(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008144
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ用ヘッドカバー
(51)【国際特許分類】
A63B 60/62 20150101AFI20250109BHJP
【FI】
A63B60/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110067
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】523055617
【氏名又は名称】株式会社シャンロン
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】慎 ▲海▼竜
(72)【発明者】
【氏名】金 完泰
(57)【要約】
【課題】ヒンジによって開閉するゴルフクラブ用ヘッドカバーであって、ゴルフクラブのヘッドへの取り付け及び取り外しを容易に行え、ヒンジによる開閉の閉位置に維持できる確実性の高いゴルフクラブ用ヘッドカバーを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブ用ヘッドカバー1は、下部カバー11と、下部カバー11と協働して前記ヘッド3を収容する上部カバー12と、上部カバー12を下部カバー11にヒンジ結合するヒンジ部13と、第1閉位置維持構造14及び第2閉位置維持構造15と、を備える。第2閉位置維持構造15は、下部カバー11に取り付けられた内側係合具25と、基端側において上部カバー12に取り付けられたバンド26と、バンド26の遊端側に取り付けられ、閉位置において外方から内側係合具25に当接する外側係合具27とを含む。内側係合具25及び外側係合具27間には磁力が作用する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在するシャフトと、前記シャフトの上端側から第1方向に延出するヘッドとを含むゴルフクラブ用ヘッドカバーであって、
下部カバーと、
前記下部カバーと協働して前記ヘッドを収容する上部カバーと、
前記上部カバーが前記下部カバーに対して、前記ヘッドを収容する閉位置と、前記上部カバーの下縁が前記下部カバーの上縁から離間して前記ヘッドを取り出し可能な開位置との間で回動可能になるように、前記上部カバーを前記下部カバーにヒンジ結合するヒンジ部と、
前記閉位置において、磁力が作用することによって前記下部カバーに対する前記上部カバーの開方向への回動を抑制する第1閉位置維持構造及び第2閉位置維持構造と、を備え、
前記第2閉位置維持構造は、
前記下部カバーに取り付けられた内側係合具と、
基端側において前記上部カバーに取り付けられたバンドと、
前記バンドの遊端側に取り付けられ、前記閉位置において外方から前記内側係合具に当接する外側係合具と、を含み、
前記内側係合具及び前記外側係合具の一方に第1磁石が配置され、前記内側係合具及び前記外側係合具の他方に前記第1磁石に引き寄せられる第2磁石又は強磁性体が配置され、
前記バンドは、可撓性を有し、
前記ヒンジ部は、前記第1方向における前記シャフトが配置されるべき位置とは反対側に設けられ、前記第1閉位置維持構造及び前記第2閉位置維持構造における磁力が作用する部分は、上方から見て前記ヒンジ部と前記シャフトが配置されるべき位置とを結ぶ線に対して互いに反対側に配置される、ゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項2】
前記内側係合具は、基板と、前記基板から前記外方に突出する壁部とを含み、
前記壁部は、前記外方から見て、前記閉位置における前記上部カバーに向かって開口したU字形状を呈するか、又は、前記閉位置における前記開方向に延在する1対の突条を含み、
前記外側係合具は、前記壁部に囲まれ又は挟まれる空間内に突入する突出部を含む、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項3】
前記閉位置において、前記上部カバーの前記下縁が前記下部カバーの前記上縁に当接し、
前記第1閉位置維持構造は、前記下部カバー及び前記上部カバーの一方に第3磁石が配置され、前記下部カバー及び前記上部カバーの他方に前記第3磁石に引き寄せられる第4磁石又は強磁性体が配置される、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項4】
