(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008128
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】放電検出回路
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20250109BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110032
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 龍平
(72)【発明者】
【氏名】門井 涼
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA27
2G015BA04
2G015CA01
2G015CA20
(57)【要約】
【課題】電子部品で発生する部分放電を低コストで検出する。
【解決手段】放電検出回路は、第1及び第2の昇圧回路を有し、前記第1の昇圧回路は、入力端子と接続された第1の容量素子と、アノードが前記第1の容量素子と接続され、カソードに第1の基準電圧が印加された第1の整流素子と、前記第1の整流素子のカソードと接続された第2の容量素子と、アノードが前記第2の容量素子と接続され、カソードが前記第1の容量素子と接続された第2の整流素子とを備え、前記第2の昇圧回路は、前記入力端子と接続された第3の容量素子と、アノードに第2の基準電圧が印加され、カソードが前記第3の容量素子と接続された第3の整流素子と、前記第3の整流素子のアノードと接続された第4の容量素子と、アノードが前記第3の容量素子と接続され、カソードが前記第4の容量素子と接続された第4の整流素子とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を構成する電子部品の電圧が入力される入力端子と、前記電圧を昇圧した第1の昇圧電圧を出力する第1の昇圧回路と、前記電圧を昇圧した第2の昇圧電圧を出力する第2の昇圧回路とを有し、
前記第1の昇圧回路は、
一端が前記入力端子と電気的に接続された第1の容量素子と、
アノードが前記第1の容量素子の他端と電気的に接続され、かつカソードに第1の基準電圧が印加された第1の整流素子と、
一端が前記第1の整流素子のカソードと電気的に接続された第2の容量素子と、
アノードが前記第2の容量素子の他端と電気的に接続され、かつカソードが前記第1の容量素子の前記他端と電気的に接続されて、前記アノードの電圧が前記第1の昇圧電圧となる第2の整流素子とを備え、
前記第2の昇圧回路は、
一端が前記入力端子と電気的に接続された第3の容量素子と、
アノードに第2の基準電圧が印加され、かつカソードが前記第3の容量素子の他端と電気的に接続された第3の整流素子と、
一端が前記第3の整流素子のアノードと電気的に接続された第4の容量素子と、
アノードが前記第3の容量素子の前記他端と電気的に接続され、かつカソードが前記第4の容量素子の他端と電気的に接続されて、前記カソードの電圧が前記第2の昇圧電圧となる第4の整流素子とを備えた、
放電検出回路。
【請求項2】
請求項1に記載の放電検出回路であって、
前記第1の昇圧回路と前記第2の昇圧回路の各々に接続され、前記第1の昇圧電圧と前記第2の昇圧電圧の中間の中間電圧を出力電圧として出力する中間電圧生成回路を更に有する、
放電検出回路。
【請求項3】
請求項2に記載の放電検出回路であって、
前記中間電圧生成回路は、
一端に前記第1の昇圧電圧が入力される第1の抵抗素子と、
一端に前記第2の昇圧電圧が入力され、他端が前記第1の抵抗素子の他端と電気的に接続された第2の抵抗素子とを有し、
前記中間電圧は、前記第1の抵抗素子と前記第2の抵抗素子との接続点における電圧である、
放電検出回路。
【請求項4】
請求項2に記載の放電検出回路であって、
前記出力電圧に基づいて、前記電子部品の残存寿命を推定する判定回路を更に有する、
放電検出回路。
【請求項5】
請求項1に記載の放電検出回路であって、
前記第1の昇圧電圧をデジタル化した第1のデジタル値を出力する第1のアナログ・デジタル変換器と、
前記第2の昇圧電圧をデジタル化した第2のデジタル値を出力する第2のアナログ・デジタル変換器と、
