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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008149
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】冷却用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20250109BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20250109BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110073
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕志
(72)【発明者】
【氏名】木屋尾 祐太
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE03
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】冷却対象に重ね合わされる冷却プレートと、冷却プレートに重ね合わされて固着される合成樹脂製の流路部材との熱膨張による変形量の差を抑えることができる、新規な構造の冷却用熱交換器を提供する。
【解決手段】冷却対象64に重ね合わされる冷却プレート14と、凹溝18を備えた合成樹脂製の流路部材12とが、相互に重ね合わされて固着されており、冷却プレート14で凹溝18の開口が覆われることによって冷却プレート14と流路部材12の間に熱媒体62が流動する冷却流路16が形成された冷却用熱交換器10であって、冷却プレート14は、冷却対象64に重ね合わされる金属プレート34と、金属プレート34の外周端部を保持する合成樹脂製の保持部材32とを、含んで構成されており、金属プレート34が冷却流路16の壁部を構成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象に重ね合わされる冷却プレートと、凹溝を備えた合成樹脂製の流路部材とが、相互に重ね合わされて固着されており、該冷却プレートで該凹溝の開口が覆われることによって該冷却プレートと該流路部材の間に熱媒体が流動する冷却流路が形成された冷却用熱交換器であって、
前記冷却プレートは、前記冷却対象に重ね合わされる金属プレートと、該金属プレートの外周端部を保持する合成樹脂製の保持部材とを、含んで構成されており、
該金属プレートが前記冷却流路の壁部を構成している冷却用熱交換器。
【請求項2】
前記保持部材は、前記金属プレートの周囲を囲んで設けられて、該金属プレートの外周端部を全周に亘って保持している請求項1に記載の冷却用熱交換器。
【請求項3】
1つの前記保持部材によって複数の前記金属プレートが保持されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項4】
前記冷却流路は、前記流路部材と前記保持部材との重ね合わせ面間を延びる本流部と、該本流部から分岐して該流路部材と各前記金属プレートとの重ね合わせ面間を延びる複数の支流部とを、備えている請求項3に記載の冷却用熱交換器。
【請求項5】
前記本流部は、前記支流部に供給される熱媒体が流れる往路部と、該支流部から排出された熱媒体が流れる復路部とを、備えており、
該往路部と該復路部の一方が前記流路部材の中間部に設けられており、
該往路部と該復路部の他方が該流路部材の両側に設けられており、
複数の該支流部が該往路部と該復路部との間にそれぞれ設けられている請求項4に記載の冷却用熱交換器。
【請求項6】
前記保持部材には、前記冷却流路の端部に接続される外部ポートが一体的に設けられている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項7】
前記流路部材と前記保持部材とが相互に接着又は溶着されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項8】
前記流路部材と前記保持部材とが同じ樹脂材料で形成されている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【請求項9】
