(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008088
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】デルタシグマ型変調器
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20250109BHJP
H03M 1/12 20060101ALI20250109BHJP
H03M 1/10 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
H03M3/02
H03M1/12
H03M1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109955
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】谷口 壮耶
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
【Fターム(参考)】
5J022BA03
5J022CA03
5J064BA03
5J064BB01
5J064BB14
5J064BC06
5J064BC10
5J064BC11
5J064BC13
5J064BC15
5J064BC16
5J064BC24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】入力の前段に抵抗素子を接続した際の検出誤差を、より低減できるデルタシグマ型変調器を提供する。
【解決手段】デルタシグマ型変調器1において、量子化器チョッピング用スイッチ29を量子化器5の出力側に接続し、第1、第3アンプチョッピング用スイッチ10、13を、容量結合アンプ2の入力側及び出力側に接続する。第1、第3アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作により変調された信号を、量子化器チョッピング用スイッチ29によるチョッピング動作により復調する。第1、第3アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作を、量子化器チョッピング用スイッチの動作周波数の1/2の周波数で、且つ、互いの位相が90度異なるタイミングで行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量結合アンプ(2)と、
この容量結合アンプの出力側に接続される相関2重サンプリング型の積分器(3)と、
この積分器の出力側に接続される量子化器(5)と、
この量子化器の出力側に接続される量子化器チョッピング用スイッチ(29)と、
前記容量結合アンプの入力側、又は入力側及び出力側に接続される少なくとも2つのアンプチョッピング用スイッチ(10、11,12、36~38)と、を備え、
前記アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作により変調された信号を、前記量子化器チョッピング用スイッチによるチョッピング動作により復調し、
前記アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作は、前記量子化器チョッピング用スイッチの動作周波数の1/2の周波数で、且つ互い位相が90度異なるタイミングで行われるデルタシグマ型変調器。
【請求項2】
前記アンプチョッピング用スイッチ(10,13)は、前記容量結合アンプの入力側及び出力側にそれぞれ配置されている請求項1記載のデルタシグマ型変調器。
【請求項3】
前記アンプチョッピング用スイッチ(10,11)は、何れも前記容量結合アンプの入力側に配置され、それらの一方は、前記容量結合アンプを動作させる信号と、前記チョッピング動作用の信号とを論理合成した信号によりチョッピングされる請求項1記載のデルタシグマ型変調器。
【請求項4】
前記アンプチョッピング用スイッチのそれぞれと、前記容量結合アンプの入力端子、出力端子との間に、入力側動作用スイッチ及び出力側動作用スイッチを配置し、
前記入力側動作用スイッチ、及び前記出力側動作用スイッチは、基本動作周波数をFsとすると、それぞれ周波数Fs/2で、且つ互い位相が90度異なるタイミングで動作する請求項2記載のデルタシグマ型変調器。
【請求項5】
入力容量(12)と、
この入力容量に接続される相関2重サンプリング型の積分器(3)と、
この積分器出力側に接続される量子化器(5)と、
この量子化器の出力側に接続される量子化器チョッピング用スイッチ(29)と、
前記入力容量の入力側に配置される、少なくとも2つのアンプチョッピング用スイッチ(10,11)と、を備え、
前記アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作により変調された信号を、前記量子化器チョッピング用スイッチによるチョッピング動作により復調し、
前記アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作は、前記量子化器チョッピング用スイッチの動作周波数の1/2の周波数で、且つ互い位相が90度異なるタイミングで行われるデルタシグマ型変調器。
【請求項6】
前記アンプチョッピング用スイッチ(11,36~38)を、3つ以上備え、
前記アンプチョッピング用スイッチの2つ以上は、前記動作周波数の1/2よりも低い周波数で、且つそれぞれ異なる位相でチョッピング動作され、
前記アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作により変調された信号を、前記量子化器チョッピング用スイッチによるチョッピング動作により復調する請求項1又は5記載のデルタシグマ型変調器。
【請求項7】
