(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008083
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
H10F 77/00 20250101AFI20250109BHJP
H10F 30/20 20250101ALI20250109BHJP
H10F 39/18 20250101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L31/02 D
H01L31/10 A
H01L27/146 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109950
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾関 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇展
【テーマコード(参考)】
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA02
4M118CA11
4M118CA14
4M118GA03
4M118GA04
4M118GA09
4M118GB03
4M118GB11
4M118GD04
5F149AA04
5F149AB03
5F149AB04
5F149AB05
5F149BA01
5F149BB07
5F149BB08
5F149CB07
5F149EA04
5F149EA13
5F149EA14
5F149FA04
5F149FA05
5F149FA13
5F149FA18
5F149GA02
5F149HA10
5F149HA20
5F149JA05
5F149JA12
5F149JA13
5F149KA13
5F149KA14
5F149KA20
5F149XB05
5F149XB37
(57)【要約】
【課題】検出精度を向上させることが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、基板と、基板に設けられたフォトダイオードと、フォトダイオードに重なって設けられたレンズと、フォトダイオードとレンズとの間に設けられ、フォトダイオードと重なる領域に開口が設けられた遮光層と、遮光層とレンズとの間に積層された透光性樹脂層及びバッファ層と、を有し、レンズは、バッファ層の上に直接接して設けられる。バッファ層は、透光性樹脂層と異なる材料を含む樹脂材料で形成される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられたフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに重なって設けられたレンズと、
前記フォトダイオードと前記レンズとの間に設けられ、前記フォトダイオードと重なる領域に開口が設けられた遮光層と、
前記遮光層と前記レンズとの間に積層された透光性樹脂層及びバッファ層と、を有し、
前記レンズは、前記バッファ層の上に直接接して設けられる
検出装置。
【請求項2】
前記バッファ層は、前記透光性樹脂層と異なる材料を含む樹脂材料で形成される
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記バッファ層は、前記レンズに用いられる材料と同系統の界面活性剤を含む樹脂材料で形成される
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記バッファ層の膜厚は、前記透光性樹脂層の膜厚よりも薄い
請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記遮光層と前記透光性樹脂層との間に設けられ、アクリル系樹脂で形成されたバリア層を有する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
前記遮光層及び前記開口を覆って設けられ、所定の波長帯域の光を遮光するフィルタ層を有し、
前記バリア層は、前記フィルタ層を覆って設けられ、
前記透光性樹脂層は、前記バリア層の上に設けられる
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記フォトダイオードを覆う有機保護膜を有し、
前記遮光層は、
前記有機保護膜の上に設けられ、前記フォトダイオードと重なる領域に第1開口が設けられた第1遮光層と、
前記第1遮光層と、前記レンズとの間に設けられ、前記フォトダイオード及び前記第1開口と重なる領域に第2開口が設けられた第2遮光層と、を含み、
前記透光性樹脂層は、
前記第1遮光層と前記第2遮光層との間に設けられた第1透光性樹脂層と、
前記第2遮光層と前記バッファ層との間に設けられた第2透光性樹脂層と、を有する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項8】
複数の前記レンズを有し、
1つの前記フォトダイオードと重なる領域に複数の前記レンズが設けられる
請求項1に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のフォトダイオードと、複数のフォトダイオードを覆う透光性樹脂層と、複数のフォトダイオードのそれぞれに重畳して設けられた複数のレンズと、を有する検出装置が記載されている。複数のレンズは、透光性樹脂層の上に直接設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような検出装置において、レンズの形状のばらつきが生じると、レンズを透過してフォトダイオードに集光される光の状態が異なり、検出精度が低下する可能性がある。このため、検出装置においてレンズの形状のばらつきを抑制することが要求される。
【0005】
本発明は、検出精度を向上させることが可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の検出装置は、基板と、前記基板に設けられたフォトダイオードと、前記フォトダイオードに重なって設けられたレンズと、前記フォトダイオードと前記レンズとの間に設けられ、前記フォトダイオードと重なる領域に開口が設けられた遮光層と、前記遮光層と前記レンズとの間に積層された透光性樹脂層及びバッファ層と、を有し、前記レンズは、前記バッファ層の上に直接接して設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