前記金属プレートには、前記流路部材へ向けて突出して前記冷却流路内へ挿入される突出部が設けられている請求項1又は2に記載の冷却用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の電動化車両においてバッテリーパック等の冷却対象の冷却に用いられる冷却用熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の電動化車両において、冷却対象であるバッテリーパックや電子機器等は、小型化や高性能化によって発熱量が大きくなっており、冷却性能の重要性が増している。従来では、相互に重ね合わされた金属製のプレート間に冷却流路が形成された構造の冷却用熱交換器が採用されていた。この冷却用熱交換器は、一方のプレートがバッテリーパック等の冷却対象に重ね合わされており、当該一方のプレートが冷却流路を流れる冷媒で冷却されることによって冷却対象が冷却されるようになっている。
【0003】
また、電動化車両では車両の軽量化への強い要求があることから、冷却用熱交換器の軽量化も検討されている。例えば、国際公開第2020/196878号(特許文献1)には、冷却対象に重ね合わされて熱伝導性が重要となる一方のプレートを金属製とし、熱伝導性を求められない他方のプレートを金属よりも比重が小さい合成樹脂製の樹脂部材とすることが提案されている。特許文献1において、樹脂部材は、上面において開口する箱体とされており、箱体内には流路形成用リブが箱体と一体的に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/196878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1の構造では、金属プレートと樹脂部材とを重ね合わせて接着等の手段で相互に固定すると、線膨張率の違いによる板厚方向の撓みが発生することが分かった。従って、著しく高温又は低温の環境下では、金属プレートと樹脂部材との熱膨張による変形量の差によって冷却用熱交換器が撓む等して、金属プレートと樹脂部材の剥離や冷却性能の低下を引き起こすことも考えられた。特に、電動化車両に用いられる冷却用熱交換器は、金属プレートと樹脂部材との重ね合わせ方向と直交する長さ方向及び幅方向のサイズが大きいことから、金属プレートと樹脂部材との線膨張率の違いによる変形量の差が問題になり易かった。
【0006】
本発明の解決課題は、冷却対象に重ね合わされる冷却プレートと、冷却プレートに重ね合わされて固着される合成樹脂製の流路部材との熱膨張による変形量の差を抑えることができる、新規な構造の冷却用熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、冷却対象に重ね合わされる冷却プレートと、凹溝を備えた合成樹脂製の流路部材とが、相互に重ね合わされて固着されており、該冷却プレートで該凹溝の開口が覆われることによって該冷却プレートと該流路部材の間に熱媒体が流動する冷却流路が形成された冷却用熱交換器であって、前記冷却プレートは、前記冷却対象に重ね合わされる金属プレートと、該金属プレートの外周端部を保持する合成樹脂製の保持部材とを、含んで構成されており、該金属プレートが前記冷却流路の壁部を構成しているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、熱伝導率の高い金属プレートによって冷却対象を効率的に冷却しつつ、冷却プレートの全体を金属製とする場合に比して、冷却プレートと合成樹脂製の流路部材との熱膨張時の変形量の差が低減される。それゆえ、優れた冷却性能を確保しながら、環境温度の変化による冷却用熱交換器の撓み変形等を防ぐことができる。
【0010】
第二の態様は、第一の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記保持部材は、前記金属プレートの周囲を囲んで設けられて、該金属プレートの外周端部を全周に亘って保持しているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、金属プレートの周囲が全周に亘って保持部材によって保持されることから、金属プレートが保持部材によって安定して保持されて、金属プレートの意図しない脱落等を防止することができる。
【0012】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された冷却用熱交換器において、1つの前記保持部材によって複数の前記金属プレートが保持されているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、複数の冷却対象を1つの冷却用熱交換器で冷却したり、1つの冷却対象の複数箇所を1つの冷却用熱交換器で冷却することが可能となる。
【0014】
