(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008134
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ジャッキアップ方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
E04G23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110043
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉洋
(72)【発明者】
【氏名】坂井 利光
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176BB28
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定する。
【解決手段】構造物のジャッキアップ対象部が位置する所定層を一時的にジャッキアップするジャッキアップ方法であって、前記所定層における前記ジャッキアップ対象部に第1ジャッキを設置する第1ジャッキ設置ステップと、前記所定層の上層における前記ジャッキアップ対象部の上方、又は前記所定層の下層における前記ジャッキアップ対象部の下方に第2ジャッキを設置する第2ジャッキ設置ステップと、前記第1ジャッキの押上力と前記第2ジャッキの押上力とが同調するように、前記第1ジャッキで前記所定層の上部を押し上げ、前記第2ジャッキで前記上層の上部、又は前記下層の上部を押し上げる同調押上ステップと、を有し、前記第1ジャッキと前記第2ジャッキとの各々のジャッキは、前記各々のジャッキに流体を供給する配管が連通している流体作動式ジャッキである、ジャッキアップ方法である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物のジャッキアップ対象部が位置する所定層を一時的にジャッキアップするジャッキアップ方法であって、
前記所定層における前記ジャッキアップ対象部に第1ジャッキを設置する第1ジャッキ設置ステップと、
前記所定層の上層における前記ジャッキアップ対象部の上方、及び前記所定層の下層における前記ジャッキアップ対象部の下方の少なくとも一方に第2ジャッキを設置する第2ジャッキ設置ステップと、
前記第1ジャッキの押上力と前記第2ジャッキの押上力とが同調するように、前記第1ジャッキで前記所定層の上部を押し上げ、前記第2ジャッキで前記上層の上部、及び前記下層の上部の少なくとも一方を押し上げる同調押上ステップと、
を有し、
前記第1ジャッキと前記第2ジャッキとの各々のジャッキは、前記各々のジャッキに流体を供給する配管が連通している流体作動式ジャッキである、
ジャッキアップ方法。
【請求項2】
前記各々のジャッキは、油圧配管が連通している油圧ジャッキである、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項3】
前記所定層は、免震装置が設置される免震層であり、前記ジャッキアップ対象部は、前記免震層に位置する柱梁であり、
前記同調押上ステップの後に、前記免震装置を取り出す免震装置取出ステップと、
を有する、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項4】
前記第1ジャッキの第1ジャッキ受圧面積から前記第2ジャッキの第2ジャッキ受圧面積を減じた差分受圧面積の、前記第1ジャッキ受圧面積に対する割合に前記第1ジャッキにかかる第1ジャッキ荷重を乗じた荷重を、前記所定層の上部が負担する所定層上部負担荷重と設定する、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項5】
前記第2ジャッキの第2ジャッキ受圧面積は、前記第1ジャッキの第1ジャッキ受圧面積以下である、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項6】
前記第1ジャッキの第1ジャッキ受圧面積の前記第2ジャッキの第2ジャッキ受圧面積に対する割合によって、前記所定層の上部が負担する荷重と、前記上層の上部又は前記下層の上部が負担する荷重とが設定される、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項7】
前記上層の上部は、前記上層の鉛直構造材の上部と前記上層の水平構造材との接合隅部である、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項8】
前記第2ジャッキは、ジャッキ本体と、前記ジャッキ本体と前記上層の上部又は前記下層の上部と、の間に設置される仮設材と、を有する、
請求項1に記載のジャッキアップ方法。
【請求項9】
前記仮設材は、前記ジャッキ本体に接続する鉛直部と、前記鉛直部と前記上層の上部又は前記下層の上部と、を接続する接続部と、を有する、
請求項8に記載のジャッキアップ方法。
【請求項10】
前記接続部は、前記鉛直部に働く鉛直荷重を負担する面積を水平方向に拡大させ、前記上層の上部又は前記下層の上部にかかる面圧を低減する水平面部を有する、
