(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008104
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】感震センサおよび地震検知方法、地震検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G01V 1/36 20060101AFI20250109BHJP
G01V 1/01 20240101ALI20250109BHJP
【FI】
G01V1/36
G01V1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109983
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】重本 章吾
(72)【発明者】
【氏名】成宮 章紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅思
(72)【発明者】
【氏名】浦田 秀之
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105FF16
2G105GG01
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することが可能な感震センサおよび地震検知方法、地震検知プログラムを提供する。
【解決手段】感震センサ10は、加速度取得部21、地震判定部25、オフセット調整部29、収束判定部29a、原点補正要否判定部29bを備える。オフセット調整部29は、地震判定部25で検出された振動に含まれるノイズを検出した後に振動の大きさに応じてオフセット量を調整する。収束判定部29aは、振動が収束したか否かを判定する。原点補正要否判定部29bは、収束判定部29aにおいて振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、加速度の原点補正を行うか否かを判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を検出し前記振動の加速度を取得する加速度取得部と、
前記加速度取得部において取得された前記加速度に基づいて、前記振動が地震であるか否かを判定する地震判定部と、
前記地震判定部において検出された前記振動に含まれるノイズを検出した後に、前記振動の大きさに応じてオフセット量を調整するオフセット調整部と、
前記振動が収束したか否かを判定する収束判定部と、
前記収束判定部において前記振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、前記ノイズを検出した後の前記振動の大きさに応じて算出された前記オフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、前記加速度の原点補正を行うか否かを判定する原点補正要否判定部と、
を備えている感震センサ。
【請求項2】
前記オフセット調整部は、前記オフセット量が前回のオフセット量と同程度である場合には、新たな前記オフセット量を用いてオフセット調整を行う、
請求項1に記載の感震センサ。
【請求項3】
前記オフセット調整部は、前記所定期間が経過すると、前回のオフセット量よりも大きい前記オフセット量を用いて、前記加速度の原点補正を含むオフセット調整を行う、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項4】
前記収束判定部は、前記地震判定部における判定後、所定時間が経過した後、前記振動が収束したか否かを判定する、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項5】
前記オフセット調整部は、前記原点補正要否判定部において原点補正が必要と判定されると、水平面における加速度の原点補正を行って重力加速度の方向のずれを修正する、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項6】
前記オフセット調整部は、前記地震判定部において前記振動が地震ではないと判定された場合に、前記オフセット量の調整を行う、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項7】
前記加速度取得部が設けられた本体部を、さらに備え、
前記原点補正要否判定部は、前記オフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、前記振動が収束後における前記本体部の傾きの有無を判定する、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項8】
前記加速度取得部において取得された前記加速度と経過時間との関係を示す加速度波形を生成する加速度波形生成部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項9】
前記加速度波形生成部において生成された前記加速度波形の周波数を検出する周波数検出部を、さらに備えている、
請求項8に記載の感震センサ。
【請求項10】
前記地震判定部は、前記周波数検出部において検出された前記周波数に基づいて、前記振動が地震であるか否かを判定する、
請求項9に記載の感震センサ。
【請求項11】
前記地震判定部において地震であると判定された場合に、所定の震度相当以上の地震であるか否かを判定する地震規模算出部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項12】
前記地震判定部において、地震であると判定された場合、所定の信号を出力する出力部を、さらに備えている、
請求項1に記載の感震センサ。
【請求項13】
前記地震判定部において、地震であると判定された場合、所定の信号を出力する出力部を、さらに備え、
前記地震規模算出部において算出された前記地震の規模が所定の震度相当以上であるか否かに応じて、前記出力部からの前記信号の出力を制御する出力制御部を、さらに備えている、
請求項11に記載の感震センサ。
【請求項14】
前記所定の信号は、エネルギーの供給を停止させる遮断信号である、
請求項12に記載の感震センサ。
【請求項15】
前記所定の信号は、使用者に対して警告を与える警告信号である、
請求項12に記載の感震センサ。
【請求項16】
前記オフセット量を保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の感震センサ。
【請求項17】
振動を検出し前記振動の加速度を取得する加速度取得ステップと、
前記加速度取得ステップにおいて取得された前記振動の加速度に基づいて、前記振動が地震であるか否かを判定する地震判定ステップと、
前記地震判定ステップにおいて検出された前記振動に含まれるノイズを検出した後に、前記振動の大きさに応じてオフセット量を調整するオフセット調整ステップと、
前記振動が収束したか否かを判定する収束判定ステップと、
前記収束判定ステップにおいて前記振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、前記ノイズを検出した後の前記振動の大きさに応じて算出された前記オフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、前記加速度の原点補正を行うか否かを判定する原点補正要否判定ステップと、
を備えた地震検知方法。
【請求項18】
振動を検出し前記振動の加速度を取得する加速度取得ステップと、
