(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025081242
(43)【公開日】2025-05-27
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250520BHJP
H01C 7/18 20060101ALI20250520BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01C7/18
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024188755
(22)【出願日】2024-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0158382
(32)【優先日】2023-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ホ サム
(72)【発明者】
【氏名】シム、ダエ ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヒョ スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、セウン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン ファ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジン ボク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョ スブ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ドン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD02
5E001AD03
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA12
5E070BB01
5E070CB13
5E070EA01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC35
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082PP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カバー部の緻密度を改善し、積層型電子部品の高温、耐湿環境下での耐劣化性を向上させる。
【解決手段】電子部品は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部と、外部電極131、132と、第1方向の上/下端面に配置されるカバー部112を有する本体110と、を含む。カバー部112は、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、そのチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は0.3モル以上6.0モル以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、
前記カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は0.3モル以上6.0モル以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は0モル超過5.0モル以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記容量形成部の誘電体層を第1誘電体層とするとき、前記カバー部は第2誘電体層を含み、
前記第1誘電体層の組成は、前記第2誘電体層の組成とは異なる、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、前記第1誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数より多い、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、前記第1誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数より多い、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記カバー部は、コア-シェル構造の結晶粒を含む複数の結晶粒、隣接する前記結晶粒の間に配置される結晶粒界、前記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点、及び二次相(secondary-phase)を含み、
前記カバー部に含まれたコア-シェル結晶粒のシェル部、結晶粒界、三重点、二次相のうち少なくとも一つは、リン(P)の含量が0.1at%未満である領域を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記カバー部はバリウム(Ba)をさらに含み、
前記カバー部に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)は、0.99≦A/B≦1.05を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記本体は、前記第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含み、
前記積層型電子部品は、前記第5面及び前記第6面に配置されるサイドマージン部をさらに含み、
前記カバー部は第2誘電体層を含み、前記サイドマージン部は第3誘電体層を含み、
前記第2誘電体層の組成は、前記第3誘電体層の組成とは異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、前記第3誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数より多い、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、前記第3誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数より多い、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに前記容量形成部の前記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記カバー部は、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、
前記カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は0モル超過5.0モル以下である、積層型電子部品。
【請求項12】
前記容量形成部の誘電体層を第1誘電体層とするとき、前記カバー部は第2誘電体層を含み、
前記第1誘電体層の組成は、前記第2誘電体層の組成とは異なる、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、前記第1誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数より多い、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、前記第1誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数より多い、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記カバー部は、コア-シェル構造の結晶粒を含む複数の結晶粒、隣接する前記結晶粒の間に配置される結晶粒界、前記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点、及び二次相(secondary-phase)を含み、
前記カバー部に含まれたコア-シェル結晶粒のシェル部、結晶粒界、三重点、二次相のうち少なくとも一つは、リン(P)の含量が0.1at%未満である領域を含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記カバー部はバリウム(Ba)をさらに含み、
