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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008061
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】遮音部
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/172 20060101AFI20250109BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20250109BHJP
   H04R 1/32 20060101ALI20250109BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G10K11/172
G10K11/16 130
H04R1/32 310Z
H04R1/02 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109912
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 正義
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 綾香
(72)【発明者】
【氏名】秋松 龍之介
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
5D061
【Fターム(参考)】
5D017AD24
5D018AF30
5D061AA06
5D061AA16
5D061BB04
5D061BB05
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しつつ、共振周波数を調整可能な遮音部を提供すること。
【解決手段】
遮音部は、外殻を形成する板状の遮音板材20と、遮音板材の内部に形成され、一方側の端部に遮音板材の外部に連通する遮音開口部41を有する中空管状の共振部30と、を備える、共振部は、遮音開口部に連通する共振空間Sを形成するとともに、屈曲して形成される屈曲部50を有する
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮音部であっては、
外殻を形成する板状の遮音板材(20)と、
前記遮音板材の内部に形成され、一方側の端部に前記遮音板材の外部に連通する遮音開口部(41)を有する中空管状の共振部(30、30a、30b)と、を備え、
前記共振部は、前記遮音開口部に連通する共振空間(S)を形成するとともに、屈曲して形成される屈曲部(50、50a、50b、55、56)を有する遮音部。
【請求項2】
前記共振部は、前記共振空間内に空気が充填されている請求項1に記載の遮音部。
【請求項3】
前記共振部は、前記一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が円形状に形成されている請求項1に記載の遮音部。
【請求項4】
前記共振部は、前記一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が矩形状に形成されている請求項1に記載の遮音部。
【請求項5】
前記屈曲部は、渦巻形状に形成されている請求項1に記載の遮音部。
【請求項6】
前記共振部は、複数備えられており、
前記屈曲部は、複数の前記共振部それぞれに形成されている請求項1に記載の遮音部。
【請求項7】
複数の前記屈曲部は、互いの前記共振空間の体積が異なっている請求項6に記載の遮音部。
【請求項8】
前記遮音板材の板厚方向を第1方向としたとき、
複数の前記屈曲部は、前記第1方向に所定の間隔を空けて並んで設けられている請求項6または7に記載の遮音部。
【請求項9】
前記遮音板材の板厚方向を第1方向としたとき、
複数の前記屈曲部は、前記第1方向において重なって設けられている請求項6または7に記載の遮音部。
【請求項10】
複数の前記屈曲部は、前記第1方向に直交する形状が、所定の基準点を中心に点対称となっており、互いの隙間に配置されている請求項9に記載の遮音部。
【請求項11】
前記屈曲部は、前記共振空間を囲み、管状に延びる共振面(53)を有し、
前記共振面には、前記屈曲部の内径を変化させる変化部(54、551、552、561、562、71、72、73、74)を有する請求項1に記載の遮音部。
【請求項12】
前記変化部は、前記内径を階段状に変化させる請求項11に記載の遮音部。
【請求項13】
前記変化部は、凹凸形状に形成されている部位を含む請求項11に記載の遮音部。
【請求項14】
前記変化部は、前記共振面に対して窪んで形成される部位を含む請求項11に記載の遮音部。
【請求項15】
前記変化部は、前記共振面から突出して形成される部位を含む請求項11に記載の遮音部。
【請求項16】
前記屈曲部は、前記屈曲部に形成される空間の体積を調整する屈曲調整部(75、80)を有する請求項11に記載の遮音部。
【請求項17】
前記屈曲部は、前記遮音開口部に連通する側とは反対側に、前記遮音板材の外部に連通する屈曲開口部(45)を有し、
前記屈曲調整部は、前記屈曲開口部に挿入することで前記屈曲開口部を閉塞する挿入部(751、81)を有するとともに、挿入する方向の前記挿入部の長さが互いに異なる複数の閉塞部(75、80)によって構成されており、前記屈曲開口部から挿入される前記閉塞部に応じて前記屈曲部に形成される空間の体積を調整する請求項16に記載の遮音部。
【請求項18】
前記屈曲部は、前記遮音開口部に連通する側とは反対側に、前記遮音板材の外部に連通する屈曲開口部(45)を有するとともに、前記共振面における前記屈曲開口部に連通する部位にねじ溝(74)が形成されており、
前記屈曲調整部は、前記ねじ溝に締め付け可能な1つのねじ(75)によって構成されており、前記ねじ溝への前記ねじの締め付け位置に応じて前記屈曲部に形成される空間の体積を調整する請求項16に記載の遮音部。
【請求項19】
前記共振空間内に設けられており、前記共振空間内に伝搬される音波のエネルギを減少させるエネルギ減少部(60、65)を備える請求項1に記載の遮音部。
【請求項20】
前記エネルギ減少部は、前記共振空間内に伝搬される音波を吸収する吸音材(60)を含む請求項19に記載の遮音部。
【請求項21】
前記エネルギ減少部は、前記共振空間内に伝搬される音波によって粘弾性変形する粘弾性体(65)を含む請求項19に記載の遮音部。
【請求項22】
該遮音部は、車両に搭載されるスピーカ(SP)の筐体(S10)に取り付けられている請求項1に記載の遮音部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遮音部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体に設けられた遮音シート部材上に接して設けられた複数の共振部を有する遮音構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この複数の共振部は、軸方向に延びる円柱形状に形成された基部と、この基部の先端側の内部に埋設され、この基部より大きな質量を有する錘部とを備える複合構造体から構成されている。これにより、共振部は、錘として働く錘部の質量と、バネとして働く基部のバネ定数により決定される共振周波数を持つ共振器として機能する。
【0003】
そして、遮音構造は、支持体に音波が入射された際に、共振部に共振が生じることで、入射される音波のうち、共振部の共振周波数付近の周波数の音波の振幅を低減させて遮音性能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6610684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の遮音構造のような遮音部では、遮音性能を発揮する音波の周波数に応じて共振部が共振する際の共振周波数を調整する必要がある。例えば、遮音性能を発揮する音波の周波数を低くする場合、共振部が共振する際の共振周波数を小さくし、遮音性能を発揮する音波の周波数を高くする場合、共振部が共振する際の共振周波数を大きくする必要がある。
【0006】
ただし、特許文献1に記載の遮音構造のように基部と基部の内部に埋設される錘部とで構成される共振部を共振させる構造では、共振部が共振する際の共振周波数を小さくさせるためには、円柱形状の基部の軸方向の大きさを大きくする必要がある。しかし、基部の軸心方向の大きさを大きくと、遮音構造が大型化するため好ましくない。
【0007】
本開示は、大型化を抑制しつつ、低減させる音の周波数を調整可能な遮音部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの観点によれば、
遮音部は、
外殻を形成する板状の遮音板材(20)と、
遮音板材の内部に形成され、一方側の端部に遮音板材の外部に連通する遮音開口部(41)を有する中空管状の共振部(30)と、を備え、
共振部は、遮音開口部に連通する共振空間(S)を形成するとともに、屈曲して形成される屈曲部(50、50a、50b、55、56)を有する。
【0009】
このように構成される遮音部によれば、共振部の共振空間に音が入射された際に、共振部にヘルムホルツ共鳴を発生させることで共振部を共振させて遮音部に入射される音を低減させることができる。
【0010】
また、共振空間の体積を大きくするほど、ヘルムホルツ共鳴によって共振部が共振する際の共振周波数を小さくできるところ、共振空間を形成する共振部が屈曲する屈曲部を有する構成によれば、共振空間の体積を大きくし易い。このため、共振部の大型化を抑制しつつ、共振部が共振する際の共振周波数を小さくすることができる。したがって、遮音部の大型化を抑制しつつ、遮音部に入射される音に対して低減させる音の周波数を調整することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る遮音部が適用される遮音構造体の正面図である。
図2】第1実施形態に係る遮音部が適用される遮音構造体の側面図である。
図3】第1実施形態に係る遮音部が適用される遮音構造体の斜視図である。
図4】第1実施形態に係る遮音部の斜視図である。
図5図4に示すV-V断面図である。
図6図4に示すVI-VI断面図である。
図7】比較遮音部の斜視図である。
図8図7に示すVIII-VIII断面図である。
図9】第2実施形態に係る遮音部の斜視図である。
図10図9に示すX-X断面図である。
図11図9に示すXI-XI断面図である。
図12】第2実施形態に係る遮音部の透過損失を示す図である。
図13】第3実施形態に係る遮音部の断面図である。
図14図13に示すXIV-XIV断面図である。
図15】第4実施形態に係る遮音部の断面図である。
図16】第4実施形態に係る遮音部の透過損失を示す図である。
図17】第5実施形態に係る遮音部の断面図である。
図18】第6実施形態に係る遮音部の断面図である。
図19】第6実施形態に係る階段部を模式的に示した模式図である。
図20】第6実施形態に係る遮音部の透過損失を示す図である。
図21】第7実施形態に係る遮音構造体が適用されるスピーカの斜視図である。
図22図21に示すXXII-XXII断面図である。
図23図21に示すXXIII-XXIII断面図である。
図24】第7実施形態に係る遮音部が適用される遮音構造体の斜視図である。
図25】第7実施形態に係る遮音部の斜視図である。
図26図25に示すXXVI-XXVI断面図である。
図27図25に示すXXVII-XXVII断面図である。
図28】一方側外巻部が一方側外階段部を有する場合と有さない場合の違いを示す図である。
図29】第7実施形態に係る遮音部の透過損失を示す図である。
図30】第7実施形態における遮音構造体単体での評価を行うために実施した実験の構成図を示す図である。
図31】第7実施形態における遮音構造体単体での評価を行うために実施した実験の実験結果を示す図である。
図32】スピーカに取り付けた状態の第7実施形態における遮音構造体の評価を行うために実施した実験の構成図を示す図である。
図33】スピーカに取り付けた状態の第7実施形態における遮音構造体の評価を行うために実施した実験の実験結果を示す図である。
図34】第7実施形態における遮音構造体または比較部材をスピーカに取り付けた状態で行った実験の構成図を示す図である。
図35】第7実施形態における遮音構造体または比較部材をスピーカに取り付けた状態で行った実験の実験結果を示す図である。
図36】第8実施形態に係る遮音部の断面図である。
図37図36に示すXXXVII-XXXVII断面図である。
図38】第9実施形態に係る遮音部において、図37に相当する断面図である。
図39】第10実施形態に係る遮音部において、図37に相当する断面図である。
図40】第11実施形態に係る遮音部の断面図である。
図41図40に示すXLI-XLI断面図である。
図42】第11実施形態に係る遮音部の渦巻開口部に図41に示す閉塞部とは異なる閉塞部が挿入された状態を示す図である。
図43】第11実施形態に係る遮音部の透過損失を示す図である。
図44】第12実施形態に係る遮音部において、図41に相当する断面図である。
図45】第12実施形態に係る遮音部において、ねじの締め付け位置が図44に示すねじの締め付け位置とは異なる状態を示す図である。