請求項9に記載のジャッキアップ方法。
【請求項11】
前記接続部は、前記水平面部に接続し、緊張による摩擦力で鉛直方向のせん断耐力を増大させる鉛直面部を有する、
請求項10に記載のジャッキアップ方法。
【請求項12】
前記接続部は、傾斜接続材である、
請求項9に記載のジャッキアップ方法。
【請求項13】
前記仮設材は、斜材であり、
前記ジャッキ本体の下部に傾斜基台を有し、前記ジャッキ本体は、前記斜材と同傾斜に設置される、
請求項8に記載のジャッキアップ方法。
【請求項14】
前記仮設材は、斜材であり、
前記斜材の鉛直対称方向において、前記斜材と均衡する均衡斜材を有する、
請求項8に記載のジャッキアップ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、構造物の免震層に設置された免震装置を交換する工事において、免震層の上部及び下部に位置する構造材を仮受ジャッキで支持する工法が採用されることがある。この工法では、具体的には、免震層の上部及び下部に位置する梁に仮受ジャッキを架け渡すことで、免震装置にかかる荷重を仮受ジャッキで受け替えることができる。但し、この工法の場合、仮受ジャッキを架け渡した梁に、免震層より上方の構造物の荷重が集中してかかることになり、当該梁が強度不足となることがある。このため、仮受ジャッキを架け渡す梁と、当該梁に接続する柱とを増し打ちすることや、ブラケットで補強することなどで、構造物を補強し、構造物にかかる荷重を支持できるようにする手法が用いられることがある。
【0003】
しかし、上述の構造物を補強する手法を用いても、次のような課題が存在する。すなわち、(1)仮受ジャッキを架け渡す梁にかかる荷重がそもそも大きすぎて、構造物の補強だけでは対応できない場合がある。また、(2)既存の構造物の梁や柱を補強する場合、補強工事が大規模となり、作業エリアが増大することで工期やコストも増大することがある。さらに、(3)補強工事完了後の補強部分により、構造物の利用者の利用エリアが狭くなることがある。
【0004】
そこで、免震層より上方の層(上層)や下方の層(下層)において、仮受ジャッキと平面上の同じ位置に、連層で仮受ジャッキを架け渡す。こうすることで、免震層の仮受ジャッキを架け渡す梁にかかる荷重を、上層や下層の仮受ジャッキを架け渡す梁にも伝達させることができる。これにより、免震装置にかかる荷重を、各層(免震層、上層及び下層)の仮受ジャッキで分配して受け替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、免震層の仮受ジャッキの加圧時に構造物の剛性に応じて構造物に不定の変形が発生し、上層や下層の仮受ジャッキにかかる荷重が変動することがある。このため、免震層の仮受ジャッキの受圧面積と、上層や下層の仮受ジャッキの受圧面積とに基づいて、構造物の所定の層の梁に任意の荷重を精度良く分配させることは困難であった。
【0007】
本発明は、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定できるジャッキアップ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの実施形態は、構造物のジャッキアップ対象部が位置する所定層を一時的にジャッキアップするジャッキアップ方法であって、前記所定層における前記ジャッキアップ対象部に第1ジャッキを設置する第1ジャッキ設置ステップと、前記所定層の上層における前記ジャッキアップ対象部の上方、及び前記所定層の下層における前記ジャッキアップ対象部の下方の少なくとも一方に第2ジャッキを設置する第2ジャッキ設置ステップと、前記第1ジャッキの押上力と前記第2ジャッキの押上力とが同調するように、前記第1ジャッキで前記所定層の上部を押し上げ、前記第2ジャッキで前記上層の上部、及び前記下層の上部の少なくとも一方を押し上げる同調押上ステップと、を有し、前記第1ジャッキと前記第2ジャッキとの各々のジャッキは、前記各々のジャッキに流体を供給する配管が連通している流体作動式ジャッキである、ジャッキアップ方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の幾つかの実施形態によれば、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の仮受構造10の説明図である。
【
図2】
図2は、免震装置80が設置された免震構造90において、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【
図3】
図3は、第1比較例の仮受構造10Aにおいて、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【
図4】
図4は、第2比較例の仮受構造10Bにおいて、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のジャッキアップ方法のフロー図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の仮受構造10において、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の別の例の仮受構造10Cの説明図である。
