いことから、確実にグランドを機能させるために、信号コンタクト13Aと信号コンタクト13Bとの間に、高密度でグランドコンタクト15および板ばね72Aが配置される。
【0051】
本実施形態に係るグランドプレート70は、第1実施形態に係るグランドプレート40と同様に、一体で加工されるため、グランドプレート70をオーガナイザ30へ装着する工程は簡略化される。
【符号の説明】
【0052】
10 電気コネクタ
11 ウエハ
13 信号コンタクト
15 グランドコンタクト
15A プレスフィット部
15A1 弾性圧接片
15A2 空隙
15B 案内部
15C 基部
20 回路基板
21 基板本体
21A おもて面
21B うら面
23 信号電極パッド
25 スルーホール電極
30 オーガナイザ
31 オーガナイザ本体
32 収容スペース
33 挿通孔
34 隙間部
40 グランドプレート
41 グランドプレート本体
42 板ばね
43 装着部
44 配置スペース
45 横部材
50 グランドプレート
51 グランドプレート本体
52 板ばね
53 装着部
60 グランドプレート
61 グランドプレート本体
62 板ばね
63 装着部
70 グランドプレート
71 グランドプレート本体
72 板ばね
73 装着部
CP 導電膜
TH 貫通孔
D 縦方向
H 高さ方向
W 横方向