前記カバー部に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)は、0.99≦A/B≦1.05を満たす、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記本体は、前記第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面、前記第2面、前記第3面及び前記第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含み、
前記積層型電子部品は、前記第5面及び前記第6面に配置されるサイドマージン部をさらに含み、
前記カバー部は第2誘電体層を含み、前記サイドマージン部は第3誘電体層を含み、
前記第2誘電体層の組成は、前記第3誘電体層の組成とは異なる、請求項11から16のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、前記第3誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数より多い、請求項17に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
前記第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、前記第3誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数より多い、請求項17に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化及び高出力化されるにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
小型化及び高容量化が進むにつれて、容量を形成する領域を保護する必要性が高まっているが、これについては、容量を形成する領域を囲むマージン領域を追加してこれを改善している。但し、小型化及び高容量化を達成するために構造的な設計を持続的に変更することにより、容量を形成する領域は大きくなり、容量を形成する領域を保護するマージン領域が減少することで、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性及び強度が脆弱になるという問題が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2017-0112381号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、カバー部の緻密度を改善させ、高温、耐湿環境下での耐劣化性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、耐湿信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0008】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向の両端面に配置されるカバー部を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記カバー部はチタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、上記カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は0.3モル以上6.0モル以下であることができる。
【0010】
本発明の他の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む容量形成部、並びに上記容量形成部の上記第1方向の両端面に配置されるカバーを含む本体と、上記本体上に配置された外部電極と、を含み、上記カバー部は、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、上記カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は0モル超過5.0モル以下であることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいくつかの効果の一つは、カバー部の緻密度が改善され、積層型電子部品の高温、耐湿環境下での耐劣化性を向上させることである。
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0013】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
【
図2】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものである。
【
図3】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図4】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図5】(a)は、比較例のカバー部の断面を透過電子顕微鏡(TEM)のHAADFモードで撮影したイメージであり、(b)は、(a)の領域においてEDS分析を行ってアルミニウム(Al)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)は、(a)の領域においてEDS分析を行ってケイ素(Si)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図6】(a)は、実施例のカバー部の断面を透過電子顕微鏡(TEM)のHAADFモードで撮影したイメージであり、(b)は、(a)の領域においてEDS分析を行ってアルミニウム(Al)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)は、(a)の領域においてEDS分析を行ってケイ素(Si)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(d)は、(a)の領域においてEDS分析を行ってガリウム(Ga)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図7】実施例のカバー部の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した後、EDS分析を行ってリン(P)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図8】(a)は比較例の耐湿信頼性評価グラフであり、(b)は実施例の耐湿信頼性評価グラフである。
【
図9】(a)は比較例の過酷条件下での信頼性(MTTF)評価グラフであり、(b)は実施例の過酷条件下での信頼性(MTTF)評価グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張することができ、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0016】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
図において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0018】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図4は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【0019】
以下、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層111と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む容量形成部Ac、並びに上記容量形成部Acの上記第1方向の両端面(end-surface)に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記カバー部112、113はチタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、上記カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は0.3モル以上6.0モル以下であることができる。