【
図8】
図8は、第1変形例の仮受構造10Dの説明図である。
【
図9】
図9は、第2変形例の仮受構造10Eの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
構造物のジャッキアップ対象部が位置する所定層を一時的にジャッキアップするジャッキアップ方法であって、前記所定層における前記ジャッキアップ対象部に第1ジャッキを設置する第1ジャッキ設置ステップと、前記所定層の上層における前記ジャッキアップ対象部の上方、及び前記所定層の下層における前記ジャッキアップ対象部の下方の少なくとも一方に第2ジャッキを設置する第2ジャッキ設置ステップと、前記第1ジャッキの押上力と前記第2ジャッキの押上力とが同調するように、前記第1ジャッキで前記所定層の上部を押し上げ、前記第2ジャッキで前記上層の上部、及び前記下層の上部の少なくとも一方を押し上げる同調押上ステップと、を有し、前記第1ジャッキと前記第2ジャッキとの各々のジャッキは、前記各々のジャッキに流体を供給する配管が連通している流体作動式ジャッキである、ジャッキアップ方法が明らかとなる。
【0014】
このようなジャッキアップ方法によれば、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0015】
かかるジャッキアップ方法であって、前記各々のジャッキは、油圧配管が連通している油圧ジャッキであることが望ましい。
【0016】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0017】
かかるジャッキアップ方法であって、前記所定層は、免震装置が配置される免震層であり、前記ジャッキアップ対象部は、前記免震層に位置する柱梁であり、前記同調押上ステップの後に、前記免震装置を取り出す免震装置取出ステップと、を有することが望ましい。
【0018】
これにより、免震装置を取り出す際にも、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0019】
かかるジャッキアップ方法であって、前記第1ジャッキの第1ジャッキ受圧面積から前記第2ジャッキの第2ジャッキ受圧面積を減じた差分受圧面積の、前記第1ジャッキ受圧面積に対する割合に前記第1ジャッキにかかる第1ジャッキ荷重を乗じた荷重を、前記所定層の上部が負担する所定層上部負担荷重と設定することが望ましい。
【0020】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0021】
かかるジャッキアップ方法であって、前記第2ジャッキの第2ジャッキ受圧面積は、前記第1ジャッキの第1ジャッキ受圧面積以下であることが望ましい。
【0022】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0023】
かかるジャッキアップ方法であって、前記第1ジャッキの第1ジャッキ受圧面積の前記第2ジャッキの第2ジャッキ受圧面積に対する割合によって、前記所定層の上部が負担する荷重と、前記上層の上部又は前記下層の上部が負担する荷重とが設定されることが望ましい。
【0024】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0025】
かかるジャッキアップ方法であって、前記上層の上部は、前記上層の鉛直構造材の上部と前記上層の水平構造材との接合隅部であることが望ましい。
【0026】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0027】
かかるジャッキアップ方法であって、前記第2ジャッキは、ジャッキ本体と、前記ジャッキ本体と前記上層の上部又は前記下層の上部と、の間に設置される仮設材と、を有することが望ましい。
【0028】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0029】
かかるジャッキアップ方法であって、前記仮設材は、前記ジャッキ本体に接続する鉛直部と、前記鉛直部と前記上層の上部又は前記下層の上部と、を接続する接続部と、を有することが望ましい。
【0030】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0031】
かかるジャッキアップ方法であって、前記接続部は、前記鉛直部に働く鉛直荷重を負担する面積を水平方向に拡大させ、前記上層の上部又は前記下層の上部にかかる面圧を低減する水平面部を有することが望ましい。
【0032】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0033】
かかるジャッキアップ方法であって、前記接続部は、前記水平面部に接続し、緊張による摩擦力で鉛直方向のせん断耐力を増大させる鉛直面部を有することが望ましい。
