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特開2025-8110樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008110
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20250109BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20250109BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20250109BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/18
B29C43/34
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109991
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】阪口 寛幸
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
5F061
【Fターム(参考)】
4F202AD19
4F202AH37
4F202AJ08
4F202CA09
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CP01
4F202CP04
4F202CP06
4F202CQ01
4F202CQ06
4F204AD19
4F204AH37
4F204AJ08
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB17
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
5F061AA01
5F061CA22
5F061DA01
5F061DA11
(57)【要約】
【課題】成形対象物に反りが発生した場合でも、成形対象物の落下を防止することが可能な樹脂成形装置を提供する。
【解決手段】上型と下型との間に成形対象物を配置し、圧縮成形を行う樹脂成形装置であって、前記上型には、前記上型の下面に開口するように形成され、前記成形対象物を吸着するための複数の吸着孔が形成され、複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第1吸着孔から空気を吸引することが可能な第1吸着機構と、複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第2吸着孔から空気を吸引することが可能であり、前記第1吸着機構とは独立して前記第2吸着孔を介する空気の吸引を行うことが可能な第2吸着機構と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型との間に成形対象物を配置し、圧縮成形を行う樹脂成形装置であって、
前記上型には、前記上型の下面に開口するように形成され、前記成形対象物を吸着するための複数の吸着孔が形成され、
複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第1吸着孔から空気を吸引することが可能な第1吸着機構と、
複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第2吸着孔から空気を吸引することが可能であり、前記第1吸着機構とは独立して前記第2吸着孔を介する空気の吸引を行うことが可能な第2吸着機構と、
を具備する樹脂成形装置。
【請求項2】
前記第1吸着孔及び前記第2吸着孔は、それぞれ複数設けられ、
複数の前記第2吸着孔は、前記上型の下面において、複数の前記第1吸着孔で構成される群の周囲に形成されている、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記第1吸着機構は、前記第1吸着孔から空気を吸引する第1ポンプを具備し、
前記第2吸着機構は、前記第2吸着孔から空気を吸引する第2ポンプを具備する、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記第2吸着機構は、
前記第2吸着孔に接続され、前記第2吸着孔から吸引される空気を案内する吸引経路と、
前記吸引経路における空気の流通の可否を切り替えることが可能なバルブと、
を具備する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記上型及び前記下型が配置された空間を減圧させることが可能な減圧機構をさらに具備する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記上型の下面に前記成形対象物を吸着させる吸着工程と、
前記上型及び前記下型の型締めを行う型締め工程と、
を含む樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークに対して圧縮成形を行う樹脂成形装置が開示されている。特許文献1に記載されている樹脂成形装置では、上型に形成された吸引路に吸引装置が接続されている。吸引路は、上型の下面(金型面)における複数個所で開口されている。吸引装置を作動させ、吸引路を介して空気を吸引することで、上型にワークを吸着させて保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-3677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のようなワークには、ワークに固定された電子部品や、成形された樹脂の影響によって、変形(反り)が発生する場合がある。特許文献1に記載のような樹脂成形装置において、上型に吸着されたワークが上型から離れるように変形し、吸引路が一部でも開放されると、吸引路全体の気圧とワーク下側の空間の気圧が一致し、ワークを吸着することができず、ワークが上型から落下するおそれがある。