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特開2025-80212積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025080212
(43)【公開日】2025-05-23
(54)【発明の名称】積層セラミックキャパシタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250516BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086319
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0156206
(32)【優先日】2023-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】金 泰潤
(72)【発明者】
【氏名】金 希恩
(72)【発明者】
【氏名】全 炯俊
(72)【発明者】
【氏名】朴 炳▲ヒョン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 正烈
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AE05
5E001AH08
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】高い信頼性を有する積層セラミックキャパシタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態による積層セラミックキャパシタは誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーと、前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒(grain)および前記隣接した誘電体結晶粒の間に位置した結晶粒界(grain boundary)を含み、前記結晶粒界はバリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含み、前記結晶粒界の成分総量に対する前記無機元素の原子%の標準偏差は0.20~0.80であり、前記標準偏差は偏差の自乗の平均の自乗根として得られる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とを含むキャパシタボディーと、
前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒(grain)および隣接した前記誘電体結晶粒の間に位置した結晶粒界(grain boundary)を含み、
前記結晶粒界はバリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含み、
前記結晶粒界の成分総量に対する前記無機元素の原子%の標準偏差は0.20~0.80であり、前記標準偏差は偏差の自乗の平均の自乗根として得られる、積層セラミックキャパシタ。
【請求項2】
前記結晶粒界は、バリウム(Ba)-無機元素複合相を有する、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項3】
前記結晶粒界はニッケル(Ni)をさらに含み、
前記結晶粒界で前記ニッケル(Ni)に対する前記無機元素の原子比は1.00~2.10である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項4】
前記結晶粒界で前記チタン(Ti)に対する前記無機元素の原子比は0.010~0.065である、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項5】
前記無機元素は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項6】
前記結晶粒界は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはこれらの組み合わせの副成分をさらに含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項7】
前記副成分は前記ジスプロシウム(Dy)を含み、
前記結晶粒界で前記副成分のジスプロシウム(Dy)に対する前記無機元素の原子比は0.10~3.00である、請求項6に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項8】
前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つは、コア部および前記コア部を囲むシェル部を含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記シェル部は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含む、請求項8に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項10】
前記シェル部の無機元素は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項8に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項11】
前記シェル部は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはこれらの組み合わせの副成分をさらに含む、請求項8に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項12】
前記キャパシタボディーは前記誘電体層と前記内部電極層とが互いに交互に配置されたアクティブ領域を有し、
前記アクティブ領域に対するSEM-EDS(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析時、誘電体層内ケイ素(Si)のピークの振幅は8.6kcps~25kcpsである、請求項1に記載の積層セラミックキャパシタ。
【請求項13】
バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分の表面がSi(ケイ素)を含む無機元素でコーティングされた誘電体粉末を製造する段階;
前記誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシート表面に導電性ペースト層を形成する段階;
前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;
前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーを製造する段階;および
前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階;を含み、
前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒(grain)および隣接した前記誘電体結晶粒の間に位置した結晶粒界(grain boundary)を含み、
前記結晶粒界はバリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含み、
前記結晶粒界の成分総量に対する前記無機元素の原子%の標準偏差は0.20~0.80であり、前記標準偏差は偏差の自乗の平均の自乗根として得られる、積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項14】
前記誘電体粉末を製造する段階は、
チタン酸バリウム系主成分粉末を水熱合成して粒成長させる段階;
前記粒成長が完了した後にSi(ケイ素)を含む無機塩を投入する段階;および
前記無機塩を投入した後に熱処理する段階;を含む、請求項13に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記無機塩は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記無機塩は、アルコキシド系化合物を含む、請求項14または請求項15に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記無機塩は、前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.1モル部~5.0モル部で投入される、請求項14または請求項15に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項18】
前記熱処理は、100℃~300℃の温度で行われる、請求項14に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項19】
前記誘電体スラリーは、ジスプロシウム(Dy)含有化合物、テルビウム(Tb)含有化合物、マンガン(Mn)含有化合物、バナジウム(V)含有化合物、バリウム(Ba)含有化合物、ケイ素(Si)含有化合物、アルミニウム(Al)含有化合物、カルシウム(Ca)含有化合物またはこれらの組み合わせの副成分粉末をさらに含む、請求項13に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項20】
