(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025081231
(43)【公開日】2025-05-27
(54)【発明の名称】多孔質応力除去セクションを備える金属クーポン、同クーポンを有する部品並びに関連方法
(51)【国際特許分類】
B22F 10/38 20210101AFI20250520BHJP
B22F 10/25 20210101ALI20250520BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20250520BHJP
B22F 10/50 20210101ALI20250520BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20250520BHJP
【FI】
B22F10/38
B22F10/25
B22F10/28
B22F10/50
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024177258
(22)【出願日】2024-10-09
(31)【優先権主張番号】18/495,804
(32)【優先日】2023-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドジャー、エヴァン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オストルート、ネイサン ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】サルム、ジェイコブ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ハント、マーク ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン、スタンリー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ペムリック、ジェームズ ウォーレン
(57)【要約】
【課題】金属クーポンを部品に結合する際の残留応力を低減する。
【解決手段】部品に結合するための積層造形(AM)金属クーポン(200)は、第1のセクション(292)と応力緩和セクション(294)を含む。応力緩和セクション(294)は、その総体積に対して2%~50%の空洞空間体積のポロシティを有する多孔質領域(300)を含む。応力緩和セクションは、熱伝導性、引張強度、延性及び疲労強度の少なくとも1つが第1のセクションよりも小さい。ろう材(310)は、AM金属クーポンを本体のクーポン開口部(204)に結合する。応力緩和セクションは、金属クーポン内に低応力域を作成し、高応力域の近く又は隣接して配置することができる。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属クーポン(200)であって、当該金属クーポン(200)が、
第1のポロシティを有する第1のセクション(292)と第2のポロシティを有する応力緩和セクション(294)とを含む積層造形(AM)金属部材(290)
を備えており、第2のポロシティが応力緩和セクション(294)の総体積に対して2%~50%の空洞空間体積であり、第1のポロシティが第2のポロシティと異なり、前記応力緩和セクション(294)は、熱伝導性、引張強度、延性又は疲労強度の少なくとも1つが、第1のセクション(292)よりも小さい、金属クーポン(200)。
【請求項2】
前記応力緩和セクション(294)に溶浸したろう材(310)をさらに備える、請求項1に記載の金属クーポン(200)。
【請求項3】
さらに、第1のセクション(292)に亀裂(340)を含んでおり、前記亀裂(340)が前記応力緩和セクション(294)で停止し、前記ろう材(310)が前記亀裂(340)に溶浸している、請求項2に記載の金属クーポン(200)。
【請求項4】
前記応力緩和セクション(294)が前記積層造形金属部材(290)内に完全に埋設している、請求項1に記載の金属クーポン(200)。
【請求項5】
前記応力緩和セクション(294)が、第1のセクション(292)内の第1の部分と積層造形金属部材(290)の外面(308)に延在する第2の部分とを含む、請求項1に記載の金属クーポン(200)。
【請求項6】
前記応力緩和セクション(294)に溶浸したろう材(310)をさらに備える、請求項5に記載の金属クーポン(200)。
【請求項7】
さらに、さらに、第1のセクション(292)に亀裂(340)を含んでおり、前記亀裂(340)が応力緩和セクション(294)で停止し、前記ろう材(310)が前記亀裂(340)に溶浸している、請求項6に記載の金属クーポン(200)。
【請求項8】
前記応力緩和セクションが、前記積層造形金属部材(290)の単層内にある、請求項1に記載の金属クーポン(200)。
【請求項9】
前記積層造形金属部材(290)の単層が、前記積層造形金属部材(290)に部分的にしか延在しない、請求項8に記載の金属クーポン(200)。
【請求項10】
前記応力緩和セクションが、前記積層造形金属部材(290)の層に少なくとも部分的に延在している、請求項1に記載の金属クーポン(200)。
【請求項11】
前記応力緩和セクション(294)が、第1の多孔質領域を有する第1のサブセクション(294A)と、第2の多孔質領域を有する第2のサブセクション(294B)とを含んでおり、第1及び第2の多孔質領域(300A、300B)の各々が、それぞれの多孔質領域の総体積に対して2%~50%の空洞空間体積のポロシティを有し、第1の多孔質領域(300A)が、第2の多孔質領域(300B)とは異なるポロシティを有し、第1のサブセクション(294A)と第2のサブセクション(294B)が、熱伝導性、延性又は疲労強度のうちの1以上に差を有する、請求項1に記載の金属クーポン(200)。
【請求項12】
部品(202)であって、当該部品(202)が、
本体(206)と、
第1のセクション(292)及び応力緩和セクション(294)を含む積層造形(AM)金属クーポン(200)であって、前記応力緩和セクション(294)が、該応力緩和セクション(294)の総体積に対して2%~50%の空洞空間体積のポロシティを有し、前記応力緩和セクション(294)は、熱伝導性、引張強度、延性又は疲労強度の少なくとも1つが、第1のセクション(292)よりも小さい、積層造形金属クーポン(200)と、
前記積層造形金属クーポン(200)を本体(206)のクーポン開口部(204)に結合するろう材(310)と
を備える部品(202)。
【請求項13】
前記ろう材(310)が前記応力緩和セクションに溶浸している、請求項12に記載の部品(202)。
【請求項14】
さらに、第1のセクション(292)に亀裂(340)を含んでおり、前記亀裂(340)が前記応力緩和セクション(294)で停止し、前記ろう材(310)が前記亀裂(340)に溶浸している、請求項13に記載の部品(202)。
【請求項15】
前記応力緩和セクション(294)が前記積層造形金属部材(290)内に完全に埋設している、請求項12に記載の部品(202)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に部品の補修に関し、さらに具体的には、応力除去セクションを有する金属クーポンを用いた部品の補修に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用部品は、時々補修を必要とすることが々ある。例えば、ターボ機械でエネルギー生成のため作動流体を導くのに使用される高温ガス経路部品は、補修を要することがある。高温ガス経路部品は、エネルギー生成のため作動流体を導く翼形部を含むタービンロータブレード又は静止ベーンのように、様々な形状をとり得る。ロータブレードはタービンロータに結合されてタービンロータを回転させるように作用し、静止ベーンはターボ機械のケーシングに結合されて作動流体をロータブレードに向けて導く。
【0003】
直接金属レーザ溶融(DMLM)又は選択的レーザ溶融(SLM)のような積層造形は、工業部品を製造するための信頼性の高い製造方法として登場した。積層造形技術の登場により、ターボ機械のノズルの前縁又は後縁の一部のような部品の一部を交換することもできるようになった。例えば、ターボ機械のノズルの前縁の一部を除去してノズルに切欠部を残し、新しいセクション(本明細書では「クーポン」という)を切欠部に結合してもよい。クーポンは、切欠部の形状と少なくとも概ね一致する形状をもつように積層造形される。このクーポンは、使用済みのターボ機械ノズルの一部を交換するか、新しいターボ機械ノズルの一部として追加できる。
【0004】
部品及び金属クーポンは通例高温超合金で作られる。超合金を用いて残留応力を残さずに金属クーポンを積層造形することは難題である。さらに具体的には、積層造形後、金属クーポンは、超合金の焼結後熱処理時のガンマプライム析出に起因する「ひずみ時効割れ」又は「延性低下割れ」とも呼ばれる残留応力惹起現象を経験するおそれがある。同様の現象は、他の金属及び金属合金でも起こり得る。割れのような応力関連欠陥を起こさずに発生させることのできる許容応力は、使用する金属又は金属合金に応じて異なる。いずれにせよ、金属クーポンの残留応力は、金属クーポンと部品との結合を非常に難しくする応力関連欠陥を引き起こすおそれがある。
【発明の概要】
【0005】
以下に挙げるすべての態様、具体例及び特徴は、技術的に可能な方法で組合せることができる。
【0006】
本開示の一態様は、金属クーポンを提供するが、金属クーポンは、第1のポロシティを有する第1のセクションと第2のポロシティを有する応力緩和セクションとを含む積層造形(AM)金属部材を含んでおり、第2のポロシティが応力緩和セクションの総体積に対して2%~50%の空洞空間体積であり、第1のポロシティが第2のポロシティと異なり、応力緩和セクションは、熱伝導性、引張強度、延性又は疲労強度の少なくとも1つが、第1のセクションよりも小さい。
【0007】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、応力緩和セクションに溶浸したろう材を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、第1のセクションに亀裂を含んでおり、亀裂が応力緩和セクションで停止し、ろう材が亀裂に溶浸している。
【0009】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションはAM金属部材内に完全に埋め込まれている。
【0010】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、第1のセクション内の第1の部分とAM金属部材の外面に延在する第2の部分を含む。
【0011】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、応力緩和セクションに溶浸したろう材を含む。
【0012】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、第1のセクションに亀裂を含んでおり、亀裂が応力緩和セクションで停止し、ろう材が亀裂に溶浸している。
【0013】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、AM金属部材の単層内にある。
【0014】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、AM金属部材の単層は、AM金属部材に部分的にしか延在しない。