前記加速度取得ステップにおいて取得された前記振動の加速度に基づいて、前記振動が地震であるか否かを判定する地震判定ステップと、
前記地震判定ステップにおいて検出された前記振動に含まれるノイズを検出した後に、前記振動の大きさに応じてオフセット量を調整するオフセット調整ステップと、
前記振動が収束したか否かを判定する収束判定ステップと、
前記収束判定ステップにおいて前記振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、前記ノイズを検出した後の前記振動の大きさに応じて算出された前記オフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、前記加速度の原点補正を行うか否かを判定する原点補正要否判定ステップと、
を備えた地震検知方法をコンピュータに実行させる地震検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震動を検出する感震センサおよび地震検知方法、地震検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスメータ、電力メータ、分電盤、コンセント等に内蔵されており、所定値以上の大きさ(例えば、震度5強以上)の地震動を検出した場合に、ガス、電気等の供給を遮断するための遮断信号を出力する感震センサが用いられている。
例えば、特許文献1には、測定された加速度が所定の閾値を超えた場合に省電力モードからより消費電力の大きい測定モードへ移行しその後の判定期間に測定された加速度に基づいて地震発生を判定する地震判定部と、地震判定部が地震が発生したと判定した場合に判定期間の後の地震処理期間において地震の規模を示す指標値を算出する指標算出部と、を備え、地震処理期間においての指標値が閾値以上の場合に遮断信号が出力されるようにする感震センサであって、地震処理期間において測定された加速度に基づいて地震発生を判定する継続地震判定部と、継続地震判定部が地震は発生していないと判定した場合に指標値に拘らず遮断信号が出力されないようにする遮断判定部と、をさらに備えた感震センサについて開示されている。
【0003】
この感震センサによれば、ノイズが地震と誤判定され、遮断信号が誤出力されてしまうことを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の感震センサでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された感震センサでは、地震の判定後、振動が収束したことを判定し、振動が収束すると即座にオフセット量を調整していた。このため、例えば、検出された振動が低周波振動等であって、一時的にセンサが傾いており、その後、傾きが小さくなっていった場合には、振動が収束後、即座に調整されたオフセット調整によって、判定精度を精度よく維持することは困難であった。
【0006】
本発明の課題は、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することが可能な感震センサおよび地震検知方法、地震検知プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る感震センサは、加速度取得部と、地震判定部と、オフセット調整部と、収束判定部と、原点補正要否判定部と、を備えている。加速度取得部は、振動を検出し振動の加速度を取得する。地震判定部は、加速度取得部において取得された加速度に基づいて、振動が地震であるか否かを判定する。オフセット調整部は、地震判定部において検出された振動に含まれるノイズを検出した後に、振動の大きさに応じてオフセット量を調整する。収束判定部は、振動が収束したか否かを判定する。原点補正要否判定部は、収束判定部において振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、加速度の原点補正を行うか否かを判定する。
【0008】
ここでは、検出された振動の加速度に基づいて振動が地震であるか否かを判定するとともに、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じてノイズの影響を排除するためのオフセット量を調整する感震センサにおいて、振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時(例えば、5~20秒経過時)において算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、感震センサの傾きの有無を検出し、原点補正を行うか否かを判定する。
【0009】
ここで、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて新たに算出されたオフセット量と比較される前回のオフセット量とは、前回、振動を検知した際に算出されたオフセット量であって、例えば、感震センサ内に保存されたオフセット量を意味している。
また、所定期間経過後に感震センサの傾きが戻る振動としては、例えば、低周波振動等が考えられる。
【0010】
これにより、振動が収束した後、所定期間経過時(例えば、5~20秒経過時)において現在のオフセット量が、前回のオフセット量と同程度であると判定された場合には、感震センサの傾きはほぼないと推定される一方、前回のオフセット量と比較して差が大きい場合には、感震センサが傾いたままになっている可能性が高いと推定される。
よって、振動が収束後に、それが所定時間以上継続している場合にはその傾いた状態で原点補正を含むオフセット量の調整を行うとともに、傾きが所定時間継続しなかった場合には、傾きが戻った新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行うことができる。
この結果、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することができる。
【0011】
第2の発明に係る感震センサは、第1の発明に係る感震センサであって、オフセット調整部は、オフセット量が前回のオフセット量と同程度である場合には、新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行う。
これにより、振動が収束した後、所定期間(例えば、5~20秒)において現在のオフセット量が、前回のオフセット量と同程度であると判定された場合には、感震センサの傾きはほぼないものと推定されるため、新たに算出されたオフセット量を用いてオフセット調整を実施することができる。
【0012】
第3の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、オフセット調整部は、所定期間が経過すると、前回のオフセット量よりも大きいオフセット量を用いて、加速度の原点補正を含むオフセット調整を行う。
これにより、振動が収束した後、所定期間(例えば、5~20秒)において現在のオフセット量が、前回のオフセット量と比較して差が大きい場合には、感震センサが傾いたままになっている可能性が高いと推測されるため、新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行うことができる。
よって、感震センサが傾いた状態が維持されている場合には、その傾きを考慮した原点補正を実施することで、傾きが生じた状態で適切な補正を実施することができる。
【0013】
第4の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、収束判定部は、地震判定部における判定後、所定時間が経過した後、振動が収束したか否かを判定する。
