(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025081466
(43)【公開日】2025-05-27
(54)【発明の名称】糖尿病治療用口腔内速崩壊錠
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20250520BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20250520BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250520BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250520BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20250520BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250520BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250520BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250520BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250520BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20250520BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P3/10
A61P43/00 111
A61K9/20
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/04
A61K9/28
A61K47/36
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025023376
(22)【出願日】2025-02-17
(62)【分割の表示】P 2021513709の分割
【原出願日】2020-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2019076376
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(74)【代理人】
【識別番号】110002387
【氏名又は名称】弁理士法人東京ACTi国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 省吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 ひとみ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】テネリグリプチンを高濃度に含有し、かつ取り扱いに充分な硬度を有する、口腔内速崩壊錠を提供する。
【解決手段】高濃度のテネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を含むテネリグリプチン顆粒と、医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分からなる口腔内速崩壊錠とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を含むテネリグリプチン顆粒と、医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分からなる口腔内速崩壊錠。
【請求項2】
前記テネリグリプチン顆粒が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント含む、請求項1に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項3】
前記テネリグリプチン顆粒が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、80質量パーセントないし99質量パーセント含む、請求項1または2に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項4】
前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、イソマルトおよびアミノメタクリレートコポリマーから選択される1以上のものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項5】
前記凝集抑制剤が、滑沢剤、懸濁剤、光沢化剤、帯電防止剤、分散剤および流動化剤から選択される1以上のものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項6】
前記凝集抑制剤が、流動化剤である、請求項5に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項7】
前記流動化剤が、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素およびタルクから選択される1以上のものである、請求項6に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項8】
前記口腔内速崩壊錠中のテネリグリプチン顆粒が、コーティング用基剤を含まない質量で、前記口腔内速崩壊性錠崩壊錠1錠中10質量パーセントないし60質量パーセントである、請求項1~7のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項9】
前記テネリグリプチン顆粒が、さらにコーティング用基剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項10】
前記テネリグリプチン顆粒が、コーティング用基剤によりコーティングされている、請求項9に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項11】
前記コーティング用基剤が、水不溶性ポリマーである、請求項9または10に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項12】
前記水不溶性ポリマーが、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートおよびアミノメタクリレートコポリマーから選択される1以上のものである、請求項11に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項13】
前記薬物非含有部分が、少なくとも、賦形剤、崩壊剤または滑沢剤を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項14】
前記崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルデンプンナトリウムから選択される1以上のものである、請求項13に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項15】
前記薬物非含有部分が、甘味剤または香料を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項16】
テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、70質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を含み、さらにコーティング用基剤によりコーティングされたテネリグリプチン顆粒と、崩壊剤および医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分からなる口腔内速崩壊錠。
【請求項17】
前記テネリグリプチン顆粒が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、80質量パーセントないし99質量パーセント含む、請求項16に記載の口腔内速崩壊錠。
【請求項18】
口腔内速崩壊錠の製造方法であって、
1)テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を混合して造粒するテネリグリプチン顆粒を得る工程;
2)当該顆粒と医薬上許容される添加剤を混合し打錠用顆粒を得る工程;ならびに
3)当該打錠用顆粒を圧縮成形し口腔内速崩壊錠を得る工程;
を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の口腔内速崩壊錠の製造方法。
【請求項19】
前記テネリグリプチン顆粒を得る工程が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤、凝集抑制剤およびコーティング用基剤を混合して造粒することを含む、請求項18に記載の口腔内速崩壊錠の製造方法。
【請求項20】
