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特開2025-80046ディスパッチ計画作成装置及びプログラム
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  • 特開-ディスパッチ計画作成装置及びプログラム 図1
  • 特開-ディスパッチ計画作成装置及びプログラム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025080046
(43)【公開日】2025-05-23
(54)【発明の名称】ディスパッチ計画作成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20250516BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20250516BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20250516BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20250516BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/46
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193020
(22)【出願日】2023-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】宇野 侑希
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 淳
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AA03
5G066HA15
5G066HB09
5G066JB03
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】精度の良いディスパッチ計画を生成可能とする。
【解決手段】
ディスパッチ計画作成装置は、エネルギーリソース群の一部の発電能力を発揮させる内容を取り得る前記エネルギーリソース群の制御内容と、前記制御内容が採用されたときの前記エネルギーリソース群の発電量の予測値である第1予測値との関係を取得する取得部11Aと、取得された前記関係に基づいて、目標発電量を達成する前記エネルギーリソース群の制御内容を特定し、特定した前記制御内容を含むディスパッチ計画を作成する作成部11Bと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーリソース群の一部の発電能力を発揮させる内容を取り得る前記エネルギーリソース群の制御内容と、前記制御内容が採用されたときの前記エネルギーリソース群の発電量の予測値である第1予測値との関係を第1関係として取得する取得部と、
取得された前記第1関係に基づいて、目標発電量を達成する前記エネルギーリソース群の制御内容を特定し、特定した前記制御内容を含むディスパッチ計画を作成する作成部と、
を備えるディスパッチ計画作成装置。
【請求項2】
前記作成部は、前記目標発電量を達成する第1予測値を特定し、特定した前記第1予測値に前記第1関係で対応する前記制御内容を、前記目標発電量を達成する前記エネルギーリソース群の前記制御内容として特定する、
請求項1に記載のディスパッチ計画作成装置。
【請求項3】
前記作成部は、
前記第1関係に基づいて、前記エネルギーリソース群に含まれるエネルギーリソースの発電量の予測値である第2予測値と当該第2予測値のときの前記エネルギーリソースの制御内容との関係である第2関係を導出し、
前記目標発電量を達成する前記第2予測値を導出し、導出した前記第2予測値に前記第2関係で対応する制御内容を含む前記ディスパッチ計画を作成する、
請求項1又は2に記載のディスパッチ計画作成装置。
【請求項4】
前記作成部は、前記第1関係における前記制御内容のうち、発電を行わせるエネルギーリソースの数が最も少ない制御内容を取得し、取得した制御内容に対応する前記第1予測値を取得し、取得した第1予測値を、前記取得した制御内容により前記発電を行わせるエネルギーリソースに按分することで前記第2関係を導出する、
請求項3に記載のディスパッチ計画作成装置。
【請求項5】
前記取得部は、過去に実施された複数のディスパッチ計画それぞれの実施情報であって、それぞれが、そのディスパッチ計画に含まれる、前記エネルギーリソース群の制御内容と、そのディスパッチ計画の実施時に計測された前記エネルギーリソース群の発電量と、を含む実施情報に基づいて、前記第1関係を取得する、