図46】第13実施形態に係る遮音部において、図44に相当する断面図である。
図47】第13実施形態に係る遮音部の渦巻開口部に図46に示すねじとは異なるねじが挿入された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態の遮音部10について、図1図8を参照して説明する。本実施形態では、遮音部10が車両に用いられる図1などに示す遮音構造体1に適用される例について説明する。図1図3に示すように、遮音構造体1は、板状の遮音部10が複数組み合わされて構成されている。遮音構造体1は、例えば、車室内と車室外との間に設けられる不図示のダッシュパネルやドアに設けられる。
【0015】
ここで、図2等に示すように、板状の遮音部10における板厚方向を第1方向D1とする。また、図2等に示すように、遮音部10の板面に沿う方向であって、第1方向D1に直交する所定の方向を第2方向D2とし、第1方向D1および第2方向D2に直交する方向を第3方向D3とする。本実施形態の遮音構造体1は、25個の遮音部10が第2方向D2および第3方向D3それぞれに5つずつ並んで構成されている。遮音構造体1は、遮音部10それぞれの板面がダッシュパネルやドアに対向するように配置される。具体的に、遮音構造体1は、遮音部10の後述の第1板面21に設けられた遮音開口部41が、遮音構造体1に向けて音を発する物体が存在する側となるように配置される。なお、図1等では、便宜上、25個の遮音部10における代表的なものに対して符合を付し、他のものへの符号を省略している。
【0016】
なお、遮音構造体1を構成する遮音部10の数量は限定されるものではない。遮音構造体1は、遮音部10が第2方向D2または第3方向D3に5つより多く並んで構成されていてもよいし、5つより少なく並んで構成されていてもよい。また、遮音構造体1は、遮音部10が第1方向D1に並ぶ構成であってもよい。
【0017】
遮音部10は、図4に示すように、遮音板材20および共振部30を有する。遮音板材20は、遮音部10の外殻を形成するものである。遮音板材20は、第1方向D1に沿う方向から視た形状が略正方形状であって、第1方向D1に板面を有する板状に形成されている。すなわち、遮音板材20は、板面に直交する方向視が略正方形状であって、第2方向D2および第3方向D3それぞれの大きさに比較して第1方向D1の大きさが小さい板状となっている。遮音板材20は、単位体積辺りの質量が空気より大きい部材であって、例えば、樹脂で形成されている。本実施形態の遮音板材20は、ナイロン樹脂によって形成されている。遮音板材20は、第1方向D1の一方側に平面状の第1板面21を有し、第1方向D1の他方側に平面状の第2板面22を有する。
【0018】
なお、遮音板材20の形状はこれに限定されない。遮音板材20は、第1方向D1に沿う方向から視た形状が長方形、三角形、円形など、正方形とは異なる形状であってもよい。また、遮音板材20の部材は、ナイロン樹脂に限定されない。遮音板材20は、ナイロン樹脂とは異なる樹脂で形成されていてもよいし、樹脂とは異なる部材、例えば、金属で形成されていてもよい。
【0019】
共振部30は、遮音板材20の内部に形成される空洞部であって、遮音部10に対して音波が入射された際に、共振部30の内部の空気が振動することでヘルムホルツ共鳴を発生させるものである。共振部30は、図4図6に示すように、一方側の端部が遮音板材20の第1板面21において開口し、他方側の端部が遮音板材20の内部で閉塞された円管状に形成されており、共振空間Sを形成している。具体的に、共振部30は、第1板面21から第1方向D1の他方側に向かって、すなわち、遮音板材20の内部に向かって延伸するネック部40と、遮音板材20の内部において屈曲して形成される渦巻部50を有する。共振部30は、共振空間S内が空洞となっており、開口側が遮音板材20の外部に連通することで共振空間S内に空気が充填される。
【0020】
共振部30は、ネック部40および渦巻部50が連なって形成されている。これにより、ネック部40によって形成される空間および渦巻部50によって形成される空間が連通する。すなわち、共振空間Sは、ネック部40によって形成される空間および渦巻部50によって形成される空間によって構成されている。ネック部40および渦巻部50は、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が略真円形状に形成されている。換言すれば、共振部30は、一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が略真円形状に形成されている。
【0021】
図4および図5に示すように、ネック部40は、第1板面21の略中央から遮音板材20の第1方向D1における略中心まで第1方向D1に沿って形成されている。ネック部40は、第1方向D1の一方側に第1板面21において遮音板材20の外部へ連通する遮音開口部41を有し、第1方向D1の他方側に渦巻部50に連通する連通部42を有する。遮音開口部41は、共振空間Sに連通する。ネック部40は、遮音開口部41から連通部42まで、経路が延びる方向に直交する開口面積、すなわち、第1方向D1に直交する開口面積が一定となっている。
【0022】
図6に示すように、渦巻部50は、内側から外側に向かって径が大きく円を描くように形成された渦巻形状に形成されている。本実施形態の渦巻部50は、巻き数が2回の渦巻形状となっている。渦巻部50は、内側の端部にネック部40の連通部42に連通する第1端部51を有し、外側の端部に遮音板材20によって閉塞される第2端部52を有する。また、渦巻部50は、音波が伝搬される共振空間Sの一部を形成する共振面53を有する。渦巻部50は、ネック部40の連通部42を中心に、連通部42の周囲に形成される。換言すれば、渦巻部50は、第1方向D1においてネック部40の一部と重なる位置に形成されている。そして、渦巻部50は、第1端部51および第2端部52が第2方向D2において重なるように形成されている。以下、渦巻部50における第1端部51側を開始端側と呼び、第2端部52を終端側と呼ぶ場合がある。
【0023】
渦巻部50は、第1端部51から第2端部52まで、経路が延びる方向に直交する開口面積、すなわち、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が一定となっている。換言すれば、渦巻部50は、開始端側から終端側まで、内径が一定となっている。なお、渦巻部50の経路が延びる方向とは、図6に示す渦巻部50の断面において、渦巻部50の内周部に対する接線が延びる方向に沿う方向である。渦巻部50は、経路が延びる方向に直交する開口面積がネック部40における経路が延びる方向に直交する開口面積に等しく形成されている。本実施形態の渦巻部50は、屈曲部として機能する。
【0024】
このように形成される渦巻部50は、渦巻形状に沿う方向の長さがネック部40の第1方向D1の長さより大きくなっている。ここで、ネック部40の第1方向D1の長さをネック長、渦巻部50の渦巻形状に沿う方向の長さを渦巻長、ネック部40によって形成される空間の体積をネック体積、渦巻部50によって形成される空間の体積を渦巻体積とする。経路に直交する開口面積がそれぞれ等しく形成されるネック部40および渦巻部50によって構成される共振部30は、ネック体積より渦巻体積が大きくなっている。
【0025】
このため、遮音部10に対して音波が入射されて、遮音開口部41に音波が伝搬されると、ヘルムホルツ共鳴が発生し、共振部30内の空気がネック長と渦巻体積とに応じた共振周波数で共振する。これにより、遮音部10は、遮音構造体1に向かって入射される音波のうち、共振部30で共振する空気の共振周波数付近の周波数帯域の音波の振幅を低減させて遮音性能を発揮することができる。以下、共振部30で共振する空気の共振周波数を単に共振部30の共振周波数とも呼ぶ。また、遮音部10に向かって入射される音波に含まれる周波数のうち、共振部30の共振周波数付近の周波数帯域を特定周波数とも呼ぶ。
【0026】
以上の如く、本実施形態の遮音部10は、共振部30が遮音板材20の内部において屈曲して形成される渦巻部50を有する。そして、遮音部10は、遮音部10に向かって音波が入射された際に、共振部30にヘルムホルツ共鳴を発生させることで共振部30の内部の空気を共振させて遮音部10に向かって入射される音波のうち、特定周波数の音を低減させて遮音性能を発揮する。
【0027】
ところで、このようなヘルムホルツ共鳴によって遮音性能を得る遮音部10では、遮音性能を発揮する特定周波数の帯域が小さいほど、共振部30の共振周波数の帯域を小さくする必要がある。なお、上述したように、共振部30の共振周波数は、ネック長と渦巻体積とに応じて定まるものである。そして、遮音部10で遮音性能を発揮する特定周波数の帯域が小さいほど、渦巻体積の大きさを大きくする必要がある。
【0028】
本実施形態の遮音部10は、車両に用いられる遮音構造体1に適用されるところ、走行中の車両には、風切音やロードノイズなどの外部環境に起因する騒音が発生する。また、車両には、ファンやインバータなど、駆動音を発生する部品が搭載される場合がある。そして、これら外部環境に起因する騒音や部品の駆動音は、車両に乗員する乗員にとって騒音となり、乗員の乗り心地を悪化させる要因となる。そして、これらの騒音は、低周波数帯域から高周波数帯域まで幅広い周波数帯域を含む。このため、遮音部10は、低周波数帯域から高周波数帯域まで幅広い周波数帯域に対して遮音性能を発揮することが望まれる。
【0029】
ここで、共振部30が遮音板材20の内部において屈曲する部位を有していない場合、遮音板材20の内部に形成される体積が制限される虞がある。例えば、図7および図8に示す比較例である比較遮音部100のように、比較共振部110が比較ネック部120と、比較ネック部120に連通し、第1方向D1に軸心を有する円柱形状の円柱空洞部130で構成されているとする。
【0030】
この場合、円柱空洞部130は、比較ネック部120より第1方向D1の他方側に形成される。すなわち、円柱空洞部130は、第1方向D1において比較ネック部120と重なる位置に形成することができない。換言すれば、円柱空洞部130は、比較ネック部120の周囲に形成することができない。このような構成の場合、比較遮音部100の内部において円柱空洞部130を形成可能な第1方向D1の位置が制限される。そしてこれにより、円柱空洞部130によって形成される空間の体積は、比較遮音部100の第1方向D1の大きさによって制限される。したがって、比較遮音部100の内部において円柱空洞部130によって形成される空間は、その体積を大きくし難い。
【0031】
例えば、遮音部10と比較遮音部100とにおいて、ネック部40および比較ネック部120の互いの第1方向D1の大きさが等しく、形状が等しい場合において、円柱空洞部130によって形成される空間の体積を渦巻体積と同じ大きさだけ確保しようとする。しかし、円柱空洞部130の第1方向D1の大きさは、比較遮音部100の第1方向D1の大きさによって制限されるため、渦巻部50の第1方向D1の大きさに比較して小さくなる。このため、比較遮音部100の第2方向D2の大きさおよび第3方向D3の大きさの少なくとも一方を遮音部10に比較して大きくする必要がある。すなわち、円柱空洞部130の内部の空気を、共振部30の共振周波数と同じ周波数で共振させる場合、比較遮音部100は遮音部10より大型化することとなり、好ましくない。
【0032】
また、比較遮音部100が遮音部10より大型化することは、比較遮音部100を遮音構造体1に適用する場合、遮音構造体1の重量が大きくなる要因となる。このため、比較遮音部100が適用された遮音構造体1を車両に搭載する場合、遮音構造体1の重量の増大は、車両の燃費の悪化の要因となるため、さらに好ましくない。
【0033】
これに対して、遮音板材20の内部において屈曲して形成される渦巻部50を有する本実施形態の遮音部10によれば、遮音部10の内部に形成される渦巻体積を大きくし易い。このため、共振部30の大型化を抑制しつつ、共振部30の共振周波数を小さくすることができる。したがって、遮音部10に求められる遮音性能が低周波数帯域から高周波数帯域まで幅広い周波数帯域の音であっても、遮音部10は、大型化することなく、遮音部10に入射される音に対して幅広い周波数帯域の音を低減させることができる。
【0034】
また、特許文献1に記載の遮音構造のように円柱形状の基部と、基部より大きな質量を有する錘部とを複数有する構成の場合、錘部のような重量物を複数備えることによって遮音構造の重量が大きくなり易い。さらに、基部と錘部との2つの部品によって構成する部品を複数有する場合、遮音構造の製造コストが大きくなり易い。
【0035】
これらに対して、本実施形態の遮音部10によれば、遮音板材20の内部に形成する空洞によって共振部30を構成することによって、遮音部10の重量を小さくし易く、さらに、部品数も限定されるため、製造コストも小さくし易くできる。
【0036】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
(1)上記実施形態では、共振部30は、共振空間S内に空気が充填されている。
【0038】
これによれば、共振空間S内にガスなど空気以外の気体が充填されたり、水などの液体が充填されたりする場合に比較して、簡易に共振部30を形成することができる。
