(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008062
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】スパー型浮体、及びスパー型浮体立起こし方法
(51)【国際特許分類】
B63B 35/34 20060101AFI20250109BHJP
B63B 75/00 20200101ALI20250109BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20250109BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B63B35/34 A
B63B75/00
B63B35/00 T
B63B35/44 Z
B63B35/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109913
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】十川 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】西郡 一雅
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コストかつ容易に立起こすことができるスパー型浮体と、そのスパー型浮体を立起こす方法を提供する。
【解決手段】柱状本体110に通水管120、開閉手段130を備え、通水管が海水側となるように配置された柱状本体は、取水口120Eが海水内に位置するように傾斜した「横倒し状態」で海面に浮き、横倒し状態で開閉手段を開放すると、取水口から流入した海水が通水管を通じて排水口120Dから柱状本体の内部に注水され、柱状本体の底部が海中に沈むように、かつ柱軸が鉛直に近づくように傾斜しながら、柱状本体が立起こされていく。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式洋上風力発電施設を構成するスパー型浮体であって、
底部に底部重錘が設置された中空の柱状本体と、
前記柱状本体の柱軸に対して平行又は略平行となるように配置され、該柱状本体の内面に取り付けられる通水管と、
前記通水管への海水の流入を制御する開閉手段と、を備え、
前記通水管の底部側に取水口が設けられるとともに、該通水管の頂部側に排水口が設けられ、
前記開閉手段を開放すると、前記取水口からの海水の流入が可能となり、
前記開閉手段を閉鎖すると、前記取水口からの海水の流入が規制され、
前記開閉手段が閉鎖され、かつ内部に海水が注水される前であって前記通水管が海水側となるように配置された前記柱状本体は、前記底部重錘によって前記取水口が海水内に位置するように傾斜した横倒し状態で海面に浮き、
前記横倒し状態で前記開閉手段を開放すると、前記取水口から流入した海水が前記通水管を通じて前記排水口から前記柱状本体の内部に注水され、該柱状本体の底部が海中に沈むように、かつ前記柱軸が鉛直に近づくように傾斜しながら、該柱状本体が立起こされる、
ことを特徴とするスパー型浮体。
【請求項2】
前記柱状本体の周方向のうちの一部であって前記通水管の軸線上に配置され、該柱状本体に取り付けられる上部重錘を、さらに備え、
前記上部重錘は、前記該柱状本体を断面視したとき重心位置が前記通水管と重なるように配置され、
前記開閉手段が閉鎖され、かつ内部に海水が注水される前の前記柱状本体は、前記上部重錘によって前記通水管が海水側となる前記横倒し状態とされ、
海水が前記柱状本体の内部に注水されて前記排水口が海面高さになると、海水の注水が停止することによって該柱状本体は立起しが中断した中間状態とされ、
前記中間状態における前記柱状本体は、前記上部重錘の方に寄るように傾斜する、
ことを特徴とする請求項1記載のスパー型浮体。
【請求項3】
前記上部重錘の一部又は全部が、前記柱状本体から取り外し可能であり、
前記中間状態とされた前記柱状本体から前記上部重錘を取り外すと、前記柱軸が鉛直又は略鉛直となるように該柱状本体が配置される、
ことを特徴とする請求項2記載のスパー型浮体。
【請求項4】
前記柱状本体に取り付けられる調整重錘を、さらに備え、
前記中間状態とされた前記柱状本体に前記調整重錘を取り付けると、前記柱軸が鉛直又は略鉛直となるように該柱状本体が配置される、
ことを特徴とする請求項2記載のスパー型浮体。
【請求項5】
前記柱状本体に取り付けられ、前記通水管を収容する収容管を、さらに備え、
前記収容管のうち頂部側に開口部が設けられ、
前記開口部には、該開口部を開放するとともに閉鎖する開閉蓋が設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載のスパー型浮体。
【請求項6】
請求項1記載の前記スパー型浮体を、海水で直立状態となるように立起こす方法であって、
前記柱状本体を前記横倒し状態としたうえで前記開閉手段を開放し、前記取水口から海水を流入させるとともに、前記通水管を通じて前記排水口から該柱状本体の内部に海水を注水する管内注水工程を、備え、