請求項1に記載のディスパッチ計画作成装置。
【請求項6】
前記実施情報は、そのディスパッチ計画の実施条件をさらに含み、
前記取得部は、
前記実施情報に基づいて、ディスパッチ計画の実施条件を入力とし、前記エネルギーリソース群の発電量の予測値を出力する予測モデルを前記制御内容ごとに生成し、
新たに作成するディスパッチ計画の実施条件を、生成された前記予測モデルのそれぞれに入力して前記予測値を前記第1予測値として得ることで前記第1関係を取得する、
請求項5に記載のディスパッチ計画作成装置。
【請求項7】
コンピュータを請求項1に記載のディスパッチ計画作成装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスパッチ計画作成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送配電事業者からの要請を受けて、需要家側の発電設備・蓄電設備・電力消費設備(以後、これらをまとめてエネルギーリソースと呼ぶ)を制御して電力需要を変化させるディマンドリスポンスが注目されている。ディマンドリスポンスでは、電気事業者からの指令値を受けたアグリゲータがその指令値又はその指令値を含む一定範囲からなる目標発電量を達成するように複数のエネルギーリソースを統合制御する。
【0003】
アグリゲータは、統合制御を開始する直前までに、統合制御の計画であるディスパッチ計画を作成する。ディスパッチ計画は、単位時間帯における制御対象の全エネルギーリソースの制御設定値(設定温度やインバータ周波数などの他、エネルギーリソースを起動状態にするか停止状態にするかも制御設定値とみなす)を含む。単位時間帯とは、エネルギーリソースの制御設定値を途中で変更できないとして扱う時間区間の最小単位である。アグリゲータは、電気事業者との間で、目標発電量を達成できなかった場合にペナルティ料金などの不利益が生じるような契約を交わす事が一般的である。よって、アグリゲータがディスパッチ計画を策定する際は、目標発電量をできるだけ達成できる精度の良いディスパッチ計画を策定する事が望ましい(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6837761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のエネルギーリソースそれぞれの発電量は不明であるものの、この複数のエネルギーリソースの合計発電量は計測されているという場合がある(以後、このようなエネルギーリソースの集まりをエネルギーリソース群と呼ぶ)。例えば、過去単独で発電(節電を含む)した事が無く、またそれを確かめるためだけに発電するのはコストがかかるため避けたいという状況においては、個々のエネルギーリソースの発電量が不明となる。この場合、各エネルギーリソース群を1つのグループと見なし、エネルギーリソース群ごとに、そのエネルギーリソース群のエネルギーリソース全てについてディマンドリスポンスの発動または非発動のいずれか2状態をとり得るとしてディスパッチ計画を作成する。
【0006】
しかしこの方法では、そのエネルギーリソース群の発電能力を全て発揮するか全く発揮しないかの2状態のみしか選択肢がなく、発電能力の一部を発揮するようなディスパッチ計画を作成できないという問題がある。この発電能力を一部発揮するようなディスパッチ計画を作成できないという性質は、実用上、様々な問題を引き起こす。例えば、エネルギーリソース群に属するエネルギーリソース全てについてディマンドリスポンスを発動すると、この発動で得られるディスパッチ計画全体の発電量(ネガワットを含む)が目標発電量を超過してしまい、全て非発動にすると目標発電量に届かないような場合、目標発電量を達成できないディスパッチ計画しか作成できないという状況が起こり得る。このような問題は、特許文献1では考慮されていない。
【0007】
本発明は、精度の良いディスパッチ計画を生成可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るディスパッチ計画作成装置は、エネルギーリソース群の一部の発電能力を発揮させる内容を取り得る前記エネルギーリソース群の制御内容と、前記制御内容が採用されたときの前記エネルギーリソース群の発電量の予測値である第1予測値との関係を第1関係として取得する取得部と、取得された前記第1関係に基づいて、目標発電量を達成する前記エネルギーリソース群の制御内容を特定し、特定した前記制御内容を含むディスパッチ計画を作成する作成部と、を備える。
