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  • 特開-車載用制御装置 図1
  • 特開-車載用制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008143
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車載用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20250109BHJP
【FI】
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110066
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土田 康隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】谷山 元彦
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA01
3D241BA18
3D241BA54
3D241BB01
3D241CA08
3D241CB08
3D241CC03
3D241CC08
3D241CD05
3D241CD13
3D241DA13Z
(57)【要約】
【課題】減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときに生じ得るトルクショックを抑制する。
【解決手段】車載用制御装置は、走行用のモータと、油圧ブレーキと、を備える電動車両に搭載され、所定条件が成立しているときにアクセルオフしたときにはモータによる回生ブレーキと油圧ブレーキとを用いて減速度を制御する減速支援制御を実行する。車載用制御装置は、減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、アクセル開度に基づいて設定される設定トルクとこの設定トルクに対して緩変化処理を施して得られる補正トルクとのうちの小さい方を用いてモータを制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用のモータと、油圧ブレーキと、を備える電動車両に搭載され、所定条件が成立しているときにアクセルオフしたときには前記モータによる回生ブレーキと前記油圧ブレーキとを用いて減速度を制御する減速支援制御を実行する車載用制御装置であって、
前記減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、アクセル開度に基づいて設定される設定トルクと前記設定トルクに対して緩変化処理を施して得られる補正トルクとのうちの小さい方を用いて前記モータを制御する、
ことを特徴とする車載用制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載用制御装置であって、
前記モータは、前輪に連結された前輪駆動用モータおよび後輪に連結された後輪駆動用モータであり、
通常時のアクセルオンのときには、前記設定トルクをトルク分配率を用いて前記前輪駆動用モータと前記後輪駆動用モータとのうち一方のモータから出力すべき第1設定トルクを設定すると共に前記第1設定トルクを用いて前記一方のモータを制御し、前記第1設定トルクの設定の後に他方のモータから出力すべき第2設定トルクを設定すると共に前記第2設定トルクを用いて前記他方のモータを制御し、
前記減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、前記第1設定トルクと前記第1設定トルクに緩変化処理を施して得られる第1補正トルクとのうちの小さい方を用いて前記一方のモータを制御する、
車載用制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の車載用制御装置であって、
前記他方のモータについては、前記減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときでも前記第2設定トルクを用いて制御する、
車載用制御装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の車載用制御装置であって、
前記一方のモータは、前記後輪駆動用モータである、
車載用制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のうちのいずれか1つの請求項に記載の車載用制御装置であって、
前記電動車両は、エンジンを搭載するハイブリッド車両である、
車載用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用制御装置に関し、詳しくは、車載されて減速支援制御を実行する車載用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車載用制御装置としては、電動車両の減速に関する目標位置が設定されている場合に、設定されていない場合と比較して、モータジェネレータによる制動力を増加させる回生拡大制御を含む先読み減速支援制御を実行するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。先読み減速支援制御には、電動車両の減速に関する目標位置が設定されている場合に、運転者にアクセルペダルをオフ状態とする操作を促す情報を報知するアクセルオフ案内制御も含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-112204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車載用制御装置では、減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、急激なトルク変化によりトルクショックが生じる場合が生じる。こうしたショックは、運転者や乗員に乗り心地の悪化を感じさせてしまう。
【0005】
本開示の車載用制御装置は、減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときに生じ得るトルクショックを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の車載用制御装置は、