【0015】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、AM金属部材の層に少なくとも部分的に延在している。
【0016】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、第1の多孔質領域を有する第1のサブセクションと、第2の多孔質領域を有する第2のサブセクションを含んでおり、第1及び第2の多孔質領域のそれぞれは、それぞれの多孔質領域の総体積に対して2%~50%の空洞空間体積のポロシティを有し、、第1の多孔質領域は、第2の多孔質領域とは異なるポロシティを有し、第1のサブセクションと第2のサブセクションは、熱伝導性、延性又は疲労強度の少なくとも1つに差を有する。
【0017】
別の態様には、部品を包含するが、部品は、本体と、第1のセクションと応力緩和セクションを含む積層造形(AM)金属クーポンであって、応力緩和セクションは、応力緩和セクションの総体積に対して2%~50%の空洞空間体積のポロシティを有し、応力緩和セクションは、熱伝導性、引張強度、延性又は疲労強度の少なくとも1つが、第1のセクションよりも小さい、AM金属クーポンと、AM金属クーポンを本体のクーポン開口部に結合するろう材とを含む。
【0018】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、ろう材は応力緩和セクションに溶浸する。
【0019】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、第1のセクションに亀裂を含んでおり、亀裂は応力緩和セクションで停止し、ろう材が亀裂に溶浸している。
【0020】
本開示の別の側面には、前述の側面のいずれかが含まれ、応力解消セクションはAM金属クーポンに完全に埋め込まれている。
【0021】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、第1のセクション内の第1サブセクションとAM金属クーポンの外面に延在する第2サブセクションとを含む。
【0022】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、応力緩和セクションに溶浸したろう材を含む。
【0023】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、第1のセクションに亀裂を含んでおり、亀裂は応力緩和セクションで停止し、ろう材は亀裂に溶浸する。
【0024】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションはAM金属クーポンの単層内にある。
【0025】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、AM金属部材の単層は、AM金属部材に部分的にしか延在しない。
【0026】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、AM金属クーポンの層に少なくとも部分的に延在している。
【0027】
別の態様は、部品を補修するための金属クーポンを形成する方法を包含し、本方法は、金属粉末の層を連続的に堆積して融合することによって積層造形(AM)システムで金属クーポンを積層造形するステップを含んでおり、金属クーポンが第1のセクション及び応力緩和セクションを含んでおり、応力緩和セクションが、応力緩和セクションの総体積に対して2%~50%の空洞空間体積の第2のポロシティがであり、第1のポロシティが第2のポロシティと異なり、応力緩和セクションは、熱伝導性、引張強度、延性又は疲労強度の少なくとも1つが、第1のセクションよりも小さい。
【0028】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは金属クーポンの単層内にある。
【0029】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、AM金属部材の単層は、AM金属部材に部分的にしか延在しない。
【0030】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、積層造形は、金属粉末の層を融合するために1以上の溶融ビームを使用すること、及び応力緩和セクションのポロシティを制御するために、1以上の溶融ビームの溶融領域の重複量をさらに調整することを含む。
【0031】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、金属クーポンを部品の本体のクーポン開口部に配置するステップと、金属クーポンをろう材で溶浸して、金属クーポンを本体のクーポン開口部に結合させるステップとを含む。
【0032】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、応力緩和セクションへのろう材への溶浸を含む。
【0033】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、応力緩和セクションは、第1のセクション内の第1サブセクション及び金属クーポンの外面に延在する第2サブセクションを含んでおり、溶浸は、第1及び第2のサブセクションをろう材で溶浸することを含む。
【0034】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1のセクションは、亀裂を含んでおり、亀裂は応力緩和セクションで停止し、溶浸は、ろう材を亀裂に溶浸させることを含む。
【0035】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、さらに、金属クーポンにおける高応力域を特定することを含んでおり、高応力域は、金属クーポンの他の領域と比較して高い応力を有し、積層造形は、金属クーポン内の高応力域内又はそれに隣接して応力緩和セクションを形成することを含む。
【0036】
この発明の概要の欄に記載した態様も含めて、本開示に記載した2以上の態様を組合せて、本明細書に具体的に記載されていない実施態様としてもよい。すなわち、本願に記載された実施形態はすべて互いに組合せることができる。
【0037】
1以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。その他の特徴、態様及び利点は、発明の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【
図1】本開示の実施形態に係る部品を含むガスタービンシステムの形態の例示的な産業機械の概略図。
【
図2】本開示の実施形態に係る部品を含む
図1のガスタービンシステムで使用し得る例示的なガスタービンアセンブリの断面図。
【
図3】本開示の実施形態に係る金属クーポンを含むタービン回転ブレードの形態の部品の斜視図。
【
図4】本開示の実施形態に係る金属クーポンを含むタービンノズルの形態の部品の斜視図。
【
図5】本開示の実施形態に従って金属クーポンを積層造形するための例示的な積層造形システムの概略ブロック図。
【
図6A】本開示の実施形態に係るポロシティの異なる複数の多孔質領域を有するサンプル金属クーポンの上面図。
【
図6B】本開示の実施形態に係るポロシティの異なる複数の多孔質領域を有するサンプル金属クーポンの上面図。
【
図6C】本開示の実施形態に係るポロシティの異なる複数の多孔質領域を有するサンプル金属クーポンの上面図。
【
図6D】本開示の実施形態に係るポロシティの異なる複数の多孔質領域を有するサンプル金属クーポンの上面図。
【
図7A】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7B】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7C】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7D】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7E】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7F】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7G】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7H】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7I】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7J】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7K】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図7L】本開示の様々な実施形態に係る金属クーポンの斜視図。
【
図8A】本開示の様々な実施形態に係る方法の斜視図。
【
図8B】本開示の様々な実施形態に係る方法の斜視図。
【
図8C】本開示の様々な実施形態に係る方法の斜視図。
【
図8D】本開示の様々な実施形態に係る方法の斜視図。
【
図8E】本開示の様々な実施形態に係る方法の斜視図。
【
図8F】本開示の様々な実施形態に係る方法の斜視図。
【
図9A】本開示の実施形態に係る部品の本体のクーポン開口部内の金属クーポンの拡大断面図。
【
図9B】本開示の実施形態に係る部品の本体のクーポン開口部内の金属クーポンの拡大断面図。
【
図9C】本開示の実施形態に係る部品の本体のクーポン開口部内の金属クーポンの拡大断面図。
【0039】
本開示の図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は、本開示の典型的な態様を例示するものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。図面において、同様の符号は複数の図面間で同様の構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
まず、本開示の技術的内容を明確に説明するため、ターボ機械の例示的用途で関連する機械部品について言及及び説明する際に、用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載されていない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲に則して広義に解釈すべきである。ある部品について幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及することが多々あることは当業者には明らかであろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の部品からなるものとして記載することもある。或いは、本明細書のある箇所で複数の部品を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0041】
さらに、本明細書では幾つかの記述的用語を繰返し用いるが、本欄の冒頭でこれらの用語を定義しておくと有用であろう。これらの用語及びその定義は、別途明記しない限り、以下の通りである。本明細書で用いる「下流」及び「上流」という用語は、流体の流れ(例えばタービンエンジンを通る作動流体の流れ、或いは燃焼器を通る空気又はタービンの部品系の1つを通る冷却剤の流れなど)に関する方向を示す用語である。「下流」という用語は流体が流れていく方向に対応し、「上流」という用語は流れと反対の方向(すなわち、流れてくる方向)をいう。「前方」及び「後方」という用語は、それ以上は特定されない方向をいい、「前方」はターボ機械の前方又は圧縮機端を示し、「後方」はターボ機械の後方又はタービン端を示す。