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、成形対象物に反りが発生した場合でも、成形対象物の落下を防止することが可能な樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、この課題を解決するため、本発明に係る樹脂成形装置は、上型と下型との間に成形対象物を配置し、圧縮成形を行う樹脂成形装置であって、前記上型には、前記上型の下面に開口するように形成され、前記成形対象物を吸着するための複数の吸着孔が形成され、複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第1吸着孔から空気を吸引することが可能な第1吸着機構と、複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第2吸着孔から空気を吸引することが可能であり、前記第1吸着機構とは独立して前記第2吸着孔を介する空気の吸引を行うことが可能な第2吸着機構と、を具備するものである。
【0007】
また、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、前記樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記上型の下面に前記成形対象物を吸着させる吸着工程と、前記上型及び前記下型の型締めを行う型締め工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形対象物に反りが発生した場合でも、成形対象物の落下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る樹脂成形装置の構成を示した正面断面図。
図2】(a)上型ホルダ及び上型を示した正面断面図。(b)上型を示した底面図。
図3】樹脂成形品の製造方法を示したフローチャート。
図4】成形型の収容空間が密閉された状態の樹脂成形装置を示した正面断面図。
図5】型開きされた樹脂成形装置を示した正面断面図。
図6】第2実施形態に係る樹脂成形装置の構成を示した正面断面図。
図7】第3実施形態に係る樹脂成形装置の構成を示した正面断面図。
図8】(a)変形例に係る上型ホルダ及び上型を示した正面断面図。(b)変形例に係る上型を示した底面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<樹脂成形装置100(第1実施形態)>
まず、図1を用いて、第1実施形態に係る樹脂成形装置100について説明する。
【0011】
図1に示す樹脂成形装置100は、圧縮成形法による樹脂成形が可能な装置である。本実施形態に係る樹脂成形装置100は、成形対象物である基板Wに固定された半導体チップなどの電子素子を樹脂封止し、樹脂成形品を製造することができる。基板Wとしては、シリコンウエハ等の半導体製基板、金属製基板、ガラス製基板、セラミック製基板、又は、樹脂製基板等を用いることができる。また基板Wには、配線が施されていても、施されていなくてもよい。以下で説明する各実施形態では、円形状の基板Wを用いるものとする。樹脂成形装置100は、主として下型ホルダ110、上型ホルダ120、シール部材130、下型140、上型150、減圧用ポンプ160、中央吸着用ポンプ170、外側吸着用ポンプ180及び型締め機構190等を具備する。
【0012】
下型ホルダ110は、下型140を支持するものである。下型ホルダ110は、下方から下型140を支持する底面部110aと、下型140を側方から囲むように形成された側面部110bと、を具備する。
【0013】
上型ホルダ120は、上型150を支持するものである。上型ホルダ120は、上方から上型150を支持する上面部120aと、上型150を側方から囲むように形成された側面部120bと、を具備する。下型ホルダ110と上型ホルダ120によって、樹脂成形の際に成形型(下型140及び上型150)を収容する空間(収容空間)が形成される。また上型ホルダ120には、減圧用経路121、中央吸着用経路122及び外側吸着用経路123が形成される。
【0014】
減圧用経路121は、成形型の収容空間を減圧する際に空気を吸引するための空気の吸引経路である。減圧用経路121は、上型ホルダ120の内部(成形型の収容空間)と外部とを接続するように形成される。減圧用経路121は、上面部120aの下面において、上型150と重複しない位置(上型150の周囲)で開放するように形成される。
【0015】
中央吸着用経路122は、上型150に形成された中央吸着孔151aで基板Wを吸着する際に空気を吸引するための空気の吸引経路である。中央吸着用経路122は、上型ホルダ120の内部(成形型の収容空間)と外部とを接続するように形成される。中央吸着用経路122は、上面部120aの下面において、上型150の中央吸着孔151aと重複する位置で開放するように形成される。
【0016】
外側吸着用経路123は、上型150に形成された外側吸着孔151bで基板Wを吸着する際に空気を吸引するための空気の吸引経路である。外側吸着用経路123は、上型ホルダ120の内部(成形型の収容空間)と外部とを接続するように形成される。外側吸着用経路123は、上面部120aの下面において、上型150の外側吸着孔151bと重複する位置で開放するように形成される。
【0017】
減圧用経路121、中央吸着用経路122及び外側吸着用経路123は、互いに独立して(互いに接続されることがないように)形成されている。
【0018】
なお、図1等は模式図であり、減圧用経路121、中央吸着用経路122及び外側吸着用経路123の具体的な形状は特に限定するものではない。すなわち各経路は、必要に応じて適宜屈曲させたり分岐させたりすることも可能である。
【0019】
シール部材130は、下型ホルダ110と上型ホルダ120との隙間を密閉するためのものである。シール部材130は、矩形の環状をなし、弾性を有する素材により形成される。シール部材130は、例えば上型ホルダ120の側面部120bの底面(下型ホルダ110の側面部110bと対向する部分)に配置される。下型ホルダ110と上型ホルダ120とが接近した際に、下型ホルダ110と上型ホルダ120との間にシール部材130が挟み込まれることで、下型ホルダ110と上型ホルダ120との隙間を密閉することができる。