【0009】
前記作成部は、前記目標発電量を達成する第1予測値を特定し、特定した前記第1予測値に前記第1関係で対応する前記制御内容を、前記目標発電量を達成する前記エネルギーリソース群の前記制御内容として特定してもよい。
【0010】
前記作成部は、前記第1関係に基づいて、前記エネルギーリソース群に含まれるエネルギーリソースの発電量の予測値である第2予測値と当該第2予測値のときの前記エネルギーリソースの制御内容との関係である第2関係を導出し、前記目標発電量を達成する前記第2予測値を導出し、導出した前記第2予測値に前記第2関係で対応する制御内容を含む前記ディスパッチ計画を作成してもよい。
【0011】
前記作成部は、前記第1関係における前記制御内容のうち、発電を行わせるエネルギーリソースの数が最も少ない制御内容を取得し、取得した制御内容に対応する前記第1予測値を取得し、取得した第1予測値を、前記取得した制御内容により前記発電を行わせるエネルギーリソースに按分することで前記第2関係を導出してもよい。
【0012】
前記取得部は、過去に実施された複数のディスパッチ計画それぞれの実施情報であって、それぞれが、そのディスパッチ計画に含まれる、前記エネルギーリソース群の制御内容と、そのディスパッチ計画の実施時に計測された前記エネルギーリソース群の発電量と、を含む実施情報に基づいて、前記第1関係を取得してもよい。
【0013】
前記実施情報は、そのディスパッチ計画の実施条件をさらに含み、前記取得部は、前記実施情報に基づいて、ディスパッチ計画の実施条件を入力とし、前記エネルギーリソース群の発電量の予測値を出力する予測モデルを前記制御内容ごとに生成し、新たに作成するディスパッチ計画の実施条件を、生成された前記予測モデルのそれぞれに入力して前記予測値を前記第1予測値として得ることで前記第1関係を取得してもよい。
【0014】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを上記ディスパッチ計画作成装置として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、精度の良いディスパッチ計画を生成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係るディスパッチ計画作成装置の構成図である。
図2図2は、図1のディスパッチ計画作成装置の処理を実行する部分のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の概要を説明してから、本実施形態の具体的構成を説明する。
【0018】
本実施形態では、エネルギーリソース群全体の発電量は計測されているものの、このエネルギーリソース群の個々のエネルギーリソースの発電量が計測されていないエネルギーリソース群を考える。このようなエネルギーリソース群であっても、過去にその発電能力を一部発揮するようなディスパッチ計画が実施されたことがある場合、その時に計測された発電量の情報を用いれば、同じディスパッチ計画の実施時の発電量を予測できる。そして、そのエネルギーリソース群の発電能力の一部分のみを発揮するようなディスパッチ計画での発電量が予測できるという事は、そのエネルギーリソース群の発電能力の一部分を発揮させるディスパッチ計画、つまり、一部のエネルギーリソースのみについてディマンドリスポンスを発動するディスパッチ計画を、今度作成しようとするディスパッチ計画の候補にできることを意味する。
【0019】
図1に示す本実施形態に係るディスパッチ計画作成装置10は、エネルギーリソース群A及びエネルギーリソース群Bを対象としたディスパッチ計画を作成するように構成されている。エネルギーリソース群Aは、エネルギーリソースA1~A3を含む。エネルギーリソース群Bは、エネルギーリソースB1~B2を含む。エネルギーリソースA1~A3及びB1~B2のそれぞれは、ここでは空調設備とする。ディマンドリスポンスの発動時、エネルギーリソースA1~A3及びB1~B2のそれぞれは、節電量を創出、つまり、ネガワットを発電するものとする。以下の発電量は、節電量つまりネガワット量を正とした量とする。エネルギーリソース群の数、エネルギーリソース群を構成するエネルギーリソースの具体的な装置の種類及び数などは任意である。エネルギーリソースは、発電機などであってもよい。エネルギーリソース群及びエネルギーリソースを、以下では、単にリソース群及びリソースともそれぞれいう。
【0020】