前記管内注水工程で海水を前記柱状本体に注水することによって、該柱状本体の底部が海中に沈むように、かつ前記柱軸が鉛直に近づくように傾斜しながら、該柱状本体が立起こされる、
ことを特徴とするスパー型浮体立起こし方法。
【請求項7】
前記スパー型浮体は、上部重錘を、さらに有し、
前記上部重錘は、前記柱状本体の周方向のうちの一部であって前記通水管の軸線上に配置されて該柱状本体に取り付けられるとともに、該柱状本体から取り外し可能であり、
前記上部重錘によって前記通水管が海水側となる前記横倒し状態とされた前記柱状本体を含む前記スパー型浮体を、目的地まで海上輸送する輸送工程と、
前記柱状本体から前記上部重錘を取り外す重錘除去工程と、をさらに備え、
前記管内注水工程では、前記目的地まで輸送された前記スパー型浮体の前記柱状本体に対して海水を注水し、海水が該柱状本体の内部に注水されて前記排水口が海面高さになると、海水の注水が停止することによって該柱状本体の立起しが中断した中間状態とされ、
前記重錘除去工程では、前記中間状態とされた前記柱状本体から前記上部重錘を取り外すことによって、前記柱軸が鉛直又は略鉛直となるように該柱状本体を配置する、
ことを特徴とする請求項6記載のスパー型浮体立起こし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、洋上風力発電施設に関するものであり、より具体的には、重力を利用して内部に海水を自然注水することができるスパー型浮体と、スパー型浮体を立起こす方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国における電力消費量は、2008年の世界的金融危機の影響により一旦は減少に転じたものの、オイルショックがあった1973年以降継続的に増加しており、特に1973年度から2007年度の間には2.6倍にまで拡大している。その背景には、生活水準の向上に伴うエアコンや電気カーペットといったいわゆる家電製品の普及、あるいはオフィスビルの増加に伴うOA(Office Automation)機器や通信機器の普及などが挙げられる。
【0003】
これまで、このような莫大な量の電力需要を主に支えてきたのは、石油や石炭、天然ガスといったいわゆる化石燃料による発電であった。ところが近年、化石燃料の枯渇化問題や、地球温暖化に伴う環境問題が注目されるようになり、これに応じて発電方式も次第に変化してきた。その結果、電気事業連合会の統計によれば、1980年頃には石油による年間発電量が全体の約46%を占めていたのに対し、2010年になるとその割合は9%まで減少している。代わりに増加したのが全体の約25%強(2010年)を占めている原子力発電である。原子力発電は、従来の発電方式に比べ温室効果ガスの削減効果が顕著であるうえ、低コストで電力を提供できることから、我が国の電力需要にも大きく貢献してきた。
【0004】
また、温室効果ガスの排出を抑制することができるという点において、再生可能エネルギーによる発電方式も採用されるようになり、2020年には年間発電量が全体の約12%を占めるようになった(電気事業連合会)。この再生可能エネルギーは、太陽光や風力、地熱、中小水力、木質バイオマスといった文字どおり再生することができるエネルギーであり、温室効果ガスの排出を抑え、また国内で生産できることから、有望な低炭素エネルギーとして期待されている。
【0005】
再生可能エネルギーのうち風力を利用した発電方式は、電気エネルギーの変換効率が高いという特長を備えている。一般に、太陽光発電の変換効率は約20%、木質バイオマス発電は約20%、地熱発電は10~20%とされているのに対して、風力発電は20~40%とされているように、他の発電方法よりも高効率でエネルギーを電気に変換できる。また、太陽光発電とは異なり昼夜問わず発電することができることも風力発電の特長である。このような特長を備えていることもあって、風力発電は既にヨーロッパで主要な発電方法として多用されており、我が国でも「エネルギーミックス」の取り組みにおいて2030年には電源構成のうち1.7%を担うことを目指している。
【0006】
風力発電はその設置場所によって陸上風力発電と洋上風力発電に大別され、このうち陸上風力発電は洋上風力発電に比べ設置が容易であり、したがってそのコストも抑えることができるといった特長を備えている。一方、洋上風力発電は、陸上風力発電が抱える騒音問題が生ずることがなく、また転倒等による被害リスクも回避でき、なにより陸上に比して大きな風力を安定的に得ることができるという特長を備えている。世界第6位の排他的経済水域を持つ我が国は、洋上風力発電にとって適地であり、将来的には再生可能エネルギーの有望な産出地となり得ると考えられる。
【0007】
また洋上風力発電は、その設置場所によって異なる形式が採用され、50m以浅の海域では着床式洋上風力発電が適しており、50m以深の海域では浮体式洋上風力発電が適しているとされている。このうち浮体式洋上風力発電は、海水に浮かべる浮体を利用するものであり、係留索で繋がれた浮体上に発電機構を設置し、この発電機構によって発電する方式である。なお浮体形式には、バージ型、セミサブ型、スパー型、緊張係留型(TLP:Tension Leg Platform)などが挙げられる。このうちスパー型の洋上風力発電施設は、そのスパー型浮体の構造がそれほど複雑でないため製造に係る手間を軽減することができるうえ、スパー型浮体が軽量であるためその材料費も抑えることができ、浮体製造コストの面では有利と考えられている。
