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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008161
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】倉庫及び倉庫の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20250109BHJP
   E04B 2/02 20060101ALI20250109BHJP
   E04B 2/16 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
E04H1/12 307
E04B2/02 110
E04B2/02 115C
E04B2/16
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110099
(22)【出願日】2023-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000216058
【氏名又は名称】天昇電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003122
【氏名又は名称】弁理士法人タナベ・パートナーズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸三
(72)【発明者】
【氏名】結城 和久
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 知正
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025CA01
2E025CB05
2E025CC01
2E025CC04
(57)【要約】
【課題】主要な部分を人力で迅速に組み立てることができ、再利用する際に平面形状や広さを変えることのできる倉庫を提供する。
【解決手段】倉庫1は、複数の単位ブロック部材30、40、50を組み立てることによって構成される一対の壁部2、2と、一対の壁部2、2の上に設置される天井部6と、を備えている。また、単位ブロック部材(30、40、50)は、矩形板31と4本の脚部33とを有する4脚形態の単位ブロック部材30、矩形板41と2本の脚部43、43とを有する2脚形態の単位ブロック部材40、又は、矩形板51と1本の脚部53とを有する1脚形態の単位ブロック部材50であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位ブロック部材を組み立てることによって構成される一対の壁部と、
一対の前記壁部の上に設置される天井部と、
を備える、倉庫。
【請求項2】
前記単位ブロック部材は、矩形板と4本の脚部とを有する4脚形態の単位ブロック部材、矩形板と2本の脚部とを有する2脚形態の単位ブロック部材、又は、矩形板と1本の脚部とを有する1脚形態の単位ブロック部材である、請求項1に記載された、倉庫。
【請求項3】
前記壁部は、2つの前記単位ブロック部材の一方を上下方向に反転させて、互いの前記脚部どうしを嵌合して連結された、複数の枠状ブロックセットによって構成される、請求項2に記載された、倉庫。
【請求項4】
前記単位ブロック部材の前記矩形板には、前記脚部を有しない面側に凹凸形状が形成されており、複数の前記枠状ブロックセットが千鳥状に上下にずらして重ね合わされた状態で、互いの前記矩形板どうしが嵌合するようになっている、請求項3に記載された、倉庫。
【請求項5】
前記天井部は、一対の前記壁部の上に架け渡される繊維補強コンクリートパネルを含む、請求項1に記載された、倉庫。
【請求項6】
前記壁部には、外向きの側面に繊維補強コンクリートパネルがさらに取り付けられる、請求項1に記載された、倉庫。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された倉庫の構築方法であって、
複数の前記単位ブロック部材を水平方向及び鉛直方向に千鳥状に配置して、一対の前記壁部を構築する工程と、
一対の前記壁部の上に前記天井部を架け渡す工程と、
を備える、倉庫の構築方法。
【請求項8】
前記壁部の外向きの側面に繊維補強コンクリートパネルを取り付ける工程をさらに備える、請求項7に記載された、倉庫の構築方法。
【請求項9】
前記壁部に形成された貫通孔にアンカー部材を挿通して、前記単位ブロック部材を上下方向に締結する工程をさらに備える、請求項7に記載された、倉庫の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て式の倉庫と、この組み立て式の倉庫の構築方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品を一時的に保管するための倉庫が必要となる場合がある。例えば、地震や台風による被災地では、食品等の大量の救援物資を一時的に保管するために、倉庫が必要とされる。このような倉庫としては、組立・撤去が容易であり、かつ、短期間で組立・撤去が可能なテント式のものが使用されることが多い。
【0003】
このような従来のテント式の仮設倉庫は、地面に多数本の脚部材を立設固定した後、脚部材の上部に屋根部材を組んで、更に屋根部材の上にテント布を張設することにより、組み立てられるものが一般的である。例えば、特許文献1のテント式の仮設倉庫は、屋根部と、屋根部を支持する脚部とを備え、折りたたみ形式の脚部を有する折り畳み式移動倉庫が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-201962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の仮設倉庫を含む従来の倉庫は、主要な部分を人力で迅速に組み立てることができるものではないうえ、強度が高いものではなかった。