【
図1B】
図1Bは、変形例1に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、変形例2に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
【
図1D】
図1Dは、変形例3に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る光フィルタを示す平面図である。
【
図7】
図7は、実施例に係るレンズの断面構成を模式的に示す説明図である。
【
図8】
図8は、比較例に係るレンズの断面構成を模式的に示す説明図である。
【
図9】
図9は、実施例に係るレンズ及び比較例に係るレンズ構造の測定結果を示す表である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る検出装置のフォトダイオードを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0010】
(実施形態)
図1Aは、実施形態に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
図1Bは、変形例1に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
図1Cは、変形例2に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
図1Dは、変形例3に係る検出装置の概略断面構成を示す断面図である。
【0011】
図1Aに示すように、検出装置1と、アレイ基板2(フォトダイオード30)と、光フィルタ7と、接着層125と、照明装置121(カバー部材122)と、を有する。つまり、アレイ基板2の表面に垂直な方向において、アレイ基板2(フォトダイオード30)、光フィルタ7、接着層125、カバー部材122の順に積層されている。なお、後述するようにカバー部材122を照明装置121に置き換えることもできる。接着層125は、光フィルタ7とカバー部材122とを接着させるものであればよく、検出領域AAに相当する領域に接着層125は無い構造であっても構わない。検出領域AAに接着層125が無い場合、検出領域AAの外側の周辺領域GAに相当する領域で接着層125がカバー部材122と光フィルタ7とを接着させている構造となる。また、検出領域AAに設けられる接着層125は、単に光フィルタ7の保護層と言い換えてもよい。
【0012】
図1Aに示すように、照明装置121は、例えば、カバー部材122を検出装置1の検出領域AAに対応する位置に設けられた導光板として用い、カバー部材122の一方端又は両端に並ぶ複数の光源123を有する、いわゆるサイドライト型のフロントライトであってもよい。つまり、カバー部材122は、光を照射する光照射面121aを有し、照明装置121の一構成要素となっている。この照明装置121によれば、カバー部材122の光照射面121aから検出対象である指Fgに向けて光L1を照射する。光源123として、例えば、所定の色の光を発する発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられる。
【0013】
また、
図1Bに示すように、照明装置121は、検出装置1の検出領域AAの直下に設けられた光源(例えば、LED)を有するものであってもよく、光源を備えた照明装置121はカバー部材122としても機能する。
【0014】
また、照明装置121は、
図1Bの例に限らず、
図1Cに示すように、カバー部材122の側方や上方に設けられていてもよく、指Fgの側方や上方から指Fgに光L1を照射してもよい。
【0015】
さらには、
図1Dに示すように、照明装置121は、検出装置1の検出領域AAに設けられた光源(例えば、LED)を有する、いわゆる直下型のバックライトであってもよい。
【0016】
照明装置121から照射された光L1は、検出対象である指Fgにより光L2として反射される。検出装置1は、指Fgで反射された光L2を検出することで、指Fgの表面の凹凸(例えば、指紋)を検出する。さらに、検出装置1は、指紋の検出に加え、指Fgの内部で反射した光L2を検出することで、生体に関する情報を検出してもよい。生体に関する情報は、例えば、静脈等の血管像や脈拍、脈波等である。照明装置121からの光L1の色は、検出対象に応じて異ならせてもよい。
【0017】
カバー部材122は、アレイ基板2及び光フィルタ7を保護するための部材であり、アレイ基板2及び光フィルタ7を覆っている。上述のように、照明装置121がカバー部材122を兼ねる構造でもよい。
図1C及び
図1Dに示すカバー部材122が照明装置121と分離されている構造においては、カバー部材122は、例えばガラス基板である。なお、カバー部材122はガラス基板に限定されず、樹脂基板等であってもよい。また、カバー部材122が設けられていなくてもよい。この場合、アレイ基板2及び光フィルタ7の表面に絶縁膜等の保護層が設けられ、指Fgは検出装置1の保護層に接する。
【0018】
また、
図1Bにおいて、照明装置121に換えて表示パネルが設けられていてもよい。表示パネルは、例えば、有機ELディスプレイパネル(OLED:Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED)であってもよい。或いは、表示パネルは、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や、表示素子として電気泳動素子を用いた電気泳動型表示パネル(EPD:Electrophoretic Display)であってもよい。この場合であっても、表示パネルから照射された表示光(光L1)が指Fgで反射された光L2に基づいて、指Fgの指紋や生体に関する情報を検出することができる。
【0019】
図2は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。なお、
図2以下で示す、第1方向Dxは、基板21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、基板21の法線方向である。また、「平面視」とは、第3方向Dzから見た場合の位置関係をいう。