前記アンプチョッピング用スイッチの1つ(11)は、前記容量結合アンプを動作させる信号と、前記チョッピング動作用の信号とを論理合成した信号によりチョッピングされる請求項6記載のデルタシグマ型変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタシグマ型の変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、デルタシグマ型の変調器において、A/D変換動作を行なう部分の入出力と、積分器における積分容量の入出力とにおいて、同じ周波数でチョッピングを行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2022/0263520明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成において、入力の前段に、アンチエイリアスフィルタ等を構成する抵抗素子を接続することを想定する。この場合、スイッチドキャパシタ動作による電荷の吸い込みが発生し、抵抗素子にて電圧降下が生じるため、その電圧降下分が検出誤差となってしまう。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力の前段に抵抗素子を接続した際の検出誤差を、より低減できるデルタシグマ型変調器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のデルタシグマ型変調器によれば、容量結合アンプ(2)、相関2重サンプリング型の積分器(3)、及び量子化器(5)を備える。量子化器チョッピング用スイッチ(29)を量子化器の出力側に接続し、少なくとも2つのアンプチョッピング用スイッチ(10、11,12、36~38)を、容量結合アンプの入力側、又は入力側及び出力側に接続する。そして、アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作により変調された信号を、量子化器チョッピング用スイッチによるチョッピング動作により復調する。アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作は、量子化器チョッピング用スイッチの動作周波数の1/2の周波数で、且つ互い位相が90度異なるタイミングで行われる。
【0007】
容量結合アンプの入力側において、アンプチョッピング用スイッチの前段に抵抗素子が接続される構成においても、容量結合アンプの入力側で行われるチョッピング動作の周波数を、量子化器の出力側で行われるチョッピングの1/2にすることで、スイッチドキャパシタ動作による電荷の吸い込み量を低減できる。また、少なくとも2つのアンプチョッピング用スイッチによるチョッピングの位相を、互いに90度異なるタイミングとすることで、チョッピングの切り替わりによって生じるオフセットも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態であり、デルタシグマ型変調器の構成を示す図
【
図3】主要なチョッピング用スイッチの制御信号を示すタイミングチャート
【
図4】第2実施形態であり、デルタシグマ型変調器の構成を示す図
【
図5】第3実施形態であり、デルタシグマ型変調器の構成を示す図
【
図6】第4実施形態であり、デルタシグマ型変調器の構成を示す図
【
図7】第5実施形態であり、デルタシグマ型変調器の構成を示す図
【
図8】主要なチョッピング用スイッチの制御信号を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のデルタシグマ型変調器1は差動型であり、容量結合アンプ2、第1積分器3、第2積分器4及び量子化器5を備えている。尚、図中で差動構成の各側の符号には「a,b」を付しているが、構成が対称であるため特段区別する必要がない限りは、符号に「a,b」を付さない。容量結合アンプ2を構成するオペアンプ6の入力端子と出力端子との間には、コンデンサ7と、スイッチ8及び9の直列回路とが並列に接続されている。スイッチ8及び9の共通接続点は、グランドに接続されている。オペアンプ6の入力端子には、電圧Vinp,Vinmが第1及び第2アンプチョッピング用スイッチ10及び11、並びにコンデンサ12を介して入力される。
【0010】
図1ではシンボル的に示しているチョッピング用スイッチ10,11は、
図2に示すように、4つの単位スイッチSWを備えている。反転側、非反転側にそれぞれ直列に接続されるスイッチSW(+),SW(-)と、反転側、非反転側間にたすき掛け状態で接続される2つのスイッチSW(+),SW(-)とからなる。尚、各スイッチは、例えばNチャネルMOSFET等で構成される。
【0011】
オペアンプ6の出力端子は、第3アンプチョッピング用スイッチ13、コンデンサ14を介して、第1積分器3を構成するオペアンプ15の入力端子に接続されている。オペアンプ15の入力端子と出力端子との間には、スイッチ16と、スイッチ17、チョッピング用スイッチ18、コンデンサ19、及びチョッピング用スイッチ20の直列回路とが並列に接続されている。第1積分器3は、相関2重サンプリング型である。
【0012】
オペアンプ15の出力端子は、スイッチ21、コンデンサ22及びスイッチ23を介して、第2積分器4を構成するオペアンプ24の入力端子に接続されている。スイッチ21及びコンデンサ22の共通接続点と、コンデンサ22及びスイッチ23の共通接続点とはグランドに接続されている。オペアンプ24の入力端子は、スイッチ25を介してグランドに接続されている。オペアンプ24の入力端子と出力端子との間には、チョッピング用スイッチ26、コンデンサ27、及びチョッピング用スイッチ28の直列回路が接続されている。コンデンサ27及びチョッピング用スイッチ28の共通接続点は、グランドに接続されている。
【0013】