前記下部カバーに取り付けられ、前記下部カバーの下面との間にユーザーの手又は指を差し入れ可能であり、差し入れられた前記手又は指を下方から支持可能に構成された支持部を更に備える、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項5】
前記上部カバーは、互いに平行な方向に延在する1対の長孔を有し、
前記バンドの前記基端側は、前記1対の長孔を通る環状に形成されたことにより前記上部カバーに係合している、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項6】
前記第2閉位置維持構造は、前記バンドの前記遊端側の外表面に取り付けられて、前記バンドの前記基端側に向かって延出するタブ部材を更に含む、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項7】
前記第1閉位置維持構造は、前記下部カバーに設けられて下方に凹設された凹部又は上方に突出する突部と、前記上部カバーに設けられた下方に突出して前記下部カバーの前記凹部に受容される突部又は上方に凹設されて前記下部カバーの前記突部を受容する凹部とを含む、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【請求項8】
前記上部カバーは、少なくとも部分的に透明又は半透明である、請求項1に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用ヘッドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブ用ヘッドカバーは、ゴルフクラブのヘッドを収容して保護するものである。ゴルフクラブ用ヘッドカバーとして、編物等の伸縮性を有する部分を含み、その素材の伸縮性によってのヘッドへの取り付け及び取り外しを行う物(例えば、特許文献1)や、柔軟性を有する部分を含み、その柔軟性を有する部分を縦断する開閉可能な取付口が設けられた物(例えば、特許文献2)、ヒンジによって開閉可能な比較的硬質な2つの部材によって本体部分が構成された物(例えば、特許文献3)等が知られている。
【0003】
ヒンジを有するゴルフクラブ用ヘッドカバーは、比較的硬質な部材を使用することができるため、編物や柔軟性の部材を含む特許文献1及び2に記載の物に比べてヘッドの保護性能を高めることができる。特許文献3に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバーは、シャフトに平行な回動軸線を有するヒンジによって結合された1対のヘッドカバーと、ヒンジによる開閉状態を閉じた状態に維持するための開閉方向に対向する1対の磁石とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-183821号公報
【特許文献2】特開2016-202745号公報
【特許文献3】特開平10-152662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献3に記載のゴルフクラブ用ヘッドカバーをヘッドから取り外すには、ゴルフバッグ等にゴルフクラブを支持させておき、左手で左方のヘッドカバー部材を把持し、右手で右方のヘッドカバー部材を把持して、1対のヘッドカバー部材を開方向に動かす必要があった。また、ヘッドカバーの閉位置において、ヘッドカバーの閉方向には比較的強い磁力が作用するが、1対の磁石が互いにずれる方向、すなわち開閉方向に直交する方向への磁力は比較的弱かった。1対の磁石が互いにずれると、閉方向に作用する磁力も弱まった。