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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008138
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】泥土評価システム、泥土評価方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20250109BHJP
   E21D 5/11 20060101ALI20250109BHJP
   G01N 11/02 20060101ALI20250109BHJP
   G01N 9/00 20060101ALI20250109BHJP
   G01N 9/24 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E21D9/093 Z
E21D5/11
G01N11/02
G01N9/00 Z
G01N9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110052
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】陳 剣
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】西 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博一
(72)【発明者】
【氏名】若林 成樹
(72)【発明者】
【氏名】吉成 勝美
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054AD02
2D054AD29
2D054BA03
2D054CA04
2D054DA03
2D054GA10
2D054GA25
2D054GA42
2D054GA67
2D054GA68
2D054GA89
2D054GA92
2D054GA95
(57)【要約】
【課題】シールド掘削機のチャンバー内における泥土の性状を連続的に計測する。
【解決手段】計測対象の試料の湿潤密度と含水量とが調整された状態において流動特性について計測された結果に基づいて、前記湿潤密度と含水量との組み合わせと、前記計測された流動特性との関係を表す評価データを記憶する記憶部と、シールド掘削機のチャンバー内における泥土の湿潤密度と含水量とを計測する計測器によって計測された、湿潤密度と含水量とを取得する第1取得部と、前記取得された湿潤密度と含水量の組み合わせに対応する流動特性を、前記記憶部に記憶された評価データから取得する第2取得部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の試料の湿潤密度と含水量とが調整された状態において流動特性について計測された結果に基づいて、前記湿潤密度と含水量との組み合わせと、前記計測された流動特性との関係を表す評価データを記憶する記憶部と、
シールド掘削機のチャンバー内における泥土の湿潤密度と含水量とを計測する計測器によって計測された、湿潤密度と含水量とを取得する第1取得部と、
前記取得された湿潤密度と含水量の組み合わせに対応する流動特性を、前記記憶部に記憶された評価データから取得する第2取得部と、
を有する泥土評価システム。
【請求項2】
前記評価データは、湿潤密度と含水量との関係に基づく流動特性を表す値の分布に応じて生成されたコンター図を表すデータである
請求項1に記載の泥土評価システム。
【請求項3】
前記流動特性を表す値としてテーブルフロー値が用いられる
請求項2に記載の泥土評価システム。
【請求項4】
前記流動特性を表す値としてミニスランプ値が用いられる
請求項2に記載の泥土評価システム。
【請求項5】
前記第1取得部は、前記シールド掘削機が掘削を停止している期間において前記計測器によって順次計測されることに応じて計測結果を順次取得し、
前記第2取得部は、前記第1取得部によって計測結果が得られると、得られた計測結果に応じた流動特性を得る
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の泥土評価システム。
【請求項6】
前記チャンバーを形成する隔壁を貫通するようにガイド管が取り付けられ、前記計測器がガイド管に挿入される
請求項5に記載の泥土評価システム。
【請求項7】
コンピュータに、
計測対象の試料の湿潤密度と含水量とが調整された状態において流動特性について計測された結果に基づいて、前記湿潤密度と含水量との組み合わせと、前記計測された流動特性との関係を表す評価データを記憶部に記憶させるステップと、
シールド掘削機のチャンバー内における泥土の湿潤密度と含水量とを計測する計測器によって計測された、湿潤密度と含水量とを取得するステップと、
前記取得された湿潤密度と含水量の組み合わせに対応する流動特性を、前記記憶部に記憶された評価データから取得するステップと、