【0042】
さらに、本明細書では、以下に記載する通り、幾つかの記述的用語を繰返し用いる。「第1」、「第2」及び「第3」という用語は、ある部品を他の部品と区別するために互換的に用いられ、個々の部品の位置又は重要性を示すものではない。
【0043】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から別途明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書において、「備える」、「含む」及び/又は「有する」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部品及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象が起きても起きなくてもよい、或いはその用語に続いて記載された特徴が存在しても存在しなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる又はその特徴が存在する場合と、その事象が起こらない又はその特徴が存在しない場合とを包含する。
【0044】
ある構成要素又は層が別の構成要素又は層「の上」、「に係合」、「に接続」、「に結合」又は「に装着」しているという場合、その別の構成要素又は層の上に直接位置していても、その別の構成要素又は層に直接係合、接続、結合又は装着していてもよいし、或いは介在する構成要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある構成要素が別の構成要素又は層「の直接上」、「に直接係合」、「に直接接続」又は「に直接結合」しているという場合、介在する構成要素又は層は存在しない。構成要素間の関係について説明するために用いられる他の用語(例えば、「~の間」と「直接~の間」、「隣接」と「直接隣接」など)も同様に解釈される。「結合」及び「装着」の動詞形は、同義に用いられることがある。
【0045】
上述のように、本開示は、本体を含む部品、及び第1のセクション及び応力緩和セクションを含む積層造形(AM)金属クーポンを提供する。第1のセクションには第1のポロシティがあり、応力緩和セクションには第2のポロシティがある。第1のポロシティと第2のポロシティは異なる。第2のポロシティは、応力緩和セクションの総体積に対する2%~50%の空洞空間体積の間であってもよい。応力緩和セクションは、熱伝導性、延性、又は疲労強度の少なくとも1つが第1のセクションよりも小さくなっている。本明細書で使用される「クーポン」は、元の製造又は補修の一部として、すなわち挿入可能な部品として、部品の本体のクーポン開口部に配置されるように構成された任意の部品を含んでいてもよい。この部品は、AM金属クーポンを本体のクーポン開口部に結合するろう材も含んでいてもよい。第2のポロシティを含む応力緩和セクション、すなわち多孔質領域は、金属クーポンに低応力域を作成し、高応力域の近く又は隣接して配置できる。超合金が使用される場合、超合金の焼結後の熱還元中のガンマプライム析出により、高応力域が存在する可能性がある。使用される金属又は金属合金に関係なく、応力除去セクションは、隣接する第1のセクションよりも溶融粒子の断面積と体積が少ないため、クーポンが冷却されるときに収縮する隣接する材料の量が減少し、残留応力の量が減少する。また、応力緩和セクションは、高応力域を持つ隣接する第1のセクションよりも熱を保持しにくく、柔軟性がある。応力緩和セクションにより、金属クーポンの残留応力と応力関連欠陥を減らすことができ、金属クーポンと部品の結合が難しくなる。
【0046】
図1は、例示的な産業機械の概略図を示しており、産業機械は、本開示の教示内容に則した部品を含むことができる。本例では、機械は燃焼又はガスタービン(GT)システムの形態のターボ機械100を含んでいる。ターボ機械100は、圧縮機102及び燃焼器104を含む。燃焼器104は、燃焼領域106及び燃料ノズルアセンブリ108を含んでいる。ターボ機械100は、タービンアセンブリ110及び共通の圧縮機/タービンシャフト(すなわちロータ112)112も含んでいる。一実施形態では、ターボ機械100は、GE Vernoa社から市販の7HA.03エンジンである。本開示は、いかなる特定のGTシステムに限定されるものではなく、例えばGE Vernoa社の他のHA、F、B、LM、GT、TM及びEクラスエンジンモデル、さらには他社のエンジンモデルを始めとする、他のエンジンに関しても実施し得る。本開示は、いかなる特定のターボ機械に限定されるものではなく、製造又は補修時にクーポンを使用するあらゆる工業部品部品に適用し得る。
【0047】
運転中、圧縮機102を通って空気が流れ、燃焼器104に圧縮空気が供給される。具体的には、圧縮空気は、燃焼器104に内蔵された燃料ノズルアセンブリ108に供給される。アセンブリ108は燃焼領域106と流体連通している。燃料ノズルアセンブリ108は燃料源(
図1には図示せず)とも流体連通しており、燃料及び空気を燃焼領域106に導く。燃焼器104は燃料を点火して燃焼させる。燃焼器104はタービンアセンブリ110と流体連通している。タービンアセンブリ110は、ロータ112に回転可能に結合してロータ112を駆動するタービン111を含んでいる。圧縮機102もロータ112に回転可能に結合している。例示的な実施形態では、複数の燃焼器104及び燃料ノズルアセンブリ108が存在する。
【0048】
図2は、
図1のガスタービンシステムで使用し得るターボ機械100(
図1)の例示的なタービンアセンブリ110の断面図を示す。タービンアセンブリ110のタービン111は、ターボ機械100の静止ケーシング122に結合したノズル又はベーンの列120と、軸方向に隣接したブレードの列124とを含んでいる。静止ベーン又はノズル126は、半径方向外側プラットフォーム128及び半径方向内側プラットフォーム130によってタービンアセンブリ110内に保持し得る。タービンアセンブリ110のブレードの列124は、ロータ112に結合してロータと共に回転する回転ブレード132を含んでいる。回転ブレード132は、ロータ112に結合した半径方向内側プラットフォーム148(ブレードの根元、
図3)と、適宜、半径方向外側先端136(ブレードの先端)とを含んでいてもよい。本願で用いる「部品」という用語は、静止ノズル126、回転ブレード132又はその他本開示に係る1以上の多孔質領域を含む金属クーポンを用いることのできる構造体を総称して表す。
【0049】
図3及び
図4は、ターボ機械の高温ガス経路部品のような、本開示の教示内容を用いることのできる例示的な部品を示す。
図3は、本開示の実施形態を用いることができるタイプのタービンロータブレード132の斜視図を示す。タービンロータブレード132は根元140を含んでおり、ロータブレード132は根元140によってロータ112(
図2)に取り付けられる。根元140は、ロータ112(
図2)のロータホイール144(
図2)の外周上の対応ダブテールスロットに装着されるように構成されたダブテール142を含むことができる。根元140は、ダブテール142とプラットフォーム148との間に延在するシャンク146をさらに含んでもよく、プラットフォーム148は、翼形部150と根元140の連結部に配置され、タービンアセンブリ110を通る流路の一部を画成する。翼形部150は、作動流体151(すなわち高温燃焼ガス)の流れ(
図2)を受け止めて、ロータディスク回転を惹起させるロータブレード132の能動部品である。
回転ブレード132の翼形部150は、凹面状正圧側(PS)外壁152と、周方向又は横方向に反対側の凸面状負圧側(SS)外壁154とを含んでおり、軸方向に前縁156と後縁158の間に延在する。側外壁152及び154は、半径方向にプラットフォーム148から外側先端160まで延在ており、先端60は先端シュラウド136(
図2)を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0050】
図4は、本開示の実施形態で使用し得るタイプの静止ノズル126の斜視図である。静止ノズル126は外側プラットフォーム170を含んでおり、外側プラットフォーム170によって静止ノズル126はターボ機械の静止ケーシング122(
図2)に取り付けられる。外側プラットフォーム170は、ケーシングの対応マウントに取り付けるための現在公知の又は将来開発される任意の取付け構成を含んでいてもよい。静止ノズル126は、隣接するタービンロータブレード132(
図3)及びプラットフォーム148(
図3)の間に配置される内側プラットフォーム174をさらに含んでいてもよい。プラットフォーム170,130は、タービンアセンブリ110を通る流路の外側及び内側境界のそれぞれの部分を画成する。翼形部176は、作動流体の流れを受け止めて、その流れをタービンロータブレード132(
図3)に向ける静止ノズル126の能動部品である。静止ノズル126の翼形部176は、凹面状正圧側(PS)外壁178と、周方向又は横方向に反対側の凸面状負圧側(SS)外壁180とを含んでおり、軸方向に前縁182と後縁184との間に延在する。側外壁178及び180も、半径方向にプラットフォーム170からプラットフォーム174まで延在している。
【0051】
ブレード132又はノズル126は、冷却剤の供給源を含む内部冷却構造、例えば冷却剤をフィルム冷却のためにその表面に届けるための通路、導管その他の構造を含んでいてもよい。冷却剤としては、例えば圧縮機102からの空気が挙げられる。
【0052】
本願に記載する本開示の実施形態は、静止ノズル126、タービンロータブレード132及び/又はその他クーポンが用いられる任意の工業部品に適用できる態様を包含する。
図3及び
図4には、部品202における例示的な積層造形(AM)金属クーポン200(以下、「金属クーポン200」又は「AM金属クーポン200」)も示してある。さらに具体的には、金属クーポン200は、部品202の本体206のクーポン開口部204内にある。「本体206のクーポン開口部204」は、本体206(例えば先端シュラウド)の除去部分を含むまでの本体206内の任意の大きさの空所であってもよい。例えば、金属クーポン200は、ブレード132又はノズル126それぞれの後縁158,184のクーポン開口部204に配置し得る。或いは、金属クーポン200は、ブレード132又はノズル126のそれぞれの前縁156,182のクーポン開口部204に配置し得る。金属クーポン200は、ブレード132の先端又はノズル126のプラットフォーム170,174(
図4に示す)にも存在し得る。ただし、金属クーポン200は、部品202の本体206内の任意のクーポン開口部204に使用し得る。本体206は、部品202のいかなる部分であってもよいし、或いは部品全体であってもよい。
【0053】
積層造形金属クーポン200は、第1のポロシティを有する第1のセクションと、第2のポロシティを有する応力緩和セクションを含んでおり、多孔質金属領域(及びさらに稠密な領域)を形成することができる現在公知の又は将来開発される任意の技術を使用して積層造形し得る。