リソースA1~A3は、リソース制御システム101により制御される。リソースB1及びB2は、リソース制御システム102により制御される。リソース制御システム101及び102は、各種のコントロールシステムからなり、通信ネットワークNWを介してディスパッチ計画作成装置10と通信可能に構成されている。リソース制御システム101及び102は、ディスパッチ計画作成装置10が作成したディスパッチ計画を、通信ネットワークNWを介して受信し、受信したディスパッチ計画に従ってリソースA1~A3又はB1~B2を制御する。これにより、ディマンドリスポンスが発動される。
【0021】
ディスパッチ計画は、リソースA1~A3及びB1~B2のそれぞれに個別に設定される制御設定値を含む。より詳細には、ディスパッチ計画は、リソースA1~A3及びB1~B2の各IDと、各IDにそれぞれ対応付けられた各制御設定値との組み合わせを含む。リソースA1、A3、B1、及び、B2に設定される制御設定値は、ディマンドリスポンスの発動(以下、DR発動ともいう)、つまり、ネガワットの発電を指定する値(例えば「1」)と、DR非発動、つまり、ネガワットの非発電を指定する値(例えば、「0」)との2値のいずれかを取るものとする。リソースA2に設定される制御設定値は、設定温度の数値のいずれかを取るものとする。ここでは、DR非発動時の制御設定値が、24.0℃となり、DR発動時の制御設定値が、24.1℃以上、28.0℃以下の範囲内かつ小数点以下が1桁の数値(25.5℃など)となる。リソース制御システム101は、ディスパッチ計画の制御設定値を、リソースA1~A3のそれぞれに設定し、リソース制御システム102は、ディスパッチ計画の制御設定値を、リソースB1~B2のそれぞれに設定する。リソースA1~A3及びB1~B2のそれぞれは、制御設定値に従って動作する。リソースA1~A3のそれぞれに設定される制御設定値を、まとめて、リソース群Aの制御内容Aともいう。同様に、リソースB1~B2のそれぞれに設定される制御設定値を、まとめて、リソース群Bの制御内容Bともいう。
【0022】
ディスパッチ計画の作成指示は、コンピュータなどの作成指示装置110から、通信ネットワークNWなどを介してディスパッチ計画作成装置10に入力される。作成指示装置110は、不図示の電気事業者から入力される指令値を目標発電量として、当該目標発電量に基づいて、ディスパッチ計画の作成指示を生成する。ディスパッチ計画作成装置10は、作成指示装置110からの作成指示に基づいてディスパッチ計画を作成する。作成指示の詳細については後述する。
【0023】
ディスパッチ計画作成装置10は、アグリゲータにより管理されるサーバコンピュータなどから構成される。ディスパッチ計画作成装置10は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ11と、プログラム及びデータなどを記憶する記憶装置12と、プロセッサ11のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)13と、通信ネットワークNWに接続されたネットワークカードなどの通信モジュール14と、を含む。
【0024】
プロセッサ11は、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行し、かつ、記憶装置12に記憶されたデータを用いて、後述の取得部11A及び作成部11B(図2)として動作する。
【0025】
記憶装置12には、過去にディスパッチ計画を実施した際に収集された情報である実施情報が蓄積されている。当該実施情報は、任意の方法で収集される。実施情報は、ディスパッチ計画ごとに、リソース群A及びBのそれぞれについて個別に収集される。具体的に、リソース群Aの実施情報は、ディスパッチ計画のうち制御内容Aの制御設定値でリソースA1~A3を制御したときの情報を含む。リソース群Bの実施情報は、ディスパッチ計画のうち制御内容Bの制御設定値でリソースB1~B2を制御したときの情報を含む。
【0026】
リソース群Aの実施情報は、例えば、下記の情報を含む。
・実施したディスパッチ計画に含まれる制御内容A(つまり、各リソースA1~A3に対する制御設定値の組合せ)
・実施したディスパッチ計画実施時に計測されたリソース群Aの発電量(合計発電量ともいう)
・実施したディスパッチ計画の実施条件。当該条件は、発電量に影響を与え得る各種情報、例えば、実施日時(特に、気温に影響を与える月日及び時刻)、リソース群Aの休日情報(例えば、実施日が稼働日であるか、非稼働日であるかの情報)、及び、ディスパッチ計画実施時のリソース群Aの代表的な外気温度を含む。
【0027】
リソース群Bの実施情報も、リソース群Aの実施情報と同様の情報を含む(上記情報の「A」を「B」に読み替えればよい)。
【0028】
