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特開2025-8122演算装置、漏水検知方法、及び漏水検知システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008122
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】演算装置、漏水検知方法、及び漏水検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/24 20060101AFI20250109BHJP
   F17D 5/06 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
G01M3/24 A
F17D5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110018
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃広
(72)【発明者】
【氏名】川本 高司
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
【テーマコード(参考)】
2G067
3J071
【Fターム(参考)】
2G067AA13
2G067BB11
2G067BB22
2G067CC02
2G067DD13
2G067EE02
2G067EE06
2G067EE13
3J071AA12
3J071BB12
3J071CC02
3J071DD30
3J071EE06
3J071EE07
3J071EE30
(57)【要約】
【課題】 発生箇所を発見し得る漏水を高精度で検出する。
【解決手段】 演算装置は、流体の管路網に設置された振動センサによって異なる時間帯に測定された複数の測定波形データを取得するデータ取得部と、前記複数の測定波形データから複数の時系列の自己相関係数を算出し、前記複数の時系列の自己相関係数の関係性を表す漏水スコアを算出し、前記漏水スコアに基づいて漏水発生の有無を判定する漏水判定処理を実行する漏水判定部と、前記複数の測定波形データから周波数毎の所定値以下の振動強度を取得し、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて漏水の発見容易性を判定する発見容易性判定処理を実行する発見容易性判定部と、前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを出力する出力部と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の管路網に設置された振動センサによって異なる時間帯に測定された複数の測定波形データを取得するデータ取得部と、
前記複数の測定波形データから複数の時系列の自己相関係数を算出し、前記複数の時系列の自己相関係数の関係性を表す漏水スコアを算出し、前記漏水スコアに基づいて漏水発生の有無を判定する漏水判定処理を実行する漏水判定部と、
前記複数の測定波形データから周波数毎の所定値以下の振動強度を取得し、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて漏水の発見容易性を判定する発見容易性判定処理を実行する発見容易性判定部と、
前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを出力する出力部と、
を備える演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記漏水判定部、及び前記発見容易性判定部の一方は、他方による判定処理の結果に基づき、前記一方による判定処理の実行の有無を決定する
演算装置。
【請求項3】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記漏水判定部、及び前記発見容易性判定部の一方は、他方による判定処理に先行して、前記一方による判定処理を実行する
演算装置。
【請求項4】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記漏水判定部、及び前記発見容易性判定部は、同時に並行してそれぞれの判定処理を実行する
演算装置。
【請求項5】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記漏水判定部は、前記複数の時系列の自己相関係数間のピーク位置の一致度、または類似度を前記漏水スコアとして算出する
演算装置。
【請求項6】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを表すUI画面に表示させるUI制御部、を備える
演算装置。
【請求項7】
請求項6に記載の演算装置であって、
前記UI制御部は、前記管路網における前記演算装置の配置、前記漏水スコアの推移、前記周波数毎の所定値以下の振動強度、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の前記特徴量、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の推移、又は前記周波数毎の所定値以下の振動強度の前記特徴量の推移のうちの少なくとも何れかを前記UI画面に表示させる
演算装置。
【請求項8】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記発見容易性判定部は、前記特徴量として、所定の周波数帯域の前記所定値以下の振動強度を積分する
演算装置。
【請求項9】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記発見容易性判定部は、前記特徴量として、所定の周波数帯域の前記所定値以下の振動強度のピーク点の数を算出する
演算装置。
【請求項10】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記周波数毎の所定値以下の振動強度は、周波数毎の所定値以下の振動強度である
演算装置。
【請求項11】
演算装置による漏水検知方法であって、
流体の管路網に設置された振動センサによって異なる時間帯に測定された複数の測定波形データを取得するデータ取得ステップと、
前記複数の測定波形データから複数の時系列の自己相関係数を算出し、前記複数の時系列の自己相関係数の関係性を表す漏水スコアを算出し、前記漏水スコアに基づいて漏水発生の有無を判定する漏水判定処理を実行する漏水判定ステップと、
前記複数の測定波形データから周波数毎の所定値以下の振動強度を取得し、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて漏水の発見容易性を判定する発見容易性判定処理を実行する発見容易性判定ステップと、
前記複数の測定波形データ、前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを出力する出力ステップと、
を含む漏水検知方法。
【請求項12】
サーバと、演算装置と、を有する漏水検知システムであって、
流体の管路網に設置された振動センサによって異なる時間帯に測定された複数の測定波形データを取得するデータ取得部と、
前記複数の測定波形データから複数の時系列の自己相関係数を算出し、前記複数の時系列の自己相関係数の関係性を表す漏水スコアを算出し、前記漏水スコアに基づいて漏水発生の有無を判定する漏水判定処理を実行する漏水判定部と、
前記複数の測定波形データから周波数毎の所定値以下の振動強度を取得し、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて漏水の発見容易性を判定する発見容易性判定処理を実行する発見容易性判定部と、
前記複数の測定波形データ、前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを出力する出力部と、
を備える漏水検知システム。
【請求項13】
請求項12に記載の漏水検知システムであって、
前記演算装置は、
前記データ取得部と、前記漏水判定部と、前記発見容易性判定部と、前記出力部と、を備え、
前記出力部は、前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを前記サーバに出力する
漏水検知システム。
【請求項14】
請求項12に記載の漏水検知システムであって、
前記演算装置は、
前記データ取得部と、前記漏水判定部と、前記出力部と、を備え、
前記出力部は、前記漏水判定処理の結果、前記算出した所定値以下の振動強度、又は前記周波数毎の所定値以下の振動強度の特徴量の少なくとも何れかを前記サーバに出力する
漏水検知システム。
【請求項15】
請求項12に記載の漏水検知システムであって、
前記演算装置は、
前記データ取得部と、前記出力部と、を備え、
前記出力部は、前記複数の測定波形データを前記サーバに出力し、
前記サーバは、
前記漏水判定部と、前記発見容易性判定部と、を備える
漏水検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演算装置、漏水検知方法、及び漏水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
社会インフラ(infrastructure)としての上下水道、工場に設置された排水管等の管路網における漏水を検知する技術として、例えば特許文献1には「複数のデータ収集装置と、これらデータ収集装置と無線によってデータを送受信することができるデータ分析装置とから構成される水道管路監視装置であって、前記データ収集装置は、1日に所定時間に亘って所定間隔で音圧値を測定し、記録すると共に、測定された時間における最小音圧値を抽出し、保存し、最小音圧値データを任意に設定された音圧閾値と比較し、最小音圧値データと音圧閾値との大小によって、漏水等の異常の発生の有無を判定することを特徴とする水道管路監視装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-75440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、1日の中で最も環境音が小さくなると考えられる夜間等の漏水音の音圧値と閾値とを比較して漏水発生の有無を判定している。したがって、例えば、繁華街等のように昼夜に拘わらず常に大きな環境音が発生している場合、漏水発生の有無を正確に判定できないことがある。
【0005】
また、漏水音の大きさは管路網の構造や漏水流量によって多様であり、漏水判定にとってノイズとなる環境音も多様である。したがって、漏水音と比較する閾値については、その設置箇所や環境音に応じて最適な値に設定する必要がある。