第四の態様は、第三の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記冷却流路は、前記流路部材と前記保持部材との重ね合わせ面間を延びる本流部と、該本流部から分岐して該流路部材と各前記金属プレートとの重ね合わせ面間を延びる複数の支流部とを、備えているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、流路部材と保持部材との重ね合わせ面間を利用して冷却流路を構成する本流部を形成することにより、冷却流路の設計自由度を大きく得ることができる。また、本流部によって各支流部に対する熱媒体の供給/排出の流れが設定されることから、支流部を大きな自由度で設計することが可能となって、支流部を流れる熱媒体による冷却プレートの効率的な冷却等が実現される。
【0016】
第五の態様は、第四の態様に記載された冷却用熱交換器において、前記本流部は、前記支流部に供給される熱媒体が流れる往路部と、該支流部から排出された熱媒体が流れる復路部とを、備えており、該往路部と該復路部の一方が前記流路部材の中間部に設けられており、該往路部と該復路部の他方が該流路部材の両側に設けられており、複数の該支流部が該往路部と該復路部との間にそれぞれ設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、往路部と復路部との一方に対して両側方にそれぞれ金属プレートを配して、冷却対象の冷却領域を複数箇所に設定することができる。しかも、支流部を往路部及び復路部の流路長さ方向に複数並ぶように設けることもできることから、1つの冷却プレートに設定される冷却領域の数を大きな自由度で設定することが容易になる。
【0018】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記保持部材には、前記冷却流路の端部に接続される外部ポートが一体的に設けられているものである。
【0019】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、外部ポートが保持部材に一体的に設けられることによって、部品点数の削減が図られる。また、保持部材は、合成樹脂製であることから、金属製に比して形状の自由度が大きく、外部ポートを容易に形成することができる。
【0020】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記流路部材と前記保持部材とが相互に接着又は溶着されているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、それぞれ合成樹脂製とされた流路部材と保持部材を接着又は溶着することにより、冷却プレートと流路部材を強固に固着することができる。例えば、第二の態様のように保持部材が金属プレートの周囲を全周に亘って連続的に囲んで設けられていれば、流路部材と保持部材の接着又は溶着によって、金属プレートと流路部材の間の冷却流路から熱媒体が漏れ出すのを防止することもできる。
【0022】
第八の態様は、第一~第七の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記流路部材と前記保持部材とが同じ樹脂材料で形成されているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、流路部材と保持部材との熱膨張係数が同じとなることから、流路部材と保持部材の間で熱膨張時の変形量の差が生じない、また、第七の態様のように流路部材と保持部材を相互に接着又は溶着する場合に、強い固着強度を得易くなる。
【0024】
第九の態様は、第一~第八の何れか1つの態様に記載された冷却用熱交換器において、前記金属プレートには、前記流路部材へ向けて突出して前記冷却流路内へ挿入される突出部が設けられているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた冷却用熱交換器によれば、金属プレートにおける冷却流路への露出面積が大きくなることから、冷却流路を流れる熱媒体と金属プレートの間での熱交換効率が高められて、冷却対象を効率的に冷却することができる。また、突出部による金属プレートの補強作用も期待できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、冷却対象に重ね合わされる冷却プレートと、冷却プレートに重ね合わされて固着される合成樹脂製の流路部材との熱膨張による変形量の差を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第一の実施形態としての冷却用熱交換器を示す斜視図
図2図1に示す冷却用熱交換器の分解斜視図