【0020】
図2に示すように、検出装置1は、アレイ基板2(基板21)と、センサ部10と、走査線駆動回路15と、信号線選択回路16と、検出回路48と、制御回路102と、電源回路103と、を有する。
【0021】
基板21には、配線基板110を介して制御基板101が電気的に接続される。配線基板110は、例えば、フレキシブルプリント基板やリジット基板である。配線基板110には、検出回路48が設けられている。制御基板101には、制御回路102及び電源回路103が設けられている。制御回路102は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。制御回路102は、センサ部10、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給し、センサ部10の動作を制御する。電源回路103は、電源電位VDDや基準電位VCOM(
図4参照)等の電圧信号をセンサ部10、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16に供給する。なお、本実施形態においては、検出回路48が配線基板110に配置される場合を例示したがこれに限られない。検出回路48は、基板21の上に配置されてもよい。
【0022】
基板21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AA及び周辺領域GAは、基板21と平行な面方向に延在している。検出領域AA内には、センサ部10の各素子(検出素子3)が設けられている。周辺領域GAは、検出領域AAの外側の領域であり、各素子(検出素子3)が設けられない領域である。すなわち、周辺領域GAは、検出領域AAの外周と基板21の端部との間の領域である。周辺領域GA内には、走査線駆動回路15及び信号線選択回路16が設けられる。走査線駆動回路15は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線選択回路16は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられ、センサ部10と検出回路48との間に設けられる。
【0023】
センサ部10の複数の検出素子3は、それぞれ、センサ素子としてフォトダイオード30を有する光センサである。フォトダイオード30は、光電変換素子であり、それぞれに照射される光に応じた電気信号を出力する。より具体的には、フォトダイオード30は、PIN(Positive Intrinsic Negative)フォトダイオードである。また、フォトダイオード30はOPD(Organic Photo Diode)であってもよい。検出素子3は、検出領域AAにマトリクス状に配列される。複数の検出素子3が有するフォトダイオード30は、走査線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号(例えば、リセット制御信号RST、読出制御信号RD)に従って検出を行う。複数のフォトダイオード30は、それぞれに照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。検出装置1は、複数のフォトダイオード30からの検出信号Vdetに基づいて生体に関する情報を検出する。
【0024】
図3は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、検出装置1は、さらに検出制御回路11と検出部40と、を有する。検出制御回路11の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれる。また、検出部40のうち、検出回路48以外の機能の一部又は全部は、制御回路102に含まれる。
【0025】
検出制御回路11は、走査線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出部40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する回路である。検出制御回路11は、スタート信号STV、クロック信号CK等の各種制御信号を走査線駆動回路15に供給する。また、検出制御回路11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。
【0026】
走査線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数の走査線(読出制御走査線GLrd、リセット制御走査線GLrst(
図4参照))を駆動する回路である。走査線駆動回路15は、複数の走査線を順次又は同時に選択し、選択された走査線にゲート駆動信号(例えば、リセット制御信号RST、読出制御信号RD)を供給する。これにより、走査線駆動回路15は、走査線に接続された複数のフォトダイオード30を選択する。
【0027】
信号線選択回路16は、複数の出力信号線SL(
図4参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路である。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御回路11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された出力信号線SLと検出回路48とを接続する。これにより、信号線選択回路16は、フォトダイオード30の検出信号Vdetを検出部40に出力する。
【0028】
検出部40は、検出回路48と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、記憶回路46と、検出タイミング制御回路47と、を備える。検出タイミング制御回路47は、検出制御回路11から供給される制御信号に基づいて、検出回路48と、信号処理回路44と、座標抽出回路45と、が同期して動作するように制御する。
【0029】
検出回路48は、例えばアナログフロントエンド回路(AFE:Analog Front End)である。検出回路48は、少なくとも検出信号増幅回路42及びA/D変換回路43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅回路42は、検出信号Vdetを増幅する回路であり、例えば、積分回路である。A/D変換回路43は、検出信号増幅回路42から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0030】