前記テネリグリプチン顆粒を得る工程が、テネリグリプチンもしくは その塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を混合して造粒した後にコーティング用基剤によりコーティングすることを含む、請求項19に記載の口腔内速崩壊錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を有効成分として含む口腔内速崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や嚥下困難な患者に服用しやすい製剤を提供することは、Quality of Lifeの向上や服薬コンプライアンスの改善に繋がると考えられる。特に口腔内崩壊錠は、服用しやすいだけでなく、既に承認された製剤との生物学的同等性を証明することにより、新製品を上市できる可能性が高まることから、多くの製品で開発が進められている。また、口腔内崩壊錠は、臨床現場で粉砕や懸濁等の調剤作業が軽減される利点も有するため、口腔内崩壊錠のニーズに繋がっている。
【0003】
テネリグリプチン(化学名:{(2S,4S)-4-[4-(3-メチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)ピペラジン-1-イル]ピロリジン-2-イル}(1,3-チアゾリジン-3-イル)メタノン)またはその塩は、DPP-IV阻害活性を示し、糖尿病等の治療または予防において有用であることが報告されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を含有する固形製剤(以下、テネリグリプチン含有固形製剤と略記する場合がある)の処方・製法としては、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物と一般的な医薬用の担体とを混合して製剤化することが知られている(特許文献1および2参照)。しかし、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を含有する口腔内速崩壊錠に関する処方・製法についての報告例はない。
【0005】
特許文献3には、易溶性薬物を高濃度で含有した溶解性の粒子と速崩壊性成分を混合、成型することによって製造される口腔内速崩壊錠が開示されているが、易溶性薬物を高濃度で含有させた溶解性の粒子に関する情報は限定的であり、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物の高濃度の粒子を得るための処方・製法については開示されていない。
【0006】
高濃度のテネリグリプチンを含む粒子については、特許文献4に、30ないし80重量%の含有率でテネリグリプチン臭化水素酸塩・水和物を含有するテネリグリプチン含有部分とテネリグリプチン含有部分以外の部分にD-マンニトール、ソルビトールおよびキシリトールから選択される1または2種以上の賦形剤とを独立して含む、テネリグリプチン含有固形製剤であり、テネリグリプチン含有部分が粒状または顆粒状である固形製剤が開示されている。しかし、特許文献4には、当該テネリグリプチン含有部である粒状または顆粒状固体中のテネリグリプチン含有率が80重量%より高い場合は、粒子状等の固体形状を維持するための強度不足が懸念され、製造上の問題が生じる可能性を否定できないと記載されている。
【0007】
患者の利便性を向上させる口腔内速崩壊錠の開発が望まれる中、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を含有する口腔内速崩壊錠の開発も同様に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2002/014271号
【特許文献2】国際公開第2006/088129号
【特許文献3】特開2001-253818号公報
【特許文献4】国際公開第2011/074660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を有効成分として含む固形製剤において、テネリグリプチンを高濃度に含有し、かつ取り扱いに充分な硬度を有する、口腔内速崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を有効成分として含む口腔内速崩壊錠を得るべく検討を実施したが、錠剤内部への水分の浸透を妨げる本化合物の特性により崩壊時間が大きく遅延するという課題が見いだされた。そこで、この課題を解決するため、本化合物の特性を低減させることに着目し鋭意研究を行った。しかし、本化合物を錠剤中に均一に混合するという従来の方法では、本化合物の特性に起因して所望の崩壊時間を達成できないという問題に直面した。本問題の解決方法の一つとして、錠剤中の本化合物の濃度を低下させることが挙げられるが、錠剤の大型化を招き、製剤の服用性を低下させるという新たな課題を生む結果となりかねない。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本化合物の特性を低減させるため、本化合物を高濃度で含む顆粒を得る方法を試みたが、顆粒の製造中に本化合物の付着凝集性に起因する粉体の凝集が発生し、所望の顆粒を製造することができなかった。そこで、鋭意検討の結果、本化合物の付着凝集性に由来する粉体の凝集傾向を抑制する凝集抑制剤を含む処方の組み合わせを見出し、本化合物を高含量で含む該顆粒を錠剤中に配合することで課題が解決されることを見出した。また、本化合物の特性をさらに低減し、錠剤の崩壊性を改善する方法として、本化合物を高濃度で含む顆粒をコーティングし、錠剤中に含ませることによっても課題が解決されることを見出した。
【0012】
結果、本化合物の錠剤中の濃度を上昇させ、かつ所望の崩壊時間を備えた口腔内速崩壊錠を見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を含むテネリグリプチン顆粒と、医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分からなる口腔内速崩壊錠。
[2]前記テネリグリプチン顆粒が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント含む、上記[1]に記載の口腔内速崩壊錠。
[3]前記テネリグリプチン顆粒が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、80質量パーセントないし99質量パーセント含む、上記[1]または[2]に記載の口腔内速崩壊錠。
[4]前記結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、イソマルト およびアミノメタクリレートコポリマーから選択される1以上のものである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠。
[5]前記凝集抑制剤が、滑沢剤、懸濁剤、光沢化剤、帯電防止剤、分散剤および流動化剤から選択される1以上のものである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠。
[6]前記凝集抑制剤が、流動化剤である、上記[5]に記載の口腔内速崩壊錠。
[7]前記流動化剤が、軽質無水ケイ酸および含水二酸化ケイ素から選択される1以上のものである、上記[6]に記載の口腔内速崩壊錠。
[8]前記口腔内速崩壊錠中のテネリグリプチン顆粒が、コーティング用基剤を含まない質量で、前記口腔内速崩壊性錠崩壊錠1錠中10質量パーセントないし60質量パーセントである、上記[1]~[7]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠。
[9]前記テネリグリプチン顆粒が、さらにコーティング用基剤を含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠。
[10]前記テネリグリプチン顆粒が、コーティング用基剤によりコーティングされている、上記[9]に記載の口腔内速崩壊錠。
[11]前記コーティング用基剤が、水不溶性ポリマーである、上記[9]または[10]に記載の口腔内速崩壊錠。
[12]前記水不溶性ポリマーが、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートおよびアミノメタクリレートコポリマーから選択される1以上のものである、上記[11]に記載の口腔内速崩壊錠。
[13]前記薬物非含有部分が、少なくとも、賦形剤、崩壊剤または滑沢剤を含む、上記[1]~[12]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠。
[14]前記崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルデンプンナトリウムから選択される1以上のものである、上記[13]に記載の口腔内速崩壊錠。
[15]前記薬物非含有部分が、甘味剤または香料を含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠。
[16]テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、70質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を含み、さらにコーティング用基剤によりコーティングされたテネリグリプチン顆粒と、崩壊剤および医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分からなる口腔内速崩壊錠。