図3図1に示す冷却用熱交換器の断面図であって、図4のIII-III断面に相当する図
図4図3のIV-IV断面図
図5図1に示す冷却用熱交換器を構成する流路部材の斜視図
図6図1に示す冷却用熱交換器を構成する冷却プレートの保持部材の斜視図
図7】本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器の要部拡大断面図
図8】本発明の第三の実施形態としての冷却用熱交換器を構成する金属プレートの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1には、本発明の第一の実施形態としての冷却用熱交換器10が示されている。冷却用熱交換器10は、図2図4にも示すように、流路部材12と冷却プレート14とが相互に重ね合わされて固着されており、それら流路部材12と冷却プレート14との重ね合わせ面間に熱媒体(後述)が流動する冷却流路16が形成された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とは流路部材12と冷却プレート14との重ね合わせ方向である図3中の上下方向を、左右方向とは図3中の左右方向を、前後方向とは図4中の左右方向を、それぞれ言う。
【0030】
流路部材12は、図5に示すように、全体として矩形板状とされており、前後方向が左右方向よりも長尺とされている。流路部材12は、合成樹脂製とされており、好適には熱可塑性の合成樹脂材料が採用される。流路部材12の形成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、フッ素樹脂、ポリオレフィン等が好適に採用され得る。流路部材12は、ガラス繊維や炭素繊維等で補強された繊維補強合成樹脂によって形成することもできる。
【0031】
流路部材12には、上面に開口する凹溝18が形成されている。凹溝18は、冷却プレート14で覆われることによって冷却流路16を構成する溝であって、冷却流路16の本流部58(後述)を構成する往路溝部20及び復路溝部22,22と、冷却流路16の複数の支流部60(後述)を構成する支流溝部24とを、備えている。
【0032】
往路溝部20は、流路部材12の左右方向の中央部分を前後方向に延びている。往路溝部20の前後両端部は、流路部材12の前後両端まで達することなく、前後方向の途中に位置している。復路溝部22は、流路部材12の左右方向の両端部分を前後方向に延びている。復路溝部22の前後両端部は、流路部材12の前後両端まで達することなく、前後方向の途中に位置している。復路溝部22,22は、前端部分が左右方向の内側へ延びて相互に連通されている。
【0033】
支流溝部24は、左右方向に延びており、前後方向の4箇所にそれぞれ設けられている。支流溝部24は、往路溝部20の左右両側にそれぞれ4つずつ設けられており、往路溝部20と復路溝部22,22との左右間に位置している。支流溝部24は、左右両端部において左右両側に向けて前後中央に収束する形状とされており、左右両端部が前後中央において連通溝部26,26を介して往路溝部20と復路溝部22とに接続されている。本実施形態では、往路溝部20と復路溝部22と支流溝部24と連通溝部26との各底面が、上下方向と直交して広がる同一平面によって構成されている。
【0034】
各支流溝部24には、左右方向に延びる整流リブ28が突出している。整流リブ28は、略矩形断面で左右方向に直線的に延びる突条であって、支流溝部24の左右両端までは達しない長さで形成されている。各支流溝部24には、前後方向で相互に離隔する複数の整流リブ28が設けられており、支流溝部24の左右中間部分がそれら複数の整流リブ28によって並列的に左右方向に延びる複数に分割されている。本実施形態において、支流溝部24の前後方向の中央に位置する整流リブ28aは、他の整流リブ28bよりも前後方向の幅寸法が大きくされており、他の整流リブ28bよりも左右方向の長さが短くされている。図3では、整流リブ28aが図示されていると共に、整流リブ28bの図示が省略されている。なお、複数の整流リブ28は、例えば、互いに同一の大きさ及び形状とされていてもよいし、大きさ又は形状が相互に異なっていてもよいし、湾曲又は屈折しながら延びるものが含まれていてもよい。
【0035】
流路部材12には、複数の肉抜孔30が形成されている。肉抜孔30は、左右方向が長手とされた略矩形の孔断面形状を有しており、各支流溝部24の前側壁部の前後中間部分を上下方向に貫通してそれぞれ形成されている。
【0036】
冷却プレート14は、図1図2に示すように、1つの保持部材32に複数の金属プレート34が取り付けられた構造とされている。本実施形態の冷却プレート14は、1つの保持部材32に対して8つの金属プレート34が取り付けられている。