信号処理回路44は、検出回路48の出力信号に基づいて、センサ部10に入力された所定の物理量を検出する論理回路である。信号処理回路44は、指Fgが検出面に接触又は近接した場合に、検出回路48からの信号に基づいて指Fgや掌の表面の凹凸を検出できる。また、信号処理回路44は、検出回路48からの信号に基づいて生体に関する情報を検出してもよい。生体に関する情報は、例えば、指Fgや掌の血管像、脈波、脈拍、血中酸素飽和度等である。
【0031】
記憶回路46は、信号処理回路44で演算された信号を一時的に保存する。記憶回路46は、例えばRAM(Random Access Memory)、レジスタ回路等であってもよい。
【0032】
座標抽出回路45は、信号処理回路44において指Fgの接触又は近接が検出されたときに、指Fg等の表面の凹凸の検出座標を求める論理回路である。また、座標抽出回路45は、指Fgや掌の血管の検出座標を求める論理回路である。座標抽出回路45は、センサ部10の各検出素子3から出力される検出信号Vdetを組み合わせて、指Fg等の表面の凹凸の形状を示す二次元情報を生成する。なお、座標抽出回路45は、検出座標を算出せずにセンサ出力Voとして検出信号Vdetを出力してもよい。
【0033】
次に、検出装置1の回路構成例について説明する。
図4は、検出素子を示す回路図である。
図4に示すように、検出素子3は、フォトダイオード30、リセットトランジスタMrst、読出トランジスタMrd及びソースフォロワトランジスタMsfを有する。リセットトランジスタMrst、読出トランジスタMrd及びソースフォロワトランジスタMsfは、1つのフォトダイオード30に対応して設けられる。リセットトランジスタMrst、読出トランジスタMrd及びソースフォロワトランジスタMsfは、それぞれn型TFT(Thin Film Transistor)で構成される。ただし、これに限定されず、各トランジスタは、それぞれp型TFTで構成されてもよい。
【0034】
フォトダイオード30のアノードには、基準電位VCOMが印加される。フォトダイオード30のカソードは、ノードN1に接続される。ノードN1は、容量素子Cs、リセットトランジスタMrstのソース又はドレインの一方及びソースフォロワトランジスタMsfのゲートに接続される。さらにノードN1には、寄生容量Cpが存在する。フォトダイオード30に光が入射した場合、フォトダイオード30から出力された信号(電荷)は、容量素子Csに蓄積される。ここで、容量素子Csは、例えば、フォトダイオード30に接続された上部電極34と下部電極35(
図11参照)との間に形成される容量である。寄生容量Cpは、容量素子Csに付加された容量であり、アレイ基板2に設けられた各種配線、電極間に形成される容量である。
【0035】
リセットトランジスタMrstのゲートは、リセット制御走査線GLrstに接続される。リセットトランジスタMrstのソース又はドレインの他方には、リセット電位Vrstが供給される。リセットトランジスタMrstがリセット制御信号RSTに応答してオン(導通状態)になると、ノードN1の電位がリセット電位Vrstにリセットされる。基準電位VCOMは、リセット電位Vrstよりも低い電位を有しており、フォトダイオード30は、逆バイアス駆動される。
【0036】
ソースフォロワトランジスタMsfは、電源電位VDDが供給される端子と読出トランジスタMrd(ノードN2)との間に接続される。ソースフォロワトランジスタMsfのゲートは、ノードN1に接続される。ソースフォロワトランジスタMsfのゲートには、フォトダイオード30で発生した信号(電荷)が供給される。これにより、ソースフォロワトランジスタMsfは、フォトダイオード30で発生した信号(電荷)に応じた電圧信号を読出トランジスタMrdに出力する。
【0037】
読出トランジスタMrdは、ソースフォロワトランジスタMsfのソース(ノードN2)と出力信号線SL(ノードN3)との間に接続される。読出トランジスタMrdのゲートは、読出制御走査線GLrdに接続される。読出トランジスタMrdが読出制御信号RDに応答してオンになると、ソースフォロワトランジスタMsfから出力される信号、すなわち、フォトダイオード30で発生した信号(電荷)に応じた電圧信号が、検出信号Vdetとして出力信号線SLに出力される。
【0038】
なお、
図4に示す例では、リセットトランジスタMrst及び読出トランジスタMrdは、それぞれ、2つのトランジスタが直列に接続されて構成されたいわゆるダブルゲート構造である。ただし、これに限定されず、リセットトランジスタMrst及び読出トランジスタMrdは、シングルゲート構造でもよく、3つ以上のトランジスタが直列に接続されたマルチゲート構造でもよい。また、1つの検出素子3の回路は、リセットトランジスタMrst、ソースフォロワトランジスタMsf及び読出トランジスタMrdの3つのトランジスタを有する構成に限定されない。検出素子3は、2つ、又は、4つ以上のトランジスタを有していてもよい。
【0039】
次に、検出素子3及び光フィルタ7の詳細な構成について説明する。
図5は、実施形態に係る光フィルタを示す平面図である。
図6は、
図5のVI-VI’断面図である。なお、
図6ではアレイ基板2の構成を簡略化して示しており、絶縁膜26、28、保護膜29及びフォトダイオード30を模式的に示す。アレイ基板2の詳細な構成例については、
図11にて後述する。
【0040】
図5及び
図6に示すように、光フィルタ7は、マトリクス状に配列された複数の検出素子3(フォトダイオード30)を覆って設けられる。光フィルタ7は、指Fg等の被検出体で反射された光L2のうち、第3方向Dzに進行する成分をフォトダイオード30に向けて透過させ、斜め方向に進行する成分を遮蔽する光学素子である。光フィルタ7は、コリメートアパーチャ、あるいは、コリメータとも呼ばれる。
【0041】
光フィルタ7は、複数の検出素子3のそれぞれに設けられた複数のレンズ78を有する。1つの検出素子3(フォトダイオード30)と重なる領域に複数のレンズ78が配置される。
図5に示す例では、1つの検出素子3に、7個のレンズ78が設けられる。複数のレンズ78は、三角格子状に配置される。より詳細には、1つの検出素子3で、幾何中心に位置する1個のレンズ78を囲んで、6個のレンズ78が正六角形状に配置される。