[17]前記テネリグリプチン顆粒が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、80質量パーセントないし99質量パーセント含む、上記[16]に記載の口腔内速崩壊錠。
[18]口腔内速崩壊錠の製造方法であって、
1)テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を混合して造粒するテネリグリプチン顆粒を得る工程;
2)当該顆粒と医薬上許容される添加剤を混合し打錠用顆粒を得る工程;ならびに
3)当該打錠用顆粒を圧縮成形し口腔内速崩壊錠を得る工程;
を含む、上記[1]~[17]のいずれかに記載の口腔内速崩壊錠の製造方法。
[19]前記テネリグリプチン顆粒を得る工程が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤、凝集抑制剤およびコーティング用基剤を混合して造粒することを含む、上記[18]に記載の口腔内速崩壊錠の製造方法。
[20]前記テネリグリプチン顆粒を得る工程が、テネリグリプチンもしくは その塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を混合して造粒した後にコーティング用基剤によりコーティングすることを含む、上記[19]に記載の口腔内速崩壊錠の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を有効成分として含む、口腔内で速やかに崩壊する口腔内速崩壊錠はこれまで見出されておらず、その処方および製造方法は知られていなかった。本発明によれば、有効成分を高濃度で含むテネリグリプチン顆粒を含有し、取り扱いに充分な硬度を有しつつ、口腔内で速やかに崩壊する、テネリグリプチン含有口腔内速崩壊錠を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明は、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を含むテネリグリプチン顆粒と、医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分からなる口腔内速崩壊錠である。
【0017】
本発明のテネリグリプチン顆粒は、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を少なくとも含む粒状または顆粒状の固体であり、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物の含有率は、コーティング用基剤を含まない質量で、該顆粒100質量パーセントに対して、45ないし99質量パーセント、好ましくは、70ないし99質量パーセント、より好ましくは、80ないし99質量パーセント、さらに好ましくは、95ないし99質量パーセントである。
【0018】
前記テネリグリプチン顆粒に含まれるテネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物は、国際公開第2002/014271号(前記特許文献1)および国際公開第2006/088129号(前記特許文献2)に記載された公知の化合物であり、これらの文献に記載された方法により合成することができる。本発明の口腔内速崩壊錠に用いられるテネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物は、好ましくは、テネリグリプチン臭化水素酸塩・水和物であり、より好ましくは、テネリグリプチン5/2臭化水素酸塩・水和物、さらに好ましくは、テネリグリプチン5/2臭化水素酸塩の1.0ないし2.0水和物である。
【0019】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る結合剤とは、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を含む顆粒を得ることができれば、特段限定されず、医薬製剤に一般的に使用される任意の結合剤である。このような結合剤としては、具体的には、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、メタクリル酸コポリマー、イソマルト、アミノメタクリレートコポリマー等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、イソマルト、またはアミノメタクリレートコポリマーであり、より好ましくは、ポリビニルアルコールまたはエチルセルロースである。
【0020】
前記テネリグリプチン顆粒においては、結合剤は、該顆粒100質量パーセントに対して、例えば、0.5質量パーセントないし20質量パーセントの範囲、好ましくは、0.5質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.5質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0021】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤とは、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物の付着凝集性、すなわち、製造機器への付着および粉体の凝集、を抑制することができるものであれば、特段限定されないが、例えば、滑沢剤、懸濁剤、光沢化剤、帯電防止剤、分散剤、流動化剤等が挙げられる。凝集抑制剤は、好ましくは、滑沢剤、帯電防止剤、分散剤、または流動化剤であり、より好ましくは、流動化剤である。
【0022】
前記テネリグリプチン顆粒においては、凝集抑制剤は、該顆粒100質量パーセントに対して、例えば、0.1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、好ましくは、0.1質量パーセントないし7.5質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.1質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0023】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤のうち、滑沢剤は、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ステアリン酸アルカリ土類金属(例、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)、ショ糖高級脂肪酸エステル、グリセリン高級脂肪酸エステル、硬化油等が挙げられる。好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、またはタルクであり、より好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウムである。
【0024】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤のうち、懸濁剤は、例えば、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルキルベンゼンスルホン酸塩型パウダー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、エリソルビン酸ナトリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、オレイン酸、カオリン、カラギーナン、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、カンテン、カンテン末、キサンタンガム、クエン酸水和物、グリシン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、硬化油、サラシミツロウ、酸化チタン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ポリオキシル、精製ゼラチン、セタノール、セトマクロゴール1000、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、p-ソルビトール、大豆レシチン、単シロップ、トラガント、トラガント末、トリオレイン酸ソルビタン、乳糖水和物、ビーガムニュートラル、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペクチン、ベンザルコニウム塩化物、ベンジルアルコール、ベントナイト、ポビドン(K25)、ポビドン(K30)、ポビドン(K90)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ―テル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ―テル・アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム混合物、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリリン酸ナトリウム、マクロゴール4000、マクロゴール6000、D-マンニトール、ミツロウ、ミリスチン酸イソプロピル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、メチレンーβーナフタリンスルホン酸ナトリウム共重合体、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、ラッカセイ油、流動パラフィン、リン酸、リン酸水素カルシウム水和物等が挙げられる。