前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値に基づき、前記第1の昇圧電圧と前記第2の昇圧電圧の中間の中間電圧を算出し、前記中間電圧を示す出力信号を出力する演算回路とを更に有する、
放電検出回路。
【請求項6】
請求項1に記載の放電検出回路であって、
前記第1の昇圧電圧と前記第2の昇圧電圧に基づいて、前記電子部品の残存寿命を推定する判定回路を更に有する、
放電検出回路。
【請求項7】
請求項6に記載の放電検出回路であって、
前記判定回路は、前記第1の昇圧電圧の大きさが第1の閾値電圧を超えた場合、又は前記第2の昇圧電圧の大きさが第2の閾値電圧を超えた場合に、前記電子部品の寿命が到来したと判定する、
放電検出回路。
【請求項8】
請求項7に記載の放電検出回路であって、
前記第1の昇圧電圧の大きさと第1の閾値電圧との比較結果を示す第1の比較信号を出力する第1の比較器と、
前記第2の昇圧電圧の大きさと第2の閾値電圧との比較結果を示す第2の比較信号を出力する第2の比較器とを更に有し、
前記判定回路は、前記第1の比較信号と前記第2の比較信号に基づいて、前記電子部品の寿命が到来したかを判定する、
放電検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会が推進される中で、電子機器に用いられる電子部品を再利用する需要が高まりつつある。ただし、これまでは製造者が電子部品の耐用年数を設定し、その耐用年数の範囲内で電子部品を使用することが行われており、電子部品の再利用については考慮されていなかった。
【0003】
長期にわたって電子部品を使用し続けると、電子部品中の絶縁体が絶縁破壊されて寿命を迎える。絶縁体の残存寿命を予測できれば電子部品の残りの耐用年数を推定でき、その耐用年数の範囲内で当該電子部品を他の電子機器等において再利用することができる。
【0004】
絶縁体が絶縁破壊に至る前には部分放電と呼ばれる微小な放電が生じる。その部分放電で放出された電荷量を算出できれば、その電荷量に基づいて絶縁体の残存寿命を推定することができる。例えば、特許文献1では、電子部品の信号に対して離散フーリエ変換を行い、そのフーリエ係数に基づいて部分放電を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2016/094344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、電子部品の信号を取得するためのモニタ回路が必要となり、更にそのモニタ回路において離散フーリエ変換を行うために回路が高コストとなるため現実的ではない。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、電子部品で発生する部分放電を低コストで検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る放電検出回路は、電子機器を構成する電子部品の電圧が入力される入力端子と、前記電圧を昇圧した第1の昇圧電圧を出力する第1の昇圧回路と、前記電圧を昇圧した第2の昇圧電圧を出力する第2の昇圧回路とを有し、前記第1の昇圧回路は、一端が前記入力端子と電気的に接続された第1の容量素子と、アノードが前記第1の容量素子の他端と電気的に接続され、かつカソードに第1の基準電圧が印加された第1の整流素子と、一端が前記第1の整流素子のカソードと電気的に接続された第2の容量素子と、アノードが前記第2の容量素子の他端と電気的に接続され、かつカソードが前記第1の容量素子の前記他端と電気的に接続されて、前記アノードの電圧が前記第1の昇圧電圧となる第2の整流素子とを備え、前記第2の昇圧回路は、一端が前記入力端子と電気的に接続された第3の容量素子と、アノードに第2の基準電圧が印加され、かつカソードが前記第3の容量素子の他端と電気的に接続された第3の整流素子と、一端が前記第3の整流素子のアノードと電気的に接続された第4の容量素子と、アノードが前記第3の容量素子の前記他端と電気的に接続され、かつカソードが前記第4の容量素子の他端と電気的に接続されて、前記カソードの電圧が前記第2の昇圧電圧となる第4の整流素子とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子部品で発生する部分放電を低コストで検出できる。