を実行させる泥土評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土評価システム、泥土評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土圧式シールド工法により地山にトンネルなどを掘削する場合、シールド掘削機のカッターヘッドを回転させ、地盤を掘削することでチャンバー内に掘削土が堆積する。堆積した掘削土は、スクリューコンベア等によりチャンバー内から排出される。
また、大口径シールドにおいては、シールド停止中において、時間の経過に伴いチャンバー内の泥土が分離し、沈降することで締め固められると、掘進再開時にカッターヘッドが回転不能となる場合がある。このような事象が生じる要因は、例えば、シールド停止中においてチャンバー内の掘削された泥土が沈降することにより塑性流動性が落ちることが挙げられる。
このような事象を回避するためには、チャンバー内の泥土の性状を把握し、その性状に応じた対応をすることが考えられる。チャンバー内の泥土の性状を確認するためには、例えば、スクリューコンベアから排出された泥土の性状を目視観察や触診といった経験的な判断により定性的に管理する方法がある。
特許文献1には、土圧式シールドにおいて、密度・水分測定器を切羽の外周側と排土管にそれぞれ設け、掘削土や排土の性状を把握するシールド機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2533811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チャンバー内から排出された泥土を確認する方法では、排出された泥土を目視観察や触診等の終了を待つ必要があるため、断続的にしか性状を計測・評価することができない。そのため、シールド停止中にチャンバー内の泥土の性状をより精度よく把握できることが望ましい。
なお、特許文献1は、切羽の外周側や排土の性状を把握することができるが、チャンバー内の泥土の性状を把握するものではない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、シールド掘削機のチャンバー内における泥土の性状を連続的に計測することができる泥土評価システム、泥土評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、計測対象の試料の湿潤密度と含水量とが調整された状態において流動特性について計測された結果に基づいて、前記湿潤密度と含水量との組み合わせと、前記計測された流動特性との関係を表す評価データを記憶する記憶部と、シールド掘削機のチャンバー内における泥土の湿潤密度と含水量とを計測する計測器によって計測された、湿潤密度と含水量とを取得する第1取得部と、前記取得された湿潤密度と含水量の組み合わせに対応する流動特性を、前記記憶部に記憶された評価データから取得する第2取得部と、を有する泥土評価システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、コンピュータに、計測対象の試料の湿潤密度と含水量とが調整された状態において流動特性について計測された結果に基づいて、前記湿潤密度と含水量との組み合わせと、前記計測された流動特性との関係を表す評価データを記憶部に記憶させるステップと、シールド掘削機のチャンバー内における泥土の湿潤密度と含水量とを計測する計測器によって計測された、湿潤密度と含水量とを取得するステップと、前記取得された湿潤密度と含水量の組み合わせに対応する流動特性を、前記記憶部に記憶された評価データから取得するステップと、を実行させる泥土評価方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、シールド掘削機のチャンバー内における泥土の性状を連続的に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】シールド掘削機10を側面から見た構成図である。
図2A】カッター装置15が掘削を行う場合における計測部20の構成を示す断面図である。
図2B】シールド停止中において湿潤密度・含水量を計測する場合における計測部20の構成を示す断面図である。
図3】泥土評価システムSの構成を示す概略機能ブロック図である。
図4】泥土評価システムSの動作を説明するフローチャートである。
図5A】テーブルフロー値に基づく計測対象試料(粘性土)の評価例を示すコンター図である。
図5B】テーブルフロー値に基づく計測対象試料(砂質土)の評価例を示すコンター図である。
図6】計測対象試料の粒径加積曲線を示す図である。
図7A】ガンマ線計数率比と湿潤密度の計測結果との関係を示すグラフである。
図7B】中性子線計数率比と含水量の計測結果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による泥土評価システムについて図面を参照して説明する。