【0021】
本発明の他の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層111と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含む容量形成部Ac、並びに上記容量形成部Acの上記第1方向の両端面(end-surface)に配置されるカバー部112、113を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記カバー部112、113はチタン(Ti)、ガリウム(Ga)及びリン(P)を含み、上記カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は0モル超過5.0モル以下であることができる。
【0022】
以下では、本発明の様々な一実施形態についてより具体的に説明する。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。
【0024】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0025】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粒子の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0027】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0028】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粒子を含むことができ、セラミック粒子の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0029】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粒子に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0030】
なお、誘電体層111は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような誘電体物質を用いて形成することができるため、焼成後に誘電体微細構造を含むことができる。誘電体微細構造は、複数の結晶粒、上記隣接する結晶粒の間に配置される結晶粒界、及び上記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点を含むことができ、それぞれ複数個を含むことができる。
【0031】
本発明では、後述するカバー部112、113及びサイドマージン部114、115に含まれる誘電体層と区分するために、容量形成部Acに含まれた誘電体層111を第1誘電体層111と定義することができ、カバー部112、113に含まれた誘電体層を第2誘電体層と定義することができ、サイドマージン部114、115に含まれる誘電体層を第3誘電体層と定義することができる。
【0032】
本発明において、積層型電子部品100の各構成に含まれた元素の含量を測定するより具体的な方法の一例として、破壊工法の場合、走査電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectrometer、EDS)モード、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)のEDSモード、又は走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)のEDSモードを用いて成分を分析することができる。まず、焼結済みの本体又はサイドマージン部の断面(cross-section)のうち誘電体微細構造を含む領域において集束イオンビーム(Focused Ion Beam、FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料に対してキセノン(Xe)又はアルゴン(Ar)イオンミリング(ion milling)を用いて表面のダメージ層を除去し、その後SEM-EDS、TEM-EDS、又はSTEM-EDSを用いて得られたイメージにおいて測定しようとする各成分をマッピング(mapping)して定性/定量分析を行う。この場合、各成分の定性/定量分析グラフは、各元素の質量百分率(wt%)、原子百分率(at%)、又はモル百分率(mol%)に換算して表すこともできる。このとき、特定成分のモル数に対する他の特定成分のモル数を換算して表すことができる。
【0033】
さらに他の方法としては、チップを粉砕して誘電体微細構造が含まれた領域を選別し、このように選別された誘電体微細構造が含まれた部分を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて、誘電体微細構造が含まれた領域の成分を分析することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、容量形成部Acの第1誘電体層111はガリウム(Ga)又はリン(P)を含まなくてもよい。
【0035】
ここで、容量形成部Acの第1誘電体層111がガリウム(Ga)又はリン(P)を含まないとは、第1誘電体層111を焼成する前、誘電体スラリー(slurry)又は誘電体グリーンシートの状態でガリウム(Ga)又はリン(P)を含まないことを意味することができ、又は容量形成部Acの中央部領域に位置する第1誘電体層111がガリウム(Ga)又はリン(P)を含まないことを意味することができる。
【0036】
すなわち、後述するカバー部112、113の第2誘電体層に含まれたガリウム(Ga)又はリン(P)が高温熱処理などの焼成過程が進むにつれて、容量形成部Acのうちカバー部112、113に隣接する容量形成部Acの第1誘電体層111の領域にガリウム(Ga)又はリン(P)が拡散する場合もできるが、容量形成部Acの中央部領域に位置する第1誘電体層111では、ガリウム(Ga)又はリン(P)が検出されない場合があることを意味することができる。
【0037】
例えば、本体110の第3方向の中心において第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を基準として、第1方向及び第2方向の中心部に位置する10μm×10μm領域を走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)のEDSモードで観察したとき、当該領域においてガリウム(Ga)又はリン(P)が検出されないか、又はガリウム(Ga)が0.5at%未満、リン(P)が0.1at%未満で検出されることを意味することができる。
【0038】
第1誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0039】
積層型電子部品100の高電圧環境下での信頼性を確保するために、第1誘電体層111の厚さは10.0μm以下とすることができる。また、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するために、第1誘電体層111の厚さは3.0μm以下であってもよく、超小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1誘電体層111の厚さは1.0μm以下であってもよく、好ましくは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0040】
ここで、第1誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される第1誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0041】
一方、第1誘電体層111の厚さtdは、第1誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、第1誘電体層111の厚さtdは、第1誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、第1誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0042】