このため、他のゴルフクラブがぶつかること等によって開方向に対して斜め方向に外力が作用すると、1対の磁石が互いにずれて閉位置に維持するための磁力が弱まり、ヘッドカバーが意図せずに開くおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、ヒンジによって開閉するゴルフクラブ用ヘッドカバーであって、ヘッドへの取り付け及び取り外しを容易に行え、ヒンジによる開閉の閉位置に維持できる確実性の高いゴルフクラブ用ヘッドカバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、上下方向に延在するシャフト(4)と、前記シャフトの上端側から第1方向に延出するヘッド(3)とを含むゴルフクラブ(2)用ヘッドカバー(1)であって、下部カバー(11)と、前記下部カバーと協働して前記ヘッドを収容する上部カバー(12)と、前記上部カバーが前記下部カバーに対して、前記ヘッドを収容する閉位置と、前記上部カバーの下縁が前記下部カバーの上縁から離間して前記ヘッドを取り出し可能な開位置との間で回動可能になるように、前記上部カバーを前記下部カバーにヒンジ結合するヒンジ部(13)と、前記閉位置において、磁力が作用することによって前記下部カバーに対する前記上部カバーの開方向への回動を抑制する第1閉位置維持構造(14)及び第2閉位置維持構造(15)と、を備え、前記第2閉位置維持構造は、前記下部カバーに取り付けられた内側係合具(25)と、基端側において前記上部カバーに取り付けられたバンド(26)と、前記バンドの遊端側に取り付けられ、前記閉位置において前記外方から前記内側係合具に当接する外側係合具(27)と、を含み、前記内側係合具及び前記外側係合具の一方に第1磁石(31,38)が配置され、前記内側係合具及び前記外側係合具の他方に前記第1磁石に引き寄せられる第2磁石(38,31)又は強磁性体が配置され、前記バンドは、可撓性を有し、前記ヒンジ部は、前記第1方向における前記シャフトが配置されるべき位置とは反対側に設けられ、前記第1閉位置維持構造及び前記第2閉位置維持構造における磁力が作用する部分は、上方から見て前記ヒンジ部と前記シャフトが配置されるべき位置とを結ぶ線に対して互いに反対側に配置される。
【0008】
この態様によれば、シャフトが配置されるべき位置とは第1方向の反対側にヒンジ部が配置されるため、一方の手で下部カバーを持ち、他方の手でシャフトを持って押し上げることにより、収容されたヘッドをヘッドカバーから容易に取り出すことができる。また、第2閉位置維持構造によって、閉位置における下部カバーの側面に対する内外方向への下部カバー及び上部カバーの相対的なずれを抑制でき、閉位置の維持の確実性が高まる。また、上部カバーに取り付けられた可撓性を有するバンドが、下部カバーの側面まで垂れ下がることにより、上部カバーの側面を下部カバーの側面に重ねなくとも、第1磁石と第2磁石又は強磁性体とを閉位置において互いに内外方向に整合するように配置できる。
【0009】
上記の態様において、前記内側係合具(25)は、基板(30)と、前記基板から前記外方に突出する壁部(32)とを含み、前記壁部は、前記外方から見て、前記閉位置における前記上部カバーに向かって開口したU字形状を呈するか、又は、前記閉位置における前記開方向に延在する1対の突条を含み、前記外側係合具(27)は、前記壁部に囲まれ又は挟まれる空間内に突入する突出部(37)を含んでも良い。
【0010】
この態様によれば、壁部によって外側係合具の内側係合具に対する下部カバーの外側面に沿った横方向の変位が規制されるため、閉位置の係合状態において、下部カバー及び上部カバーはこの方向に相対的に変位し難い。従って、第2閉位置維持構造の第1磁石と第2磁石又は強磁性体との相対的な位置がずれ難く、閉方向の磁力が維持され、意図せずにヘッドカバーが開くことが抑制される。
【0011】
上記の態様において、前記閉位置において、前記上部カバー(12)の前記下縁が前記下部カバー(11)の前記上縁に当接し、前記第1閉位置維持構造(14)は、前記下部カバー及び前記上部カバーの一方に第3磁石(21,23)が配置され、前記下部カバー及び前記上部カバーの他方に前記第3磁石に引き寄せられる第4磁石(23,21)又は強磁性体が配置されても良い。
【0012】
この構成によれば、第1閉位置維持構造は、第2閉位置維持構造に比べて安価に作成できる。
【0013】
上記の態様において、前記下部カバー(11)に取り付けられ、前記下部カバーの下面との間にユーザーの手又は指を差し入れ可能であり、差し入れられた前記手又は指を下方から支持可能に構成された支持部(13)を更に備えても良い。
【0014】
この構成によれば、支持部があるため、ユーザーは、下部カバー及び上部カバー間に開方向に外力を加える時に、手の小さい人や握力の低い人であっても、確実に下部カバーを持つことができる。
【0015】