前記副成分粉末は、前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01~5モル部で含まれる、請求項19に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層セラミックキャパシタおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を使用する電子部品としてキャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタまたはサーミスタなどがある。このようなセラミック電子部品のうちの積層セラミックキャパシタ(multilayer ceramic capacitor、MLCC)は小型でありながら高容量が保障され実装が容易であるという長所によって多様な電子装置に使用できる。
【0003】
例えば、積層セラミックキャパシタ(MLCC)は、液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)、プラズマ表示装置パネル(plasma display panel、PDP)、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode、OLED)などの映像機器、コンピュータ、個人携帯用端末器およびスマートフォンのような様々の電子製品の基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサに使用できる。
【0004】
最近、MLCCが高集積化されるにつれて超小型化されており、薄層設計下で高い信頼性確保が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、高い信頼性を有する積層セラミックキャパシタを提供する。
【0006】
他の一実施形態は、前記積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーと、前記キャパシタボディーの外側に配置される外部電極とを含み、前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒(grain)および前記隣接した誘電体結晶粒の間に位置した結晶粒界(grain boundary)を含み、前記結晶粒界はバリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含み、前記結晶粒界の成分総量に対する前記無機元素の原子%の標準偏差は0.20~0.80であり、前記標準偏差は偏差の自乗の平均の自乗根として得られる、積層セラミックキャパシタを提供する。
【0008】
前記結晶粒界は、バリウム(Ba)-無機元素複合相を有することができる。
【0009】
前記結晶粒界はニッケル(Ni)をさらに含むことができ、前記結晶粒界で前記ニッケル(Ni)に対する前記無機元素の原子比は1.00~2.10であってもよい。
【0010】
前記結晶粒界で前記チタン(Ti)に対する前記無機元素の原子比は0.010~0.065であってもよい。
【0011】
前記無機元素は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0012】
前記結晶粒界は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはこれらの組み合わせの副成分をさらに含むことができる。
【0013】
前記副成分は前記ジスプロシウム(Dy)を含むことができ、前記結晶粒界で前記副成分のジスプロシウム(Dy)に対する前記無機元素の原子比は0.10~3.00であってもよい。
【0014】
前記複数の誘電体結晶粒のうちの少なくとも一つは、コア部および前記コア部を囲むシェル部を含むことができる。
【0015】
前記シェル部は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含むことができる。
【0016】
前記シェル部の無機元素は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0017】
前記シェル部は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはこれらの組み合わせの副成分をさらに含むことができる。
【0018】
前記キャパシタボディーは前記誘電体層と前記内部電極層が互いに交互に配置されたアクティブ領域を有し、前記アクティブ領域に対するSEM-EDS(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析時、誘電体層内ケイ素(Si)のピークの振幅は8.6kcps~25kcpsであってもよい。
【0019】
他の一実施形態は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分の表面がSi(ケイ素)を含む無機元素でコーティングされた誘電体粉末を製造する段階;前記誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシート表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーを製造する段階;および前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を含み、前記誘電体層は複数の誘電体結晶粒(grain)および前記隣接した誘電体結晶粒の間に位置した結晶粒界(grain boundary)を含み、前記結晶粒界はバリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含み、前記結晶粒界の成分総量に対する前記無機元素の原子%の標準偏差は0.20~0.80であり、前記標準偏差は偏差の自乗の平均の自乗根として得られる、積層セラミックキャパシタの製造方法を提供する。
【0020】
前記誘電体粉末を製造する段階は、チタン酸バリウム系主成分粉末を水熱合成して粒成長させる段階;前記粒成長が完了した後にSi(ケイ素)を含む無機塩を投入する段階;および前記無機塩を投入した後に熱処理する段階を含むことができる。
【0021】
前記無機塩は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0022】
前記無機塩は、アルコキシド系化合物を含むことができる。
【0023】
前記無機塩は、前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.1モル部~5.0モル部で投入することができる。
【0024】
前記熱処理は、100℃~300℃の温度で行うことができる。
【0025】
前記誘電体スラリーは、ジスプロシウム(Dy)含有化合物、テルビウム(Tb)含有化合物、マンガン(Mn)含有化合物、バナジウム(V)含有化合物、バリウム(Ba)含有化合物、ケイ素(Si)含有化合物、アルミニウム(Al)含有化合物、カルシウム(Ca)含有化合物またはこれらの組み合わせの副成分粉末をさらに含むことができる。
【0026】
前記副成分粉末は、前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01~5モル部で含まれてもよい。
【発明の効果】
【0027】
一実施形態による積層セラミックキャパシタは添加剤成分が均一に分布した誘電体層を有することによって、薄層化された誘電体層でも高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
図2図1のI-I’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図である。
図3図1のII-II’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図である。
図4】一実施形態による誘電体層の構造を示す概略図である。
図5】一実施形態による誘電体粉末の製造方法を示す概略図である。
図6】一実施形態による誘電体層の製造方法を示す概略図である。
図7】実施例1による積層セラミックキャパシタのアクティブ領域に対するTEM分析画像である。
図8】実施例1による積層セラミックキャパシタのカバー部およびアクティブ領域に対するSEM-EDSライン分析画像である。
図9】比較例1による積層セラミックキャパシタのカバー部およびアクティブ領域に対するSEM-EDSライン分析画像である。
図10】実施例1による積層セラミックキャパシタの高温苛酷信頼性を示すグラフである。
図11】比較例1による積層セラミックキャパシタの高温苛酷信頼性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付した図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施形態を詳しく説明する。図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付した。また、添付図面において一部構成要素は誇張されるか省略されるかまたは概略的に図示され、各構成要素の大きさは実際大きさを全的に反映するものではない。
【0030】
添付された図面は本明細書に開示された実施形態を容易に理解することができるようにするためのものに過ぎず、添付された図面によって本明細書に開示された技術的思想が制限されず、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0031】