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態において部分放電の検出対象となる電子機器の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る放電検出回路の構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る直流除去フィルタと昇圧回路の回路図の一例である。
【
図4A】
図4Aは、部分放電に起因した正のパルス電圧が重畳した入力電圧の波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示す入力電圧が入力されたときの第1の昇圧電圧の波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5A】
図5Aは、部分放電に起因した負のパルス電圧が重畳した入力電圧の波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す入力電圧が入力されたときの第2の昇圧電圧の波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る昇圧回路と判定回路の回路図の一例である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る昇圧回路と判定回路の回路図の一例である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係る昇圧回路と判定回路の回路図の一例である。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る放電検出回路の構成例を示す模式図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は適宜省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含む。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態において部分放電の検出対象となる電子機器の一例を示す模式図である。
【0014】
この例では、電子機器2は、直流高電圧源3、ケーブル4、及び負荷5を備える。負荷5は、例えばモータ等であり、直流高電圧源3からケーブル4を介して供給される直流電圧で駆動する。
【0015】
ケーブル4は、電子部品の一例であって、例えば絶縁樹脂(不図示)で被覆された銅線である。絶縁樹脂が絶縁破壊によって寿命を迎える前には、絶縁樹脂からパルス状の部分放電が繰り返し発生する。その部分放電を検出することで、ケーブル4が寿命を迎えたかどうかを判定することができる。
【0016】
この例では、部分放電を検出するための放電検出回路1をケーブル4の銅線に接続し、放電検出回路1で部分放電を検出する。なお、部分放電の検出対象はケーブル4に限定されず、例えば回路基板の層間絶縁層から生じる部分放電を検出してもよい。
【0017】
図2は、本実施形態に係る放電検出回路1の構成例を示す模式図である。放電検出回路1は、絶縁樹脂等の検出対象で生じたパルス状の電圧を入力電圧とする回路であって、直流除去フィルタ11、昇圧回路12、ADC(Analog Digital Converter)13、及び判定回路14を備える。
【0018】
直流除去フィルタ11は、入力電圧から直流成分をカットするハイパスフィルタである。
【0019】
昇圧回路12は、直流成分がカットされた入力電圧を昇圧して、その昇圧電圧を出力する回路である。
【0020】
ADC13は、昇圧回路12から出力された昇圧電圧をデジタル値に変換するアナログ・デジタル変換器である。
【0021】
判定回路14は、昇圧電圧のデジタル値に基づいて、ケーブル4の残存寿命を推定するデジタル回路である。
【0022】
図3は、本実施形態に係る直流除去フィルタ11と昇圧回路12の回路図の一例である。
【0023】
図3に示すように、直流除去フィルタ11は、キャパシタC
Hと抵抗素子R