【0008】
図10は、スパー型の洋上風力発電施設を模式的に示す側面図である。この図に示すようにスパー型の洋上風力発電施設は、海中に浮かべるスパー型浮体と、その上に設置されるタワーやローター、ナセルなど(以下、これらを総称して「風車部」という。)を含んで構成される。タワーはローターやナセルを支持する構造体であり、さらにスパー型浮体がタワーの基礎として機能している。そしてブレード(羽根)とハブからなるローターによって風を動力に変換し、増速機や発電機、変圧器などを含むナセルによって動力を電気に変換して、電力ケーブル(ダイナミックケーブルと海底ケーブル)を通じて陸域まで送電するわけである。なおスパー型浮体は、カテナリー(懸垂線)形状とされた係留索の自重によって係留されるのが一般的である。
【0009】
スパー型浮体を構成する本体部分は、断面寸法に比して軸(以下、「柱軸」という。)方向寸法が大きい長尺体であって、内部が中空の管状を呈している。そして
図10にも示すように、運用時におけるスパー型浮体はその柱軸方向が略鉛直(鉛直含む)となる状態(以下、「直立状態」という。)とされる。通常、このスパー型浮体はドライドックなど陸域で製作されることから、運用海域(ウィンドファーム海域:WF海域)まで海上輸送する必要があるが、北欧など一部では直立状態のままスパー型浮体を輸送する例はあるものの、陸域周辺の水深が浅い我が国においては柱軸方向が略水平となる状態でスパー型浮体を輸送することとなる。
【0010】
したがって運用状態とするためには、スパー型浮体を略水平な状態から直立状態に回転させる(以下、「立起こす」という。)必要がある。なお、WF海域では相当の風力や波力を受けることが予想されることからスパー型浮体を立起こすことは容易ではなく、あらかじめ選定された静穏域の海上で立起こされることが一般的である。また、風車部はスパー型浮体とは別に製作されて静穏域まで輸送され、立起こしたスパー型浮体に起重機船などを用いて設置される。そして洋上風力発電施設として概ね完成した構造体は、運用状態(つまり、スパー型浮体が直立状態)のままWF海域まで輸送される。
【0011】
従来、スパー型浮体を立起こすにあたっては、特許文献1に示すように大出力のポンプを用いてスパー型浮体の本体部分内にバラスト水(例えば、海水)を注水し、内部に溜まっていくバラスト水の重量を利用して立起こしていた。また特許文献2のように、大出力のポンプに頼ることなく容易かつ低コストでスパー型浮体を立起こす技術についても提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012-201217号公報
【特許文献2】特開2022-014509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図11は、スパー型浮体を立起こすために行っていた従来の手順を示すステップ図である。この図を参照しながら、スパー型浮体を立起こす従来手順について説明する。まず
図11(a)に示すように、ドライドック等で製作されたスパー型浮体を、あらかじめ選定された静穏域の海上まで曳船によって輸送する。目的の静穏域までスパー型浮体を輸送すると、
図11(b)に示すようにポンプを使用して本体部分内に海水を注水していく。なお、スパー型浮体の底部にはコンクリート製等の重錘が設けられていることから、海水注水開始前からスパー型浮体は底部側がやや沈んだ傾斜状態となっている。そのため、海水の注水が進むと
図11(c)に示すようにその傾斜角(水平面とスパー型浮体の柱軸方向との交差角)が大きくなり、最終的には
図11(d)に示すようにスパー型浮体は直立状態となる。そして、
図11(d)の状態からさらに海水注水を進め、計画の吃水が得られるまでスパー型浮体を沈めていく。
【0014】
浮体式洋上風力発電施設を構成するスパー型浮体は、相当程度の径と軸長を有しており、したがって相当量の海水を注水しなければスパー型浮体を計画吃水まで沈めることはできない。そのため短期間で実施しようとする場合、大量の海水を注水するため相当数のポンプを調達することとなる。また
図11(d)からも分かるように、スパー型浮体が直立状態となった直後(計画吃水に至る前)は必要揚程が高くなっており、相当程度の出力を持つポンプを用意しなければならない。
【0015】
このように、ポンプを使用してスパー型浮体の本体部分内に海水を注水する従来技術は、大規模のポンプを数多く用意しなければならない。しかもポンプを搭載するための台船やポンプが動作するための動力設備も大型化し、さらにポンプを制御するため相当数の作業者が必要となる。すなわち、ポンプや台船にかかる費用(損料や燃料代など)や人件費がかさみ、従来の注水施工には相当なコストを要していた。
【0016】
また