第1、第2などのように序数を含む用語は多様な構成要素を説明することに使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0032】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるという時、これは他の部分「の直上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分「の直上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。また、基準となる部分「の上に」または「上に」あるというのは基準となる部分の上または下に位置することであり、必ずしも重力反対方向側に「の上に」または「上に」位置することを意味するのではない。
【0033】
明細書全体で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。したがって、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0034】
また、明細書全体で、「平面上」という時、これは対象部分を上から見た時を意味し、「断面上」という時、これは対象部分を垂直に切断した断面を横から見た時を意味する。
【0035】
また、明細書全体で、「連結される」という時、これは二つ以上の構成要素が直接的に連結されることのみを意味するのではなく、二つ以上の構成要素が他の構成要素を通じて間接的に連結されること、物理的に連結されることだけでなく電気的に連結されること、または位置や機能によって異なる名称で称されたが、一体であるのを意味することができる。
【0036】
以下、一実施形態による積層セラミックキャパシタについて図1~3を参照して説明する。
【0037】
図1は一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図であり、図2図1のI-I’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図であり、図3図1のII-II’線に沿って切断した積層セラミックキャパシタの断面図である。
【0038】
図1~3に表示されたL軸、W軸、およびT軸はそれぞれキャパシタボディー110の長さ方向、幅方向、および厚さ方向を示す。ここで、厚さ方向(T軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に垂直な方向であってもよく、一例として誘電体層111が積層される積層方向と同一な概念として使用できる。長さ方向(L軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)と大略的に垂直な方向であってもよく、一例として両側に第1外部電極131および第2外部電極132が位置する方向であってもよい。幅方向(W軸方向)はシート形状の構成要素の広い面(主面)に平行に延長される方向で厚さ方向(T軸方向)および長さ方向(L軸方向)と大略的に垂直な方向であってもよく、シート形状の構成要素の長さ方向(L軸方向)の長さは幅方向(W軸方向)の長さよりさらに長くてもよい。
【0039】
図1図3を参照すれば、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、キャパシタボディー110と、キャパシタボディー110の外側に配置される外部電極131、132を含む。外部電極131、132はキャパシタボディー110の長さ方向(L軸方向)に対向する両端に配置される第1外部電極131および第2外部電極132を含むことができる。
【0040】
キャパシタボディー110は一例として、大略的な六面体形状であってもよい。
【0041】
一実施形態に関する説明の便宜のために、キャパシタボディー110で厚さ方向(T軸方向)に互いに対向する両面を第1面および第2面と、第1面および第2面と連結され長さ方向(L軸方向)に互いに対向する両面を第3面および第4面と、第1面および第2面と連結され第3面および第4面と連結され幅方向(W軸方向)に互いに対向する両面を第5面および第6面と定義する。
【0042】
一例として、下面である第1面が実装方向に向かう面になり得る。また、第1面~第6面は平らであってもよいが、一実施形態がこれに限定されるのではない。例えば、第1面~第6面は中央部が凸の曲面であってもよく、各面の境界である角はラウンド(round)されていてもよい。
【0043】
キャパシタボディー110の形状、寸法および誘電体層111の積層数が本実施形態の図面に示されたものに限定されるのではない。
【0044】
キャパシタボディー110は複数の誘電体層111および内部電極層121、122を含む。具体的に、キャパシタボディー110は複数の誘電体層111と誘電体層111を挟んで厚さ方向(T軸方向)に交互に配置される第1内部電極121および第2内部電極122を含む。
【0045】
この時、キャパシタボディー110の互いに隣接するそれぞれの誘電体層111の間の境界は、走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)を使用しないと確認しにくい程度に一体化できる。
【0046】
キャパシタボディー110は、アクティブ領域を有することができる。アクティブ領域は誘電体層111と内部電極層121、122が互いに交互に配置された領域であって、積層セラミックキャパシタ100の容量形成に寄与する部分である。具体的に、アクティブ領域は厚さ方向(T軸方向)に沿って積層される第1内部電極121または第2内部電極122が重畳(overlap)した領域であってもよい。
【0047】
また、キャパシタボディー110は、カバー部およびサイドマージン部をさらに含むことができる。
【0048】
カバー部は厚さ方向マージン部であって厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面および第2面側にそれぞれ配置することができる。このようなカバー部は、単一誘電体層111または二つ以上の誘電体層111がアクティブ領域の上面および下面にそれぞれ積層されたものであってもよい。
【0049】
サイドマージン部は側面カバー部と見ることができ、幅方向(W軸方向)にアクティブ領域の互いに対向した両側端部、即ち、第5面および第6面側にそれぞれ配置することができる。前記サイドマージン部は誘電体グリーンシート表面に内部電極層用導電性ペースト層を塗布する時、誘電体グリーンシート表面の一部領域にのみ導電性ペースト層を塗布し、誘電体グリーンシート表面の両側面には導電性ペースト層を塗布していない誘電体グリーンシートを積層した後、焼成することによって形成できるが、このような形成方法に限定されるのではない。
【0050】
カバー部およびサイドマージン部は、物理的または化学的ストレスによる第1内部電極121および第2内部電極122の損傷を防止する役割を果たす。
【0051】
以下、誘電体層111について図4を参照して説明する。
【0052】
図4は、一実施形態による誘電体層の構造を示す概略図である。
【0053】
図4を参照すれば、誘電体層は、複数の誘電体結晶粒(grain)10、および前記隣接した誘電体結晶粒10の間に位置した結晶粒界(grain boundary)20を含む。
【0054】
結晶粒界20は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含む。
【0055】
チタン酸バリウム系主成分は誘電体母材であって、高い誘電率を有し、積層セラミックキャパシタ100の誘電率形成に寄与する。
【0056】
チタン酸バリウム系主成分は例えば、BaTiO、Ba(Ti,Zr)O、Ba(Ti,Sn)O、(Ba,Ca)TiO、(Ba,Ca)(Ti,Ca)O、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O、(Ba,Ca)(Ti,Sn)O、(Ba,Sr)TiO、(Ba,Sr)(Ti,Zr)O、(Ba,Sr)(Ti,Sn)O、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0057】
前記無機元素は、結晶粒界20内で均一に分布できる。一実施形態によれば、無機元素のような添加剤成分を無機塩形態で投入してチタン酸バリウム系主成分の表面に添加剤成分がコーティングされた誘電体粉末を製造することによって、誘電体層111内に、具体的には結晶粒界20内に無機元素が均一に分布した積層セラミックキャパシタを得ることができる。
【0058】
具体的に、結晶粒界20内で、結晶粒界20の成分総量に対する無機元素の原子%の標準偏差は0.20~0.80であってもよく、例えば0.20~0.70であってもよい。無機元素の含量の標準偏差が前記範囲内である場合、結晶粒界20内にSi(ケイ素)などの無機元素が均一に分布していることを意味し、これにより信頼性に優れた薄層の積層セラミックキャパシタを確保することができる。
【0059】
前記無機元素の原子%の標準偏差(σ)は、原子%偏差を自乗して合算した後に測定回数で割ってその自乗根を求めたもの、即ち、下記数式1のように原子%偏差の自乗の平均の自乗根として得ることができる。
【0060】
【数1】
【0061】