【0039】
(2)上記実施形態では、共振部30は、一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が円形状に形成されている。
【0040】
これによれば、共振部30の一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が矩形状などの角を有する構成に比較して、音が共振空間S内を伝搬する際に乱反射がし難くなる。このため、共振部30の共振周波数を安定させ易い。
【0041】
(3)上記実施形態では、渦巻部50は、渦巻形状に形成されている。
【0042】
これによれば、遮音板材20内に共振空間Sを形成するにあたり、渦巻部50の渦巻形状に沿う方向の長さを長くし易くなり、渦巻部50によって形成される空間の体積を大きくし易い。このため、必要な遮音性能を得るための共振部30の共振周波数が比較的小さい場合であっても、共振部30の共振周波数を必要な周波数に対応させ易い。
【0043】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図9図12を参照して説明する。本実施形態では、遮音部10に複数の共振部30a、30bが形成されている点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0044】
図9図11に示すように、本実施形態の遮音部10は、2つの共振部30a、30bを有する。2つの共振部30a、30bは、遮音板材20の内部において、第1方向D1にずれて形成されている。以下、2つの共振部30a、30bのうち、第1方向D1の一方側を第1共振部30a、第1方向D1の他方側を第2共振部30bと呼ぶ。第1共振部30aおよび第2共振部30bは、遮音板材20の内部に空洞状に形成されており、遮音部10に対して音波が入射された際に、それぞれの内部の空気が振動することでヘルムホルツ共鳴を発生させる。
【0045】
本実施形態の第1共振部30aおよび第2共振部30bは、それぞれの内部の体積が異なっており、それぞれの内部で共振する空気の共振周波数が互いに異なるように形成されている。
【0046】
第1共振部30aは、図9および図10に示すように、第1板面21から第1方向D1の他方側に向かって延伸する第1ネック部40aと、遮音板材20の内部において屈曲して形成される第1渦巻部50aを有する。第1共振部30aは、第1ネック部40aおよび第1渦巻部50aが連なって形成されている。これにより、第1ネック部40aによって形成される空間および第1渦巻部50aによって形成される空間が連通する。第1ネック部40aおよび第1渦巻部50aは、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が略真円形状に形成されている。
【0047】
第1ネック部40aは、第1板面21の略中央から遮音板材20の第1方向D1における略中心まで第1方向D1に沿って形成されている。第1ネック部40aは、第1方向D1の一方側に、第1板面21において開口する第1遮音開口部41aを有し、第1方向D1の他方側に、第1渦巻部50aに連通する第1連通部42aを有する。第1ネック部40aは、第1遮音開口部41aから第1連通部42aまで、第1方向D1に直交する開口面積が一定となっている。
【0048】
図10に示すように、第1渦巻部50aは、内側から外側に向かって径が大きく円を描くように形成された渦巻形状に形成されている。本実施形態の第1渦巻部50aは、巻き数が3回より大きい渦巻形状となっている。第1渦巻部50aは、第1ネック部40aの第1連通部42aを中心に、第1連通部42aの周囲に形成される。換言すれば、第1渦巻部50aは、第1方向D1において第1ネック部40aの一部と重なる位置に形成されている。
【0049】
第1渦巻部50aは、内側の端部から外側の端部まで第1渦巻部50aの経路が延びる方向に沿う方向に直交する開口面積が一定であって、内側の端部から外側の端部まで内径が一定となっている。第1渦巻部50aは、経路が延びる方向に直交する開口面積が第1ネック部40aにおける経路が延びる方向に直交する開口面積に等しく形成されている。
【0050】
第2共振部30bは、第1板面21から第1方向D1の他方側に向かって延伸する第2ネック部40bと、遮音板材20の内部において屈曲して形成される第2渦巻部50bを有する。第2共振部30bは、第2ネック部40bおよび第2渦巻部50bが連なって形成されている。これにより、第2ネック部40bによって形成される空間および第2渦巻部50bによって形成される空間が連通する。第2ネック部40bおよび第2渦巻部50bは、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が略真円形状に形成されている。
【0051】
第2ネック部40bは、第1板面21の略中央に対して第2方向D2にずれた位置から遮音板材20の第1方向D1における略中心より第1方向D1の他方側まで第1方向D1に沿って形成されている。すなわち、第2ネック部40bは、第1ネック部40aとは異なる位置に形成されており、第1ネック部40aより第1方向D1の大きさが大きく形成されている。
【0052】
第2ネック部40bは、第1方向D1の一方側に、第1板面21において開口する第2遮音開口部41bを有し、第1方向D1の他方側に、第2渦巻部50bに連通する第2連通部42bを有する。第2ネック部40bは、第2遮音開口部41bから第2連通部42bまで、第1方向D1に直交する開口面積が一定となっている。
【0053】
図11に示すように、第2渦巻部50bは、内側から外側に向かって径が大きく円を描くように形成された渦巻形状に形成されている。本実施形態の第2渦巻部50bは、第1渦巻部50aより巻き数が少なくなっており、巻き数が2回より少ない渦巻形状となっている。また、第2渦巻部50bは、第1渦巻部50aより第1方向D1の他方側にずれて形成されている。換言すれば、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、第1方向D1に所定の間隔を空けて並んで設けられている。第2渦巻部50bは、第2ネック部40bの第2連通部42bを中心に、第2連通部42bの周囲に形成される。換言すれば、第2渦巻部50bは、第1方向D1において第2ネック部40bの一部と重なる位置に形成されている。
【0054】
第2渦巻部50bは、内側の端部から外側の端部まで第2渦巻部50bの経路が延びる方向に沿う方向に直交する開口面積が一定であって、内側の端部から外側の端部まで内径が一定となっている。第2渦巻部50bは、経路が延びる方向に直交する開口面積が第2ネック部40bにおける経路が延びる方向に直交する開口面積に等しく、第1渦巻部50aの経路が延びる方向に直交する開口面積に等しく形成されている。
【0055】
このように形成される第2渦巻部50bは、渦巻形状に沿う方向の長さが、第1渦巻部50aの渦巻形状に沿う方向の長さより短くなっている。ここで、第1渦巻部50aの渦巻形状に沿う方向の長さを第1渦巻長、第2渦巻部50bの渦巻形状に沿う方向の長さを第2渦巻長とする。また、第1渦巻部50aによって形成される空間の体積を第1渦巻体積、第2渦巻部50bによって形成される空間の体積を第2渦巻体積とする。第2渦巻長に比較して長い第1渦巻長を有する第1渦巻部50aは、第1渦巻体積が第2渦巻体積より大きくなっている。本実施形態の第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、屈曲部として機能する。
【0056】
このように形成される遮音部10は、第1共振部30aおよび第2共振部30bに対して音波が入射されると、ヘルムホルツ共鳴が発生し、第1共振部30a内および第2共振部30b内の空気がそれぞれ共振周波数で共振する。そして、第2渦巻体積より大きい第1渦巻体積を有する第1共振部30aは、第2共振部30bより低い共振周波数で共振する。
【0057】
これにより、遮音部10は、遮音構造体1に入射される音波のうち、第1共振部30aで共振する空気の共振周波数付近の周波数帯域および第2共振部30bで共振する空気の共振周波数付近の周波数帯域の音波それぞれに対して遮音性能を発揮することができる。
【0058】
ここで、本実施形態の遮音部10を有する遮音構造体1をダッシュパネルに設ける場合と設けない場合の遮音性能の違いを図12に示す。なお、図12に示す実線は、本実施形態の遮音部10を有する遮音構造体1をダッシュパネルに設ける場合の透過損失を示す。また、図12に示す破線は、遮音構造体1を有さないダッシュパネルの透過損失を示す。図12に示すように、本実施形態の遮音部10を有する遮音構造体1は、互いに異なる2つの周波数帯域に対して突出した透過損失を有する遮音性能を発揮することができる。具体的には、本実施形態の遮音部10は、他の周波数帯域に比較して高い透過損失を発揮する2つの周波数帯域のうち、低い方の周波数帯域が、第1共振部30aが発揮する遮音性能を示し、高い方の周波数帯域が、第2共振部30bが発揮する遮音性能を示す。
【0059】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0060】
また、本実施形態の遮音部10は、第1共振部30aおよび第2共振部30bを備えている。第1共振部30aは、第1渦巻部50aを有する。第2共振部30bは、第2渦巻部50bを有する。
【0061】
これによれば、遮音部10は、第1共振部30aおよび第2共振部30bそれぞれでヘルムホルツ共鳴を発生させることができる。
【0062】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
(1)上記実施形態では、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、第1渦巻体積および第2渦巻体積が互いに異なっている。
【0064】
これによれば、遮音部10は、第1共振部30aで共振する空気の共振周波数と第2共振部30bで共振する空気の共振周波数とを異なる大きさにすることができる。このため、遮音部10は、第1共振部30aの共振周波数付近の周波数帯域と第2共振部30bで共振する空気の共振周波数付近の周波数帯域の音波それぞれに対して遮音性能を発揮することができる。
【0065】
(2)上記実施形態では、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、第1方向D1に所定の間隔を空けて並んで設けられている。
【0066】
これによれば、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bそれぞれの渦巻形状に沿う方向の長さをそれぞれ長くし易くなり、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bそれぞれによって形成される空間の体積を大きくし易い。このため、必要な遮音性能を得るための第1共振部30aおよび第2共振部30bそれぞれの共振周波数が比較的小さい場合であっても、第1共振部30aおよび第2共振部30bそれぞれの共振周波数を必要な周波数に対応させ易い。
【0067】
(第2実施形態の第1の変形例)
上述の第2実施形態では、遮音部10が2つの共振部30a、30bを有する例について説明したが、これに限定されない。
【0068】
例えば、遮音部10は、共振部30を3つ以上有する構成であってもよい。
【0069】
(第2実施形態の第2の変形例)
上述の第2実施形態では第1共振部30aおよび第2共振部30bが第1方向D1にずれて形成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0070】
例えば、第1共振部30aおよび第2共振部30bは、第2方向D2または第3方向D3にずれて形成されていてもよい。
【0071】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図13および図14を参照して説明する。本実施形態では、第1共振部30aおよび第2共振部30bの形状および形成されている位置が第2実施形態と相違している。これ以外は、第2実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0072】
図13および図14に示すように、本実施形態の第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、遮音板材20の内部で第1方向D1において重なる位置に形成されている。すなわち、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、第1方向D1における位置が同じ位置に形成されている。また、本実施形態の第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、それぞれの内部の体積が略同じ大きさとなっており、それぞれの内部で共振する空気の共振周波数が略等しくなるように形成されている。
【0073】