【0025】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤のうち、光沢化剤は、例えば、イボタロウ、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、魚鱗箔、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、硬ロウ、サラシミツロウ、酸化チタン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、精製セラック、精製白糖、精製パラフィン・カルナウバロウ混合ワックス、セタノール、ゼラチン、タルク、中金箔、パラフィン、パルミチン酸イソプロピル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒマシ油、ポリエチレングリコール8000、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000、ミツロウ、ミリスチン酸イソプロピル、薬用炭、ラウリル硫酸ナトリウム、流動パラフィン、ロジン等が挙げられる。
【0026】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤のうち、帯電防止剤は、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク等が挙げられる。好ましくは、軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素である。
【0027】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤のうち、分散剤は、例えば、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルキルベンゼンスルホン酸塩型乳化剤、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アンモニオアルキルメタクリ-レートコポリマー、オレイン酸、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、乾燥卵白、カンテン末、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウム、軽質酸化アルミニウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、コリンリン酸塩、サフラワー油、サラシミツロウ、酸化亜鉛、酸化チタン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ショ糖脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン、水酸化ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、精製オレイン酸、精製大豆レシチン、セチル硫酸ナトリウム、疎水性軽質無水ケイ酸、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、p-ソルビトール、ダイズ油、大豆レシチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、トラガント末、トリオレイン酸ソルビタン、乳糖水和物、濃グリセリン、バレイショデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(2910)、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペルーバルサム、ベンゼトニウム塩化物、ベントナイト、ポビドン(K25)、ポビドン(K30)、ポビドン(K90)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ―テルポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル(5E.O.)、マイクロクリスタリンワックス、マクロゴール300、マクロゴール4000、マクロゴール6000、ミリスチン酸イソプロピル、無水クエン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、メタクリル酸ラウリル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタリン酸ナトリウム、モクロウ、モノオレイン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸アルミニウ、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴール、ラノリンアルコール、卵黄油、卵黄リン脂質、リグニンスルホン酸ナトリウム、硫酸亜鉛水和物、流動パラフィン、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエ―テル等が挙げられる。
【0028】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る凝集抑制剤のうち、流動化剤は、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム造粒物、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、カルナウバロウ等が挙げられる。好ましくは、軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素である。
【0029】
前記テネリグリプチン顆粒は、医薬上許容されうる添加剤(以下「顆粒中の添加剤」と称する場合がある)を含むことができる。顆粒中に配合し得る添加剤としては、結合剤および凝集抑制剤の他に、甘味剤、可塑剤、矯味剤、香料、崩壊剤、賦形剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る甘味剤は、具体的には、例えば、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。好ましくは、アセスルファムカリウムである。前記テネリグリプチン顆粒においては、甘味剤は、該顆粒100質量パーセントに対して、0.1質量パーセントないし10質量パーセント、好ましくは、0.5質量パーセントないし8質量パーセント、より好ましくは、1質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0031】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る可塑剤は、具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル等が挙げられる。好ましくは、クエン酸トリエチルである。前記テネリグリプチン顆粒においては、可塑剤は、該顆粒100質量パーセントに対して、0.5質量パーセントないし12.5質量パーセント、好ましくは、1.5質量パーセントないし10質量パーセント、より好ましくは、2.5質量パーセントないし7.5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0032】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る矯味剤は、具体的には、例えば、l-メントール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、重曹、ベネコート(登録商標)、リンゴ酸等が挙げられる。前記テネリグリプチン顆粒においては、矯味剤は、該顆粒100質量パーセントに対して、0.1質量パーセントないし15質量パーセント、好ましくは、0.5質量パーセントないし10質量パーセント、より好ましくは、1質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0033】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る香料は、具体的には、例えば、ハッカ油、オレンジ油、ゆずフレーバー、イチゴフレーバー、レモンフレーバー、メントールフレーバー、オレンジフレーバー等が挙げられる。前記テネリグリプチン顆粒においては、香料は、該顆粒100質量パーセントに対して、0.01質量パーセントないし5質量パーセント、好ましくは、0.01質量パーセントないし3質量パーセント、より好ましくは、0.01質量パーセントないし1質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0034】