【0020】
なお図例では、上型ホルダ120にシール部材130を設けた例を示しているが、例えば下型ホルダ110にシール部材130を設けたり、下型ホルダ110と上型ホルダ120の両方にシール部材130を設けたりすることも可能である。また、シール部材130を複数設けることも可能である。第1例として、上型ホルダ120及び下型ホルダ110の間に配置されるシール部材130とは異なる別のシール部材130が、上型ホルダ120の側面部120bの中途部に配置されてもよい。この場合、別のシール部材130は、2つの側面部120bによって挟まれる。第2例として、上型ホルダ120及び下型ホルダ110の間に配置されるシール部材130とは異なる別のシール部材130が、下型ホルダ110の側面部110bの中途部に配置されてもよい。この場合、別のシール部材130は、2つの側面部110bによって挟まれる。また、シール部材130の形状は矩形の環状に限定されず、例えば、円形の環状であってもよい。
【0021】
下型140は、成形型の下部を形成するものである。下型140は、主として底面部材141、側面部材142及び弾性部材143等を具備する。
【0022】
底面部材141は、キャビティCの底面を形成するものである。底面部材141は、平面視円形状に形成される。底面部材141は、適宜の上下幅を有するように形成される。底面部材141は、下型ホルダ110の底面部110aの中央部分に載せられた状態で配置される。
【0023】
側面部材142は、底面部材141を側方から囲むものである。側面部材142は、枠状をなし、適宜の上下幅を有するように形成される。側面部材142には、側面部材142の中央を上下に貫通する中空部が形成される。側面部材142の中空部は、平面視において、底面部材141の外形と概ね一致するような形状に形成される。
【0024】
このように側面部材142は、平面視円形の枠状に形成される。側面部材142の中空部には底面部材141が配置される。側面部材142は、弾性部材143を介して、下型ホルダ110の底面部110aに載せられた状態で配置される。側面部材142の上面は、底面部材141の上面よりも上方に位置する。側面部材142及び底面部材141、並びに、上型150によって、樹脂成形を行うためのキャビティCが規定される。
【0025】
弾性部材143は、側面部材142と下型ホルダ110の底面部110aとの間に配置される。弾性部材143は、例えば上下に伸縮可能な圧縮コイルばね等により形成される。
【0026】
なお、下型140(底面部材141及び側面部材142)の上面には、離型フィルム(不図示)を吸着して保持するための吸着孔(不図示)が適宜形成される。この吸着孔をポンプ等(不図示)によって負圧にすることで、離型フィルムを吸着して保持することができる。
【0027】
上型150は、成形型の上部を形成するものである。上型150は、底面視円形状に形成される。上型150は、適宜の上下幅を有するように形成される。上型150は、上型ホルダ120の上面部120aの下面の中央部分に固定される。上型150には、吸着孔151が形成される。
【0028】
図2に示す吸着孔151は、基板Wを吸着するためのものである。吸着孔151は、上型150を上下に貫通するように形成される。図2(b)に示すように、吸着孔151は、吸着する基板Wと対向する範囲(円形の範囲)の全域に亘って複数形成されている。本実施形態において、複数の吸着孔151は、中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bに分類される。中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bは、それぞれ複数設けられている。
【0029】
中央吸着孔151aは、底面視において基板Wの形状(円形)の中心(幾何中心)を含む所定の範囲に形成されている吸着孔151である。複数の中央吸着孔151aで構成される群は所定の範囲に形成されている。本実施形態では、基板Wと同心円状に設定された領域L(図2(b)の一点鎖線で示した領域)の内側の吸着孔151を、中央吸着孔151aに設定している。所定の範囲は領域Lに相当する。所定の範囲は、基板Wを吸着する領域の中心(幾何中心)を含む範囲であってもよい。
【0030】
外側吸着孔151bは、中央吸着孔151aの周囲に形成されている吸着孔151である。本実施形態では、領域Lの外側(領域Lを囲む領域)の吸着孔151を、外側吸着孔151bに設定している。なお、本実施形態に係る中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bは、それぞれ本発明に係る第1吸着孔及び第2吸着孔の実施の一形態である。
【0031】
上型150が上型ホルダ120に取り付けられた状態において、中央吸着孔151aは、上型ホルダ120の中央吸着用経路122と接続される。また外側吸着孔151bは、上型ホルダ120の外側吸着用経路123と接続される。
【0032】
減圧用ポンプ160は、減圧用経路121から空気を吸引するためのものである。減圧用ポンプ160は、適宜のホース等により構成された減圧用接続経路161を介して、上型ホルダ120の減圧用経路121に接続される。下型ホルダ110と上型ホルダ120がシール部材130を介して密着した状態で減圧用ポンプ160が作動すると、減圧用経路121を介して成形型の収容空間が減圧される。これによって、樹脂成形品にボイドが発生することを抑制することができる。なお、本実施形態に係る減圧用ポンプ160は、本発明に係る減圧機構の実施の一形態である。
【0033】
中央吸着用ポンプ170は、中央吸着用経路122から空気を吸引するためのものである。中央吸着用ポンプ170は、適宜のホース等により構成された接続経路171を介して、上型ホルダ120の中央吸着用経路122に接続される。中央吸着用ポンプ170が作動すると、中央吸着用経路122を介して上型150の中央吸着孔151aから空気が吸引される。これによって、中央吸着孔151aに基板Wを吸着させて保持することができる。
【0034】