そして、本実施形態の第1渦巻部50aは、遮音部10を第1方向D1に沿う方向から視た中心から第3方向D3へ僅かにずれた位置を起点に、内側から外側に向かって大きさが大きくなる四角を描くように形成された渦巻形状に形成されている。本実施形態の第1渦巻部50aは、巻き数が2回より大きい渦巻形状となっている。第1渦巻部50aは、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が矩形状であって、具体的に、略正方形状に形成されている。
【0074】
また、本実施形態の第2渦巻部50bは、遮音部10を第1方向D1に沿う方向から視た中心から第3方向D3へ僅かにずれた位置を起点に、内側から外側に向かって大きさが大きくなる四角を描くように形成された渦巻形状に形成されている。第2渦巻部50bの渦巻形状の起点は、第1渦巻部50aの渦巻形状の起点とは異なる位置となっている。具体的に、第2渦巻部50bの渦巻形状の起点は、遮音部10を第1方向D1に沿う方向から視た中心を基準点に、第1渦巻部50aの渦巻形状の起点の点対称となる位置に位置付けられている。
【0075】
そして、第2渦巻部50bは、遮音部10を第1方向D1に沿う方向から視た中心を基準点に第1渦巻部50aに対して点対称の形状となっている。具体的に、第2渦巻部50bは、第1渦巻部50aと同じ巻き数および巻き方向になっており、巻き数が2回より大きい渦巻形状となっている。そして、第2渦巻部50bは、渦巻形状の第1渦巻部50aの隙間に配置されている。第2渦巻部50bは、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が矩形状であって、具体的に、略正方形状に形成されている。
【0076】
このように形成される第2渦巻部50bは、渦巻形状に沿う方向の長さが、第1渦巻部50aの渦巻形状に沿う方向の長さと略等しくなっている。すなわち、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、第1渦巻長および第2渦巻長が略等しくなっており、第1渦巻体積および第2渦巻体積が略等しくなっている。
【0077】
そして、遮音部10は、第1共振部30aおよび第2共振部30bに対して音波が入射されると、ヘルムホルツ共鳴が発生し、第1共振部30a内の空気および第2共振部30b内の空気がそれぞれ略同じ共振周波数で共振する。これにより、遮音部10は、遮音構造体1に入射される音波のうち、互いに略等しい第1共振部30aおよび第2共振部30bの共振周波数付近の1つの周波数帯域の音波に対する遮音性能を発揮することができる。
【0078】
したがって、遮音部10は、第1共振部30aおよび第2共振部30bのうちのどちらかのみを有する構成に比較して、1つの周波数帯域に対して高い遮音性能を発揮することができる。
【0079】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0080】
また、本実施形態の遮音部10は、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bが第1方向D1において重なって設けられている。
【0081】
これによれば、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bが第1方向D1において所定の間隔を空けて並んで設けられる構成に比較して、遮音部10の第1方向D1の大きさを小さくできる。
【0082】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
(1)上記実施形態では、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bが遮音部10を第1方向D1に沿う方向から視た中心を基準点に点対称の形状となっている。そして、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、互いの隙間に配置されている。
【0084】
これによれば、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bを第1方向D1において同じ位置に形成する場合、互いに干渉することなく形成することができる。このため、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bをこのように形成しない場合に比較して、遮音部10の第2方向D2および第3方向D3の大きさを小さくし易い。
【0085】
(2)上記実施形態では、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bは、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が矩形状に形成されている。
【0086】
これによれば、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bそれぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が三角形状や五角形状などの矩形状以外の多角形状に形成される場合に比較して、第1渦巻部50aおよび第2渦巻部50bを形成し易くできる。
【0087】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図15および図16を参照して説明する。本実施形態では、遮音部10が吸音材60を備えている点が第2実施形態と相違している。これ以外は、第2実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0088】
図15に示すように、本実施形態の遮音部10は、第1渦巻部50aの内部において、遮音板材20によって閉塞される終端側の端部に吸音材60が設けられている。吸音材60は、吸音率が比較的小さい部材を採用することができる。例えば、吸音材60は、吸音率が0.1である発泡ウレタン、ゴム、グラスウールなど、入射される音のエネルギを自身の内部で熱エネルギとして消費するものを採用することができる。なお、吸音率は、入射される音のエネルギに対して反射される音のエネルギの比率を示すものである。本実施形態では、吸音材60が共振空間S内に伝搬される音波のエネルギを減少させるエネルギ減少部として機能する。
【0089】
ここで、吸音材60を設けることによる遮音部10の透過損失の違いを図16に示す。なお、図16に示す実線は、吸音材60を設けた遮音部10の透過損失を示す。また、破線は、吸音材60を設けない遮音部10の透過損失を示す。
【0090】
図16に示すように、吸音材60を設けない構成の場合、遮音部10は、所定の周波数帯域に対して突出した遮音性能を有する。しかし、遮音性能を発揮する周波数帯域が比較的狭い。
【0091】
これに対して、吸音材60を設ける本実施形態の構成の場合、第1渦巻部50aの内部の空気が共振する際、音が吸音材60に吸収される。すると、終端側である吸音材60周辺に、開始端側で共振する空気の共振周波数に比較して共振周波数が小さい空気の共振が発生する。すると、第1渦巻部50aで発生する共振になまりが生じる。そしてこれにより、遮音部10は、図16に示すように、透過損失が等しい周波数において、透過損失が小さくなるが、遮音性能を発揮する周波数帯域を、吸音材60を設けない構成に比較して広くすることができる。
【0092】
その他の構成は、第2実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第2実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第2実施形態と同様に得ることができる。
【0093】
なお、吸音材60は、第1渦巻部50aに加えて第2渦巻部50b内にも設けられていてもよいし、第2渦巻部50bのみに設けられていてもよい。
【0094】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図17を参照して説明する。本実施形態では、吸音材60が粘弾性体65および振動体66に置き換えらえている点が第4実施形態と相違している。これ以外は、第4実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明し、第4実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0095】
図17に示すように、本実施形態の遮音部10は、第1渦巻部50aの内部に粘弾性体65および振動体66が設けられている。具体的に、第1渦巻部50aの内部における遮音板材20によって閉塞される終端側の端部には、粘弾性変形可能な粘弾性体65および振動可能な振動体66が設けられている。振動体66は、当該粘弾性体65に取り付けられており、粘弾性体65が粘弾性変形すると、粘弾性体65と一体に変移可能となっている。
【0096】
粘弾性体65は、例えば、ゴム、ばねなどの粘弾性変形可能な弾性部材で構成されている。振動体66は、例えば、粘弾性変形しない鉄などの金属によって構成されている。なお、振動体66の部材は鉄に限定されず、鉛など、鉄とは異なる金属であってもよいし、樹脂など金属とは異なる部材であってもよい。
【0097】
このような粘弾性体65および振動体66を共振部30に設ける場合の遮音部10の作動について説明する。遮音部10の内部に粘弾性体65および振動体66を設ける場合、遮音部10に対して音波が入射されて共振部30の内部の空気が振動すると、空気の振動が振動体66を介して粘弾性体65に伝導される。これにより、粘弾性体65が伸縮することで振動体66が振動する。すると、共振部30の内部に伝搬される音波の反射する位置が伸縮する振動体66の位置に応じて変化することによって、共振部30の内部の空気が共振する際に共振がなまる。また、共振部30の内部に伝搬される音のエネルギが粘弾性体65および振動体66の振動の際に生じる熱によって粘弾性体65で消費され、共振部30の内部の空気が共振する際に共振がなまる。
【0098】
これによれば、第5実施形態の遮音部10と同様に、遮音部10は、透過損失が等しい周波数において、透過損失が小さくなるが、粘弾性体65および振動体66を設けない構成に比較して透過損失が等しい遮音性能を発揮する周波数帯域を広くすることができる。本実施形態では、粘弾性体65が共振空間S内に伝搬される音波のエネルギを減少させるエネルギ減少部として機能する。
【0099】
その他の構成は、第4実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第4実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第4実施形態と同様に得ることができる。
【0100】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図18図20を参照して説明する。本実施形態では、共振部30の一部の形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0101】
図18に示すように、本実施形態の渦巻部50は、巻き数が3回より大きい渦巻形状となっている。また、共振部30は、渦巻部50の渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を階段状に変化させる階段部54を有する。階段部54は、渦巻部50における終端側の端部に設けられている。階段部54は、渦巻形状に沿う方向において、第1端部51側から第2端部52側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が徐々に小さくなっており、具体的に、階段状に小さくなっている。換言すれば、渦巻部50の第2端部52は、開始端側から終端側に向かって、内径が階段状に小さくなっている。本実施形態の階段部54は、内径が開始端側から終端側に向かって、2段階小さくなっている。本実施形態では、階段部54が、渦巻部50の内径を変化させる変化部として機能する。
【0102】
以下、図19に示すように、階段部54における開始端側から終端側に向かって2段階内径が小さくなる部分のうち、1段階目に内径が小さくなる部位を第1段差面541、2段階目に内径が小さくなる部位を第2段差面542とも呼ぶ。また、渦巻部50のうち、最も第1端部51から遠い部位に形成される面を終端面543とも呼ぶ。なお、図19は、屈曲する階段部54を模式的に直線状に示した模式図である。
【0103】
このように渦巻部50が階段状に形成される階段部54を有する場合の遮音部10の作動について説明する。階段部54を有する遮音部10に対して音波が入射されると、この音波がネック部40を介して渦巻部50の内部に伝搬される。そして、渦巻部50の内部に伝搬される音波は、渦巻部50の共振面53で反射する。
【0104】
ここで、階段部54に伝搬される音波は、階段部54の内部において内径が変化する部位それぞれで反射する。例えば、本実施形態のように、内径が開始端側から終端側に向かって、2段階、階段状に小さくなっている階段部54の内部では、音波は、第1段差面541、第2段差面542および終端面543それぞれで反射する。このため、階段部54では、第1段差面541で反射する音波と、第2段差面542で反射する音波と、終端面543で反射する音波の3種類の音波が存在することになる。これにより、共振部30の内部の空気は、これら3種類の音波によって、3つの共振周波数を含んで共振する。