本発明の前記テネリグリプチン顆粒に配合し得る崩壊剤は、具体的には、例えば、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース類;トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム等のデンプン類;クロスポビドン等を挙げることができる。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、またはカルボキシメチルセルロースであり、より好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、またはクロスポビドンである。前記テネリグリプチン顆粒においては、崩壊剤は、該顆粒100質量パーセントに対して、0.1質量パーセントないし20質量パーセント、好ましくは、0.5質量パーセントないし15質量パーセント、より好ましくは、1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0035】
本発明のテネリグリプチン顆粒は、さらにコーティング用基剤でコーティングされていることが好ましい。前記テネリグリプチン顆粒に配合し得るコーティング用基剤とは、医薬上許容され、薬物をコーティングすることにより薬物が口腔内で溶出するのを抑え、苦味を抑制する性質をもつものであれば特に制限はないが、具体的には、水不溶性ポリマーが挙げられ、該水不溶性ポリマーの具体例としては、好ましくは、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートまたはアミノメタクリレートコポリマーであり、より好ましくは、エチルセルロースである。前記テネリグリプチン顆粒においては、コーティング用基剤は、該顆粒中に含まれるテネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物100質量パーセントに対して、例えば、10質量パーセントないし50質量パーセントの範囲、好ましくは、20質量パーセントないし40質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0036】
該コーティング用基剤は、テネリグリプチン顆粒をコーティングするものの他に、顆粒中に含まれていてもよい。また、前記可塑剤は、前記コーティング用基剤と共に含まれてもよい。
【0037】
本発明のテネリグリプチン顆粒の体積平均粒子径(以下、「D50」と表記する)は、口腔内速崩壊錠中において分散性を保つことが好ましく、具体的には、350μm以下でかつ90%以上の粒子の粒径が500μm以下のものが好ましく、更に好ましくは、D50が250μm以下でかつ90%以上の粒子の粒径が350μm以下のものである。
【0038】
本明細書中で用いる用語「体積平均粒子径」とは、粒子の体積換算値の平均粒子径を表すものであり、原理的には一定体積の粒子を小さいものから順に篩分けし、その50%体積に当たる粒子が分別された時点での粒子径を意味する。体積平均粒子径の測定は、当該技術分野における通常の方法に従って行うことができ、例えば、顕微鏡観察による実測、電気的または光学的粒子径測定装置を用いる方法等が挙げられる。特に、粒子径が数十~数百μmの粉末の体積平均粒子径の測定では、主に、篩分け法、または媒体に分散させて回折光や散乱光を利用して測定する方法等が用いられる。篩分け法は、目開きの異なる複数の篩を用い、目開きの大きい篩が上段になるように重ね、その最上段に測定する粉末を投入し、手動または機械によって振動を与え、各々の篩の上に残った粉末の量を測定し、重量分率を算出する方法である。
【0039】
本発明のテネリグリプチン顆粒は、口腔内速崩壊錠1錠あたり、例えば、10質量パーセントないし60質量パーセントの範囲で含まれ、好ましくは、15質量パーセントないし45質量パーセントの範囲で含まれ、より好ましくは、20質量パーセントないし35質量パーセントの範囲で含まれる。
【0040】
本発明の口腔内速崩壊錠においては、前記テネリグリプチン顆粒を含み、前記テネリグリプチン顆粒とそれ以外の部分(以下、「薬物非含有部分」と称する場合がある)とが相混ざり合わず、テネリグリプチン顆粒と薬物非含有部がそれぞれ独立して存在している。
【0041】
薬物非含有部分は、テネリグリプチン顆粒よりも崩壊速度が速く、投与対象中で遅延なく崩壊することが好ましい。
【0042】
本発明の薬物非含有部分は、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を含まず、本発明の口腔内速崩壊錠の特性である、口腔内で速やかに崩壊し、かつ製造、流通および調剤の各過程において、破損することがない物理的強度を要するという特性を損なわず、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物の含有率を所望のものに調整する目的を達成し得る限り、特段制限されない。かかる薬物非含有部分を構成する成分としては、医薬上許容される添加剤が挙げられる。医薬上許容される添加剤としては、例えば、崩壊剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、流動化剤、甘味剤、矯味剤、香料、着色剤等が挙げられ、好ましくは、崩壊剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料、または着色剤である。
【0043】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る崩壊剤とは、医薬製剤に一般的に使用される任意の崩壊剤である。口腔内速崩壊錠に加えて崩壊剤を配合することで、錠剤が口腔内でより速やかに崩壊する効果を付与する一助となる。このような崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース等のセルロース類;トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム等のデンプン類;クロスポビドン等を挙げることができる。好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、またはカルボキシメチルセルロースであり、より好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、またはクロスポビドンである。前記崩壊剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.1質量パーセントないし40質量パーセントの範囲、好ましくは、1質量パーセントないし30質量パーセントの範囲、より好ましくは、1質量パーセントないし20質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0044】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る賦形剤とは、医薬製剤に一般的に使用される任意の賦形剤である。このような賦形剤としては、例えば、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース等の糖アルコールまたは糖類、結晶セルロース、スターチ類を挙げることができる。好ましくは、マンニトール、エリスリトール、およびラクトースであり、より好ましくは、マンニトールである。また、賦形剤として、水への濡れ性が良好な賦形剤を好ましく用いることができる。ここで、次の定義に該当する賦形剤は水への濡れ性が良好な賦形剤に該当する。すなわち、賦形剤を直径10mmの平面杵を用い、打錠圧1000kgf/杵で圧縮成型して得られる錠剤の水への濡れ時間を、国際公開第2010/061846号記載の操作により測定したとき、その濡れ時間が300秒以内である場合、当該賦形剤は、水への濡れ性が良好な賦形剤に該当する。上記水への濡れ性が良好な賦形剤としては、例えば、マンニトール、エリスリトールおよびキシリトールからなる群から選ばれる1種以上の糖アルコールまたは糖類を挙げることができ、好ましくは、マンニトールである。前記賦形剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、20質量パーセントないし80質量パーセントの範囲、好ましくは、25質量パーセントないし75質量パーセントの範囲、より好ましくは、30質量パーセントないし70質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0045】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る結合剤とは、医薬製剤に一般的に使用される任意の結合剤であり、口腔内速崩壊錠の硬度を増強させ、取り扱いに充分な硬度を付与するため好ましい。このような結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、イソマルト等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、またはポビドンであり、より好ましくは、エチルセルロース、またはポリビニルアルコールである。