上記の態様において、前記上部カバー(12)は、互いに平行な方向に延在する1対の長孔(34)を有し、前記バンド(26)の前記基端側は、前記1対の長孔を通る環状に形成されたことにより前記上部カバーに係合していても良い。
【0016】
この構成によれば、バンドの上部カバーへの取り付け及び取り換えが容易になる。
【0017】
上記の態様において、前記第2閉位置維持構造(15)は、前記バンド(26)の前記遊端側の外表面に取り付けられて、前記バンドの前記基端側に向かって延出するタブ(28)部材を更に含んでも良い。
【0018】
この構成によれば、ヘッドカバーがゴルフクラブを収容していない場合において、ユーザーは、タブ部材を引っ張ることにより、閉位置にあるヘッドカバーを容易に開くことができる。
【0019】
上記の態様において、前記第1閉位置維持構造(14)は、前記下部カバー(11)に設けられて下方に凹設された凹部(22a)又は上方に突出する突部と、前記上部カバーに設けられた下方に突出して前記下部カバーの前記凹部に受容される突部(24a)又は上方に凹設されて前記下部カバーの前記突部を受容する凹部とを含んでも良い。
【0020】
この構成によれば、閉位置における凹部に対する突部の係合によって、下部カバー及び上部カバーの開方向に直交する方向への相対的なずれが抑制される。
【0021】
上記の態様において、前記上部カバー(12)は、少なくとも部分的に透明又は半透明であっても良い。
【0022】
この構成によれば、ヘッドカバーがゴルフクラブのヘッドを収容した状態において、ユーザーは、透明又は半透明の部分を介してヘッドのソールを視認でき、そのゴルフクラブを識別できる。
【発明の効果】
【0023】
以上の態様によれば、ヒンジによって開閉するゴルフクラブ用ヘッドカバーであって、ヘッドへの取り付け及び取り外しを容易に行え、ヒンジによる開閉の閉位置に維持できる確実性の高いゴルフクラブ用ヘッドカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態に係るゴルフクラブ用ヘッドカバーの斜視図(閉位置)
【
図2】実施形態に係るゴルフクラブ用ヘッドカバーの斜視図(開位置)
【
図3】実施形態に係るゴルフクラブ用ヘッドカバーの下方から見た斜視図(閉位置)
【
図4】実施形態に係るゴルフクラブ用ヘッドカバーの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、実施形態に係るゴルフクラブ用ヘッドカバー1(以下、「ヘッドカバー1」と記す)を説明する。
【0026】
図1~
図3に示すように、ヘッドカバー1には、ゴルフクラブ2のヘッド3が収容される。ゴルフクラブ2は、シャフト4と、ホーゼル5(ソケット)を介してシャフト4の先端に取り付けられたヘッド3とを含む。以下の説明において、ゴルフクラブ2をゴルフバッグ(図示せず)から取り出す時とゴルフバッグに挿入する時にヘッドカバー1の取り外し及び取り付けを行うことを想定して、シャフト4の延在方向を上下方向とし、シャフト4におけるヘッド3が取り付けられた側を上方とする。実施形態に係るゴルフクラブ2は、ドライバーであり、ヘッド3は、ボールを当てる面であるフェース6と、上面(ユーザーがゴルフクラブ2を構えた時に地面に接地する面)を構成するソール7と、フェース6の反対側の面である背面8とを含む。背面8は、上方から見て、U字又はV字の輪郭を有する。ヘッド3は、ライ角を形成するようにシャフト4の上端側から斜め上方の第1方向に延出している。上方から見た時の第1方向は、ヘッドカバー1に収容されたゴルフクラブ2のシャフト4側におけるフェース6と背面8とのなす角の二等分線の方向に概ね一致する。上下方向及び第1方向に直交する方向を第2方向と記載する。
【0027】
ヘッドカバー1は、下部カバー11と、上部カバー12と、下部カバー11に閉位置及び開位置間で変位可能に上部カバー12をヒンジ結合するヒンジ部13と、閉位置において、前記上部カバー12の開方向への回動を抑制する第1閉位置維持構造14及び第2閉位置維持構造15と、下部カバー11の下面に取り付けられた下部バンド16とを備える。第1閉位置維持構造14及び第2閉位置維持構造15は、上方から見て、ヒンジ部13よりもシャフト4に近い位置であって、シャフト4とヒンジ部13とを結ぶ線を挟んで、第2方向における互いに反対側に配置される。第1閉位置維持構造14が、ヘッド3の背面8側に設けられ、第2閉位置維持構造15が、ヘッド3のフェース6側に設けられることが好ましい。以下の説明において「開方向」及び「閉方向」は、着目している地点における、ヒンジ結合による下部カバー11と上部カバー12との相対的な回動方向を指す。