図5は、金属クーポン200又は複数の金属クーポン200A,200B(それらの一層だけを示す)を生成するための例示的なコンピュータ化された金属粉末積層造形システム210(以下、「AMシステム210」)の概略/ブロック図を示す。本開示では、複数の溶融ビーム源212,214,216,218を用いた金属クーポン200の造形について説明するが、本開示の教示は、任意の数の溶融ビーム源を使用した複数のクーポン200A,200Bの造形にも等しく適用できることは明らかであろう。この例では、AMシステム210は、直接金属レーザ溶融(DMLM)用に配置されている。本開示の教示内容全般は、粉末床溶融結合、直接金属レーザ焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的レーザ焼結(SLS)、選択的レーザ溶融(SLM)など、他の形態の金属粉末積層造形、さらにはおそらく他の形態の積層造形(すなわち、金属粉末用途以外のもの)にも同様に適用できる。クーポン200A、200Bは、矩形構成要素として示してあるが、積層造形プロセスは、ビルドプラットフォーム220上での任意の形状のクーポン、多種多様な異なるクーポン及び多数のクーポンの製造に容易に適合させることができる。
【0054】
AMシステム210は、一般に、積層造形制御システム230(「制御システム」)及びAMプリンタ232を含む。後述の通り、制御システム230は、複数の溶融ビーム源212,214,216,218を使用してクーポン200を生成するために、コンピュータ実行可能な命令又はコード234のセットを実行する。図に示す例では、4つの溶融ビーム源は4つのレーザを含む。ただし、本開示の教示内容は、任意の溶融ビーム源、例えば電子ビーム、レーザなどにも適用できる。制御システム230は、コンピュータプログラムコードとしてコンピュータ236に実装された状態で示してある。これに関して、コンピュータ236は、メモリ238及び/又はストレージシステム240、プロセッサユニット(PU)244、入出力(I/O)インターフェース246、及びバス248を含む状態で示してある。また、コンピュータ236は、外部I/Oデバイス/リソース250と通信状態にあるものとして示してある。一般に、プロセッサユニット(PU)244は、メモリ238及び/又はストレージシステム240に格納されたコンピュータプログラムコード234を実行する。コンピュータプログラムコード234を実行している間、プロセッサユニット(PU)244は、メモリ238、ストレージシステム240、I/Oデバイス250及び/又はAMプリンタ232との間でデータを読み書きすることができる。バス248は、コンピュータ236内の各オブジェクト間の通信リンクを提供し、I/Oデバイス250は、ユーザがコンピュータ236と対話できるようにする任意のデバイス(例えばキーボード、ポインティングデバイス、ディスプレイなど)を備えることができる。コンピュータ236は、ハードウェアとソフトウェアの様々な可能な組合せを代表しているに過ぎない。例えば、プロセッサユニット(PU)244は、単一の処理ユニットを備えてもよいし、1以上の場所、例えばクライアント及びサーバ上の1以上の処理ユニットに分散してもよい。同様に、メモリ238及び/又はストレージシステム240は、1以上の物理的な場所に常駐し得る。メモリ238及び/又はストレージシステム240は、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを含む、様々なタイプの非一時的コンピュータ可読記憶媒体の任意の組合せを備えることができる。コンピュータ236は、産業用コントローラ、ネットワークサーバ、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、ハンドヘルドデバイスなど、任意のタイプのコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0055】
上述の通り、AMシステム210、特に制御システム230は、コード234を実行して1以上の金属クーポン200を生成する。コード234は、とりわけ、AMプリンタ232を操作するための一組のコンピュータ実行可能命令234S(本明細書では「コード234S」ともいう)と、AMプリンタ232によって物理的に生成される1以上の金属クーポン200を定義する一組のコンピュータ実行可能命令234O(本明細書では「コード234O」ともいう)を含むことができる。本明細書に記載されるように、積層造形プロセスは、コード234を記憶する非一時的コンピュータ可読記憶媒体(例えばメモリ238、ストレージシステム240など)から始まる。AMプリンタ232を操作するためのコンピュータ実行可能命令234Sは、AMプリンタ232を動作させることができる、現在公知の又は将来開発される任意のソフトウェアコードを含んでいてもよい。
【0056】
1以上の金属クーポン200を定義するコンピュータ実行可能命令234Oのセットは、クーポン200の正確に定義された3Dモデルを含んでいてもよく、AutoCAD(登録商標)、TurboCAD(登録商標)、DesignCAD3DMaxのような周知のコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアシステムから生成することができる。この点に関して、コード234Oは、現在公知の又は将来開発される任意のファイルフォーマットを含むことができる。さらに、金属クーポン200を表すコード234Oは、異なるフォーマット間で変換してもよい。例えば、コード234Oは、3DSystemsのステレオリソグラフィCADプログラム用に作成されたSTL(Standard Tessellation Language)ファイル、又はいかなるCADソフトウェアであっても任意のAMプリンタで製造すべきあらゆる3次元の形状及び組成を記述できるように設計された拡張可能なマークアップ言語(XML)ベースのフォーマットである米国機械学会(ASME)標準である積層造形ファイル(AMF)を含んでいてもよい。金属クーポン200を表すコード234Oは、必要に応じて、一組のデータ信号に変換して送信したり、一組のデータ信号として受信したり、コードに変換したり、格納したりすることもできる。コード234Oは、本開示の実施形態に従って、後述の通り重複場領域で境界及び内部セクションを形成できるように構成してもよい。いずれにせよ、コード234Oは、AMシステム210への入力であってもよく、部材設計者、知的財産(IP)提供者、設計会社、AMシステム210のオペレータ又は所有者、又は他の供給元に由来するものでもよい。いずれにせよ、制御システム230は、コード234S及び234Oを実行し、1以上の金属クーポン200を一連の薄いスライスに分割して、それらをAMプリンタ232を用いて材料の連続層へと積層する。
【0057】
AMプリンタ232は、金属クーポン200のプリントのための制御された雰囲気を供給するためにの密閉処理チャンバ260を含んでいてもよい。金属クーポン200が造形されるビルドプラットフォーム220は、処理チャンバー260内に配置される。多数の溶融ビーム源212,214,216,218は、ビルドプラットフォーム220上の金属粉末の層を溶融してクーポン200を生じるように構成される。4つの溶融ビーム源212,214,216,218が例示されているが、本開示の教示内容は、任意の数(例えば1、2、3又は5以上)のビーム源を使用するシステムにも適用できる。各溶融ビーム源212,214,216,218は、金属粉末を独占的に溶融することができる非重複場領域を含む場を有していてもよいし、或いは2以上のビーム源で金属粉末を溶融できる1以上の重複場領域を含んでいてもよい。この点に関して、各溶融ビーム源212,214,216,218は、コード234Oによって定義される各スライスのために、粒子を融合する溶融ビームを生成し得る。例えば、
図5に、溶融ビーム源212が、溶融ビーム262を用いて1つの領域で金属クーポン200の層を作成し、溶融ビーム源214が別の領域で溶融ビーム262’を用いて金属クーポン200の層を作成していることが示してある。各溶融ビーム源212,214,216,218は、現在公知の又は将来開発される任意の方法で較正される。すなわち、各溶融ビーム源212,214,216,218は、その個々の精度を確保するための個々の位置補正(図示せず)を提供するため、ビルドプラットフォーム220に対するレーザビーム又は電子ビームの予想位置をその実際の位置と相関させている。一実施形態では、複数の溶融ビーム源212,214,216,218の各々が、同じ断面寸法(例えば動作時の形状及び大きさ)、出力及び走査速度を有する溶融ビーム(例えば262,262’)を作成し得る。
【0058】
続けて
図5を参照すると、アプリケータ(又はリコーターブレード)270は、空白キャンバスとして広げられた原料272の薄層を作成することができ、その上で最終金属クーポン200の連続スライスの各々が作成される。AMプリンタ232の様々な部分は、追加される各々の新層を収容するために移動させることができ、例えば各層の後に、ビルドプラットフォーム220を下降及び/又はチャンバ260及び/又はアプリケータ270を上昇させてもよい。本プロセスは、細粒金属粉末の形態の様々な原料を使用することができ、原料のストックを、アプリケータ270でアクセス可能なチャンバ260内に保持してもよい。この事例では、クーポン200は金属から作ることができ、金属は純金属又は合金を含むことができる。一例では、金属は、実質的に任意の非反応性金属粉末、すなわち、非爆発性又は非導電性の粉末、例えば限定されるものではないが、コバルトクロムモリブデン(CoCrMo)合金、ステンレス鋼、オーステナイトニッケル-クロム基合金、例えばニッケル-クロム-モリブデン-ニオブ合金(NiCrMoNb)(例えばInconel 625又はInconel 718)、ニッケル-クロム-鉄-モリブデン合金(NiCrFeMo)(例えばHaynes International社から入手可能なハステロイ(登録商標)X)、又はニッケル-クロム-コバルト-モリブデン合金(NiCrCoMo)(例えばHaynes International社から入手可能なHaynes282)等が挙げられる。その他可能なものとして、例えばRene 108、CM247LC、MarM247、その他の析出硬化型(PH)ニッケル基合金などが挙げられる。
【0059】
処理チャンバ260は、アルゴン又は窒素のような不活性ガスで満たされ、酸素を最小限に抑制又は完全に除去するように制御される。制御システム230は、不活性ガス276の供給源から処理チャンバ260内のガス混合物274の流れを制御するように構成されている。この場合、制御システム230は、ポンプ280及び/又は不活性ガス用の流量弁システム282を制御して、ガス混合物274の含有量を制御してもよい。流量弁システム282は、特定のガスの流れを正確に制御することができる、1以上のコンピュータ制御可能な弁、流量センサ、温度センサ、圧力センサなどを含んでいてもよい。ポンプ280は、弁システム282の有無にかかわらず設けることができる。ポンプ280が省略される場合、不活性ガスは、処理チャンバ260への導入に先立って、単に導管又はマニホールドに入ることができる。不活性ガス276の供給源は、その中に含まれる材料のための任意の従来の供給源、例えばタンク、貯留層又は他の供給源の形態をとることができる。ガス混合物274を測定するために必要な任意のセンサ(図示せず)を設けてもよい。ガス混合物274は、従来の方法でフィルタ286を用いて濾過することができる。
【0060】
動作中、処理チャンバ260内には金属粉体を載せたビルドプラットフォーム220が設けられ、制御システム230は、不活性ガス276の供給源から処理チャンバ260内のガス混合物274の流れを制御する。制御システム230は、AMプリンタ232、特に、アプリケータ270及び溶融ビーム源212,214,216,218も制御して、ビルドプラットフォーム220上の金属粉末の層を順次溶融し、本開示の実施形態に係る金属クーポン200を生成する。
【0061】