【0105】
このため、遮音部10は、遮音構造体1に入射される音波のうち、3つの共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0106】
ここで、第1端部51から第1段差面541までの渦巻形状に沿う方向の長さを第1段差長L1、第1端部51から第2段差面542までの渦巻形状に沿う方向の長さを第2段差長L2とする。また、第1端部51から終端面543までの渦巻形状に沿う方向の長さを終端長L3とする。第1段差長L1は、第2段差長L2および終端長L3に比較して短い。また、第2段差長L2は、終端長L3に比較して短い。すなわち、終端長L3面は、第1段差長L1および第2段差長L2に比較して長い。
【0107】
このように構成される本実施形態の遮音部10の遮音性能を図20に示す。図20に示すように、本実施形態の遮音部10は、互いに異なる3つの周波数帯域に対して突出した遮音性能を有する。具体的に、遮音部10は、第1段差面541で反射する音波に起因する空気の共振によって、遮音性能を発揮する3つの周波数帯域のうち、最も高い周波数帯域の遮音性能を発揮する。そして、遮音部10は、第2段差面542で反射する音波に起因する空気の共振によって、2番目に高い周波数帯域の遮音性能を発揮し、終端面543で反射する音波に起因する空気の共振によって、最も低い周波数帯域の遮音性能を発揮する。
【0108】
なお、図20に示す線aは、第1段差面541で反射する音波に起因する空気の共振によって発揮する透過損失を示し、図20に示す線bは、第2段差面542で反射する音波に起因する空気の共振によって発揮する透過損失を示す。また、図20に示す線cは、終端面543で反射する音波に起因する空気の共振によって発揮する透過損失を示す。
【0109】
なお、第1端部51から第1段差面541、第2段差面542、終端面543までのそれぞれの渦巻形状に沿う方向の長さは、遮音部10で必要な遮音性能を得る周波数帯域に応じて適宜設定される。
【0110】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0111】
また、本実施形態の遮音部10は、渦巻部50の内径を変化させる階段部54を有する。
【0112】
これによれば、共振空間S内に伝搬される音波を、渦巻部50の内径が変化する部位で反射させることができ、変化する部位でそれぞれ反射する音波に起因する空気の共振によって複数の周波数帯域に対して遮音性能を発揮することができる。
【0113】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0114】
(1)上記実施形態では、渦巻部50は、内径を階段状に変化させる階段部54を有する。
【0115】
これによれば、共振空間S内に伝搬される音波を、階段部54のそれぞれの段差で反射させることができ、段差の数量に応じた複数の周波数帯域に対して遮音性能を発揮することができる。
【0116】
(第6実施形態の第1の変形例)
上述の第6実施形態では、階段部54が、渦巻形状に沿う方向において、開始端側から終端側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が階段状に小さくなっている例について説明したが、これに限定されない。
【0117】
例えば、階段部54は、渦巻形状に沿う方向において、開始端側から終端側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が階段状に大きくなっていてもよい。
【0118】
(第6実施形態の第2の変形例)
上述の第6実施形態では、階段部54が渦巻部50における終端側の端部に設けられている例について説明したが、これに限定されない。
【0119】
例えば、階段部54は、渦巻部50における第1端部51と第2端部52との間において、略中心に設けられていてもよいし、開始端側の端部に設けられていてもよい。
【0120】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図21図35を参照して説明する。本実施形態では、遮音部10に複数の渦巻部55、56が形成されるともに、これら複数の渦巻部55、56の形状が第6実施形態と相違している。また、本実施形態の遮音部10は、車両に搭載されるスピーカSPに取り付けられている点が第6実施形態と相違している。これ以外は、第6実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第6実施形態と異なる部分について主に説明し、第6実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0121】
本実施形態では、図21および図22に示すように、複数の遮音部10で構成される遮音構造体1が車両に設置されるスピーカSPに適用される例について説明する。スピーカSPは、車両の車室外に設置され、車両前方に向かって警報音を発生させるものである。遮音構造体1は、図21に示すように、スピーカSPの後述の発音体S20が設けられる正面側とは反対側の背面に取り付けられており、発音体S20から発生する警告音のうち、不要となる車両後方側への音を抑制するために用いられる。
【0122】
まず、スピーカSPについて説明する。図21および図22に示すように、スピーカSPは、内部に空間が形成された筐体S10と、筐体S10の内部に配置された発音体S20とを備えている。
【0123】
図22に示すように、筐体S10は、スピーカSPのケースを構成するものであって、スピーカSPの正面側にスピーカ開口部S11を有する筒状に形成されている。そして、筐体S10は、スピーカ開口部S11に発音体S20が嵌められて開口が塞がれている。また、筐体S10は、背面側に遮音構造体1が設けられている。筐体S10の背面には、遮音構造体1の複数の遮音部10の遮音開口部41それぞれに対応する位置に貫通穴S12が形成されている。
【0124】
発音体S20は、警告音を発生する音発生部であって、不図示のダイヤフラム、駆動部、磁気回路などを備えている。発音体S20は、駆動部から供給される電力によって磁気回路がダイヤフラムを振動させて、車両前方に向かって放出する警告音を発生させる。
【0125】
ただし、発音体S20から放出される警告音は、一部が車両後方に向かう。この車両後方に向かう警告音は、車室内の乗員に届くと車室内の乗員の乗り心地を悪化させる要因となる。このため、本実施形態の遮音構造体1は、スピーカSPの後方であって、車室内側に設けられる。遮音構造体1は、図22に示すように、遮音部10の板厚方向である第1方向D1が車両前後方向となるようにスピーカSPの背面に取り付けられる。本実施形態の遮音構造体1は、図23および図24に示すように、4個の遮音部10が第2方向D2および第3方向D3それぞれに2つずつ並んで構成されている。
【0126】
続いて、本実施形態の遮音部10について説明する。本実施形態の遮音部10は、図25に示すように、遮音板材20の内部に四角管状の共振部30を有する。
【0127】
共振部30は、図25に示すように、第1方向D1の一方側に遮音板材20の第1板面21において開口する遮音開口部41を有するネック部40を有する。また、共振部30は、ネック部40に連通する2つの渦巻部55、56を有する。ネック部40および2つの渦巻部55、56は、それぞれの経路が延びる方向に直交する断面形状が略正方形状に形成されている。2つの渦巻部55、56は、遮音板材20の内部において、第1方向D1にずれて形成されている。以下、2つの渦巻部55、56のうち、第1方向D1の一方側を一方側渦巻部55、第1方向D1の他方側を他方側渦巻部56と呼ぶ。一方側渦巻部55および他方側渦巻部56は、遮音板材20の内部に空洞状に形成されており、遮音部10に対して音波が入射された際に、それぞれの内部の空気が振動することでヘルムホルツ共鳴を発生させる。
【0128】
ネック部40は、第1板面21の略中央から遮音板材20の第1方向D1における中心より他方側まで第1方向D1に沿って形成されている。ネック部40は、図26および図27に示すように、一方側渦巻部55に連通する一方側連通部43と、一方側連通部43より第1方向D1の他方側に他方側渦巻部56に連通する他方側連通部44を有する。ネック部40は、遮音開口部41から他方側連通部44まで、経路が延びる方向に直交する開口面積、すなわち、第1方向D1に直交する開口面積が一定となっている。
【0129】
図26に示すように、一方側渦巻部55は、遮音板材20の外殻に沿って渦巻形状に形成された一方側外巻部55aと、一方側外巻部55aより内側に形成された一方側内巻部55bとを有する。一方側外巻部55aおよび一方側内巻部55bは、第1方向D1において重なる位置に形成されている。
【0130】
一方側外巻部55aは、第1方向D1の一方側から他方側に向かって視た形状が、ネック部40の一方側連通部43を起点とした左巻きの渦巻形状であって、四角を描くように形成されている。そして、一方側外巻部55aは、一方側外巻部55aの渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を階段状に変化させる一方側外階段部551を有する。一方側外階段部551は、一方側外巻部55aにおける一方側連通部43に連通する側とは反対側の端部に設けられている。一方側外階段部551は、開始端側から終端側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が徐々に小さくなっており、具体的に、階段状に小さくなっている。換言すれば、一方側外巻部55aの終端側の端部は、開始端側から終端側に向かって、内径が階段状に小さくなっている。本実施形態の一方側外階段部551は、内径が開始端側から終端側に向かって、2段階小さくなっている。
【0131】
一方側内巻部55bは、第1方向D1の一方側から他方側に向かって視た形状が、ネック部40の一方側連通部43を起点とした右巻きの渦巻形状であって、四角を描くように形成されている。一方側内巻部55bは、一方側内巻部55bの渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を階段状に変化させる一方側内階段部552を有する。一方側内階段部552は、一方側内巻部55bにおける一方側連通部43に連通する側とは反対側の端部に設けられている。一方側内階段部552は、開始端側から終端側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が徐々に小さくなっており、具体的に、階段状に小さくなっている。換言すれば、一方側内巻部55bの終端側の端部は、開始端側から終端側に向かって、内径が階段状に小さくなっている。本実施形態の一方側内階段部552は、内径が開始端側から終端側に向かって、2段階小さくなっている。
【0132】
図27に示すように、他方側渦巻部56は、遮音板材20の外殻に沿って渦巻形状に形成された他方側外巻部56aと、他方側外巻部56aより内側に形成された他方側内巻部56bとを有する。他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bは、第1方向D1において重なる位置に形成されている。
【0133】
他方側外巻部56aは、第1方向D1の一方側から他方側に向かって視た形状が、ネック部40の他方側連通部44を起点とした右巻きの渦巻形状であって、四角を描くように形成されている。そして、他方側外巻部56aは、他方側外巻部56aの渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を階段状に変化させる他方側外階段部561を有する。他方側外階段部561は、他方側外巻部56aにおける他方側連通部44に連通する側とは反対側の端部に設けられている。他方側外階段部561は、開始端側から終端側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が徐々に小さくなっており、具体的に、階段状に小さくなっている。換言すれば、他方側外巻部56aの終端側の端部は、開始端側から終端側に向かって、内径が階段状に小さくなっている。本実施形態の他方側外階段部561は、内径が開始端側から終端側に向かって、2段階小さくなっている。
【0134】
他方側内巻部56bは、第1方向D1の一方側から他方側に向かって視た形状が、ネック部40の他方側連通部44を起点とした右巻きの渦巻形状であって、四角を描くように形成されている。他方側内巻部56bは、他方側内巻部56bの渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を階段状に変化させる他方側内階段部562を有する。他方側内階段部562は、他方側内巻部56bにおける他方側連通部44に連通する側とは反対側の端部に設けられている。他方側内階段部562は、開始端側から終端側に向かって、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が徐々に小さくなっており、具体的に、階段状に小さくなっている。換言すれば、他方側内巻部56bの終端側の端部は、開始端側から終端側に向かって、内径が階段状に小さくなっている。本実施形態の他方側内階段部562は、内径が開始端側から終端側に向かって、2段階小さくなっている。