【0028】
下部カバー11及び上部カバー12は、比較的硬質な樹脂を素材とする射出成形品であることが好ましい。下部カバー11及び上部カバー12は、協働してゴルフクラブ2のヘッド3を収容する。閉位置において互いに組み合わさった下部カバー11及び上部カバー12は、ヘッド3を収容する中空部分と、シャフト4の上部を挿通させる挿通孔17とを形成する。下部カバー11及び上部カバー12の内面は、収容するべきヘッド3の外形に沿った形状を呈する。閉位置にて互いに組み合わさった下部カバー11及び上部カバー12の挿通孔17を画定する部分は、下方に向かって先細となる筒形状を呈する。
【0029】
閉位置では、下部カバー11の上縁の略全体と上部カバー12の下縁の略全体とが互いに当接している。下部カバー11は、上部カバー12と協働してヘッド3を収容する本体11aと、本体11aの内面に面一となるように本体11aの上縁に設けられて周方向に沿って延在する突条11bと、本体11aの上縁及びその近傍の周方向に沿った一部区間にて本体11aから外方に膨出するように設けられた拡幅部11cとを含む。上部カバー12は、下部カバー11と協働してヘッド3を収容する本体12aと、本体12aの外面に面一となるように本体12aの下縁に設けられて周方向に沿って延在する突条12bと、本体12aの下縁及びその近傍の周方向に沿った一部区間にて本体12aから外方に膨出するように設けられた拡幅部12cとを含む。閉位置において、下部カバー11の突条11bの外周面と上部カバー12の突条12bの内周面とが、互いに当接又は対向している。拡幅部11c,12cは、閉位置において互いに重なるように配置され、第1閉位置維持構造14を取り付けるための部位である。拡幅部11c,12cが設けられた周方向の区間には、突条11b,12bが設けられていないことが好ましい。上部カバー12は、ヘッドカバー1に収容されたヘッド3が見えるように、全体的又は部分的に、透明又は半透明であっても良い。
【0030】
図1及び
図4に示すように、ヒンジ部13は、シャフト4が配置されるべき位置とは第1方向における反対側に設けられる。ヒンジ部13は、下部カバー11の外側面から第1方向に突出し、互いに第2方向に離間した1対の下部ヒンジ片18と、上部カバー12の外側面から突出して1対の下部ヒンジ片18の間に突入する上部ヒンジ片19と、ヒンジ軸体20とを含む。1対の下部ヒンジ片18と上部ヒンジ片19とには互いに整合する貫通孔18a,19aが設けられており、貫通孔18a,19aにヒンジ軸体20が挿通されていることにより、上部カバー12と下部カバー11とがヒンジ軸体20を回動軸として相対的に閉位置(
図1参照)と開位置(
図2参照)との間で回動可能となる。開位置は、上部カバー12が閉位置に対して開方向に90°~180°回動した位置であることが好ましい。下部ヒンジ片18は、下部カバー11と一体に成形されることが好ましく、上部ヒンジ片19は、上部カバー12と一体に成形されることが好ましい。
【0031】
第1閉位置維持構造14は、下部カバー11の拡幅部11cに取り付けられた下部磁石21と、下部磁石21の上方に配置されて拡幅部11cに固定された下部キャップ22と、上部カバー12の拡幅部12cに取り付けられた上部磁石23と、上部磁石23の下方に配置されて拡幅部12cに固定された上部キャップ24とを含む。下部カバー11の拡幅部11cには、上面に凹部11dが設けられており、下部磁石21は、凹部11d内に配置され、下部キャップ22によって凹部11dが塞がれる。同様に、上部カバー12の拡幅部12cには、下面に凹部12dが設けられており、上部磁石23は、凹部12d内に配置され、上部キャップ24によって凹部12dが塞がれる。下部磁石21及び上部磁石23は、閉位置において、上下方向に互いが引き合う磁力が作用するように、かつ、閉位置における下部カバー11又は上部カバー12の回動方向から見て互いに重なるように配置される。下部キャップ22の上面には凹部22aが設けられており、上部キャップ24の下面には、閉位置において凹部22aに突入する突部24aが設けられていることが好ましい。
【0032】