ここでは特定のAMシステム210について説明してきたが、本開示の教示は、ある特定の積層造形システム又は方法に限定されるものではない。また、本開示の教示は、積層造形金属クーポン200に関するものであるが、部品202については、積層造形(おそらく金属クーポン200について記載したものと同様)、鋳造その他の方法など、現在公知の又は将来開発される任意の方法で製造し得る。部品202は、金属クーポン200に関して本明細書で挙げた材料のいずれかを含んでいてもよい。
【0062】
図7A~Lは、開示の様々な実施形態に係る積層造形(AM)部材290を含む例示的な積層造形(AM)金属クーポン200の図を示す。金属クーポン200及びAM部材290は、第1のセクション292及び応力緩和セクション294を有する。第1のセクション292は第1のポロシティを有し、応力緩和セクション294は第2のポロシティを有する。より詳細には、応力緩和セクション294は、第2のポロシティ(細孔302を含む)を有する多孔質領域300を有する。応力緩和セクション294は、例えば、応力緩和セクション294の総体積に対して2~50%の空洞空間体積との間の第2のポロシティを有してもよい。応力緩和セクション294、すなわち多孔質領域300は、熱伝導性、延性、引張強度又は疲労強度の少なくとも1つが第1のセクション292のそれよりも小さい。第1のセクション292の第1のポロシティは、応力緩和セクション294よりも著しく密度が高く、例えば、細孔302があったとしてもほとんど存在せず、中実であり得る。第1のセクション292は、高応力域296(破線の円)を含む。高応力域296は、ユーザが応力を軽減し又は緩和したいと望む残留応力をその内部に有する任意の断面積又は体積であってもよい。高応力域296は、応力緩和セクション292よりも高い局所応力及び/又は応力集中を有し、応力緩和セクション292とは異なる熱伝導性、延性、引張強度又は疲労強度の少なくとも1つを有してもよい。高応力域296は、以前に作成された金属クーポン200の観察及び応力モデリングを通じて、以下に限定されないが、現在公知の又は将来開発される任意の方法で特定することができる。
【0063】
本明細書で用いる「ポロシティ」とは、標記の構造(例えば多孔質領域、金属クーポンなど)の総体積に対する空洞空間(open space)体積の比率である。通例、この点に関して、ポロシティは、標記の構造の全又は総体積に対する空洞空間の体積の百分率として記載される。空洞空間は、中実材料内の空の領域であり、本明細書では「細孔」302といい、標記の構造の材料内部の相互連結通路を含んでいてもよい。したがって、金属クーポン200の「多孔質領域」300は、100%未満の中実度であり、細孔302及び/又は相互連結通路の形態の空洞空間を含んでいる。上述の通り、多孔質金属クーポン200は、第1のセクション292を含んでいてもよいが、中実度が100%未満の多孔質領域300を有する1以上の応力緩和セクション294も含んでいてもよい。本明細書において、多孔質領域又は部分領域の「総体積」を特定するための多孔質領域(又は部分領域又は応力緩和サブセクション)の三次元境界は、金属クーポン200内で隣接する領域又は部分領域に対して2%超のポロシティの変化が起こる箇所及び/又は金属クーポン200の縁が存在する箇所によって特定することができる。「空洞空間体積」とは、総称して、領域又は部分領域内の空の(すなわち、空所、空隙、空空間、及び/又は材料で満たされていない)3次元空間である。本明細書において「異なるポロシティ」又は「ポロシティの差」とは、一般に、総体積に対する空洞空間体積の百分率、所与の体積内部の細孔302の数、細孔302の容積(すなわち、サイズ)、細孔302の形状、及び実際の離散細孔と認識できないことのある細孔302間の連結通路の変動(本明細書では「細孔連結通路」という)などの様々な特性の変動を意味する。非限定的な一例として、細孔径は、例えば1.07×10-6~8.58×10-3mm3(6.54×10-11~5.24×10-7立方インチ)の範囲内とすることができ、或いは別の非限定的な例として、細孔径は0.0127mm~0.254mm(0.0005インチ~0.01インチ)の範囲内とすることができる。図面には、異なる多孔質領域又は部分領域は、典型的には連続的又は互いに接した状態で示してあるが、それらは互いに(例えばそれらの間の中実領域によって)隔てられていてもよい。すなわち、1枚の金属クーポンは、1以上の孤立した非接触状態の多孔質領域を含んでいてもよい。「領域」及び/又は「部分領域」という用語は、ポロシティの変化を示すために互換的に使用し得る。
【0064】
例えば、細孔形状や細孔接続通路の違いにより、ポロシティの違いは、総体積に対する空洞空間の体積の割合だけに基づくものではないことが認識される。ただし、ポロシティの差を程度の観点から比較する場合、例えば、高いか低いか、参照される差は、体積特性、つまり総体積に対する空洞空間体積の割合の差のみになる。
【0065】
多孔質金属クーポン200は、本明細書に記載されるようなAMシステム210、又は多孔質金属を形成することができる任意の他の金属積層造形システム又は方法を使用して、多孔質領域300を有する応力緩和セクション294、及びおそらく異なる多孔質領域300と共に形成することができる。多孔質領域300は、本明細書では応力緩和サブセクションとも呼ぶことができる。AMシステム210の動作に関しては、溶融ビーム源212、214、216、218は、金属を断続的に焼結させないようにプログラムすることができ、中実材料ではなく金属粉末を残すことができる。このプロセスは、異なる量だけレーザフィールド領域を重複させること、及び/又はビルドファイル、すなわちコード234Oに細孔302を設計することを含んでいてもよい。各レーザスキャンの重複が少ないとポロシティが増し、連続するスキャン間のレーザ重複が多いとポロシティが少なくなる。レーザスポットのサイズ、スキャン速度、フォーカス、及び/又はパワーを制御して、ポロシティを調整することもできる。より詳細には、積層造形は、金属粉末の層を融合するために1以上の溶融ビーム源212、214、216、218を有するAMシステム210を使用し、2以上の多孔質領域のポロシティを制御するためのシステムのパラメータを調整することを含む。パラメータの調整は、少なくとも1つを含んでいてもよい:1以上の溶融ビーム262、262’(
図5)(ソース212、214、216、218から)の溶融領域の重複量を調整するステップと、システムのスキャン速度を調整する。又は溶融ビームスポットのサイズ、焦点、又は出力の少なくとも1つを調整する。未溶融金属粉末が金属クーポン200から除去されると、細孔302と孔302の間に相互接続通路が残り、金属クーポン200に1以上の多孔質領域が形成される。いずれにせよ、金属クーポン200の層状製造は、金属クーポン200の任意の所望の層内の任意の数、形状及び/又は応力緩和セクション294及び/又は多孔質領域300の任意の数、形状及び/又はサイズに対して所望のポロシティを作り出すように制御することができる。
【0066】
図6A~
図6Dは、様々なポロシティを有する非限定的なサンプル金属クーポン200の上面概略図を示す。細孔302は、図面では暗い空洞空間として示される。
図6Aは、試料の総体積に対する空洞空間体積が約40%の第1のポロシティを有する試料金属クーポン200(概して高い空洞空間量及び多量もしくは大型の細孔302を有する)を示し、
図6Bは、試料の総体積に対する空洞空間体積が約30%の第1のポロシティを有する試料金属クーポン200を示し、
図6Cは、サンプルの総体積に対する空洞空間体積が約20%の第1のポロシティを有するサンプル金属クーポン200を示し、
図6Dは、サンプルの総体積に対する空洞空間体積が約10%の第1のポロシティを有するサンプル金属クーポン200(概して空洞空間の量が少ない)を示す。各多孔質領域は、多孔質領域の総体積に対して2%~50%の空洞空間体積(すなわち、2~50%の空洞空間と残る50~98%の中実)を有することができる。他の実施形態では、各ポロシティは、多孔質領域300の総体積に対して10%~40%の空洞空間体積(すなわち、10%~40%の空洞空間と残る60~90%の中実)であってもよい。他の実施形態では、多孔質領域は、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、35%未満、40%未満、45%未満、2%~45%、2%~40%、2%~35%、2%~30%、2%~25%、2%~20%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、15%~45%、15%~40%、15%~35%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、10%~50%、20%~50%、25%~50%、30%~50%、35%~50%又は40%~50%の範囲内のポロシティを有する。本明細書に記載の通り、他の範囲内のポロシティも可能である。
【0067】
図7A~Lに示すように、金属クーポン200は、多孔質領域300(又はサブセクション)を含む応力緩和セクション294を有してもよい。いずれのバージョンでも、多孔質領域300を有する応力緩和セクション294を画成する金属クーポン200の層内の領域は、細孔302を含むように形成することができ、第1のセクション292を画成する金属クーポン200の層内の領域は、細孔302があったとしてもほとんどない、すなわち、それらは非常に密集しているか又は中実である。多孔質領域300は、均一なポロシティ又は可変のポロシティを有してもよい。
図7A~Fに示す非限定的な例では、高応力域296は、第1のセクション292の鋭いコーナー306に位置し、しかし、高応力域296は、第1のセクション292のどこにでも配置することができる。
図7A~Bは、金属クーポン200、すなわちAM金属部材290と、2つの多孔質領域300A、B(応力緩和サブセクション)を有する応力緩和セクション294を示している。
図7C~Dは、単一の応力緩和セクション294を有する金属クーポン200を示している。
図7E~Fは、金属クーポン200の外部表面308に延在するサブセクション312を含む単一の応力緩和セクション294を有する金属クーポン200を示している。
図7Fは、応力緩和セクション294にろう材310を用いた
図7Eの実施例を示す。
図7A~Fの金属クーポン200は、
図3及び
図4に示すように、ブレード132又はノズル126の後縁158又は184にそれぞれクーポン開口部204、又はブレード132又はノズル126の前縁156又は182にクーポン開口部204がそれぞれ位置するように構成された形状を示している。金属クーポン200は、ブレード132又はプラットフォーム170(図示)の任意の先端(図示せず)、ノズル126の174にも存在し得る。しかし、金属クーポン200は、任意の部品202の本体206の任意の部分の任意のクーポン開口部204で使用できることが強調される。
【0068】
ポロシティに関して、
図7A~Bは、均一なポロシティを有する多孔質領域300A-Bを示している。複数の多孔質領域300が使用される場合、例えば、
図7A~Bのように、多孔質領域300A-Bは、互いに異なるポロシティ(及び第1のセクション292)を有してもよい。
図7Aは、同じポロシティを有する多孔質領域300A-Bを示し、
図7Bは、互いに異なるポロシティを有する多孔質領域300A-B(及び第1のセクション292)を示している。すなわち、第1の多孔質領域300Aは、第2の多孔質領域300Bとは異なるポロシティを有する。本明細書で述べたように、2つの多孔質領域300A、300Bは、例えば、異なるサイズ又は数の細孔302を含んでおり、異なるポロシティを作り出すことができる。その結果、第1のサブセクション294A及び第2のサブセクション294Bは、熱伝導性、引張強度、延性、又は疲労強度の少なくとも1つを第1のセクション292より小さく、互いに異なるものを有することができる。