これにより、検出された振動が地震であるか否かの判定が行われ所定時間が経過した後で、振動が収束したか否かが判定されるため、振動によって感震センサが一時的に傾いただけであるか、傾いたままになっているか、を容易に判定することができる。
【0014】
第5の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、オフセット調整部は、原点補正要否判定部において原点補正が必要と判定されると、水平面における加速度の原点補正を行って重力加速度の方向のずれを修正する。
これにより、感震センサの傾きによってずれてしまった水平面における加速度の原点補正を行うことで、感震センサの傾きを考慮した原点補正を実施して、判定精度を維持することができる。
【0015】
第6の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、オフセット調整部は、地震判定部において振動が地震ではないと判定された場合に、オフセット量の調整を行う。
これにより、地震以外の振動の大きさに応じて、適切なオフセット調整を実施することができる。
【0016】
第7の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、加速度取得部が設けられた本体部を、さらに備えている。原点補正要否判定部は、オフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、振動が収束後における本体部の傾きの有無を判定する。
これにより、新たに算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて判定することで、感震センサの本体部自体が振動によって傾いているか否かを容易に判定することができる。
【0017】
第8の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、加速度取得部において取得された加速度と経過時間との関係を示す加速度波形を生成する加速度波形生成部を、さらに備えている。
これにより、検出された振動の加速度から生成される加速度波形を用いて、地震判定、オフセット調整、原点補正要否判定等を行うことができる。
【0018】
第9の発明に係る感震センサは、第8の発明に係る感震センサであって、加速度波形生成部において生成された加速度波形の周波数を検出する周波数検出部を、さらに備えている。
これにより、加速度波形から検出された周波数を用いて、地震判定、オフセット調整、原点補正要否判定等を行うことができる。
【0019】
第10の発明に係る感震センサは、第9の発明に係る感震センサであって、地震判定部は、周波数検出部において検出された周波数に基づいて、振動が地震であるか否かを判定する。
これにより、加速度波形から検出される周波数を用いて、振動が地震であるか否かを判定する地震判定を実施することができる。
【0020】
第11の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、地震判定部において地震であると判定された場合に、所定の震度相当以上の地震であるか否かを判定する地震規模算出部を、さらに備えている。
これにより、例えば、地震規模が震度5強以上と判定された場合に、火災やガス漏れ等のリスクが生じるおそれがあるとして、例えば、電気やガス等のエネルギー供給を停止させる遮断信号を出力することで、使用者の安全性を向上させることができる。
【0021】
第12の発明に係る感震センサは、第1の発明に係る感震センサであって、地震判定部において、地震であると判定された場合、所定の信号を出力する出力部を、さらに備えている。
これにより、例えば、地震発生時には、電気やガス等のエネルギーの供給を停止させる遮断信号や、危険を知らせる警告信号等を出力部から出力することができる。
【0022】
第13の発明に係る感震センサは、第11の発明に係る感震センサであって、地震判定部において、地震であると判定された場合、所定の信号を出力する出力部を、さらに備え、地震規模算出部において算出された地震の規模が所定の震度相当以上であるか否かに応じて、出力部からの信号の出力を制御する出力制御部を、さらに備えている。
これにより、地震規模算出部において、地震の規模が、例えば、震度5強(所定の震度)以上であると算出された場合には、出力部から、例えば、電気やガス等のエネルギーの供給を停止させる遮断信号、使用者に警告を与える警告信号等を出力させることができる。
【0023】
第14の発明に係る感震センサは、第12の発明に係る感震センサであって、所定の信号は、エネルギーの供給を停止させる遮断信号である。
これにより、例えば、所定の震度以上の地震を検出した場合において、電気やガス等のエネルギーの供給を停止させることができる。
【0024】
第15の発明に係る感震センサは、第12の発明に係る感震センサであって、所定の信号は、使用者に対して警告を与える警告信号である。
これにより、例えば、所定の震度以上の地震を検出した場合において、警告信号を発することで、使用者に危険を知らせることができる。
【0025】
第16の発明に係る感震センサは、第1または第2の発明に係る感震センサであって、オフセット量を保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、感震センサ内に設けられた記憶部から、前回のオフセット量を取り出して、新たに算出されたオフセット量と比較し、原点補正要否を判定することができる。
【0026】
第17の発明に係る地震検知方法は、加速度取得ステップと、地震判定ステップと、オフセット調整ステップと、収束判定ステップと、原点補正要否判定ステップと、を備えている。加速度取得ステップでは、振動を検出し振動の加速度を取得する。地震判定ステップでは、加速度取得ステップにおいて取得された振動の加速度に基づいて、振動が地震であるか否かを判定する。オフセット調整ステップでは、地震判定ステップにおいて検出された振動に含まれるノイズを検出した後に、振動の大きさに応じてオフセット量を調整する。収束判定ステップでは、振動が収束したか否かを判定する。原点補正要否判定ステップでは、収束判定ステップにおいて振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、加速度の原点補正を行うか否かを判定する。
【0027】
ここでは、検出された振動の加速度に基づいて振動が地震であるか否かを判定するとともに、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じてノイズの影響を排除するためのオフセット量を調整する地震検知方法において、振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時(例えば、5~20秒経過時)において算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、感震センサの傾きの有無を検出し、原点補正を行うか否かを判定する。
【0028】
ここで、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて新たに算出されたオフセット量と比較される前回のオフセット量とは、前回、振動を検知した際に算出されたオフセット量であって、例えば、感震センサ内に保存されたオフセット量を意味している。
また、所定期間経過後に感震センサの傾きが戻る振動としては、例えば、低周波振動等が考えられる。
【0029】
