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  • 特開-電池スタック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008090
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20250109BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/262 P
H01M50/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109958
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 伊織
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC26
(57)【要約】
【課題】電池セルの配列体に必要荷重を印加する。
【解決手段】電池スタック10は、複数の電池セル12が配列された配列体16と、配列体16の電池セル12の配列方向の両端に配置されて、配列体16に拘束荷重を印加する一対の拘束部材20-1,20-2と、一対の拘束部材20-1,20-2の少なくとも一方の側において拘束部材20-2(20-1)と配列体16の間に配置された弾性体18と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが配列された配列体と、
前記配列体の前記電池セルの配列方向の両端に配置されて、前記配列体に拘束荷重を印加する一対の拘束部材と、
一対の前記拘束部材の少なくとも一方の側において、前記拘束部材と前記配列体の間に配置された弾性体と、を備える、
ことを特徴とする電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを拘束してなる電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両に搭載された電池スタックが知られている。電池スタックは、複数の電池セルが配列された配列体と、配列体に拘束荷重を印加する一対の拘束部材(エンドプレート)を備える。電池スタックの使用中は、電池スタック内の複数の電池セルに一定以上の荷重をかけておく必要があるため、一対の拘束部材が設けられている。特許文献1には、電池スタック(電池モジュール)の構造の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-76503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば電池スタックを小型化するために、拘束部材をシンプルな構造にしたり、小型化したりすることが考えられる。しかし、この場合、拘束部材に印加される荷重に対する拘束部材の変形量(変位)が大きくなる(ばね定数が小さくなる)可能性がある。それにより、電池セルの配列体に必要荷重を印加できなくなる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、拘束部材のばね定数が小さい場合であっても、電池セルの配列体に必要荷重を印加できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池スタックは、複数の電池セルが配列された配列体と、前記配列体の前記電池セルの配列方向の両端に配置されて、前記配列体に拘束荷重を印加する一対の拘束部材と、一対の前記拘束部材の少なくとも一方の側において、前記拘束部材と前記配列体の間に配置された弾性体と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性体(ばね定数が小さい物体)が設けられているため、一対の拘束部材により拘束される内側構造物(配列体と弾性体)のばね定数を小さくすることができる。これにより、一対の拘束部材のばね定数が小さい場合であっても、一対の拘束部材と内側構造物のつり合い荷重をあげることができるため、電池セルの配列体に必要荷重を印加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電池スタックの分解斜視図である。
図2】電池スタックの斜視図である。
図3】(A)は第1拘束部材の斜視図であり、(B)は第2拘束部材の斜視図であり、(C)は第1、2拘束部材の接合の説明図である。
図4】(A)と(B)は、セルばね力と拘束部材ばね力の線図であり、(C)は弾性体反力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、電池スタック10の分解斜視図である。図2は、電池スタック10の斜視図であり、電池スタック10の組立後の状態を示す。電池スタック10は、複数の電池セル12と、複数の樹脂枠14と、弾性体18と、第1拘束部材20-1と、第2拘束部材20-2を備える。以下では、第1拘束部材20-1と第2拘束部材20-2を、一対の拘束部材20-1,20-2とも言う。
【0011】
樹脂枠14は、電池セル12同士を絶縁するための部材である。樹脂枠14は、電池セル12ごとに設けられている。樹脂枠14と電池セル12は、交互に並べて配列されている。電池セル12は、図2に示すように、樹脂枠14の内側に配置されている。樹脂枠14と電池セル12は、配列体16を構成している。以下、電池セル12を単にセルとも言う。
【0012】
弾性体18は、電池セル12に荷重をかけるための反力を出す部材である。図1に示すように、弾性体18は、配列体16と第2拘束部材20-2の間に配置されている。配列体16と弾性体18は、内側構造物を構成しており、一対の拘束部材20-1,20-2により拘束される。
【0013】
一対の拘束部材20-1,20-2は、電池セル12を拘束して、固定するための部材である。図3(A)は、第1拘束部材20-1の斜視図である。第1拘束部材20-1は、ベース板30と、2つの側板32を備える。2つの側板32は、ベース板30から折り曲げられて設けられており、ベース板30に対して垂直方向に延びている。2つの側板32はそれぞれ、内側に開口を有している。ベース板30の上部には、折り曲げリブ36が設けられており、ベース板30の下部には、折り曲げリブ37が設けられている。折り曲げリブ36,37は、第1拘束部材20-1に荷重が印加された際に、第1拘束部材20-1の変形を抑制する部分として機能する。第1拘束部材20-1は、金属製である。