【0006】
そこで、本発明は、主要な部分を人力で迅速に組み立てることができ、強度が高い倉庫を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の倉庫は、複数の単位ブロック部材を組み立てることによって構成される一対の壁部と、一対の前記壁部の上に架け渡される天井部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
このように、本発明の倉庫は、複数の単位ブロック部材を組み立てることによって構成される一対の壁部と、一対の壁部の上に架け渡される天井部と、を備えている。このような構成であるから、主要な部分である壁部を人力で迅速に組み立てることができ、強度が高い倉庫となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の倉庫の斜視図である。
図2】本実施例の倉庫の正面図である。
図3】本実施例の倉庫のパネルを外した状態の斜視図である。
図4】本実施例の倉庫のパネルを外した状態の正面図である。
図5】本実施例の倉庫のパネルを外した状態の天面図である。
図6】アンカー部材について説明するため、壁部の一部を破断した斜視図である。
図7】4脚形態の単位ブロック部材の斜視図である。
図8】4脚形態の枠状ブロックセットの斜視図である。
図9】2脚形態の単位ブロック部材の斜視図である。
図10】2脚形態の枠状ブロックセットの斜視図である。
図11】1脚形態の単位ブロック部材の斜視図である。
図12】1脚形態の枠状ブロックセットの斜視図である。
図13】天地板の配置を説明する斜視図である。(a)は底面で、(b)は頂面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例0011】
(構成)
まず、図1図5を用いて本実施例の倉庫1の全体構成を説明する。本実施例の倉庫1は、図1図2に示すように、全体として直方体形状の倉庫1であり、左右一対の壁部2、2と、この左右一対の壁部2、2の上に設置される天井部6と、を備えている。すなわち、一対の壁部2、2が所定の間隔をおいて平行に配置されており、壁部2、2の間の空間の上方が天井部6によって塞がれ、直方体形状の内部空間90を有するトンネル状に形成されている。ここにおいて、2つの壁部2、2の形状は同一である必要はなく、異なる形状であってもよい。なお、図示しないが、正面と背面の開口箇所の一方又は両方には、開閉可能な扉(ドア)を設けることが好ましい。
【0012】
ここにおいて、以下の実施例では、直線形状の壁部2、2を有する全体として平行な壁部2を有する直線形状の倉庫1について説明するが、これに限定されるものではなく、全体としてL字形状の倉庫1やクランク状に屈曲された形状の倉庫1であっても本実施例の倉庫を構築できる。すなわち、本実施例の倉庫1の壁部2は、図3図5に示すように、それぞれ単体では小型の複数の単位ブロック部材30、40、50を組み合わせて全体形状を構成するものであるため、どのような幅、高さ、形状であっても構築することができる。
【0013】
壁部2は、複数の単位ブロック部材30、・・・(40、・・・、50、・・・)を組み立てることによって構成される。この単位ブロック部材30、・・・(40、・・・、50、・・・)は、具体的に言うと、矩形板と4本の脚部とを有する複数の4脚形態の単位ブロック部材30、・・・と、矩形板と2本の脚部とを有する複数の2脚形態の単位ブロック部材40、・・・と、又は、矩形板と1本の脚部とを有する複数の1脚形態の単位ブロック部材50、・・・と、から構成される。さらに、壁部2の底面を構成する最下部、及び、壁部2の頂面を構成する最上部には、各サイズの複数の天地板91、・・・が嵌合されている。
【0014】
このうち4脚形態の単位ブロック部材30は、矩形板31と脚部33、33、33、33を有しており(図7参照)、2つの単位ブロック部材30、30の互いの脚部33、33どうしを嵌合して連結させることで、枠状ブロックセット30Fとなっている(図8参照)。同様に、2脚形態の単位ブロック部材40は、矩形板41と脚部43、43を有しており(図9参照)、2つの単位ブロック部材40、40の互いの脚部43、43どうしを嵌合して連結させることで、枠状ブロックセット40Fとなっている(図10参照)。同様に、1脚形態の単位ブロック部材50は、矩形板51と脚部53を有しており(図11参照)、2つの単位ブロック部材50、50の互いの脚部53、53どうしを嵌合して連結させることで、枠状ブロックセット50Fとなっている(図12参照)。それぞれの単位ブロック部材30、40、50及び枠状ブロックセット30F、40F、50Fのより詳細な形状については、図7図12を用いて後述する。
【0015】
そして、倉庫1の壁部2の主要構造は、上下方向に千鳥状(互い違い)にずらして重ね合わされる、複数の4脚形態の単位ブロック部材30、・・・によって構成される。すなわち、下段側の複数の4脚形態の枠状ブロックセット30F、・・・は、所定の間隔dをおいてX方向とY方向に整列して配置され、上段側の複数の4脚形態の枠状ブロックセット30F、・・・は、それぞれ下段側の4つの4脚形態の枠状ブロックセット30F、30F、30F、30Fに跨がるようにして嵌合される。後述するように、単位ブロック部材30の矩形板31の脚部33が設けられていない背面側には、X方向とY方向に間隔dずつずらした状態で、互いの矩形板31、31(の背面側)どうしが嵌合する凹凸形状(嵌合部38、39)が形成されている。
【0016】