Hとを備えた高帯域通過フィルタ(HPF: High-Pass Filter)である。キャパシタC
Hの一端には入力電圧V
inが印加され、他端には抵抗素子R
Hが接続される。入力電圧V
inは、電子部品の電圧であって、ケーブル4の場合は銅線の電圧である。絶縁樹脂が絶縁破壊される場合、その予兆として部分放電が発生し、部分放電に伴うパルス電圧が入力電圧V
inに重畳する。また、抵抗素子R
Hの一端は、例えば接地電圧等の基準電圧G
Hが印加される。これにより、入力電圧V
inから直流成分が除去されて、部分放電に伴うパルス電圧を含む入力電圧V
inが昇圧回路12の入力端子16に印加される。
【0024】
昇圧回路12は、第1の昇圧回路17、第2の昇圧回路18、中間電圧生成回路19、及び平滑回路20を備える。
【0025】
第1の昇圧回路17は、入力端子16に印加されるパルス電圧のうち、正のパルス電圧を負の第1の昇圧電圧V1に昇圧する回路である。この例では、第1の昇圧回路17は、第1の昇圧ブロック17aと第2の昇圧ブロック17bとを備える。
【0026】
第1の昇圧ブロック17aは、第1の容量素子C1、第2の容量素子C2、第1の整流素子D1、及び第2の整流素子D2を備える。
【0027】
第1の容量素子C1の一端は入力端子16と電気的に接続され、第1の容量素子C1の他端は第1の整流素子D1のアノードと電気的に接続される。その第1の整流素子D1のカソードには接地電圧等の第1の基準電圧G1が印加される。
【0028】
また、第2の容量素子C2の一端は第1の整流素子D1のカソードと電気的に接続され、第2の容量素子C2の他端は第2の整流素子D2のアノードと電気的に接続される。その第2の整流素子D2のカソードは、第1の容量素子C1の他端と電気的に接続される。
【0029】
第2の昇圧ブロック17bは、第1の昇圧ブロック17aと同様の回路構成を有する。但し、第2の昇圧ブロック17bにおける第1の容量素子C1の一端は、第1の昇圧ブロック17aにおける第1の容量素子C1の他端と電気的に接続される。また、第2の昇圧ブロック17bにおける第1の整流素子D1のカソードは、第1の昇圧ブロック17aにおける第2の整流素子D2のアノードと電気的に接続される。
【0030】
このような回路構成によれば、第1の昇圧回路17は、昇圧ブロック17a、17b単位で昇圧を行い、最終段の昇圧ブロックにおける第2の整流素子D2のアノードの電圧が第1の昇圧電圧V1となる。
【0031】
次に、第1の昇圧回路17の動作について、
図4A及び4Bを参照しながら説明する。
【0032】
図4Aは、部分放電に起因した正のパルス電圧41が重畳した入力電圧V
inの波形の一例を示すタイミングチャートである。また、
図4Bは、
図4Aに示す入力電圧V
inが入力されたときの第1の昇圧電圧V
1の波形の一例を示すタイミングチャートである。
【0033】
一般に、部分放電に伴うパルス電圧41は、印加電圧の逆極性になることが知られており、正と負のいずれか一方のみに現れる。
図4Aの例では、ケーブル4等の電子部品に負の電圧を印加した場合を想定しており、その場合は正のパルス電圧41が入力電圧V
inに重畳する。パルス電圧の大きさは、電子部品に印加する電圧に依存する。例えば、電子部品に数kVの直流電圧を印加すると、パルス電圧の大きさは数百mV程度となる。但し、電子部品に印加する電圧の大きさはこれに限定されず、任意の大きさの電圧を電子部品に印加してもよい。
【0034】
図4Aのような正のパルス電圧41が入力端子16に印加されると、第1の昇圧ブロック17aの第1の容量素子C
1の両極板のうち、入力端子16に接続されている側の極板が一瞬だけ正に帯電する。これにより、第1の容量素子C
1の他方の極板の正電荷が第1の整流素子D
1を流れて第1の基準電圧G
1側に流れていく。
【0035】
その後、入力端子16に接続されている側の第1の容量素子C1の極板はすぐに定常電圧に戻るが、他方の極板への正電荷の移動は第1の整流素子D1に阻まれるため、当該極板は負に帯電する。すると、このように負に帯電した状態から帯電していない状態に戻すべく、第2の容量素子C2の両極板のうち、第2の整流素子D2のアノードに接続されている極板から当該第2の整流素子D2を介して正電荷が第1の容量素子C1に移動する。その結果、第2の容量素子C2と第2の整流素子D2との接続点の電位が負となる。これが第2の昇圧ブロック17bにも伝搬して第1の昇圧電圧V1も負となる。