結晶粒界20で無機元素の原子%の標準偏差は、TEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)分析によって得ることができる。
【0062】
具体的に、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2深さまで研磨(polishing)し、固定後に真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122が交差するアクティブ領域を観察することができるように断面サンプルを得ることができる。次いで、断面サンプルのアクティブ領域に対して透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で測定することができる。透過電子顕微鏡はXe-FIB(focused ion beam)を使用して加速電圧200kVおよび分析倍率79k倍条件で行われてもよく、誘電体層111および内部電極層121、122がそれぞれ少なくとも1層、例えば1層~10層が見えるように測定することができる。次いで、測定された断面サンプルの透過電子顕微鏡(TEM)イメージで、誘電体層内の結晶粒界(grain boundary)にある少なくとも一つの地点、例えば1個~100個、2個~50個、3個~30個の地点に対してEDS分析を行って、無機元素の原子%の標準偏差を求めることができる。
【0063】
結晶粒界20はバリウム(Ba)-無機元素複合相を有することができる。結晶粒界20内にバリウム(Ba)-無機元素複合相が形成されることによって、低温での焼成が可能であり、粒界抵抗改善効果を有することによって積層セラミックキャパシタの信頼性が向上できる。
【0064】
結晶粒界20はニッケル(Ni)をさらに含むことができる。ニッケル(Ni)は内部電極層121、122形成時の成分であって、焼成後に誘電体層111内に拡散して由来した成分であってもよい。
【0065】
結晶粒界20でニッケル(Ni)に対する無機元素の原子比、即ち、無機元素をXという時、X/Ni原子比は1.00~2.10であってもよく、例えば1.01~1.90であってもよい。ニッケル(Ni)に対する無機元素の原子比が前記範囲内である場合、積層セラミックキャパシタの信頼性が向上できる。
【0066】
また、結晶粒界20内でチタン(Ti)に対する無機元素の原子比、即ち、無機元素をXという時、X/Ti原子比は0.010~0.065であってもよく、例えば0.015~0.064であってもよい。チタン(Ti)に対する無機元素の原子比が前記範囲内である場合、積層セラミックキャパシタの信頼性が向上できる。
【0067】
無機元素は、ケイ素(Si)以外に、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。一例として、無機元素は、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0068】
結晶粒界20は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはこれらの組み合わせの副成分をさらに含むことができる。
【0069】
一例として、副成分はジスプロシウム(Dy)を含むことができる。この時、結晶粒界20でジスプロシウム(Dy)に対する無機元素の原子比、即ち、無機元素をXという時、X/Dy原子比は0.10~3.00であってもよく、例えば0.30~2.60であってもよい。ジスプロシウム(Dy)に対する無機元素の原子比が前記範囲内である場合、積層セラミックキャパシタの信頼性が向上できる。
【0070】
前述のX/Ni原子比、X/Ti原子比、およびX/Dy原子比はTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)分析によって得ることができる。ここで、TEM-EDS分析は前述の無機元素の原子%の標準偏差測定時の方法と同一なのでその説明を省略する。
【0071】
複数の誘電体結晶粒10のうちの少なくとも一つはコア部11およびコア部11を囲むシェル部12を含むコア-シェル構造を有することができる。
【0072】
コア部11は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分を含むことができる。
【0073】
シェル部12は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分と、Si(ケイ素)を含む無機元素とを含むことができる。シェル部にSi(ケイ素)などの無機元素が含まれる場合、積層セラミックキャパシタの信頼性が向上できる。
【0074】
シェル部12に含まれる無機元素は、Si(ケイ素)以外に、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0075】
シェル部12は、ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)またはこれらの組み合わせの副成分をさらに含むことができる。
【0076】
一実施形態によれば、アクティブ領域に対するSEM-EDS(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析で、誘電体層111内ケイ素(Si)のピークの振幅は8.6kcps~25kcpsであってもよく、例えば8.6kcps~23kcpsであってもよい。SEM-EDSライン分析でケイ素(Si)のピークの振幅が前記範囲内である場合、ケイ素(Si)のピーク強さの変動が大きいことであって、隣接した内部電極層121、122内のSi含量と比較して誘電体層111内にケイ素(Si)の含量が多いのを意味することができる。これは、チタン酸バリウム系主成分の表面に無機元素のような添加剤成分がコーティングされた誘電体粉末を製造して使用することによる結果であり得る。参照として、内部電極層内に存在するSi含量は誘電体層の形成時に誘電体粉末を製造するために無機塩の形態で投入されるSi成分から焼成時拡散して由来し得る。
【0077】
前記ケイ素(Si)のピークの振幅は、ケイ素(Si)ピークの最小値を0と指定してこれを基準にして示した値である。
【0078】
SEM-EDSライン分析は次のような方法で行うことができる。積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後に真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122が交差するアクティブ領域と、厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面および第2面のうちのいずれか一つに該当するカバー部とを観察することができるように断面サンプルを得ることができる。次いで、断面サンプルのアクティブ領域およびカバー部の一部を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定することができる。走査電子顕微鏡は例えばthermofisher scientific社のVerios G4製品を使用し、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は50k倍であってもよく、少なくとも1層、3層、5層、10層の誘電体層111および内部電極層121、122が出るように測定することができる。次いで、測定された断面サンプルのSEMイメージで、カバー部からアクティブ領域の一部地点、例えば、少なくとも2層、例えば2層~10層の誘電体層および内部電極層を通過する地点までのラインで、誘電体層内少なくとも一つ、例えば1個~100個、2個~50個、3個~30個の地点に対するEDS分析を行って、誘電体層内ケイ素(S1)のピークに対する振幅を求めることができる。
【0079】
誘電体層111の平均厚さ(T軸方向平均長さ)は0.3μm~8.0μmであってもよく、例えば0.5μm~7.8μmであってもよい。誘電体層111の平均厚さが前記範囲内である場合、積層セラミックキャパシタの信頼性に優れている。
【0080】
誘電体層111の平均厚さは、積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後にポリシング(polishing)した後、イオンミリングして走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)分析によって測定できる。走査電子顕微鏡は例えば、thermofisher scientific社のVerios G4製品を使用し、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は100倍であってもよく、少なくとも1層以上、3層以上、5層以上、または10層以上の誘電体層111が出るように測定することができる。走査電子顕微鏡(SEM)イメージで、誘電体層111の長さ方向(L軸方向)または幅方向(W軸方向)中央地点を基準点にして、基準点から所定間隔で離れた10地点での、誘電体層111厚さの算術平均値であってもよい。10地点の間隔は走査電子顕微鏡(SEM)イメージのスケール(scale)によって調節することができ、例えば1μm~100μm、1μm~50μm、または1μm~10μmの間隔であってもよい。この時、10地点は全て誘電体層111内に位置しなければならず、10地点が全て誘電体層111内に位置しない場合、基準点の位置を変更するか、または10地点の間の間隔を調節することができる。