【0034】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0035】
かかるジャッキアップ方法であって、前記接続部は、傾斜接続材であることが望ましい。
【0036】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0037】
かかるジャッキアップ方法であって、前記仮設材は、斜材であり、前記ジャッキ本体の下部に傾斜基台を有し、前記ジャッキ本体は、前記斜材と同傾斜に設置されることが望ましい。
【0038】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0039】
かかるジャッキアップ方法であって、前記仮設材は、斜材であり、前記斜材の鉛直対称方向において、前記斜材と均衡する均衡斜材を有することが望ましい。
【0040】
これにより、構造物の各層の梁が負担する荷重を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて精度良く設定することができる。
【0041】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0042】
===本実施形態===
<仮受構造10の概要>
図1は、本実施形態の仮受構造10の説明図である。
【0043】
仮受構造10は、構造物の構造材の一部をジャッキ等で仮受した構造である。仮受構造10は、構造物70と、ジャッキ6と、ジャッキ15とを有する。
【0044】
構造物70は、水平構造材である仮受層下部梁2,仮受層上部梁4及び第1上層梁13と、鉛直構造材である第1上層柱14とを有する。仮受層下部梁2と仮受層上部梁4との間には、仮受層1が形成されている。また、仮受層上部梁4と第1上層梁13との間には、第1上層11が形成されている。なお、仮受層下部梁2の上部には、仮受層スラブ3が設置され、仮受層上部梁4の上部には、第1上層スラブ12が設置されている。
【0045】
本実施形態の仮受構造10では、仮受層1の鉛直構造材(ここでは、柱)の一部には、仮受対象部5が形成されている。本実施形態の仮受構造10では、仮受対象部5は、構造物70において免震装置が設置される部位(免震装置設置部)である。本実施形態の仮受構造10では、
図1に示されるように、免震装置が取り外された状態となっていると共に、仮受層1の上部及び下部に位置する構造材がジャッキ等(ここでは、後述するジャッキ6)で支持されている。
【0046】
仮受層1は、上部及び下部に位置する構造材がジャッキ6で一時的に支持される層である。本実施形態の仮受構造10では、仮受層1は、免震層である。すなわち、本実施形態の仮受構造10では、仮受層1は、免震装置が設置される層である。そこで、以下の説明では、「仮受層」を「免震層」と呼ぶことがある。但し、仮受層1は、免震層(免震装置が設置される層)に限られない。つまり、仮受層1は、損傷した柱を修復する際に、上部及び下部に位置する構造材がジャッキで一時的に支持される層であっても良い。この場合、仮受層1をジャッキで一時的にジャッキアップして、損傷した柱を修復し、その後ジャッキダウンする。また、仮受層1は、既存の構造物を免震化するため、免震レトロフィットが適用される場合に、免震装置が設置される層であっても良い。この場合、仮受層1をジャッキで一時的にジャッキアップして、仮受層1に位置する柱を切断し、切断された柱に免震装置を設置することで柱を再構築し、その後ジャッキダウンする。
【0047】
第1上層11は、仮受層1の上部に位置する層である。第1上層11は、後述するジャッキ15で一時的に支持されている。なお、本実施形態の仮受構造10では、仮受層1の上部に位置する層は、第1上層11のみである。但し、仮受層1の上部には複数の層が位置していても良い。後述する
図7に示される本実施形態の別の例の仮受構造10Cでは、仮受層1の上部に、第1上層11の他に、第2上層21が形成されている。以下の説明では、第1上層11を含む、仮受層1の上部に位置する層を、単に「上層」と呼ぶことがある。また、本実施形態の仮受構造10は、仮受層1の下部に位置する層(下層)が形成されていても良い。
【0048】
ジャッキ6は、仮受層1の上部及び下部に位置する構造材を一時的に支持する装置である。以下の説明では、ジャッキ6は、「仮受層ジャッキ」又は「免震層ジャッキ」と呼ばれることがある。本実施形態の仮受構造10では、ジャッキ6は、油圧ジャッキであり、油圧装置30から油圧配管9を介して油が供給され、油圧の力により仮受層1の上部に位置する構造材(ここでは、仮受層上部梁4)を押し上げ、同時に仮受層1の下部に位置する構造材(ここでは、仮受層下部梁2)を押し下げる。これにより、仮受層1の上部及び下部に位置する構造材(ここでは、仮受層上部梁4及び仮受層下部梁2)を一時的に支持することができる。但し、ジャッキ6は、空気作動式など、油圧ジャッキ以外のジャッキであっても良く、油圧ジャッキ以外の液体作動式のジャッキや、空気作動式のジャッキであっても良い。つまり、ジャッキ6は、流体作動式のジャッキであれば良い。
【0049】