【0036】
また、
図4Bの波形42に示すように、正のパルス電圧41が生じるたびに電荷の移動が生じるため、第1の昇圧電圧V
1は、正のパルス電圧41の大きさと頻度に応じた負の積算電圧となる。
【0037】
再び
図3を参照する。この例では第1の昇圧回路17を昇圧ブロック17a、17bの二段構成としているが、第1の昇圧ブロック17aのみで第1の昇圧回路17を構成してよいし、三段以上の昇圧ブロックで第1の昇圧回路17を構成してもよい。第1の昇圧電圧V
1は昇圧ブロック17a、17bの段数で調節でき、その段数が大きくなるほど第1の昇圧電圧V
1の大きさも大きくなる。
【0038】
一方、第2の昇圧回路18は、入力端子16に印加されるパルス電圧のうち、負のパルス電圧を正の第2の昇圧電圧V2に昇圧する回路である。この例では、第2の昇圧回路18は、第1の昇圧ブロック18aと第2の昇圧ブロック18bとを備える。
【0039】
第1の昇圧ブロック18aは、第3の容量素子C3、第4の容量素子C4、第3の整流素子D3、及び第4の整流素子D4を備える。
【0040】
第3の容量素子C3の一端は入力端子16と電気的に接続され、第3の容量素子C3の他端は第3の整流素子D3のカソードと電気的に接続される。その第3の整流素子D3のアノードには接地電圧等の第2の基準電圧G2が印加される。
【0041】
また、第4の容量素子C4の一端は第3の整流素子D3のアノードと電気的に接続され、第4の容量素子C4の他端は第4の整流素子D4のカソードと電気的に接続される。その第4の整流素子D4のアノードは、第3の容量素子C3の他端と電気的に接続される。
【0042】
第2の昇圧ブロック18bは、第1の昇圧ブロック18aと同様の回路構成を有する。但し、第2の昇圧ブロック18bにおける第3の容量素子C3の一端は、第1の昇圧ブロック18aにおける第3の容量素子C3の他端と電気的に接続される。また、第2の昇圧ブロック18bにおける第3の整流素子D3のアノードは、第1の昇圧ブロック18aにおける第4の整流素子D4のカソードと電気的に接続される。
【0043】
このような回路構成によれば、第2の昇圧回路18は、昇圧ブロック18a、18b単位で昇圧を行い、最終段の昇圧ブロックにおける第4の整流素子D4のカソードの電圧が第2の昇圧電圧V2となる。
【0044】
次に、第2の昇圧回路18の動作について、
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。
【0045】
図5Aは、部分放電に起因した負のパルス電圧43が重畳した入力電圧V
inの波形の一例を示すタイミングチャートである。また、
図5Bは、
図5Aに示す入力電圧V
inが入力されたときの第2の昇圧電圧V
2の波形の一例を示すタイミングチャートである。この例では、ケーブル4等の電子部品に正の電圧を印加し、それにより負のパルス電圧43が入力電圧V
inに重畳した場合を想定している。
【0046】
図5Aのような負のパルス電圧が入力端子16に印加されると、第1の昇圧ブロック18aの第3の容量素子C
3の両極板のうち、入力端子16に接続されている側の極板が一瞬だけ負に帯電する。これにより、第3の容量素子C
3の他方の極板に、第2の基準電圧G
2側から第3の整流素子D
3を介して正電荷が供給される。
【0047】
その後、入力端子16に接続されている側の第3の容量素子C3の極板はすぐに定常電圧に戻るが、他方の極板から第2の基準電圧G2側への正電荷の流出は第3の整流素子D3に阻まれるため、当該極板は正に帯電する。すると、このように正に帯電した状態から帯電していない状態に戻すべく、第4の容量素子C4の両極板のうち、第4の整流素子D4のカソードに接続されている極板に、当該第4の整流素子D4を介して第3の容量素子C3から正電荷が移動する。その結果、第4の容量素子C4と第4の整流素子D4との接続点の電位が正となる。これが第2の昇圧ブロック18bにも伝搬して第2の昇圧電圧V2も正となる。
【0048】
また、
図5Bの波形44に示すように、負のパルス電圧43が生じるたびに電荷の移動が生じるため、第2の昇圧電圧V