これにより、振動が収束した後、所定期間経過時において現在のオフセット量が、前回のオフセット量と同程度であると判定された場合には、感震センサの傾きはほぼないと推定される一方、前回のオフセット量と比較して差が大きい場合には、感震センサが傾いたままになっている可能性が高いと推定される。
よって、振動が収束後に、それが所定時間以上継続している場合にはその傾いた状態で原点補正を含むオフセット量の調整を行うとともに、傾きが所定時間継続しなかった場合には、傾きが戻った新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行うことができる。
この結果、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することができる。
【0030】
第18の発明に係る地震検知プログラムは、加速度取得ステップと、地震判定ステップと、オフセット調整ステップと、収束判定ステップと、原点補正要否判定ステップと、を備えた地震検知プログラムをコンピュータに実行させる。加速度取得ステップでは、振動を検出し振動の加速度を取得する。地震判定ステップでは、加速度取得ステップにおいて取得された振動の加速度に基づいて、振動が地震であるか否かを判定する。オフセット調整ステップでは、地震判定ステップにおいて検出された振動に含まれるノイズを検出した後に、振動の大きさに応じてオフセット量を調整する。収束判定ステップでは、振動が収束したか否かを判定する。原点補正要否判定ステップでは、収束判定ステップにおいて振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、加速度の原点補正を行うか否かを判定する。
【0031】
ここでは、検出された振動の加速度に基づいて振動が地震であるか否かを判定するとともに、振動の大きさに応じてノイズの影響を排除するためのオフセット量を調整する地震検知プログラムにおいて、振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時(例えば、5~20秒経過時)において算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、感震センサの傾きの有無を検出し、原点補正を行うか否かを判定する。
【0032】
ここで、ノイズを検出した後の振動の大きさに応じて新たに算出されたオフセット量と比較される前回のオフセット量とは、前回、振動を検知した際に算出されたオフセット量であって、例えば、感震センサ内に保存されたオフセット量を意味している。
また、所定期間経過後に感震センサの傾きが戻る振動としては、例えば、低周波振動等が考えられる。
【0033】
これにより、振動が収束した後、所定期間経過時において現在のオフセット量が、前回のオフセット量と同程度であると判定された場合には、感震センサの傾きはほぼないと推定される一方、前回のオフセット量と比較して差が大きい場合には、感震センサが傾いたままになっている可能性が高いと推定される。
よって、振動が収束後に、それが所定時間以上継続している場合にはその傾いた状態で原点補正を含むオフセット量の調整を行うとともに、傾きが所定時間継続しなかった場合には、傾きが戻った新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行うことができる。
【0034】
この結果、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る感震センサによれば、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る感震センサの構成を示す制御ブロック図。
【
図2】
図1の感震センサ内に生成される機能ブロック図。
【
図3】(a)は、検出された振動が地震ではないと判定されてから前回のオフセット量よりも大きいオフセット量のまま所定期間が経過した場合の加速度波形を示すグラフ。(b)は、検出された振動が地震ではないと判定されてから前回のオフセット量よりも大きいオフセット量だったのが、所定期間が経過時に前回のオフセット量と同等程度まで近づいてきた場合の加速度波形を示すグラフ。
【
図4】(a)は、感震センサの傾きによって水平面(X軸、Y軸)において原点ずれが生じた状態を示すグラフ。(b)は、(a)の状態から原点補正によって、X軸、Y軸ともに加速度がオフセットされた状態を示すグラフ。
【
図5】
図1の感震センサによる地震検知方法の処理の主要な流れを示すフローチャート。
【
図6】
図5のオフセット調整処理の詳細な流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の一実施形態に係る感震センサについて、
図1~
図6を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0038】
(1)感震センサ10の構成
本実施形態に係る感震センサ10は、
図1に示すように、本体部10a内に、加速度センサ11と、コントローラ12と、メモリ13とを備えている。
【0039】
加速度センサ11は、例えば、圧電素子を用いた加速度センサや、電極間の静電容量を検出する加速度センサである。なお、加速度センサ11が測定(「サンプリング」とも呼ぶ)した加速度は、コントローラ12に出力される。
コントローラ12は、例えば、汎用的な集積回路であって、所定の周期で加速度センサ11が測定した加速度を取得し、取得した加速度に基づいて地震の発生の検知、地震の規模を示す指標値の算出を行う。
【0040】
また、コントローラ12は、状況に応じてアクティブモードまたはスリープモードという異なる形式で動作する。
スリープモードとは、コントローラ12が、割り込みを受け付けつつ命令の実行を停止したり、クロックの供給を停止したりする等、機能を制限して動作するモードである。このスリープモードでは、アクティブモードよりも消費電力を低減することができる。
【0041】
また、アクティブモードとは、検知した振動が地震かノイズかの判定処理を行ったり、地震の規模を示す指標値を算出したりするモードである。
なお、感震センサ10内のCPUが、メモリ13に保存された地震検知プログラムを読み込んで生成される機能ブロック(
図2参照)については、後段にて詳述する。
メモリ13は、RAM(Random Access Memory)等の一時記憶手段や、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリであって、例えば、加速度センサ11において測定された加速度や地震判定に用いられる閾値等を保存する。
【0042】
なお、メモリ13は、加速度センサ11やコントローラ12が内蔵するメモリであってもよい。
出力部14は、例えば、コントローラ12が有する出力端子であって、コントローラ12が、例えば、地震が発生したと判定すると、出力部14を介して他の装置に地震の発生やその規模を示す情報が出力される。また、出力部14は、所定の規模以上の地震が検知されると、例えば、電気やガス等のエネルギーの供給を停止するための遮断信号を、外部機器へ出力する。
【0043】
(2)感震センサ10の機能ブロック
感震センサ10は、
図2に示すように、本体部10a内に、加速度取得部21、加速度波形生成部22、振動強度分別・起動判定部23、周波数検出部24、地震判定部25、振動停止期間判定部26、地震規模算出部27、出力制御部28、オフセット調整部29および記憶部30を備えている。
【0044】
加速度取得部21は、加速度センサ11において所定の周期で計測された加速度の計測データを取得する。なお、加速度取得部21は、通常、比較的、低速(すなわち、比較的大きな測定周期)で繰り返し測定された加速度の測定データを取得する。