第1誘電体層111の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの第1誘電体層111の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの第1誘電体層111を第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔である10個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の第1誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、第1誘電体層111の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0043】
内部電極121、122は第1誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0044】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は本体110を構成する第1誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0045】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0046】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された第1誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
【0047】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0048】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0049】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0051】
積層型電子部品100の高電圧環境下での信頼性を確保するために、内部電極121、122の厚さteは3.0μm以下とすることができる。また、積層型電子部品100の小型化及び高容量化を達成するために、内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であってもよく、超小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0052】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0053】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極を第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔である10個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0054】
一方、本発明の一実施形態において、複数の第1誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さtd、及び複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さteは、2×te<tdを満たすことができる。
【0055】
言い換えれば、第1誘電体層111の一つの平均厚さtdは、内部電極121、122の一つの平均厚さteの2倍よりさらに大きくてもよい。好ましくは、複数の第1誘電体層111の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりさらに大きくてもよい。
【0056】
一般に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(Breakdown Voltage、BDV)の低下による信頼性の問題が主なイシューである。
【0057】
したがって、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防止するために、第1誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0058】
第1誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄くなり、絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0059】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0060】
具体的に、容量形成部Acの第1方向の一面に配置される第1カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の他面に配置される第2カバー部113を含むことができる。より具体的には、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0061】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の第2誘電体層又は2つ以上の第2誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができる。
【0062】
上述したように、本発明においてカバー部112、113に含まれた誘電体層を第2誘電体層と定義することができる。
【0063】
カバー部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0064】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、第1誘電体層111と同じセラミック材料を含むことができる。
【0065】
すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113は誘電体物質を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系誘電体物質を含むことができる。また、第2誘電体層を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粒子に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0066】
そして、カバー部112、113に含まれた第2誘電体層は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような誘電体物質を用いて形成することができるため、焼成後に誘電体微細構造を含むことができる。誘電体微細構造は、複数の結晶粒、上記隣接する結晶粒の間に配置される結晶粒界、及び上記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点を含むことができ、それぞれ複数個を含むことができる。また、第2誘電体層は、結晶粒に固溶していない二次相(secondary-phase)を含むことができる。
【0067】
一方、カバー部112、113はガリウム(Ga)を含むことができる。
【0068】
より具体的に、カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、0.3モル以上6.0モル以下であることができる。
【0069】
カバー部112、113がガリウム(Ga)を含むことにより、焼成温度を低下させて気孔(pore)数が減少でき、これによりカバー部112、113の緻密度が向上し、耐湿信頼性を改善することができる。また、外部からの衝撃を受けても、クラック(crack)の生成を抑制することができ、機械的特性が向上できる。
【0070】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数が0.3モル以上6.0モル以下を満たすことにより、カバー部112、113の焼成温度を低下させて気孔(pore)数を減少させることができ、これにより、カバー部112、113の緻密度が向上し、耐湿信頼性が向上できる。また、外部からの衝撃を受けても、クラック(crack)の生成を抑制することができ、機械的特性が向上できる。