2は、負のパルス電圧43の大きさと頻度に応じた正の積算電圧となる。
【0049】
再び
図3を参照する。この例では第2の昇圧回路18を昇圧ブロック18a、18bの二段構成としているが、第1の昇圧ブロック18aのみで第2の昇圧回路18を構成してよいし、三段以上の昇圧ブロックで第2の昇圧回路18を構成してもよい。第2の昇圧電圧V
2は昇圧ブロック18a、18bの段数で調節でき、その段数が大きくなるほど第2の昇圧電圧V
2の大きさも大きくなる。
【0050】
各昇圧回路17、18を構成する容量素子C1~C4は、キャパシタでもよいし、電子部品に生じる寄生容量でもよい。寄生容量としては、ケーブル4内を並走する二つの銅線(不図示)の間に生じる容量がある。また、電子部品が配線基板の場合は、配線基板における二つの配線(不図示)の間に生じる寄生容量を容量素子C1~C4としてもよい。
【0051】
更に、この例では直流除去フィルタ11によって入力電圧Vinから直流成分が除去されているため、入力電圧Vinの直流成分が各容量素子C1~C4に印加されず、当該直流成分によって各容量素子C1~C4が破壊される可能性を低減できる。なお、入力電圧Vinと比べて各容量素子C1~C4の耐圧が十分に高い場合には直流除去フィルタ11を省略してもよい。
【0052】
また、各昇圧回路17、18を構成する整流素子D1~D4は、ダイオードでもよいし真空管でもよい。
【0053】
中間電圧生成回路19は、第1の昇圧回路17と第2の昇圧回路18の各々に接続され、第1の昇圧電圧V1と第2の昇圧電圧V2の中間の中間電圧Vmを出力する回路である。一例として、中間電圧生成回路19は、直列接続された第1の抵抗素子R1と第2の抵抗素子R2とを備える。各抵抗素子R1、R2のそれぞれの一端には、第1の昇圧電圧V1と第2の昇圧電圧V2が入力される。そして、各抵抗素子R1、R2の接続点28における電圧が中間電圧Vmとなる。中間電圧Vmの大きさは各抵抗素子R1、R2の抵抗値で調節できる。この例では、各抵抗素子R1、R2の抵抗値を同一にすることでVm = (V1 + V2)/2とする。
【0054】
図4A、
図5Aに示したように、部分放電に伴うパルス電圧は、印加電圧と逆極性になるように正と負のいずれか一方にのみ現れる。そのため、部分放電が生じた場合は、第1の昇圧電圧V
1と第2の昇圧電圧V
2の一方は0Vとなり、他方の大きさは有限となる。
【0055】
これに対し、入力電圧Vinに重畳した雑音成分は、正のパルスと負のパルスが同程度の大きさかつ頻度で発生するため、中間電圧Vmにおいて雑音成分は相殺される。そのため、中間電圧Vmは、ケーブル4等の電子部品の部分放電の頻度や大きさを反映した値となり、その中間電圧Vmに基づいて電子部品の残存寿命を推定することができる。
【0056】
特に、この例のようにVm = (V1 + V2)/2とした場合は、中間電圧Vmが0Vのときに部分放電は生じていないと判断でき、中間電圧Vmが正と負のいずれかの値のときには部分放電が生じたと判断できる。更に、中間電圧Vmは、正負いずれかのパルス電圧の積算電圧となるため、中間電圧Vmに基づいて部分放電の頻度と大きさとを把握できる。
【0057】
また、本実施形態では直列接続された各抵抗素子R1、R2の接続点28から中間電圧Vmが得られるため、簡単な回路構成で中間電圧Vmを得ることができる。
【0058】
平滑回路20は、中間電圧V
mがADC13のナイキスト周波数未満の帯域となるように高周波成分をカットする低帯域通過フィルタ(LPF: Low-Pass Filter)である。一例として、平滑回路20は、抵抗R
LとキャパシタC
Lとを備える。抵抗R
Lの一端には中間電圧V
mが印加され、キャパシタC
Lの一端には接地電圧等の基準電圧G
Lが印加される。これによれば、交流成分がカットされた中間電圧V
mが、抵抗R
LとキャパシタC
Lとの接続点から出力電圧V
outとして出力される。なお、ADC13(
図2参照)の帯域が十分に高い場合には平滑回路20は省略してもよい。
【0059】
出力電圧V
outはADC13(
図2参照)でデジタル値に変換され、そのデジタル値に基づいて判定回路14(