【0081】
第1内部電極121と第2内部電極122は互いに異なる極性を有する電極であって、誘電体層111を挟んでT軸方向に沿って互いに対向するように交互に配置され、一端がキャパシタボディー110の第3面および第4面を通じてそれぞれ露出される。
【0082】
第1内部電極121と第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に絶縁される。
【0083】
キャパシタボディー110の第3面および第4面を通じて交互に露出される第1内部電極121および第2内部電極122の端部は、第1外部電極131および第2外部電極132とそれぞれ接続されて電気的に連結される。
【0084】
第1内部電極121および第2内部電極122は導電性金属を含み、例えばNi、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属、またはこれらの合金、例えばAg-Pd合金を含むことができる。
【0085】
また、第1内部電極121および第2内部電極122は、誘電体層111に含まれるセラミック材料と同一組成系の誘電体粒子を含んでもよい。
【0086】
第1内部電極121および第2内部電極122は、導電性金属を含む導電性ペーストを使用して形成できる。導電性ペーストの印刷方法はスクリーン印刷法またはグラビア印刷法を用いることができる。
【0087】
第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは0.1μm~2μmであってもよい。第1内部電極121および第2内部電極122の平均厚さは走査電子顕微鏡(SEM)分析によって測定できる。ここで、走査電子顕微鏡(SEM)分析は前述の誘電体層111の平均厚さ測定時の方法と同一なのでその説明を省略する。
【0088】
キャパシタボディー110は、複数の誘電体層111と内部電極層121、122が積層された積層体を焼成して形成できる。
【0089】
第1外部電極131および第2外部電極132は互いに異なる極性の電圧が提供され、第1内部電極121および第2内部電極122の露出される部分とそれぞれ接続されて電気的に連結される。
【0090】
前記のような構成により、第1外部電極131および第2外部電極132に所定の電圧を印加すれば、互いに対向する第1内部電極121および第2内部電極122の間に電荷が蓄積される。この時、積層セラミックキャパシタ100の静電容量はアクティブ領域でT軸方向に沿って互いに重畳する第1内部電極121および第2内部電極122のオーバーラップされた面積と比例するようになる。
【0091】
第1外部電極131および第2外部電極132は、キャパシタボディー110の第3面および第4面にそれぞれ配置されて第1内部電極121および第2内部電極122と接続される第1接続部および第2接続部と、キャパシタボディー110の第3面および第4面と、第1面および第2面または第5面および第6面が接する角に配置される第1バンド部および第2バンド部をそれぞれ含むことができる。
【0092】
第1バンド部および第2バンド部は第1接続部および第2接続部からキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面の一部までそれぞれ延長される。第1バンド部および第2バンド部は第1外部電極131および第2外部電極132の固着強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0093】
第1外部電極131および第2外部電極132はそれぞれキャパシタボディー110と接触する焼結金属層、焼結金属層を覆うように配置される伝導性樹脂層、および伝導性樹脂層を覆うように配置されるメッキ層を含むことができる。
【0094】
焼結金属層は、導電性金属およびガラスを含むことができる。
【0095】
導電性金属は銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、これらの合金、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えば銅(Cu)は銅(Cu)合金を含むことができる。導電性金属が銅を含む場合、銅以外の金属は銅100モル部に対して5モル部以下で含まれてもよい。
【0096】
ガラスは酸化物が混合された組成を含むことができ、例えばケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物、およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択された一つ以上であってもよい。遷移金属は亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、およびニッケル(Ni)からなる群より選択され、アルカリ金属はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、およびカリウム(K)からなる群より選択され、アルカリ土類金属はマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群より選択された一つ以上であってもよい。
【0097】
選択的に、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、例えば焼結金属層を完全に覆う形態に形成できる。一方、第1外部電極131および第2外部電極132は焼結金属層を含まなくてもよく、この場合、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110と直接接触することになる。
【0098】
伝導性樹脂層はキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長され、伝導性樹脂層がキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さは焼結金属層がキャパシタボディー110の第1面および第2面または第5面および第6面に延長して配置された領域(即ち、バンド部)の長さより長くてもよい。即ち、伝導性樹脂層は焼結金属層の上に形成され、焼結金属層を完全に覆う形態に形成できる。
【0099】
伝導性樹脂層は、樹脂および導電性金属を含む。
【0100】
伝導性樹脂層に含まれる樹脂は接合性および衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作ることができるものであれば特に制限されず、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、またはポリイミド樹脂を含むことができる。
【0101】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、第1内部電極121および第2内部電極122または焼結金属層と電気的に連結されるようにする役割を果たす。
【0102】
伝導性樹脂層に含まれる導電性金属は、球形、フレーク形、またはこれらの組み合わせの形態を有することができる。即ち、導電性金属はフレーク形のみからなるか、または球形のみからなってもよく、フレーク形と球形が混合された形態であってもよい。
【0103】
ここで、球形は完全な球形でない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下である形態を含むことができる。フレーク形粉末は平たくて細長い形態を有する粉末を意味し、特に制限されるわけではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。
【0104】
第1外部電極131および第2外部電極132は、伝導性樹脂層外側に配置されるメッキ層をさらに含むことができる。
【0105】
メッキ層は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)または鉛(Pb)の単独またはこれらの合金を含むことができる。例えば、メッキ層はニッケル(Ni)メッキ層またはスズ(Sn)メッキ層であってもよく、ニッケル(Ni)メッキ層およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよく、スズ(Sn)メッキ層、ニッケル(Ni)メッキ層、およびスズ(Sn)メッキ層が順次に積層された形態であってもよい。また、メッキ層は複数のニッケル(Ni)メッキ層および/または複数のスズ(Sn)メッキ層を含んでもよい。
【0106】
メッキ層は、積層型キャパシタ100の基板との実装性、構造的信頼性、外部に対する耐久度、耐熱性、および等価直列抵抗値(equivalent series resistance、ESR)を改善することができる。
【0107】
以下では、一実施形態による積層セラミックキャパシタ100の製造方法について説明する。
【0108】
一実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、バリウム(Ba)およびチタン(Ti)を含むチタン酸バリウム系主成分の表面がSi(ケイ素)を含む無機元素でコーティングされた誘電体粉末を製造する段階;前記誘電体粉末を含む誘電体スラリーを用いて誘電体グリーンシートを製造し、前記誘電体グリーンシート表面に導電性ペースト層を形成する段階;前記導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシートを積層して誘電体グリーンシート積層体を製造する段階;前記誘電体グリーンシート積層体を焼成して誘電体層と内部電極層を含むキャパシタボディーを製造する段階;および前記キャパシタボディーの一面に外部電極を形成する段階を経て製造できる。