オペアンプ24の出力端子は、量子化器5の入力端子に接続されている。量子化器5の出力端子には、量子化器用チョッピングスイッチ29が接続されている。オペアンプ15の入力端子には、量子化器5の出力をフィードバックするD/Aコンバータ30の出力端子が、コンデンサ31を介して接続されている。尚、D/Aコンバータ30は、簡略的に3連スイッチのシンボルで示している。また、コンデンサ22及びスイッチ23の共通接続点には、同様に量子化器5の出力をフィードバックするD/Aコンバータ32の出力端子が、コンデンサ33を介して接続されている。
【0014】
次に、本実施形態の作用について説明する。尚、
図1及び
図3では、本実施形態の要部に係るチョッピング動作についてのタイミングのみを示している。容量結合アンプ2において、第2アンプチョッピング用スイッチ11の動作周波数をFsとすると、第2,第3アンプチョッピング用スイッチ10、13の動作周波数をFs/512とする。但し、両者の位相は90度異なり、例えば前者の位相をsinωtとすると、後者の位相はcosωtとなる。
第1積分器3におけるチョッピング用スイッチ18及び20、第2積分器4におけるチョッピング用スイッチ26及び28、量子化器5の出力側にある量子化器用チョッピングスイッチ29の動作周波数は、何れもFs/256(sinωt)である。
【0015】
以上のように本実施形態によれば、デルタシグマ型変調器1において、容量結合アンプ2、第1及び第2積分器3及び4、並びに量子化器5を備える。量子化器チョッピング用スイッチ29を量子化器5の出力側に接続し、第1及び第3アンプチョッピング用スイッチ10及び13を、容量結合アンプ2の入力側及び出力側に接続する。そして、アンプチョッピング用スイッチ10及び13のチョッピング動作により変調された信号を、量子化器チョッピング用スイッチ29によるチョッピング動作により復調する。アンプチョッピング用スイッチのチョッピング動作を、量子化器チョッピング用スイッチ10及び13の動作周波数の1/2の周波数で、且つ互い位相が90度異なるタイミングで行う。
【0016】
第1アンプチョッピング用スイッチ10の前段に抵抗素子が接続される構成においても、容量結合アンプ2の入力側で行われるチョッピング動作の周波数を、量子化器5の出力側で行われるチョッピングの1/2にすることで、スイッチドキャパシタ動作による電荷の吸い込み量を低減できる。また、2つのアンプチョッピング用スイッチ10,13によるチョッピングの位相を、互いに90度異なるタイミングとすることで、チョッピングの切り替わりによって生じるオフセットも低減できる。
【0017】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図4に示すように、第2実施形態のデルタシグマ型変調器31は、デルタシグマ型変調器1より第3アンプチョッピング用スイッチ13を削除した構成である。そして、第1アンプチョッピング用スイッチ10を、周波数Fsのチョッピング信号と、周波数Fs/256(cosωt)のチョッピング信号とを、排他的論理和により合成した信号によってチョッピング動作させる。これにより、回路規模をより小さくすることができる。
【0018】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態のデルタシグマ型変調器32は、デルタシグマ型変調器1において、容量結合アンプ2を構成するオペアンプ6の出力端子と、第3アンプチョッピング用スイッチ13との間に、第4アンプチョッピング用スイッチ33を挿入したものである。そして、第2アンプチョッピング用スイッチ11を周波数Fs/2(sinωt)でチョッピング動作させ、第4アンプチョッピング用スイッチ33を、周波数Fs/2(cosωt)でチョッピング動作させる。これにより、容量結合アンプ2の動作周波数が1/2になるので、誤差をより低減できる。
【0019】
(第4実施形態)
図6に示すように、第4実施形態のデルタシグマ型変調器34は、第2実施形態のデルタシグマ型変調31より、容量結合アンプ2を削除した構成である。
【0020】
(第5実施形態)
図7に示すように、第5実施形態のデルタシグマ型変調器35は、第2実施形態のデルタシグマ型変調31において、第1アンプチョッピング用スイッチ11の前段に、第5~第7アンプチョッピング用スイッチ36~38を追加した構成である。第1アンプチョッピング用スイッチ11は、周波数Fsのチョッピング信号と、周波数Fs/1024(sinωt)のチョッピング信号とを、排他的論理和により合成した信号によってチョッピング動作させる。
【0021】
第5~第7アンプチョッピング用スイッチ36~38の動作周波数は何れも、周波数Fs/1024であるが、
図8に示すように、以下のように位相差を付与する。
・第1アンプチョッピング用スイッチ11:Fs/1024(sinωt)
・第5アンプチョッピング用スイッチ35:Fs/1024(sinωt+π/4)
・第6アンプチョッピング用スイッチ36:Fs/1024(sinωt+π/2)
・第7アンプチョッピング用スイッチ37:Fs/1024(sinωt+3π/4)
【0022】
すなわち、容量結合アンプ2の入力側で、4つのチョッピング用スイッチ11及び35~37により、互いに90度の位相差を付与してチョッピング動作させる。これにより、周波数Fs/256の1/4となる周波数Fs/1024で、より低い周波数でチョッピング動作させることができる。
【0023】
(その他の実施形態)
第4実施形態において、容量結合アンプ2の入力側に配置するチョッピング用スイッチを、2,3又は5以上としても良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0024】
図面中、1はデルタシグマ型変調器、2は容量結合アンプ、3は第1積分器、4は第2積分器、5は量子化器、10は第1アンプチョッピング用スイッチ、11は第2アンプチョッピング用スイッチ、13は第3アンプチョッピング用スイッチ、29は量子化器チョッピング用スイッチを示す。