【0037】
保持部材32は、図6に示すように、全体として矩形板状とされており、合成樹脂製とされている。保持部材32の形成材料となる樹脂材料は、特に限定されないが、流路部材12と同様に熱可塑性樹脂材料が望ましい。保持部材32の形成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、フッ素樹脂、ポリオレフィン等が好適に採用され得る。保持部材32は、流路部材12と同じ樹脂材料によって形成されていてもよいし、流路部材12とは異なる樹脂材料によって形成されていてもよいが、本実施形態では流路部材12と同じ樹脂材料で形成されている。保持部材32は、流路部材12と同様に繊維補強合成樹脂によって形成することもできる。
【0038】
保持部材32は、板厚方向に貫通する複数の窓部36を備えている。窓部36は、矩形孔断面とされており、上下に4つが並んでいると共に、左右に2列とされて、合計で8つが形成されている。8つの窓部36が保持部材32の内周部分に形成されることにより、それら窓部36よりも外周側には、矩形枠状の外周枠状部38が形成されている。また、8つの窓部36の間には、桟状部40が形成されている。桟状部40は、左右中央部分を前後方向に直線的に延びる主流蓋部42と、主流蓋部42から左右両側へ延び出す複数の支流間蓋部44とを、一体で備えている。主流蓋部42の前後両端部と各支流間蓋部44の左右外側端部とが、それぞれ外周枠状部38に一体で連続しており、桟状部40が外周枠状部38の内周に一体で設けられている。
【0039】
保持部材32における各窓部36の周囲には、位置決めリブ46が形成されている。位置決めリブ46は、保持部材32の上面に突出しており、各窓部36の四辺に沿ってそれぞれ直線的に延びている。窓部36の周囲に設けられた4つの位置決めリブ46,46,46,46は、それぞれ窓部36の角までは達しない長さとされており、窓部36の周方向で相互に離れている。位置決めリブ46は、窓部36から外周へ僅かに離れた位置に形成されており、窓部36の周囲が位置決めリブ46よりも内周へ突出するプレート保持部48とされている。
【0040】
保持部材32の外周枠状部38には、外部ポートとしての入口ポート50と出口ポート52とが一体形成されている。入口ポート50は、外周枠状部38の上面に設けられて前方へ突出する略円筒状のノズルによって構成されている。入口ポート50は、後端部において外周枠状部38を貫通しており、外周枠状部38の下面に開口している。出口ポート52は、外周枠状部38の上面において入口ポート50の左方に並列的に設けられており、入口ポート50よりも短い円筒ノズル状とされて、前方へ突出している。出口ポート52の後端部は、入口ポート50の後端部よりも前方において外周枠状部38を貫通して下方に開口している。
【0041】
金属プレート34は、矩形板状の金属板であって、窓部36と対応する大きさ及び形状とされている。より詳細には、本実施形態の金属プレート34は、窓部36よりも僅かに大きな外形とされており、位置決めリブ46の内周に納まる大きさとされている。また、金属プレート34は、熱伝導率の高い金属材料で形成されていることが望ましく、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、或いはそれらの合金等によって形成される。
【0042】
金属プレート34は、図3図4に示すように、保持部材32の窓部36を覆うように配されている。金属プレート34は、外周縁部が保持部材32に溶着又は接着によって固着されており、外周縁部が保持部材32によって全周に亘って保持されている。保持部材32は、各金属プレート34の周囲を囲んで配されている。金属プレート34と保持部材32の固着手段としては、例えば、摩擦熱を利用して溶着する摩擦圧着等が採用される。
【0043】
本実施形態では、金属プレート34の外周縁部が保持部材32のプレート保持部48に上下方向で重ね合わされており、それら金属プレート34とプレート保持部48とが相互に固着されている。金属プレート34は、窓部36の周囲に設けられた4つの位置決めリブ46の内周へ差し入れられることにより、窓部36の開口上に位置決めされ易くなっている。
【0044】
金属プレート34とプレート保持部48との重ね合わせ面間は、固着によって液密に封止されており、後述する冷却流路16を流れる熱媒体(冷媒)の通過が阻止されている。なお、熱媒体が気体の場合には、金属プレート34とプレート保持部48との重ね合わせ面間が気密に封止される。
【0045】