図11に示す各工程は、原則として静穏な海象状況で行われるが、当然ながら不安定な海象状況となることもある。その場合、作業を行うことなく単に待機することとなり、結果的に各種機械の損料や人件費がかさみ、この点においても従来の注水施工には相当なコストを要していた。
【0017】
一方、特許文献2に開示される技術は、大規模のポンプを数多く用意する必要がないことから、特許文献1などの技術に比べて大幅に施工コストを抑えることができる。ただし、柱状本体(浮体)の外部に連通管と取水口を設ける必要があり、水平曳航時の損傷を回避するため特別な補強構造が必要となることが考えられる。また、稼働時において連通管に波浪や海流による流体力が作用する結果、柱状本体の動揺性能が劣化するといった問題も考えられる。
【0018】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来に比して低コストかつ容易に立起こすことができるスパー型浮体と、そのスパー型浮体を立起こす方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明は、重力を利用して内部に海水を自然注水する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0020】
本願発明のスパー型浮体は、浮体式洋上風力発電施設を構成するものであって、底部に底部重錘が設置された中空の柱状本体と、通水管、開閉手段を備えたものである。このうち通水管は、その底部側に取水口が設けられるとともに、その頂部側に排水口が設けられ、柱状本体の柱軸に対して略平行(平行を含む)となるように配置されたうえで柱状本体の内面に取り付けられる。また開閉手段は、通水管への海水の流入を制御する手段であり、開閉手段を開放すると取水口からの海水の流入が可能となり、開閉手段を閉鎖すると取水口からの海水の流入が規制される。開閉手段が閉鎖され、かつ内部に海水が注水される前であって通水管が海水側となるように配置された柱状本体は、底部重錘によって取水口が海水内に位置するように傾斜した「横倒し状態」で海面に浮く。そして、この横倒し状態で開閉手段を開放すると、取水口から流入した海水が通水管を通じて排水口から柱状本体の内部に注水される。これにより、柱状本体の底部が海中に沈むように、かつ柱軸が鉛直に近づくように傾斜しながら、柱状本体が立起こされていく。
【0021】
本願発明のスパー型浮体は、柱状本体に取り付けられる上部重錘をさらに備えたものとすることもできる。この上部重錘は、該柱状本体を断面視したとき重心位置が通水管と重なるように配置される。なお、開閉手段が閉鎖され、かつ内部に海水が注水される前の柱状本体は、上部重錘を配置した効果で、通水管が海水側となる横倒し状態とされる。そして、海水が柱状本体の内部に注水されて排水口が海面高さになると、海水の注水が停止し、これに伴って柱状本体は立起しが中断した「中間状態」とされる。なお中間状態とされた柱状本体は、上部重錘の方に寄るように傾斜する。
【0022】
本願発明のスパー型浮体は、上部重錘の一部(あるいは全部)を柱状本体から取り外し可能としたものとすることもできる。この場合、中間状態とされた柱状本体から上部重錘を取り外すと、柱軸が略鉛直(鉛直を含む)となるように柱状本体が配置される。
【0023】
本願発明のスパー型浮体は、柱状本体に取り付けられる調整重錘をさらに備えたものとすることもできる。この場合、中間状態とされた柱状本体に調整重錘を取り付ける、柱軸が略鉛直(鉛直を含む)となるように柱状本体が配置される。
【0024】
本願発明のスパー型浮体は、通水管を収容する収容管をさらに備えたものとすることもできる。この収容管は、柱状本体に取り付けられる。また収容管のうち頂部側には開口部が設けられ、この開口部には開口部を開放するとともに閉鎖する開閉蓋が設けられる。
【0025】
本願発明のスパー型浮体立起こし方法は、本願発明のスパー型浮体を海水で直立状態となるように立起こす方法であって、管内注水工程を備えた方法である。この管内注水工程では、柱状本体を横倒し状態としたうえで開閉手段を開放し、取水口から海水を流入させるとともに、通水管を通じて排水口から柱状本体の内部に海水を注水する。そして管内注水工程で海水を柱状本体に注水することによって、柱状本体の底部が海中に沈むように、かつ柱軸が鉛直に近づくように傾斜しながら、柱状本体が立起こされる。
【0026】
本願発明のスパー型浮体立起こし方法は、輸送工程と重錘除去工程をさらに備えた方法とすることもできる。この輸送工程では、上部重錘によって通水管が海水側となる横倒し状態とされた柱状本体を含むスパー型浮体を、目的地まで海上輸送する。また重錘除去工程では、柱状本体から上部重錘を取り外す。この場合の管内注水工程では、目的地まで輸送されたスパー型浮体の柱状本体に対して海水を注水し、海水が柱状本体の内部に注水されて排水口が海面高さになると、海水の注水が停止し、これに伴って柱状本体の立起しが中断した中間状態とされる。また重錘除去工程では、中間状態とされた柱状本体から上部重錘を取り外すことによって、柱軸が略鉛直(鉛直を含む)となるように柱状本体を配置する。
【発明の効果】
【0027】
本願発明のスパー型浮体、及びスパー型浮体立起こし方法には、次のような効果がある。