【0014】
図3(B)は、第2拘束部材20-2の斜視図である。第2拘束部材20-2は、ベース板40と、2つの側板42を備える。2つの側板42は、ベース板40から折り曲げられて設けられており、ベース板40に対して垂直方向に延びている。ベース板40の上部には、折り曲げリブ46が設けられており、ベース板40の下部には、折り曲げリブ47が設けられている。折り曲げリブ46,47は、第2拘束部材20-2に荷重が印加された際に、第2拘束部材20-2の変形を抑制する部分として機能する。第2拘束部材20-2は、金属製である。
【0015】
第1拘束部材20-1の側板32は、第2拘束部材20-2の側板42に比べて、長く延びている。図2に示すように、左右の両側で(図2には左側のみを示す)、第1拘束部材20-1の側板32の先端内側に、第2拘束部材20-2の側板42が配置されており、それらがレーザ溶接で接合されている。図3(C)に示すように、第2拘束部材20-2の側板42を受ける側とし、第1拘束部材20-1の側板32を変形させる側としている。すなわち、側板32,42の間の板隙間をなくすために、図3(C)の右側に示すように、第1拘束部材20-1の側板32(変形させる側)の外側から荷重を印加して、それを変形させている。そして、側板32,42の間の板隙間をなくした状態で、レーザ溶接が施されている。
【0016】
電池スタック10の使用中は、電池スタック10内の複数の電池セル12に、一定以上の荷重をかけて固定しておく必要がある。本実施形態では、電池スタック10内に弾性体18を入れることで弾性体18の反力を用いて、荷重をかけている。また、一対の拘束部材20-1,20-2の接合には、レーザ溶接を用いることで、電池スタック10の小型化を実現している。
【0017】
ここで、セルにかかる荷重の考え方を説明する。これは「セルばね力」と、「拘束部材ばね力」のつり合いで考える。「セルばね力」とは、一対の拘束部材20-1,20-2により拘束される側の部材(電池セル12、樹脂枠14、及び弾性体18)に生じる力である。「拘束部材ばね力」とは、一対の拘束部材20-1,20-2に生じる力である。
【0018】
図4(A)は、「セルばね力」と「拘束部材ばね力」の荷重線図である。同図では、横軸が変形量、縦軸が荷重となっている。まず、治具で強制的に、荷重をかけて拘束した状態を、変形量ゼロとする。この時、「セルばね力」は、治具により強制的に荷重がかかった状態なので、治具による荷重を起点に、セルばね定数で線を引ける。一方、「拘束部材ばね力」は、治具での荷重を受けないため、ゼロを起点に、拘束部材ばね定数で線が引ける。ここから、治具による強制荷重を開放すると、それぞれの力は各ばね定数に沿って変動し、交点でつり合う。このときのつり合い荷重が、セルにかかる荷重となる。この荷重が、必要荷重よりも大きくなるように、設計を行う必要がある。このように、セルにかかる荷重は、「セルばね力」と「拘束部材ばね力」のつり合いで決まることが分かる。
【0019】
本実施形態では、第1、2拘束部材20-1,20-2をシンプルな構造にして、小型化している。このようにシンプルで小型化したときの拘束部材の「拘束部材ばね力」を、図4(B)に示す。本実施形態では、従来の拘束部材に存在していた剛性部分を無くしたことにより、図4(B)に示すように、拘束部材のばね定数が小さくなり、「拘束部材ばね力」の傾きが小さくなる。すると、つり合い荷重は、セルばね定数にそって小さくなる。このときの荷重が、必要荷重を下回ってしまうため、つり合い荷重を上げる対策が必要になる。
【0020】
つり合い荷重を大きくするためには、図4(B)のグラフから、セルばね定数の傾きを小さくすればよいことが分かる。セルばね定数の傾きを小さくすると、つり合い荷重は大きくなり、必要荷重を上回ることが可能になる。以上から、セルばね定数を小さくしたいが、セルばね定数はセル構造で決まってしまう。そこで、本実施形態では、セル側にばね定数が小さい弾性体18を入れることで、セルばね定数を小さくし、つり合い荷重を上げる設計としている。
【0021】
すなわち、本実施形態によれば、弾性体18が設けられているため、内側構造物(配列体16と弾性体18)のばね定数(セルばね定数)を小さくすることができる。これにより、一対の拘束部材20-1,20-2のばね定数(拘束部材のばね定数)が小さい場合であっても、一対の拘束部材20-1,20-2と内側構造物(配列体16と弾性体18)のつり合い荷重を上げることができる。そのため、電池セル12の配列体16に必要荷重を印加することができる。
【0022】
なお、弾性体18の反力の設計は、図4(C)に示すように、材料特性と部品変形を考慮している。同図では、横軸が圧縮量、縦軸が反力値となっている。ここで、反力低下要因の材料特性として、往路復路のヒステリシスがある。これは、セル厚み寸法を安定化させるために、過圧縮をしたあと、拘束荷重値まで荷重を落とすので、拘束時は必ず復路の反力になることを考慮している。次に、拘束部材の変形と、セルの収縮による寸法変化を考慮する。最後に、再び材料特性として、温度依存性と圧縮永久歪による反力低下を考慮する。これらを考慮した値を荷重Min値とする。この荷重値が必要荷重を上回るように、弾性体18の設計を行っている。
【0023】
次に、変形例について説明する。以上で説明した実施形態では、電池スタック10の内側に弾性体18を設けた。しかし、弾性体18に代えて、スプリングを入れる変形例を考えることができる。また、各樹脂枠14を弾性材料(弾性体)により形成する別の変形例を考えることもできる。
【符号の説明】
【0024】
10 電池スタック、12 電池セル、14 樹脂枠、16 配列体、18 弾性体、20-1 第1拘束部材(拘束部材)、20-2 第2拘束部材(拘束部材)、30 ベース板、32 側板、36,37 折り曲げリブ、40 ベース板、42 側板、46,47 折り曲げリブ。
図1
図2
図3
図4