上述のように、プロセッサ11は、図2に示す取得部11A、及び、作成部11Bとして動作する。取得部11Aは、実施情報抽出部11AA、機械学習部11AB、及び、発電量予測部11ACを備える。
【0029】
実施情報抽出部11AAは、記憶装置12に蓄積されている多数のディスパッチ計画の実施情報のうち、リソース群A又はBに対する制御内容が共通する実施情報を学習用データとして抽出する。抽出された学習用データは、機械学習部11ABに供給される。機械学習部11ABは、供給された複数の学習用データ(特に、共通する制御内容及びこの制御内容の対象となるリソース群に関する合計発電量及び実施条件)に基づいて機械学習を行う。なお、制御内容が共通する実施情報は、制御内容に含まれる制御設定値がリソースA2に対する制御設定値のように連続値を取る場合に、予め設定された範囲内の数値を取る制御設定値を含む制御内容が含まれる実施情報を含んでよい。機械学習部11ABは、学習用データのうちの合計発電量を目的変数(正解データ)、ディスパッチ計画の実施条件を説明変数として機械学習を行う。これにより、実施日時、外気温度などの実施条件を入力とし、リソース群の合計発電量の予測値を出力とする発電量の予測モデルが生成される。予測モデルは、リソース群ごとかつ制御内容ごとに個別に生成される。各予測モデルは、同じ制御内容でのディスパッチ計画実施時に計測された発電量を平均化したものを予測値として出力してもよい。平均化するときに、各発電量に対して重みづけが行われてもよい。各予測モデル(予測パラメータなど)は、その予測モデルに関する制御内容の情報とともに記憶装置12に格納される。
【0030】
発電量予測部11ACは、作成指示装置110から通信ネットワークNWを介して送信されてくるディスパッチ計画の作成指示を、通信モジュール14(図1)を介して受け付ける。ディスパッチ計画の作成指示には、電気事業者からの指令値つまりそのディスパッチ計画で達成すべき節電量、及び、そのディスパッチ計画の実施条件が含まれる。実施条件には、そのディスパッチ計画の実施日時、当該実施日時における予測外気温度(天気予報に基づくリソース群A及びBそれぞれの地域の気温など)などの発電量に影響を与える外部要因が含まれる。実施条件は、指令値とともに電気事業者から入力されるか、指令値とは別個に作成指示装置110により任意の方法で取得される。
【0031】
発電量予測部11ACは、記憶装置12に記憶されている各予測モデルをその予測モデルに関する制御内容の情報とともに読み出す。発電量予測部11ACは、ディスパッチ計画の作成指示に含まれる実施条件を各予測モデルに入力して、各予測モデルから、その出力である合計発電量(節電量)の予測値を得る。これにより、リソース群それぞれについて、制御内容ごとに合計発電量が予測される。発電量予測部11ACは、各予測モデルからの予測値と、各予測モデルに関する制御内容とから、リソース群A及びBのそれぞれについて、制御内容と合計発電量の予測値との関係を取得できる。ここでは、この関係として、下記の表1(エネルギーリソース群Aについての表)及び表2(エネルギーリソース群Bについての表)の関係が得られたものとする。
【表1】
【表2】
【0032】
発電量予測部11ACは、取得した上記関係と、ディスパッチ計画の作成指示に含まれる指令値と、を作成部11Bに出力する。
【0033】
作成部11Bは、指令値をディスパッチ計画で達成すべき目標発電量とし、上記関係に基づいて、目標発電量を達成するリソース群A及びBそれぞれの制御内容を特定し、特定した制御内容を含むディスパッチ計画を作成する。具体的に、作成部11Bは、リソース群A及びBのそれぞれの予測値の合計が目標発電量に合致する予測値の組合せを特定する。この特定は、例えば、最適化問題としてディスパッチ計画問題を定式化し、対応する最適化技法で解く事によって行われる。この特定は、他の方法により行われてもよい。例えば、リソース群Aの任意の予測値を抽出したあと、目標発電量から予測値を減じた値に合致するリソース群Bの予測値を検索する処理を繰り返すことで予測値の組合せを特定してもよい。目標発電量を達成する予測値の組合せを任意の方法で探索し、最初に発見した組合せを今回の特定対象としてもよい。
【0034】
例えば、今回の目標発電量=160kWhとすると、目標発電量とその合計が合致する予測値の組合せは、リソース群Aの予測値=60kWhと、リソース群Bの予測値=100kWhと、の組み合わせである。作成部11Bは、上記の関係において、予測値=60kWhに対応する制御内容A(リソースA1~A3の各制御設定値=1,26.0℃,0)と、予測値=100kWhに対応する制御内容B(リソースB1~B2の各制御設定値=1,1)とを組み合わせて、今回のリソース群A及びB全体に対するディスパッチ計画を作成する。これにより、目標発電量=予測値の合計となった好適なディスパッチ計画が作成される。