(1)大規模ポンプに頼ることなくスパー型浮体を立起こすことができる。その結果、大規模ポンプにかかる費用をはじめ、ポンプ用の台船、その他設備にかかる費用や人件費などを軽減することができ、すなわち注水にかかる施工費を抑えることができる。
(2)暴風時等の悪天候を除けば、海象条件が多少悪くても柱状本体内への注水を行うことができることから、静穏な海象状況となるまで待機する必要がなく、その結果、施工日数を短縮することができる。
(3)柱状本体(浮体)の外部に特段の設備を設ける必要がない。そのため、水平曳航時にするための特別な補強構造が必要となることもなく、また稼働時において柱状本体の動揺性能が劣化するといった問題も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本願発明のスパー型浮体を模式的に示す縦断面図。
【
図2】(a)は縦リブと横リブが設けられた柱状本体を示す斜視図、(b)は縦リブと横リブが設けられた柱状本体を示す横断面図。
【
図3】(a)は通水管が配置された位置における柱状本体を模式的に示す横断面図、(b)は上部重錘が配置された位置における柱状本体を模式的に示す横断面図。
【
図4】バラスト収容体とバラスト排出管、バラストバルブからなる上部重錘を模式的に示す縦断面図。
【
図5】(a)は上部重錘と対向する位置に配置された調整重錘を模式的に示す横断面図、(b)は上部重錘を除く柱状本体の内周全体に配置された調整重錘を模式的に示す横断面図。
【
図6】内部に通水管を収容した収容管を模式的に示す縦断面図。
【
図7】(a)は開閉蓋を設置することによって開口部が封鎖された状態を模式的に示す平面図、(b)は開閉蓋を取り外すことによって開口部が開放された状態を模式的に示す平面図。
【
図8】本願発明のスパー型浮体を立起こす手順を示すステップ図。
【
図9】本願発明のスパー型浮体立起こし方法の主な工程を示すフロー図。
【
図10】スパー形式の洋上風力発電施設を模式的に示す側面図。
【
図11】スパー型浮体を立起こすために行っていた従来の手順を示すステップ図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願発明のスパー型浮体、及びスパー型浮体立起こし方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。なお本願発明のスパー型浮体は、浮体式洋上風力発電施設を構成するものとして利用する場合に特に好適に実施することができる。
【0030】
1.スパー型浮体
はじめに本願発明のスパー型浮体100について図を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明のスパー型浮体立起こし方法は、本願発明のスパー型浮体100を立起こす方法である。したがってまずは本願発明のスパー型浮体100について説明し、その後に本願発明のスパー型浮体立起こし方法について詳しく説明することとする。
【0031】
図1は、本願発明のスパー型浮体100を模式的に示す断面図である。この図に示すように本願発明のスパー型浮体100は、柱状本体110と通水管120、開閉手段130、底部重錘140を含んで構成され、さらに上部重錘150や、後述する調整重錘、収容管などを含んで構成することもできる。以下、スパー型浮体100を構成する主な要素ごとに説明する。
【0032】
(柱状本体)
柱状本体110は、
図1に示すように断面寸法に比して軸方向寸法が卓越した長尺体であって内部は中空とされ、つまり外形は概ね管状を呈している。また柱状本体110は、一端(図では下端)が閉鎖し、他端(図では上端)が開口した、いわゆる有底の開口管である。なお便宜上ここでは、
図1に示すように柱状本体110の中心軸のことを「柱軸」ということとする。
【0033】
柱状本体110の底部には底部重錘140が設置される。この底部重錘140は単位体積重量が大きい材料からなるものであり、例えばコンクリート製や鋼製のものとするとよい。底部重錘140が設置された区間は、柱状本体110の他の区間(底部重錘140が設置されない区間)に比べて、柱軸方向における単位長さ当たりの重量が大きくなる。なお柱状本体110は、断面が円形の円柱状とすることもできるし、断面が多角形上の角柱状とすることもできる。
【0034】
また柱状本体110の内側には、
図2に示すように補強用の縦リブ111や横リブ112を設けることもできる。
図2(a)は縦リブ111や横リブ112が設けられた柱状本体110を示す斜視図であり、
図2(b)はその横断面図である。なお
図2(a)では、内部を示すため便宜上一部を切欠いて描いている。この図に示すように、柱軸方向に伸びる縦リブ111は周方向に間隔を設けて配置され、一方、環状(リング状)の横リブ112は柱軸方向に間隔を設けて配置される。もちろん、縦リブ111や横リブ112の材質や形状、寸法、配置間隔などは、設計計算に基づいて決定するとよい。
【0035】
(通水管)
通水管120は、中空の管状部材であり、柱軸に対して略平行(平行を含む)となるように配置されたうえで、柱状本体110の内面に取り付けられる。また通水管120の一端(
図1では下端)には取水口120Eが設けられ、その他端(
