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  • -建材の分別解体方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008064
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】建材の分別解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20250109BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20250109BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20250109BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
E04G23/08 E
B09B3/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109918
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚原 裕一
【テーマコード(参考)】
2E176
4D004
【Fターム(参考)】
2E176BB36
2E176DD28
4D004AA17
4D004AA31
4D004BA02
4D004CA02
4D004CA12
4D004CA40
4D004CB12
4D004CC03
(57)【要約】
【課題】有害物質が付着した建材を、有害物質と再利用可能な建材とに分別することができる建材の分別解体方法を提供する。
【解決手段】有害物質が付着した建材を、前記有害物質と前記建材とに分別して解体する分別解体方法であって、建物から撤去した前記建材を分別処理エリアに配置するステップS1と、前記分別処理エリアに設けた噴射装置から、前記建材の前記有害物質が付着した面に対してジェット水を噴射し、前記建材から前記有害物質を除去するステップS2とを有するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質が付着した建材を、前記有害物質と前記建材とに分別して解体する分別解体方法であって、
建物から撤去した前記建材を分別処理エリアに配置するステップと、前記分別処理エリアに設けた噴射装置から、前記建材の前記有害物質が付着した面に対してジェット水を噴射し、前記建材から前記有害物質を除去するステップとを有することを特徴とする建材の分別解体方法。
【請求項2】
前記分別処理エリアに設けた前記噴射装置を用いて前記建材を所定の大きさに切断するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の建材の分別解体方法。
【請求項3】
前記噴射装置は、遠隔操作により、前記建材の面に沿って互いに直交する2方向に移動可能な噴射ノズルを有することを特徴とする請求項1または2に記載の建材の分別解体方法。
【請求項4】
前記有害物質は、石綿を含有する材料であり、前記建材は、アルミニウム製のパネルであることを特徴とする請求項1または2に記載の建材の分別解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石綿含有材料などの有害物質が付着したアルミパネルなどの建材を、有害物質と建材とに分別解体する分別解体方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨造超高層ビルでは、外装がアルミパネルで施工されたものがあり、そのパネル内側には、耐火・防音のために石綿を含有する建材(以下、石綿含有材料という。)が使用されていることがある。そのため、外装解体工事の際には、この石綿含有材料を適切に処理する必要がある。
【0003】
吹付け石綿などは、手工具で比較的容易に除去できるが、石綿を含有する接着剤や防音材は、手工具ではほとんど除去できず、除去できない場合には、アルミパネルは石綿含有廃棄物として適切に処理する必要がある。
【0004】
一方、使用済みの自動車や廃家電機器を含む複合廃棄物を再資源化する方法として、例えば、特許文献1に示すような方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-311250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アルミパネルを石綿含有廃棄物として処理する場合には、アルミとして再利用ができないため、次のような問題が生じる。まず、アルミパネルが大量に発生すると、廃棄コストが膨大となる。発生する全てのアルミパネルを埋立処分するため、膨大な処分地が必要となる。また、アルミの再生利用(再生地金)ができないと、アルミの精錬(新地金)が必要となり、地金製造のために大量のCO2が発生する。
【0007】
このため、アルミパネルをアルミとして再利用可能なように、石綿含有廃棄物として処理せずに済むことができる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、有害物質が付着した建材を、有害物質と再利用可能な建材とに分別することができる建材の分別解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る建材の分別解体方法は、有害物質が付着した建材を、前記有害物質と前記建材とに分別して解体する分別解体方法であって、建物から撤去した前記建材を分別処理エリアに配置するステップと、前記分別処理エリアに設けた噴射装置から、前記建材の前記有害物質が付着した面に対してジェット水を噴射し、前記建材から前記有害物質を除去するステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法は、上述した発明において、前記分別処理エリアに設けた前記噴射装置を用いて前記建材を所定の大きさに切断するステップを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法は、上述した発明において、前記噴射装置は、遠隔操作により、前記建材の面に沿って互いに直交する2方向に移動可能な噴射ノズルを