以下では、(仮受層1の上部に位置する構造材を)押し上げる場合と、(仮受層1の下部に位置する構造材を)押し下げる場合とについて、単に「押し上げる」場合の説明のみ行うことがある。すなわち、以下では、ジャッキ6の「押上力」に関する説明は、ジャッキ6が仮受層1の下部に位置する構造材を押し下げる「押下力」の場合においても同様に適用することが可能である。なお、単に「押し上げる」場合のみ説明を行うことについては、後述するジャッキ15の説明においても同様である。
【0050】
ジャッキ6は、仮受対象部5(免震装置が設置される部位)の仮受層1におけるジャッキアップ対象部に設置される。本実施形態の仮受構造10では、
図1に示されるように、一対のジャッキ6が仮受対象部5の両側に設置される。
【0051】
ジャッキ6は、ジャッキ本体7と、仮設材8とを有する。ジャッキ本体7は、油圧装置30から油圧配管9を介して油が供給される部位であり、シリンダ等を備える。仮設材8は、ジャッキ本体7と構造物70(ここでは、仮受層1の上部に位置する仮受層上部梁4)との間に設置される部材である。本実施形態の仮受構造10では、仮設材8は、例えばH鋼であるが、H鋼以外の部材であっても良い。仮設材8は、ジャッキ本体7に発生した油圧による力を、構造物70(ここでは、仮受層上部梁4)に伝達する。
【0052】
ジャッキ15は、第1上層11の上部及び下部に位置する構造材を一時的に支持する装置である。以下の説明では、ジャッキ15は、「第1上層ジャッキ」又は、単に「上層ジャッキ」と呼ばれることがある。本実施形態の仮受構造10では、ジャッキ15は、油圧ジャッキであり、油圧装置30から油圧配管18を介して油が供給され、油圧の力により第1上層11の上部に位置する構造材(ここでは、第1上層梁13)を押し上げ、同時に第1上層11の下部に位置する構造材(ここでは、仮受層上部梁4)を押し下げる。但し、ジャッキ15は、空気作動式など、油圧ジャッキ以外のジャッキであっても良く、油圧ジャッキ以外の液体作動式のジャッキや、空気作動式のジャッキであっても良い。つまり、ジャッキ15は、流体作動式のジャッキであれば良い。
【0053】
ジャッキ15は、第1上層柱14の第1上層11におけるジャッキアップ対象部に設置される。本実施形態の仮受構造10では、
図1に示されるように、一対のジャッキ15が第1上層柱14の両側に設置される。本実施形態の仮受構造10では、ジャッキ15は、第1上層11において、仮受層1のジャッキ6と平面上の同じ位置に、連層で設置されている。なお、仮受層上部梁4が、ジャッキ6とジャッキ15との間の位置に発生する曲げモーメントに対抗できる耐力を保持していれば、ジャッキ15は、仮受層1のジャッキ6と平面上において位置がずれていても良い。これにより、仮受層1のジャッキ6を架け渡す梁(例えば、仮受層上部梁4)にかかる荷重を、第1上層11のジャッキ15を架け渡す梁(例えば、第1上層梁13)にも伝達させることができる。
【0054】
ジャッキ15は、ジャッキ本体16と、仮設材17とを有する。ジャッキ本体16は、油圧装置30から油圧配管18を介して油が供給される部位であり、シリンダ等を備える。仮設材17は、ジャッキ本体16と構造物70(ここでは、第1上層11の上部に位置する第1上層梁13)との間に設置される部材である。本実施形態の仮受構造10では、仮設材17は、例えばH鋼であるが、H鋼以外の部材であっても良い。仮設材17は、ジャッキ本体16に発生した油圧による力を、構造物70(ここでは、第1上層梁13)に伝達する。
【0055】
ジャッキ6とジャッキ15とは、各々のジャッキに流体を供給する配管が連通している。本実施形態の仮受構造10では、ジャッキ6とジャッキ15とは、油圧配管が連通した油圧ジャッキである。すなわち、
図1に示されるように、ジャッキ6に油が供給される油圧配管9と、ジャッキ15に油が供給される油圧配管18とは、連通配管31により連通している。これにより、ジャッキ6の押上力とジャッキ15の押上力とが同調するように、ジャッキ6で仮受層1の上部を押し上げ、ジャッキ15で第1上層11の上部を押し上げることができる。
【0056】
<比較例>
・免震構造90
以下では、本実施形態の仮受構造10の詳細を、比較例の仮受構造との比較により説明する。まず、比較例の仮受構造を説明する前に、ジャッキ6及びジャッキ15でジャッキアップする前の様子、すなわち、免震装置80が設置された免震構造90について説明する。
【0057】
図2は、免震装置80が設置された免震構造90において、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【0058】
免震構造90は、構造物70の構造材の一部に免震装置80が設置された構造である。免震構造90は、
図2に示されるように、構造物70の鉛直構造材(ここでは、柱)の一部に免震装置80を有する。
【0059】
免震装置80は、免震装置80より上部の構造を水平方向に相対移動可能に支持する装置である。免震装置80は、仮受層1に位置する柱の一部に設置(介装)されている。免震装置80は、積層ゴムであっても良いし、すべり支承や転がり支承であっても良い。
【0060】