走行用のモータと、油圧ブレーキと、を備える電動車両に搭載され、所定条件が成立しているときにアクセルオフしたときには前記モータによる回生ブレーキと前記油圧ブレーキとを用いて減速度を制御する減速支援制御を実行する車載用制御装置であって、
前記減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、アクセル開度に基づいて設定される設定トルクと前記設定トルクに対して緩変化処理を施して得られる補正トルクとのうちの小さい方を用いて前記モータを制御する、
ことを特徴とする。
【0008】
本開示の車載用制御装置は、走行用のモータと、油圧ブレーキと、を備える電動車両に搭載され、所定条件が成立しているときにアクセルオフしたときには前記モータによる回生ブレーキと前記油圧ブレーキとを用いて減速度を制御する減速支援制御を実行する。車載用制御装置は、通常時には、アクセル開度に基づいて設定される設定トルクを用いてモータを制御する。減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、アクセル開度に基づいて設定される設定トルクと設定トルクに対して緩変化処理を施して得られる補正トルクとのうちの小さい方を用いてモータを制御する。このように、減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、設定トルクと緩変化処理を施して得られる補正トルクとのうち小さい方を用いてモータを制御するから、急激なトルク変化を抑制し、減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときに生じ得るトルクショックを抑制することができる。所定条件としては、所定距離内の先行車両を発見した条件や、所定距離内でカーブの走行を予測した条件、所定距離内で交差点の走行を予測した条件などを挙げることができる。
【0009】
本開示の車載用制御装置において、前記モータは、前輪に連結された前輪駆動用モータおよび後輪に連結された後輪駆動用モータであり、通常時のアクセルオンのときには、前記設定トルクをトルク分配率を用いて前記前輪駆動用モータと前記後輪駆動用モータとのうち一方のモータから出力すべき第1設定トルクを設定すると共に前記第1設定トルクを用いて前記一方のモータを制御し、前記第1設定トルクの設定の後に他方のモータから出力すべき第2設定トルクを設定すると共に前記第2設定トルクを用いて前記他方のモータを制御し、前記減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときには、前記第1設定トルクと前記第1設定トルクに緩変化処理を施して得られる第1補正トルクとのうちの小さい方を用いて前記一方のモータを制御するものとしてもよい。この場合、前記他方のモータについては、前記減速支援制御を実行している最中にアクセルオンとなったときでも前記第2設定トルクを用いて制御するものとしてもよい。一方のモータは、後輪駆動用モータが好ましく、前輪駆動用モータあってもよい。
【0010】
本開示の車載用制御装置において、電動車両としてエンジンを搭載するハイブリッド車両に搭載されるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態としての車載用制御装置を搭載する電動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】電子制御ユニット40により実行される減速支援制御直後のトルク設定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示を実施するための形態(実施形態)について説明する。図1は、本開示の実施形態としての車載用制御装置を搭載する電動車20の構成の概略を示す構成図である。実施形態の電動車20は、バッテリ21と、前輪用モータ22と、前輪用インバータ24と、後輪用モータ32と、後輪用インバータ34と、電子制御ユニット40と、ブレーキアクチュエータ62と、ナビゲーションシステム70と、周辺認識装置80と、を備える。
【0013】
バッテリ21は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ラインにより前輪用インバータ24や後輪用インバータ34に接続されている。
【0014】
前輪用モータ22は、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子と、を備える。この前輪用モータ22の回転子は、前輪28a,28bにデファレンシャルギヤ27を介して連結された駆動軸26に接続されている。
【0015】
前輪用インバータ24は、前輪用モータ22に接続されると共に電力ラインに接続されている。この前輪用インバータ24は、6つのトランジスタと、6つのダイオードと、を有する周知のインバータ回路として構成されており、6つのトランジスタをスイッチング制御することにより三相交流電力を前輪用モータ22に印加して前輪用モータ22を駆動する。
【0016】
後輪用モータ32は、前輪用モータ22と同様に、同期発電電動機として構成されており、永久磁石が埋め込まれた回転子と、三相コイルが巻回された固定子と、を備える。この後輪用モータ32の回転子は、後輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36に接続されている。
【0017】
後輪用インバータ34は、後輪用モータ32に接続されると共に電力ラインに接続されている。この後輪用インバータ34は、前輪用インバータ24と同様に、6つのトランジスタと、6つのダイオードと、を有する周知のインバータ回路として構成されており、6つのトランジスタをスイッチング制御することにより三相交流電力を後輪用モータ32に印加して後輪用モータ32を駆動する。
【0018】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に、処理プログラムを記憶するROM44やデータを一時的に記憶するRAM46,図示しないフラッシュメモリ,図示しない入出力ポート、図示しない通信ポートなどを備える。
【0019】