【0006】
さらに、漏水音に基づいて漏水の発生を検出できたとしても、漏水量が少ない場合、人力によって音聴調査を実行しても漏水箇所を発見できないことがある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、発生箇所を発見し得る漏水を高精度で検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る演算装置は、流体の管路網に設置された振動センサによって異なる時間帯に測定された複数の測定波形データを取得するデータ取得部と、前記複数の測定波形データから複数の時系列の自己相関係数を算出し、前記複数の時系列の自己相関係数の関係性を表す漏水スコアを算出し、前記漏水スコアに基づいて漏水発生の有無を判定する漏水判定処理を実行する漏水判定部と、前記複数の測定波形データから周波数毎の所定値以下の振動強度を取得し、前記周波数毎の所定値以下の振動強度の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて漏水の発見容易性を判定する発見容易性判定処理を実行する発見容易性判定部と、前記漏水判定処理の結果、又は前記発見容易性判定処理の結果の少なくとも何れかを出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発生箇所を発見し得る漏水を高精度で検出することが可能となる。
【0011】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、定常的な漏水振動と突発的な環境振動の違いを示す図である。
図2図2は、漏水発見箇所における漏水スコアの推移を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る漏水検知システムの概要を示す図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態に係る漏水検知システムの構成例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態における漏水検知装置の機能ブロックの構成例を示す図である。
図6図6は、漏水検知装置のハードウェアの構成例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態における管理サーバの機能ブロックの構成例を示す図である。
図8図8は、管理サーバを実現する一般的なコンピュータの構成例を示す図である。
図9図9は、漏水判定処理の概要を示す図である。
図10図10は、発見容易性判定処理の概要を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態における漏水判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図12図12は、ステップS1の測定波形データ取得処理の一例を説明するフローチャートである。
図13図13は、ステップS2の漏水判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図14図14は、漏水信号を含む測定波形データから算出された自己相関係数の時間変化を表す図である。
図15図15は、ステップS4の発見容易性判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図16図16は、ステップS41の最小振動強度取得処理の一例を説明するフローチャートである。
図17図17は、最小振動強度取得処理の一例を説明するための図である。
図18図18は、推定漏水流量と発見容易性特徴量との関係を示す図である。
図19図19は、音聴調査の結果に対する発見容易性特徴量の分布を示す図である。
図20図20は、ステップS5の判定結果出力処理の一例を説明するフローチャートである。
図21図21は、漏水管理画面の第1の表示例を示す図である。
図22図22は、漏水管理画面の第2の表示例を示す図である。
図23図23は、漏水管理画面の第3の表示例を示す図である。
図24図24は、漏水管理画面の第4の表示例を示す図である。
図25図25は、第2の実施形態における漏水検知装置の機能ブロックの構成例を示す図である。
図26図26は、第2の実施形態における管理サーバの機能ブロックの構成例を示す図である。
図27図27は、第2の実施形態における漏水判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図28図28は、第3の実施形態における漏水検知装置の機能ブロックの構成例を示す図である。
図29図29は、第3の実施形態における管理サーバの機能ブロックの構成例を示す図である。
図30図30は、第3の実施形態における漏水判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図31図31は、第4の実施形態における漏水検知装置の機能ブロックの構成例を示す図である。
図32図32は、第4の実施形態における管理サーバの機能ブロックの構成例を示す図である。
図33図33は、第4の実施形態における漏水判定処理の一例を説明するフローチャートである。
図34図34は、第1の実施形態における漏水判定処理の第1の変形例を説明するフローチャートである。
図35図35は、第2の実施形態における漏水判定処理の第1の変形例を説明するフローチャートである。
図36図36は、ステップS41の最小振動強度取得処理の変形例を説明するフローチャートである。
図37図37は、発見容易性判定処理の第1の変形例を説明するフローチャートである。
図38図38は、漏水量が異なる場合における周波数と最小振動強度の関係を表しする図である。
図39図39は、発見容易性判定処理の第2の変形例を説明するフローチャートである。
図40図40は、発見容易性判定処理の第3の変形例における最小振動強度取得処理の一例を説明するフローチャートである。
図41図41は、遅れ時間毎の自己相関係数を更新する処理を説明するための図である。
図42図42は、発見容易性判定処理の第4の変形例における最小振動強度取得処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の複数の実施形態を説明する。各実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除しない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含む。
【0014】
<本実施形態に係る漏水検知システムの概要>
当該漏水検知システムは、例えば、社会インフラとしての上下水道や、工場に設置された排水路等の管路網に設置された振動センサによって測定した振動に基づき、配管からの漏水を検知するものである。
【0015】
配管に設けた振動センサは、例えば、管路網の制水弁等の各所に設置することができ、漏水に起因して発生した振動を測定する。なお、振動センサは、振動は、配管を伝わる振動に限らず、空気や液体を伝わる音に由来する振動も測定し得るものとする。
【0016】
配管からの漏水に起因する振動の発生要因としては、漏水孔噴出口における乱流が考えられる。漏水孔噴出口とは、配管に生じた孔であってその孔から漏水が噴出している箇所である。以下、漏水孔噴出口を単に漏水孔ともいう。水等が高圧で流れる配管に漏水孔が生じて漏水が発生した場合、微小な漏水孔の付近では局所的に急峻な圧力変動が生じる。この際、漏水孔近傍では水中の圧力変動によって微小な気泡が発生と消滅を繰り返すキャビテーション現象が生じる。キャビテーション現象によって生じる気泡の周期的な発生と消滅の繰り返し運動は、付近に固有の衝撃音を発生させる。発生した衝撃音は配管、及び配管内部を流れる水等を伝搬する。この周期性がある衝撃音を振動センサによって測定することで漏水の発生を検知することが可能となる。漏水の発生を正確に特定するには、漏水発生時に観察される周期成分を精度よく抽出することが必要である。
【0017】
図1は、管路網に発生する定常的な漏水振動と突発的な環境振動との違いを示す図である。同図に示すように、一般に、漏水に起因する振動は時間帯によらず常時発生し続けている。これに対し、例えば車両の通行等の環境に起因する振動等は突発的に発生する。したがって、異なる時間帯で同じ周期特徴(定常性)を有する振動を捉えることができれば、漏水があると判定することができる。
【0018】
なお、本実施形態では、振動センサによって測定された振動の周期特徴(定常性)、すなわち、信号自体の周期特性を把握するために自己相関関数を用いるようになされている。自己相関関数G(τ)は、或る信号p(t)とその信号自身を時間的にシフトした信号p(t+τ)の間の相関を取得する関数であり、次式(1)によって定義される。
【0019】
【数1】
【0020】
信号p(t)が周期τの周期成分を有している場合、自己相関関数G(τ)は、G(τ)でピークを示すため、自己相関関数のピーク情報を取得することで、信号p(t)に周期性があるか否かを判断できる。
【0021】
本実施形態においては、複数日にわたり、異なる時間帯に測定された振動データの自己相関関数を求めることにより、車両通行等に起因する突発的な振動等を漏水として誤検知してしまうことを回避しつつ、漏水振動の大きさに寄らない漏水判定が可能である。
【0022】
なお、実際の運用においては、自己相関関数に基づいて漏水ありと判断した後に、作業員が音聴棒等を用いて音聴調査を行うことにより漏水発生箇所を探索することとなる。音聴調査に際しては、作業員の耳(聞こえ)で感知可能な大きさの振動でないと、漏水が発生していても発見に至らないことがある。こういった観点から、周期性(定常性)に関する漏水判定に加え、漏水ありと判定した箇所における漏水が音聴調査で発見に至る大きさの振動であるか否かについても判定することが重要となる。
【0023】
図2は、或る箇所に設置した振動センサによって測定された振動の周期性のみ基づいて漏水判定を実行した場合の判定結果の推移を表している。ここで、漏水スコアとは、漏水が発生している可能性の高さを表す指標である。当該設置箇所では、振動センサの設置後、長期にわたって高い漏水スコアを示していたが、音聴調査では漏水箇所を探索できなかった。一方、一定期間経過後、道路面への水の染み出しが発生し、近隣住民から通報があり漏水が発生していたことが確認された。この原因としては、振動センサの設置当初は作業員が耳では聞き取れない程度の大きさの微小な漏水を検知していたと考えられる。一般に、漏水振動の大きさは、漏水箇所に近く、漏水流量が多いほど大きくなり、音聴調査によって発見に至りやすい。そのため、周期性(定常性)に関する評価結果のみを利用して漏水の有無を判定すると、音聴調査で探索できない微小な漏水までも発報してしまうため望ましくない。