このような低速での加速度サンプリングを行う場合には、コントローラ12は、基本的に、消費電力が小さいスリープモード(待機状態あるいは省電力モード)で動作する。待機状態では、加速度センサ11が低速でサンプリングを行う動作状態であるため、コントローラ12は、機能が制限されたスリープモードで動作することで消費電力が抑制される。
【0045】
また、加速度取得部21は、記憶部30に予め設定されている閾値よりも大きな振動を取得すると、加速度センサ11は、低速サンプリング時よりも高速(すなわち、比較的小さな周期)で加速度の測定を繰り返す。このような高速サンプリングでは、コントローラ12は、スリープモードまたはアクティブモードで動作する。
なお、後述する地震判定部25等が処理を実行する際には、コントローラ12がアクティブモード(測定モード)で動作する。また、省電力モードから測定モードへの移行は、感震センサ10の起動と呼ばれる。
【0046】
測定モードとは、高速サンプリングを行う動作状態であるため、コントローラ12は、機能が制限されたスリープモードで動作する場合もあれば、最大限の計算能力で動作し得るアクティブモードで動作する場合もある。測定モードでは、サンプリング周期が短くなること、また、コントローラ12がスリープモードからアクティブモードに切り替えられることにより、省電力モードよりも消費電力が大きくなる。
【0047】
加速度波形生成部22は、加速度取得部21において測定された加速度と経過時間との関係を示す加速度波形を生成する。
振動強度分別・起動判定部23は、加速度取得部21が取得した加速度の値と、記憶部30に保持されている起動閾値とを比較し、加速度の値が起動閾値を超える場合には、省電力モードから測定モードへ移行(感震センサ10を起動)させる。
【0048】
また、振動強度分別・起動判定部23は、加速度センサ11側の機能であって、加速度取得部21における取得結果から振動の強度を算出し、振動強度が所定の大きさ以上である場合に、省電力モードから、省電力モードよりも消費電力の大きい測定モードへ移行(コントローラ12を起動)する。
ここで、振動強度分別・起動判定部23によって行われる振動強度分別処理は、加速度取得部21が取得した加速度の値に対してフィルタリング処理を行うことによって実施される。このとき、フィルタリングされた加速度は、記憶部30に保存される。
【0049】
本実施形態の感震センサ10では、フィルタリング処理を行う振動強度分別・起動判定部23は、いわゆるデジタルフィルタとして機能し、フィルタリング処理としては、既存の技術を採用することができる。振動強度分別・起動判定部23は、例えば、加速度の絶対値の移動平均を算出することで、ローパスフィルタとして機能する。
周波数検出部24は、加速度波形生成部22において生成された加速度波形の周波数を検出する。
【0050】
地震判定部25は、周波数検出部24において検出された周波数に基づいて、周波数を検出した加速度波形が地震判定の対象になるか否かを分別しながら、その加速度波形の振動が地震であるか否かを判定する。
具体的には、地震判定部25は、加速度波形が所定時間内に所定の震度相当以下の振動まで減衰している場合(例えば、振動加速度の最大値-最小値<100gal)には、加速度波形を地震判定の対象から除外する。
【0051】
また、地震判定部25は、検出された加速度波形の周波数が所定値以上であって、周期(周波数)の揺らぎが所定値以下の場合には、加速度波形を地震判定の対象から除外する。
さらに、地震判定部25は、例えば、ピーク方式によって検出された加速度波形の振幅が所定値以上であって、周波数が所定値以上の場合には、加速度波形を地震判定の対象から除外する。
【0052】
本実施形態では、地震判定部25は、起動閾値を超える加速度が検知された後、単数または複数の判定期間を定義し、判定期間ごとの処理を行う。
振動停止期間判定部26は、地震判定部25において地震であると判定ありとされた後、加速度波形に振動が停止した期間があるか否かを判定する。
なお、加速度波形に振動が停止した期間があるか否かの判定は、例えば、加速度がゼロになった期間の有無で行われてもよいし、加速度が所定の閾値の範囲内に収まったか否かに応じて行われてもよい。
【0053】
地震規模算出部27は、地震判定部25において地震であると判定された場合に、所定の震度相当以上の地震であるか否かを判定する。
また、地震規模算出部27は、検出された振動が地震と判定され、その地震の規模を示す指標の算出を開始後、衝撃とみなせる加速度波形が検出されると、当該加速度波形を除外して地震の規模を算出する。
【0054】
なお、このとき、周波数検出部24は、例えば、ピーク方式によって、検出された加速度波形が衝撃とみなせるか否かに用いられる周波数を検出する。
出力制御部28は、地震規模算出部27において算出された地震の規模が所定の震度相当以上であるか否かに応じて、所定の信号を出力する出力部14からの信号の出力を制御する。
【0055】
ここで、出力部14から出力される所定の信号には、例えば、電気やガス等のエネルギーの供給を停止させるために、電気供給装置、ガス供給装置等の外部機器へ送信される遮断信号等が含まれる。
オフセット調整部29は、地震判定部25において加速度取得部21において検出された振動がノイズであると判定されると、ノイズを検出するごとに、加速度波形のオフセット量を調整する。また、オフセット調整部29は、加速度取得部21において取得された振動が、地震判定部25において地震ではないと判定された場合に、ノイズを検出した後、その振動の大きさに応じてオフセット量を算出し、加速度波形のオフセット調整を行う。
【0056】
オフセット調整部29によって行われるオフセット調整は、例えば、感震センサ10の経時的変化に伴って発生する測定値の変化量や、温度変化に伴って生ずる測定値の変化量、設置された感震センサ10の姿勢が何らかの原因によって傾いた場合に感震センサ10に対する重力加速度の方向が変化することで生ずる測定値の変化量等、測定される加速度に含まれるノイズ成分をオフセット成分として検出する。具体的には、オフセット調整部29は、例えば、ノイズであると判定された加速度の最大値および最小値の中央値や、加速度の平均値をオフセット成分として算出する。
【0057】
なお、オフセット調整とは、ノイズを検出した後に振動の大きさに応じたオフセット量を算出し、次回、感震センサ10の起動時に、算出されたオフセット量を用いてノイズによる影響を排除するために実施される。
算出されたオフセット成分は、記憶部30に保存され、振動強度分別・起動判定部23が実行する起動判定や、地震判定部25が実行する地震判定に用いられる。また、オフセット調整部29によって調整されるオフセット量は、振動を検出して加速度波形を生成するたびにフィードバック制御され、ノイズの量に応じて適正な値になるように更新・保存される。
【0058】
これにより、オフセット量が常に適正な範囲で設定されるため、加速度波形の周波数を検出する際に、周波数を高精度に検出することができる。
オフセット調整部29は、
図2に示すように、収束判定部29aと、原点補正要否判定部29bとを有している。
収束判定部29aは、検出された振動が所定期間(例えば、1秒)内に収束したか否かを判定する。具体的には、収束判定部29aは、所定期間内において、加速度波形の全てのpeak-to-peak値(p-p値)が所定の閾値未満(例えば、100gal未満)であるか否かによって、振動が収束したか否かを判定する。
【0059】