【0071】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数が0.3モル未満の場合、結晶粒の粒成長により粒界抵抗が劣化し、信頼性が低下するおそれがあり、さらに、気孔の除去が十分でないため、耐湿信頼性が低下するおそれがある。
【0072】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数が6.0モルを超える場合、ガリウム(Ga)の過剰添加により誘電体スラリー(slurry)の状態での分散性が低下して凝集物が発生することがあり、これにより、絶縁破壊電圧(BDV)が低下したり、結晶粒の粒成長が過度に抑制され、緻密度が低下する可能性があり、これにより耐湿信頼性が低下するという負の効果が発生するおそれがある。
【0073】
また、カバー部112、113はリン(P)を含むことができる。
【0074】
より具体的に、カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は0モル超過5.0モル以下であってもよく、好ましい上限値は3.0モル以下、又は1.0モル以下であってもよく、より好ましくは0.5モル以下であってもよい。
【0075】
カバー部112、113がリンPを含むことにより、気孔の数が減少でき、これによりカバー部112、113の緻密度が向上し、耐湿信頼性が改善されることができる。また、外部からの衝撃を受けてもクラック(crack)の生成を抑制することができ、機械的特性が向上できる。
【0076】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数が0モル超過5.0モル以下を満たすことにより、気孔の数を減少させることができ、これによりカバー部112、113の緻密度が向上し、耐湿信頼性が向上できる。
【0077】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数が5.0モル以上である場合、結晶粒の粒成長が過度に抑制され、絶縁破壊電圧(BDV)等の電気的特性が低下するおそれがある。
【0078】
また、上述したように、カバー部112、113は、コア-シェル構造の結晶粒を含む複数の結晶粒、上記隣接する結晶粒の間に配置される結晶粒界、上記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点、及び二次相(secondary-phase)を含むことができ、カバー部112、113に含まれたコア-シェル結晶粒のシェル部、結晶粒界、三重点、二次相のうち少なくとも一つはリン(P)の含量が0.1at%未満である領域を含むことができる。
【0079】
これは、リン(P)が凝集せず均一に分散したことを意味することができる。
【0080】
本発明の一実施形態において、カバー部112、113は、ガリウム(Ga)及びリン(P)の両方を含むことが好ましい。このとき、カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は0.3モル以上6.0モル以下であり、カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は0モル超過5.0モル以下であることが好ましいと言えるが、特にこれに限定されるものではない。
【0081】
また、カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)は、0.99≦A/B≦1.05を満たすことができる。
【0082】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)が、0.99≦A/B≦1.05を満たすことにより、結晶粒の均一な粒成長を誘導し、誘電体微細構造の緻密度が改善され、耐湿信頼性を含む信頼性が向上できる。
【0083】
カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)が0.99未満の場合(A/B<0.99)、結晶粒の不均一な粒成長が発生して絶縁破壊電圧(BDV)等の電気的特性が低下するおそれがあり、カバー部112、113に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)が1.05超過の場合(1.05<A/B)、誘電体微細構造の緻密度及び結晶粒の粒成長を阻害して絶縁破壊電圧(BDV)等の電気的特性が低下するおそれがある。
【0084】
一方、カバー部112、113がガリウム(Ga)及びリン(P)のうち少なくとも一つを含むことにより、カバー部112、113に含まれた第2誘電体層の組成は容量形成部Acに含まれた第1誘電体層の組成とは異なることができる。
【0085】
言い換えれば、第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、第1誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数より多くてもよい。
【0086】
また、第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、第1誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数より多くてもよい。
【0087】
本発明の一実施形態において、カバー部112、113の結晶粒界は、ガリウム(Ga)の原子百分率(at%)が2.0at%以上である領域を含むことができ、上限値は特に限定されるものではないが、例えば、4.0at%以下であることができる。
【0088】
カバー部112、113の結晶粒界は、ガリウム(Ga)の原子百分率(at%)が2.0at%以上である領域を含むことにより、焼成温度を低下させて気孔(pore)数を減少させることができ、これによりカバー部112、113の緻密度が向上して耐湿信頼性が向上できる。また、外部からの衝撃を受けてもクラック(crack)の生成を抑制することができ、機械的特性が向上できる。
【0089】
また、カバー部112、113の結晶粒界に含まれたガリウム(Ga)の平均原子百分率(at%)は、0.5at%以上2.0at%以下であることができる。
【0090】
カバー部112、113の結晶粒界に含まれたガリウム(Ga)の平均原子百分率(at%)が0.5at%以上2.0at%以下を満たすことにより、焼成温度を低下させて気孔(pore)数を減少させることができ、これにより、カバー部112、113の緻密度が向上し、耐湿信頼性が向上できる。また、外部からの衝撃を受けてもクラック(crack)の生成を抑制することができ、機械的特性が向上できる。
【0091】
ここで、カバー部112、113の結晶粒界に含まれたガリウム(Ga)の原子百分率(at%)を測定する方法は、特に限定されるものではないが、上述したようにEDS分析方法を用いることができる。EDS分析位置は、結晶粒界の地点(points)を測定して確認するか、又は隣接する結晶粒の間に配置される結晶粒界の実質的な線形状に対して垂直な方向に引いた線の成分を分析する方法であるラインプロファイル(line-profile)を用いて求めることができ、測定されたラインプロファイルでガリウム(Ga)の原子百分率(at%)を確認することができる。
【0092】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0093】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0094】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味し、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0095】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔である10個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0096】
なお、上述した方法で測定したカバー部の第1方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)において、カバー部の第1方向の平均サイズと実質的に同じサイズを有することができる。