外側吸着用ポンプ180は、外側吸着用経路123から空気を吸引するためのものである。外側吸着用ポンプ180は、適宜のホース等により構成された接続経路181を介して、上型ホルダ120の外側吸着用経路123に接続される。外側吸着用ポンプ180が作動すると、外側吸着用経路123を介して上型150の外側吸着孔151bから空気が吸引される。これによって、外側吸着孔151bに基板Wを吸着させて保持することができる。なお、中央吸着用ポンプ170及び外側吸着用ポンプ180は、それぞれ本発明に係る第1ポンプ及び第2ポンプの実施の一形態である。
【0035】
このようにして、第1実施形態では、中央吸着孔151aから空気を吸引するための中央吸着機構Aと、外側吸着孔151bから空気を吸引するための外側吸着機構Bと、が独立して設けられている。中央吸着機構Aは、中央吸着用ポンプ170、接続経路171及び中央吸着用経路122を含む。外側吸着機構Bは、外側吸着用ポンプ180、接続経路181及び外側吸着用経路123を含む。中央吸着機構A及び外側吸着機構Bによって、中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bのそれぞれから、互いに独立して空気の吸引を行うことができる。なお、本実施形態に係る中央吸着機構A及び外側吸着機構Bは、それぞれ本発明に係る第1吸着機構及び第2吸着機構の実施の一形態である。
【0036】
型締め機構190は、下型140を昇降させて型締め及び型開き等を行うものである。型締め機構190としては、ボールねじ機構、油圧シリンダ、トグル機構等を用いることができる。型締め機構190は、下型ホルダ110の下方に配置され、下型ホルダ110を介して下型140を昇降させることができる。
【0037】
なお、上述の樹脂成形装置100の各部の動作は、図示しない制御装置によって適宜制御される。
【0038】
<樹脂成形品の製造方法>
次に、樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品の製造方法の一例について説明する。
【0039】
図3に示すように、本実施形態に係る樹脂成形品の製造方法は、主としてフィルム配置工程S10、搬入工程S20、減圧工程S30、型締め工程S40、樹脂成形工程S50、型開き工程S60及び搬出工程S70を含む。以下、順に説明する。
【0040】
フィルム配置工程S10は、下型140に離型フィルム(不図示)を配置する工程である。
【0041】
具体的には、フィルム配置工程S10において、所定の搬送装置によって離型フィルムが成形型に搬入される。離型フィルムは、下型140の上面に吸着されて、下型140の上面の形状に沿うように保持される。
【0042】
下型140に離型フィルムを設けることで、下型140の表面への樹脂材料Rの付着を防止することができる。また、下型140(離型フィルム)の表面に異物が付着した場合には、離型フィルムを交換することで、異物を容易に除去することができる。なお、フィルム配置工程S10では、下型140だけではなく、上型150に離型フィルムを配置してもよい。
【0043】
離型フィルムが下型140に吸着された後、フィルム配置工程S10から搬入工程S20に移行する。
【0044】
搬入工程S20は、成形型に樹脂材料R及び基板Wを搬入する工程である。
【0045】
具体的には、搬入工程S20において、樹脂材料Rは、所定の搬送装置によって成形型に搬入される。図1に示すように、樹脂材料Rは、下型140内(側面部材142の内側)に収容される。なお、樹脂材料Rとしては、固体状の粉粒体状樹脂(顆粒状樹脂含む)、液体状の液状樹脂など、各種状態の樹脂を用いることができる。
【0046】
また、搬入工程S20において、基板Wは、所定の搬送装置によって成形型に搬入される。図1に示すように、中央吸着機構Aの中央吸着用ポンプ170、及び、外側吸着機構Bの外側吸着用ポンプ180が作動することで、上型150の吸着孔151(中央吸着孔151a及び外側吸着孔151b)に基板Wが吸着される。
【0047】
ここで、基板Wには、固定された電子素子等の影響(線膨張係数の差)によって反りが発生している場合がある。しかしながら、吸着孔151(中央吸着孔151a及び外側吸着孔151b)によって基板Wを上型150の下面に沿って吸着することで、基板Wの反りを矯正した状態で保持することができる。
【0048】
なお、搬入工程S20において、吸着孔151による吸着に加えて、上型150に設けられた機械式のクランパ(不図示)によって、基板Wを上型150に保持することも可能である。これによって、万が一吸着孔151による吸着に不具合が生じた場合であっても、基板Wの落下を防止することができる。
【0049】
また、樹脂材料R及び基板Wが搬入される順序は特に限定するものではない。樹脂材料R及び基板Wのいずれを先に成形型に搬入してもよく、また、樹脂材料R及び基板Wを同時に成形型に搬入してもよい。なお、本実施形態に係る搬入工程S20は、本発明に係る吸着工程の実施の一形態である。
【0050】
樹脂材料R及び基板Wの搬入が完了した後、搬入工程S20から減圧工程S30に移行する。
【0051】
減圧工程S30は、成形型の収容空間の減圧を行う工程である。
【0052】
具体的には、型締め機構190が駆動されることで、下型ホルダ110が上型ホルダ120に向かって上昇する。下型ホルダ110が所定の位置まで上昇すると、側面部110bの上面が、シール部材130を介して上型ホルダ120の側面部120bの下面と接触する。これによって、成形型(下型140及び上型150)の収容空間が密閉される(図4参照)。なお、この状態では、まだ下型140と上型150は接触していない。
【0053】
この状態で、減圧用ポンプ160が作動することによって、成形型の収容空間の減圧(真空引き)が行われる。これによって、樹脂材料R中の空気又はガスを排出し、樹脂成形品にボイドが発生することを抑制することができる。
【0054】
また、基板Wを機械式のクランパで保持している場合には、下型140と上型150とが接触する前に(下型140と上型150との間に隙間がある状態で)、クランパによる保持が解除される。このように、下型140と上型150との間に隙間がある状態でクランパによる保持を解除することで、クランパと下型140との接触を避けるための凹部を下型140に形成する必要がなくなる。これによって、枠の厚みが小さい側面部材142を用いることができる。この場合、キャビティCを広く確保することができる。