【0024】
そこで、本発明の実施形態に係る漏水検知システムは以下のように構成する。図3は、本発明の実施形態に係る漏水検知システム1の構成の概要を示している。同図に示すように、本発明の実施形態に係る漏水検知システム1は、自己相関関数のピーク位置の抽出処理を行う自己相関関数算出部11201と自己相関関数のピーク位置に基づき漏水判定を実施する漏水判定処理部11202を有する漏水判定部112、最小振動強度特徴量を算出する最小振動強度特徴量算出部11301と最小振動強度特徴量に基づき発見容易性を判定する発見容易性判定処理部11302を有する発見容易性判定部113、測定した時系列の振動を表す測定波形データを取得するデータ取得部111、漏水判定処理の結果、及び発見容易性判定処理の結果を出力する出力部114で構成されている。漏水判定部112では、数日にわたって異なる時間帯に測定された複数の測定波形データから自己相関関数のピーク位置情報(周期性)に基づいて漏水の有無を判定する。発見容易性判定部113では、漏水の可能性がある箇所において、当該漏水が音聴調査で容易に発見できるか否かを判定する。
【0025】
<本発明の第1の実施形態に係る漏水検知システム1の構成例>
図4は、本発明の第1の実施形態に係る漏水検知システム1の構成例を示している。漏水検知システム1は、管路網2の複数箇所(例えば、制水弁付近)に設置された複数の漏水検知装置10、及び各漏水検知装置10がネットワークNを介して接続する管理サーバ20を備える。
【0026】
管路網2は、例えば、社会インフラとしての上下水道や、工場等に設置された排水路等であり、その配管には水等が流れている。ネットワークNは、WAN、(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、インターネット、携帯電話通信網等の双方向通信網である。ネットワークNに対する接続は無線でもよいし、有線でもよい。また、漏水検知装置10と管理サーバ20とをネットワークNを介することなく、無線、または有線によって直接的に接続してもよい。
【0027】
漏水検知装置10は、本発明の演算装置に相当する。漏水検知装置10は、管路網2に発生した漏水に起因する振動を測定する振動センサ108(図6)を内蔵しており、振動センサ108によって測定された時系列の振動を表す測定波形データに基づき、漏水の有無を判定する漏水判定処理と、漏水ありと判定された当該漏水の発生箇所が作業員による音聴調査によって容易に発見可能か否かを判定する発見容易性判定処理とを実行する。
【0028】
管理サーバ20は、各漏水検知装置10から送信される漏水判定処理、及び発見容易性判定処理の判定結果を含むUI画面を表示して、管理サーバ20のユーザ(管路網2の管理者等)に提示する。また、管理サーバ20は、ネットワークNを介して漏水検知装置10と接続し、漏水検知装置10のアップデートを行ったり、エラーログデータを収集したりするようにしてもよい。
【0029】
<第1の実施形態における漏水検知装置10の構成例>
図5は、第1の実施形態における漏水検知装置10(以下、漏水検知装置10と称する)を構成する機能ブロックの構成例を示している。漏水検知装置10は、処理部11、記憶部12、測定部13、及び通信部14の機能ブロックを備える。処理部11は、データ取得部111、漏水判定部112、発見容易性判定部113、及び出力部114を有する。
【0030】
図6は、漏水検知装置10を構成するハードウェアの構成例を示している。漏水検知装置10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサ(不図示)とDRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリ(不図示)とを内蔵するマイクロコントローラ101、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージ103、スイッチ等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、NIC(Network Interface Card)等の通信モジュール106、バッテリ107、及び振動センサ108を備える。ただし、マイクロコントローラ101の代わりに、プロセッサとメモリとを設けてもよい。
【0031】
漏水検知装置10は、例えば、ストレージ103に格納されていたプログラム102が、マイクロコントローラ101のメモリにロードされ、マイクロコントローラ101のプロセッサがメモリにロードされたプログラム102を実行することにより、処理部11、データ取得部111、漏水判定部112、発見容易性判定部113、及び出力部114の各機能ブロックを実現する。
【0032】
処理部11は、漏水検知装置10の各部の動作を制御する。データ取得部111は、測定部13が測定した時系列の振動を表す測定波形データ121を取得して記憶部12に格納する。漏水判定部112は、測定波形データ121に基づいて漏水判定処理を実行する。発見容易性判定部113は、測定波形データ121に基づいて発見容易性判定処理を実行する。出力部114は、漏水判定処理の結果である漏水判定結果122、及び発見容易性判定処理の結果である発見容易性判定結果124を、通信部14を制御して管理サーバ20に送信させる。
【0033】
ただし、これらの機能ブロックの一部または全部を集積回路等によりハードウェアとして実現してもよい。また、これらの機能ブロックは、1台のマイクロコントローラ101によって実現してもよいし、複数台のマイクロコントローラ101によって実現してもよい。複数台のマイクロコントローラ101によって実現する場合、複数台のマイクロコントローラ101は、ネットワークNを介して接続されていてもよく、遠隔地に分散して配置してもよい。また、マイクロコントローラ101の代わりに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の専用回路を用いてもよい。
【0034】
記憶部12は、ストレージ103からなる記憶資源により実現される。記憶部12には、測定部13(振動センサ108)により測定された測定波形データ121、漏水判定結果122、発見容易性判定処理の過程で取得される周波数毎の最小振動強度123、及び発見容易性判定結果124が格納される。なお、測定波形データ121、漏水判定結果122、周波数毎の最小振動強度123及び発見容易性判定結果124には、互いの対応関係を表すためのタイムスタンプや識別子等が付与されているものとする。なお、記憶部12には、測定波形データ121、漏水判定結果122、周波数毎の最小振動強度123及び発見容易性判定結果124以外のデータや情報を一時的、又は永続的に格納してもよい。
【0035】
測定部13は、振動センサ108によって実現される。測定部13は、数日間にわたり、異なる時間帯において振動を間欠的に測定する。ただし、測定部13は、振動を間欠的に測定するのではなく、常時継続的に振動を測定し、常時継続的に測定して結果から、異なる日付の異なる時間帯に測定された所定の回数分だけデータを抽出するようにしてもよい。
【0036】
通信部14は、通信モジュール106により実現される。通信部14は、ネットワークNを介して管理サーバ20に接続し、漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果124を送信する。また、通信部14は、BLUETOOTH(商標)等の近接無線通信、又は有線によって保守端末(不図示)と接続し、漏水検知装置10のアップデート用プログラムを受信したり、漏水検知装置10のエラーログデータを送信したりするようにしてもよい。なお、保守端末(不図示)を用いた漏水検知装置10の保守管理については、漏水検知装置10のメーカ、管路網2を管理する管理組織(例えば、水道局等)、漏水検知装置10の保守管理を請け負う保守管理会社等の作業員が行うことができる。
【0037】
<第1の実施形態における管理サーバ20の構成例>
図7は、漏水検知システム1における管理サーバ20(以下、管理サーバ20と称する)の機能ブロックの構成例を示している。管理サーバ20は、処理部21、記憶部22、及び通信部23の機能ブロックを有する。管理サーバ20は、サーバコンピュータやパーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータ200(図8)により実現される。
【0038】
図8は、管理サーバ20を実現する一般的なコンピュータ200の構成例を示している。コンピュータ200は、CPU、GPU等のプロセッサ201、DRAM等のメモリ202、HDDやSSD等のストレージ203、キーボード、マウス等の入力装置204、ディスプレイ等の出力装置205、及びNIC等の通信モジュール206を備える。
【0039】
管理サーバ20の処理部21、及び処理部21が有するUI制御部211は、コンピュータ200のプロセッサ201がメモリ202にロードされたプログラム2021を実行することによって実現される。記憶部22は、コンピュータ200のメモリ202、及びストレージ203によって実現される。通信部23は、コンピュータ200の通信モジュール206によって実現される。
【0040】
処理部21は、管理サーバ20の全体の動作を統括する。UI制御部211は、記憶部22に格納された漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果124に基づいて漏水管理画面をコンピュータ200のディスプレイ(出力装置205)に表示させる。記憶部22には、漏水検知装置10から送信された判定結果(漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果124)が格納される。通信部23は、漏水検知装置10から送信された判定結果を受信する。
【0041】
<漏水判定処理の概要>
図9は、漏水判定処理の概要を示す図である。漏水判定処理では、測定部13によって数日間にわたり、異なる時間帯に測定された複数の測定波形データそれぞれの自己相関関数を算出し、自己相関関数に基づいて各測定波形データの周期情報を取得し、各測定波形データの周期情報がどの程度一致しているかを利用して漏水の有無を判定する。
【0042】
<発見容易性判定処理の概要>