【0042】
ただし、1つの検出素子3に配置される複数のレンズ78の数は、6個以下でもよいし、8個以上でもよい。複数のレンズ78の配置も、三角格子状に限定されず、マトリクス状等、他の配置であってもよい。
【0043】
図6に示すように、光フィルタ7は、第1遮光層71と、第2遮光層72と、フィルタ層73と、バリア層74と、第1透光性樹脂層75と、第2透光性樹脂層76と、バッファ層77と、レンズ78と、を有する。本実施形態では、フォトダイオード30を覆う保護膜29の上に、第1遮光層71、フィルタ層73、バリア層74と、第1透光性樹脂層75、第2遮光層72、第2透光性樹脂層76、バッファ層77、レンズ78の順に積層されている。
【0044】
レンズ78は、バッファ層77の上に直接接して設けられる。レンズ78は、凸レンズである。レンズ78の光軸CLは、第3方向Dzと平行方向に設けられ、フォトダイオード30と交差する。
図6に示す例では、1つのフォトダイオード30に重畳する領域に複数のレンズ78が設けられ、複数のレンズ78の光軸CLがそれぞれフォトダイオード30と交差する。
【0045】
第1遮光層71は、アレイ基板2の保護膜29の上に直接、接して設けられる。言い換えると、第1遮光層71は、第3方向Dzでフォトダイオード30とレンズ78との間に設けられる。また、第1遮光層71には、フォトダイオード30に重畳する領域に第1開口OP1が設けられる。第1開口OP1は、レンズ78の光軸CLと重なる領域に形成される。第1遮光層71は、例えば、モリブデン(Mo)等の金属材料で形成されている。
【0046】
第1遮光層71は、第1開口OP1を透過する光L2以外の、斜め方向に進行する光L2の成分を反射することができる。また、第1遮光層71が金属材料で形成されているので、第1開口OP1の径W1(第1方向Dxでの幅)を精度よく形成することができる。したがって、レンズ78の配置ピッチや面積(径W3)が小さい場合でも、レンズ78に対応させて第1開口OP1を設けることができる。
【0047】
第1遮光層71は、アレイ基板2の保護膜29上にスパッタなどで堆積された金属材料に第1開口OP1を形成する加工が施されるものであり、いわゆる外付けの光フィルタをアレイ基板2の保護膜29上に貼り合わせるものとは異なる。外付け光フィルタをアレイ基板2に貼り合わせることは、特に本実施形態の第1遮光層71の第1開口OP1に相当する遮光層の小さな開口とフォトダイオード30との位置合わせの難易度が高い。一方、本実施形態の光フィルタ7はアレイ基板2の保護膜29上に直接形成していくものであるため、外付けの光フィルタを貼り合わせるよりも精度よく第1開口OP1をフォトダイオード30上に設けることが可能となる。
【0048】
さらに第1遮光層71は、後述する樹脂材料で形成される第2遮光層72と異なり金属材料により形成されるものであるため、第2遮光層72よりも薄く形成することができ、第2遮光層72に形成される第2開口OP2よりも小さな第1開口OP1を形成することができる。第1遮光層71の厚さは、第2遮光層72の厚さの10分の1以下である。一例として、第1遮光層71の厚さは、0.055μm以上であり、例えば0.065μmであり、第2遮光層の厚さは例えば1μmである。第1遮光層71は第2遮光層72の厚さに比べ極めて薄く形成されることになる。
【0049】
フィルタ層73は、第1遮光層71の上に直接、接して設けられ、第1遮光層71及び第1開口OP1を覆って設けられる。フィルタ層73は、第3方向Dzで、第1遮光層71と第1透光性樹脂層75との間に設けられる。フィルタ層73は、所定の波長帯域の光を遮光するフィルタである。フィルタ層73は、例えば、緑色に着色された樹脂材料で形成され、赤外線を遮光するIRカットフィルタである。これにより、光フィルタ7は、光L2のうち、例えば指紋検出に必要な波長帯域の成分をフォトダイオード30に入射させて、検出感度を向上させることができる。
【0050】
バリア層74は、フィルタ層73を覆って設けられる。第1透光性樹脂層75は、バリア層74の上に設けられる。バリア層74は、第3方向Dzで、第1遮光層71及びフィルタ層73と、第1透光性樹脂層75との間に設けられる。
【0051】
本実施形態では、第1遮光層71の上にバリア層74が設けられているので、第1遮光層71としてモリブデン(Mo)等のイオン化しやすい金属材料が用いられている場合であっても、バリア層74により、第1遮光層71から生成される反応物(例えばMo系イオン)の拡散を抑制することができる。より具体的には、第1透光性樹脂層75及び第2透光性樹脂層76まで第1遮光層71からの反応物(例えばMo系イオン)が拡散、到達した場合、第1透光性樹脂層75及び第2透光性樹脂層76と反応して金属錯体が形成され変色が生じる可能性がある。本実施形態では、バリア層74が設けられているので、Mo系イオンの拡散による第1透光性樹脂層75及び第2透光性樹脂層76の変色を防ぎ、第1透光性樹脂層75及び第2透光性樹脂層76の光の透過率の低下を抑制することができる。
【0052】
バリア層74は、透光性の樹脂材料であり、例えば、アクリル系樹脂材料で形成される。バリア層74は、反応物の透過を抑制できる材料であればよく、例えば、アレイ基板2に用いられる絶縁膜26、あるいは、保護膜29と同じ材料、すなわち、有機材料で形成されたハードコート膜を用いることができる。バリア層74の膜厚は、例えば2.0μm以上3.0μm以下程度である。バリア層74の膜厚は、第1遮光層71及びフィルタ層73の膜厚よりも厚く、第1透光性樹脂層75の膜厚よりも薄い。
【0053】
第1透光性樹脂層75は、バリア層74の上に直接、接して設けられる。また、第1透光性樹脂層75は、第3方向Dzで、第1遮光層71と第2遮光層72との間に設けられる。第1透光性樹脂層75及び第2透光性樹脂層76は、例えば透光性のアクリル系樹脂で形成される。
【0054】
第2遮光層72は、第1透光性樹脂層75の上に直接、接して設けられる。第2遮光層72は、第3方向Dzで第1遮光層71と、レンズ78との間に設けられる。また、第2遮光層72には、フォトダイオード30及び第1開口OP1に重畳する領域に第2開口OP2が設けられる。第2開口OP2は、レンズ78の光軸CLと重なる領域に形成される。より好ましくは、第2開口OP2の中心及び第1開口OP1の中心は、光軸CLと重なって設けられる。