【0055】
ここで、減圧用ポンプ160が作動して収容空間の減圧が行われると、上型150に吸着された基板Wの上下の気圧差が低下する。具体的には、基板Wを吸着している吸着孔151の内部の気圧と、基板Wの下側(収容空間)の気圧との差が小さくなる。吸着孔151の内部の気圧が基板Wの下側の気圧よりも小さい場合、基板Wが下側から上側に押され、基板Wが上型150に吸着される。基板Wを吸着する吸着力は、吸着孔151の内部の気圧と基板Wの下側の気圧との差圧が大きい程大きい。吸着孔151と収容空間との気圧差が低下すると、前述のように基板Wに反りが発生している場合、差圧の低下によって低下した吸着孔151の吸着力では基板Wの反りを矯正しきれなくなり、基板Wが上型150から離れてしまうおそれがある。
【0056】
図4には、このようにして基板Wの外周部分が上型150から離れるように下方に向かって屈曲した(反った)例を示している。このような変形が発生した場合、複数の吸着孔151のうち、外側に形成されている外側吸着孔151bが基板Wから離れ、収容空間と接続される。この状態では、外側吸着用ポンプ180が作動していても、外側吸着孔151bの気圧と収容空間の気圧との差圧がなくなるため、外側吸着孔151bで基板Wの吸着を行うことができなくなる。
【0057】
しかしながら本実施形態では、外側吸着孔151bと独立した経路を介して、中央吸着孔151aから基板Wの吸着を行っている。従って、外側吸着孔151bと収容空間とが接続されたとしても、中央吸着孔151aの気圧と収容空間の気圧との差圧をある程度、確保することができ、中央吸着孔151aによって基板Wの吸着を行うことができる。このように、複数の独立した経路によって基板Wの吸着を行うことで、基板Wの落下を防止することができる。
【0058】
収容空間の減圧が行われた後、減圧工程S30から型締め工程S40に移行する。
【0059】
型締め工程S40は、成形型(下型140及び上型150)を閉める(型締めする)工程である。
【0060】
具体的には、型締め工程S40において、まず下型140に設けられた加熱機構(不図示)によって、キャビティC内に収容された樹脂材料Rが加熱される。樹脂材料Rとして熱硬化性の樹脂材料が用いられる。熱硬化性の樹脂材料の温度を上昇させた場合、樹脂材料の粘度は一旦低下し、その後、樹脂材料は硬化する。樹脂材料Rが加熱された場合、樹脂材料Rの粘度が低下する。樹脂材料Rが固体状の樹脂材料である場合、樹脂材料Rは加熱によって溶融される。
【0061】
次に、型締め機構190が駆動されることで、下型ホルダ110がシール部材130を上下に圧縮しながら上昇する。これに伴って、下型140が上型150に向かって上昇する。下型140が所定の位置まで上昇すると、側面部材142の上面が基板Wを介して上型150の下面と接触し、下型140(樹脂材料Rが収容された空間)が上型150によって上方から塞がれる。なお、本実施形態では基板Wを介して下型140と上型150とが接触する例を示しているが、例えば、基板WをキャビティCの内側に収まる大きさに形成し、下型140と上型150とを直接接触させてもよい。
【0062】
さらに型締め機構190が駆動されることで、下型140の底面部材141が上型150に向かってさらに上昇する。この際、側面部材142は上型150に接しているため、上昇することはない。すなわち、底面部材141は側面部材142に対して相対的に上昇する。底面部材141が上昇すると、下型140に収容された樹脂材料Rが加圧される。底面部材141がある程度上昇した時点で、型締めが完了する。
【0063】
型締めが完了した後、型締め工程S40から樹脂成形工程S50に移行する。
【0064】
樹脂成形工程S50は、樹脂材料Rを硬化させて樹脂成形を行う工程である。
【0065】
具体的には、樹脂成形工程S50において、樹脂材料Rを加圧した状態で所定時間待機する。これによって、熱硬化性の樹脂材料Rの温度はさらに上昇し、樹脂材料Rは硬化する。結果、基板Wに対して樹脂成形を行うことができる。
【0066】
樹脂材料Rが硬化した後、樹脂成形工程S50から型開き工程S60に移行する。
【0067】
型開き工程S60は、成形型(下型140及び上型150)を開く(型開きする)工程である。
【0068】
具体的には、図5に示すように、型開き工程S60において、型締め機構190が駆動されることで、下型140が上型150から離れるように下降する。これによって、下型140が上型150の下面から離れる。
【0069】
ここで、型開きによって冷却された際の基板Wと樹脂材料Rの熱収縮率の違いから、樹脂成形された基板W(樹脂成形品)に変形(反り)が発生する可能性がある。例えば図5には、樹脂成形された基板Wの外周部分が下方に向かって屈曲した例を示している。このような変形が発生した場合、複数の吸着孔151のうち、外側に形成されている外側吸着孔151bが基板Wから離れ、収容空間と接続される。この状態では、外側吸着用ポンプ180が作動していても、外側吸着孔151bの気圧と収容空間の気圧との差圧がなくなるため、吸着力が低下し、外側吸着孔151bで基板Wの吸着を行うことができなくなる。
【0070】
しかしながら本実施形態では、外側吸着孔151bと独立した経路を介して、中央吸着孔151aから基板Wの吸着を行っている。従って、外側吸着孔151bと収容空間とが接続されたとしても、中央吸着孔151aの気圧と収容空間の気圧との差圧をある程度、確保することができ、中央吸着孔151aによって基板Wの吸着を行うことができる。このように、複数の独立した経路によって基板Wの吸着を行うことで、基板Wの落下を防止することができる。
【0071】
型開きが完了した後、型開き工程S60から搬出工程S70に移行する。
【0072】
搬出工程S70は、樹脂成形品を成形型から搬出する工程である。搬出工程S70において、樹脂成形品は、所定の搬送装置によって成形型から搬出される。
【0073】
このようにして、本実施形態では、樹脂成形の前後において、上型150に吸着された基板W(樹脂成形品)に変形が生じた場合であっても、基板Wの落下を防止することができる。