図1は、泥土評価システムが用いられる、土圧式シールド工法によるシールド掘削機の構成例を示す概略構成図である。図1では、シールド掘削機10を側面から見た構成図である。
【0011】
シールド掘削機10は、スキンプレート11の先端部を隔壁12により区画形成することで、掘削土を取り込むためのチャンバー13が設けられる。チャンバー13の内部には、カッター装置15により切羽を掘削することで生じる掘削土が取り込まれる。カッター装置15の隔壁12に対向する側に、攪拌翼14が設けられる。シールド掘削機10は、チャンバー13内の掘削土に対して加水ベントナイトや高分子材料等の薬液あるいは気泡等を注入管から供給することで添加し、攪拌翼14によって攪拌することにより掘削土に所定の塑性流動性を持たせることで泥土にし、その土圧を切羽に作用させて、切羽を安定化しつつ掘進を行うように構成されている。
【0012】
スクリューコンベア16は、チャンバー13内の泥土を、排土ゲートを介してコンベア17に排土する。コンベア17は、スクリューコンベア16から排出された泥土を、後段に排出する。
【0013】
計測部20は、隔壁12のカッター装置15に対向する面とは反対側の面から、隔壁12を貫通してチャンバー13内に挿入され、チャンバー13内の泥土の湿潤密度および含水量を計測する。計測部20は、チャンバー13内にポータブル1孔式密度計・水分計が直接差し込まれる方法で、チャンバー13内の泥土の湿潤密度および含水量を計測する。
計測部20は、隔壁12の高さ方向における中央よりも上部に設けられるが、中央よりも下部に設けられてもよい。
スケーラ21は、プローブに対する電源の供給と、計測部20から得られる検出信号に基づいて計数し、測定結果を出力する。
【0014】
図2は、計測部20の構成の一例を示す断面図である。
図2Aは、カッター装置15が掘削を行う場合における計測部20の構成を示す断面図、図2Bは、シールド停止中において湿潤密度・含水量を計測する場合における計測部20の構成を示す断面図である。
【0015】
図2Aにおいて、ケース部201は、隔壁12に取り付けられている。
また、図2Aにおいて、ガイド管204は、ケース部201の開口部から引き抜かれている。取り付け治具203の隔壁12に取り付けられる端部とは反対側の端部の内周には、ねじが形成されており、封止部202が取り付けられ、閉止されている。これにより、掘削時において、チャンバー13内の泥土あるいは水分がチャンバー13内から隔壁12よりも手前側に流出することを防止している。
図2Bにおいて、シールド停止中では、封止部202が取り外され、取り付け治具203が取り付けられる。取り付け治具203の隔壁12に取り付けられる端部には、ねじが形成されており、ケース部201に取り付けられるようになっている。取り付け治具203のもう一方の端部の開口部から、ガイド管204がチャンバー13内に到達するように挿入される。ガイド管204の内周には、RI(ラジオアイソトープ)機器210が挿入される。
【0016】
ガイド管204の形状は円筒状である。ガイド管204の一方の端部は、外周部から連なるようにして閉じられており、もう一方の端部は、開口している。
ガイド管204の厚さは、数mm程度(例えば、3~6mm程度)である。ここでは、ガイド管204は、隔壁とは別体の部材として構成されているため、隔壁の厚さとは別の厚さに設定することができる。また、取り付け治具203の内周には、止水ゴム205が設けられており、ガイド管204が、閉じられた端部から取り付け治具203に挿入された際に、取り付け治具203とガイド管204との間に隙間が生じないように密着される。これにより、チャンバー13内の水分が取り付け治具203とガイド管204との間から流出しないように完全に止水することも可能である。止水ゴム205は、ガイド管204と取り付け治具203との間における止水性を確保できるような止水機構であれば、ゴム以外の可撓性材料の部材を用いるようにしてもよい。
【0017】
また、ガイド管204は、ケース部201と取り付け治具203とを貫通するように取り付けられることで、隔壁12を貫通するように取り付けられるが、ケース部201と取り付け治具203を用いずに取り付けられてもよい。この場合、隔壁12とガイド管204との間からチャンバー13内の泥土や水分が流出しないような止水機構が設けられることが好ましい。
【0018】
RI機器210は、ガイド管204の内周に挿入される。RI機器は、その先端部に密度計・水分計線源部211が配置され、先端部の次段に密度計・水分計プローブ212が配置され、密度計・水分計プローブ212の後段に延長ロード213が配置される。RI機器210によって計測された結果を表す信号は、ケーブル215を介してスケーラ21に出力される。
【0019】
図3は、泥土評価システムSの構成を示す概略機能ブロック図である。
泥土評価システムSは、RI機器210、スケーラ21、評価装置100を含む。
RI機器210は、スケーラ21に接続され、チャンバー13内に存在する泥土の湿潤密度と含水量とを測定し、測定結果をスケーラ21に出力する。