図10は、発見容易性判定処理の概要を示す図である。発見容易性判定処理では、上述した漏水判定処理と同じ複数の測定波形データを利用し、各測定波形データに対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行い、各周波数成分の振動強度を算出し、これらを重ね合わせ、周波数成分毎の最小振動強度(ミニマムホールド)を取得する。ここで、周波数成分毎の最小振動強度とは、数日間にわたる、異なる時間帯に測定された複数の測定波形データの各周波数成分で所定の値(例えば平均値)よりも小さい値を抽出したものである。漏水に起因する振動は、いかなる時間帯においても或る固有の周波数と振動強度を保ち発生しているため、周波数成分毎のミニマムホールドを取得することにより、環境振動の重畳成分を除きつつ、漏水振動固有の振動特徴をより強調することができる。ミニマムホールドを利用し特徴量化することにより、漏水の発見容易性を判定ができる。
【0043】
<漏水検知システム1による漏水検知処理>
図11は、漏水検知システム1による漏水検知処理の一例を説明するフローチャートである。漏水検知処理は、所定の周期で定期的に実行される。
【0044】
始めに、漏水検知装置10のデータ取得部111が、測定波形データ取得処理を実行する(ステップS1)。
【0045】
図12は、測定波形データ取得処理の一例を説明するフローチャートである。まず、データ取得部111が、測定部13を制御して、数日間にわたり、異なる時間帯に振動測定を開始させる(ステップS11)。なお、振動を測定する時間帯は予めスケジュールを組んでもよいし、ランダムに決定してもよい。また、1日間における測定回数は固定してもよいし、日毎に変更してもよい。さらに、漏水判定処理(後述)によって漏水ありと判定された翌日には測定回数を増加させる等、漏水判定結果に基づいて動的に測定回数や測定時刻を変更してもよい。また、前述したように間欠的に振動を測定するのではなく、連続的に振動を測定し、その時間的に連続する測定データから、所定の回数分、所定の時間帯の測定波形データを抽出するようにしてもよい。そして、データ取得部111が、測定部13から測定結果を取得し、測定波形データ121として記憶部12に格納する(ステップS12)。
【0046】
次に、データ取得部111が、記憶部12に格納した測定波形データ121の数が所定数Nに達したか否かを判定し(ステップS13)、所定数Nに達していないと判定した場合(ステップS13でNO)、処理をステップS12に戻してステップS12,S13を繰り返す。その後、記憶部12に格納した測定波形データ121の数が所定数Nに達したと判定した場合(ステップS13でYES)、データ取得部111が、測定波形データ取得処理を終了する。
【0047】
図11に戻る。次に、漏水検知装置10の漏水判定部112が、記憶部12に格納されたN個の測定波形データ121に基づき、漏水判定処理を実行する(ステップS2)。
【0048】
図13は、漏水判定処理の一例を説明するフローチャートである。まず、漏水判定部112が、N個の測定波形データ121それぞれについて、時系列の自己相関係数を算出する(ステップS21)。なお、1個の測定波形データ121を時間方向に複数に分割し、1個の測定波形データ121から複数の自己相関係数を算出するようにしてもよい。
【0049】
図14は、N個の測定波形データ121それぞれから算出された自己相関係数の一例を重畳して示している。同図において、横軸は時間であってその単位は振動センサ108のサンプリング間隔に一致している。縦軸は自己相関係数である。同図に示すように、自己相関係数には、時間経過に伴い複数のピークを有するピーク位置情報セットが観察される。N個の測定波形データ121が漏水に起因する振動を観測したものである場合、様々な時間帯に観測されたN個の測定波形データ121から算出された自己相関係数は一致するため、ピーク位置情報セットにも一致がみられる。
【0050】
図13に戻る。次に、漏水判定部112が、各自己相関係数それぞれから複数のピーク位置を含むピーク位置セットを抽出する(ステップS22)。この際、ノイズが少ない自己相関係数を選択してピーク位置セットを抽出するようにしてもよい。ピーク位置セットを抽出する時間幅はピーク位置セットに複数のピーク位置が含まれるように、測定波形データ121のサンプリング間隔に応じて設定できる。
【0051】
例えば、1個の測定波形データが4秒間である場合、4秒間を16分割して250ms毎の自己相関係数を算出し、16個の自己相関係数を算出する。そして、16個の自己相関係数の中から、ノイズが少ない6個の自己相関係数を選択し、6個の自己相関係数から6個のピーク位置情報セットを抽出する。このようにすれば、N個の測定波形データから6×N個のピーク位置情報セットを抽出できる。
【0052】
次に、漏水判定部112が、ステップS22で抽出した複数のピーク位置セットを2個ずつ全ての組み合わせについて比較し、ピーク位置の一致率を算出する(ステップS23)。なお、ピーク位置の一致率を算出する代わりに類似度を算出してもよい。ピーク位置の一致率、及び類似度は、本発明の漏水スコアに相当する。
【0053】
次に、漏水判定部112が、ステップS23の結果に基づいて漏水の有無を判定する(ステップS24)。例えば、ピーク位置の一致率が所定の第1閾値以上となったピーク位置セットの組み合わせの割合が所定の第2閾値以上である場合、漏水ありと判定する。反対に、ピーク位置の一致率が所定の第1閾値以上となったピーク位置セットの組み合わせの割合が所定の第2閾値未満である場合、漏水なしと判定する。
【0054】
なお、上述した漏水判定の代わりに、複数の自己相関係数のピーク情報の関係性を把握可能なグラフネットワークを活用して漏水判定を行ってもよい。ここで、グラフとは、複数の点とそれらの間をつなぐ辺によって表される図形のことであり、点や辺に物理的な意味をもたせたものをグラフネットワークと呼ぶ。この場合、各点を比較対象の各測定波形データ、各辺をピーク位置の一致率に対応させることができる。例えば、ピーク位置の一致率が80%を超える点間を線で結び辺を表示するグラフネットワークを得る。漏水発生現場で取得された測定波形データ間では、グラフネットワークを構成することで、互いにピーク位置の一致率が高いため、大きなクラスタを形成する。一方、漏水が発生していない現場で取得されたピーク位置は、互いに独立しており、関係性が乏しいため複数のクラスタを有するグラフネットワークが得られる。このような情報に基づいて、漏水を判定してもよい。
【0055】
次に、漏水判定部112が、ステップS23で算出した漏水スコア、及びステップS24で判定した漏水判定の有無を漏水判定結果122として記憶部12に格納する(ステップS25)。以上が、漏水判定部112による漏水判定処理の説明である。
【0056】
図11に戻る。次に、漏水検知装置10の発見容易性判定部113が、発見容易性判定処理の実行が必要であるか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、ステップS2にて漏水ありと判定した場合に、発見容易性判定処理の実行が必要であると判定する。または、ステップS2の判定結果とは無関係に、漏水検知装置の稼働開始日から、所定の日数が経過した際に、発見容易性判定処理の実行が必要であると判定するようにしてもよい。
【0057】
ここで、発見容易性判定処理の実行が必要であると判定した場合(ステップS3でYES)、発見容易性判定部113が、記憶部12に格納されたN個の測定波形データ121に基づき、発見容易性判定処理を実行する(ステップS4)。反対に、発見容易性判定部113が、発見容易性判定処理の実行が必要ではないと判定した場合(ステップS3でNO)、ステップS4の発見容易性判定処理をスキップする。
【0058】
図15は、発見容易性判定処理の一例を説明するフローチャートである。始めに、発見容易性判定部113が、最小振動強度取得処理を実行する(ステップS41)。
【0059】
図16は、最小振動強度取得処理の一例を説明するフローチャートである。はじめに、発見容易性判定部113が、N個の測定波形データ121のうちの一つを指定するためのパラメータYを1に初期化する(ステップS411)。
【0060】
次に、発見容易性判定部113が、記憶部12からN個の測定波形データ121のうちのY番目の測定波形データ121を記憶部12から取得する(ステップS412)。次に、発見容易性判定部113が、Y番目の測定波形データ121に対して高速フーリエ変換(FFT)を実行し(ステップS413)、その結果を記憶部12に保存する(ステップS414)。
【0061】
次に、発見容易性判定部113が、パラメータYが測定波形データ121の数Nに達したか否かを判定する(ステップS415)。ここで、パラメータYが測定波形データ121の数Nに達していないと判定した場合(ステップS415でNO)、発見容易性判定部113が、パラメータYを1だけインクリメントする(ステップS416)。この後、発見容易性判定部113が、処理をステップS412に戻して、ステップS412以降を繰り返す。
【0062】
その後、パラメータYが測定波形データ121の数Nに達したと判定した場合(ステップS415でYES)、次に、発見容易性判定部113が、N個のFFT結果から周波数毎の最小振動強度を抽出し、記憶部12に周波数毎の最小振動強度123として格納する(ステップS417)。以上が、最小振動強度取得処理の説明である。
【0063】
図17は、ステップS417における、N個のFFT結果から周波数毎の最小振動強度を抽出する処理を説明するための図である。なお、同図においては、説明を簡単にするため、N=2の場合を示している。破線は1番目(Y=1)のFFT結果、点線は2番目(Y=2)のFFT結果である。この場合、周波数毎の最小振動強度として、0~600Hzまでの帯域では、2番目の測定波形のFFT結果の方が1番目の測定波形のFFT結果よりも振動強度が小さいので、2番目の測定波形のFFT結果が抽出される。600Hz以上の帯域では、1番目の測定波形のFFT結果の方が2番目の測定波形のFFT結果よりも振動強度が小さいので、1番目の測定波形のFFT結果が抽出される。以上の処理をN個のFFT結果に対して実行することにより、最終的に抽出される周波数毎の最小振動強度はN個のFFT結果の周波数毎の強度平均を下回る値となり、突発的な騒音等の環境振動の周波数成分が低減され、定常的な漏水振動の周波数成分が強調されるようになる。以上の処理に基づく周波数毎の最小振動強度を使うことで、定常的な漏水振動の特徴を判別し易くすることができる。
【0064】
図15に戻る。次に、発見容易性判定部113が、ステップS41で取得した周波数毎の最小振動強度123に基づいて発見容易性特徴量を抽出する(ステップS42)。具体的には、例えば、所定の周波数帯域で周波数毎の最小振動強度を積分する。この積分値は、図17に示された斜線領域の面積に相当する。ただし、積分する周波数帯域は図17に示した範囲に限らず、所定の周波数帯域に限定する方法や、複数の周波数帯域に分割し、それぞれの積分した値を使用してもよい。
【0065】
次に、発見容易性判定部113が、ステップS42で抽出した発見容易性特徴量と所定の閾値とを比較することにより、音聴調査により漏水を発見し得るか否かを判定する(ステップS43)。