【0074】
なお、図5等には、基板Wの下面の中央部分が樹脂で封止される例を示した。しかし、例えば、基板Wの下面の中央部分だけではなく、基板Wの縁部分も樹脂で封止される手法(オーバーモールド)が行われてもよい。
【0075】
<樹脂成形装置200(第2実施形態)>
以下では、図6を用いて、第2実施形態に係る樹脂成形装置200について説明する。
【0076】
第2実施形態に係る樹脂成形装置200が第1実施形態に係る樹脂成形装置100と異なる点は、2つのバルブ(中央吸着用バルブ220及び外側吸着用バルブ230)を用いて、中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bから互いに独立して空気の吸引を行うことができる点である。よって以下では、主にこの相違点について説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0077】
第2実施形態に係る樹脂成形装置200は、吸着用ポンプ210、中央吸着用バルブ220及び外側吸着用バルブ230を具備している。
【0078】
吸着用ポンプ210は、中央吸着用経路122及び外側吸着用経路123から空気を吸引するためのものである。吸着用ポンプ210は、適宜のホース等により構成された接続経路211を介して、上型ホルダ120の中央吸着用経路122及び外側吸着用経路123にそれぞれ接続される。具体的には、吸着用ポンプ210に接続された接続経路211は、中途部において2つの接続経路211a及び接続経路211bに分岐される。一方の接続経路211aは、上型ホルダ120の中央吸着用経路122に接続される。他方の接続経路211bは、上型ホルダ120の外側吸着用経路123に接続される。なお、本実施形態に係る接続経路211b及び外側吸着用経路123は、本発明に係る吸引経路の実施の一形態である。
【0079】
中央吸着用バルブ220は、接続経路211aを開閉することで、接続経路211aにおける空気の流通の可否を切り替えるものである。中央吸着用バルブ220は、接続経路211aの中途部に設けられる。
【0080】
外側吸着用バルブ230は、接続経路211bを開閉することで、接続経路211bにおける空気の流通の可否を切り替えるものである。外側吸着用バルブ230は、接続経路211bの中途部に設けられる。なお、本実施形態に係る外側吸着用バルブ230は、本発明に係るバルブの実施の一形態である。
【0081】
このように第2実施形態では、中央吸着孔151aから空気を吸引するための中央吸着用バルブ220、接続経路211a及び中央吸着用経路122(以下、「中央吸着機構A」と称する)と、外側吸着孔151bから空気を吸引するための外側吸着用バルブ230、接続経路211b及び外側吸着用経路123(以下、「外側吸着機構B」と称する)と、が独立して設けられている。また第2実施形態では、共通の吸着用ポンプ210を用いて、中央吸着機構A及び外側吸着機構Bによる空気の吸引が行われる。
【0082】
このように構成された第2実施形態において、前述の搬入工程S20において基板Wを上型150に吸着する場合、中央吸着用バルブ220及び外側吸着用バルブ230を開放した状態で、吸着用ポンプ210を作動させる。これによって、中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bに基板Wを吸着することができる。
【0083】
また前述のように、減圧工程S30及び型開き工程S60等において、基板Wの反りによって基板Wの外周部分が上型150から離れた場合(図4図5等参照)には、外側吸着機構Bの外側吸着用バルブ230が閉じられる。この状態では、中央吸着孔151aによって基板Wを保持することができる。また、基板Wの反りによって外側吸着孔151bと収容空間とが接続されたとしても、外側吸着用バルブ230が閉じられることで、中央吸着孔151aの気圧と収容空間の気圧との差圧をある程度、確保することができ、基板Wの落下を防止することができる。
【0084】
なお、外側吸着用バルブ230の開閉の契機は、任意に設定することが可能である。例えば、製造される樹脂成形品に応じて予め基板Wに反りが発生するタイミングが分かっている場合には、そのタイミングに合わせて外側吸着用バルブ230を閉じるように構成することが可能である。また、各種のセンサ等を用いて基板Wの反りの有無を検出し、その検出結果に応じて外側吸着用バルブ230の動作を制御することも可能である。
【0085】
また、中央吸着用バルブ220を常時開いた状態で樹脂成形品を製造する場合(外側吸着用バルブ230のみを開閉する場合)には、必ずしも中央吸着用バルブ220を設ける必要はない。
【0086】
<樹脂成形装置300(第3実施形態)>
以下では、図7を用いて、第3実施形態に係る樹脂成形装置300について説明する。
【0087】
第3実施形態に係る樹脂成形装置300が第1実施形態に係る樹脂成形装置100と異なる点は、外側吸着孔151bから空気を吸引するための外側吸着機構Bを、さらに複数の(図例では、2つの)独立した経路により構成している点である。よって以下では、主にこの相違点について説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0088】
第3実施形態に係る樹脂成形装置300では、中央吸着孔151aの外側に形成されている外側吸着孔151bを、さらに2種類の吸着孔151(第1外側吸着孔151ba及び第2外側吸着孔151bb)に分類している。
【0089】
第1外側吸着孔151baは、複数の外側吸着孔151bのうち、内側に形成されているものである。また第2外側吸着孔151bbは、第1外側吸着孔151baよりも外側に形成されているものである。
【0090】
また上型ホルダ120には、第1外側吸着孔151baに接続された第1外側吸着用経路123a、及び、第2外側吸着孔151bbに接続された第2外側吸着用経路123bが形成されている。
【0091】