電子制御ユニット40には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット40に入力される信号としては、例えば、前輪用モータ22や後輪用モータ32の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ(例えばレゾルバ)23,33からの回転位置θmf,θmr、バッテリ21の端子間に取り付けられた図示しない電圧センサからの電圧VB、バッテリ21の出力端子に取り付けられた図示しない電流センサからの電流IBを挙げることができる。また、スタートスイッチ50からのスタート信号や、シフトレバー51の操作位置を検出するシフトポジションセンサ52からのシフトポジションSP、アクセルペダル53の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル55の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキペダルポジション、車速センサからの車速Vなども挙げることができる。電子制御ユニット40には、周辺認識装置59からの情報も入力されている。周辺認識装置59は、前方カメラや後方カメラ、ミリ波レーダー、準ミリ波レーダー、赤外線レーザーレーダー、ソナーなどにより構成されており、自車やその周囲の情報(例えば、自車の前方や後方の他車との車間距離や他社の車速、路面の車線における自車の走行位置など)を検出する。
【0020】
電子制御ユニット40からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット40から出力される信号としては、例えば、前輪用インバータ24や後輪用インバータ34のトランジスタへのスイッチング制御信号や、電力ラインのバッテリ21近傍に取り付けられた図示しないシステムメインリレーへの駆動制御信号などを挙げることができる。
【0021】
ブレーキアクチュエータ62は、ブレーキペダルの踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ60の圧力(ブレーキ圧)と車速Vとにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動力が前輪28a,28bや後輪38a,38bに作用するようディスクブレーキ66a~66dのピストンの油圧を調整したり、ブレーキペダル55の踏み込みに無関係に、前輪28a,28bや後輪38a,38bに制動力が作用するようディスクブレーキ66a~66dのピストンの油圧を調整したりすることができるように構成されている。以下、ブレーキアクチュエータ62の作動により前輪28a,28bや後輪38a,38bに作用させる制動力を油圧ブレーキと称することがある。ブレーキアクチュエータ62は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)64により制御されている。ブレーキECU64は、電子制御ユニット40と通信しており、電子制御ユニット40からの制御信号によってブレーキアクチュエータ62を駆動制御したり、必要に応じてブレーキアクチュエータ62の状態に関するデータを電子制御ユニット40に出力する。
【0022】
ブレーキECU64は、前輪28a,28bや後輪38a,38bに取り付けられた車輪速センサ68a~68dからの車輪速Vfr,Vfl,Vrr,Vrlや、図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力し、運転者がブレーキペダル55を踏み込んだときに前輪28a,28bや後輪38a,38bに作用させるべき制動トルクを計算する。そして、ブレーキECU64は、前輪28a,28bや後輪38a,38bに作用させるべき制動トルクをディスクブレーキ66a~66dによる制動トルクと前輪用モータ22や後輪用モータ32の回生制御による制動トルクとに分担し、ディスクブレーキ66a~66dから作用させるべき制動トルクが作用するようにブレーキアクチュエータ62を駆動制御する。前輪用モータ22や後輪用モータ32の回生制御による制動トルクについては電子制御ユニット40に送信し、これを受信した電子制御ユニット40が前輪用モータ22や後輪用モータ32から出力すべき制動トルクが出力されるように前輪用インバータ24や後輪用インバータ34のトランジスタをスイッチング制御する。
【0023】
ナビゲーションシステム70は、自車両を設定した目的地に誘導するシステムであり、地図情報や表示部を備える。ナビゲーションシステム70は、ナビゲーションシステム70は、目的地が設定されると、目的地の情報と図示しないGPSにより取得した現在地(現在の自車両の位置)の情報と地図情報とに基づいて経路を設定し、案内する。ナビゲーションシステム70は、電子制御ユニット40と通信しており、各種情報のやりとりを行なっている。
【0024】
こうして構成された電動車20では、所定条件が成立したときにアクセルオフされたときには、電子制御ユニット40により減速支援制御が実行される。所定条件としては、周辺認識装置59により前方の他車との車間距離が所定距離以下となった条件や、周辺認識装置59やナビゲーションシステム70により前方に見通しの悪いカーブを発見した条件や、周辺認識装置59やナビゲーションシステム70により前方に交差点を発見した条件などを挙げることができる。減速支援制御は、シフトポジションSPを前進走行用のポジション(Dポジション)とした状態でアクセルオフしたときの通常の減速度より大きな減速度となるように前輪用モータ22や後輪用モータ32、油圧ブレーキを駆動する制御である。具体的には、実施形態では、まず、周辺認識装置59により検出された前方の他車との車間距離や見通しの悪いカーブまでの距離、交差点までの距離、車速Vに応じて目標減速度を設定する。続いて目標減速度を実現するための前輪用モータ22および後輪用モータ32から出力するモータ制動トルクと油圧ブレーキによるブレーキ制動トルクとを計算する。モータ制動トルクについては、前輪用モータ22から出力すべき回生トルクと後輪用モータ32から出力すべき回生トルクとを分割比kを用いて計算し、前輪用モータ22と後輪用モータ32とからそれぞれの回生トルクが出力されるように前輪用インバータ24と後輪用インバータ34とをスイッチング制御する。一方、電子制御ユニット40はブレーキ制動トルクについてはブレーキECU64に送信する。ブレーキ制動トルクを受信したブレーキECU64は、前輪28a,28bや後輪38a,38bに作用させるべき制動トルクを計算し、ディスクブレーキ66a~66dから作用させるべき制動トルクが作用するようにブレーキアクチュエータ62を駆動制御する。