冷却プレート14は、流路部材12に対して上方から重ね合わされて固着されている。図3に示すように、冷却プレート14を構成する保持部材32の外周枠状部38が流路部材12の外周端部に重ね合わされていると共に、保持部材32の桟状部40が流路部材12における隣り合う支流溝部24,24の間に重ね合わされており、それら保持部材32と流路部材12が相互に固着されている。流路部材12と保持部材32との固着手段は、特に限定されないが、例えば、接着剤による接着、流路部材12と保持部材32との重ね合わせ面の溶融一体化による溶着等が好適に採用される。本実施形態では、流路部材12と保持部材32が同じ合成樹脂材料で形成されていることから、接着又は溶着による固着強度を大きく得易く、また、接着の場合に接着剤の選択が容易であり、溶着の場合に溶融温度や凝固温度の設定が容易になる。
【0046】
流路部材12と冷却プレート14とが重ね合わされて固着されることにより、流路部材12の往路溝部20の上開口部が保持部材32の主流蓋部42によって覆われて、往路部54が構成されている。また、流路部材12の復路溝部22の上開口部が保持部材32の外周枠状部38によって覆われて、復路部56が構成されている。本実施形態では、流路部材12の左右中間部分に往路部54が形成されていると共に、復路部56が往路部54に対して左右方向の両側に離隔して、流路部材12の左右両端部分にそれぞれ設けられており、往路部54と2つの復路部56,56とによって、本実施形態の本流部58が構成されている。なお、左右の復路部56,56は、左右内方へ屈曲して延び出す前端部分において相互につながっており、共通の出口ポート52に接続されている。
【0047】
また、流路部材12の各支流溝部24の上開口部が金属プレート34によって覆われることにより、支流部60が構成されている。支流部60は、本流部58の往路部54から側方へ分岐して左右両側にそれぞれ設けられている。本実施形態では、前後方向の4箇所において往路部54の左右両側に支流部60がそれぞれ形成されており、8つの支流部60が設けられている。支流部60は、往路部54と復路部56,56との間に設けられており、左右内側の端部が往路部54に連通されていると共に、左右外側の端部が何れか一方の復路部56に連通されている。
【0048】
このように、流路部材12と冷却プレート14との重ね合わせ面間には、本流部58と支流部60とを備えた冷却流路16が形成されている。冷却流路16において、本流部58は、合成樹脂製の流路部材12と合成樹脂製の保持部材32との重ね合わせ面間に形成されており、支流部60は、合成樹脂製の流路部材12と金属製の金属プレート34との重ね合わせ面間に形成されている。金属プレート34は、冷却流路16における支流部60の上壁部を構成している。複数の金属プレート34が往路部54の左右両側方に配置されており、複数の支流部60が往路部54の左右両側方に分岐して設けられている。
【0049】
外周枠状部38が流路部材12の外周端部に重ね合わされることにより、入口ポート50の後端開口部が往路部54に開口していると共に、出口ポート52の後端開口部が復路部56に開口している。これにより、入口ポート50及び出口ポート52が冷却流路16の両端部を構成しており、冷却流路16が入口ポート50及び出口ポート52を通じて外部に開放されている。
【0050】
このような構造とされた冷却用熱交換器10は、入口ポート50と出口ポート52が図示しない外部流路に接続されて、熱媒体(冷却液)が図示しないポンプによって冷却流路16に対して給排されるようになっている。外部流路は、例えば、ポンプやファン等の熱媒体の圧送装置と、熱媒体との間での熱交換によって熱媒体を冷却する冷凍機とを備えている。また、熱媒体に混入した異物を除去するためのフィルタ等が外部流路に設けられていてもよい。
【0051】
このような本実施形態に従う構造とされた冷却用熱交換器10によれば、冷却用熱交換器10の冷却流路16を低温の熱媒体が流れることにより、支流部60の上壁部を構成する金属プレート34が冷却される。そして、金属プレート34の上方には、図3図4に示すように、冷却対象であるバッテリーパック64が重ね合わされており、金属プレート34とバッテリーパック64との間での熱交換によって、バッテリーパック64が冷却されるようになっている。熱媒体は、外部流路から入口ポート50を通じて本流部58の往路部54へ供給されて、往路部54を後方へ向けて流れながら、往路部54から支流部60に流入する。そして、支流部60へ流れ込んだ熱媒体は、金属プレート34との間で熱の授受を行った後、本流部58の復路部56へ流出し、復路部56を前方へ向けて流れて、出口ポート52を通じて外部流路へ排出される。
【0052】