図2参照)がケーブル4等の電子部品の残存寿命を推定する。例えば、判定回路14は、出力電圧V
outに所定の係数を乗算することで、部分放電で放出された累積の電荷量を算出する。そして、判定回路14は、例えば電子部品ごとに予め作成した累積の電荷量と残存寿命との関係を示すテーブル(不図示)を参照し、電子部品の残存寿命を推定する。なお、判定回路14は、推定した残存寿命を不図示のディスプレイ等に表示してもよい。これにより、ユーザが電子部品の残存寿命を確認でき、電子部品が寿命に至っていない場合には当該電子部品を再利用することができる。
【0060】
また、判定回路14は、出力電圧Voutの大きさ|Vout|が予め定めておいた閾値を超えたときに、ケーブル4等の電子部品の寿命が到来したと判定してもよい。これにより、累積の電荷量の算出を判定回路14がそれ以上行う必要がなくなり、判定回路14の負荷を低減できる。
【0061】
以上説明した本実施形態によれば、正のパルス電圧41を第1の昇圧回路17が昇圧して第1の昇圧電圧V1を出力し、負のパルス電圧43を第2の昇圧回路18が昇圧して第2の昇圧電圧V2を出力する。各昇圧電圧V1、V2は、ケーブル4等の電子部品の部分放電の頻度や大きさを積算した電圧であり、各昇圧電圧V1、V2の大きさが大きいほど電子部品を構成する絶縁体が絶縁破壊される時期が近い。そのため、判定回路14が、各昇圧電圧V1、V2から得た中間電圧Vmに基づいて、電子部品の残存寿命を推定することができる。しかも、各昇圧回路17、18は、容量素子と整流素子のみで構成されるため低コストで作製できる。その結果、本実施形態では部分放電を低コストで検出できる。
【0062】
<第2実施形態>
図6は、本実施形態に係る昇圧回路12と判定回路14の回路図の一例である。
図6に示すように、本実施形態に係る昇圧回路12は、第1の昇圧回路17、第2の昇圧回路18、第1のADC31、第2のADC32、及び演算回路33を備える。
【0063】
第1の昇圧回路17と第2の昇圧回路18の回路構成と動作は第1実施形態におけるのと同様である。
【0064】
第1のADC31は、第1の昇圧電圧V1をデジタル化した第1のデジタル値S1を出力するアナログ・デジタル変換器である。また、第2のADC32は、第2の昇圧電圧V2をデジタル化した第2のデジタル値S2を出力するアナログ・デジタル変換器である。
【0065】
演算回路33は、第1のデジタル値S1と第2のデジタル値S2に基づき、第1の昇圧電圧V1と第2の昇圧電圧S2の中間の中間電圧Vmを算出し、中間電圧Vmを示すデジタル値の出力信号Soutを出力する回路である。中間電圧Vmは特に限定されず、第1実施形態と同様に例えばVm = (V1 + V2)/2である。
【0066】
そして、出力信号Soutに基づいて、判定回路14がケーブル4等の電子部品の残存寿命を推定する。一例として、判定回路14は、出力信号Soutに所定の係数を乗算することで、部分放電で放出された累積の電荷量を算出する。そして、判定回路14は、第1実施形態のように電子部品ごとに予め作成した累積の電荷量と残存寿命との関係を示すテーブル(不図示)を参照し、電子部品の残存寿命を推定する。
【0067】
本実施形態によれば、演算回路33が第1のデジタル値S1と第2のデジタル値S2に基づいて中間電圧Vmを算出するため、抵抗R1、R2のみで構成される簡易な中間電圧生成回路19よりも高い精度で中間電圧Vmを得ることができる。
【0068】
<第3実施形態>
図7は、本実施形態に係る昇圧回路12と判定回路14の回路図の一例である。
図7に示すように、本実施形態では、第1実施形態における中間電圧生成回路19と平滑回路20とを省き、各昇圧回路17、18を判定回路14に接続する。
【0069】
判定回路14は、第1の昇圧電圧V1と第2の昇圧電圧V2に基づいて、ケーブル4等の電子部品の残存寿命を推定する。例えば、判定回路14は、第1の昇圧電圧V1と第2の昇圧電圧V2のうち、0Vからの乖離が大きい方の電圧に所定の係数をすることで、部分放電で放出された累積の電荷量を算出する。そして、判定回路14は、第1実施形態で説明したテーブル(不図示)を参照し、電荷量から残存寿命を推定する。
【0070】