前記結合剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.01質量パーセントないし15質量パーセントの範囲、好ましくは、0.05質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.1質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0046】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る滑沢剤とは、医薬製剤に一般的に使用される任意の滑沢剤であり、口腔内速崩壊錠の製錠時の製造性を高めるため好ましい。このような滑沢剤としては、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ステアリン酸アルカリ土類金属(例、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等)、ショ糖高級脂肪酸エステル、グリセリン高級脂肪酸エステル、硬化油等が挙げられる。好ましくは、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、またはタルクであり、より好ましくは、フマル酸ステアリルナトリウムである。前記滑沢剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.1質量パーセントないし15質量パーセントの範囲、好ましくは、0.1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.5質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0047】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る流動化剤は、顆粒の流動性を向上させるため好ましく、具体的には、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム造粒物、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、カルナウバロウ等が挙げられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素である。前記流動化剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、好ましくは、0.1質量パーセントないし7.5質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.1質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0048】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る甘味剤とは、医薬組成物へ甘味を付与するために通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、ソーマチン等を挙げることができる。前記甘味剤は、前記口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、好ましくは、0.3質量パーセントないし7.5質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.5質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0049】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る矯味剤とは、有効成分の苦味軽減のために通常用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、l-メントール、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、重曹、ベネコート(登録商標)、リンゴ酸等を挙げることができる。前記矯味剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、好ましくは、0.3質量パーセントないし7.5質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.5質量パーセントないし5質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0050】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る香料とは、例えば、ハッカ油、オレンジ油、ゆずフレーバー、イチゴフレーバー、レモンフレーバー、メントールフレーバー、オレンジフレーバー等を挙げることができる。前記香料は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.01質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、好ましくは、0.01質量パーセントないし5質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.01質量パーセントないし1質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0051】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る着色剤とは、例えば、食用赤色2号、3号、食用黄色4号、5号、食用青色1号、2号、これらのアルミニウムレーキ、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン等を挙げることができる。前記着色剤は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、0.01質量パーセントないし10質量パーセントの範囲、好ましくは、0.01質量パーセントないし5質量パーセントの範囲、より好ましくは、0.01質量パーセントないし1質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0052】
本発明の薬物非含有部分に配合し得る添加剤として、添加剤メーカーから販売されるプレミックス品を用いることもできる。前記プレミックス品に含まれる添加剤は、例えば、崩壊剤、賦形剤または結合剤を含み、具体的には、崩壊剤は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、賦形剤は、D-マンニトール、結合剤は、ポリビニルアルコールが挙げられる。前記プレミックス品としては、例えば、信越化学工業株式会社から販売されるSmart EXが挙げられる。前記プレミックス品は、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、50質量パーセントないし85質量パーセント、好ましくは、55質量パーセントないし80質量パーセント、より好ましくは、60質量パーセントないし75質量パーセントである。
【0053】
さらに、薬物非含有部分は、該口腔内速崩壊錠の硬度を増強させるためにさらに水不溶性ポリマーを含むことも好ましい。該水不溶性ポリマーとは、取り扱いに充分な硬度を付与するための錠剤の結合剤としての作用および錠剤中の顆粒以外の部分の賦形剤の水ぬれ性を低下させない作用等を有する任意の水不溶性ポリマーをいう。例えば、国際公開第2010/061846号に記載のものが用いられ得る。このような水不溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(例えば、HPMC-AS/信越化学)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、オイドラギット(登録商標)S/レーム)、メタクリル酸コポリマーL(例えば、オイドラギット(登録商標)L/レーム)、カルボキシメチルエチルセルロース(例えば、CMEC/三洋化成工業)、エチルセルロース(例えば、エトセル(登録商標)/ダウケミカル)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(例えば、HP-50/信越化学)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノメタクリレートコポリマー(例えば、オイラギット(登録商標)RSまたはRL/レーム)等を挙げることができる。好ましくは、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、またはアミノメタクリレートコポリマーであり、より好ましくは、エチルセルロースである。前記水不溶性ポリマーは、該口腔内速崩壊錠100質量パーセントに対して、例えば、1質量パーセントないし20質量パーセントの範囲、好ましくは1質量パーセントないし15質量パーセントの範囲、より好ましくは、1質量パーセントないし10質量パーセントの範囲で配合することができる。
【0054】