金属プレート34とバッテリーパック64の重ね合わせ面間には、伝熱層66が設けられていてもよい。伝熱層66は、例えば、シート状やゲル状とされており、金属プレート34の上面に固着されている。伝熱層66は、例えば、合成樹脂製の基材に熱伝導率の高い金属粉末を分散させたもの等を採用することができる。このような伝熱層66によれば、基材に粘着性を持たせて、金属プレート34とバッテリーパック64を基材によって位置決め保持させることも可能となる。
【0053】
冷却用熱交換器10の冷却プレート14は、バッテリーパック64との重ね合わせ部分が熱伝導率の高い金属プレート34で構成されていることから、バッテリーパック64が効率的に冷却される。また、冷却プレート14が部分的に合成樹脂製の保持部材32とされていることから、全体が金属製の冷却プレートに比して、必要な冷却性能を確保しながら、冷却用熱交換器10の軽量化や低コスト化等を実現し易くなる。
【0054】
また、冷却用熱交換器10は、冷却プレート14に重ね合わされる流路部材12が合成樹脂製とされている。それゆえ、冷却用熱交換器10、従来の金属板を重ね合わせた構造の冷却用熱交換器10に比して更なる軽量化が図られ得て、冷却用熱交換器10を搭載する電動化車両の走行性能や燃費に寄与し得る。
【0055】
さらに、冷却プレート14が合成樹脂製の保持部材32と金属製の金属プレート34とを組み合わせた複合構造とされていることにより、冷却プレート14を合成樹脂製の流路部材12と重ね合わせて固着しても、冷却プレート14と流路部材12との熱膨張率(線膨張係数)の差による冷却用熱交換器10の歪が低減される。即ち、冷却プレート14は、全体が流路部材12との熱膨張率の差が大きい金属製とされた従来の冷却プレートに比して、金属プレート34が部分的とされていることから、合成樹脂製の保持部材32が設けられている分だけ流路部材12との熱膨張率の違いに起因する変形量の差が抑えられている。その結果、冷却用熱交換器10は、高温又は低温の環境下において、冷却プレート14と流路部材12との熱膨張率の差による撓み等の意図しない変形が軽減される。それゆえ、金属プレート34とバッテリーパック64との重ね合わせ面間に隙間が生じて冷却性能が低下したり、冷却プレート14と流路部材12との重ね合わせ面間の剥離が発生する等の不具合が回避され易くなる。
【0056】
図7には、本発明の第二の実施形態としての冷却用熱交換器70の一部が示されている。冷却用熱交換器70は、流路部材12に冷却プレート72が重ね合わされて固着された構造を有している。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0057】
冷却プレート72は、保持部材74と複数の金属プレート76とによって構成されており、金属プレート34が保持部材74の窓部36の内周へ差し入れており、金属プレート76の外周面と窓部36の内周面とが重ね合わされて固着されている。従って、本実施形態の保持部材74は、第一の実施形態の保持部材32に設けられていたプレート保持部48がない構造とされている。流路部材12と冷却プレート72とが重ね合わされた状態において、窓部36の開口縁部と金属プレート76の外周縁部は、支流溝部24の壁部上に位置しており、支流溝部24の壁部に重ね合わされて固着されている。
【0058】
このような本実施形態に従う構造とされた冷却用熱交換器70によれば、冷却プレート72の上面及び下面をより平坦な構造とすることができて、例えば、多数の冷却用熱交換器70を重ね合わせた状態で保管又は輸送する際に有利となり得る。
【0059】
図8には、本発明の第三の実施形態としての冷却用熱交換器を構成する金属プレート80が示されている。この金属プレート80は、第一の実施形態に係る冷却用熱交換器10の金属プレート34又は第二の実施形態に係る冷却用熱交換器の金属プレート76に代えて採用することができる。
【0060】
金属プレート80は、突出部としての伝熱フィン82を備えている。伝熱フィン82は、前後方向が板厚方向とされて左右方向が長手とされた細長い板状とされており、金属プレート80の下面に突出している。金属プレート80には、複数の伝熱フィン82が前後方向で相互に離れて設けられている。それら複数の伝熱フィン82は、支流溝部の底面に突設された複数の整流リブの前後間に差し入れられており、冷却流路の支流部内へ挿入されている。伝熱フィン82は、金属プレート80に一体的に設けられていてもよいし、溶接等の手段で固定されていてもよい。
【0061】
このような構造の金属プレート80を採用すれば、冷却流路内に突出する伝熱フィン82によって、冷却流路を流れる熱媒体と金属プレート80との接触面積がより大きく確保されることから、金属プレート80の冷却効率の向上が図られて、金属プレート80と重ね合わされるバッテリーパック等の冷却対象をより効率的に冷却することができる。