また、例えば判定回路14は、第1の昇圧電圧V1の大きさ|V1|が第1の閾値電圧Vref_1を超えた場合、又は第2の昇圧電圧V2の大きさ|V2|が第2の閾値電圧Vref_2を超えた場合に、電子部品の寿命が到来したと判定してもよい。これにより、中間電圧生成回路19や平滑回路20を用いない簡単な回路構成で、電子部品の寿命が到来したかを判定することができる。
【0071】
本実施形態によれば、中間電圧生成回路19と平滑回路20とを省き、判定回路14が各昇圧電圧V1、V2に基づいて電子部品の残存寿命を推定するため、放電検出回路1の回路構成をシンプルにして更なる低コスト化を実現することができる。
【0072】
<第4実施形態>
図8は、本実施形態に係る昇圧回路12と判定回路14の回路図の一例である。
図8に示すように、本実施形態では、昇圧回路12に第1の比較器51と第2の比較器52とを設ける。
【0073】
第1の比較器51は、第1の昇圧電圧V1の大きさ|V1|と第1の閾値電圧Vref_1との比較結果を示す第1の比較信号Sout_1を出力する。第1の比較信号Sout_1は、|V1|≦Vref_1の場合にローレベルとなり、|V1|>Vref_1の場合にハイレベルとなる信号である。
【0074】
第2の比較器52は、第2の昇圧電圧V2の大きさ|V2|と第2の閾値電圧Vref_2との比較結果を示す第2の比較信号Sout_2を出力する。第2の比較信号Sout_2は、|V2|≦Vref_2の場合にローレベルとなり、|V2|>Vref_2の場合にハイレベルとなる信号である。
【0075】
判定回路14は、第1の比較信号Sout_1と第2の比較信号Sout_2に基づいて、ケーブル4等の電子部品の寿命が到来したかを判定する。例えば、判定回路14は、第1の比較信号Sout_1と第2の比較信号Sout_2のいずれかがハイレベルになったときに、電子部品の寿命が到来したと判定する。
【0076】
本実施形態によれば、判定回路14は、各昇圧電圧の大きさ|V1|、|V2|と各閾値電圧Vref_1、Vref_2との比較を行わず、各比較信号Sout_1、Sout_2の信号レベルに基づいて電子部品の寿命が到来したかを判定する。そのため、判定回路14の回路構成を簡略化しつつ、電子部品の寿命が到来したかを判定することができる。
【0077】
<第5実施形態>
図9は、本実施形態に係る放電検出回路1の構成例を示す模式図である。本実施形態では複数の放電検出回路1の各々により、複数の電子部品の部分放電を検出する。一例として、本実施形態では、直流除去フィルタ11と昇圧回路12とで各放電検出回路1を構成し、ADC13と判定回路14については各放電検出回路1で共通とする。この場合、ADC13と判定回路14は、各放電検出回路1の出力電圧V
outを時分割で取得する。そして、判定回路14は、その出力電圧V
outに基づいて、複数の電子部品の残存寿命を時分割で推定する。
【0078】
これによれば、各放電検出回路1にADC13と判定回路14とを設ける場合と比較して回路構成が簡単となり、低コスト化を実現することができる。
【0079】
なお、ADC13を各昇圧回路12に設け、判定回路14のみを各放電検出回路1で共通としてもよい。
【0080】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0081】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現されてもよい。各機能を実現するプログラム、判定テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、HDD、SSD等の記憶装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…放電検出回路、2…電子機器、3…直流高電圧源、4…ケーブル、5…負荷、11…直流除去フィルタ、12…昇圧回路、13…ADC、14…判定回路、16…入力端子、17…第1の昇圧回路、17a…第1の昇圧ブロック、17b…第2の昇圧ブロック、18…第2の昇圧回路、18a…第1の昇圧ブロック、18b…第2の昇圧ブロック、19…中間電圧生成回路、20…平滑回路、28…接続点、31…第1のADC、32…第2のADC、33…演算回路、41、43…パルス電圧、42、44…波形、51…第1の比較器、52…第2の比較器。