また、収束判定部29aは、地震判定部25における判定後、所定時間が経過した後、振動が収束したか否かを判定する。
原点補正要否判定部29bは、収束判定部29aにおいて振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時(例えば、5~20秒経過時)において、ノイズを検出した後に振動の大きさに応じて算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、加速度波形(加速度)の原点補正を行うか否かを判定する。
【0060】
そして、原点補正要否判定部29bは、オフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、振動が収束後における感震センサ10(本体部10a)の傾きの有無を判定する。つまり、原点補正要否判定部29bは、振動の収束後に算出されたオフセット量と前回のオフセット量とを比較して、前回のオフセット量よりも大きいと判定されると、感震センサ10の本体部の傾きがそのまま維持されていると推定する一方、前回オフセット量と同等になっていると判定されると、感震センサ10の本体部の傾きはほぼなくなっていると推定する。
【0061】
そして、オフセット調整部29は、原点補正要否判定部29bにおいて、オフセット量が前回のオフセット量と同程度であると判定された場合には、新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行う。
また、オフセット調整部29は、原点補正要否判定部29bにおいて振動の収束から所定期間が経過した時点(例えば、5~20秒経過時)で算出されたオフセット量が前回のオフセット量よりも大きいと判定された場合には、そのオフセット量を用いて、加速度波形の原点補正を含むオフセット調整を行う。
【0062】
ここで、オフセット調整部29は、原点補正要否判定部29bにおいて原点補正が必要と判定されると、水平面における加速度の原点補正を行って重力加速度の方向のずれを修正する。つまり、オフセット調整部29は、例えば、鉛直方向をZ軸とすると、X軸およびY軸の方向(水平方向)における加速度の原点補正を行う。
より詳細には、例えば、
図3(a)に示すように、地震判定部25において、加速度取得部21において検出された振動が地震ではないと判定され、算出されたオフセット量が前回のオフセット量と比較して大きい状態のまま5~20秒が経過した場合には、オフセット調整部29においてオフセット調整が行われる。
【0063】
図3(a)は、振動が検出された後、感震センサ10が傾いた状態のまま、振動が収束してから所定期間が経過時(例えば、5~20秒後)まで維持された場合の加速度波形を示している。
この場合、振動を検出してすぐに感震センサ10が起動され、地震判定部25が地震ではなく振動であると判定し、収束判定部29aが振動が収束したと判定してから所定期間内(例えば、5~20秒以内)に、原点補正要否判定部29bが加速度波形に含まれるノイズが検出された後の振動の大きさに応じてオフセット量を算出して、原点補正要否判定を実施する。
【0064】
なお、原点補正要否判定部29bにおいて原点補正が必要と判定されることは、例えば、
図4(a)に示すように、水平面(鉛直方向をZ軸とした場合のX・Y軸平面)において、感震センサ10の傾きによって生じたX軸加速度成分とY軸加速度成分とをオフセット調整処理して、
図4(b)に示す状態にする必要があることを意味している。
このとき、原点補正要否判定部29bは、算出されたオフセット量を、記憶部30に保存されている前回のオフセット量と比較してほぼ同程度の大きさであるか否かを判定する。
【0065】
そして、原点補正要否判定部29bは、
図3(a)の場合には、振動の収束から5~20秒経過時に算出されたオフセット量が、記憶部30に保存されている前回のオフセット量よりも大きい値となることから、感震センサ10の傾きが維持されていると推定されるため、原点補正が必要と判定する。よって、この場合には、オフセット調整部29は、振動の収束から5~20秒経過時に算出されたオフセット量を用いて、原点補正を含むオフセット調整を実施する。
【0066】
これにより、振動によって感震センサ10が傾いたまま姿勢が維持されてしまった場合でも、感震センサ10の傾きを考慮して、高精度な振動検出を行うことができる。
図3(b)は、例えば、低周波振動等のように、振動が検出された後、振動によって感震センサ10が傾いた状態から、振動が収束してからほぼ元の姿勢まで戻った場合の加速度波形を示している。
【0067】
この場合、振動を検出してすぐに感震センサ10が起動され、地震判定部25が地震ではなく振動であると判定し、収束判定部29aが振動が収束したか否かの収束判定を行う。同時に、原点補正要否判定部29bが、加速度波形に含まれるノイズを検出した後の振動の大きさに応じてオフセット量を算出して、原点補正要否判定を実施する。
そして、原点補正要否判定部29bは、
図3(b)の場合には、振動の収束後に算出されたオフセット量が、記憶部30に保存されている前回のオフセット量とほぼ同等まで低下してきていることから、感震センサ10の傾きが一時的であったと推定される。よって、この場合には、オフセット調整部29は、新たに算出されたオフセット量を用いてオフセット調整を実施する。
【0068】
これにより、振動によって感震センサ10が一時的に傾いたものの、所定期間が経過時には元の姿勢に戻った場合には、新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行うことで、高精度な振動検出を行うことができる。
なお、
図3(b)に示すグラフでは、一旦、振動が収束した後、再び振動が検出されているため、振動が再び収束するまでの間はオフセット調整を行うことなく、振動の収束後にオフセット調整を行う。
記憶部30は、例えば、加速度取得部21が取得した加速度のデータ、またはフィルタリング処理後の加速度のデータ、地震判定部25における判定結果、オフセット調整部29において用いられるオフセット成分のデータ(オフセット量)等を保存する。
【0069】
<地震検知方法>
本実施形態の感震センサ10を用いた地震検知方法について、
図5および
図6のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
【0070】
図5は、本実施形態の感震センサ10による地震検知処理の一例を示す処理フロー図である。
本実施形態の感震センサ10では、所定値以上の加速度が検出された場合には、待機状態(省電力モード)から測定モードに移行して地震判定処理を行い、地震が発生したと判定された場合には、地震処理に移行し、地震の規模が一定以上であれば、関連機器に遮断信号を出力する処理が行われる。
【0071】
図5に示す処理は、感震センサ10において繰り返し実施される。
感震センサ10では、まず、ステップS11において、感震センサ10内のメモリ13または記憶部30等に保存されており、地震検知処理に使用される各種閾値、オフセット量等の各種データが初期設定される。
次に、ステップS12では、感震センサ10の待機状態が維持される。より具体的には、感震センサ10の加速度取得部21が、省電力モードにおいて、加速度センサ11によって測定された加速度を取得する(加速度取得ステップ)。なお、加速度取得部21は、待機状態では、低速サンプリングを行う。
【0072】
次に、ステップS13では、感震センサ10の振動強度分別・起動判定部23が、感震センサ10を起動するか否か(すなわち、省電力モードから測定モードへ移行するか否か)の判定を行う。