【0109】
まず、誘電体粉末を製造する段階について図5を参照して説明する。
【0110】
図5は、一実施形態による誘電体粉末の製造方法を示す概略図である。
【0111】
図5を参照すれば、チタン酸バリウム系主成分の表面がSi(ケイ素)を含む無機元素でコーティングされた誘電体粉末は、チタン酸バリウム系主成分粉末を水熱合成して粒成長(grain growth)させる段階;粒成長が完了した後にSi(ケイ素)を含む無機塩を投入する段階;および無機塩を投入した後に熱処理する段階を経て製造できる。
【0112】
チタン酸バリウム系主成分粉末の水熱合成は、チタン(Ti)の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩などのチタン(Ti)前駆体とバリウム(Ba)の酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩などのバリウム(Ba)前駆体を水系溶媒と混合した後、高温高圧下で反応させて行うことができる。
【0113】
一実施形態によれば、水系でチタン酸バリウム系主成分粉末を合成する過程中に粒成長が完了した後に無機塩を単独で投入することによって、追加的な添加剤を処理する必要がなく工程時間が短縮できる。また、高温高圧下で熱処理を行うことによって、バリウム(Ba)-無機元素複合相を形成し、チタン酸バリウム系主成分の表面に無機元素を均一にコーティングすることができる。
【0114】
チタン(Ti)前駆体およびバリウム(Ba)前駆体は1:0.5~1:1.5のモル比で混合できる。
【0115】
高温高圧は0.5MPa~10MPaの圧力および150℃~300℃の温度で行うことができる。
【0116】
水熱合成でチタン酸バリウム系主成分粉末の粒成長が完了した後、Si(ケイ素)を含む無機塩を投入することができる。
【0117】
無機塩は、Si(ケイ素)以外に、ジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、リチウム(Li)、銅(Cu)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)またはこれらの組み合わせをさらに含む無機塩であってもよい。一例として、無機塩はジスプロシウム(Dy)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)またはこれらの組み合わせをさらに含む無機塩であってもよい。
【0118】
前記無機塩は、Si(ケイ素)などの無機元素を含有するアルコキシド系化合物を含むことができる。例えば、無機塩はテトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate、TEOS)などが挙げられる。前記アルコキシド系化合物は安定的に加水分解される。
【0119】
粒成長が完了した後、チタン酸バリウム系主成分粉末が分散した水系溶液に無機塩、具体的に無機元素を含有するアルコキシド系化合物を投入して熱処理することによって、添加剤成分である無機元素の溶解および再析出過程を通じてチタン酸バリウム系主成分粉末の表面にコーティング層が形成できる。
【0120】
具体的に、チタン酸バリウム系主成分粉末が分散した水系溶液に無機塩を投入すれば、無機塩、具体的に無機元素を含有するアルコキシド系化合物の加水分解反応以後重合および中和反応によって、チタン酸バリウム系主成分粉末の表面にケイ素(Si)酸化物とバリウム(Ba)およびチタン(Ti)イオンとの反応物が析出されてコーティング層を形成することができる。
【0121】
形成されたコーティング層はジスプロシウム(Dy)などの副成分の拡散経路になり得るので、添加剤のばらつき特性が改善でき添加剤の分布が均一なシェル形成を助けることができる。
【0122】
無機塩はチタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.1モル部~5.0モル部で投入することができ、例えば0.4モル部~3.3モル部で投入することができる。無機塩が前記含量範囲内で投入される場合、チタン酸バリウム系主成分粉末の表面に無機元素が容易にコーティングされる。
【0123】
無機塩を投入した後、熱処理はチタン酸バリウム系主成分粉末の粒成長される温度以下で行うことができる。一例として、熱処理は100℃~300℃の温度で行うことができ、例えば150℃~250℃の温度で行うことができる。前記温度範囲内で熱処理が行われる場合、加水分解反応に続いて重合および中和反応が円滑に起こることにより、チタン酸バリウム系主成分粉末の表面に無機元素が容易にコーティングされる。
【0124】
図6は、一実施形態による誘電体層の製造方法を示す概略図である。
【0125】
図6を参照すれば、製造された誘電体粉末を含む誘電体スラリーから誘電体の焼成過程を経て誘電体層が形成できる。形成された誘電体層は、コア-シェル構造の誘電体結晶粒(grain)と結晶粒界(grain boundary)を含む。一実施形態によって製造された誘電体粉末、即ち、チタン酸バリウム系主成分の表面がSi(ケイ素)を含む無機元素でコーティングされた誘電体粉末を用いることによって、コア部の損傷が最小化され結晶粒界内無機元素の濃度が増加できる。これにより、信頼性に優れた薄層の積層セラミックキャパシタを製造することができる。
【0126】
誘電体スラリーは、ジスプロシウム(Dy)含有化合物、テルビウム(Tb)含有化合物、マンガン(Mn)含有化合物、バナジウム(V)含有化合物、バリウム(Ba)含有化合物、ケイ素(Si)含有化合物、アルミニウム(Al)含有化合物、カルシウム(Ca)含有化合物またはこれらの組み合わせの副成分粉末をさらに含むことができる。
【0127】
前記副成分粉末は酸化物、窒化物または塩化合物であってもよく、または有機溶媒に分散したゾル形態で使用することもできる。
【0128】
前記副成分粉末は前記チタン酸バリウム系主成分粉末100モル部に対して0.01~5モル部で含まれてもよく、例えば0.1~3モル部で含まれてもよい。副成分粉末が前記含量範囲内で含まれる場合、信頼性に優れた薄層の積層セラミックキャパシタを製造することができる。
【0129】
誘電体スラリーは、分散剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤などの添加剤と溶媒を追加的に混合して製造できる。
【0130】
分散剤は例えば、リン酸エステル系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤またはこれらの組み合わせを含むことができる。分散剤はチタン酸バリウム系主成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で混合されてもよく、例えば0.3重量部~3重量部で混合されてもよい。分散剤が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減らすことができる。
【0131】
バインダーは例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチルセルロース樹脂などであってもよい。バインダーはチタン酸バリウム系主成分粉末100重量部に対して0.1重量部~50重量部で添加されてもよく、例えば3重量部~30重量部で添加されてもよい。バインダーが前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減らすことができる。
【0132】
可塑剤は例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジ(2-エチルブチル)などのフタル酸系化合物;アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)などのアジピン酸系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール系化合物;トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ(2-エチルヘキサノエート)などのグリコールエステル系化合物などであってもよい。可塑剤はチタン酸バリウム系主成分100重量部に対して0.1重量部~20重量部で添加されてもよく、例えば1重量部~10重量部で添加されてもよい。可塑剤が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリーの分散性に優れ、製造された誘電体層内に含まれる不純物の量を減らすことができる。
【0133】
溶媒は、水などの水系溶媒;エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、メトキシエタノールなどのアルコール系溶媒;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエステル系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒などであってもよい。溶媒は例えば、誘電体スラリーに含まれる各種添加剤の溶解性や分散性を考慮して、アルコール系溶媒または芳香族系溶媒を使用することができる。溶媒はチタン酸バリウム系主成分粉末100重量部に対して50重量部~1000重量部で混合されてもよく、例えば100重量部~500重量部で混合されてもよい。溶媒が前記含量範囲内で混合される場合、誘電体スラリー成分が十分に混合され、以後溶媒の除去も容易である。