【0066】
図18は、推定漏水流量と発見容易性特徴量との関係を表しており、横軸は推定漏水流量、縦軸は発見容易性特徴量(所定値により正規化された値)である。同図に示すように、発見容易性特徴量が大きいほど、漏水流量も多くなっていることが確認できる。
【0067】
図19は、音聴調査の2種類の結果(漏水が発見されなかった場合(漏水音なし)、または漏水が発見された場合(漏水音あり))に対する発見容易性特徴量(所定値により正規化された値)の分布を示している。同図に示すように、音聴調査によって漏水が発見されなかった場合には発見容易性特徴量が小さく、音聴調査によって漏水が発見された場合には発見容易性特徴量が大きいことが確認できる。したがって同図の場合において、発見容易性特徴量(所定値により正規化された値)に対する閾値を例えば0.1に設定すれば、音聴調査により漏水を発見し得るか否かを判定することが可能となる。
【0068】
図15に戻る。次に、発見容易性判定部113が、ステップS43における判定結果を、発見容易性判定結果124として記憶部12に格納する(ステップS44)。以上が、発見容易性判定部113による発見容易性判定処理の説明である。
【0069】
図11に戻る。次に、漏水検知装置10の出力部114が、判定結果出力処理を実行する(ステップS5)。
【0070】
図20は、判定結果出力処理の一例を説明するフローチャートである。まず、出力部114が、記憶部12に格納されている漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果124に基づいて、これらを管理サーバ20に送信する必要があるか否かを判定する(ステップS51)。具体的は、例えば、漏水判定結果122が漏水ありであって、且つ、発見容易性判定結果124が漏水を発見し得るである場合に、これらの判定結果を管理サーバ20に送信する必要があると判定する。
【0071】
ただし、漏水判定結果122が漏水なしであったり、発見容易性判定結果が漏水を発見し得ないであったりした場合でも、漏水検知装置10の死活確認(正常に動作しているか否かの確認)を目的として、判定結果を管理サーバ20に送信する必要があると周期的に判定するようにしてもよい。
【0072】
そして、送信の必要があると判定した場合(ステップS51でYES)、次に、出力部114が、通信部14を制御して、記憶部12に格納されている判定結果(漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果124)を、ネットワークNを介して管理サーバ20に送信する(ステップS52)。なお、ステップS4の発見容易性判定処理が実行されていない場合には、記憶部12に格納されている漏水判定結果122のみを送信すればよい。
【0073】
反対に、出力部114が、送信の必要がないと判定した場合(ステップS51でNO)、ステップS52をスキップする。以上が、出力部114による判定結果出力処理の説明である。
【0074】
図11に戻る。一方、管理サーバ20においては、通信部23が、漏水検知装置10から送信された判定結果を受信して、記憶部22に格納する。次に、管理サーバ20のUI制御部211が、記憶部22に格納された判定結果に基づいて漏水管理画面を表示する(ステップS6)。以上が、漏水検知システム1による漏水検知処理の説明である。
【0075】
<管理サーバ20に表示される漏水管理画面>
図21は、管理サーバ20に表示される漏水管理画面の第1の表示例を示している。
【0076】
第1の表示例である漏水管理画面1000には、表示領域1001~1004が設けられている。表示領域1001には、管路網2と、管路網2に設置された漏水検知装置10の位置が表示される。表示領域1001には、表示領域1001における管路網2の表示を拡大するための「拡大」ボタン1011、縮小するための「縮小」ボタン1012、及び漏水検知装置10を選択するための入力欄1013が設けられている。ユーザは、入力欄1013に漏水検知装置10の識別情報(センサID)を入力することにより、管路網2に配置されている複数の漏水検知装置10の中から一つを選択することができる。なお、入力欄1013に漏水検知装置10の識別情報(センサID)を入力する代わりに、表示領域1001に表示された管路網2上の一つの漏水検知装置10をクリックすることにより、漏水検知装置10を選択することもできる。
【0077】
表示領域1002には、選択された漏水検知装置10の所定の期間における漏水スコアの推移が表示される。表示領域1003には、選択された漏水検知装置10の直近の漏水判定結果が表示される。表示領域1004には、選択された漏水検知装置10の直近の発見容易性判定結果が表示される。
【0078】
ユーザが、漏水検知装置10を選択する代わりに、例えば、直近において漏水あり、且つ、発見容易と判定された漏水検知装置10を自動的に選択するようにしてもよい。ユーザは、漏水管理画面1000に表示された情報に基づいて、漏水発生を認識でき、その漏水箇所の音聴調査を実施するか否かを総合的に判断できる。
【0079】
図22は、管理サーバ20に表示される漏水管理画面の第2の表示例を示している。
【0080】
第2の表示例である漏水管理画面1000は、漏水管理画面1000図21)に表示領域1005を追加したものである。表示領域1005には、横軸を周波数、縦軸を最小振動強度として、表示領域1002における漏水スコアを表す曲線上においてユーザが選択した日時に対応する、周波数毎の最小振動強度が表示される。ただし、管理サーバ20において、表示領域1005に周波数毎の最小振動強度を表示するためには、漏水検知装置10から管理サーバ20に対して、周波数毎の最小振動強度123を送信する必要がある。ユーザは、表示領域1005に表示された周波数毎と最小振動強度との関係により、漏水発見容易性の判定結果の妥当性を確認できる。
【0081】
図23は、管理サーバ20に表示される漏水管理画面の第3の表示例を示している。
【0082】
第3の表示例である漏水管理画面1000は、漏水管理画面1000図21)に表示領域1006を追加したものである。表示領域1006には、横軸を周波数、縦軸を最小振動強度、奥行軸を日時として、周波数毎の最小振動強度の推移が表示される。ただし、管理サーバ20において、表示領域1006に周波数毎の最小振動強度を表示するためには、漏水検知装置10から管理サーバ20に対して、周波数毎の最小振動強度123を送信する必要がある。ユーザは、表示領域1005に表示された周波数毎と振動強度との関係により、漏水発見容易性の判定結果の妥当性を確認できる。また、例えば、ある時点を境に漏水が発生した場合、周波数毎の最小振動強度もある時点を境として異なる形状となる。また、漏水発生後、漏水孔の腐食が進展し、漏水量が徐々に増えていく場合等には周波数毎の最小振動強度も時間経過とともに変化する。したがって、ユーザは、周波数毎の最小振動強度の日時変化を元に、漏水の発生や、漏水量の経時変化に関する情報を把握でき、発見容易性の推定精度を向上させることができる。
【0083】
図24は、管理サーバ20に表示される漏水管理画面の第4の表示例を示している。
【0084】
第4の表示例である漏水管理画面1000は、漏水管理画面1000図21)に表示領域1007を追加したものである。表示領域1007には、横軸を日時、縦軸を発見容易性特徴量として、選択された漏水検知装置10にての所定の期間における漏水の発見容易性特徴量の推移が表示される。ただし、管理サーバ20において、表示領域1007に発見容易性特徴量の推移を表示するためには、漏水検知装置10から管理サーバ20に対して、発見容易性特徴量を送信する必要がある。ユーザは、表示領域1007に表示された発見容易性特徴量の推移により、漏水量の変化を推定でき、発見容易性の推定精度を向上させることができる。
【0085】
なお、漏水検知装置10から送信された判定結果の表示方法は、漏水管理画面1000~1000のような図やグラフを用いたGUI(Graphical User Interface)画面に限らず、例えば、CUI(Character User Interface)のように、テキストベースでコマンドを入力したり、図やグラフを用いずにテキストベースで判定結果を表示したりするようにしてもよい。
【0086】
また、漏水管理画面1000~1000の表示は管理サーバ20に限らず、例えば、漏水検知装置10に接続した保守端末(不図示)に表示するようにしてもよい。
【0087】
以上に説明したように、漏水検知システム1によれば、例えば、自動車の通行等の突発的に発生する環境振動による誤検知を回避しつつ、漏水判定が可能となり、さらに、音聴調査による漏水箇所の発見のし易さに関する判断指標を得ることができる。これにより、例えば、発見しにくい漏水事象の音聴調査を回避し、発見し易い漏水に限定したり、優先したりして音聴調査を行うことができ、音聴調査の効率を高めることができる。
【0088】
<本発明の第2の実施形態に係る漏水検知システム1
次に、本発明の第2の実施形態に係る漏水検知システム1(不図示)について説明する。漏水検知システム1は、上述した漏水検知システム1において漏水検知装置10にて実行していた発見容易性判定処理(ステップS4(図15のS41~44))の大部分(ステップS42~S44)を管理サーバ20にて実行するようにしたものである。
【0089】
漏水検知システム1は、漏水検知システム1(図4)と同様の構成を有する。ただし、漏水検知システム1における漏水検知装置10図25)、及び管理サーバ20図26)の構成が、漏水検知システム1における漏水検知装置10図5)、及び管理サーバ20図19)の構成と異なる。
【0090】
<漏水検知システム1における漏水検知装置10の構成例>
図25は、漏水検知システム1における漏水検知装置10の構成例を示している。漏水検知装置10の構成要素のうち、漏水検知装置10の構成要素と共通のものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。漏水検知装置10は、漏水検知装置10の処理部11から発見容易性判定部113を省略し、最小振動強度取得部113を設けたものである。
【0091】
最小振動強度取得部113は、漏水検知装置10の発見容易性判定部113が実行する発見容易性判定処理(図15のステップS41~S44)のうち、ステップS41の最小振動強度取得処理を実行する。なお、図15のステップS42~S44は、後述するように、管理サーバ20の発見容易性判定部212が実行することになる。
【0092】
漏水検知装置10の記憶部12には、測定波形データ121、漏水判定結果122、及び周波数毎の最小振動強度123が格納される。
【0093】
<漏水検知システム1における管理サーバ20の構成例>