図2では、免震構造90における構造物70の構造材にかかる荷重の流れの一例を、矢印で示している。以下の説明では、構造物70の構造材にかかる荷重を、「負担荷重」と呼ぶことがある。すなわち、
図2に示される荷重の流れは、負担荷重の流れである。免震構造90では、負担荷重は、水平構造材(仮受層上部梁4や第1上層梁13)から鉛直構造材(第1上層柱14や免震装置80の上部の柱)を介して、免震装置80を通るように伝達される。
【0061】
・第1比較例
図3は、第1比較例の仮受構造10Aにおいて、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【0062】
上述した免震構造90の仮受層1に設置された免震装置80を交換する工事において、免震装置80を取り外す必要がある。そこで、上述した免震装置80に伝達される荷重を他の装置を用いて仮受することで、免震装置80を取り外すことができる。第1比較例の仮受構造10Aでは、仮受層1にジャッキ6が設置されることで、仮受層1の上部及び下部に位置する構造材にかかる荷重を一時的に支持(仮受)している。但し、第1比較例の仮受構造10Aは、本実施形態の仮受構造10と異なり、第1上層11にジャッキが設置されていない。したがって、仮受層1の上部及び下部に位置する構造材に荷重が集中してかかることになり、当該構造材が強度不足となってしまう場合がある。
【0063】
そこで、第1比較例の仮受構造10Aでは、
図3の斜線部分に示されるように、ジャッキ6を架け渡した梁(仮受層下部梁2や、仮受層上部梁4)と、当該梁に接続する柱(第1上層柱14)とを増し打ちすることや、ブラケットで補強している。これにより、構造物70の構造材が強度不足となってしまうことを抑制することができる。
【0064】
但し、第1比較例の仮受構造10Aでは、ジャッキ6を架け渡す梁にかかる荷重がそもそも大きすぎて、構造物70の構造材の補強だけでは対応できない場合がある。また、構造物70が既存の構造物である場合、構造材の補強工事が大規模となり、作業エリアが増大することで工期やコストも増大することがある。さらに、補強工事完了後の補強部分により、構造物70の利用者の利用エリアが狭くなることがある。
【0065】
・第2比較例
図4は、第2比較例の仮受構造10Bにおいて、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【0066】
第2比較例の仮受構造10Bでは、第1上層11に、ジャッキ15が設置されている。ジャッキ15は、本実施形態の仮受構造10と同様に、第1上層11において、仮受層1のジャッキ6と平面上の同じ位置に、連層で設置されている。これにより、仮受層1のジャッキ6を架け渡す梁(例えば、仮受層上部梁4)にかかる荷重を、第1上層11のジャッキ15を架け渡す梁(例えば、第1上層梁13)にも伝達させることができる。したがって、第2比較例の仮受構造10Bでは、仮受層1の上部に位置する仮受層上部梁4に係る負担荷重を、第1上層梁13にも分配することができる。
【0067】
但し、第2比較例の仮受構造10Bでは、本実施形態の仮受構造10と異なり、仮受層1に設置されたジャッキ6と第1上層11に設置されたジャッキ15とは、油圧配管が連通していない。具体的には、ジャッキ6に油が供給される油圧配管9と、ジャッキ15に油が供給される油圧配管18とは、連通されていない。第2比較例の仮受構造10Bでは、
図4に示されるように、ジャッキ6には、油圧装置301から油圧配管9を介して油が供給され、ジャッキ15には、別の油圧装置302から油圧配管18を介して油が供給されている。
【0068】
第2比較例の仮受構造10Bでは、ジャッキ6及びジャッキ15を作動する(ジャッキアップする)手順は、例えば、次の通りである。すなわち、まず、第1上層11のジャッキ15を作動し、第1上層梁13を押し上げる(ジャッキ15の与圧)。このとき、ジャッキ15は、仮受層上部梁4と第1上層梁13とをつなぐ、単なる支持部材と見なす構造モデルと考えることができる。次に、仮受層1のジャッキ6を作動し、仮受層上部梁4を押し上げる。このとき、負担荷重の分配は構造的に関連する各部材の剛性に依存する。仮受層上部梁4及び第1上層梁13や、第1上層柱14や、仮設材17の剛性に応じて、仮受層上部梁4が負担する負担荷重が変動してしまう。
【0069】
第2比較例の仮受構造10Bでは、所定の層の梁に任意の荷重を分配させるためには、構造物70の構造材の剛性を考慮する必要があり、仮受層上部梁4や第1上層梁13が負担する負担荷重を、複雑な構造解析により求める必要がある。
【0070】
第2比較例の仮受構造10Bに対し、本実施形態の仮受構造10では、ジャッキ6とジャッキ15とは、油圧配管が連通した油圧ジャッキであるため、ジャッキ6の押上力とジャッキ15の押上力とが同調するように、ジャッキ6で仮受層1の上部を押し上げ、ジャッキ15で第1上層11の上部を押し上げることができる。このとき、ジャッキ15は、仮受層上部梁4と第1上層梁13にかかる加力点と見なす構造モデルと考えることができ、仮受層上部梁4や第1上層梁13にかかる負担荷重は、ジャッキに係る荷重(以下、「ジャッキ荷重」と呼ぶことがある)に応じて常に同じ割合となる。つまり、第2比較例の仮受構造10Bとは異なり、本実施形態の仮受構造10では、構造部材の剛性や撓みとは無関係に、ジャッキ荷重のやり取りのみで構造材の負担荷重の分配を計算することができる。