【0025】
次に、実施形態の電動車20の電子制御ユニット40により減速支援制御が実行されている最中に運転者によりアクセルペダル53が踏み込まれたとき(アクセルオンとなったとき)の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット40により実行される減速支援制御直後のトルク設定処理の一例を示すフローチャートである。この処理は所定時間毎に繰り返し実行される。
【0026】
減速支援制御直後のトルク設定処理が実行されると、電子制御ユニット40は、アクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Accや車速センサ58からの車速Vを入力し(ステップS100)、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて前輪用モータ22および後輪用モータ32から出力すべき目標トルクT*を設定する(ステップS110)。
【0027】
続いて、目標トルクT*に分割比kを乗じて仮後輪トルクTrtmpを設定すると共に(ステップS120)。前回この処理を実行したときに設定した後輪トルクTr*(以下、前回後輪トルクTr*という)から仮後輪トルクTrtmpに向けて緩変化処理により補正トルクTrtを設定する(ステップS130)。この緩変化処理としては、なまし処理やレートリミット処理などを用いることができる。そして、仮後輪トルクTrtmpと補正トルクTrtとのうち小さい方を後輪トルクTr*として設定する(ステップS140)。こうして後輪トルクTr*を設定すると、直ちに後輪用モータ32から後輪トルクTr*が出力されるように後輪用インバータ34を制御する。このように、前回後輪トルクTr*から仮後輪トルクTrtmpに向けて緩変化処理により補正トルクTrtを設定すると共に仮後輪トルクTrtmpと補正トルクTrtとのうち小さい方を後輪トルクTr*として設定することにより、後輪トルクTr*の急激な変化を抑制することができる。こうした後輪トルクTr*の急激な変化の抑制により、減速支援制御が実行されている最中にアクセルオンとなったときに生じ得るトルクショックを抑制することができる。
【0028】
後輪トルクTr*を設定すると、目標トルクT*に分割比(1-k)を乗じて前輪トルクTf*を設定し(ステップS150)、本処理を終了する。前輪トルクTf*が設定されると、直ちに前輪用モータ22から前輪トルクTf*が出力されるように前輪用インバータ24を制御する。前輪トルクTf*については緩変化処理を用いないのは、前輪トルクTf*と後輪トルクTr*の一方に緩変化処理を施せば効果を奏することと、前輪トルクTf*の設定に先立って後輪トルクTr*が設定されることから後輪トルクTr*について緩変化処理を用いればトルクショックを抑制することができることとに基づいている。
【0029】
以上説明した実施形態の電動車20の電子制御ユニット40では、減速支援制御が実行されている最中に運転者によりアクセルペダル53が踏み込まれたとき(アクセルオンになったとき)には、前輪トルクTf*の設定に先立って設定される後輪トルクTr*に対しては、目標トルクT*に分割比kを乗じて得られる仮後輪トルクTrtmpと前回後輪トルクTr*から仮後輪トルクTrtmpに向けて緩変化処理を施すことにより得られる補正トルクTrtとのうち小さい方を後輪トルクTr*として設定する。これにより、減速支援制御が実行されている最中にアクセルオンとなったときに生じ得るトルクショックを抑制することができる。
【0030】
実施形態の電動車20では、前輪トルクTf*の設定に先立って後輪トルクTr*を設定する際に、目標トルクT*に分割比kを乗じて得られる仮後輪トルクTrtmpと前回後輪トルクTr*から仮後輪トルクTrtmpに向けて緩変化処理を施して得られる補正トルクTrtとのうち小さい方を後輪トルクTr*として設定するものとした。しかし、後輪トルクTr*に先だって前輪トルクTf*を設定する場合には、目標トルクT*に分割比(1-k)を乗じて得られる仮前輪トルクTftmpと前回前輪トルクTf*から仮前輪トルクTftmpに向けて緩変化処理を施して得られる補正トルクTftとのうち小さい方を前輪トルクTf*として設定するものとしてもよい。
【0031】
実施形態の電動車20では、前輪用モータ22と後輪用モータ32とを備えるものとしたが、前輪用モータ22のみを搭載するものとしてもよいし、後輪用モータ32のみを搭載するものとしてもよい。また、前輪用モータ22や後輪用モータ32に加えてエンジンを搭載するものとしてもよい。
【0032】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、後輪用モータ32が「モータ」に相当し、ブレーキマスターシリンダ60やブレーキアクチュエータ62,ブレーキECU64,ディスクブレーキ66a~66dが「油圧ブレーキ」に相当し、電子制御ユニット40が「車載用制御装置」に相当する。
【0033】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0034】
以上、本開示を実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示は、車載用制御装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
20 電動車、21 バッテリ、22 前輪用モータ、23,33 回転位置検出センサ、24 前輪用インバータ、26 駆動軸、27 デファレンシャルギヤ、28a,28b 前輪、32 後輪用モータ、34 後輪用インバータ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a,38b 後輪、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、50 スタートスイッチ、51 シフトレバー、52 シフトレバーポジションセンサ、53 アクセルペダル、54 アクセルペダルポジションセンサ、55 ブレーキペダル、56 ブレーキペダルポジションセンサ、58 車速センサ、59 周辺認識装置、60 ブレーキマスタシリンダ、62 ブレーキアクチュエータ、64 ブレーキ用電子制御ユニット、66a~66d ディスクブレーキ、68a~68d 車輪速センサ、70 ナビゲーションシステム。
図1
図2