【0134】
チタン酸バリウム系主成分の表面が無機元素でコーティングされた誘電体粉末を含む誘電体スラリーの混合は湿式ボールミルまたは攪拌ミルを用いることができる。湿式ボールミルでジルコニアボールを用いる場合、直径0.1mm~10mmの多数のジルコニアボールを用いて8時間~48時間、または10時間~24時間湿式混合することができる。
【0135】
製造された誘電体スラリーは焼成後に誘電体層として形成される。
【0136】
製造された誘電体スラリーをシート形状に成形する方法としてはドクターブレード法、カレンダーロール法などのテープ成形法など、例えばヘッド吐出方式のオン-ロール(on roll)成形コーター(coater)を用いることができ、その後、成形体を乾燥することによって誘電体グリーンシートを得ることができる。
【0137】
焼成後に内部電極層になる導電性ペースト層を形成するために、導電性金属またはその合金からなる導電性粉末、バインダーおよび溶媒を混合して導電性ペーストを製造することができる。また、必要によって共材としてチタン酸バリウム粉末が共に混合されてもよい。共材は焼成過程で導電性粉末の焼結を抑制する作用を果たすことができる。誘電体グリーンシート表面にスクリーン印刷などの各種印刷法や転写法によって導電性ペーストを所定のパターンで塗布して導電性ペースト層を形成する。
【0138】
前記導電性粉末は、ニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金を含むことができる。
【0139】
次いで、内部電極パターンを形成した誘電体グリーンシートを複数層にわたって積層した後、積層方向にプレスすることによって誘電体グリーンシート積層体を製造する。この時、誘電体グリーンシート積層体の積層方向の上面および下面には誘電体グリーンシートが位置するように誘電体グリーンシートと内部電極パターンを積層することができる。
【0140】
製造された誘電体グリーンシート積層体をダイシングなどによって所定の寸法に切断する段階を選択的に行うことができる。
【0141】
また、誘電体グリーンシート積層体は必要によって可塑剤などを除去するために固化乾燥することができ、固化乾燥後に水平遠心バレル研磨機などを用いてバレル研磨することができる。バレル研磨では、誘電体グリーンシート積層体をメディアおよび研磨液と共にバレル容器内に投入し、そのバレル容器に対して回転運動や振動などを付与することによって、切断時に発生したバー(burr)などの不必要部分を研磨することができる。また、バレル研磨後、誘電体グリーンシート積層体は水などの洗浄液で洗浄して乾燥することができる。
【0142】
次いで、誘電体グリーンシート積層体を脱バインダー処理および焼成してキャパシタボディーを製造することができる。
【0143】
脱バインダー処理条件は、誘電体層の成分や内部電極層の成分によって適切に調節することができる。例えば、脱バインダー処理時の昇温速度は5℃/時間~300℃/時間、支持温度は180℃~400℃、温度維持時間は0.5時間~24時間であってもよい。脱バインダー処理時雰囲気は空気または還元性雰囲気であってもよい。
【0144】
焼成処理の条件は、誘電体層の主成分組成や内部電極の主成分組成によって適切に調節することができる。例えば、焼成は1100℃~1400℃の温度で行うことができ、例えば1200℃~1350℃の温度で行うことができる。また、焼成は0.5時間~8時間、例えば1時間~3時間行うことができる。また、焼成は還元性雰囲気、例えば、窒素および水素の混合ガスを加湿した雰囲気で行うことができる。内部電極がニッケル(Ni)またはニッケル(Ni)合金を含む場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaであってもよい。
【0145】
焼成処理後、必要によってアニーリングを行うことができる。アニーリングは誘電体層を再酸化させるための処理であり、還元性雰囲気で焼成処理した場合、アニーリングを行うことができる。アニーリング処理の条件も誘電体層の成分によって適切に調節することができる。例えば、アニーリング時の温度は950℃~1150℃であってもよく、時間は0時間~20時間であってもよく、昇温速度は50℃/時間~500℃/時間であってもよい。アニーリング雰囲気は加湿した窒素ガス(N)雰囲気であってもよく、酸素分圧は1.0×10-9MPa~1.0×10-5MPaであってもよい。
【0146】
脱バインダー処理、焼成処理、またはアニーリング処理で、窒素ガスや混合ガスなどを加湿するためには例えばウェッター(wetter)などを使用することができ、この場合、水温は5℃~75℃であってもよい。脱バインダー処理、焼成処理、およびアニーリング処理は連続して行うことができ、独立的に行うこともできる。
【0147】
選択的に、製造されたキャパシタボディー110の第3面および第4面に対して、サンドブラスティング処理、レーザー照射、バレル研磨などの表面処理を行うことができる。このような表面処理を行うことによって、第3面および第4面の最表面に第1内部電極および第2内部電極の端部が露出され、これにより第1外部電極および第2外部電極と第1内部電極および第2内部電極の電気的接合が良好になり、合金部が形成されやすくなり得る。
【0148】
次いで、製造されたキャパシタボディー110の一面に外部電極を形成する。
【0149】
一例として、外部電極として焼結金属層形成用ペーストを塗布した後に焼結させて焼結金属層を形成することができる。
【0150】
焼結金属層形成用ペーストは、導電性金属とガラスを含むことができる。導電性金属とガラスに関する説明は前述のものと同一なので、繰り返される説明は省略する。また、焼結金属層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは例えばエチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒は例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や、水系溶媒を使用することができる。
【0151】
焼結金属層形成用ペーストをキャパシタボディー110の外面に塗布する方法としては、ディップ法、スクリーン印刷などの各種印刷法、ディスペンサーなどを用いた塗布法、スプレーを用いた噴霧法などを使用することができる。焼結金属層形成用ペーストは少なくともキャパシタボディー110の第3面および第4面に塗布され、選択的に第1外部電極および第2外部電極のバンド部が形成される第1面、第2面、第5面、または第6面の一部にも塗布できる。
【0152】
その後、焼結金属層形成用ペーストが塗布されたキャパシタボディー110を乾燥させ、700℃~1000℃の温度で0.1時間~3時間焼結させて、焼結金属層を形成する。
【0153】
選択的に、得られたキャパシタボディー110の外面に、伝導性樹脂層形成用ペーストを塗布した後に硬化させて、伝導性樹脂層を形成することができる。
【0154】
伝導性樹脂層形成用ペーストは、樹脂、および選択的に導電性金属または非伝導性フィラーを含むことができる。導電性金属と樹脂に関する説明は前述のものと同一なので、繰り返される説明は省略する。また、伝導性樹脂層形成用ペーストは選択的にバインダー、溶媒、分散剤、可塑剤、酸化物粉末などを含むことができる。バインダーは例えばエチルセルロース、アクリル、ブチラール(butyral)などを使用することができ、溶媒はテルピネオール、ブチルカルビトール、アルコール、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンなどの有機溶媒や、水系溶媒を使用することができる。
【0155】
一例として、伝導性樹脂層の形成方法は、伝導性樹脂層形成用ペーストにキャパシタボディー110をディッピングして形成した後に硬化させるか、または伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などで印刷するか、または伝導性樹脂層形成用ペーストをキャパシタボディー110の表面に塗布した後に硬化させて形成することができる。
【0156】
その次に、伝導性樹脂層の外側にメッキ層を形成する。
【0157】
一例として、メッキ層はメッキ法によって形成することができ、スパッタまたは電解メッキ(electric deposition)によって形成することもできる。
【0158】
以下、実施例を通じて前述の実施形態をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0159】
[実施例]
(積層セラミックキャパシタ製造)
実施例1~3
チタニウムヒドロキシドおよびバリウムヒドロキシドを1:1.1のモル比で混合し、4MPaの圧力および250℃の温度で水熱反応させてチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を粒成長させた。粒成長完了したチタン酸バリウム粉末が分散した水系溶液にテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を前記チタン酸バリウム粉末100モル部に対して0.8モル部で投入した。次いで、200℃の温度で2時間熱処理して、チタン酸バリウム系主成分の表面がSiでコーティングされた誘電体粉末を製造した。