【0071】
ところで、ジャッキ6とジャッキ15とが油圧ジャッキである場合、同一の油圧装置30から連通して油を供給する形態においては、各々の油圧ジャッキの油圧は一定となる。これにより、各油圧ジャッキが構造物70に与える荷重は、構造物70からの外力による油圧ジャッキの伸縮量に関わらず一定に保持される。また、各々の油圧ジャッキ内の油圧が一定の状況下において、各油圧ジャッキが構造物70に与える荷重の比は、各油圧ジャッキの受圧面積に比例する、という特徴がある。
【0072】
このため、本実施形態の仮受構造10では、構造物70の構造材の剛性を考慮することなく、仮受層1に設置したジャッキ6の受圧面積に対する第1上層11のジャッキ15の受圧面積の比率を調整することで、所定の層の梁に任意の荷重を精度良く分配させることができる。つまり、構造物70の所定の層の梁が負担する負担荷重の割合を、ジャッキ6の受圧面積とジャッキ15の受圧面積とに基づいて精度良く、また、容易に設定することができる。
【0073】
<ジャッキアップ方法>
図5は、本実施形態のジャッキアップ方法のフロー図である。
図6は、本実施形態の仮受構造10において、荷重が伝達される様子を示す説明図である。
【0074】
本実施形態のジャッキアップ方法は、上述した
図2に示される、免震層(ここでは、仮受層1)に設けられた免震装置80を取り出すジャッキアップ方法(具体的には、免震装置取出方法)である。本実施形態のジャッキアップ方法においては、まず、免震装置80の免震層におけるジャッキアップ対象部に免震層ジャッキ(ここでは、ジャッキ6)を設置する(免震層ジャッキ設置ステップ:
図5のS001)。なお、この時点においては、ジャッキ6はまだ作動させていない。
【0075】
次に、免震層の上層(ここでは、第1上層11)における、上述したジャッキアップ対象部の上方に上層ジャッキ(ここでは、ジャッキ15)を設置する(上層ジャッキ設置ステップ:
図5のS002)。なお、この時点においては、ジャッキ15はまだ作動させていない。
【0076】
次に、免震層ジャッキ(ジャッキ6)の押上力と上層ジャッキ(ジャッキ15)の押上力とが同調するように、免震層ジャッキで免震層の上部を押し上げ、上層ジャッキで上層の上部を押し上げる(同調押上ステップ:
図5のS003)。本実施形態の免震層ジャッキと上層ジャッキとは、油圧配管が連通した油圧ジャッキであるため、このような同調押上ステップを容易に行うことができる。
【0077】
最後に、免震装置80取り出す(免震装置取出ステップ:
図5のS004)。本実施形態のジャッキアップ方法では、構造物70の所定の層の梁が負担する負担荷重の割合を、仮受ジャッキ(免震層ジャッキ及び上層ジャッキ)の受圧面積に基づいて精度良く、また、容易に設定することができる。なお、免震層ジャッキの免震層ジャッキ受圧面積と、上層ジャッキの上層ジャッキ受圧面積とは、同じであっても良いし、上層ジャッキの上層ジャッキ受圧面積は、免震層ジャッキの免震層ジャッキ受圧面積以下であっても良い。免震層ジャッキの免震層ジャッキ受圧面積の上層ジャッキの上層ジャッキ受圧面積に対する割合によって、免震層の上部の梁が負担する荷重と、上層の上部の梁又は下層の上部の梁が負担する荷重とが自ずと設定される。
【0078】
図6に示される仮受構造10において、例えば、仮受層1のジャッキ6を基準として、第1上層11にジャッキ6の受圧面積の40%であるジャッキ15を設置して、2層分の梁(仮受層上部梁4及び第1上層梁13)で、構造物70の負担荷重を分担するように計画したとする。その場合、ジャッキ6に油が供給される油圧配管9と、ジャッキ15に油が供給される油圧配管18とを、連通配管31により連通した状態とすれば、ジャッキ6の受圧面積とジャッキ15の受圧面積の比とで各ジャッキのジャッキ荷重が決定される。このとき、ジャッキ15の第1上層梁13はジャッキ6のジャッキ荷重の40%を負担する。残りの荷重は全て柱に流れ、ジャッキ6の直上の仮受層上部梁4を通じてジャッキ6に流れるので、仮受層上部梁4は必然的にジャッキ6が負担する全荷重の60%を負担する。このように、各層に設置されるジャッキの受圧面積の比で、ジャッキ毎の負担荷重を調整し、梁にかかる負担荷重を分配することが可能である。
【0079】
<負担荷重を分配する計算方法>
図7は、本実施形態の別の例の仮受構造10Cの説明図である。
【0080】
以下では、
図7に示される本実施形態の別の例の仮受構造10Cを用いて、負担荷重を分配する計算式について説明する。仮受構造10Cでは、仮受層1の上部に、第1上層11の他に、第2上層21が形成されている。
【0081】
図7に示されるように、仮受層1に設置されたジャッキ6の受圧面積は、Aである。また、第1上層11に設置されたジャッキ15の受圧面積は、A
1である。また、第2上層21に設置されたジャッキ25の受圧面積は、A
2である。また、
図7に示されるように、仮受層上部梁4にかかる荷重をP