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法は、上述した発明において、前記有害物質は、石綿を含有する材料であり、前記建材は、アルミニウム製のパネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る建材の分別解体方法によれば、有害物質が付着した建材を、前記有害物質と前記建材とに分別して解体する分別解体方法であって、建物から撤去した前記建材を分別処理エリアに配置するステップと、前記分別処理エリアに設けた噴射装置から、前記建材の前記有害物質が付着した面に対してジェット水を噴射し、前記建材から前記有害物質を除去するステップとを有するので、有害物質が付着した建材を、有害物質と建材とに効率よく分別することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法によれば、前記分別処理エリアに設けた前記噴射装置を用いて前記建材を所定の大きさに切断するステップを有するので、有害物質の除去作業等を行い易くすることができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法によれば、前記噴射装置は、遠隔操作により、前記建材の面に沿って互いに直交する2方向に移動可能な噴射ノズルを有するので、遠隔操作で噴射ノズルを面に沿った所望の位置に動かすことができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法によれば、前記有害物質は、石綿を含有する材料であり、前記建材は、アルミニウム製のパネルであるので、アルミニウム製のパネルから石綿を含有する材料を除去することができ、アルミニウムの再生利用を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る建材の分別解体方法の実施の形態を示す概略工程図である。
図2図2は、本実施の形態に用いるXY移動装置の概略斜視図である。
図3図3は、本実施の形態の除去状況を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る建材の分別解体方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明の実施の形態に係る建材の分別解体方法は、石綿含有材料(有害物質)が付着した建材であるアルミニウム製のパネル(以下、アルミパネルという。)を、石綿含有材料とアルミパネルとに分別して解体する方法である。
【0020】
この方法は、図1に示すように、建物から撤去したアルミパネルを分別処理エリアに配置するステップS1と、分別処理エリアに設けたXY移動装置の噴射ノズル(噴射装置)から、石綿含有材料が付着したアルミパネルのパネル面に対してウォータージェット(ジェット水)を噴射し、アルミパネルから石綿含有材料を除去するステップS2とを有する。本実施の形態は、超高層ビル(建物)解体時に発生するアルミパネルの裏側に施工された石綿含有材料(防音材や防振材など)を分別処理し、アルミの再利用を行うことを想定している。
【0021】
図2に示すように、XY移動装置10は、直方体状の枠体12と、枠体12に設けられたX軸移動機構14およびY軸移動機構16と、枠体12の下部の四隅に設けられた脚部18とを備える。枠体12は、下側に4つのフレーム部材20、22、24、26を備えている。フレーム部材20~26は、同一高さに水平に設けられる。フレーム部材20、22は、互いに平行であり、図のX軸方向に延びている。フレーム部材24、26は、互いに平行であり、図のY軸方向に延びている。X軸方向とY軸方向は、水平面内において互いに直交する2方向である。枠体12の直下には、フレーム部材20~26によって囲まれた開口部28が形成される。
【0022】
X軸移動機構14は、X軸方向に延びるX軸ガイド30と、X軸方向に移動可能にX軸ガイド30に装着されたX軸移動部32とを備えた周知のものである。X軸移動部32は、図示しないモータによってX軸方向に移動可能であるとともに、位置が制御される。X軸ガイド30の一端にはローラ34が形成されており、フレーム部材26の上面に沿って移動可能にフレーム部材26に係合している。X軸ガイド30の他端は、Y軸移動機構16のY軸移動部36に固定されている。X軸移動部32には、噴射ノズル38が着脱自在に下向きに取り付けられている。
【0023】
Y軸移動機構16は、X軸移動機構14をY軸方向に移動させるものであり、Y軸方向に延びるフレーム部材24に沿って移動可能にフレーム部材24に装着されたY軸移動部36を備えた周知のものである。Y軸移動部36は、図示しないモータによってY軸方向に移動可能であるとともに、位置が制御される。
【0024】
X軸移動機構14およびY軸移動機構16は、遠隔操作できるように構成されている。X軸移動機構14およびY軸移動機構16を作動することにより、X軸移動部32の噴射ノズル38をX軸方向、Y軸方向に移動させることができる。これにより、遠隔操作で噴射ノズル38を所望の位置に動かすことができる。噴射ノズル38には、図示しない超高圧水の供給装置が接続している。噴射ノズル38は、超高圧のウォータージェットを下方に向けて噴射可能である。噴射ノズル38としては、石綿除去に好適な周知のウォータージェットガンに装着されるノズルヘッドを用いることができる。
【0025】
次に、本実施の形態の建材の分別解体方法の具体的手順について説明する。
まず、ステップS1において、建物外装からアルミパネルを取り外して、所定の分別処理エリアに運搬する。分別処理エリアは、一般作業区域から隔離した区域に設けるものとし、石綿が外部に飛散漏洩しないよう養生シートなどで囲んだ区画として形成する。以後の作業は、原則として分別処理エリアにて行う。
【0026】
次に、分別処理エリアに配置されたXY移動装置10を用いて、作業し易いサイズにアルミパネルを切断する。例えば、XY移動装置10を床に配置し、開口部28の床にアルミパネルを配置した後、噴射ノズル38から超高圧ウォータージェットをアルミパネルに向けて噴射しながら、噴射ノズル38をX軸方向、Y軸方向に動かしてアルミパネルを所望の形状、大きさに分断する。この場合、噴射ノズル38からの噴射流量、噴射速度を切断に好適なものに調整してもよいし、噴射ノズル38を切断に適したものに付け替えてもよい。なお、切断作業は、XY移動装置10を遠隔操作して行ってもよいし、他の切断工具を用いて作業員が行ってもよい。切断するサイズは、XY移動装置10による除去作業や、作業員による搬出作業、トラック車両での運搬をしやすいサイズなどを考慮して設定することができる。