第2閉位置維持構造15は、下部カバー11取り付けられた内側係合具25と、基端側において上部カバー12に取り付けられたバンド26と、バンド26の遊端側に取り付けられた外側係合具27と、バンド26の遊端側に取り付けられたタブ部材28を含む。
【0033】
内側係合具25は、下部カバー11の側面に取り付けられる。内側係合具25が取り付けられる下部カバー11の側面は、下部カバー11をその上縁が略水平になるように配置した時に、鉛直方向に略平行となる平面部分であり、内側係合具25を取り付けるための貫通孔29を有する。この平面部分は、下部カバー11における直上の上縁まで延在していることが好ましい。内側係合具25は、円形の平板形状の基板30と、基板30内に埋設された内側磁石31と、基板30の表面から外方に突出する壁部32とを含む。
【0034】
基板30の輪郭は、貫通孔29の輪郭よりも大きい。壁部32が、内側から貫通孔29に挿通されて、基板30の表面が、下部カバー11の内面における貫通孔29の周辺部分に当接して接着や溶着等の手段によって固定される。基板30の裏面が、下部カバー11の内面に面一となるように、下部カバー11の内面における貫通孔29の周辺部分は、凹部33となっていることが好ましい。
【0035】
図2及び
図4に示すように、壁部32は、外方(基板30に直交する方向)から見て、内側磁石31を囲い、開方向に開口したU字形状を呈する。なお、壁部32は、U字形状に代えて、開方向だけでなく閉方向にも開口して、開閉方向に延在する1対の突条を有しても良い。
図2に示すように、壁部32は、貫通孔29の周辺部分における下部カバー11の外側面よりも外方に突出している。
【0036】
図1及び
図4に示すように、バンド26は、所定の幅を有する。上部カバー12には、バンド26の幅方向に平行に延在する1対の長孔34が設けられている。バンド26の基端側は、折り返されて1対の長孔34に挿通され、折り返された部分の先端をバンド26における先端に重なった部分に縫製又は面ファスナー等により固定することにより環状となり、バンド26が上部カバー12に取り付けられる。バンド26は、その遊端側に取り付けられた外側係合具27の重さによって垂れ下がる程度の可撓性を有する。バンド26の遊端側には、外側係合具27を取り付けるための貫通孔26aが設けられている。以下、バンド26に関して、上部カバー12及び下部カバー11に当接する面を裏面と記載し、裏面とは反対側の面を外表面と記載する。
【0037】
図4に示すように、外側係合具27は、円形の平板形状の基板36と、基板36の表面から突出してバンド26の外表面側から貫通孔26aに突入する突出部37と、突出部37内に埋設された外側磁石38とを含む。突出部37は、基板36側において縮径部37aを含むことが好ましい。基板36は、接着や、基板36と協働してバンド26を挟持する取付板(図示せず)等の手段によってバンド26に取り付けられる。突出部37は、閉位置において、壁部32によって囲まれ又は挟まれることによって画定される空間内に突入し、その先端が内側係合具25の基板30の表面に当接している。外側磁石38は、外側係合具27を内側係合具25に外側から近づけた時に、内側磁石31と引き合う磁力が作用するような向きに配置される。
【0038】
閉位置にて、内側磁石31と外側磁石38とが磁力により互いに引き寄せられ、突出部37が壁部32に画定された空間内に突入した係合状態において、バンド26の長さには遊びがあるように、すなわち、バンド26の延在方向に生じる引張力が弱くバンド26にわずかに撓みが生じるように、バンド26の長さが設定されることが好ましい。内側係合具25と外側係合具27との組み合わせとして、例えば、フィドロック・ゲーエムベーハー(ドイツ)により販売されている磁力式のスナップを用いることができる。
【0039】
タブ部材28は、基端側において、バンド26の遊端における外表面側と外側係合具27の基板36とに挟持され、突出部37を挿通させる貫通孔28aを有する。タブ部材28は、自身の基端側からバンド26の基端側に向かって延出した遊端部を有する。タブ部材28の遊端部は、ユーザーが指で摘まめる程度の長さ及び幅を有する。
【0040】
図3及び