図1では上端)には排水口120Dが設けられる。ただし、取水口120Eが底部側(つまり、底部重錘140側)とされ、排水口120Dが頂部側とされる。この取水口120Eは海水を取り込むためのものであり、したがって取水口120Eが設けられる位置では柱状本体110が開口している。取水口120Eから流入した海水は、通水管120を流過し、排水口120Dから柱状本体110内に排出される。
【0036】
柱状本体110の内側に縦リブ111を設ける場合、
図2に示すように縦リブ111と縦リブ111の間の「隙間」に通水管120を取り付けることもできる。なお、当然ながら縦リブ111の配置間隔(例えば、700mm)よりも小さい外径の通水管120が採用されることとなる。この場合、通水管120の支持構造として縦リブ111を利用することができるため、通水管120を容易に取り付けることができるうえ、支持するための構造を簡素化することができるといった利点がある。また柱状本体110には、1の通水管120のみを取り付けることもできるし、2以上の通水管120を取り付けることもできる。2以上の通水管120を備えることによって、海水の流入速度を上げたり、主要な通水管120に不測の事態が生じたときに他の通水管120に切り替えたりすることができるわけである。そのため、2以上の通水管120を備える場合、それぞれ接近した位置に取り付けるとよい。例えば
図2(b)では、隣接する隙間に3つの通水管120が配置されている。
【0037】
(開閉手段)
開閉手段130は、通水管120への海水の流入を制御するものであり、例えばバルブを利用することができる。この開閉手段130を開放(開栓)すると取水口120Eからの海水の流入が可能となり、開閉手段130を閉鎖(閉栓)すると取水口120Eからの海水の流入が規制される。なお開閉手段130は、開閉に係る遠隔操作が可能なものを採用するとよい。例えば陸域や船上、あるいはスパー型浮体100外部に設けられるワーキングプラットフォームなど、スパー型浮体100から離れた場所にいるオペレータによって、開閉手段130の開放や閉鎖の操作を行うわけである。
【0038】
開閉手段130は、1箇所のみに設けることもできるし、2以上の箇所に設けることもできる。2以上の開閉手段130を設けることによって、操作不具合といった不測の事態に備えることができるわけである。2以上の箇所に開閉手段130を設ける場合、通水管120の軸(以下、「管軸」という。)方向に沿って並ぶように配置するとよい。
【0039】
(上部重錘)
上部重錘150は、横倒しにされたスパー型浮体100を海水に浮かべたとき、
図3(a)に示すように通水管120が海水側(つまり下側)となるように配置するためのものである。そのため上部重錘150は、柱状本体110を断面視したとき、その重心位置が通水管120の位置と重なるように配置される。より具体的には、柱状本体110の断面(例えば円形)を時計に見立てたとすると、通水管120が「6時」の位置にあるとき、その重心位置もやはり「6時」の位置となるように上部重錘150を配置するわけである。例えば
図3(b)に示す上部重錘150は、柱状本体110の断面のうち一部分に配置され、しかも通水管120の管軸上となるように配置されている。もちろん、重心位置が通水管120の位置と重るように配置できれば、通水管120を基準に左右対称となるように2つの上部重錘150を配置するなど、種々の配置を採用することができる。なお、上部重錘150の重心位置を通水管120の位置と重ねることによって通水管120を海水側とする機能のことを、便宜上ここでは「偏心機能」ということとする。
【0040】
一方、柱状本体110の柱軸方向に関しては、任意の位置に上部重錘150を配置することができる。ただし、スパー型浮体100(特に柱状本体110)を横倒しにするためには、底部重錘140と上部重錘150との離隔が大きいほど望ましく、例えば
図1では通水管120よりも頂部側に上部重錘150を配置している。
【0041】
また、上部重錘150のうち一部(あるいは全部)が柱状本体110から取り外し可能となるように、上部重錘150を取り付けることもできる。上部重錘150の一部(あるいは全部)を取り外すにあたっては、開閉手段130と同様、陸域や船上などスパー型浮体100から離れたオペレータによる遠隔操作が可能な構成にするとよい。例えば
図4では、バラスト収容体151とバラスト排出管152、バラストバルブ153からなる上部重錘150を示している。この例では、遠隔操作によりバラストバルブ153を開放(開栓)することによって、バラスト収容体151に収容された海水などのバラストBLを、バラスト排出管152を通じて排出し、すなわち上部重錘150の一部(この場合、バラストBL)を取り外す構成としている。このように、柱状本体110から上部重錘150の一部(あるいは全部)を取り外すことによって、上部重錘150による偏心機能が解消される。
【0042】
図4に示すバラスト排出管152やバラストバルブ153に代えて、遠隔操作が可能な「開閉扉」をバラスト収容体151に設けた構成とすることもできる。すなわち、オペレータによる遠隔操作により開閉扉を開放(開扉)することによって、バラスト収容体151に収容されたバラストBLを排出するわけである。この場合、バラストBLとしては海水のほか、コンクリート製や鋼製の重錘などを利用することができる。