【0097】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0098】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0099】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0100】
より詳細には、サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の第3誘電体層又は2つ以上の第3誘電体層を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0101】
上述したように、本発明においてサイドマージン部114、115に含まれた誘電体層を第3誘電体層と定義することができる。
【0102】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0103】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、第1誘電体層111と同じセラミック材料を含むことができる。
【0104】
すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は誘電体物質を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系誘電体物質を含むことができる。また、第3誘電体層を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粒子に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0105】
そして、サイドマージン部114、115に含まれた第3誘電体層は、チタン酸バリウム(BaTiO3)のような誘電体物質を用いて形成することができるため、焼成後に誘電体微細構造を含むことができる。誘電体微細構造は、複数の結晶粒、上記隣接する結晶粒の間に配置される結晶粒界、及び上記結晶粒界が3つ以上接する地点に配置される三重点を含むことができ、それぞれ複数個を含むことができる。
【0106】
但し、第3誘電体層の組成は第2誘電体層組成と異なってもよく、例えば、サイドマージン部114、115に含まれた第3誘電体層はガリウム(Ga)又はリン(P)を含まなくてもよい。
【0107】
したがって、カバー部112、113に含まれた第2誘電体層の組成は、サイドマージン部114、115に含まれた第3誘電体層の組成と異なることができる。
【0108】
言い換えれば、第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数は、第3誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数より多くてもよい。
【0109】
また、第2誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、第3誘電体層に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数より多くてもよい。
【0110】
ここで、サイドマージン部114、115の第3誘電体層がガリウム(Ga)又はリン(P)を含まないとは、第3誘電体層を焼成する前、誘電体スラリー(slurry)又は誘電体グリーンシートの状態でガリウム(Ga)又はリン(P)を含まないことを意味することができ、又はサイドマージン部114、115の中央部領域に位置する第3誘電体層がガリウム(Ga)又はリン(P)を含まないことを意味することができる。
【0111】
すなわち、上述したカバー部112、113の第2誘電体層に含まれたガリウム(Ga)又はリン(P)は、高温熱処理などの焼成過程が進むにつれて、サイドマージン部114、115のうちカバー部112、113に隣接するサイドマージン部114、115の第3誘電体層の領域にガリウム(Ga)又はリン(P)が拡散することもできるが、サイドマージン部114、115の中央部領域に位置する第3誘電体層では、ガリウム(Ga)又はリン(P)が検出されない場合があることを意味することができる。
【0112】
例えば、積層型電子部品100の第2方向の中心において第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、サイドマージン部114、115の第1方向及び第3方向の中心部に位置する5μm×5μm領域を走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)のエネルギー分散X線分光法(EDS)モードで観察したとき、当該領域からガリウム(Ga)又はリン(P)が検出されないか、又はガリウム(Ga)が0.5at%未満、リン(P)が0.1at%未満で検出されることを意味することができる。
【0113】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0114】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、サイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0115】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味し、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0116】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔である10個の地点で第3方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0117】
本発明の一実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0118】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0119】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0120】
また、外部電極131、132は、本体110の第1面1及び第2面2上の一部に延びて配置されることができ、又は本体110の第5面5及び第6面6上の一部に延びて配置されることができる。すなわち、第1外部電極131は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができ、第2外部電極132は、本体110の第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上の一部、及び本体110の第3面3上に配置されることができる。
【0121】
一方、外部電極131、132は、金属などのように、電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに多層構造を有してもよい。
【0122】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層及び電極層上に配置されるめっき層を含むことができる。
【0123】
電極層に対するより具体的な例として、電極層は、第1導電性金属及びガラスを含む焼成電極である第1電極層131a、132aを含むか、又は第2導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極である第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0124】
ここで、第1電極層131a、132aに含まれた導電性金属を第1導電性金属ということができ、第2電極層131b、132bに含まれた導電性金属を第2導電性金属ということができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は互いに同一又は異なることができ、複数の導電性金属を含む場合、一部のみが同じ導電性金属を含むこともできるが、特にこれに限定されるものではない。
【0125】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。