本発明の薬物非含有部分は、上記の通り、特段制限されないが、上記以外の添加剤をさらに配合することもできる。このような添加剤としては、例えば、クエン酸塩、炭酸塩等のpH調整剤;ラウリル硫酸ナトリウム、モノステアリン酸ソルビタン等の可溶化剤;アルギニン、リジン等の溶解補助剤等を挙げることができる。
【0055】
本発明の口腔内速崩壊錠は、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を含むテネリグリプチン顆粒、ならびに薬物非含有部分を配合し、錠剤を製造するための通常の方法により、特別の錠剤製造設備を用いることなく、通常の錠剤製造設備で製造することができる。
【0056】
本発明の口腔内速崩壊錠は、例えば、下記の工程:
1)テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物(例、テネリグリプチン臭化水素酸塩・水和物)を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を混合して造粒するテネリグリプチン顆粒を得る工程;2)当該顆粒と医薬上許容される添加剤を混合し打錠用顆粒を得る工程;ならびに3)当該打錠用顆粒を圧縮成形し口腔内速崩壊錠を得る工程;
を含む方法によって製造することができる。
【0057】
また、前記テネリグリプチン顆粒を得る工程が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤、凝集抑制剤およびコーティング用基剤を混合して造粒することを含む方法によって製造することができる。
【0058】
また、前記テネリグリプチン顆粒を得る工程が、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物を、コーティング用基剤を含まない質量で、45質量パーセントないし99質量パーセント、結合剤および凝集抑制剤を混合して造粒した後にコーティング用基剤によりコーティングすることを含む方法によって製造することができる。
【0059】
前記テネリグリプチン顆粒を得る工程は、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を少なくとも含み、例えば、流動層造粒法を用いて湿式造粒し、得られた造粒物を乾燥することにより顆粒状等として製造することができる。このようにして得られた前記テネリグリプチン顆粒は、本発明の口腔内速崩壊錠中において独立して存在し得る強度を有し、前記テネリグリプチン顆粒は本発明の口腔内速崩壊錠中に分散して存在し得る。
【0060】
前記テネリグリプチン顆粒を得る工程については、例えば、乾式造粒法、湿式造粒法等を用いることができる。
乾式造粒法の場合、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を少なくとも含む粉体混合物を、例えば、ローラーコンパクター、ロールグラニュレーター等を用いて造粒することにより所望の顆粒を得ることができる。
湿式造粒法の場合、例えば、流動層造粒機、高速撹拌造粒機等を用いて、流動下、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を少なくとも含む粉体混合物に水を、例えば、噴霧等の手段により添加しつつ造粒し、得られた造粒物を乾燥することにより所望のテネリグリプチン顆粒を得ることができる。
湿式造粒法の場合の別法としては、例えば、流動層造粒機、高速撹拌造粒機等を用いて、流動下、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、そして凝集抑制剤を含む粉体混合物に、結合剤の溶液(例えば、水溶液、エタノール溶液、エタノール/水溶液等)を、例えば、噴霧等の手段により添加しつつ造粒し、得られた造粒物を乾燥することにより所望のテネリグリプチン顆粒を得ることができる。また噴霧の方法として、トップスプレー方式、接線スプレー方式またはボトムスプレー方式のいずれも採用され得る。
【0061】
前記テネリグリプチン顆粒は、コーティング用基剤が含まれていてもよく、コーティング用基剤を含むテネリグリプチン顆粒を得る工程については、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って、例えば、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤、凝集抑制剤およびコーティング用基剤を少なくとも含み、例えば、流動層造粒法を用いて湿式造粒し、得られた造粒物を乾燥することにより顆粒状等として製造することができる。
【0062】
前記テネリグリプチン顆粒は、コーティング用基剤によりコーティングされていてもよく、コーティング用基剤によりコーティングされたテネリグリプチン顆粒を得る工程については、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って製造することができる。例えば、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物、結合剤および凝集抑制剤を少なくとも含み、例えば、流動層造粒法を用いて湿式造粒し、得られた造粒物を乾燥することにより顆粒状等としたものに、流動下、コーティング用基剤を少なくとも含む液体(例えば、水分散液、エタノール溶液、エタノール/水溶液、エタノール/水分散液等)を、例えば、噴霧等の手段により添加しつつコーティングし、得られたコーティング物を乾燥することにより所望のテネリグリプチン顆粒を得ることができる。また、噴霧の方法として、トップスプレー方式、接線スプレー方式またはボトムスプレー方式のいずれも採用され得る。
【0063】
前記打錠用顆粒を得る工程は、得られたテネリグリプチン顆粒と、少なくとも、崩壊剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料または着色剤から選択される医薬上許容される添加剤を含む薬物非含有部分とを混合することにより、打錠用顆粒を得る工程である。
混合する方法としては、任意の方法を用いることができるが、例えば、二重円錐混合機等の容器回転型混合機、流動層造粒機、高速撹拌造粒機等を用いた慣用の方法を用いることができる。混合後、さらに必要に応じて、例えば、日本薬局方22メッシュ篩を用いて、混合物を篩過することができる。
【0064】
前記打錠用顆粒を圧縮成形する工程は、単発打錠機、ロータリー打錠機等の慣用の打錠機を用いて行うことができる。打錠圧は、目的とする錠剤の硬度等の特性に応じて適宜選択することができるが、約10~5000kgf/杵、好ましくは、約20~4000kgf/杵、特に好ましくは、約100~2000kgf/杵とすることができる。打錠機として、例えば、菊水製作所製コンパクションアナライザーを用いる場合、例えば、直径9.5mmの杵を用いる場合には、200~1000kgf/杵の打錠圧で打錠するのが好ましい。
【0065】
本発明の口腔内速崩壊錠は、錠剤の直径を約3~20mm、好ましくは、約4~15mm、さらに好ましくは、約5~13mmにすると、服用の取り扱いが有利となる。
【0066】
本発明の口腔内速崩壊錠は、口腔内で速やかに崩壊する特性を持つとともに、製造、流通および調剤の各過程において、破損することがない物理的強度を示す。
口腔内速崩壊錠の崩壊時間(局方に記載されている崩壊試験装置を用いて、試験液に水を用い、液温37±2℃で、崩壊試験を実施した時の口腔内速崩壊錠が完全に崩壊するまでの時間)は、約60秒以内、好ましくは約50秒以内、最も好ましくは、約40秒以内である。
また、本発明の口腔内速崩壊錠は、製剤工程、流通過程において破損することのない程度の適度な硬度を有しており、口腔内速崩壊錠の強度(錠剤硬度計による測定値)は、通常約20~80N、さらに好ましくは、約20~70Nである。
【0067】
本発明の口腔内速崩壊錠の投与量は、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組合せ、または患者のその時に治療を行っている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。本発明の固形製剤は、低毒性で安全に使用することができ、その1日の投与量は、患者の状態や体重等によって異なるが、例えば、有効成分であるテネリグリプチンとして、0.01ないし100mg/kg体重/日、好ましくは0.05ないし50mg/kg体重/日を、一日1ないし数回に分けて投与するのが好ましい。
【0068】
本発明の口腔内速崩壊錠においては、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物としてテネリグリプチンを配合する場合、テネリグリプチンは、所望の量を配合することができ、例えば、前記口腔内速崩壊錠1錠あたり1mgないし100mg、好ましくは、10mgないし50mg、より好ましくは、20mgまたは40mg配合することができる。また、テネリグリプチンもしくはその塩、またはその溶媒和物は、口腔内速崩壊錠1錠100質量パーセントに対して、10質量パーセントないし50質量パーセント、好ましくは、15質量パーセントないし30質量パーセント配合することができる。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部と軽質無水ケイ酸0.62質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、3.5%(W/W)ポリビニルアルコール水溶液35.4質量部を約30分かけて噴霧しながら造粒した。造粒物の温度が40℃以上になるまで乾燥することにより造粒顆粒を得た。