【0035】
ここでは、指令値=目標発電量とし、目標発電量の達成とは、目標発電量=予測値の合計としているが、目標発電量を一定の幅を有する数値範囲とし、目標発電量の達成とは、予測値の合計が目標発電量の範囲内に入っていることとしてもよい。このときの目標発電量は、指令値±所定の発電量の範囲、指令値から所定の発電量超過した発電量までの範囲などとすることができる。このような場合、作成部11Bは、指令値に基づいて目標発電量を設定し、リソース群A及びBのそれぞれの予測値の合計が目標発電量の範囲内にある予測値の組合せを特定して、目標発電量を達成するリソース群A及びBそれぞれの制御内容を特定してもよい。
【0036】
上記ディスパッチ計画の作成は、単位時間帯ごとに行われ、単位時間帯ごとのディスパッチ計画を組み合わせて全体のディスパッチ計画が作成されてもよい。この場合、例えば、ディスパッチ計画の作成指示に含まれる各情報も単位時間帯ごとの情報に分けられる。
【0037】
作成部11Bは、作成したディスパッチ計画を、リソース群Aを動作制御するリソース制御システム101と、リソース群Bを動作制御するリソース制御システム102とに、通信モジュール14及び通信ネットワークNWを介して送信する。特に、ディスパッチ計画のうち、制御内容Aがリソース群Aを制御するリソース制御システム101に供給され、制御内容Bがリソース群Bを制御するリソース制御システム102に供給される。これにより、その後にディスパッチ計画が実施されることになる。
【0038】
以上のように、本実施形態では、取得部11Aが、リソース群の一部の発電能力(ネガワットの創出能力を含む)を発揮させる内容を取り得る前記のリソース群の制御内容と、この制御内容が採用されたときの前記のリソース群の発電量の予測値(以下、第1予測値ともいう)との関係(以下、第1関係ともいう)をリソース群A及びBのそれぞれについて取得する。そして、作成部11Bは、取得部11Aが取得した、リソース群A及びBのそれぞれについての第1関係に基づいて、目標発電量を達成する制御内容A及びBを特定し、特定した制御内容A及びBを含むディスパッチ計画を作成する。このため、リソース群の一部の発電能力を発揮させる内容を取り得る制御内容でリソース群を制御できるため、個々のリソースそれぞれの発電量が計測されていないリソース群A及びBを対象としたディスパッチ計画を精度良く生成できる。例えば、従来のような、リソース群毎にそのリソース群に属する全てのリソースを発電または全てのリソースを非発電の2状態のみ取り得るとしてディスパッチ計画を作成する従来の方法では、リソース群Aとリソース群Bを共に発電させる場合の発電量が、最も目標発電量に近い発電予測値となり(200kWh)、目標発電量を達成できない、又は、目標発電量を達成できるが指令値から遠くなってしまう。このため、従来の方法では、精度の良い(例えば、目標発電量を達成できる、又は、目標発電量を達成できかつ指令値にも近い)ディスパッチ計画は作成できない。
【0039】
作成部11Bが、第1関係に基づいて、目標発電量を達成する制御内容A及びBを特定し、特定した制御内容A及びBを含むディスパッチ計画を作成する方法は本実施形態に限定されず任意である。一例として、本実施形態のように、作成部11Bは、上記関係に含まれる第1予測値のうちから、目標発電量を達成する第1予測値の組合せを特定し、特定した組合せに含まれる第1予測値に各第1関係でそれぞれ対応する制御内容を上記の関係から特定するように構成される。作成部11Bは、特定した制御内容を、目標発電量を達成するリソース群A及びBのそれぞれの制御内容A及びBとしてこれら制御内容を含むディスパッチ計画を作成するように構成される。これにより、精度の良いディスパッチ計画が容易に生成される。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、取得部11Aは、過去に実施された複数のディスパッチ計画それぞれの実施情報であって、それぞれが、そのディスパッチ計画に含まれる、リソース群A及びBのそれぞれの制御内容A及びBと、そのディスパッチ計画の実施時に計測されたリソース群A及びBのそれぞれの合計発電量と、を含む実施情報に基づいて、各リソース群についての第1関係を取得する。