図4に示すように、下部バンド16は、上下方向から見て第1方向に重なる方向に延在する。下部カバー11には、下部バンド16の延在方向の両端部を取り付けるための、第2方向に延在する2対の長孔39が設けられている。下部バンド16の延在方向の各端部は、折り返されて対応する1対の長孔39に挿通され、折り返された部分の先端を下部バンド16における先端に重なった部分に縫製等により固定することにより環状となり、下部カバー11に取り付けられる。下部バンド16の長さは、下部バンド16の延在方向の中間部と下部カバー11の下面との間にユーザーが手又は指を差し入れることのできる隙間が生じるように設定される。なお、下部バンド16は、その延在方向に伸縮性を有し、下部バンド16を伸長させることによってこのような隙間が生じるように構成しても良い。下部バンド16は、ユーザーが下部カバー11を把持する際に、その把持を補助するようにユーザーの手又は指を支持する支持部として機能する。支持部として、下部バンド16に代えて、両端部が下部カバー11に取り付けられた紐や、両端部又は一端部が下部カバー11に取り付けられた棒、パイプ又は板等を用いても良い。
【0041】
図1~
図3を参照して、ヘッドカバー1の使用方法について説明する。ゴルフクラブ2のヘッド3を収容していない時に閉位置にあるヘッドカバー1を開くには、ユーザーは、片手で下部カバー11を持ち、他方の手でタブ部材28を摘まみ、開方向に下部カバー11及び/又は上部カバー12を動かす。なお、ユーザーは、手でつかむことにより、及び/又は下部カバー11の下面と下部バンド16との間に手若しくは指を差し入れて下部バンド16に手若しくは指を支持させることにより、開方向に力の加わった下部カバー11を持つことができる。
【0042】
ゴルフクラブ2のヘッド3を収容して閉位置にあるヘッドカバー1からのゴルフクラブ2の取り出し方法は、上記のヘッドカバー1の開き方と同様の方法でもよいが、片手で下部カバー11を持ち、他方の手でゴルフクラブ2のシャフト4を持ち、ゴルフクラブ2を上方に動かしてヘッド3で上部カバー12を開方向に押し出す方法でも良い。
【0043】
ヘッド3をヘッドカバー1に収容するには、まず、ユーザーは、ヘッドカバー1を開位置の状態とする。次に、ユーザーは、片手で下部カバー11を持ち、他方の手でシャフト4を持って、下部カバー11内にヘッド3の下部(クラウン側の部分)を受容させる。次に、ユーザーは、ヘッド3を載せた下部カバー11を、第1方向に軽く振って、上部カバー12を閉方向に動かす。この時、外側係合具27の突出部37(
図4参照)は、閉位置に近づくにつれて内側磁石31及び外側磁石38間に働く磁力を受け、壁部32に画定された空間内に突入する。
【0044】
図1~
図4を参照して、ヘッドカバー1の作用効果について説明する。
【0045】
ヒンジ部13が、シャフト4の先端が配置されるべき位置と第1方向の反対側に位置するため、ユーザーは、一方の手で下部カバー11を持ち、他方の手でシャフト4を上方に持ち上げることによりゴルフクラブ2をヘッドカバー1から取り出すことができる。
【0046】
下部カバー11と上部カバー12とは、閉位置において、ヒンジ部13、第1閉位置維持構造14及び第2閉位置維持構造15の3か所で互いに連結しているため、互いの相対的な位置が安定する。また、第1閉位置維持構造14及び第2閉位置維持構造15が、上方から見て、ヒンジ部13よりもシャフト4に近い位置に配置されるため、シャフト4側に配置される場合に比べて、小さい磁力で閉位置を維持することができる。また、第1閉位置維持構造14及び第2閉位置維持構造15が、シャフト4とヒンジ部13とを結ぶ線を挟んで第2方向における互いに反対側に配置されるため、片手で下部カバー11を持ち、もう一方の手でシャフト4を上方に持ち上げてゴルフクラブ2をヘッドカバー1から取り出す際に、ヘッド3に対して左右両側から閉方向に力が加わる。このため、第1軸線回りのモーメントが小さくなり、ユーザーがシャフト4を持ち上げる力が、効率的に開方向に伝わる。
【0047】
第1閉位置維持構造14は、閉方向に磁力が作用する下部磁石21及び上部磁石23がその主要な構成となるため、比較的安価に設けることができる。第1閉位置維持構造14が、凹部22aと閉位置にて凹部22aに突入する突部24aとを有するため、閉位置において、下部カバー11及び上部カバー12の開方向に直交する方向への相対的なずれが抑制される。
【0048】