外側吸着機構Bは、第1外側吸着用ポンプ180a、第1接続経路181a及び第1外側吸着用経路123aによって、第1外側吸着孔151baに基板Wを吸着することができる。また外側吸着機構Bは、第2外側吸着用ポンプ180b、第2接続経路181b及び第2外側吸着用経路123bによって、第2外側吸着孔151bbに基板Wを吸着することができる。このように、複数の独立した経路によって、第1外側吸着孔151ba及び第2外側吸着孔151bbによる基板Wの吸着を独立して行うことができる。
【0092】
このように外側吸着機構Bを構成することによって、基板Wの反り具合に応じて適切に基板Wを吸着することができる。例えば、比較的基板Wの反りが大きく、基板Wが第1外側吸着孔151ba及び第2外側吸着孔151bbから離れる場合には、中央吸着孔151aによって基板Wを吸着し、基板Wの落下を防止することができる。また、比較的基板Wの反りが小さく、基板Wが第2外側吸着孔151bbから離れる場合(第1外側吸着孔151baからは離れない場合)には、中央吸着孔151a及び第1外側吸着孔151baによって基板Wを吸着し、基板Wをより強固に吸着して保持することができる。
【0093】
なお、第3実施形態では、外側吸着機構Bを2つの独立した経路により構成した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、3つ以上の独立した経路により構成することも可能である。
【0094】
また、第3実施形態では、3つのポンプ(中央吸着用ポンプ170、第1外側吸着用ポンプ180a及び第2外側吸着用ポンプ180b)を用いて、3種類の吸着孔151(中央吸着孔151a、第1外側吸着孔151ba及び第2外側吸着孔151bb)から互いに独立して基板Wを吸着する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第2実施形態(図6参照)のように、バルブを用いて3種類の吸着孔151から互いに独立して基板Wを吸着するように構成することも可能である。また、複数のポンプとバルブを適宜組み合わせて、複数種類の吸着孔151から互いに独立して基板Wを吸着するように構成することも可能である。
【0095】
<吸着孔151の配置の変形例>
以下では、図8を用いて、吸着孔151の配置の変形例について説明する。
【0096】
第1実施形態から第3実施形態では、円形状の基板Wを用いることを前提として、円形状の基板Wと対向する範囲(円形の範囲)に吸着孔151が形成された例を示したが(図2(b)参照)、本発明はこれに限るものではなく、吸着孔151は基板Wの形状に応じて任意の範囲に形成することが可能である。
【0097】
例えば図8には、矩形状(正方形状)の基板Wを用いることを想定した場合の、吸着孔151の配置の一例(変形例)を示している。図8に示した例では、矩形状の基板Wと対向する範囲(矩形状の範囲)の全域に亘って吸着孔151が形成されている。
【0098】
また図8の例では、底面視において基板Wの形状(矩形)の中心(幾何中心)を含む所定の範囲(領域L)に形成された吸着孔151を、中央吸着孔151aに設定している。
【0099】
なお、本発明に係る第1吸着孔(中央吸着孔151a)及び第2吸着孔(外側吸着孔151b)の配置は上記実施形態で示した例に限定するものではなく、任意に設定することが可能である。すなわち、本発明に係る第1吸着孔及び第2吸着孔は、それぞれ独立して空気の吸引(基板Wの吸着)が可能なものであれば、両者の配置は任意に設定することが可能である。なお、一般的には基板Wの外周部分が上型150から離れるように変形する(反る)ことが想定されるため、第1吸着孔の周囲を囲むように第2吸着孔を設定することが好ましく、さらには、基板Wの中心を含む範囲を第1吸着孔として設定することが好ましい。
【0100】
その他、予め基板Wの反り方が分かっている場合には、基板Wの反りに応じた位置に第1吸着孔及び第2吸着孔を設定してもよい。例えば長手状の基板W(長方形状の基板Wなど)を用いる場合において、長手方向両端部が反ることが予め分かっている場合には、基板Wの長手方向両端部を吸着する吸着孔151を第2吸着孔に設定し、基板Wの長手方向中央部分を吸着する吸着孔151を第1吸着孔に設定してもよい。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0102】
例えば、上記実施形態では主に円形の基板W(図2参照)を用いる例を示したが、基板Wの形状はこれに限るものではなく、任意の形状の基板Wを用いることが可能である。また、基板Wの形状(円形、矩形等)に応じて、樹脂成形装置100の各部(下型140、上型150等)の形状を、平面視円形状、平面視矩形状等に任意に変更することが可能である。
【0103】
また、上記各実施形態で示した樹脂成形品の製造方法(図3参照)は一例であり、適宜変更することが可能である。例えば、上記各実施形態では、減圧工程S30において収容空間の減圧を行った後で型締め工程S40を行う例を示したが、減圧工程S30と型締め工程S40を並行して行うことも可能である。また上記各実施形態では、フィルム配置工程S10において成形型に離型フィルムを配置した後に、搬入工程S20において樹脂材料Rを搬入する例を示したが、例えば、下型140に配置する離型フィルム上に樹脂材料Rを配置してから、樹脂材料Rと共に離型フィルムを下型140に配置することも可能である。
【0104】
また、上記各実施形態では、樹脂材料Rとして、熱硬化性を有する樹脂材料を用いる例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、熱可塑性を有する樹脂材料を用いてもよい。更に、上記各実施形態では、中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bそれぞれの数が2以上である例を示した。しかし、中央吸着孔151a及び外側吸着孔151bそれぞれの数は1であってもよい。
【0105】
<付記>
本開示の第1側面の樹脂成形装置100・200・300は、
上型150と下型140との間に成形対象物(基板W)を配置し、圧縮成形を行う樹脂成形装置100・200・300であって、
前記上型150には、前記上型150の下面に開口するように形成され、前記成形対象物を吸着するための複数の吸着孔151が形成され、