スケーラ21は、RI機器210と評価装置100に接続され、RI機器210から測定結果を取得し、評価装置100に出力する。
評価装置100は、スケーラ21に接続される。評価装置100は、記憶部101、入力部102、第1取得部104、第2取得部105、出力部106を有する。
記憶部101は、計測対象の試料の湿潤密度と含水量とが調整された状態において流動特性について計測された結果に基づいて、前記湿潤密度と含水量との組み合わせと、前記計測された流動特性との関係を表す評価データを記憶する。
評価データは、湿潤密度と含水量との関係に基づく流動特性を表す値の分布に応じて生成されたコンター図を表すデータである。
流動特性を表す値としてテーブルフロー値を用いるようにしてもよい。
また、流動特性を表す値としてミニスランプ値を用いるようにしてもよい。
【0020】
入力部102は、技術者等の操作者からの操作内容に基づいて、テーブルフロー値またはミニスランプ値の入力を受け付ける。入力部102は、テーブルフロー値を得る場合、テーブルフロー値と湿潤密度と含水量との組み合わせのデータを得る。また入力部102は、ミニスランプ値を得る場合、ミニスランプ値と湿潤密度と含水量との組み合わせのデータを得る。
入力部102は、マウス、キーボード、タッチパネル等のうち少なくともいずれか1つの入力装置であり、操作者からの操作内容を受け付けることで、テーブルフロー値またはミニスランプ値を取得するようにしてもよい。また、入力部102は、評価装置100の外部の機器から送信されたテーブルフロー値またはミニスランプ値を通信回線を介して受信することで入力を受け付けるようにしてもよい。
【0021】
データ加工部103は、入力部102から入力されたデータに基づいて、コンター図を生成する。例えば、データ加工部103は、入力部102から入力されるテーブルフロー値と湿潤密度と含水量に基づいて、湿潤密度と含水量とに応じたテーブルフロー値について二次元分布データを生成することで、コンター図を生成する。また、データ加工部103は、入力部102から入力されるミニスランプ値と湿潤密度と含水量に基づいて、湿潤密度と含水量とに応じたミニスランプ値について二次元分布データを生成することで、コンター図を生成してもよい。
【0022】
第1取得部104は、シールド掘削機SEのチャンバー内における泥土の湿潤密度と含水量とを計測する計測器によって計測された、湿潤密度と含水量とを取得する。
第1取得部104は、シールド掘削機SEが掘削を停止している期間においてRI機器210によって順次計測されることに応じて計測結果を順次取得する。
【0023】
第2取得部105は、取得された湿潤密度と含水量の組み合わせに対応する流動特性を、記憶部101に記憶された評価データから取得する。
第2取得部105は、第1取得部104によって計測結果が得られると、得られた計測結果に応じた流動特性を得る。
【0024】
出力部106は、第2取得部105によって取得された評価データを出力する。出力部106は、有線または無線によって外部機器に通信可能に接続することができ、接続された外部機器に対して評価データを出力するようにしてもよい。外部機器は、コンピュータ、スマートフォン等のいずれであってもよい。これらの外部機器は、シールド掘削機10によって掘削が行われる施工現場において施工に携わる技術者、作業者等によって利用されてもよい。これにより技術者や作業者が、外部機器の表示画面に表示される評価データを確認することで、チャンバー13内の泥土の性状を把握することができる。
また、出力部106は、評価データを出力するものであればよく、例えば、出力部106は、表示装置であり、評価データを表示装置の表示画面に表示することで出力してもよい。
【0025】
上述の評価装置100は、1台のコンピュータによって構成されてもよいし、クラウドサーバによって構成されてもよい。
記憶部101は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
この記憶部101は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
入力部102、データ加工部103、第1取得部104、第2取得部105、出力部106は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0026】
図4は、泥土評価システムSの動作を説明するフローチャートである。
評価装置100の入力部102は、対象試料の密度と含水量が事前に調整された後、当該対象試料を対象として測定されたテーブルフロー値の入力を受け付ける。対象試料は、チャンバー13内から得られた泥土である。チャンバー13内の泥土を得る場合、シールド掘削機10のシールド停止中において、スクリューコンベア16によって搬送された泥土を得るようにしてもよい。このようにして得られた泥土から複数の塊を取り出し、泥塊毎に異なる湿潤密度と含水量となるように調整する。そして、調整された泥塊毎に、テーブルフロー試験を実施し、テーブルフロー値を得る。このようなテーブルフロー値を得る実験は、チャンバー13内から異なる種別の泥土が得られると、その種別ごとに行われる。