【0043】
上部重錘150による偏心機能を解消するためには、上部重錘150の一部(あるいは全部)を取り外す構成に代えて、
図5に示す調整重錘160を利用することもできる。この調整重錘160を追加配置することによって、上部重錘150による偏心機能を解消するわけである。例えば、
図5(a)では上部重錘150と対向する位置(図では上方)に調整重錘160が配置され、
図5(b)では柱状本体110の内周全体(ただし、上部重錘150を除く)に調整重錘160が配置されており、いずれも柱状本体110の断面における重心位置が概ね中心とされ、すなわち上部重錘150による偏心機能が解消されている。
【0044】
調整重錘160を追加配置するにあたっては、やはりオペレータによる遠隔操作が可能な構成にするとよい。例えば、海水を収容する隔室が設けられた構成とし、遠隔操作により隔室内に海水を注水することによって調整重錘160を追加配置することができる。あるいは、上部重錘150による偏心機能が確保される位置にあらかじめ調整重錘160を配置しておき、偏心機能が解消される配置となるように遠隔操作で調整重錘160を移動させる構成とすることもできる。
【0045】
(収容管)
通水管120は、取水口120Eで海水と接し、排水口120Dで柱状本体110内に連通しており、スパー型浮体100を立起こすときに利用される。一方、スパー型浮体100が稼働するとき、つまり柱状本体110が直立状態とされたとき、後述する
図8(e)に示すように排水口120Dが水面下に位置することが考えられる。その場合、柱状本体110内にさらに海水が注水されることとなり、その結果、柱状本体110は計画吃水を超えて沈水するおそれがある。したがって、スパー型浮体100が稼働するときは、排水口120Dから海水が注水されることを防ぐ必要がある。
【0046】
収容管170は、柱状本体110の内面に取り付けられ、スパー型浮体100の稼働時において、排水口120Dから海水が注水されることを防ぐ機能を有するものである。具体的には、
図6に示すように収容管170の内部に通水管120を収容した2重管構造とされる。ただし収容管170は、外部からの海水の浸入を防ぐ水密構造である。これにより、スパー型浮体100の稼働時では、海水が排水口120Dから通水管120に流入することを回避することができる。なお、
図2に示すように柱状本体110の内側に縦リブ111を設ける場合、隣接する縦リブ111と縦リブ111を利用して収容管170を形成することもできる。つまり、隣接する2つの縦リブ111に板状材を取り付けることで「隙間」を内側から封鎖し、さらに底面と頂面を板状材で封鎖することによって、水密構造の収容管170を形成するわけである。
【0047】
一方、スパー型浮体100を立起こすときは、取水口120Eから通水管120に流入した海水を、排水口120Dを通じて柱状本体110内に排出する必要がある。そのため、
図7に示すように収容管170の頂部側には開口部172が設けられ、さらにこの開口部172を水密封鎖する開閉蓋171が設けられている。スパー型浮体100を立起こすときは、
図7(b)に示すように開閉蓋171を取り外すことによって開口部172を開放して排水口120Dと柱状本体110内とを連通させ、スパー型浮体100の稼働時には、
図7(a)に示すように開閉蓋171を設置することによって開口部172を封鎖して収容管170内を水密構造にするわけである。
【0048】
(使用例)
以下、
図8を参照しながら本願発明のスパー型浮体100を立起こす手順について説明する。
図8は、本願発明のスパー型浮体100を立起こす手順を示すステップ図である。この図に示すように、まず横倒しとされた状態のスパー型浮体100をあらかじめ選定された静穏域まで曳航する。ただし、このとき柱状本体110内にはまだ海水が注水されていない空洞状態であって、開閉手段130は閉鎖(閉栓)された状態、すなわち取水口120Eから海水が流入しない状態とされている。このように開閉手段130が閉鎖され、しかも内部が空洞状態とされた柱状本体110は、
図8(a)に示すように、底部重錘140の効果で取水口120Eが海水内に位置するように傾斜し、さらに上部重錘150による偏心機能の効果で通水管120が海水側(つまり下側)となるように配置されている。便宜上ここでは、
図8(a)に示す状態のことを「横倒し状態」ということとする。
【0049】
柱状本体110が横倒し状態とされたスパー型浮体100を静穏域まで曳航すると、開閉手段130を開放(開栓)する。また収容管170を備えているケースでは、開閉蓋171を取り外すことによって開口部172を開放しておく。これにより取水口120Eから海水が自然流入されるようになり、さらに通水管120を流過した海水は排水口120Dから柱状本体110内に注水されていく。注水により内部に海水が溜まっていくと柱状本体110は、
図8(b)に示すように、自重によって柱状本体110の底部が海中に沈むように、しかも柱軸が鉛直に近づくように(図では反時計回りに)回転(傾斜)していく。