【0126】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、又は焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0127】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属はニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれに限定されない。
【0128】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層の構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、第1導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a、並びに上記第1電極層131a、132a上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0129】
第1電極層131a、132aはガラスを含むことにより、本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより、曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0130】
第1電極層131a、132aに含まれる第1導電性金属は、静電容量形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0131】
第1電極層131a、132aは、第1導電性金属粒子にガラスフリット(glass frit)を添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0132】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0133】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0134】
第2電極層131b、132bに含まれる第2導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、第2導電性金属はフレーク状粒子のみからなるか、又は球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であることもできる。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たくかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、積層型電子部品の第3方向の中央部で切断した第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0135】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たすことができる。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は接合性及び衝撃吸収性を有し、第2導電性金属粒子と混合してペーストを作製できるものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0136】
また、第2電極層131b、132bは、複数の第2導電性金属粒子、金属間化合物(intermetallic compound)及び樹脂を含むことができる。金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0137】
このとき、金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0138】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを金属間化合物として含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らせ、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAg3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
【0139】
したがって、上記複数の第2導電性金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5及びCu3Snのうち一つ以上を含むことができる。
【0140】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0141】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0142】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例として、めっき層131c、132cは、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0143】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0144】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)サイズ以下の積層型電子部品100において本発明による効果がより顕著になり得る。
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0146】
(試験例)
比較例1は、カバー部及びサイドマージン部を含む積層型電子部品として作製し、カバー部及びサイドマージン部にガリウム(Ga)及びリン(P)が添加されていない積層型電子部品として作製し、チップ(chip)を設けた。
【0147】
実施例1は、カバー部にチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数を0.3モル以上6.0モル以下にして添加し、チタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数は、0モル超過5.0モル以下にして添加した積層型電子部品として作製してチップ(chip)を設けた。これを除いては、比較例1と同様の方法でチップ(chip)を作製した。
【0148】
図5の(a)は、比較例1の上部カバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を透過電子顕微鏡(TEM)の高角環状暗視野(High-Angle Annular Dark-Field、HAADF)モードで撮影したイメージであり、
図5の(b)は、
図5の(a)の領域においてEDS分析を行ってアルミニウム(Al)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図5の(c)は、
図5の(a)の領域においてEDS分析を行ってケイ素(Si)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【0149】
図6の(a)は、実施例1の上部カバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を透過電子顕微鏡(TEM)のHAADFモードで撮影したイメージであり、
図6の(b)は、
図6の(a)の領域においてEDS分析を行ってアルミニウム(Al)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図6の(c)は、
図6の(a)の領域においてEDS分析を行ってケイ素(Si)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図6の(d)は、
図6の(a)の領域においてEDS分析を行ってガリウム(Ga)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【0150】
図7は、
図6の(a)とは異なる領域に相当し、実施例1の上部カバー部の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した後、EDS分析を行ってリン(P)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【0151】