【0027】
次のステップS2において、XY移動装置10の開口部28の床にアルミパネルを複数並べ置いた後、噴射ノズル38からアルミパネルに向けて超高圧ウォータージェットを噴射して、パネル面に付着した石綿含有材料を除去する。その際、遠隔操作で噴射ノズル38をX軸方向、Y軸方向に動かしながら噴射する。噴射ノズル38を平面視でジグザグ状の軌跡で動かして、石綿含有材料をむらなく除去できるように制御することが好ましい。図3に、XY移動装置10による除去状況の一例を示す。図の例では、Y軸方向に並べた複数の矩形状のアルミパネルを連続的に除去する場合を示している。
【0028】
XY移動装置10の操作者は、分別処理エリアの外(例えば、養生シートの外側)から遠隔操作を行い、XY移動装置10による作業中は分別処理エリア内に立ち入らないことが望ましい。XY移動装置10による作業状況は、分別処理エリア内に設けた監視カメラを通じて確認してもよいし、養生シートの外側から目視で確認してもよい。XY移動装置10による除去作業中は、作業員は除去処理後のアルミパネルの除去状況の確認や、排水処理等の他の作業を実施することが好ましい。石綿含有材料の除去にXY移動装置10を用いれば、作業員はハンドガン式の低水量型超高圧ウォータージェット装置などで除去する必要がなくなるので、作業安全性を確保することができる。
【0029】
本実施の形態によれば、石綿含有材料が付着したアルミパネルを、石綿含有材料とアルミパネルとに効率よく分別することができる。アルミパネルから石綿含有材料を除去することができ、アルミの再生利用を図ることができる。また、作業し易い大きさへのアルミパネルの切断、石綿含有材料の除去をXY移動装置10が行うことで、作業員の負担を軽減することができる。
【0030】
また、本実施の形態によれば、以下のような効果が得られる。
(1)コストダウン
石綿含有材料が付着したアルミパネルを石綿含有材料とアルミパネルに分別することにより、石綿含有廃棄物は埋立処分に、アルミパネルは有価物として売却することができる。
【0031】
XY移動装置10を用いた超高圧ウォータジェットの除去により作業員が直接除去しなくても、除去が可能となるため除去処理に係わる労務を大幅に低減できる。例えば、約12,000m2の分別処理(再生アルミは100t発生)と、そのまま埋め立て処分する有姿処理を比較すると、分別処理をした方が15%程度コスト削減が可能である。
【0032】
(2)CO2発生量の削減
石綿含有材料が付着したアルミパネルの石綿含有材料を除去し、アルミパネルの再利用が可能となるため、新地金は不要となり大幅にCO2削減が可能である。例えば、約100t(12,000m2の分別処分)の再利用では、新地金を利用するとCO2は約1,000t発生する。これに対し、本発明を適用してアルミを再利用した場合のCO2は約30t発生する。したがって、新地金を利用した時のCO2発生量を97%削減できる。
【0033】
(3)廃棄物処分量の削減
石綿含有材料が付着したアルミパネルの石綿含有材料を除去し、分別することにより、除去した石綿含有材料のみを処分することが可能となる。このため、石綿含有廃棄物量を大幅に削減可能である。例えば、石綿含有材料が付着したアルミパネルにおいて、アルミパネルの体積が90%、石綿含有材料の体積が10%の場合には、アルミパネルの体積分である90%を削減できる。例えば、有姿処理では12,000m2のものが処分時には約1,200m3の石綿含有廃棄物となる場合、本発明の分別により石綿含有材料のみを処分すると、石綿含有廃棄物量は約120m3となり90%削減可能である。
【0034】
なお、上記の実施の形態においては、有害物質が石綿含有材料であり、建材がアルミパネルである場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、有害物質は石綿含有材料以外の物質であってもよいし、建材はアルミパネル以外の建材であってもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明に係る建材の分別解体方法によれば、有害物質が付着した建材を、前記有害物質と前記建材とに分別して解体する分別解体方法であって、建物から撤去した前記建材を分別処理エリアに配置するステップと、前記分別処理エリアに設けた噴射装置から、前記建材の前記有害物質が付着した面に対してジェット水を噴射し、前記建材から前記有害物質を除去するステップとを有するので、有害物質が付着した建材を、有害物質と建材とに効率よく分別することができる。
【0036】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法によれば、前記分別処理エリアに設けた前記噴射装置を用いて前記建材を所定の大きさに切断するステップを有するので、有害物質の除去作業等を行い易くすることができる。
【0037】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法によれば、前記噴射装置は、遠隔操作により、前記建材の面に沿って互いに直交する2方向に移動可能な噴射ノズルを有するので、遠隔操作で噴射ノズルを面に沿った所望の位置に動かすことができる。
【0038】
また、本発明に係る他の建材の分別解体方法によれば、前記有害物質は、石綿を含有する材料であり、前記建材は、アルミニウム製のパネルであるので、アルミニウム製のパネルから石綿を含有する材料を除去することができ、アルミニウムの再生利用を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明に係る建材の分別解体方法は、石綿含有材料などの有害物質が付着した建材の再利用に有用であり、特に、有害物質が付着した建材を、有害物質と再利用可能な建材とに分別するのに適している。
【符号の説明】
【0040】
10 XY移動装置
12 枠体
14 X軸移動機構
16 Y軸移動機構
18 脚部
20,22,24,26 フレーム部材
30 X軸ガイド
32 X軸移動部
34 ローラ
36 Y軸移動部
38 噴射ノズル
図1
図2
図3