【0069】
図7C~Dは、可変多孔質領域を有する多孔質領域300Cを有する金属クーポン200を示す。
図7C~Dに示す例では、多孔質領域300Cの上部部分領域314Aは、下部部分領域314Bよりも密度が低い。しかし、ポロシティの変動は、例えば、応力を緩和するために、任意の所望の方法で配置することができる。可変多孔質領域300Cを画成する金属クーポン200の層内の領域は、異なるサイズ又は数の細孔302を含むように形成することができ、異なるポロシティを作り出すことができる。可変ポロシティ領域300Cは、変化する任意のポロシティ、例えば、増加、減少、及び/又は両方が増加し減少する任意のポロシティを有してもよい。ポロシティの変化は、緩やかに変化することもあれば、段階的に変化することも、さもなければ漸進的に変化させることもできる。各多孔質領域300は、本明細書で前述したようなポロシティを有していてもよい。
【0070】
応力緩和セクション294は、金属クーポン200内の高応力域296の応力を緩和するように構成された任意の形状及び/又は寸法を有することができ、おそらく、本体206のクーポン開口部204(
図3~4)(
図3~4)内も、応力を緩和するように構成することができる。
図7A~Bにおいて、応力緩和セクションは、第1の多孔質領域300Aを有する第1のサブセクション294Aと、第2の多孔質領域300Bを有する第2のサブセクション294Bとを含む。第1及び第2の多孔質領域300A、300Bのそれぞれは、それぞれの多孔質領域の総体積に対する空洞空間体積の2~50%の間のポロシティを有するが、本明細書に記載される任意のポロシティも有してもよい。
図7A~Bにおいて、応力緩和サブセクション294A、294Bは、コーナー306を応力緩和に一致させるように構成された角度のある端部322を有する2つの一般的に長方形の形状を含む。
図7A~Bの応力緩和サブセクション294A-Bは、AM金属部材290/金属クーポン200、すなわち第1のセクション292に完全に埋め込まれている。
図7C~D中、応力緩和セクション294は、コーナー306を囲むU字型又はカップ状となっている。
図7E~F中、応力緩和セクション294は、U字型又はカップ型の上部サブセクション326と、金属クーポン200の外面308まで延在する(より直線的な)サブセクション312とを有する。すなわち、応力緩和セクション294の多孔質領域300は、第1のセクション292内の第1サブセクション326と、金属クーポン200の外部表面308に延在する第2サブセクション312を含む。まとめて、示された例では、
図7E~Fにおける応力緩和セクション294のサブセクション312、326は、概ねY字型をしている。ただし、他の形状も可能である。
図7G~Hにおいて、応力緩和サブセクション294A、294Bは、コーナー306を応力緩和に一致させるように構成された角度のある端部322を有する2つの一般的に長方形の形状(
図7A~Bと同様)と、金属クーポン200の外面308まで延在するサブセクション312A、312B(
図7E~Fと同様)を含む。
図7I~J中、応力緩和セクション294は、金属クーポン200の外面308と隣接する(図示された例では同一平面上)外面325を含んでいてもよい様々な長方形の形状を有する。応力緩和セクション294の多孔質領域300(サブセクション)は、高応力域296の応力を緩和するために任意の形状を構成することができる。
【0071】
図7A~Dを参照すると、応力緩和セクション294の多孔質領域300は、第1のセクション292内に完全に埋め込まれている/されている。すなわち、応力緩和セクション294は、全体がAM金属部材/金属クーポン内にあり、すなわち、金属クーポン200の外面308までは延在していない。ただし、これはすべての場合に必要というわけではない。例えば、
図7E~Jに示すように、応力緩和セクション294の多孔質領域300(サブセクション)は、金属クーポン200の外面308まで延在していてもよい。
図7E~Hにおいて、サブセクション312は、応力緩和セクション294のサブセクション326よりも小さい寸法を有してもよい。一例では、本明細書でさらに説明されるように、サブセクション312は、ろう材310が毛細管現象を通過する可能性のある多孔質導管の形態をとってもよい、すなわち、金属クーポン200の外部からである。
図7I~Jでは、上述したように、多孔質領域300A-B、及び300Dは、金属クーポン200の外面308と連続する(例示の例では同一平面上)外面325を有してもよい。自明であろうが、多孔質領域300の一部が金属クーポン200の外面308まで延在する多種多様な代替配置は、応力緩和に対処することが可能であり、及び/又は本明細書でさらに説明されるように、金属クーポン200がそれに結合されると、部品202の材料の流れ及び物理的特性を制御することができる。
【0072】
図7A~7E、
図7G及び
図7Iにおいて、応力緩和セクション294の多孔質領域300は、積層造形として残る、すなわち、それらは多孔質材料のままである。しかし、他の実施形態では、金属クーポン200を部品202に結合するために使用されるろう材310は、例えば、さらに説明されるように、該クーポンを部品に結合するために使用されるろう付けプロセス中に、応力緩和セクション294及び多孔質領域300に溶浸する可能性がある。
図7F、
図7H及び
図7Jにおいて、ろう材310は、応力緩和セクション294、すなわち、その多孔質領域300に溶浸する。亀裂340は、
図7C~D及び
図7E~Fの実施形態にも示されている。
図7C及び
図7Eに例示されるように、応力緩和セクション294は、亀裂止めとして作用し、亀裂340が金属クーポン200を通じてさらに伝播するのを防止する。より詳細には、金属クーポン200が示されており、第1のセクション292における亀裂340、例えば、多孔質領域300の垂直上方(他の場所にある可能性がある)が示されている。亀裂340は、金属クーポン200の製造による高応力域296における残留応力、又は金属クーポン200が部品202に結合されるときに生じる熱差などの他の原因(例えば、溶接又はろう付け中)によって引き起こされる可能性がある。しかし、亀裂340は、応力が応力緩和セクション294に存在しないため、応力緩和セクション294、すなわちその多孔質領域300で停止する。したがって、応力緩和セクション294は、亀裂ストップとして機能し、第1のセクション292の亀裂340のさらなる伝播を防止する。図に示す通り、例えば、
図7Fにおいて、ろう材310は、ろう付け工程中に
図7Eの亀裂340に溶浸する可能性がある、すなわち、亀裂340を充填して第1のセクション292でそのさらなる伝播を防ぎ、さらに亀裂340を安定させる。
図7F及び
図7H中、ろう材310は、金属クーポン200の外面308に延在するサブセクション(複数可)312を通じて、応力緩和セクション294、すなわちその多孔質領域300に溶浸し得る。
図7J中、ろう材310は、応力緩和セクション294、すなわち多孔質領域300に、その露出した外面325を通じて溶浸する。
【0073】
図7A~J中、応力緩和セクション294、すなわち多孔質領域300は、AM金属部材290の層を少なくとも部分的に横切って、AMシステム210によって形成されるような複数の層にわたって延在している(
図5)。ただし、応力緩和セクション294の多孔質領域300は、金属クーポン200の単層344内に置くことができる。また、応力緩和セクション294の多孔質領域300は、金属クーポン200の単層344の一部であってもよい。
図7K~Lは、応力緩和セクション294を有する金属クーポン200、すなわち多孔質領域300を有する金属クーポン200のそれぞれを単層344で示す。単層344は、金属クーポン200の任意の層、すなわちAM金属部材290内に置くことができる。応力緩和セクション294又は単層244は、ビルドプラットフォーム220から遠位にすることができる。
図7Kに示すように、応力緩和セクション294の多孔質領域300は、金属クーポン200の単層344の一部のみであってもよい。すなわち、多孔質領域300は、金属クーポン200の全層を横切って広がっていない。むしろ、AM金属部材290の単層344(又は多層応力緩和セクション294)は、AM金属部材290を横切って部分的にのみ延在している。
図7Lは、応力緩和セクション294の多孔質領域300が、金属クーポン200の単層346の全体を横切っても存在し得ることを示している。
【0074】
図3、
図4、
図5、7A~L及び
図8A~Fを参照して、次に、開示による方法の実施形態について説明する。方法は、部品202を補修するための金属クーポン200の形成及び/又は部品202の補修を含んでいてもよい。
図8A~Fは、開示の実施形態に係る方法の斜視図を示す。
【0075】
金属クーポン200の形成に関して、
図5、7A、7C、7E、7I及び7K~Lは、開示の実施形態に係る方法を示している。実施形態では、方法は、金属粉末(すなわち、原材料272)の層を連続的に堆積させ融合することにより、AMシステム210(又は多孔質領域300(及び中実第1のセクション)を形成することができる他のAMシステム210)を用いて金属クーポン200を積層造形することを含んでいてもよい。上述の通り金属クーポン200は、第1のセクション292及び応力緩和セクション294を含む。第1のセクション292は第1のポロシティを有し、応力緩和セクション294は第2のポロシティを有する。応力緩和セクション294(多孔質領域300を含む)は、応力緩和セクション294の総体積に対して2%~50%の空洞空間体積との間の第2のポロシティを有する。応力緩和セクション294は、熱伝導性、引張強度、延性、又は疲労強度の少なくとも1つが第1のセクション292よりも小さくなっている。この方法はまた、金属クーポン200における高応力域296(例えば、
図7A~Fを参照)を特定することを含んでいてもよい。上述の通り高応力域296は、金属クーポン200の他の領域と比較して高い応力を有する。高応力域296は、以前に作成された金属クーポン200の観察及び金属クーポン200単独及び/又は部品202内の応力モデリングを通じて、現在公知の又は将来開発される任意の方法で特定することができる。積層造形は、応力を緩和するために、金属クーポン200の高応力域296内又は高応力域296に隣接して応力緩和セクション294を形成することを含んでいてもよい。
【0076】
積層造形は、多孔質金属クーポン200(及び緻密又は中実領域)を製造するために、本明細書に記載の任意のAMプロセスを含んでいてもよい。この積層造形は、金属粉末(原料272)の層を融合するために、1以上の溶融ビーム212、214、216、218(
図5)を使用することを含んでおり、さらに、本明細書に記載されている他のものの中でも、1以上の溶融ビーム212、214、216、218(