比較例1及び実施例1から、カバー部にガリウム(Ga)が含まれた場合、コア-シェル結晶粒のシェル部、結晶粒の内部、結晶粒界及び三重点にガリウム(Ga)が配置されることが確認でき、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)が検出される領域にガリウム(Ga)が共に検出されることから、ケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)を含む二次相(secondary-phase)にガリウム(Ga)が配置されることが分かる。
【0152】
また、カバー部112、113にリン(P)が含まれた場合、コア-シェル結晶粒のシェル部、結晶粒の内部、結晶粒界、及び三重点にリン(P)が配置されることができ、二次相(secondary-phase)と予測されるリン(P)が一定の領域を有する凝集体として観察されたことからみて、二次相(secondary-phase)にリン(P)が配置されることが分かる。
【0153】
次に、比較例2及び比較例3は、比較例1と同じ条件でチップをそれぞれ28個ずつ作製し、実施例2及び実施例3は、実施例1と同じ条件でチップを28個ずつ作製した。
【0154】
比較例2及び実施例2については耐湿信頼性評価を行い、比較例3及び実施例3については過酷条件下での信頼性評価である高速寿命評価(Highly Accelerated Life Test、HALT)を行った。
【0155】
図8の(a)は比較例2の耐湿信頼性評価グラフであり、
図8の(b)は実施例2の耐湿信頼性評価グラフである。
【0156】
耐湿信頼性評価は、温度条件85℃、相対湿度条件85%で、定格電圧1.5Vrを26時間印加したとき、短絡(short)が発生したチップを不良と評価した。
【0157】
図9の(a)は比較例3の過酷条件下での信頼性評価グラフであり、
図9の(b)は実施例3の過酷条件下での信頼性評価グラフである。
【0158】
HALT評価は、温度条件125℃で定格電圧1.5Vrを30時間印加したとき、短絡(short)が発生したチップを不良と評価し、短絡(short)が発生した時間を平均して平均故障時間(MTTF)を求めた。
【0159】
比較例2の場合、28個の全てのチップに対して短絡(short)が発生したのに対し、実施例2の場合、28個のチップのうち8個のチップに対して短絡(short)が発生した。
【0160】
次に、比較例3の場合、平均故障時間(MTTF)は1.6時間であったのに対し、実施例3の場合、平均故障時間(MTTF)は16.6時間であり、比較例3に比べて約10.4倍程度の寿命が増加した。
【0161】
これにより、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数が0.3モル以上6.0モル以下であり、チタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数が0モル超過5.0モル以下である場合、耐湿信頼性及び平均故障時間(MTTF)が改善されることが分かる。
【0162】
次に、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)及びリン(P)の含量を異ならせて下記の[表1]に記載し、各試験例に係るスラリー分散度、結晶粒サイズ、気孔率、耐湿信頼性、及びHALT評価時の平均故障時間(MTTF)を測定し、下記の[表2]に記載した。
【0163】
表1のGaは、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウムのモル数に相当し、Pは、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリンのモル数に相当する。スラリー分散度は、誘電体スラリー(slurry)の状態で凝集体が発生した場合を「X」と記載し、凝集体が発生しなかった場合を「O」と記載した。
【0164】
表2の結晶粒サイズは、カバー部の第1方向及び第3方向の断面の10μm×10μm領域に含まれた結晶粒の平均サイズを記載したものである。気孔率(porosity、%)は、カバー部の第1方向及び第3方向の断面の15μm×15μmの面積に対する気孔の面積をプログラムにより算出した後、これを百分率(%)で表したものである。耐湿信頼性は、各試験例別に28個のチップを作製した後、温度条件85℃、相対湿度条件85%で、定格電圧1.5Vrを26時間印加したとき、短絡(short)が発生したチップの個数をカウントして記載したものである。MTTFは、各試験例別に28個のチップを作製した後、温度条件125℃で定格電圧1.5Vrを30時間印加するHALT評価を行ったものであり、このとき、短絡(short)が発生したチップの時間を平均してMTTFを求め、これを記載したものである。
【0165】
【0166】
【0167】
カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)が0.3モル以上6.0モル以下を満たす場合、誘電体スラリーの凝集が発生せず、耐湿信頼性及び平均故障時間(MTTF)が改善されることが分かる。
【0168】
また、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)が0.3モル以上6.0モル以下であり、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するリン(P)が0モル超過5.0モル以下である場合、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)が0.3モル以上6.0モル以下であり、リン(P)を含まない場合に比べて、概して気孔率(%)及び耐湿信頼性がさらに向上することがわかる。
【0169】
これにより、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数が0.3モル以上6.0モル以下であり、チタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数が0モル超過5.0モル以下である場合、耐湿信頼性及び平均故障時間(MTTF)が改善されることが分かる。
【0170】
次に、カバー部に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)を異ならせた場合において、誘電体微細構造の緻密度の程度を評価し、絶縁破壊電圧(BDV)を測定して、下記の[表3]に記載した。
【0171】
表3の試験例は、A/Bの比率を異ならせたことを除いては、カバー部に含まれたチタン(Ti)100モルに対するガリウム(Ga)のモル数が0.3モル以上6.0モル以下であり、チタン(Ti)100モルに対するリン(P)のモル数が0モル超過5.0モル以下を満たすようにチップ(chip)を作製した。
【0172】
表3のA/Bは、カバー部に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)を意味する。
【0173】
緻密度は、チップ(chip)のカバー部を含む第1方向及び第2方向の断面(cross-section)において、カバー部の気孔率(%)を走査電子顕微鏡(SEM)で観察してイメージを撮影した後、気孔算出プログラムを用いて求めた。気孔率(%)が0.30%以下の場合は良好と評価して「O」と記載し、気孔率(%)が0.30%超過の場合は不良と評価して「X」と記載した。
【0174】
BDVはKeithley社の装備で20mAの電流を0.17秒間隔で1Vずつ上昇させながら電圧を上げたとき、短絡(short)が発生する電圧(V)を測定したものである。
【0175】
【0176】
試験例16~試験例22から、カバー部に含まれたチタン(Ti)のモル数(B)に対するバリウム(Ba)のモル数(A)の比率(A/B)が0.99以上1.05以下を満たすことにより緻密度が改善され、絶縁破壊電圧(BDV)に優れることが分かる。
【0177】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0178】
また、本発明において使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0179】
本発明において使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0180】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極