複数の前記吸着孔151のうち、少なくとも1つの第1吸着孔(中央吸着孔151a)から空気を吸引することが可能な第1吸着機構(中央吸着機構A)と、
複数の前記吸着孔151のうち、少なくとも1つの第2吸着孔(外側吸着孔151b)から空気を吸引することが可能であり、前記第1吸着機構とは独立して前記第2吸着孔を介する空気の吸引を行うことが可能な第2吸着機構(外側吸着機構B)と、
を具備する。
本開示の第1側面の樹脂成形装置100・200・300によれば、成形対象物(基板W)に反りが発生した場合でも、成形対象物の落下を防止することができる。すなわち、互いに独立した第1吸着機構と第2吸着機構で成形対象物を吸着することで、成形対象物の反りによって一方の吸着機構による吸着ができなくなった場合でも、他方の吸着機構によって成形対象物を吸着して保持することができる。
【0106】
第1側面に従う第2側面の樹脂成形装置100・200・300において、
前記第1吸着孔(中央吸着孔151a)及び前記第2吸着孔(外側吸着孔151b)は、それぞれ複数設けられ、
複数の前記第2吸着孔は、前記上型150の下面において、複数の前記第1吸着孔で構成される群の周囲に形成されている。
本開示の第2側面の樹脂成形装置100・200・300によれば、成形対象物(基板W)の外周部分に反りが発生した場合であっても、成形対象物を上型150に適切に保持することができる。
【0107】
第1又は第2側面に従う第3側面の樹脂成形装置100において、
前記第1吸着機構(中央吸着機構A)は、前記第1吸着孔(中央吸着孔151a)から空気を吸引する第1ポンプ(中央吸着用ポンプ170)を具備し、
前記第2吸着機構(外側吸着機構B)は、前記第2吸着孔(外側吸着孔151b)から空気を吸引する第2ポンプ(外側吸着用ポンプ180)を具備する。
本開示の第3側面の樹脂成形装置100によれば、バルブの開閉等の複雑な制御を行うことなく成形対象物の落下を防止することができる。
【0108】
第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の樹脂成形装置200において、
前記第2吸着機構(外側吸着機構B)は、
前記第2吸着孔(外側吸着孔151b)に接続され、前記第2吸着孔から吸引される空気を案内する吸引経路(接続経路211b、外側吸着用経路123)と、
前記吸引経路における空気の流通の可否を切り替えることが可能なバルブ(外側吸着用バルブ230)と、
を具備する。
本開示の第4側面の樹脂成形装置200によれば、第1吸着機構と第2吸着機構で共通のポンプ(吸着用ポンプ210)を用いながらも、成形対象物の落下を防止することができる。
【0109】
第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の樹脂成形装置100・200・300は、
前記上型150及び前記下型140が配置された空間(収容空間)を減圧させることが可能な減圧機構(減圧用ポンプ160)をさらに具備する。
本開示の第5側面の樹脂成形装置100・200・300によれば、収容空間を減圧させて樹脂成形品にボイドが発生することを抑制すると共に、減圧時の成形対象物の落下を防止することができる。
【0110】
第6側面の樹脂成形品の製造方法は、
第1から第5側面のいずれか1つに従う樹脂成形装置100・200・300を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記上型150の下面に前記成形対象物(基板W)を吸着させる吸着工程(搬入工程S20)と、
前記上型150及び前記下型140の型締めを行う型締め工程S40と、
を含む。
本開示の第6側面の樹脂成形品の製造方法によれば、成形対象物(基板W)に反りが発生した場合でも、成形対象物の落下を防止することができる。
【符号の説明】
【0111】
100 樹脂成形装置
140 下型
150 上型
151 吸着孔
151a 中央吸着孔
151b 外側吸着孔
170 中央吸着用ポンプ
180 外側吸着用ポンプ
210 吸着用ポンプ
220 中央吸着用バルブ
230 外側吸着用バルブ
A 中央吸着機構
B 外側吸着機構
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型との間に成形対象物を配置し、圧縮成形を行う樹脂成形装置であって、
前記上型には、前記上型の下面に開口するように形成され、前記成形対象物を吸着するための複数の吸着孔が形成され、
複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第1吸着孔から空気を吸引することが可能な第1吸着機構と、
複数の前記吸着孔のうち、少なくとも1つの第2吸着孔から空気を吸引することが可能であり、前記第1吸着機構とは独立して前記第2吸着孔を介する空気の吸引を行うことが可能な第2吸着機構と、
を具備する樹脂成形装置。
【請求項2】
前記第1吸着孔及び前記第2吸着孔は、それぞれ複数設けられ、
複数の前記第2吸着孔は、前記上型の下面において、複数の前記第1吸着孔で構成される群の周囲に形成されている、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記第1吸着機構は、前記第1吸着孔から空気を吸引する第1ポンプを具備し、
前記第2吸着機構は、前記第2吸着孔から空気を吸引する第2ポンプを具備する、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記第2吸着機構は、
前記第2吸着孔に接続され、前記第2吸着孔から吸引される空気を案内する吸引経路と、
前記吸引経路における空気の流通の可否を切り替えることが可能なバルブと、
を具備する、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記上型及び前記下型が配置された空間を減圧させることが可能な減圧機構をさらに具備する、
請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記上型の下面に前記成形対象物を吸着させる吸着工程と、
前記上型及び前記下型の型締めを行う型締め工程と、
を含む樹脂成形品の製造方法。