【0135】
本実施形態の一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bは、屈曲部として機能する。また、本実施形態では、一方側外階段部551が、一方側外巻部55aの内径を変化させる変化部として機能し、一方側内階段部552が、一方側内巻部55bの内径を変化させる変化部として機能する。また、他方側外階段部561が、他方側外巻部56aの内径を変化させる変化部として機能し、他方側内階段部562が、他方側内巻部56bの内径を変化させる変化部として機能する。
【0136】
ここで、本実施形態の一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bは、ヘルムホルツ共鳴によってそれぞれの内部の空気が振動する際の共振周波数が異なるように形成されている。具体的に、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bは、互いの開始端側の端部から終端側の端部までの渦巻形状に沿う方向の長さが異なっている。ここで、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bの渦巻形状に沿う方向の長さをそれぞれ一方側外巻長、一方側内巻長、他方側外巻長、他方側内巻長とする。本実施形態では、渦巻形状に沿う方向の長さが長い順に、他方側外巻長、一方側外巻長、一方側内巻長、他方側内巻長となっている。
【0137】
このように、一方側外巻長、一方側内巻長、他方側外巻長、他方側内巻長それぞれの長さを異なる構成とすることで、遮音部10は、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56a、他方側内巻部56bそれぞれの共振周波数が異なる大きさとなる。このため、遮音部10は、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56a、他方側内巻部56bそれぞれの共振周波数付近の周波数帯域の音波に対して遮音性能を得ることができる。
【0138】
さらに、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bは、それぞれ渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を階段状に変化させる階段部551、552、561、562を有する。
【0139】
このため、第6実施形態で説明したように、各階段部551、552、561、562に対して音波が入射されると、この音波が各階段部551、552、561、562の内径が変化する部位それぞれで反射する。具体的に、各階段部551、552、561、562に入射した音波は、各階段部551、552、561、562の段差となっている面および終端側の面それぞれで反射する。これにより、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bの内部の空気は、3つの共振周波数を含んで共振する。
【0140】
このため、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56aおよび他方側内巻部56bに入射される音波のうち、3つの共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0141】
ここで、一方側外巻部55aに一方側外階段部551を設ける場合と設けない場合とで、一方側外巻部55aの透過損失の違いを調べるために行った実験結果を図28および図29を用いて説明する。図28では、一方側外階段部551を有する一方側外巻部55aの終端部分および一方側外階段部551を有さない比較例の外巻部55xの終端部分を示している。比較例の外巻部55xは、終端側の端部が、経路が延びる方向に直交する開口面積、すなわち、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が一定となっている。また、図29に示す実線は、一方側外階段部551を有する一方側外巻部55aの透過損失を示し、図29に示す破線は、一方側外階段部551を有さない比較例の外巻部55xの透過損失を示す。
【0142】
図29に示すように、一方側外階段部551を有する一方側外巻部55aは、3つの周波数帯域の透過損失を大きくすることができる。これに対して、一方側外階段部551を有さない比較例の外巻部55xは、1つの周波数帯域のみしか透過損失を大きくすることができない。
【0143】
また、図30および図31において、本実施形態の遮音構造体1単体での評価を行うために実施した実験の構成図および実験結果を示す。図30に示す実験の構成図では、中空円筒状の円管200の一方側に音を発生させる音発生源210を配置し、他方側に音発生源210が発生させた音を吸収する音吸収材220を配置した。さらに、音発生源210と音吸収材220との間に本実施形態の遮音構造体1および遮音構造体1と同形状および同材質の板材であって、遮音部10が形成されていない比較部材230のどちらか一方を配置した。そして、遮音構造体1または比較部材230の前後それぞれに音圧を測定する音圧センサ240を配置した。
【0144】
図31には、このような構成図において、遮音構造体1または比較部材230を通過する前の音圧と通過した後の音圧との差に基づいて算出した遮音構造体1および比較部材230それぞれの透過損失の差を示す。
【0145】
図31に示すように、遮音部10を有する遮音構造体1は、遮音部10を有さない比較部材230に比較して、拡大範囲において透過損失を大きくすることができた。
【0146】
また、図32および図33において、本実施形態の遮音構造体1をスピーカSPに取り付けた状態での評価を行うために実施した実験の構成図および実験結果を示す。図33には、図32に示す遮音構造体1をスピーカSPに取り付けた状態でスピーカSPから警告音を発生させた場合に、音圧センサ240が測定したスピーカSPの正面側および背面側それぞれの音圧を示す。さらに、図33には、遮音構造体1と同形状および同材質の板材であって、遮音部10が形成されていない比較部材230をスピーカSPに取り付けた状態でスピーカSPから警告音を発生させた場合に音圧センサ240が測定したスピーカSPの正面側および背面側それぞれの音圧を示す。
【0147】
なお、図33に示す線Aは、遮音構造体1をスピーカSPに取り付けた状態において、スピーカSPから警告音を発生させた場合のスピーカSPの正面側の音圧を示し、線Bは、スピーカSPから警告音を発生させた場合のスピーカSPの背面側の音圧を示す。そして、図33に示す線Cは、遮音構造体1をスピーカSPに取り付けてない状態において、スピーカSPから警告音を発生させた場合のスピーカSPの正面側の音圧を示し、線Dは、スピーカSPから警告音を発生させた場合のスピーカSPの背面側の音圧を示す。
【0148】
図33に示すように、スピーカSPに遮音構造体1を取り付けた場合、遮音構造体1を取り付けない場合に比較して、測定した周波数全域においてスピーカSPの正面側の警告音の音圧を大きくすることができた。そして、スピーカSPに遮音構造体1を取り付けた場合、遮音構造体1を取り付けない場合に比較して、測定した周波数全域においてスピーカSPの背面側の警告音の音圧を小さくすることができた。すなわち、スピーカSPに遮音構造体1を取り付けた場合、遮音構造体1を取り付けない場合に比較して、測定した周波数全域においてスピーカSPの正面側と背面側との警告音の音圧差を大きくすることができた。
【0149】
また、図34および図35において、本実施形態の遮音構造体1をスピーカSPに取り付けた状態での評価を行うために実施した別の実験の構成図および実験結果を示す。図35には、図34に示す遮音構造体1をスピーカSPに取り付けた状態でスピーカSPから警告音を発生させた場合に、音圧センサ240が測定したスピーカSPの背面側の音圧を示す。さらに、図35には、図34に示す遮音構造体1と同形状および同材質の板材であって、遮音部10が形成されていない比較部材230をスピーカSPに取り付けた状態でスピーカSPから警告音を発生させた場合に音圧センサ240が測定した背面側の音圧を示す。なお、図35に示す実線は、スピーカSPに遮音構造体1を取り付けた場合の音圧を示し、図35に示す破線は、スピーカSPに比較部材230を取り付けた場合の音圧を示す。
【0150】
図35に示すように、スピーカSPに遮音構造体1を取り付けた場合、スピーカSPに比較部材230を取り付けた場合に比較して、測定した周波数全域においてスピーカSPの背面側の警告音の音圧を小さくすることができた。
【0151】
以上の如く、本実施形態の遮音構造体1によれば、遮音部10は、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56a、他方側内巻部56bそれぞれの共振周波数付近の周波数帯域の音波に対して遮音性能を得ることができる。さらに、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56a、他方側内巻部56bそれぞれの各階段部551、552、561、562の段差となっている面よび終端側の面それぞれの音波の反射によって、一方側外巻部55a、一方側内巻部55b、他方側外巻部56a、他方側内巻部56bそれぞれに入射される音波のうち、3つの共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0152】
このため、スピーカSPから放出される警告音のうち、車両後方に向かう不要な警告音に対して幅広い周波数帯域の遮音性能を発揮することができる。したがって、車室内の乗員の乗り心地を向上させることができる。
【0153】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、図36および図37を参照して説明する。本実施形態では、共振部30の一部の形状が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0154】
図36および図37に示すように、共振部30は、渦巻部50の渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を凸凹状に変化させる凹凸部71を有する。凹凸部71は、渦巻部50における終端側の端部に設けられており、凹凸形状に形成されている。凹凸部71は、渦巻部50の共振面53において凸凹状に形成されている。具体的に、凹凸部71は、いわゆる波形状、換言すれば、ノコギリの刃形状に形成されている。凹凸部71は、凹凸それぞれの間隔が遮音部10に入射される音波の波長に対して充分に小さくなっている。凹凸部71は、共振面53の加工精度を比較的低く設定するなど、共振面53を粗く形成することで形成することができる。
【0155】
これにより、渦巻部50は、渦巻形状に沿う方向において、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が凹凸部71の形状に応じて大小に変化する。換言すれば、渦巻部50の第2端部52は、内径が連続的に変化している。本実施形態では、凹凸部71が、渦巻部50の内径を変化させる変化部として機能する。
【0156】
このように渦巻部50に凹凸部71が形成される場合の遮音部10の作動について説明する。凹凸部71を有する遮音部10に対して音波が入射されると、この音波がネック部40を介して渦巻部50の内部に伝搬される。そして、渦巻部50の内部に伝搬される音波は、渦巻部50の共振面53で反射する。
【0157】
ここで、凹凸部71に伝搬される音波は、凹凸部71の表面で反射することで散乱する。このため、凹凸部71では、散乱する音波によって、共振部30の内部の空気が複数の共振周波数を含んで共振する。このため、遮音構造体1に入射される音波のうち、複数の共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0158】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0159】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について、図38を参照して説明する。本実施形態では、渦巻部50の内径を変化させる変化部として凹凸部71が複数の溝部72に置き換えられている点が第8実施形態と相違している。これ以外は、第8実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第8実施形態と異なる部分について主に説明し、第8実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0160】
図38に示すように、共振部30は、渦巻部50の渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を変化させる溝部72を複数有する。溝部72は、渦巻部50における終端側の端部に複数設けられている。具体的に、複数の溝部72は、渦巻形状に沿う方向において、所定の間隔を空けて並んで形成されている。溝部72は、渦巻部50の共振面53に対して窪んで形成されている。複数の溝部72は、それぞれの溝の深さと幅とが適宜設定されており、溝の深さと幅とがそれぞれ等しい溝部72および溝の深さと幅とがそれぞれ互いに異なる溝部72を含む。また、複数の溝部72の深さおよび幅は、それぞれ遮音部10に入射される音波の波長に対して充分に大きくなっている。溝部72の形状は、円柱形状、直方体形状などを採用することができる。