これにより、過去のディスパッチ計画に基づいて第1関係が取得されるため、精度の良いディスパッチ計画が作成可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態では、実施情報が、そのディスパッチ計画の実施条件をさらに含み、取得部11Aは、上記の実施情報に基づいて、ディスパッチ計画の実施条件を入力とし、発電量の予測値を出力する、リソース群ごとかつ前記制御内容ごとの予測モデルを生成する。さらに、取得部11Aは、新たに作成するディスパッチ計画の実施条件を、生成された前記予測モデルのそれぞれに入力して前記予測値を第1予測値として得ることで上記第1関係を取得する。これにより、リソースの発電量が外気温などの実施条件に応じて変化する場合であっても、精度の良いディスパッチ計画が作成可能となる。リソースが照明装置など、実施条件に左右されないである程度安定した発電量を創出できる場合に、上記実施情報には、実施条件が含まれなくてもよい。また、この場合、予測モデルを不要として、リソース群及び制御内容ごとに一定の予測値が得られるようにしてもよい。
【0042】
例えば、リソース群BのリソースB1及びB2の個別の発電量の予測値が分かっている場合には、リソース群Aについてのみ第1関係が取得されてもよい。このような場合、作成部11Bは、取得部11Aが取得した第1関係に基づいて目標発電量を達成する制御内容Aを特定し、特定した制御内容Aを含むディスパッチ計画を作成する。予測モデルなどについても、リソース群Aについてのみ生成される。作成部11Bは、前記の目標発電量を達成する制御内容Bについては、別途個別の予測値に基づいて特定し、前記のディスパッチ計画に、特定した制御内容Bも含めればよい。このような場合であっても、精度良いディスパッチ計画が作成される。
【0043】
作成部11Bは、上記ディスパッチ計画を作成する方法の他の例として、上記の制御内容と合計発電量の予測値との第1関係(表1及び表2参照)に基づいて、リソース群A及びBそれぞれのリソースごとの発電量の予測値(以下、第2予測値ともいう)と当該第2予測値のときのそのリソースの制御内容との関係(以下、第2関係ともいう)を導出してもよい。第2関係は、任意のリソースのみについて導出されてもよい。作成部11Bは、目標発電量を達成する第2予測値(1つの第2予測値又は複数の第2予測値)を導出し、導出した第2予測値に第2関係で対応する制御内容を含むディスパッチ計画を作成してもよい。このようなディスパッチ計画の作成は、本実施形態のディスパッチ計画の作成方法として説明した上記方法に加えて又は替えて行われる。加えて行われる場合には、例えば、作成部11Bは、第1予測値では、目標発電量を達成できない場合に、このようなディスパッチ計画の作成が行われる。作成部11Bは、目標発電量を達成できる、第1予測値と第2予測値とを特定し、第1関係で第1予測値に対応するリソース群(例えば、リソース群A)の制御内容と、第2関係で第2予測値に対応するリソース(例えば、リソースB1又はB2)の制御内容と、を含むディスパッチ計画を作成してもよい。
【0044】
一例として、作成部11Bは、同じリソース群に対する複数種類の制御内容のうち、発電を行わせるリソースの数が最も少ない制御内容を取得し、取得した制御内容に対応する第1予測値を上記の第1関係から取得し、取得した第1予測値を、前記取得した制御内容に応じて前記の発電を行わせるリソースに按分することで第2予測値を取得してもよい。案分のため、最も少ないリソースの数は、2以上を前提としてもよい(当該数=1の場合、そのリソースの発電量=第1予測値となるため)。
【0045】
上記按分のためには、まず、按分する元のディスパッチ計画(より具体的には制御内容)を特定する必要がある。作成部11Bは、まず、記憶装置12に蓄積されているディスパッチ計画の実施情報から、同じ内容の制御内容の実施情報をすべて抽出する。なお、同じ内容の制御内容には、制御設定値がリソースA2に対する制御設定値のように連続値を取る場合に、予め設定された範囲内の数値を取る制御設定値を含む制御内容が含まれてもよい。例えば、予め定められた所定値以上の制御設定値を含む制御内容が、同じ内容の制御内容として抽出される(前記所定値での発電よりも強く発電されると考えられるため)。上記の抽出は、制御内容のそれぞれについて行われる。作成部11Bは、抽出した制御内容のうち、その数(単位時間毎に1とカウントする。以下、単にデータ数ともいう)が事前に定めた所定閾値以上であり、その中で発動させるリソース数が最小のものを取り出す。この時点で複数のディスパッチ計画がある場合は、その中でデータ数が最大のものを取り出す。この時点で複数の制御内容がある場合は、名簿順・登録順・ランダムなどの方法で1つ取り出す。この取り出された最後に残った制御内容を、按分元の制御内容とする。
【0046】