【0055】
第2遮光層72は、例えば黒色に着色された樹脂材料で形成される。これにより、第2遮光層72は、第2開口OP2を透過する光L2以外の、斜め方向に進行する光L2の成分を吸収する光吸収層として機能する。また、第2遮光層72は、第1遮光層71で反射された光を吸収する。これにより、第2遮光層72が金属材料で形成された構成に比べて、第1遮光層71で反射された光が、複数回反射を繰り返して迷光として第1透光性樹脂層75を進行し、他のフォトダイオード30に入射することを抑制できる。また、第2遮光層72は、隣接するレンズ78の間から入射した外光を吸収することができる。これにより、第2遮光層72が金属材料で形成された構成に比べて、第2遮光層72での反射光を抑制できる。ただし、第2遮光層72は、黒色に着色された樹脂材料により形成される例に限らず、表面に黒色化処理された金属材料により形成されるものであってもよい。
【0056】
第2透光性樹脂層76は、第2遮光層72の上に直接、接して設けられる。第2透光性樹脂層76は、第2遮光層72と、バッファ層77及びレンズ78との間に設けられる。
【0057】
第2透光性樹脂層76は、第1透光性樹脂層75と同じ材料が用いられ、第2透光性樹脂層76の屈折率は、第1透光性樹脂層75の屈折率と実質的に等しい。これにより、第2開口OP2での、第1透光性樹脂層75と第2透光性樹脂層76との界面での光L2の反射を抑制することができる。ただしこれに限定されず、第1透光性樹脂層75と第2透光性樹脂層76とは異なる材料で形成されていてもよく、第1透光性樹脂層75の屈折率と第2透光性樹脂層76の屈折率とが異なっていてもよい。
【0058】
本実施形態では、レンズ78の径W3(第1方向Dxでの幅)、第2開口OP2の径W2(第1方向Dxでの幅)、第1開口OP1の径W1(第1方向Dxでの幅)の順に小さくなっている。また、レンズ78の径W3、第2開口OP2の径W2及び第1開口OP1の径W1は、それぞれ、フォトダイオード30の幅よりも小さい。第2開口OP2の径W2及び第1開口OP1の径W1は、レンズ78の形状(径W3、曲率等)及び、レンズ78とフォトダイオード30との間の距離に応じて適切に設定される。
【0059】
第1透光性樹脂層75の膜厚、及び、第2透光性樹脂層76の膜厚は、それぞれ、10μm以上30μm以下程度である。
図6に示す例では、第1透光性樹脂層75の膜厚は、第2透光性樹脂層76の膜厚よりも薄く形成される。ただし、これに限定されず、第1透光性樹脂層75の膜厚は、第2透光性樹脂層76の膜厚と同等であってもよい。あるいは、第1透光性樹脂層75の膜厚は、第2透光性樹脂層76の膜厚より厚く形成されていてもよい。
【0060】
バッファ層77は、第2透光性樹脂層76の上に直接、接して設けられる。レンズ78は、バッファ層77の上に直接、接して設けられる。言い換えると、第2透光性樹脂層76及びバッファ層77は第2遮光層72とレンズ78との間に積層される。バッファ層77の膜厚は、例えば1.0μm以上2.0μm以下程度である。バッファ層77の膜厚は、第1透光性樹脂層75及び第2透光性樹脂層76の膜厚よりも薄い。
【0061】
バッファ層77は、透光性の樹脂材料で形成され、第2透光性樹脂層76と異なる材料を含む樹脂材料で形成される。より詳細には、バッファ層77は、透光性のアクリル系樹脂、及び、レンズ78に用いられる材料と同系統の界面活性剤を含んで形成される。バッファ層77は、例えばフッ素系界面活性剤あるいはSi系界面活性剤を含む。これにより、検出装置1の製造工程においてレンズ78の樹脂材料を塗布形成する際に、バッファ層77が設けられず第2透光性樹脂層76上に直接、塗布形成する場合に比べて、レンズ78の樹脂材料とバッファ層77との濡れ性が向上する。この結果、バッファ層77上に形成されたレンズ78の形状が安定し、レンズ78の曲率半径が一定に形成される。すなわち、1つのレンズ78において、断面構造における円弧に沿って複数に分割した場合に、分割された円弧のそれぞれの曲率半径のばらつきを抑制することができる。
【0062】
このような構成により、指Fg等の被検出体で反射された光L2のうち、第3方向Dzに進行する光L2は、レンズ78で設計通りに集光され、第2開口OP2及び第1開口OP1を良好に透過して、フォトダイオード30に入射する。また、第3方向Dzに対して所定の角度を有して傾斜した光L2は、第1遮光層71及び第2遮光層72で遮光される。これにより、本実施形態の検出装置1は、バッファ層77を有さず、第2透光性樹脂層76上にレンズ78が形成された場合に比べて、検出精度を向上させることができる。
【0063】
上述したように、光フィルタ7は、アレイ基板2上に直接、成膜され、パターニング等の工程が施されて形成される。すなわち、光フィルタ7の第1遮光層71は、保護膜29の上に直接、接して設けられており、第1遮光層71と保護膜29との間に粘着層等の部材が設けられていない。ただし、これに限定されず、光フィルタ7は、接着層を介してアレイ基板2の保護膜29上に貼り合わされた、いわゆる外付けの光フィルタであってもよい。
【0064】
また、光フィルタ7は、第1遮光層71及び第2遮光層72を有する構成に限定されず、1層の遮光層で形成されていてもよい。例えば、
図6において第2遮光層72及び第2透光性樹脂層76を省略し、第1透光性樹脂層75の上にバッファ層77及びレンズ78が設けられていてもよい。また、フィルタ層73は、第1遮光層71と第1透光性樹脂層75との間に設けられているが、フィルタ層73の位置はこれに限定されない。フィルタ層73の位置は、光フィルタ7に要求される特性や製造プロセスに応じて適宜変更することができる。また、光フィルタ7は、遮光層と透光性樹脂層とが積層された構成に限定されない。例えば、光フィルタ7は、導光柱タイプの構造であってもよい。すなわち、光フィルタ7は、黒色の樹脂材料で形成された非透光性部材と、非透光性部材の上下面を貫通する柱状に形成された複数の透光領域(導光柱)と、を有する構成であってもよい。
【0065】
(実施例)
図7は、実施例に係るレンズの断面構成を模式的に示す説明図である。
図8は、比較例に係るレンズの断面構成を模式的に示す説明図である。
図9は、実施例に係るレンズ及び比較例に係るレンズ構造の測定結果を示す表である。なお、
図8では、理解を容易にするために、実施例に係るレンズ78を二点鎖線で示している。