【0161】
これにより、渦巻部50は、渦巻形状に沿う方向において、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が溝部72が形成されている部位と溝部72が形成されていない部位とで変化する。換言すれば、渦巻部50は、溝部72が形成されている部位の開口面積が溝部72が形成されていない部位の開口面積に比較して大きくなっている。本実施形態では、溝部72が、渦巻部50の内径を変化させる変化部として機能する。
【0162】
このように渦巻部50に溝部72が形成される場合の遮音部10の作動について説明する。溝部72を有する遮音部10に対して音波が入射されると、この音波がネック部40を介して渦巻部50の内部に伝搬される。そして、渦巻部50の内部に伝搬される音波は、渦巻部50に設けられた複数の溝部72それぞれに入り込み、これら複数の溝部72で反射する。
【0163】
ここで、溝部72は、渦巻形状に沿う方向において、所定の間隔を空けて並んで複数形成されている。このため、第1端部51から複数の溝部72それぞれまでの距離が、各溝部72の位置に応じて変化する。したがって、共振部30の内部の空気は、各溝部72で反射する音波に応じて複数の共振周波数を含んで共振する。このため、遮音構造体1に入射される音波のうち、複数の共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0164】
なお、複数の溝部72それぞれの深さおよび幅は、遮音部10で必要な遮音性能を得るための特定周波数の帯域に応じて適宜設定される。
【0165】
その他の構成は、第8実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第8実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第8実施形態と同様に得ることができる。
【0166】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態について、図39を参照して説明する。本実施形態では、渦巻部50の内径を変化させる変化部として凹凸部71が複数の突出部73に置き換えられている点が第8実施形態と相違している。これ以外は、第8実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第8実施形態と異なる部分について主に説明し、第8実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0167】
図39に示すように、共振部30は、渦巻部50の渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積を変化させる突出部73を複数有する。突出部73は、渦巻部50における終端側の端部に複数設けられている。具体的に、複数の突出部73は、渦巻形状に沿う方向において、所定の間隔を空けて並んで形成されている。突出部73は、渦巻部50の共振面53から突出して形成されている。複数の突出部73は、それぞれの高さと幅とが適宜設定されており、高さと幅とがそれぞれ等しい突出部73および高さと幅とがそれぞれ互いに異なる突出部73を含む。また、複数の突出部73の高さおよび幅は、それぞれ遮音部10に入射される音波の波長に対して充分に大きくなっている。突出部73の形状は、円柱形状、直方体形状などを採用することができる。
【0168】
これにより、渦巻部50は、渦巻形状に沿う方向において、渦巻形状に沿う方向に直交する開口面積が突出部73が形成されている部位と突出部73が形成されていない部位とで変化する。換言すれば、渦巻部50は、突出部73が形成されている部位の開口面積が突出部73が形成されていない部位の開口面積に比較して小さくなっている。本実施形態では、突出部73が、渦巻部50の内径を変化させる変化部として機能する。
【0169】
このように渦巻部50に突出部73が形成される場合の遮音部10の作動について説明する。突出部73を有する遮音部10に対して音波が入射されると、この音波がネック部40を介して渦巻部50の内部に伝搬される。そして、渦巻部50の内部に伝搬される音波は、渦巻部50に設けられた複数の突出部73で反射する。
【0170】
ここで、突出部73は、渦巻形状に沿う方向において、所定の間隔を空けて並んで複数形成されている。このため、第1端部51から複数の突出部73それぞれまでの距離が、各突出部73の位置に応じて変化する。したがって、共振部30の内部の空気は、各突出部73で反射する音波に応じて複数の共振周波数を含んで共振する。このため、遮音構造体1に入射される音波のうち、複数の共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0171】
なお、複数の突出部73それぞれの高さおよび幅は、遮音部10で必要な遮音性能を得るための特定周波数の帯域に応じて適宜設定される。
【0172】
その他の構成は、第8実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第8実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第8実施形態と同様に得ることができる。
【0173】
(第10実施形態の変形例)
上述の第10実施形態では、渦巻部50に複数の突出部73が設けられている例について説明したが、これに限定されない。
【0174】
例えば、渦巻部50は、突出部73に加えて、さらに、第9実施形態で説明した溝部72が設けられている構成であってもよい。
【0175】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態について、図40図43を参照して説明する。本実施形態では、渦巻部50の終端側の端部が開口しており、遮音部10が終端側の端部の開口を閉塞する閉塞部80を備えている点が第1実施形態と相違している。これ以外は、第1実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0176】
図40および図41に示すように、本実施形態の渦巻部50は、ネック部40の連通部42に連通する第1端部51側とは反対側である第2端部52が、遮音板材20における第1方向D1の他方側の第2板面22において開口している。渦巻部50は、第2端部52が第1方向D1に沿って遮音板材20の第2板面22まで延伸しており、第2板面22において遮音板材20の外部へ連通する渦巻開口部45を有する。本実施形態の渦巻開口部45は、屈曲開口部として機能する。
【0177】
そして、遮音部10は、渦巻開口部45を閉塞する閉塞部80を備える。閉塞部80は、図41に示すように、渦巻部50に挿入される挿入部81と、当該挿入部81に連通する支持部82とを有する。
【0178】
挿入部81は、円柱形状であって、外径が渦巻開口部45の内径に比較して僅かに小さく形成されており、渦巻開口部45から渦巻部50の内部へ挿入可能に形成されている。支持部82は、外径が渦巻開口部45の内径に比較して充分に大きく形成されており、渦巻開口部45から渦巻部50の内部へ挿入不可能に形成されている。渦巻部50は、渦巻開口部45から共振空間S内である渦巻部50の内部へ挿入部81が挿入されることで、渦巻部50の第2端部52側が閉塞される。そして、渦巻部50の第2端部52側が閉塞されることによって、渦巻部50における渦巻形状に沿う方向の長さである渦巻長が規定され、そしてこれにより渦巻部50によって形成される空間の体積である渦巻体積が規定される。
【0179】
ここで、円柱形状の挿入部81における軸方向の大きさを挿入長LSとする。本実施形態の遮音部10は、図41および図42に示すように、挿入長LSの大きさが互いに異なる第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bを備える。図41および図42に示すように、第1閉塞部80aに比較して第2閉塞部80bは、挿入長LSが大きく形成されている。
【0180】
このため、渦巻部50は、第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bのうち、挿入されるどちらかによって渦巻長が変化し、これに伴い、渦巻体積も変化する。具体的に、渦巻長は、渦巻部50に第1閉塞部80aが挿入される場合、第2閉塞部80bが挿入される場合に比較して渦巻長が大きくなり、渦巻体積も大きくなる。これに対して、渦巻長は、渦巻部50に第2閉塞部80bが挿入される場合、第1閉塞部80aが挿入される場合に比較して渦巻長が小さくなり、渦巻体積も小さくなる。本実施形態の第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bは、渦巻体積を調整する屈曲調整部として機能する。
【0181】
続いて、このように渦巻部50が第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bを備える本実施形態の遮音部10の作動について説明する。第1閉塞部80aまたは第2閉塞部80bによって渦巻部50の第2端部52側が閉塞される遮音部10に対して音波が入射されると、この音波がネック部40を介して渦巻部50の内部に伝搬される。そして、渦巻部50の内部に伝搬される音波は、第1閉塞部80aまたは第2閉塞部80bの挿入部81で反射する。
【0182】
ここで、挿入部81で反射する音波は、挿入部81の位置に応じて反射する位置が変化する。例えば、第1閉塞部80aが渦巻部50に挿入されると、挿入部81で反射する音波は、第2閉塞部80bが挿入される場合に比較して第1端部51から遠い位置で反射する。これに対して、第2閉塞部80bが渦巻部50に挿入されると、挿入部81で反射する音波は、第1閉塞部80aが挿入される場合に比較して第1端部51から近い位置で反射する。このため、共振部30の内部の空気は、渦巻部50に挿入される閉塞部80に応じて互いに異なる2つの共振周波数で共振する。
【0183】
したがって、遮音構造体1に入射される音波のうち、2つの共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0184】
このように構成される本実施形態の遮音部10の遮音性能を図43に示す。図43に示すように、本実施形態の遮音部10は、互いに異なる2つの周波数帯域に対して突出した遮音性能を有する。具体的に、遮音部10は、第1閉塞部80aが挿入されると、遮音性能を発揮する2つの周波数帯域のうちの低い側の周波数帯域の遮音性能を発揮する。そして、遮音部10は、第2閉塞部80bが挿入されると、遮音性能を発揮する2つの周波数のうちの高い側の周波数帯域の遮音性能を発揮する。
【0185】
なお、図43に示す実線は、渦巻部50に第1閉塞部80aが挿入された場合の遮音部10の透過損失を示し、破線は、渦巻部50に第2閉塞部80bが挿入された場合の遮音部10の透過損失を示す。
【0186】
なお、第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bそれぞれの挿入長LSは、遮音部10で必要な遮音性能を得るための特定周波数の帯域に応じて適宜設定される。
【0187】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0188】
また、本実施形態の渦巻部50は、遮音開口部41に連通する第1端部51側とは反対側の第2端部52に渦巻開口部45を閉塞する第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bを有する。渦巻部50は、渦巻体積を第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bによって調整することができる。
【0189】
これによれば、第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bによって渦巻体積を調整することで、共振部30の共振周波数を変化させることができる。このため、遮音構造体1に入射される音波のうち、複数の共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0190】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0191】
(1)上記実施形態では、渦巻部50は、第2端部52に、遮音板材20の外部に連通し、閉塞部80によって閉塞可能な渦巻開口部45を有する。閉塞部80は、挿入長LSの長さが互いに異なる第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bを含み、渦巻開口部45から挿入する閉塞部80に応じて渦巻体積を調整する。
【0192】
これによれば、渦巻開口部45から挿入する閉塞部80を切り替えることで、簡易に渦巻体積を調整することができる。
【0193】
(第11実施形態の変形例)