図5)の溶融領域の重複量を調整すし、多孔質領域300のポロシティを制御することを含む。積層造形は、AMプリンタ232を制御することにより、金属クーポン200の第1のセクション292のうち多孔質領域300を選択的に形成することを含んでいてもよい。積層造形は、クーポン開口部204のプロファイル(例えば、形状、寸法など)に一般的に一致するように、又はクーポン開口部204のモデルに基づいてクーポン開口部204のニアネット形状を有するように、金属クーポン200を製造することを含んでいてもよい。本明細書中で使用されるように、「ニアネット形状」は、金属クーポン200が所望の製造許容範囲内にあり、製造プロセスの指定された段階で、例えば、機械加工などの追加処理が全く又は最小限であることを示す。外装面への追加のテクスチャリング又は研磨が望ましい場合がある。金属クーポン200が部品202に入ると、追加のコーティングが適用される可能性があることが認識される。金属クーポン200は、ほぼネット形状に形成される場合、製造後に、クーポン開口部204に位置するときに、クーポン開口部204内の金属クーポン200を結合するために必要な本体206の表面に非常に近い形状、例えば、選択されたろう材と、機械加工又は研削のような必要な仕上げ方法がないか、又は最小限に必要とされる形状を有することもできる。しかし、金属クーポン200の外面308における多孔質領域300の使用は、多孔質領域がより大きなギャップにもかかわらず、ろう材の把持及び保持を改善するため、ろう材のための狭いギャップを有する中実クーポンと比較して、より大きな継手ギャップ寸法の変動に対応する。金属クーポン200は、
図8B~Cにおける
図7I~Jの実施形態に基づいて積層造形されて示されているが、本明細書に記載されている任意の形態をとってもよい。
【0077】
本明細書に記載されるように、金属クーポン200における応力緩和セクション294(すなわち、多孔質領域300又はサブセクション)の第2のポロシティは、とりわけ、応力を緩和するために制御及び/又はカスタマイズされる。さらに、応力緩和セクション294が金属クーポン200の外部表面308、すなわちAM部材290に延在している場合、金属クーポン200内のそのポロシティが制御される、すなわち、カスタマイズされ、
図3、
図4及び
図9A~Cに示すように、金属クーポン200を結合する後続のろう付けプロセス中に、その内部のろう材310の流れを制御するように、部品202の本体206におけるクーポン開口部204。いずれにせよ、各多孔質領域又はサブセクション300は、ポロシティに影響を与える前述の特性のいずれかに関してカスタマイズしてもよい。多孔質領域300のサイズ、形状及び/又は位置は、応力を緩和するために配置することができる。さらに、応力緩和セクション294(多孔質領域300)が金属クーポン200の外面308、すなわちAM部材290に延在している場合、多孔質領域300のサイズ、形状及び/又は位置を、所望に応じて材料を直接ろう付けするように配置することができる。例えば、
図7Hにおいて、金属クーポン200は、毛細管現象によって、応力緩和セクション294のサブセクション326に、材料310をろう付けするサブセクション312を含む。対照的に、
図7Jでは、金属クーポン200は、金属クーポン200(及び/又は部品202)の縁350付近の多孔質領域又はサブセクション300Aを含んでおり、ここでクーポン開口部204(
図3~4)と結合し、異なる多孔質領域又は異なる領域、例えば縁350から遠位の異なる多孔質領域又はサブセクション300Bを含んでいてもよい。このようにして、ろう材310は、各多孔質領域又はサブセクション300A-Bにおいて異なる方法で分布し、その結果、金属クーポン200及び/又は部品202の異なる物理的特性がその異なる領域に生じることになる。より詳細には、任意の数の多孔質領域又はサブセクション300を使用して、金属クーポン200を含む部品202の1以上の物理的特性をカスタマイズ(作成)することができる。継手接着接着強度、クーポン強度、応力(及びひずみ)緩和及び/又は抵抗、耐摩耗性、耐酸化性、サイクル疲労、熱伝導性、引張強度、延性、疲労強度、電気伝導率、表面粗さ、硬度、及び質量。可能性の非包括的なリストにおいて、金属クーポン200は、1つの領域又はサブセクション300におけるより高いポロシティを含んでいてもよく、金属クーポン200の他の第1のセクション292と比較して、その中の毛細管現象によってより多くのろう材310を導き、部品202の1以上の物理的特性を制御することができる。別の実施形態では、金属クーポン200は、金属クーポン200の他の中実領域と比較して、毛細管現象によってその中の材料をより少ないろう付けに向けるために、1つの領域又はサブセクション300におけるより低いポロシティを含んでいてもよく、部品202の1以上の物理的特性を制御する。応力緩和セクション294及び多孔質領域又はそのサブセクション300の任意の配置は、所望の応力緩和を作成し、材料の流れ及び溶浸をろう付けして所望の物理的特性を達成することが可能である。
【0078】
積層造形は、
図7A~Lに関連して本明細書に記載される実施形態のいずれかを形成してもよい。例えば、
図7K~Lに示すように、応力緩和セクション294は、金属クーポン200の単層344(
図7K、7L)又は346(
図7L)内であってもよい。
【0079】
ある実施形態では、積層造形は、金属クーポン200における部品202の任意の様々な改良を形成することを含んでいてもよく、例えば、部品202に以前には存在しなかった構造を含むことができる。部品202は、改善が必要な元の部品である場合もあれば、取り外したもしくは損傷した部品を含む部品であってもよい。例えば、
図8Cに示すように、積層造形は、金属クーポン200に冷却通路320を形成することを適宜含んでいてもよい。冷却通路320は、金属クーポン200において、任意の方法で、例えば、その中の蛇行経路において、又は金属クーポン200の外部表面325を貫通して延在することができる。別の例では、
図7A~Dに示すように、積層造形は、金属クーポン200において、1以上の支持体及び/又は冷却構造324(例えば、ピン/フィン)(おそらく、その中に(図示しない)を備えた冷却通路を有する)を形成することを適宜含んでいてもよい。任意の有利な内部構造変更は、金属クーポン200で行うことができる。現在公知の又は将来開発される積層造形後の仕上げ加工は、金属クーポン200に対して適宜実施してもよい、例えば、その滑らかな表面への研磨加工などである。しかし、有利には、開示の教示は、部品202における金属クーポン200の特定の仕上げプロセス、例えば、それに限定されない:ピーニング、熱処理、及び熱間静水圧プレス(HIP)の必要性を排除することができる。
【0080】
金属クーポン200を用いた部品202の補修に関して、
図5、
図7A~L及び
図8A~8Fは、本開示の実施形態に係る方法を示している。
図8Aは、部品202の本体206にクーポン開口部204を作成する様子を示す。クーポン開口部204は、金属クーポン200を受け取るように構成されている。クーポン開口部204は、任意の形状を有していてもよい。特定のアプリケーションでは、クーポン開口部204は、部品202の本体206の損傷した部分を取り除くことによって作成されるが、クーポン開口部204は、部品202の元のバージョン、例えば、部品202の残りの部分で製造するのが困難な場所でもよい。図示の非限定的な例では、クーポン開口部204は、ノズル126の後縁184にある。
図8Aは、クーポン開口部204のモデルの作成も示している。モデル作成は、部品202の本体206に対するクーポン開口部204のデジタル化された表現をスキャンして作成するために、現在公知の又は将来開発される任意の3次元スキャナ(図示されていない、矢印を参照)を使用することを含んでいてもよい。部品のスキャン及びモデリングのプロセスは当技術分野でよく知られているため、読者が開示の顕著な側面に集中できるように、さらなる詳細は省略される。
【0081】
なお、
図5、
図7A、7C、7E、7G、7I及び7K~Lは、開示の実施形態に係る積層造形金属クーポン200を示している。
【0082】
図8B及び
図8Cは、部品202の本体206のクーポン開口部204における配置金属クーポン200を示している。金属クーポン200は、現在公知の又は将来開発される任意の方法で、例えば、ロボットアームを使用して、又は手動で、本体206のクーポン開口部204に配置することができる。必要に応じて、金属クーポン200は、任意の所望の方法、例えば、接着剤、クランプ、ニッケル-クロム鋲溶接、ボール鋲、抵抗溶接、融合鋲溶接などで所定の位置に保持することができる。
【0083】
図8D~Eは、ろう材310を用いて金属クーポン200を本体206のクーポン開口部204に結合する、すなわちろう付け処理を行う金属クーポン200の溶浸を示す。溶浸ステップはまた、多孔質領域又はそのサブセクション300が金属クーポン200の外面308に位置している応力緩和セクション294にろう材310を溶浸させる。例えば、応力緩和セクション294は、第1のセクション292内の第1のサブセクション326及び金属クーポン200の外面308に延在する第2のサブセクション312を含んでいてもよい。
図7F、7H及び
図7Jに示すように、ブレーズ材料310は、応力緩和セクション294の第1及び第2のサブセクション326、312に溶浸する。
図7Fに示すように、第1のセクション292が応力緩和セクション294で止まる亀裂340を含んでいるところでは、ろう材310が亀裂340に溶浸して、そのさらなる伝播を防止し、亀裂を安定させる。
【0084】
ろう材310は、現在公知の又は将来開発される任意のろう付け組成物(例えば、限定されるものではないが、GE(Alstom)B1P、Amdry(商標)D15、DF4B又はBRBなど)を含んでいてもよく、その組成の一部を、以下の表に他のろう材組成と共に示す。
【0085】
【0086】
溶浸は、現在公知の又は将来開発されるろう付けプロセス(例えば真空ろう付けシステム、誘導ろう付けシステム及び/又は不活性ガス雰囲気加熱システム及び関連技術の使用など)を含むことができる。ある非限定的な例では、ろう付けは、例えばろう材の塗工(
図8D)及び加熱(
図8E)を含んでいてもよく、毛細管現象によって金属クーポン200の内部及び周囲に流入させる。
【0087】
溶浸は、金属クーポン200の外面308上の任意の応力緩和セクション294に、他の領域の中でも特に、ろう材310を注入する。応力緩和セクション294の多孔質領域又はサブセクション300が金属クーポン200の外面308にある場合、多孔質領域又はサブセクション300は、少なくともそのポロシティの特性に基づいて溶浸を制御することもできる。
図7I~Jに示すように、多孔質領域又はサブセクション300A-B及び300Dの異なるポロシティ、及びおそらくその中の任意の可変多孔質領域又はサブセクション300C(
図7C~D)は、異なるろう材310の流れ及び溶浸をもたらす。ろう付けプロセスの結果として、多孔質領域又はサブセクション300A、300Bとその中のろう材310は、1以上の異なる物理的特性を有する。例えば、ろう材310が多いほど、接合部接着強度が強くなり、延性が高くなり、熱伝導性又は電気伝導率が高くなり、又は酸化抵抗が小さくなる可能性があり、ろう材310が少ないと、表面粗さが少なくなり、硬度が低くなり、接合部接着強度が低下し、延性が低くなり、熱伝導性又は電気伝導率が低くなり、又は酸化抵抗が低下する可能性がある。いずれにせよ、金属クーポン200の外面308における任意の異なる多孔質領域又はサブセクション300のろう材の量及びポロシティを制御することにより、最終製品の物理的特性を制御することができる。使用されるろう材310に応じて、他の要因の中でも、異なるポロシティは、部品202の1以上の物理的特性、例えば、継手接着強度、応力(ひずみ)緩和及び/又は抵抗、耐摩耗性、耐酸化性、熱伝導性、電気伝導率、表面粗さ、硬度、及び/又は質量のカスタマイズを可能にする。さらに、多孔質領域300を使用するろう材310のマルチフローパスは、従来の狭いギャップ充填ろう付けプロセスと比較して、また狭いギャップろう付けに必要な厳しい製造公差のために、ろう付け接合部に沿った充填及び/又は空隙の不足の可能性を減少させる可能性がある。したがって、部品202は、応力緩和セクション294及びその中の多孔質領域300を備えた金属クーポン200の使用にもかかわらず、少なくとも98%中実であり得る。