【0160】
製造された誘電体粉末と、酸化ジスプロシウム(Dy)とをチタン酸バリウム粉末100モル部に対して0.8モル部で混合して誘電体スラリーを製造した。混合はジルコニウムボール(ZrO ball)を分散媒として使用して、エタノール/トルエンと湿潤分散剤(wetting dispersant)およびバインダーとしてポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)樹脂を共に投入した後、機械的ミリング(milling)して行われた。
【0161】
製造された誘電体スラリーをヘッド吐出方式のオン-ロール(on roll)成形コーター(coater)を用いて誘電体グリーンシートを製造した。
【0162】
誘電体グリーンシートの表面にニッケル(Ni)を含む導電性ペースト層を印刷し、導電性ペースト層が形成された誘電体グリーンシート(横×縦×高さ=3.2mm×2.5mm×2.5mm)を積層および圧着して誘電体グリーンシート積層体を製造した。
【0163】
誘電体グリーンシート積層体を400℃以下、窒素雰囲気で可塑工程を経て焼成温度1300℃以下、水素濃度1.0% H以下条件で焼成した。参照として、実施例1~3は1150℃~1170℃の焼成温度で、具体的にそれぞれ1150℃、1160℃および1170℃の温度で焼成して製造した。
【0164】
次いで、外部電極、メッキなどの工程を経て積層セラミックキャパシタを製造した。
【0165】
比較例1~4
チタニウムヒドロキシドおよびバリウムヒドロキシドを1:1.1のモル比で混合し、4MPaの圧力および250℃の温度で水熱反応後、乾燥してチタン酸バリウム(BaTiO)粉末を製造した。
【0166】
製造されたチタン酸バリウム粉末と、副元素粉末として二酸化ケイ素(SiO)および酸化ジスプロシウム(Dy)を混合して誘電体スラリーを製造した。この時、二酸化ケイ素(SiO)および酸化ジスプロシウム(Dy)はそれぞれチタン酸バリウム粉末100モル部に対して0.8モル部および0.8モル部で混合された。混合はジルコニウムボール(ZrO ball)を分散媒として使用して、エタノール/トルエンと湿潤分散剤(wetting dispersant)およびバインダーとしてポリビニルブチラール(polyvinyl butyral、PVB)樹脂を共に投入した後、機械的ミリング(milling)して行われた。
【0167】
製造された誘電体スラリーを用いて実施例1と同様な方法で積層セラミックキャパシタを製造した。この時、比較例1~4は1150℃~1180℃の焼成温度で、具体的にそれぞれ1150℃、1160℃、1170℃、および1180℃の温度で焼成して製造した。
【0168】
評価1:TEM-EDS分析
実施例1~3および比較例1~4で製造された積層セラミックキャパシタに対してTEM-EDS(透過電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)分析を行って、その結果を図7および表1に示した。
【0169】
TEM-EDS分析は次のような方法で測定された。実施例1~3および比較例1~4で製造された積層セラミックキャパシタをエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2深さまで研磨(polishing)し、固定後に真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層と内部電極層が交差するアクティブ領域を観察することができるように断面サンプルを得た。断面サンプルのアクティブ領域中で中央の3個の誘電体層と2個の内部電極層が見えるようにTEMで測定した。TEMはXe-FIB(focused ion beam)を使用して加速電圧200kVおよび分析倍率79k倍条件で測定した。実施例1の測定されたイメージを図7に示した。
【0170】
測定された断面サンプルの透過電子顕微鏡(TEM)イメージで、誘電体層内の結晶粒界(grain boundary)にある任意の7地点に対してEDS分析を行って、Si原子%の標準偏差、Si/Ti原子比、Si/Ni原子比、そしてSi/Dy原子比をそれぞれ求めて下記表1に示した。ここで、Si原子%の標準偏差は結晶粒界の成分総量に対するSiの原子%の標準偏差を示し、標準偏差は偏差の自乗の平均の自乗根値である。
【0171】
図7は、実施例1による積層セラミックキャパシタのアクティブ領域に対するTEM分析画像である。
【0172】
【表1】
【0173】
表1を通じて、一実施形態によってチタン酸バリウムの表面にケイ素(Si)がコーティングされた誘電体粉末を使用した実施例1~3の場合、比較例1~4と比較して、Si原子%の標準偏差は0.20~0.80の範囲値を有することが分かる。これから、一実施形態による積層セラミックキャパシタの誘電体層は結晶粒界内でチタン酸バリウムの表面に無機元素が均一に分布していることが分かる。
【0174】
評価2:SEM-EDSライン分析
実施例1および比較例1で製造された積層セラミックキャパシタに対してSEM-EDS(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型分光法)ライン分析を行って、その結果を図8および図9と表2に示した。
【0175】
SEM-EDSライン分析は次のような方法で測定された。積層セラミックキャパシタ100をエポキシ混合液に入れて硬化させた後、キャパシタボディー110のW軸およびT軸方向面(WT面)をL軸方向に1/2地点まで研磨(polishing)し、固定後に真空雰囲気チャンバー内維持して、誘電体層111と内部電極層121、122が交差するアクティブ領域と、厚さ方向(T軸方向)にアクティブ領域の第1面に該当するカバー部とを観察することができるように断面サンプルを得た。次いで、断面サンプルのカバー部からアクティブ領域の5層の誘電体層および内部電極層が出るように走査電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)で測定した。走査電子顕微鏡は例えばthermofisher scientific社のVerios G4製品を使用し、測定条件は10kV、0.2nAであり、分析倍率は50k倍であった。次いで、測定された断面サンプルのSEMイメージで、カバー部からアクティブ領域の5層の誘電体層および内部電極層を通過する地点までのラインで、誘電体層内7個の地点に対するEDS分析を行って、誘電体層内ケイ素(S1)のピークに対する振幅(amplitude)を求めた。下記表2で振幅の単位はkcpsであり、ケイ素(Si)ピークの最小値を0と指定してこれを基準にして示した。
【0176】
図8は実施例1による積層セラミックキャパシタのカバー部およびアクティブ領域に対するSEM-EDSライン分析画像であり、図9は比較例1による積層セラミックキャパシタのカバー部およびアクティブ領域に対するSEM-EDSライン分析画像である。
【0177】
【表2】
【0178】
図8および図9と表2を通じて、一実施形態によってチタン酸バリウムの表面にケイ素(Si)がコーティングされた誘電体粉末を使用した実施例1の場合、比較例1と比較して、誘電体層内ケイ素(Si)のピークの振幅は8.6kcps~25kcpsの範囲を満足することが分かる。これはケイ素(Si)のピーク強さの変動が大きいことであって、これから隣接した内部電極層内のSi含量と比較して誘電体層内にケイ素(Si)の含量が多いことが分かる。
【0179】
評価3:信頼性
実施例1および比較例1で製造された積層セラミックキャパシタに対して高温苛酷信頼性(HALT)を測定して、その結果を図10および図11に示した。
【0180】
具体的に、実施例1および比較例1で製造された積層セラミックキャパシタをそれぞれ20個ずつ準備して測定基板に実装し、ESPEC(PV-222、HALT)装備を用いて105℃、12時間および2Vr条件で高温苛酷信頼性(HALT)を測定した。
【0181】
図10は実施例1による積層セラミックキャパシタの高温苛酷信頼性を示すグラフであり、図11は比較例1による積層セラミックキャパシタの高温苛酷信頼性を示すグラフである。
【0182】
図10および図11を参照すれば、一実施形態によってSiの無機元素の原子%の標準偏差が0.20~0.80の範囲内の値を有する実施例1の場合、比較例1と比較して、絶縁抵抗(insulation resistance、IR)のばらつき特性に優れていることによって高温苛酷信頼性に優れていることが分かる。
【0183】
以上を通じて本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、請求範囲と発明の説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。
【符号の説明】
【0184】
100:積層セラミックキャパシタ
110:キャパシタボディー
111:誘電体層
121:第1内部電極
122:第2内部電極
131:第1外部電極
132:第2外部電極
10:誘電体結晶粒(grain)
11:コア部
12:シェル部
20:結晶粒界(grain boundary)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11