上述の第11実施形態では、閉塞部80が、挿入長LSの長さが互いに異なる第1閉塞部80aおよび第2閉塞部80bを含む例について説明したが、これに限定されない。
【0194】
例えば、遮音部10は、挿入長LSの長さが異なる3つ以上の閉塞部80を備える構成であってもよい。
【0195】
(第12実施形態)
次に、第12実施形態について、図44図45を参照して説明する。本実施形態では、共振面53にねじ溝74が形成されており、渦巻開口部45に挿入される閉塞部80が当該ねじ溝74に締結されるねじ75に置き換えられている点が第11実施形態と相違している。これ以外は、第11実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第11実施形態と異なる部分について主に説明し、第11実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0196】
図44に示すように、本実施形態の渦巻部50は、共振面53におけるネック部40の連通部42に連通する第1端部51側とは反対側である第2端部52側に、渦巻開口部45に連通するねじ溝74が形成されている。ねじ溝74は、渦巻部50の共振面53において凸凹状に形成されている。本実施形態では、ねじ溝74が、渦巻部50の内径を変化させる変化部として機能する。
【0197】
そして、遮音部10は、当該ねじ溝74に締め付け可能であって、渦巻開口部45を閉塞する1つのねじ75を備える。ねじ75は、図44に示すように、ねじ溝74に締結可能な締付部751と、当該締付部751に連なるねじ頭752とを有する。
【0198】
そして、渦巻部50は、渦巻開口部45から共振空間S内である渦巻部50の内部へ締付部751が挿入されてねじ溝74に締め付けられることで、渦巻部50の第2端部52側が閉塞される。そして、渦巻部50の第2端部52側が閉塞されることによって、渦巻部50における渦巻形状に沿う方向の長さである渦巻長が規定され、そしてこれにより渦巻部50によって形成される空間の体積である渦巻体積が規定される。
【0199】
本実施形態の遮音部10は、図44および図45に示すように、ねじ溝74へのねじ75の締め付け位置に応じて渦巻長が変化し、これに伴い、渦巻体積も変化する。具体的に、渦巻長は、ねじ75の締め付位置が浅いほど渦巻長が大きくなり、渦巻体積も大きくなる。これに対して、渦巻長は、ねじ75の締め付け位置が深いほど渦巻長が小さくなり、渦巻体積も小さくなる。本実施形態のねじ75は、渦巻体積を調整する屈曲調整部として機能する。
【0200】
続いて、このように渦巻部50にねじ溝74が形成されており、当該ねじ溝74に締結可能なねじ75を備える本実施形態の遮音部10の作動について説明する。ねじ75によって渦巻部50の第2端部52側が閉塞される遮音部10に対して音波が入射されると、この音波がネック部40を介して渦巻部50の内部に伝搬される。そして、渦巻部50の内部に伝搬される音波は、ねじ75の締付部751で反射する。
【0201】
ここで、締付部751で反射する音波は、ねじ75の締め付け位置に応じて反射する位置が変化する。このため、共振部30の内部の空気は、渦巻部50に挿入されるねじ75の締め付け位置に応じて共振する際の共振周波数が変化する。したがって、遮音構造体1に入射される音波のうち、ねじ75の締め付け位置に応じて変化する共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。なお、ねじ75の締め付け位置は、遮音部10で必要な遮音性能を得るための特定周波数の帯域に応じて適宜設定される。
【0202】
また、ねじ75の締め付け位置に応じて共振部30の共振周波数を調整することができるため、第11実施形態で示した閉塞部80を切り替える構成に比較して、容易に共振部30の共振周波数を調整することができる。
【0203】
その他の構成は、第11実施形態と同様である。本実施形態の遮音部10は、第11実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第11実施形態と同様に得ることができる。
【0204】
(第13実施形態)
次に、第13実施形態について、図46図47を参照して説明する。本実施形態では、挿入するねじ75を切り替えることで渦巻体積を調整する点が第12実施形態と相違している。これ以外は、第12実施形態と同様である。このため、本実施形態では、第12実施形態と異なる部分について主に説明し、第12実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0205】
図46および図47に示すように、本実施形態の遮音部10は、締付部751の長さが互いに異なる2つのねじ75を備える。そして、遮音部10は、ねじ溝74に締結するねじ75を締付部751の長さが異なるねじ75によって切り替えることで遮音開口部41から締付部751までの距離を調整し、渦巻体積を調整可能に構成されている。本実施形態のねじ75は、渦巻体積を調整する屈曲調整部として機能する。
【0206】
これによれば、遮音開口部41から締付部751までの距離をねじ75を切り替えることによって調整することで、渦巻体積を変化させて共振部30の共振周波数を変化させることができる。このため、遮音構造体1に入射される音波のうち、複数の共振周波数付近の周波数帯域の音波に対する遮音性能を得ることができる。
【0207】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0208】
上述の実施形態では、共振部30の一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が円形状または矩形状に形成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0209】
共振部30の一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状は限定されるものでなく角丸長方形状、長円形状、多角形状など、適宜採用することができる。
【0210】
上述の実施形態では、遮音開口部41および渦巻開口部45が遮音板材20における第1方向D1の一方側または他方側の板面に形成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0211】
例えば、遮音開口部41および渦巻開口部45は、遮音板材20における第2方向D2または第3方向D3における側面に形成されていてもよい。
【0212】
上述の実施形態では、共振空間S内に空気が充填される例について説明したが、これに限定されない。
【0213】
例えば、共振空間S内には、ガス等、空気とは異なる気体が充填されていてもよいし、液体が充填されていてもよい。
【0214】
上述の実施形態では、共振部30における渦巻部50、第1渦巻部50a、第2渦巻部50b、一方側渦巻部55、他方側渦巻部56が渦巻形状に形成されている例について説明したが、これに限定されない。共振部30におけるヘルムホルツ共鳴を発生させるための空間の形状は、屈曲する形状であれば、渦巻形状に限定されるものでなく、円形状、多角形状、U字形状など、適宜採用することができる。
【0215】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0216】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0217】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0218】
(本開示の観点)
上記した本開示については、例えば以下に示す観点として把握することができる。
【0219】
[第1の観点]
遮音部であって、
外殻を形成する板状の遮音板材(20)と、
前記遮音板材の内部に形成され、一方側の端部に前記遮音板材の外部に連通する遮音開口部(41)を有する中空管状の共振部(30、30a、30b)と、を備え、
前記共振部は、前記遮音開口部に連通する共振空間(S)を形成するとともに、屈曲して形成される屈曲部(50、50a、50b、55、56)を有する遮音部。
【0220】
[第2の観点]
前記共振部は、前記共振空間内に空気が充填されている第1の観点に記載の遮音部。
【0221】
[第3の観点]
前記共振部は、前記一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が円形状に形成されている第1または第2の観点に記載の遮音部。
【0222】
[第4の観点]
前記共振部は、前記一方側の端部から他方側の端部に向かって延びる方向に直交する断面形状が矩形状に形成されている第1または第2の観点に記載の遮音部。
【0223】
[第5の観点]
前記屈曲部は、渦巻形状に形成されている第1ないし第4の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【0224】
[第6の観点]
前記共振部は、複数備えられており、
前記屈曲部は、複数の前記共振部それぞれに形成されている第1ないし第5の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【0225】
[第7の観点]
複数の前記屈曲部は、互いの前記共振空間の体積が異なっている第6の観点に記載の遮音部。
【0226】
[第8の観点]
前記遮音板材の板厚方向を第1方向としたとき、
複数の前記屈曲部は、前記第1方向に所定の間隔を空けて並んで設けられている第6または第7の観点に記載の遮音部。
【0227】
[第9の観点]
前記遮音板材の板厚方向を第1方向としたとき、
複数の前記屈曲部は、前記第1方向において重なって設けられている第6または第7の観点に記載の遮音部。
【0228】
[第10の観点]
複数の前記屈曲部は、前記第1方向に直交する形状が、所定の基準点を中心に点対称となっており、互いの隙間に配置されている第9の観点に記載の遮音部。
【0229】
[第11の観点]
前記屈曲部は、前記共振空間を囲み、管状に延びる共振面(53)を有し、
前記共振面には、前記屈曲部の内径を変化させる変化部(54、551、552、561、562、71、72、73、74)を有する第1の観点に記載の遮音部。
【0230】
[第12の観点]
前記変化部は、前記内径を階段状に変化させる第11の観点に記載の遮音部。
【0231】
[第13の観点]
前記変化部は、凹凸形状に形成されている部位を含む第11または第12の観点に記載の遮音部。
【0232】
[第14の観点]
前記変化部は、前記共振面に対して窪んで形成される部位を含む第11ないし第13の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【0233】
[第15の観点]
前記変化部は、前記共振面から突出して形成される部位を含む第11ないし第14の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【0234】
[第16の観点]
前記屈曲部は、前記屈曲部に形成される空間の体積を調整する屈曲調整部(75、80)を有する第11ないし第15の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【0235】
[第17の観点]
前記屈曲部は、前記遮音開口部に連通する側とは反対側に、前記遮音板材の外部に連通する屈曲開口部(45)を有し、
前記屈曲調整部は、前記屈曲開口部に挿入することで前記屈曲開口部を閉塞する挿入部(751、81)を有するとともに、挿入する方向の前記挿入部の長さが互いに異なる複数の閉塞部(75、80)によって構成されており、前記屈曲開口部から挿入される前記閉塞部に応じて前記屈曲部に形成される空間の体積を調整する第16の観点に記載の遮音部。
【0236】
[第18の観点]
前記屈曲部は、前記遮音開口部に連通する側とは反対側に、前記遮音板材の外部に連通する屈曲開口部(45)を有するとともに、前記共振面における前記屈曲開口部に連通する部位にねじ溝(74)が形成されており、
前記屈曲調整部は、前記ねじ溝に締め付け可能な1つのねじ(75)によって構成されており、前記ねじ溝への前記ねじの締め付け位置に応じて前記屈曲部に形成される空間の体積を調整する第16の観点に記載の遮音部。
【0237】
[第19の観点]
前記共振空間内に設けられており、前記共振空間内に伝搬される音波のエネルギを減少させるエネルギ減少部(60、65)を備える第1ないし第18の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【0238】
[第20の観点]
前記エネルギ減少部は、前記共振空間内に伝搬される音波を吸収する吸音材(60)を含む第19の観点に記載の遮音部。
【0239】
[第21の観点]
前記エネルギ減少部は、前記共振空間内に伝搬される音波によって粘弾性変形する粘弾性体(65)を含む第19の観点に記載の遮音部。
【0240】
[第22の観点]
該遮音部は、車両に搭載されるスピーカ(SP)の筐体(S10)に取り付けられている第1ないし第21の観点のいずれか1つに記載の遮音部。
【符号の説明】
【0241】
20 遮音板材
30 共振部
41 遮音開口部
50、50a、50b、55、56 屈曲部
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