図26は、漏水検知システム1における管理サーバ20の構成例を示している。管理サーバ20の構成要素のうち、管理サーバ20図7)の構成要素と共通のものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。管理サーバ20は、管理サーバ20の処理部21に、発見容易性判定部212を追加したものである。
【0094】
発見容易性判定部212は、漏水検知システム1における漏水検知装置10の発見容易性判定部113が実行していた、発見容易性判定処理の要否の判定(図11のステップS3)、及び発見容易性判定処理(図15のステップS41~S44)のうちのステップS42~S44を実行する。
【0095】
管理サーバ20の記憶部22には、漏水検知装置10から送信された漏水判定結果122、周波数毎の最小振動強度123、及び発見容易性判定結果224が格納される。発見容易性判定結果224は、発見容易性判定部212が周波数毎の最小振動強度123に基づいて実行したステップS42~S44の処理結果である。
【0096】
<漏水検知システム1による漏水検知処理>
図27は、漏水検知システム1による漏水検知処理の一例を説明するフローチャートである。当該漏水検知処理の各ステップには、同様の処理を実行する、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)の各ステップの符号を付して、その説明を適宜簡略化、または省略する。
【0097】
漏水検知システム1による漏水検知処理は、所定の周期で定期的に実行される。始めに、漏水検知装置10のデータ取得部111が、波形データ取得処理を実行する(ステップS1)。次に、漏水検知装置10の漏水判定部112が、ステップS1で得られた、記憶部12に格納されたN個の測定波形データ121に基づき、漏水判定処理を実行する(ステップS2)。
【0098】
次に、漏水検知装置10の最小振動強度取得部113が、記憶部12に格納されたN個の測定波形データ121に基づき、発見容易性判定処理(ステップS4(図15のS41~44))のうちの最小振動強度取得処理を実行する(ステップS41)。
【0099】
次に、漏水検知装置10の出力部114が、判定結果出力処理を実行する(ステップS5)。ただし、当該判定結果出力処理では、送信の要否を判定せず、出力部114が、通信部14を制御して、記憶部12に格納されている漏水判定結果122、及び周波数毎の最小振動強度123を、ネットワークNを介して管理サーバ20に送信する。
【0100】
一方、管理サーバ20では、通信部23が、漏水検知装置10から送信された漏水判定結果122、及び周波数毎の最小振動強度123を受信して記憶部22に格納する。そして、発見容易性判定部212が、発見容易性判定処理の実行が必要であるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、実行が必要であると判定した場合(ステップS3でYES)、発見容易性判定部212が、発見容易性判定処理(図15のステップS41を除く、ステップS42~S44)を実行し、その結果を発見容易性判定結果224として管理サーバ20の記憶部22に格納する(ステップS4)。なお、発見容易性判定部212が、発見容易性判定処理の実行が不要であると判定した場合(ステップS3でNO)、ステップS4をスキップする。
【0101】
次に、管理サーバ20のUI制御部211が、記憶部22に格納された漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果224に基づいて漏水管理画面1000図21)等を表示する(ステップS6)。以上が、漏水検知システム1による漏水検知処理の説明である。
【0102】
漏水検知システム1によれば、発見容易性判定処理の大部分を管理サーバ20にて実行するので、漏水検知装置10における処理負荷を軽減できる。また、管理サーバ20に対しては、測定波形データ121よりもデータ量が小さい周波数毎の最小振動強度123を送信するので、測定波形データ121を送信する場合(後述する第3の実施形態)に比べて送信量を削減できる。
【0103】
<本発明の第3の実施形態に係る漏水検知システム1
次に、本発明の第3の実施形態に係る漏水検知システム1(不図示)について説明する。漏水検知システム1は、上述した漏水検知システム1において漏水検知装置10にて実行していた発見容易性判定処理(ステップS4)を管理サーバ20において実行するようにしたものである。
【0104】
漏水検知システム1は、漏水検知システム1(図4)と同様の構成を有する。ただし、漏水検知システム1における漏水検知装置10図28)、及び管理サーバ20図29)の構成が、漏水検知システム1における漏水検知装置10図5)、及び管理サーバ20図7)の構成と異なる。
【0105】
<漏水検知システム1における漏水検知装置10の構成例>
図28は、漏水検知システム1における漏水検知装置10の構成例を示している。漏水検知装置10の構成要素のうち、漏水検知装置10の構成要素と共通のものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。漏水検知装置10は、漏水検知装置10の処理部11から発見容易性判定部113を省略したものである。
【0106】
なお、漏水検知装置10の発見容易性判定部113が実行する発見容易性判定処理(ステップS4)は、後述するように、管理サーバ20の発見容易性判定部213(図29)が実行することになる。
【0107】
漏水検知装置10の記憶部12には、測定波形データ121、及び漏水判定結果122が格納される。
【0108】
<漏水検知システム1における管理サーバ20の構成例>
図29は、漏水検知システム1における管理サーバ20の構成例を示している。管理サーバ20の構成要素のうち、管理サーバ20の構成要素と共通のものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。管理サーバ20は、管理サーバ20の処理部21に、発見容易性判定部213を追加したものである。
【0109】
発見容易性判定部213は、漏水検知装置10の発見容易性判定部113が実行する、発見容易性判定処理の要否の判定(ステップS3)、及び発見容易性判定処理(ステップS4(図15のステップS41~S44))を実行する。
【0110】
管理サーバ20の記憶部22には、漏水検知装置10から送信された測定波形データ121、及び漏水判定結果122、並びに、発見容易性判定部213による周波数毎の最小振動強度223、及び発見容易性判定結果224が格納される。
【0111】
<漏水検知システム1による漏水検知処理>
図30は、漏水検知システム1による漏水検知処理の一例を説明するフローチャートである。当該漏水検知処理の各ステップには、同様の処理を実行する、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)の各ステップの符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0112】
漏水検知システム1による漏水検知処理は、所定の周期で定期的に実行される。始めに、漏水検知装置10のデータ取得部111が、波形データ取得処理を実行する(ステップS1)。次に、漏水検知装置10の漏水判定部112が、ステップS1で得られた、記憶部12に格納されたN個の測定波形データ121に基づき、漏水判定処理を実行する(ステップS2)。
【0113】
次に、漏水検知装置10の出力部114が、判定結果出力処理を実行する(ステップS5)。ただし、当該判定結果出力処理では、送信の要否を判定せず、出力部114が、通信部14を制御して、記憶部12に格納されている測定波形データ121、及び漏水判定結果122を、ネットワークNを介して管理サーバ20に送信する。
【0114】
一方、管理サーバ20においては通信部23が、漏水検知装置10から送信された測定波形データ121、及び漏水判定結果122を受信して記憶部22に格納する。そして、発見容易性判定部213が、発見容易性判定処理の実行が必要であるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、実行が必要であると判定した場合(ステップS3でYES)、発見容易性判定部213が、発見容易性判定処理を実行し、その過程で取得した周波数毎の最小振動強度223を記憶部22に格納し、当該処理結果を発見容易性判定結果224として管理サーバ20の記憶部22に格納する(ステップS4)。なお、発見容易性判定部213が、発見容易性判定処理の実行が不要であると判定した場合(ステップS3でNO)、ステップS4の処理をスキップする。
【0115】
次に、管理サーバ20のUI制御部211が、記憶部22に格納された漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果224に基づいて漏水管理画面1000図21)等を表示する(ステップS6)。以上が、漏水検知システム1による漏水検知処理の説明である。
【0116】
漏水検知システム1によれば、発見容易性判定処理を管理サーバ20にて実行するので、漏水検知装置10における処理負荷を軽減できる。
【0117】
<本発明の第4の実施形態に係る漏水検知システム1
次に、本発明の第4の実施形態に係る漏水検知システム1(不図示)について説明する。漏水検知システム1は、上述した漏水検知システム1において漏水検知装置10にて実行していた漏水判定処理(ステップS2)、及び発見容易性判定処理(ステップS4)を管理サーバ20において実行するようにしたものである。
【0118】
漏水検知システム1は、漏水検知システム1(図4)と同様の構成を有する。ただし、漏水検知システム1における漏水検知装置10図31)、及び管理サーバ20図32)の構成が、漏水検知システム1における漏水検知装置10図5)、及び管理サーバ20図7)の構成と異なる。
【0119】
<漏水検知システム1における漏水検知装置10の構成例>
図31は、漏水検知システム1における漏水検知装置10の構成例を示している。漏水検知装置10の構成要素のうち、漏水検知装置10の構成要素と共通のものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。漏水検知装置10は、漏水検知装置10の処理部11から漏水判定部112、及び発見容易性判定部113を省略し、さらに、記憶部12を省略したものである。
【0120】
なお、漏水検知装置10の漏水判定部112が実行する漏水判定処理、及び発見容易性判定部113が実行する発見容易性判定処理は、後述するように、管理サーバ20の漏水判定部214、及び発見容易性判定部213(いずれも図32)が実行することになる。
【0121】
<漏水検知システム1における管理サーバ20の構成例>