【0066】
図7に示す実施例では、第2透光性樹脂層76の上にバッファ層77が設けられ、レンズ78はバッファ層77の上に形成される。
図8に示す比較例の検出装置200及び光フィルタ207では、バッファ層77が設けられず、レンズ278は第2透光性樹脂層76の上に形成される。
【0067】
図9に示すように、実施例のレンズ78及び比較例のレンズ278のそれぞれについて、高さH、Ha、径W3、W3a、曲率半径、曲率半径のばらつき、及び、レンズ剥がれの有無を測定した。曲率半径は、レンズ78、278の領域ごとに測定している。具体的には、レンズ78、278の円弧のうち、頂部から、高さH、Haの1/4までの範囲における円弧の曲率半径、レンズ78、278の頂部から、高さH、Haの1/2までの範囲における円弧の曲率半径、レンズ78、278の頂部から、高さH、Haの1/1までの範囲(全範囲)における円弧の曲率半径をそれぞれ求めた。
【0068】
図9に示す曲率半径ばらつきは、実施例及び比較例のそれぞれについて、上述した3つの領域の曲率半径のうち最大曲率半径をRmaxとし、最小曲率半径をRminとしたときに、下記の式(1)で算出した。
【0069】
((Rmax-Rmin)/(Rmax+Rmin))×100(%) ・・・(1)
【0070】
図7から
図9に示すように、実施例のレンズ78の高さHは、比較例のレンズ278の高さHaに比べて高く形成され、実施例のレンズ78の径W3は、比較例のレンズ278の径W3aに比べて小さい。
【0071】
実施例のレンズ78の曲率半径は、(1/4)×H、(1/2)×H、Hの各領域で、ほぼ一定の値で形成される。また、実施例のレンズ78では、式(1)により算出された曲率半径ばらつきは2.61%と小さい値に抑制される。
【0072】
比較例のレンズ278は、実施例のレンズ78に比べて(1/4)×H、(1/2)×H、Hの各領域で、曲率半径が大きく形成される。また、比較例のレンズ278の曲率半径は、(1/4)×H、(1/2)×H、Hの各領域で、ばらつきを有して形成される。具体的には、比較例のレンズ278は、頂部に近いほど(例えば高さ(1/4)×Hまでの領域で)曲率半径が大きく、頂部から離れるほど(例えば高さHまでの領域で)曲率半径が小さくなる。比較例のレンズ278では、式(1)で算出された曲率半径ばらつきは10.51%である。
【0073】
図9に示す「レンズ剥がれ」は、検出領域AAに設けられた複数のレンズ78、278のうち、バッファ層77(比較例では第2透光性樹脂層76)から剥離し、レンズ78、278が脱落して形成されない部分の有無を示す。
図9に示すように、実施例では、レンズ剥がれが発生せず、全てのレンズ78が良好に形成されている。これに対し、比較例では、レンズ剥がれが発生し、一部のレンズ278で脱落して形成されない部分がある。
【0074】
以上のように、実施例に係るレンズ78は、バッファ層77を設けることにより、比較例に比べてレンズ78とバッファ層77との濡れ性が向上し、曲率の均一性が向上することが示された。すなわち、実施例に係るレンズ78の断面構造において、円弧に沿って複数に分割した部分ごとの曲率半径のばらつきが抑制される。さらに、実施例に係るレンズ78は、レンズ剥がれの発生も抑制されることが示された。
【0075】
次に、フォトダイオード30及びアレイ基板2の構成例について説明する。
図10は、実施形態に係る検出装置のフォトダイオードを模式的に示す平面図である。
図11は、
図10のXI-XI’断面図である。なお、
図10では、図面を見やすくするために、フォトダイオード30に重なる複数のレンズ78を二点鎖線で示している。また、
図11では、検出素子3が有する3つのトランジスタのうち、リセットトランジスタMrstの断面構成を示しているが、ソースフォロワトランジスタMsf及び読出トランジスタMrdの断面構成もリセットトランジスタMrstと同様である。
【0076】
図10に示すように、複数の走査線GLは、それぞれ第1方向Dxに延在し、第2方向Dyに並んで配置される。複数の出力信号線SLは、それぞれ第2方向Dyに延在し、第1方向Dxに並んで配置される。1つの検出素子3(フォトダイオード30)は、2つの走査線GLと、2つの出力信号線SLとで囲まれた領域に形成される。なお、
図10に示す走査線GLは、読出制御走査線GLrd及びリセット制御走査線GLrst(
図4参照)のいずれか一方である。
【0077】
図11に示すように、フォトダイオード30は、アレイ基板2の上、すなわち、基板21の第1主面S1側に設けられる。基板21は絶縁基板である。基板21は、例えば、石英、無アルカリガラス等のガラス基板が用いられる。基板21は、第1主面S1と、第1主面S1と反対側の第2主面S2とを有する。基板21の第1主面S1に、リセットトランジスタMrstを含む各種トランジスタ、各種配線(走査線及び信号線)及び絶縁膜が設けられてアレイ基板2が形成される。
【0078】
アンダーコート膜22は、基板21の第1主面S1上に設けられる。アンダーコート膜22、絶縁膜23、24、25及び絶縁膜27、28は、無機絶縁膜であり、例えば、酸化シリコン(SiO2)や窒化シリコン(SiN)等である。
【0079】
半導体層61は、アンダーコート膜22の上に設けられる。半導体層61は、例えば、ポリシリコンが用いられる。ただし、半導体層61は、これに限定されず、微結晶酸化物半導体、アモルファス酸化物半導体、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Polycrystalline Silicone)等であってもよい。
【0080】
絶縁膜23は、半導体層61を覆ってアンダーコート膜22の上に設けられる。ゲート電極64は、絶縁膜23の上に設けられる。なお、ソースフォロワトランジスタMsfのゲート電極68も、ゲート電極64と同層に、絶縁膜23の上に設けられる。また、走査線GL(リセット制御走査線GLrst及び読出制御走査線GLrd)もゲート電極64と同層に設けられる。絶縁膜24は、ゲート電極64を覆って絶縁膜23の上に設けられる。
【0081】
図11に示すように、リセットトランジスタMrstは、ゲート電極64が半導体層61の上側に設けられたトップゲート構造である。ただし、検出装置1において、ゲート電極64が半導体層61の下側に設けられたボトムゲート構造でもよく、ゲート電極64が半導体層61の上側及び下側に設けられたデュアルゲート構造でもよい。