テーブルフロー値は、チャンバー13内の泥土の流動特性を表す値として用いることができ、また、泥土の塑性流動特性に関わる主要な要求性能として用いることができる。そして、このようにして得られたテーブルフロー値と、当該テーブルフロー値が得られた泥塊の湿潤密度及び含水量とを、チャンバー内の泥土性状を評価するための値として用いることができる。ここで、泥土の塑性流動性を確保可能なテーブルフロー値の判断目安は、例えば、105mm~160mmである。
テーブルフロー試験は、対象試料(ここではチャンバー13内から得られた泥土)にフローテーブル上で振動を与えることで行われる。ここでは、所定の回数の振動を与えた後の対象試料の広がりの最大径(mm)をテーブルフロー値として用いる。ここでは、泥塊の湿潤密度及び含水量の組み合わせによっては、同じ値または異なるテーブルフロー値が得られる。操作担当者は、このようにして得られた、湿潤密度と含水量とテーブルフロー値との組み合わせを複数、入力部102から、泥土の種別毎に入力する。
【0027】
入力部102から湿潤密度と含水量とテーブルフロー値との組み合わせが複数入力されると、データ加工部103は、湿潤密度と含水量とテーブルフロー値とに基づいて、湿潤密度と含水量とに応じたテーブルフロー値についての二次元分布データを、泥土の種別毎に生成し(ステップS102)、生成された二次元分布データを記憶部101に記憶させる(ステップS103)。データ加工部103は、このようにして生成された二次元分布データをもとに、出力部106によって表示画面にコンター図として表示するようにしてもよい。
【0028】
図5は、データ加工部103によって生成されたコンター図の一例を示す図である。
図5Aは、テーブルフロー値に基づく計測対象試料(粘性土)の評価例を示すコンター図であり、図5Bは、テーブルフロー値に基づく計測対象試料(砂質土)の評価例を示すコンター図である。このように、泥土の種別が異なると、二次元分布データ(コンター図)も異なる。
【0029】
ここでは、テーブルフロー値を用いて泥土の流動特性を評価する場合について説明したが、ミニスランプ値を用いて泥土の流動特性を評価するようにしてもよい。すなわち、チャンバー13内のから得られた泥土について、ミニスランプ試験を行うことで、ミニスランプ値を測定するようにしてもよい。ミニスランプ値の測定は、ミニスランプコーンに対象試料を詰めた後、直ちにミニスランプコーンを静かに鉛直に連続して引き上げる。その後、対象試料の中央部において下がりを測定し、これをミニスランプ値とする。
また、ここでは、テーブルフロー値とミニスランプ値のいずれか一方の値を泥土の流動特性として評価するようにしてもよいし、テーブルフロー値とミニスランプ値との組合せで、泥土の流動特性を評価するようにしてもよい。
【0030】
このようにしてチャンバー13内の泥土について、流動特性を評価する値として、種別毎に記憶しておくことで、シールド掘削機SEによって新たに切羽の掘削が行われ、同じ種別の泥土が得られた場合には、記憶部101に記憶された二次元分布データを参照することができる。
【0031】
図6は、計測対象試料の粒径加積曲線を示す図である。図6では、図5Aに示す計測対象試料の種別である粘性土についての粒径加積曲線と、砂質土の粒径加積曲線とが示されている。
【0032】
次に、シールド掘削機SEが一定区間において切羽の掘削を行い、掘削を停止すると、第1取得部40は、掘削が停止している期間において、RI機器210によって計測される計測結果を取得する(ステップS104)。ここでは、RI機器210は、一定の測定間隔毎に計測を行い、計測が行われる毎に、計測結果を順次出力する。これにより、RI機器210の計測結果がスケーラ21を介して評価装置100に出力される。第1取得部40は、RI機器210によって計測が行われる毎に出力される測定結果を順次取得する。RI機器210からスケーラ21を介して得られる計測結果は、チャンバー13内に存在する泥土の湿潤密度と含水量である。
【0033】
ここで、図6は、計測対象試料の粒径加積曲線を示すグラフであり、横軸は粒径を表し、縦軸は通過率を表す。また、図6では、図5に示す2種類の試料(粘性土、砂質土)のそれぞれについて粒径加積曲線が示されている。
このような図6に示す計測対象試料に対し、放射線(ガンマ線および中性子線)計数率の計測を行い、放射線係数率比(放射線計数率/標準計数率)を求める。放射線計数率は、バックグラウンドを除いた値である。標準計数率は、放射線線源の基準値から測定日(半減期)を考慮した値である。
【0034】
図7Aは、ガンマ線計数率比と湿潤密度の計測結果との関係を示すグラフであり、図7Bは、中性子線計数率比と含水量の計測結果との関係を示すグラフである。これらの図に示すように、測定の結果、ガンマ線計数率比と湿潤密度、また、中性子線計数率比と含水量との間に非常に高い相関を確認することができた。そのため、放射線計数率の測定結果から計測対象試料の湿潤密度および含水量を算定できることが分かった。このようにしてRI機器210は、湿潤密度と含水量とを測定することができる。