図32は、漏水検知システム1における管理サーバ20の構成例を示している。管理サーバ20の構成要素のうち、管理サーバ20~20の構成要素と共通のものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。管理サーバ20は、管理サーバ20の処理部21に、漏水判定部214を追加したものである。
【0122】
漏水判定部214は、漏水検知装置10の漏水判定部112が実行する漏水判定処理(ステップS2)を実行する。
【0123】
管理サーバ20の記憶部22には、漏水検知装置10から送信された測定波形データ121、漏水判定部214による漏水判定結果222、並びに、発見容易性判定部213による周波数毎の最小振動強度223、及び発見容易性判定結果224が格納される。
【0124】
<漏水検知システム1による漏水検知処理>
図33は、漏水検知システム1による漏水検知処理の一例を説明するフローチャートである。当該漏水検知処理の各ステップには、同様の処理を実行する、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)の各ステップの符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0125】
漏水検知システム1による漏水検知処理は、所定の周期で定期的に実行される。始めに、漏水検知装置10のデータ取得部111が、波形データ取得処理を実行する(ステップS1)。
【0126】
ただし、漏水検知システム1による波形データ取得処理(図12)では、測定部13から取得した測定波形データ121を記憶部12に格納していたが、漏水検知システム1による波形データ取得処理では、測定部13から取得した測定波形データ121を保存せずに、出力部114が、通信部14を制御し、ネットワークNを介して、管理サーバ20に送信する。一方、管理サーバ20では通信部23が、漏水検知装置10から送信された測定波形データ121を受信して記憶部22に格納する。これにより、漏水検知装置10から記憶部12を省略したり、記憶部12の容量を小さくしたりすることができるので、漏水検知装置10の筐体サイズの小型化や製造コストの削減が可能となる。
【0127】
次に、管理サーバ20の漏水判定部214が、記憶部22に格納されたN個の測定波形データ121に基づき、漏水判定処理を実行し、その結果を漏水判定結果222として記憶部22に格納する(ステップS2)。
【0128】
次に、管理サーバ20の発見容易性判定部213が、発見容易性判定処理の実行が必要であるか否かを判定する(ステップS3)。ここで、実行が必要であると判定した場合(ステップS3でYES)、発見容易性判定部213が、発見容易性判定処理を実行し、その過程で取得した周波数毎の最小振動強度223を記憶部22に格納し、当該処理結果を発見容易性判定結果224として管理サーバ20の記憶部22に格納する(ステップS4)。なお、発見容易性判定部212が、発見容易性判定処理の実行が不要であると判定した場合(ステップS3でNO)、ステップS4の処理をスキップする。
【0129】
次に、管理サーバ20のUI制御部211が、記憶部22に格納された漏水判定結果222、及び発見容易性判定結果224に基づいて漏水管理画面1000図21)等を表示する(ステップS6)。以上が、漏水検知システム1による漏水検知処理の説明である。
【0130】
漏水検知システム1によれば、漏水判定処理、及び発見容易性判定処理を管理サーバ20にて実行するので、漏水検知装置10における処理負荷を軽減できる。また、漏水検知装置10における記憶部12を省略、または低容量化できるので、漏水検知装置10の筐体サイズの小型化や、製造コストの削減を実現できる。
【0131】
<漏水検知システム1による漏水検知処理の第1の変形例>
図34は、漏水検知システム1による漏水検知処理の第1の変形例を説明するフローチャートである。当該第1の変形例の各ステップには、同様の処理を実行する、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)の各ステップの符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0132】
当該第1の変形例は、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)における漏水判定処理(ステップS2)と、発見容易性判定処理(ステップS4)との実行順序を入れ替え、発見容易性判定処理の要否判定(ステップS3)を漏水判定処理の要否判定(ステップS3’)に置換したものである。
【0133】
当該第1の変形例は、所定の周期で定期的に実行される。始めに、漏水検知装置10のデータ取得部111が、波形データ取得処理を実行する(ステップS1)。次に、発見容易性判定部113が、発見容易性判定処理を実行し、その過程で得られた周波数毎の最小振動強度123を記憶部12に格納し、発見容易性判定処理の結果を発見容易性判定結果124として記憶部12に格納する(ステップS4)。
【0134】
次に、漏水判定部112が、漏水判定処理の実行が必要であるか否かを判定する(ステップS3’)。具体的には、例えば、上述したステップS4にて発見容易と判定した場合に、漏水判定処理の実行が必要であると判定する。または、ステップS4の判定結果とは無関係に、ステップS4の後、所定の時間が経過した際に、漏水判定処理の実行が必要であると判定するようにしてもよい。
【0135】
ここで、実行が必要であると判定した場合(ステップS3’でYES)、漏水判定部112が、漏水判定処理を実行し、その結果を漏水判定結果122として記憶部12に格納する(ステップS2)。なお、漏水判定部112が、漏水判定処理の実行が不要であると判定した場合(ステップS3’でNO)、ステップS2の処理をスキップする。
【0136】
次に、出力部114が、判定結果出力処理を実行し、通信部14を制御して、記憶部12に格納されている漏水判定結果122、周波数毎の最小振動強度123、及び発見容易性判定結果124を、ネットワークNを介して管理サーバ20に送信する(ステップS5)。なお、漏水判定処理を実行していない場合は、周波数毎の最小振動強度123、及び発見容易性判定結果124を、ネットワークNを介して管理サーバ20に送信する。
【0137】
一方、管理サーバ20では、漏水検知装置10から送信された漏水判定結果122、周波数毎の最小振動強度123、及び発見容易性判定結果124を通信部23が受信して記憶部22に格納する。
【0138】
次に、管理サーバ20のUI制御部211が、記憶部22に格納された漏水判定結果122、及び発見容易性判定結果224に基づいて漏水管理画面1000図21)等を表示する(ステップS6)。以上が、漏水検知システム1による漏水検知処理の第1の変形例の説明である。
【0139】
当該第1の変形例によれば、例えば、発見容易性判定処理よりも漏水判定処理の方が処理の負荷が高い場合等、漏水の発見容易性が低いときには漏水判定処理を実行しないようにすることができる。これにより、不必要に漏水判定処理を実行する機会を削減することができ、バッテリ107の消耗や管理サーバ20との通信コストを抑制しながら、漏水検知装置10の長期間運用が可能となる。
【0140】
<漏水検知システム1による漏水検知処理の第2の変形例>
図35は、漏水検知システム1による漏水検知処理の第2の変形例を説明するフローチャートである。当該第2の変形例の各ステップには、同様の処理を実行する、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)の各ステップの符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0141】
当該第2の変形例は、漏水検知システム1による漏水検知処理(図11)における発見容易性判定処理の要否判定(ステップS3)を省略し、ステップS2の漏水判定処理の結果に拘わらず、ステップS4の発見容易性判定処理を実行するようにしたものである。
【0142】
当該第2の変形例の場合、漏水判定処理の結果に拘わらず、発見容易性判定処理を実行するので、漏水判定処理、または発見容易性判定処理の一方に誤判定があった場合であっても、ユーザに対して漏水の疑いがあることを通知できる。これにより、検知精度を向上することができる。なお、漏水判定処理(ステップS2)と、発見容易性判定処理(ステップS4)の実行順序は入れ替えてもよいし、同時に並行して実行してもよい。
【0143】
<発見容易性判定処理における最小振動強度取得処理の変形例>
図36は、上述した発見容易性判定処理のステップS41における最小振動強度取得処理(図16)の変形例を説明するフローチャートである。
【0144】
当該変形例は、上述した最小振動強度取得処理(図16)とステップS411~S413は共通であり、それ以降のステップS414’~S419’が異なる。ステップS411~S413の説明は省略する。
【0145】
ステップS413において、Y番目の測定波形データ121に対して高速フーリエ変換(FFT)を実行した後、次に、発見容易性判定部113が、Y番目のFFT結果から周波数毎の振動強度を抽出する(ステップS414’)。
【0146】
次に、発見容易性判定部113が、パラメータYが1であるか否かを判定し(ステップS415’)、パラメータYが1であると判定した場合(ステップS415’でYES)、次に、ステップS414’で抽出したY(=1)番目のFFT結果に対応する周波数毎の振動強度を、周波数毎の最小振動強度123として、記憶部12に格納する(ステップS416’)。
【0147】
次に、発見容易性判定部113が、パラメータYが測定波形データ121の数Nに達したか否かを判定し(ステップS417’)、測定波形データ121の数Nに達していないと判定した場合(ステップS417’でNO)、パラメータYを1だけインクリメントし(ステップS418’)、処理をステップS412に戻して、ステップS412以降を繰り返す。
【0148】
そして、ステップS415’において、パラメータYが1ではないと判定した場合(ステップS415’でNO)、発見容易性判定部113が、ステップS414’で抽出したY番目のFFT結果に対応する周波数毎の振動強度を、記憶部12に格納されているY-1番目までの周波数毎の最小振動強度123と比較する。そして、Y番目のFFT結果に対応する周波数毎の振動強度の方が小さければ、その値により、記憶部12に格納されている周波数毎の最小振動強度123を更新する(ステップS419’)。
【0149】
そして、ステップS417’において、発見容易性判定部113が、パラメータYが測定波形データ121の数Nに達したと判定した場合(ステップS417’でYES)、最小振動強度取得処理を終了する。以上が、最小振動強度取得処理の変形例の説明である。