(2)上記(1)で得られた造粒顆粒63.86質量部、プレミックス賦形剤(Smart EX(登録商標)、グレード;QD-50)252.3質量部、クロスポビドン17質量部およびフマル酸ステアリルナトリウム6.8質量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり340mgとなるよう、ロータリー打錠機(菊水製作所製、VELAII、杵直径:9.5mm、打錠圧:400kgf/杵)で圧縮成形することにより、口腔内速崩壊錠を得た(硬度:64N、崩壊時間:26秒)。
【0071】
実施例2
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部と軽質無水ケイ酸0.62質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、エチルセルロース12.4質量部、トリアセチン2.48質量部およびタルク2.48質量部を80%(W/W)エタノール水溶液164.7質量部に分散させた液を約300分かけて噴霧しながら造粒した。造粒物の温度が40℃以上になるまで乾燥することにより造粒顆粒を得た。
(2)上記(1)で得られた造粒顆粒80質量部、プレミックス賦形剤(Smart EX(登録商標)、グレード;QD-50)236.3質量部、クロスポビドン17質量部およびフマル酸ステアリルナトリウム6.8質量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり340mgとなるよう、コンパクションアナライザー(菊水製作所製、杵直径:9mm、打錠圧:400kgf/杵)で圧縮成形することにより、口腔内速崩壊錠を得た(硬度:47N、崩壊時間:30秒)。
【0072】
実施例3
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部と軽質無水ケイ酸0.62質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、3.5%ポリビニルアルコール(W/W)水溶液35.429質量部を約60分かけて噴霧しながら造粒した。造粒物の温度が35℃以上になるまで乾燥することにより造粒顆粒を得た。
(2)上記(1)で得られた造粒顆粒63.86質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度60℃で、エチルセルロース水分散体(Aquacoat(登録商標)、グレード:ECD)(エチルセルロースとして24.8重量部)91.85質量部およびトリアセチン6.612質量部を水129.328質量部に分散させた液を噴霧しながらコーティングした。コーティング物の温度が55℃以上になるまで乾燥することによりコーティング顆粒を得た。
(3)上記(2)で得られたコーティング顆粒98.03質量部、プレミックス賦形剤(Smart EX(登録商標)、グレード:QD-50)218.2質量部、クロスカルメロースナトリウム17質量部およびフマル酸ステアリルナトリウム6.8質量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり340mgとなるよう、コンパクションアナライザー(菊水製作所製、杵直径:9.5mm、打錠圧:400kgf/杵)で圧縮成形することにより、口腔内速崩壊錠を得た(硬度:39N、崩壊時間:28秒)。
【0073】
実施例4
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部とアセスルファムカリウム0.93質量部、軽質無水ケイ酸0.62質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、6%ポリビニルアルコール(W/W)水溶液20.67質量部を約40分かけて噴霧しながら造粒した。造粒物の温度が35℃以上になるまで乾燥することにより造粒顆粒を得た。
(2)上記(1)で得られた造粒顆粒64.79質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度60℃で、エチルセルロース水分散体(Aquacoat(登録商標)、グレード:ECD)(エチルセルロースとして24.8重量部)91.85質量部およびクエン酸トリエチル6.612質量部を水144.85質量部に分散させた液を噴霧しながらコーティングした。エチルセルロース18.6質量部(原薬に対してコーティング量が30%)の時点でサンプリングを行い、各々のコーティング物の温度が55℃以上になるまで乾燥することによりコーティング顆粒を得た。
(3)上記(2)で得られたコーティング顆粒98.96質量部、プレミックス賦形剤(Smart EX(登録商標)、グレード:QD-50)163.6質量部、クロスカルメロースナトリウム8.4質量部、スクラロース2.8質量部、香料0.39質量部、黄色三二酸化鉄0.28質量部およびフマル酸ステアリルナトリウム5.6質量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり280mgとなるよう、ロータリー打錠機(菊水製作所製、VERAII、杵直径:9mm、打錠圧:400kgf/杵)で圧縮成形することにより、口腔内速崩壊錠を得た。コーティング量0%および30%顆粒についても、それぞれ造粒顆粒64.79質量部および90.45質量部、プレミックス賦形剤(Smart EX(登録商標)、グレード:QD-50)197.8質量部および172.1質量部を混合することで、1錠当たり280mgの口腔内速崩壊錠を得た。
(4)得られた硬度および崩壊時間を下記表1に示す。
【0074】
【0075】
実施例5
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部と軽質無水ケイ酸0.62質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、エチルセルロース24.8質量部、トリアセチン4.96質量部およびタルク4.96質量部を80%(W/W)エタノール水溶液329.5質量部に分散させた液を約600分かけて噴霧しながら造粒した。造粒物の温度が40℃以上になるまで乾燥することにより造粒顆粒を得た。
(2)上記(1)で得られた造粒顆粒97.34質量部、プレミックス賦形剤(Smart EX(登録商標)、グレード;QD-50)218.86質量部、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)、グレード;CL-F)17質量部およびフマル酸ステアリルナトリウム6.8質量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり340mgとなるよう、ロータリー打錠機(菊水製作所製、VERAII、杵直径:9mm、打錠圧:400kgf/杵)で圧縮成形することにより、口腔内速崩壊錠を得た(硬度:60N、崩壊時間:30秒)。
【0076】
比較例1
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、6%(W/W)ポリビニルアルコール水溶液20.7質量部を約40分かけて噴霧しながら造粒した。しかしながら、缶体下部において内部の粉体が凝集塊を形成(ブロッキング)し、所望の顆粒を得ることができなかった。
【0077】
比較例1の結果から、製造中にテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物の付着凝集性に起因する粉体の凝集が発生し、所望のテネリグリプチン顆粒を製造することができないことが示された。
【0078】
比較例2
(1)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物62質量部とマンニトール244質量部を流動層造粒機(パウレック製、MP-01/SFP)に仕込み、吸気温度70℃で、3%(W/W)エチルセルロース(グレード;10P)の80%(W/W)エタノール溶液340質量部を約30分かけて噴霧しながら造粒した。造粒物の温度が40℃以上になるまで乾燥することにより造粒顆粒を得た。
(2)上記(1)で得られた造粒顆粒316.2質量部、クロスポビドン17質量部およびフマル酸ステアリルナトリウム6.8質量部を混合し、打錠用顆粒を得た。当該打錠用顆粒を用い、1錠当たり340mgとなるよう、ロータリー打錠機(菊水製作所製、VELAII、杵直径:9.5mm、打錠圧:400kgf/杵)で圧縮成形することにより、錠剤を得た(硬度:90N、崩壊時間:60秒以上)。
【0079】
比較例2の結果から、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物を錠剤中に均一に混合するという従来の方法では、錠剤内部への水分の浸透を妨げる本化合物の特性のために、所望の崩壊時間を備えた口腔内崩壊錠が得ることができないことが示された。
本発明のテネリグリプチンを含有する口腔内速崩壊錠は、高齢者や嚥下困難な患者に服用しやすい製剤を提供することができ、本発明は、テネリグリプチンを配合した2型糖尿病の治療薬等の製造に有用である。