【0062】
また、伝熱フィン82は、金属プレート80の変形剛性を高める補強リブとしても機能することから、金属プレート80の変形を防止しながら、金属プレート80をより薄肉とすることができて、金属プレート80の更なる軽量化や熱容量の低減を図ることも可能となる。
【0063】
なお、伝熱フィン82は、例えば、厚さ方向に蛇行しながら延びる波板状等であってもよい。これによれば、冷却流路内の熱媒体が撹拌されることから、支流部の下流域でも金属プレート80と接する熱媒体の温度が低く保たれ易くなって、冷却効率の更なる向上が期待できる。また、金属プレートを部分的に下方へ突出するようにプレス加工等すれば、金属プレートに一体形成された当該突出部分を利用して、金属プレートと熱媒体との接触面積を増大させることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、金属プレートと保持部材の固定手段は、接着や溶着の他、リベット等による機械的な固定であってもよい。このような機械的な固定を採用する場合には、金属プレートと保持部材の間において熱媒体の漏れ出しを防ぐための流体密性を確保するために、金属プレートと保持部材の重ね合わせ面間にOリング等のシール部材が配されることが望ましい。
【0065】
保持部材に形成される窓部の形状、大きさ、数等は、何れも特に限定されない。また、窓部を覆う金属プレートの形状、大きさ数等も特に限定されず、例えば、冷却対象の形状や大きさ、数の他、金属プレートと流路部材との熱膨張率の差等を考慮して、適宜に設定される。なお、金属プレートの形状及び大きさは、保持部材の窓部の形状及び大きさに応じて設定されることが望ましいが、例えば、窓部とは異なる形状とされていてもよいし、窓部の開口より大きくてもよい。また、保持部材は、必ずしも金属プレートの外周端部を全周に亘って連続的に保持するものに限定されず、外周端部を周方向で部分的に保持していてもよい。従って、冷却プレートは、外周端部の少なくとも一部が金属プレートで構成され得る。
【0066】
前記実施形態の支流部60は、本流部58より幅広とされているが、例えば、本流部58を構成する往路部54と復路部56との少なくとも一方に対して、略同じ幅であってもよいし、より幅狭であってもよい。また、前記実施形態の支流部60は、本流部58よりも幅広であることから、支流部60内の熱媒体の流れを整えるために複数の整流リブ28が設けられていたが、整流リブ28は必須ではない。
【0067】
冷却流路は、往路部54と復路部56との間に複数の支流部60が並列的に設けられた構造に限定されず、例えば、1つの支流部だけが設けられていてもよいし、支流部の下流側をそれぞれ外部流路に接続される外部ポートに直接的に連通させることで復路部56を省略することもできる。また、流路部材12の左右両側にそれぞれ往路部54を設け、左右中間部分に復路部56を設けてもよい。
【0068】
外部ポートである入口ポート50と出口ポート52は、何れも保持部材32に一体形成されていなくてもよく、例えば別部品とされて保持部材32の外周枠状部38に固定的に取り付けられていてもよいし、保持部材32にインサートされた金具等で構成することもできる。また、冷却流路16の端部を構成する入口ポートと出口ポートは、流路部材12に設けられていてもよい。
【0069】
流路部材12の形成材料と、保持部材32の形成材料とは、相互に異なっていてもよい。このように、流路部材12と保持部材32とを異なる合成樹脂材料で形成すれば、例えば、保持部材32の形成材料を金属プレート34との接着性を考慮して選択することも可能となる。
【符号の説明】
【0070】
10 冷却用熱交換器(第一の実施形態)
12 流路部材
14 冷却プレート
16 冷却流路
18 凹溝
20 往路溝部
22 復路溝部
24 支流溝部
26 連通溝部
28(28a,28b) 整流リブ
30 肉抜孔
32 保持部材
34 金属プレート
36 窓部
38 外周枠状部
40 桟状部
42 主流蓋部
44 支流間蓋部
46 位置決めリブ
48 プレート保持部
50 入口ポート
52 出口ポート
54 往路部
56 復路部
58 本流部
60 支流部
64 バッテリーパック(冷却対象)
66 伝熱層
70 冷却用熱交換器(第二の実施形態)
72 冷却プレート
74 保持部材
76 金属プレート
80 金属プレート(第三の実施形態)
82 伝熱フィン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8