【0150】
当該変形例によれば、上述した最小振動強度取得処理(図16)のようにN個のFFT結果を保存する必要が無いので、記憶部12に格納するデータ量を削減できる。
【0151】
<発見容易性判定処理の第1の変形例>
図37は、上述した発見容易性判定処理(図15)の第1の変形例を説明するフローチャートである。
【0152】
当該第1の変形例は、上述した発見容易性判定処理(図15)のステップS42を、ステップS42’に置換したものであり、ステップS41、S43,S44については共通であるため、その説明は省略する。上述した発見容易性判定処理(図15)のステップS42では、発見容易性特徴量として、所定の周波数帯域で周波数毎の最小振動強度を積分した。これに対し、当該変形例のステップS42’では、発見容易性特徴量として、所定の周波数帯域で周波数毎の最小振動強度のピーク点(極大点)の数を算出する。
【0153】
図38は、漏水がない場合(実線)、小さな漏水が発生している場合(点線)、及び大きな漏水が発生している場合(破線)における周波数と最小振動強度の関係を表しており、横軸は周波数、縦軸は正規化した最小振動強度である。同図から明らかなように、漏水流量の増大とともに周波数毎の最小振動強度のピーク点の数が増えていることが確認できる。したがって、発見容易性特徴量として所定の周波数帯域内にあるピーク点の数を算出し、閾値と比較すれば、漏水流量の大小を反映した発見容易性の判定が可能になることがわかる。
【0154】
<発見容易性判定処理の第3の変形例>
図39は、上述した発見容易性判定処理(図15)の第2の変形例を説明するフローチャートである。
【0155】
当該第2の変形例は、発見容易性判定処理(図15)のステップ42とS43の間に、図37のステップS42’を追加したものである。すなわち、当該第2の変形例では、ステップS42において、1種類の発見容易性特徴量として、所定の周波数帯域で周波数毎の最小振動強度の積分値を算出し、ステップS42’において、2種類目の発見容易性特徴量として、所定の周波数帯域で周波数毎の最小振動強度のピーク点の数を算出する。そして、ステップS43においては、2種類の発見容易性特徴量をそれぞれに対応する閾値と比較することによって発見容易性を判定し、2つの判定結果の論理積(論理和、排他的論理和などでもよい)を最終的な発見容易性の判定結果として出力する。なお、周波数毎の最小振動強度のピーク点の数は少なくても、周波数毎の最小振動強度の積分値は大きい場合等があるため、2種類の発見容易性特徴量を用いて発見容易性を判定すれば、その推定精度を向上させることができる。所定の周波数帯域で積分する処理と所定の周波数帯域内にあるピーク点の数の計算処理結果はそれぞれ一つの値である必要はなく、複数の出力値があってもよい。例えば、所定の周波数帯域内において、一定の帯域毎に分割し、その分割した帯域における積分処理やピーク(極大)点の計算処理を実行し、複数の特徴量とそれらに対応する閾値判定処理の結果から判定を実行してもよい。閾値はすべて固定である必要はない。扱う特徴量が多数になるため、判定においてはNN(ニューラルネットワーク)等の教師あり学習の手法を応用して、重要な特徴量に重み付けを行ってから判定してもよい。
【0156】
<発見容易性判定処理の第3の変形例>
上述した発見容易性判定処理(図15)、その第1の変形例(図37)、第2の変形例(図39)は、N個の測定波形データを入力としていた。当該第3の変形例は、発見容易性判定処理に先行して実行された漏水判定処理(図13)のステップS21で算出されたN個の自己相関係数を入力とする。したがって、当該第3の変形例の前提として、漏水判定部112による漏水判定処理(図13)は実行済であり、漏水判定部112はステップS21で算出されたN個の自己相関係数を、当該第3の変形例を実行する発見容易性判定部113に対して出力しているものとする。
【0157】
当該第3の変形例は、上述した発見容易性判定処理(図15)のステップS41~S44と同様であるが、入力が異なるため、ステップS41の最小振動強度取得処理の内容が異なる。
【0158】
図40は、発見容易性判定処理の第3の変形例におけるステップS41の最小振動強度取得処理の一例を説明するフローチャートである。はじめに、発見容易性判定部113が、N個の自己相関係数のうちの一つを指定するためのパラメータYを1に初期化する(ステップS411”)。
【0159】
次に、発見容易性判定部113が、N個の自己相関係数のうちのY番目の自己相関係数を取得する(ステップS412”)。次に、発見容易性判定部113が、パラメータYが1であるか否かを判定し(ステップS413”)、パラメータYが1であると判定した場合(ステップS413”でYES)、次に、ステップS412”で抽出したY(=1)番目の遅れ時間毎の自己相関係数を、遅れ時間毎の最小自己相関係数として、記憶部12に格納する(ステップS414”)。
【0160】
次に、発見容易性判定部113が、パラメータYが自己相関係数の数Nに達したか否かを判定し(ステップS415”)、自己相関係数の数Nに達していないと判定した場合(ステップS415”でNO)、パラメータYを1だけインクリメントし(ステップS416”)、処理をステップS412”に戻して、ステップS412”以降を繰り返す。
【0161】
そして、ステップS413”において、パラメータYが1ではないと判定した場合(ステップS413”でNO)、発見容易性判定部113が、ステップS412”で抽出したY番目の遅れ時間毎の自己相関係数の振幅と、記憶部12に格納されているY-1番目までの遅れ時間毎の最小自己相関係数の振幅と比較する。そして、Y番目の遅れ時間毎の自己相関係数の振幅が小さければ、Y番目の遅れ時間毎の自己相関係数により、記憶部12に格納されている遅れ時間毎の自己相関係数を更新する(ステップS417”)。
【0162】
図41は、ステップS417”における遅れ時間毎の自己相関係数を更新する処理を説明するための図であり、横軸は遅れ時間、縦軸は自己相関係数であって、Y-1番目までの遅れ時間毎の最小自己相関係数(実線)と、Y番目の遅れ時間毎の最小自己相関係数(破線)との関係を示している。例えば、遅れ時間25ptにおいてはY番目の自己相関係数の振幅が小さいため、Y番目の自己相関係数が採用されて、最小自己相関係数が更新される。また例えば、遅れ時間50ptにおいてはY-1番目までの最小自己相関係数の振幅が小さいため、Y-1番目までの最小自己相関係数がそのまま採用され、最小自己相関係数は更新されない。
【0163】
図40に戻る。その後、ステップS415”において、発見容易性判定部113が、パラメータYが自己相関係数の数Nに達したと判定した場合(ステップS415”でYES)、次に、発見容易性判定部113が、記憶部12に格納されている遅れ時間毎の自己相関係数に対して高速フーリエ変換(FFT)を実行し、その結果得られた周波数毎の最小振動強度を記憶部12に保存する(ステップS418”)。以上が、発見容易性判定処理の第3の変形例におけるステップS41の最小振動強度取得処理の説明である。
【0164】
当該最小振動強度取得処理によれば、上述した最小振動強度取得処理(図16)のようにN個のFFT結果を保存する必要が無いので、記憶部12に格納するデータ量を削減できる。
【0165】
<発見容易性判定処理の第4の変形例>
発見容易性判定処理の第4の変形例(不図示)は、上述した発見容易性判定処理(図15)等と同様、N個の測定波形データを入力とする。当該第4の変形例は、上述した発見容易性判定処理(図15)のステップS41~S44と同様であるが、入力が異なるため、ステップS41の最小振動強度取得処理の内容が異なる。
【0166】
図42は、発見容易性判定処理の第4の変形例におけるステップS41の最小振動強度取得処理の一例を説明するフローチャートである。当該最小振動強度取得処理は、ステップS411,S412,S421,S413”~S418”の順に実行するが、ステップS411,S412は上述した図16の最小振動強度取得処理と共通であり、ステップS413”~S418”は上述した図40の最小振動強度取得処理と共通であり、同一の符号を付している。
【0167】
はじめに、発見容易性判定部113が、N個の測定波形データ121のうちの一つを指定するためのパラメータYを1に初期化し(ステップS411)、記憶部12からN個の測定波形データ121のうちのY番目の測定波形データ121を取得する(ステップS412)。次に、発見容易性判定部113が、Y番目の測定波形データ121からN番目の自己相関係数を算出する(ステップS421)。こステップS413”以降については、上述した図40の最小振動強度取得処理と共通であり、同一の符号を付しているので、その説明は省略する。
【0168】
発見容易性判定処理の第4の変形例によれば、発見容易性判定処理の第3の変形例と同様、上述した最小振動強度取得処理(図16)のようにN個のFFT結果を保存する必要が無いので、記憶部12に格納するデータ量を削減できる。
【0169】
本発明は、上述した各実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態や変形例の構成の一部を他の実施形態や他の変形例の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【0170】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0171】
1,1~1・・・漏水検知システム、2・・・管路網、10,10~10・・・漏水検知装置、11・・・処理部、111・・・データ取得部、112・・・漏水判定部、113・・・発見容易性判定部、113・・・最小振動強度取得部、114・・・出力部、12・・・記憶部、121・・・測定波形データ、122・・・漏水判定結果、123・・・最小振動強度、124・・・発見容易性判定結果、13・・・測定部、14・・・通信部、20,20~20・・・管理サーバ、21・・・処理部、211・・・UI制御部、212,213・・・発見容易性判定部、214・・・漏水判定部、22・・・記憶部、222・・・漏水判定結果、223・・・最小振動強度、224・・・発見容易性判定結果、23・・・通信部、101・・・マイクロコントローラ、102・・・プログラム、103・・・ストレージ、104・・・入力装置、105・・・出力装置、106・・・通信モジュール、107・・・バッテリ、108・・・振動センサ、200・・・コンピュータ、201・・・プロセッサ、202・・・メモリ、2021・・・プログラム、203・・・ストレージ、204・・・入力装置、205・・・出力装置、206・・・通信モジュール、1000~1000・・・漏水管理画面
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