【0088】
ある実施形態では、異なるろう材310を金属クーポン200の異なる部分に使用し、部品202における金属クーポン200の結合及び部品202の領域の物理的特性のさらなるカスタマイズを提供する。例えば、
図9Cを参照すると、第1のろう材310Aは、部品202の第1の部品又は側面327に使用してもよく、別のろう材310Bと、第1のろう材310Aとは異なる、同じ側面327で使用してもよいし、別のろう材310Cと、両方のろう材310、310Bとは異なる、部品202の別の部品又は側面328に使用してもよい。一例では、
図3、
図4及び
図9Cを参照すると、部品202の第1の部品又は側面327は、翼150、176の第1(凹、圧力)側外壁152、178、及び部品202の第2又は側面328であってもよく、翼150、176の第2(凸、吸引)側外壁154、180であってもよい。異なるろう材310A、310Bは、異なる多孔質領域300に加えて、異なる部分又は側面327、328上で、それらの位置における部品202の予想される環境に合わせてカスタマイズすることができる。自明であろうが、様々な状況に対処するために可能なろう材及び/又は多孔質領域のバリエーションは計り知れません。
【0089】
図8Fは、部品202の任意の仕上げステップを例示するが、これらに限定されない、外面を平滑化し、余分なろう材を除去するための機械加工などを示している。上述したように、本開示の教訓は、積層造形後の材料に存在する残留応力に対処するために通常使用される他の仕上げ工程、例えば、ピーニング、熱処理、熱間静水圧プレス(HIP)の必要性を排除する可能性がある。
【0090】
本開示による方法の他の実施形態は、部品202を補修するための金属クーポン200を形成するだけを含んでいてもよい。この場合、
図8Aに示すように、方法は、部品202の本体206にクーポン開口部204のモデルを作成し、少なくともクーポン開口部204に密接に適合するように、例えば、クーポン開口部204のニアネット形状で金属クーポン200を積層造形することを含む。金属クーポン200は、
図7A~Lに関連して本明細書に記載される任意の形態をとることができる。
【0091】
図3、
図4及び
図9A~Cは、開示の実施形態に係る部品202の実施形態を示す。
図9A~Cは、部品202の本体206のクーポン開口部204上の金属クーポン200の拡大断面図を示している。
図9Aは、
図7Aの金属クーポン200を有する部品202を示し、
図9Bは、
図7Eの金属クーポン200を有する部品202を示し、
図9Cは、
図7I~Jの金属クーポン200を有する部品202を示す。
図9B中、クーポン200は、部品202の本体206内のU字状のクーポン開口部204内にある。上述の通り部品202は、本体206を含む。本体206は、部品202が使用される特定の産業用途のための任意の形態を有することができる。本明細書で用いる例では、本体206は、タービン回転ブレード132(
図3)又はタービン静止ノズル126(
図4)を含んでいてもよい。金属クーポン200は、例えば、
図3及び
図4のブレード132及びノズル126の翼150、176にそれぞれ示されているが、金属クーポン200は、部品202の本体206の任意の部分に存在し得る。積層造形(AM)金属クーポン200は、第1のセクション292及び応力緩和セクション294を含んでおり、
図7A~Lに関連して本明細書に記載されているものを含むが限定されない任意の形態をとることができる。本体206にクーポン開口部204に金属クーポン310が組まれている。
図9A~Bに示すように、ろう材310は、単に金属クーポン200を囲み、クーポン開口部204で結合してもよい。
図7F、7H、7J及び
図9Cに示すように、ろう材310は、金属クーポン200の外面308まで延在する多孔質領域又はそのサブセクション300を有する任意の応力緩和セクション294にも溶浸し得る。上述の通り異なる多孔質領域又はサブセクションのポロシティ、例えば、
図7J及び
図9Cの300A-B及び300Dは、以下の特性のうち1以上の点で異なっていてもよい:総体積に対する空洞空間体積の割合、細孔形状、細孔サイズ、細孔の数、又は細孔連結通路。本体206及び第1のセクション292は、応力緩和セクション294、すなわち多孔質領域又はサブセクション300のいずれとも異なるポロシティを有してもよい。より詳細には、本体206及び第1のセクション292は、任意の多孔質領域300よりも密度の高いポロシティを有してもよく、例えば、それらは100%中実であり得る。
【0092】
ろう材310は、少なくともそれぞれのポロシティの特性に基づいて応力緩和セクション294に溶浸する。ポロシティの「特性」とは、ポロシティが、ろう材容積、ポロシティ内のパターン、結晶化のような、様々な溶浸特性をもたらすことができることを示している。ただし、当技術分野で明らかなように、他の要因も、溶浸特性(ろう材の種類など)並びにろう付けプロセスの特性(温度、圧力、部品202の位置並びに/或いは金属クーポン200のフォーマット及び配置など)に影響を与え得る。異なるポロシティの結果は、金属クーポン200ろう材(単数又は複数可)310の外面308における異なる多孔質領域又はサブセクション300が、1以上の異なる物理的特性を有することである。ポロシティは、ポロシティがそれらの物理的特性に影響を与える可能性がある限り、それらの物理的特性を選択するようにカスタマイズできる。一例では、
図9Cに示すように、多孔質領域又はサブセクション300Aのポロシティは、多孔質領域又はサブセクション300Bのポロシティよりも高い(すなわち、密度が低い)場合がある。多孔質領域又はサブセクション300Bのポロシティは、多孔質領域又はサブセクション300Dのポロシティよりも高い(すなわち、密度が低い)場合がある。したがって、多孔質領域又はサブセクション300Aは、多孔質領域又はサブセクション300Bよりも多くのろう材310を内部に含んでいる。さらに、多孔質領域又はサブセクション300Bは、多孔質領域又はサブセクション300Dよりも多くのろう材310を含んでいてもよい。別の例では、多孔質領域又はサブセクション300A及び/又は300Dは、本体206に接合するために構成された金属クーポン200の縁308の少なくとも一部にある。多孔質領域又はサブセクション300Bは、多孔質領域又はサブセクション300Aに隣接していてもよい。この配置は、
図9Cに示すように、金属クーポン200の接合接着強度を強化するためにろう付け継手334の近くにより多くのろう材310を配置することが有利であり得、或いはろう付け継手334での酸化を少なくし、熱伝導性、引張強度、ろう付け継手334での延性、及び/又は疲労強度。いずれにせよ、応力緩和セクション294A~B及び294Dは、それらが位置する場所、例えば、近くの高応力域296(
図7I~J)で応力を緩和する。
本明細書に記載の物理的特性のいずれも、異なるポロシティ及び/又は異なるろう材に基づいてカスタマイズすることもできる。上述の通り、使用されるろう材310に応じて、ポロシティの差異によって、部品202の物理的特性(例えば、継手接着剤接着強度、応力(ひずみ)緩和及び/又は耐性、耐摩耗性、耐酸化性、熱伝導性、引張強さ、延性、疲労強度、電気伝導率、表面粗さ、硬度、及び/又は質量)をカスタマイズできるようにする。上述の通り、金属クーポン200は、部品202の本体206におけるクーポン開口部204のニアネット形状を有していてもよい。
図8Cに示すように、金属クーポン200は、その内部に冷却通路320を適宜含んでいてもよい。1以上の冷却通路が、金属クーポン200に画成され、金属クーポンの外面325を貫通していてもよい。
【0093】
本願では様々な応力緩和セクション294及び多孔質領域300について特定の位置を例示しているが、様々な多な応力緩和セクション294及び孔質領域は、種々の応力緩和及び/又ろう材溶浸特性及び関連する様々な物理的特性を部品202にもたらすため、どのように配置してもよい。
【0094】
本開示の実施形態は、
図1~
図2に示すタービンアセンブリ110を含むターボ機械100、並びに本明細書に記載の1以上の部品202を包含し得る。部品202は、タービン静止ノズル126、タービン回転ブレード132又はターボ機械100の他の部品の形態をとることができる。金属クーポン200は、新品部品或いは補修又は改良が必要とされる部品に使用することができる。
【0095】
本開示は、様々な技術的及び商業的利点をもたらすが、その例を説明する。部品の補修又は改良に関して、積層造形では、カスタムフィット形状の金属クーポンをコスト効率よく作成することができ、損傷材料だけを取り除けばよい。多孔質領域は特定の領域で母金属合金の割合を高める(例えば>60%)ことができ、例えば予備焼結プリフォームに比べて改善された物理的特性が得られることがある。多孔質領域は、従来のようにろう材で囲まれた金属粒子と比較して、ろう材充填が強化された溶接/溶融粒子マトリックス(例えば超合金金属母材)をもたらすこともできる。多孔質領域を用いるろう材用の複数の流れ経路は、従来の狭い隙間を埋めるろう付けプロセスと比較して、ろう付け継手に沿った充填不足及び/又は空所の発生のおそれを低減させることができる。多孔質領域は、金属クーポン全体で様々なポロシティで形成することができ、ろう材の流れ及び応力緩和を高度にカスタマイズすることができる。多孔質領域は、ろう材用の隙間がせまい機械加工中実クーポンと比較して、継手空隙寸法の大きなばらつきにも対応する。本開示の教示を利用した補修は、従来のナローギャップろう付けプロセスよりも強力であり、特定の補修後の仕上げを必要とせず、予備焼結プリフォーム(PSP)のような現行技術と比較して物理的特性が改善される。多孔質領域を有する応力緩和セクションは、かかるセクションのないクーポンと比較して、応力(ひずみ)緩和及び/又は耐性を向上させる。
【0096】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本的機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。少なくとも幾つかの事例では、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能である。かかる範囲は、前後関係等から別途明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。範囲の特定の値に用いられる「約」は、上下限に適用され、その値を測定する機器の精度に依存する場合を除いて、記載された数値の±10%を示すことがある。
【0097】
以下の特許請求の範囲において機能的記載によって特定された構成要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特許請求の範囲に具体的に記載された他の構成要素と組合せて機能を発揮するあらゆる構造、材料又は行為を包含する。本開示の記載は、例示及び説明を目的としたものであり、網羅的なものでもなければ、開示された形態に限定するものでもない。本開示の技術的範囲及び技術的思想から逸脱せずに、数多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示の実施形態は、本開示の原理及び実用的用途の説明として最も適しかつ当業者が様々な実施形態に関する開示内容及び特定の用途に適した様々な修正について理解できるように、選択して記載したものである。
【符号の説明】
【0098】
200 金属クーポン
202 部品
204 クーポン開口部
206 本体
290 積層造形(AM)金属部材
292 第1のセクション
294 第2の多孔質領域
310 ろう材
【外国語明細書】