リソース群AのうちリソースA1のDR発動時の発電量の予測値を求める場合、按分元の制御内容の候補として、上記表1におけるリソースA1及びA2のみがDR発動の対象となる制御内容Aと、リソースA1~A3の全てがDR発動の対象となる制御内容Aと、が抽出されたものとする。この場合、DR発動させるエネルギーリソース数が最小になるものを抽出すると、前者の制御内容Aが、按分元の制御内容となる。なお、按分元の制御内容の特定に、上記表1又は表2のような関係が使用されてもよい(特に、所定閾値=1の場合)。例えば、作成部11Bは、上記の関係を参照し、上記表1の制御内容Aのうち、リソースA1をDR発動させる制御内容であって、DR発動させるリソースの最も少ない、リソースA1及びA2のみがDR発動の対象となる制御内容Aを按分元の制御内容と特定してもよい。
【0047】
作成部11Bは、上記第1関係を参照し、按分元の制御内容に合致又は最も近い制御内容に対応する第1予測値(リソース群の合計発電量)を取得し、当該第1予測値に基づいて、按分元の制御内容の対象となるリソース群の当該制御内容でDR発動するリソースの発電量の予測値(当該予測値は、リソース群のうちそのリソースのみをDR発動させたときの、そのリソース群の合計発電量ともいえる)を、第1予測値を按分した第2予測値として導出する。例えば、導出対象の第2予測値は、導出対象のリソース群のリソースの数を按分元の制御内容でDR発動される(発電を行う)リソースの数で割った値と、按分元の制御内容に対応する第1予測値との積とする。リソースの数は、1とは限らない。例えば、リソースA2の制御設定値のような連続する値を取る制御設定値のリソースについてのリソースの数は、(按分元の制御内容の制御設定値 - DR非発動時の制御設定値) ÷ (DR発動時に制御設定値として取り得る値のうちDR非発動時の制御設定値から最も遠い制御設定値 - DR非発動時の制御設定値)で求めた値とする。さらに、抽出された制御内容の制御設定値と、上記関係の制御内容の制御設定値とが異なる場合、上記リソースの数は、上記で求めた値に、上記で抽出された制御内容の制御設定値 ÷ 上記関係の制御内容の制御設定値で算出された値を乗じた値としてもよい。
【0048】
上記表1の、リソースA1及びA2のみがDR発動の対象となる制御内容Aを按分元の制御内容とした場合、リソースA1はDR発動またはDR非発動の2状態のみを制御設定値として取りうるため、そのリソース数は「1」となる。リソースA2の制御設定値は、DR非発動時に24.0℃となり、DR発動時に24.1℃以上28.0℃以下の小数点以下1桁の数値となり、按分元の制御内容では制御設定値=26.0℃と設定している事から、(26.0-24.0)÷(28.0-24.0)=0.5であるため、リソースA2のリソース数は、0.5となる。リソースA1の発電量の予測値である第2予測値は、1÷1.5×60kWh=40kWhとなる。
【0049】
作成部11Bは、このような方法により、各リソースの第2予測値を取得し、当該第2予測値と第1予測値とのうちの少なくとも前者に基づいて、目標発電量を達成する予測値の組合せ(第1予測値及び第2予測値のうちの両者を含むか第2予測値のみを含む組合せ)を導出し、導出した前記組合せに含まれる予測値に対応する制御内容を含むディスパッチ計画を作成する。
【0050】
例えば、目標発電量=140kWhとし、上記の制御内容と予測値との関係が表1及び2の通りとすると、リソースA1、B1、B2のみをDR発動した場合、リソース群Aの合計発電量の予測値=40kWh、リソース群Bの合計発電量の予測値=100kWhとなり、その合計が140kWhとなるので、目標発電量が達成される。このため、作成部11Bは、リソースA1、B1、B2のみをDR発動するディスパッチ計画を作成する。
【0051】
以上のような方法によっても、精度の良いディスパッチ計画が作成可能になる。なお、このような方法は、同じリソース群の各リソースの発電量が同程度のときに特に有効となる。
【0052】
ディスパッチ計画作成装置10のハードウェア構成は任意である。例えば、取得部11A及び作成部11Bのそれぞれの少なくとも一部は、ASIC又はFPGAなどにより実現されてもよい。
【0053】
作成及び実施されたディスパッチ計画は、そのときの各リソース群の合計発電量、実施条件とともに、実施情報として記憶装置12に蓄積されてもよい。
【0054】
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。また、各構成の省略も任意である。
【符号の説明】
【0055】
10…ディスパッチ計画作成装置、11A…取得部、11B…作成部。
図1
図2