【0035】
また、RI機器210は、ガイド管を挟んで反対側に存在するチャンバー13内の泥土を放射線計測を行うことができる。ガイド管の厚さは、数mm程度である。そのため、数mm程度のガイド管越しの放射線計測をすることにより、密度・含水量の計測精度を保つことができる利点がある。
【0036】
次に、第2取得部105は、第1取得部104によって計測結果として湿潤密度と含水量とが得られると、得られた湿潤密度と含水量計の組み合わせに対応する流動特性を、記憶部101に記憶された評価データ(二次元分布データ)を読み出すことによって取得する(ステップS105)。例えば、第2取得部105は、湿潤密度と含水量計の組み合わせに対応するテーブルフロー値を読み出す。出力部106は、読み出されたテーブルフロー値を、表示画面に表示する。これにより、施工現場における技術者や作業者は、表示されたテーブルフロー値を確認することで、チャンバー13内の泥土の性状を把握することができる。ここでは、事前に、計測対象試料の湿潤密度、含水量を調整し、テーブルフロー値を測り、性状評価用コンター図を作成し、記憶部101に記憶されている。そのため、シールド掘進停止中において、RI機器210によって湿潤密度及び含水量が順次測定されることで、測定された湿潤密度及び含水量に基づいて、チャンバー13内の泥土の性状を連続的に計測・評価することが可能である(ステップS106)。
【0037】
以上説明した実施形態によれば、シールド掘削機SEが掘進を停止している期間において、チャンバー13内の泥土をサンプリングすることなく、チャンバー13内の圧力下における泥土の性状を連続的に計測・評価することが可能となる。連続的に計測・評価することができるため、チャンバー13内の泥土が、時間の経過に伴って性状が変化する場合であっても、その傾向を把握することが可能である。例えば、チャンバー13内の泥土が、時間の経過に伴って分離し、沈降する状況が発生しつつあるか否かについても把握することが可能となる。
【0038】
また、上述した実施形態における、泥土性状の計測・評価方法によれば、数mm肉厚程度のガイド管越しに放射線計測を行うようにしたので、計測精度が低下してしまうことを抑制し、シールド掘進停止中にチャンバー内の圧力下における泥土の性状を連続的に計測・評価可能である。
【0039】
また、チャンバー内の圧力下における泥土の性状を力学的負荷として間接的に評価するための方法が提案されているが、(例えば、特許第6905364号、特許第6678438号)、チャンバー内の圧力下における泥土の湿潤密度や水分量など泥土の性状と直接関わっている物理的な指標を計測できるものではない。これに対し、本実施形態によれば、チャンバー13内の圧力下にある状態の泥土について、湿潤密度や水分量など泥土の性状と直接関わっている物理的な指標を計測することができる。
【0040】
また、シールド掘削機のチャンバー内に充満された土砂の密度・水分特性を放射線(ガンマ線や中性子線)計測する装置(例えば特許第7066907号)があるが、土砂密度(例えば気泡混合量)を把握するものであり、土砂特性(流動特性)の評価方法にはなっていない。また、一般に40~60mm程度のチャンバー隔壁の肉厚より薄肉化されている25mm肉厚程度の鋼板越しの放射線計測装置であるため、測定精度が低下してしまう。これに対し、本実施形態では、数mm程度のガイド管越しに放射線計測を行うことができるため、測定精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0041】
上述した実施形態における評価装置100をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0042】
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施形態に係る泥土評価システムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標などの達成に貢献し得る。
【0043】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…シールド掘削機、11…スキンプレート、12…隔壁、13…チャンバー、14…攪拌翼、15…カッター装置、16…スクリューコンベア、17…コンベア、20…計測部、21…スケーラ、40…第1取得部、100…評価装置、101…記憶部、102…入力部、103…データ加工部、104…第1取得部、105…第2取得部、106…出力部、201…ケース部、202…封止部、203…治具、204…ガイド管、205…止水ゴム、210…RI機器、211…密度計・水分計線源部、212…密度計・水分計プローブ、213…延長ロード、215…ケーブル、S…泥土評価システム
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B