本ステップでは、待機状態で測定された加速度が、所定の起動閾値(オフセットを基準とした相対的な値)以下の場合(S13:NO)には、ステップS12に戻り、待機状態(省電力モード)が継続される。ここで、起動閾値は、例えば、50galのような加速度を表す値であって、ステップS11において初期設定され、記憶部30に保持されている。
【0073】
一方、待機状態で測定された加速度が起動閾値よりも大きい場合(S13:YES)には、加速度取得部21は、ステップS14の地震判定処理(測定モード)に移行する。なお、加速度取得部21は、地震判定処理(測定モード)においては、高速サンプリングを行う。
次に、ステップS14では、加速度取得部21が、地震判定処理(測定モード)において高速サンプリングで加速度を測定し、測定された加速度に対してフィルタリング処理を行い、結果の値を記憶部30に保存する(地震判定処理)。なお、フィルタリングは、コントローラ12がアクティブモードへ移行して実行するようにしてもよいし、コントローラ12がスリープモードのまま加速度センサ11が実行するようにしてもよい。また、地震判定処理において、フィルタリング処理は必須ではない。
【0074】
次に、ステップS15では、検出された振動が地震であるかを判定する(地震判定処理)。より具体的には、地震判定部25は、ステップS14の地震判定処理で測定された加速度の値が所定の条件を満たすか否かに応じて、検出された振動が地震であるか否かを判定する。
地震判定部25は、例えば、判定期間において測定された加速度の最大値と最小値(peak-to-peak)との差が、所定の閾値(例えば、100gal)以上であった場合に、地震が発生したと判定する。
【0075】
よって、ステップS15において、地震が発生したと判定された場合(S15:YES)、には、ステップS17の地震処理に進む。
次に、ステップS16のオフセット調整処理では、ステップS15の地震判定処理において、検出された振動は地震ではないと判定されているため、オフセット調整部29が、振動を示す加速度波形に含まれるノイズを検出した後に振動の大きさに応じたオフセット量を算出してオフセット調整を行う。
【0076】
本ステップでは、オフセット調整処理として、例えば、加速度波形から加速度の平均値を求めることで、オフセット量が調整される。そして、ステップS16のオフセット調整処理が終了すると、ステップS12の待機状態に戻る。
なお、ステップS16のオフセット調整処理の詳細な内容については、
図6に示すフローを用いて後段にて詳述する。
【0077】
次に、ステップS17では、ステップS15の地震判定処理において、検出された振動は地震であると判定されているため、感震センサ10の地震規模算出部27が、地震の規模を示す評価指標(例えば、SI値)を算出する。なお、評価指標の算出を行う際、コントローラ12は、アクティブモードで動作する。
ここで、算出された評価指標が所定の閾値より大きい場合には、予定強度以上の地震が発生していると判定され、感震センサ10が併設されている外部装置(不図示)に評価指標(SI値)が出力される。そして、当該外部装置からガスや電気等のエネルギーの供給を遮断するための遮断信号が出力され、ガスや電気が遮断される。
【0078】
次に、ステップS18では、地震処理期間が終了したか否かが判定される。この地震処理期間は、予めステップS11で初期設定された期間であって、例えば、120secという期間であってもよい。
ステップS18において未だ地震処理期間が終了していないと判定された場合には、ステップS17の処理に戻り、地震処理が継続される。一方、ステップS18において地震処理期間が終了したと判定された場合には、ステップS19に進む。
【0079】
次に、ステップS19では、地震処理が終了されSI値の算出も終了し、SI値がリセットされる。ステップS19の処理が終了すると、本ルーチンの処理は一旦終了される。
本実施形態の感震センサ10は、
図5に示す地震検知方法の処理に含まれるステップS16のオフセット調整処理を、
図6に示すフローチャートに沿って実行する。
なお、
図6のフローチャートは、
図5のステップS15において、検出された振動は地震ではない、すなわち、振動であると判定された場合に、ステップS16へ進んだ場合のオフセット調整処理の流れを示している。
【0080】
すなわち、ステップS20では、加速度情報取得部21が振動の加速度のデータを取得して、オフセット調整部29がオフセット量を算出する。
次に、ステップS21では、オフセット調整部29が、検出された振動が地震ではない場合において、感震センサ10の起動から所定時間(例えば、40秒)を経過していないかを判定する。ここで、所定時間を経過していない場合には、ステップS22へ進み、所定時間を経過している場合には、待機状態へ移行する。
【0081】
次に、ステップS22では、ステップS21において、所定時間(例えば、40秒)を経過していないと判定されたため、振動の収束状態を確認するために、収束判定部29aが、所定期間(例えば、1秒間)における全ての加速度のp-p(peak-to-peak)値が所定の閾値(例えば、70~100gal)未満であるか否かを判定する(収束判定ステップ)。ここで、全ての加速度のp-p値が閾値未満であった場合には、ステップS23へ進み、閾値以上であった場合には、ステップS21へ戻る。
【0082】
次に、ステップS23では、ステップS22において、全ての加速度のp-p値が閾値未満であると判定されたため、原点補正要否判定部29bが、振動が一度収束してから所定期間(例えば、5~20秒)経過しているか否かを判定する(原点補正要否判定ステップ)。ここで、収束から所定期間が経過している場合には、ステップS24へ進み、所定期間が経過していない場合には、ステップS25へ進む。
【0083】
次に、ステップS24では、ステップS23において、振動が一度収束してから所定期間(例えば、5~20秒)経過していると判定されたため、原点補正要否判定部29bが、収束から所定時間目(例えば、5~20秒目)であるか否かを判定する(原点補正要否判定ステップ)。ここで、振動の収束から所定時間目(例えば、5~20秒目)である場合には、ステップS26へ進み、所定期間を経過している場合には、判定中に再び振動が検出されオフセット調整が不可能と判断して、待機状態へ移行する。
【0084】
次に、ステップS25では、ステップS23において、振動が一度収束してから所定期間を経過していないと判定されたため、原点補正要否判定部29bが、ステップS20で算出されたオフセット量と前回のオフセット量との差が所定の閾値(例えば、10~30gal)未満であるか否かを判定する(原点補正要否判定ステップ)。ここで、差が閾値未満であった場合には、ステップS26へ進む。一方、差が閾値以上であった場合には、前回のオフセット量から今回のオフセット量が乖離していると判断し、オフセット調整を行うことなく、ステップS21へ戻り、ステップS21以降の処理を再び実施する。
【0085】
これにより、振動の収束から所定期間が経過するまでは、ステップS25へ進んで、今回のオフセット量と前回のオフセット量とを比較してその差が閾値(10~30gal)未満か否かの判定を行い、差が閾値以上であった場合には、差が閾値未満になるまで原点補正要否判定処理を繰り返し実施することができる。
次に、ステップS26では、ステップS24において、振動が一度収束してから所定時間目(例えば、5~20秒経過時)と判定されたか、ステップS25において、今回のオフセット量と前回のオフセット量との差が閾値未満であると判定されたため、オフセット調整部29が、所定時間目で算出されたオフセット量を用いてオフセット調整を行う、あるいは、前回オフセット量との差が閾値未満であった新たなオフセット量(ステップS20で算出)を用いてオフセット調整を行う(オフセット調整ステップ)。