閉方向に大きな磁力が作用する第1閉位置維持構造14では、閉位置にある下部カバー11及び上部カバー12に互いに横方向(閉方向に直交する方向)にずれる外力が加わると、その磁力が弱まって意図せずにヘッドカバー1が開いてしまうおそれがある。一方、第2閉位置維持構造15では、上部カバー12が下部カバー11に対して閉位置から開位置に向けて変位する時は、外側磁石38が埋め込まれた外側係合具27は、内側磁石31が埋め込まれた内側係合具25に対してスライド移動する。内側磁石31と外側磁石38との間に働く内外方向の磁力は、このように変位させるためにユーザーが加えるべき外力に比べて大きい。従って、第2閉位置維持構造15における閉方向に作用する磁力の大きさを、第1閉位置維持構造14の閉方向に作用する磁力の大きさと同程度に設定すれば、第2閉位置維持構造15の内外方向に作用する磁力は、閉方向に作用する磁力に比べて大きくなる。更に、閉位置の係合状態において、外側係合具27の突出部37は、壁部32に係止されて下部カバー11の外側面に沿った横方向への変位が規制される。このように、第2閉位置維持構造15があるため、閉位置の係合状態において、他のゴルフクラブがぶつかること等によって内外方向又は下部カバー11の外側面に沿った横方向に外力が加わっても、下部カバー11及び上部カバー12はその方向に相対的に変位し難い。従って、閉位置の係合状態において、第2閉位置維持構造15の内側磁石31と外側磁石38との相対的な位置がずれ難く、閉方向の磁力が維持され、意図せずにヘッドカバー1が開くことが抑制される。
【0049】
上部カバー12に取り付けられたバンド26が、外側係合具27の重さによって下部カバー11に向かって垂れ下がるため、上部カバー12の側面を下部カバー11の側面に重ねなくとも、内外方向に大きな磁力が作用する第2閉位置維持構造15を形成できる。また、バンド26が所定の幅を有することによって、上部カバー12の側面に沿ったバンド26の傾動が抑制され、上部カバー12を下部カバー11に対して開位置から閉位置に変位させた時、内側係合具25と外側係合具27との間に磁力が作用し易くなる。バンド26は、上部カバー12における1対の長孔34間の部分に巻き付くように取り付けられるため、バンド26の上部カバー12への取り付け及び取り換えが容易となる。
【0050】
タブ部材28があるため、ゴルフクラブ2のヘッド3を収容せずに閉位置にあるヘッドカバー1であっても、ヘッドカバー1を容易に開くことができる。
【0051】
閉位置において、下部カバー11の上縁と上部カバー12の下縁とが当接するため、下部カバー11と上部カバー12とが部分的に内外方向に互いに重なる構造に比べて、下部カバー11及び上部カバー12に必要な材料が少量で済む。また、閉位置にて、互いに当接又は対向する下部カバー11の突条11b及び上部カバー12の突条12bによって、雨水等の水分が下部カバー11と上部カバー12との隙間と介してヘッドカバー1の内部に浸入することを抑制できる。
【0052】
下部バンド16等の支持部があるため、手の小さい人や握力の低い人でも下部カバー11を持つことができる。
【0053】
上部カバー12が、全体的又は部分的に透明又は半透明である場合には、ヘッドカバー1がゴルフクラブ2のヘッド3を収容した状態において、ユーザーは、透明又は半透明の部分を介してヘッド3のソール7を視認でき、そのゴルフクラブ2を識別できる。
【0054】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、本発明に係るヘッドカバーは、ドライバー以外のゴルフクラブ用、例えば、ウッド、アイアン又はパター用のヘッドカバーであっても良い。下部磁石及び上部磁石の一方を、磁石ではない鉄等の強磁性体に代えても良い。同様に、内側磁石及び外側磁石の一方を、磁石ではない鉄等の強磁性体に代えても良い。下部キャップの上面と上部キャップの下面との凹凸を逆にしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1:ヘッドカバー
2:ゴルフクラブ
3:ヘッド
4:シャフト
11:下部カバー
12:上部カバー
13:ヒンジ部
14:第1閉位置維持構造
15:第2閉位置維持構造
16:下部バンド(支持部)
21:下部磁石(第3又は第4磁石)
23:上部磁石(第4又は第3磁石)
25:内側係合具
26:バンド
28:タブ部材
31:内側磁石(第1又は第2磁石)
32:壁部
37:突出部
38:外側磁石(第2又は第1磁石)