n、第1上層梁13にかかる荷重をP
1、第2上層梁23にかかる荷重をP
2とする。
【0082】
ここで、以下の式が成立する。なお、以下の式において、Nは、仮受層1に設置されたジャッキ6にかかる荷重であり、nは、計算式におけるジャッキの段数(すなわち、梁の段数)である。また、Pnは、ジャッキが設置された梁にかかる荷重(梁が負担する荷重)であり、Anは、ジャッキの受圧面積である。Aは、仮受層1に設置されたジャッキの受圧面積である。ここで、Pn、Anの各々は、ジャッキ単体での量を示すのではなく、各層毎に設置された複数のジャッキの合計量を示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
・計算例1
n=3として、各梁の負担荷重を同一にする場合の計算例を以下に示す。
【0088】
各梁の負担荷重を同一にすることから、P1~P3の関係は以下の通りとなる。
P1=P2=P3 ・・・(1)
ここで、簡単のために、各梁の負担荷重P1~P3の各々をPとおく。
【0089】
そうすると、上述した数式1から、仮受層1のジャッキ6のジャッキ荷重Nは、以下の通りとなる。
N=P1+P2+P3=3P ・・・(2)
この(2)をPについて解くと、以下の通りとなる。
P=N/3 ・・・(3)
【0090】
(3)を上述の数式2に代入すると、以下の通りとなる。
A1/A=1/3 ・・・(4)
また、(3)を上述の数式3に代入すると、以下の通りとなる。
A2/A=P/N+A1/A
=1/3+1/3
=2/3 ・・・(5)
【0091】
よって、最上段のジャッキ15を仮受層1のジャッキ6の1/3の受圧面積に、2段目のジャッキ25を仮受層1のジャッキ6の2/3の受圧面積になるようにジャッキを選定すれば、各梁に同一の荷重がかかるようになる。このように、構造物70の所定の層の梁が負担する負担荷重の割合を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて容易に設定することができる。
【0092】
・計算例2
n=3として、A1=A×40%、A2=A×70%のジャッキを選定した場合の計算例を以下に示す。
【0093】
各ジャッキ荷重を数式2及び数式3に代入すると、以下の通りとなる。
P1=A1/A×N
=0.4N ・・・(6)
P2=(A2-A1)/A×N
=(0.7A-0.4A)/A×N
=0.3N ・・・(7)
P3=(A3-A2)/A×N
=(A-0.7A)/A×N
=0.3N ・・・(8)
【0094】
よって、免震層のジャッキ荷重NはP1:P2:P3=4:3:3の割合で各梁に負担荷重が分配される。このように、構造物70の所定の層の梁が負担する負担荷重の割合を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて容易に設定することができる。
【0095】
<変形例>
・第1変形例
図8は、第1変形例の仮受構造10Dの説明図である。
【0096】
第1変形例の仮受構造10Dでは、仮設材27は、ジャッキ本体26に接続する鉛直部29Aと、鉛直部29Aと第2上層21の上部(又は下層の上部)とを接続する接続部29Bと、を有する。そして、接続部29Bは、鉛直部29Aに働く鉛直荷重を負担する面積を水平方向に拡大させ、第2上層21の上部(又は下層の上部)にかかる面圧を低減する水平面部29Cを有する。また、接続部29Bは、水平面部29Cに接続し、緊張による摩擦力で鉛直方向のせん断力を増大させる鉛直面部29Dを有する。接続部29Bは、傾斜接続材であっても良い。この場合であっても、構造物70の所定の層の梁が負担する負担荷重の割合を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて容易に設定することができる。
【0097】
・第2変形例
図9は、第2変形例の仮受構造10Eの説明図である。
【0098】
第2変形例の仮受構造10Eでは、仮設材27は、斜材であり、ジャッキ本体26の下部に傾斜基台29Eを有し、ジャッキ本体26は、斜材である仮設材27と同傾斜に設置される。また、仮設材27の鉛直対称方向において、斜材である仮設材27と均衡する均衡斜材をさらに有していても良い。この場合であっても、構造物70の所定の層の梁が負担する負担荷重の割合を、仮受ジャッキの受圧面積に基づいて容易に設定することができる。
【0099】
===その他===
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0100】
1 仮受層
2 仮受層下部梁
3 仮受層スラブ
4 仮受層上部梁
5 仮受対象部
6,15,25 ジャッキ
7,16,26 ジャッキ本体
8,17,27 仮設材
9,18,28 油圧配管
10 仮受構造
11 第1上層
12 第1上層スラブ
13 第1上層梁
14 第1上層柱
21 第2上層
22 第2上層スラブ
23 第2上層梁
24 第2上層柱
29A 鉛直部
29B 接続部
29C 水平面部
29D 鉛直面部
29E 傾斜基台
30,301,302 油圧装置
31 連通配管
70 構造物
80 免震装置
90 免震構造