これにより、振動が一度収束してから所定時間経過時までに、ステップS21~ステップS23、ステップS25の判定処理を繰り返し行うとともに、振動収束から所定時間目までに前回オフセット量との差が閾値未満にならなかった場合には、所定期間経過時に算出されたオフセット量を用いて、オフセット調整を実施することができる。
【0086】
<主な特徴>
本実施形態の感震センサ10は、加速度取得部21と、地震判定部25と、オフセット調整部29と、収束判定部29aと、原点補正要否判定部29bと、を備えている。加速度取得部21は、振動を検出し振動の加速度を取得する。地震判定部25は、加速度取得部21において取得された加速度に基づいて、振動が地震であるか否かを判定する。オフセット調整部29は、地震判定部25で検出された振動に含まれるノイズを検出した後に振動の大きさに応じてオフセット量を調整する。収束判定部29aは、振動が収束したか否かを判定する。原点補正要否判定部29bは、収束判定部29aにおいて振動が収束したと判定された時点から所定期間経過時において、ノイズと検出した後の振動の大きさに応じて算出されたオフセット量が前回のオフセット量と同程度であるか否かに応じて、加速度の原点補正を行うか否かを判定する。
【0087】
これにより、振動が収束した後、所定期間経過時(例えば、5~20秒経過時)において現在のオフセット量が、前回のオフセット量と同程度であると判定された場合には、感震センサの傾きはほぼないと推定する一方、前回のオフセット量と比較して差が大きい場合には、感震センサが傾いたままになっている可能性が高いと推定する。
よって、振動が収束後に、それが所定時間以上継続している場合にはその傾いた状態で原点補正を含むオフセット量の調整を行うとともに、傾きが所定時間継続しなかった場合には、傾きが戻った新たなオフセット量を用いてオフセット調整を行うことができる。
この結果、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することができる。
【0088】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0089】
(A)
上記実施形態では、感震センサおよび地震検知方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した感震センサによる地震検知方法をコンピュータに実行させる地震検知プログラムとして本発明を実現してもよい。
【0090】
この地震検知プログラムは、感震センサに搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存された地震検知プログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが地震検知プログラムを読み込んで、上述した加速度取得ステップと、地震判定ステップと、オフセット調整ステップと、収束判定ステップと、原点補正要否判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、感震センサの地震検知プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0091】
(B)
上記実施形態では、検出された振動が収束したと判定されてから所定期間(例えば、5~20秒)経過時に、オフセット調整部29が振動波形に含まれるノイズを検出した後の振動の大きさに応じてオフセット量を算出し、原点補正要否判定部29bが前回のオフセット量と同程度であるか否かを判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、低周波振動等のようなゆっくりとした振動波形ではなく、外部からの衝撃等によって感震センサが傾いた場合等を考慮して、振動の収束からより長い時間が経過時、あるいはより短い時間が経過時に、オフセット量を算出し、前回のオフセット量と比較する構成であってもよい。
【0092】
(C)
上記実施形態では、地震判定部25が検出された振動が地震ではないと判定した場合に、オフセット調整部29が加速度波形のオフセット調整を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、検出された振動が地震であると判定された場合にも、必要に応じてオフセット調整を行う構成であってもよい。
【0093】
(D)
上記実施形態では、出力制御部28が、地震として検出された振動が震度5強相当以上である場合に、電気やガス等のエネルギーの供給を停止させる遮断信号を出力するように、出力部14を制御する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、出力制御部が、使用者に対して地震発生の警告を発する警告信号を出力するように、出力部を制御する構成であってもよい。
【0094】
(E)
上記実施形態では、振動の加速度を検出して生成された加速度波形を地震判定の対象から除外するか否かの判定を、周波数が10HZ以上であるか否かに応じて実施する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、加速度波形を地震判定の対象から除外するか否かの判定を行うための所定値は、10HZに限定されるものではなく、10HZよりも大きい値であってもよいし、10HZより小さい値であってもよい。
【0095】
(F)
上記実施形態では、振動の加速度を検出して生成された加速度波形を地震判定の対象から除外するか否かの判定を、加速度波形の振幅が700gal以上であるか否かに応じて行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、加速度波形の振幅に関する判定条件は、上記数値範囲に限らず、他の条件であってもよい。
【0096】
(G)
上記実施形態では、加速度波形の周波数の大きさに加え、単調減衰、周期の揺らぎ、振幅、振動停止期間の有無等に応じて、地震であるか否かの判定を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、加速度波形の周波数の大きさ以外の判定手段については、上記手段のうち少なくとも1つ、あるいは、上記手段以外の手段が用いられてもよい。
【0097】
(H)
上記実施形態では、本発明が、地震判定を行う感震センサ10に対して適用された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
例えば、地震判定を行わず、振動等によって加速度センサの検出状態が変化する各種製品に対して、本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の感震センサは、振動の発生直後に生じた一時的な傾きによる影響を排除して、振動の判定を高精度に実施することができるという効果を奏することから、地震の発生を検知する各種装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 感震センサ
10a 本体部
11 加速度センサ
12 コントローラ
13 メモリ
14 出力部
21 加速度取得部
22 加速度波形生成部
23 振動強度分別・起動判定部
24 周波数検出部
25 地震判定部
26 振動停止期間判定部
27 地震規模算出部
28 出力制御部
29 オフセット調整部
29a 収束判定部
29b 原点補正要否判定部
30 記憶部