【0082】
絶縁膜24及び絶縁膜25は、ゲート電極64を覆って絶縁膜23の上に設けられる。ソース電極62及びドレイン電極63は、絶縁膜25の上に設けられる。ソース電極62は、絶縁膜23、24、25を貫通するコンタクトホールCH4を介して半導体層61のソース領域と接続される。ドレイン電極63は、絶縁膜23、24、25を貫通するコンタクトホールCH3を介して半導体層61のドレイン領域と接続される。ソース電極62及びドレイン電極63は、例えば、チタンとアルミニウムとの積層構造であるTiAlTi又はTiAlの積層膜で構成されている。
【0083】
また、出力信号線SL及び接続配線SLcnは、ソース電極62及びドレイン電極63と同層に設けられる。検出素子3の接続配線SLcnは、絶縁膜24、25を貫通するコンタクトホールを介してソースフォロワトランジスタMsfのゲート電極68に接続される。
【0084】
また、フォトダイオード30と重なる領域に、第1電極81及び第2電極82が設けられる。第1電極81と第2電極82との間に容量Cadが形成される。容量Cadは、フォトダイオード30に付加される容量であり、
図4に示す容量素子Csと並列に接続される。第1電極81及び第2電極82は、トランジスタ(例えば、リセットトランジスタMrst)を構成する各層のうち2つの層を利用して設けられる。本実施形態では、第2電極82は、半導体層61と同層であり、半導体層61と同じ材料で形成される。第1電極81は、ゲート電極64と同層であり、ゲート電極64と同じ材料で形成される。
【0085】
絶縁膜26は、リセットトランジスタMrst等の複数の各種トランジスタを覆って絶縁膜25の上に設けられる。絶縁膜26は、感光性アクリル等の有機材料からなる。絶縁膜26は、絶縁膜25よりも厚い。絶縁膜26は、無機絶縁材料に比べ、段差のカバレッジ性が良好であり、各種トランジスタ及び各種配線で形成される段差を平坦化することができる。
【0086】
フォトダイオード30は、絶縁膜26の上に設けられる。具体的には、下部電極35は、絶縁膜26の上に設けられ、コンタクトホールCH2を介して接続配線SLcnに電気的に接続される。フォトダイオード30は、下部電極35に接続される。下部電極35は、例えば、チタン(Ti)及び窒化チタン(TiN)の積層構造を採用することができる。下部電極35は、基板21と、フォトダイオード30の半導体層との間に設けられので、下部電極35は、遮光層として機能し、フォトダイオード30への基板21の第2主面S2側からの光の侵入を抑制できる。
【0087】
フォトダイオード30は、光起電力効果を有する半導体層を含み構成される。具体的には、フォトダイオード30の半導体層は、i型半導体層31、p型半導体層32及びn型半導体層33を含む。i型半導体層31、p型半導体層32及びn型半導体層33は、例えば、アモルファスシリコン(a-Si)である。なお、半導体層の材料は、これに限定されず、ポリシリコン、微結晶シリコン等であってもよい。
【0088】
p型半導体層32は、a-Siに不純物がドープされてp+領域を形成する。n型半導体層33は、a-Siに不純物がドープされてn+領域を形成する。i型半導体層31は、例えば、ノンドープの真性半導体であり、p型半導体層32及びn型半導体層33よりも低い導電性を有する。
【0089】
基板21の表面に垂直な方向(第3方向Dz)において、i型半導体層31は、n型半導体層33とp型半導体層32との間に設けられる。本実施形態では、下部電極35の上に、n型半導体層33、i型半導体層31、p型半導体層32の順に積層されている。また、本実施形態では、上部電極34がフォトダイオード30のアノード電極であり、下部電極35がフォトダイオード30のカソード電極である。
【0090】
下部電極35は、フォトダイオード30の外側、すなわち、n型半導体層33、i型半導体層31及びp型半導体層32と重ならない領域まで延在して設けられる。下部電極35は、絶縁膜26に設けられたコンタクトホールCH2を介して接続配線SLcn、リセットトランジスタMrst及びソースフォロワトランジスタMsfに電気的に接続される。
【0091】
上部電極34は、p型半導体層32の上に設けられる。上部電極34は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料である。絶縁膜27は、フォトダイオード30及び上部電極34を覆って絶縁膜26の上に設けられる。絶縁膜27には上部電極34と重なる領域にコンタクトホールCH1(開口)が設けられる。
【0092】
接続配線36は、絶縁膜27の上に設けられ、コンタクトホールCH1(開口)を介して上部電極34と電気的に接続される。p型半導体層32には、接続配線36及び上部電極34を介して基準電位VCOM(
図4参照)が供給される。
【0093】
絶縁膜28は、上部電極34及び接続配線36を覆って絶縁膜27の上に設けられる。絶縁膜28は、フォトダイオード30への水分の侵入を抑制する保護層として設けられる。さらに、保護膜29は、絶縁膜28の上に設けられる。保護膜29は、有機材料で形成されたハードコート膜(有機保護膜)である。保護膜29は、フォトダイオード30や接続配線36で形成された絶縁膜28の表面の段差を平坦化する。
【0094】
光フィルタ7は保護膜29の上に設けられる。光フィルタ7は、接着層を介さず保護膜29の上に直接設けられる。カバー部材122は、光フィルタ7の上に設けられる。カバー部材122は、接着層125(
図1参照)によって光フィルタ7に貼り合わされる。接着層125は、例えば、透光性の光学粘着シート(OCA:Optical Clear Adhesive)である。
【0095】
なお、
図10及び
図11に示すフォトダイオード30の構成はあくまで一例であり、適宜変更できる。例えば、フォトダイオード30の積層順は逆であってもよく、下部電極35の上に、p型半導体層32、i型半導体層31、n型半導体層33の順に積層されていてもよい。
【0096】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
1、200 検出装置
2 アレイ基板
7、207 光フィルタ
21 基板
30 フォトダイオード
71 第1遮光層
72 第2遮光層
73 フィルタ層
74 バリア層
75 第1透光性樹脂層
76 第2透光性樹脂層
77 バッファ層
78、278 レンズ