【0050】
海水の注水が進み、
図8(c)に示すように排水口120Dが海面高さになると、取水口120Eからの海水の流入が停止する。これに伴って柱状本体110の回転(立起し)も中断し、柱状本体110は上部重錘150側(図では右側)に寄るように傾斜した状態(以下、「中間状態」という。)とされる。柱状本体110が中間状態とされると、上部重錘150の一部(あるいは全部)を取り外す。これにより柱状本体110は、
図8(d)に示すように、上部重錘150による偏心機能が解消された効果により柱軸が略鉛直(鉛直を含む)となる状態(つまり、直立状態)とされる。なお、上部重錘150を取り外す処理に代えて、調整重錘160を追加配置することもできる。
【0051】
柱状本体110が直立状態とされると、開閉手段130を閉鎖(閉栓)したうえで、計画吃水となるまで柱状本体110内に砕石や海水などのバラストを投入していく。このとき、柱状本体110のうち上端の開口部から投入することができる。なお収容管170を備えているケースでは、バラストを投入する前に開閉蓋171を設置することによって開口部172を封鎖しておく。直立状態の柱状本体110が計画吃水となるまで沈水すると、
図8(e)に示すように、風車部を柱状本体110に取り付けてスパー型浮体100を構築する。
【0052】
2.スパー型浮体立起こし方法
続いて本願発明のスパー型浮体立起こし方法について
図9を参照しながら詳しく説明する。なお、本願発明のスパー型浮体立起こし方法は、ここまで説明したスパー型浮体100を立起こす方法であり、したがってスパー型浮体100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明のスパー型浮体立起こし方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.スパー型浮体」で説明したものと同様である。
【0053】
図9は、本願発明のスパー型浮体立起こし方法の主な工程を示すフロー図である。この図に示すように、まずドライドック等でスパー型浮体100を製作する(
図9のStep201)。そして潮位や潮流など環境の良い時期を狙って、柱状本体110が横倒し状態とされたスパー型浮体100を曳船などによってあらかじめ選定された静穏域まで曳航し(
図9のStep202)、その場でスパー型浮体100を仮係留する(
図9のStep203)。
【0054】
スパー型浮体100が静穏域で仮係留されると、開閉手段130を開放(開栓)する。これによって、取水口120Eから海水が自然流入し、さらに通水管120を流過した海水が排水口120Dから柱状本体110内に注水されていく(
図9のStep204)。海水の注水が進み、排水口120Dが海面高さになると、取水口120Eからの海水の流入が停止し、柱状本体110は中間状態とされる(
図9のStep205)。柱状本体110が中間状態とされると、上部重錘150の一部(あるいは全部)を取り外し、柱状本体110を直立状態とする(
図9のStep206)。柱状本体110が直立状態とされると、開閉手段130を閉鎖(閉栓)したうえで(
図9のStep207)、計画吃水となるまで柱状本体110内に砕石や海水といったバラストを投入していく(
図9のStep208)。
【0055】
スパー型浮体100が計画高さになると、風車部をスパー型浮体100の上方に設置し(
図9のStep209)、風車部とスパー型浮体100からなる完成体を構築したうえで、ひとまず静穏域で仮係留する(
図9のStep210)。そして潮位や潮流など環境の良い時期を狙って、完成体を曳船によってWF海域まで曳航し(
図9のStep211)、WF海域でスパー型浮体100完成体を本係留する(
図9のStep212)とともに、完成体に海底ケーブルを設置する(
図9のStep213)。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明のスパー型浮体、及びスパー型浮体立起こし方法は、50m以深の海域における浮体式洋上風力発電に特に好適に利用することができる。本願発明によれば低コストでしかも容易に浮体式洋上風力発電施設を設置することができることから、洋上風力発電に対するより積極的な動機を期待することができ、ひいては温室効果ガスの排出を抑えたうえで安定的にエネルギーを供給することを考えれば、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0057】
100 本願発明のスパー型浮体
110 (スパー型浮体の)柱状本体
111 (柱状本体の)縦リブ
112 (柱状本体の)横リブ
120 (スパー型浮体の)通水管
120E (通水管の)取水口
120D (通水管の)排水口
130 (スパー型浮体の)開閉手段
140 (スパー型浮体の)底部重錘
150 (スパー型浮体の)上部重錘
151 (上部重錘の)バラスト収容体
152 (上部重錘の)バラスト排出管
153 (上部重錘の)バラストバルブ
160 (スパー型浮体の)調整重錘
170 (スパー型浮体の)収容管
171 (収容管の)開閉蓋
172 (収容管の)開口部
BL バラスト