主要構造をなす4脚形態の単位ブロック部材30、・・・(枠状ブロックセット30F、・・・)の側面は、千鳥(互い違い)配置によって一段ごとに凹凸を繰り返すことになるため、凹部になる段の側面部には、2脚形態の単位ブロック部材40、・・・(枠状ブロックセット40F、・・・)が設置されて凹部を埋めている。同様に、凹部となる段の隅角部には、1脚形態の単位ブロック部材50、・・・(枠状ブロックセット50F)が設置されて凹部を埋めている。
【0017】
このようにして側面の凹部が埋められて平坦になった壁部2の外向きの側面には、図3図5に示すように、壁部2には、さらに複数の側板20、・・・が表面を覆うようにして設置される。この側板20は、4脚形態の単位ブロック部材30の1/2の幅を有するとともに、4脚形態の枠状ブロックセット30Fと略同一の高さを有する。なお、後述するように、パネル71、81を設置する場合には、必ずしも側板20、・・・は設けなくてもよい。
【0018】
そして、本実施例の倉庫1には、図5図6に示すように、複数の単位ブロック部材30、・・・によって構成される壁部2の内部において、上下方向に貫通する、複数の貫通孔21、・・・が形成されている。そして、本実施例では、図6に示すように、この貫通孔21を利用して、複数の単位ブロック部材30、40、50を互いに締結するためのアンカー部材22が設置されている。具体的に言うと、アンカー部材22は、地盤に埋設・固定される2つの定着部22b、22b(間隔をおいた異なる貫通孔21、21に配置される)と、これら2つの定着部22b、22bに架け渡される引張材22aと、から構成されている。この引張材22aとしては、樹脂製スリングや合金製ワイヤロープなどを用いることができる。そして、引張材22aは、最上部の1つ下の複数の単位ブロック部材30、・・・の複数の矩形板31、・・・に掛け回されている。さらに、図示しないが、引張材22aは、途中に配置されたジャッキ等によって締め付けるようにされていてもよい。なお、1つの壁部2に対して、複数のアンカー部材22を設置することもできる。その場合、1つの貫通孔21に複数個の定着部22b、・・・を配置することもできるし、引張材22a、22aを交差させることもできる。アンカー部材22の配置や個数は必要に応じて設定できる。
【0019】
天井部6は、一対の壁部2、2の上に架け渡される第1の天井パネル61を含んでいる。すなわち、天井部6は、壁部2、2の上に載置される、細長い矩形の第1の天井パネル61と、壁部2の側面までの隙間を埋める第2の天井パネル62と、から構成される。この天井部6の天井パネル61、62としては、具体的には、厚さ20mm~40mmの(超高強度)繊維補強コンクリートパネルを使用することができる。
【0020】
ここにおいて、本実施例の側面側の第2の天井パネル62は、L字状に屈曲された断面を有することもでき、壁部2の最上部の側面を保護するようにも形成できる。ただし、第2の天井パネル62は、平板状のものであってもよい。なお、天井パネル61、62の壁部2の頂面への固定手法としては、天井パネル61に設けた孔を用いて番線で固定する手法や、前述したアンカー部材22を利用して抑える手法などがある。ただし、天井パネル61の壁部2の頂面への固定手法は、どのようなものであってもよい。
【0021】
さらに、本実施例の壁部2にも、外向きの側面に側面パネル71が取付けられている。この壁部2の側面パネル71としては、具体的には、厚さ20mm~40mmの(超高強度)繊維補強コンクリートパネルを使用することができる。同様に、壁部2の正面及び背面には、正面パネル81が取付けられている。この壁部2の正面パネル81としては、具体的には、(超高強度)繊維補強コンクリートパネルを使用することができる。なお、側面パネル71や正面パネル81の壁部2の頂面への固定手法としては、あらかじめパネル71、81側に嵌合機構を埋設しておく手法や、パネル71、81に設けた孔を用いて番線で固定する手法等がある。ただし、パネル71、81の壁部2の側面への固定手法は、どのようなものであってもよい。
【0022】
(単位ブロック部材の詳細な構造)
次に、本発明の実施例の3種類の単位ブロック部材30、40、50の詳細な構造について、図面を参照しながら説明する。上述したように、本実施例の壁部2は、複数個の枠状ブロックセット30F、40F、50Fの配列構成体で構成され、この枠状ブロックセット30F、40F、50Fは、前述したように、それぞれ上下2つの単位ブロック部材30、30、40、40、50、50から構成されている。
【0023】
(4脚形態の単位ブロック部材)
図7に示す単位ブロック部材30は4脚形態(1/1サイズ)として構成されたものである。単位ブロック部材30は、一方の片面全体に十字形平面部32が形成された矩形板31と、この矩形板31の十字形平面部32の4つの張出し腕部に各々隣接して矩形板31の片面四隅部に形成され、かつ中央に中空部34をもつ凹部35と、凹部35の中空部34と整合して矩形板31の他方の片面(図示の状態でみた場合に矩形板の裏面)に突設される4本の筒状の脚部33、・・・とを有している。
【0024】
図7に示すように、中空の脚部33は複数の通水孔(図示省略)をもつ有底構造となっている。そして、4本の脚部33のうち、対角線方向にある2本の脚部33、33の先端には凸状の嵌合部38が形成され、他の2本の脚部33、33の先端には凹状の嵌合部39が形成されている。この嵌合部38、39については枠状ブロックセット30Fに関連して後述する。十字形平面部32の各腕部は同じ巾寸法dを有している。
【0025】
矩形板31、脚部33の底部には雨水を逃がす円形、角形あるいはその他の形状の複数の通水孔が裏面へ抜けるように形成されている。各凹部35の底面にはそれぞれ2個の係合用孔36、36と2個の係合用突起37、37が形成されている。この実施例では、図示のように係合用孔36は凹部35の内側に設けられ、係合用突起37は矩形板31の外側に隣接して設けられている。多段形態の倉庫1において、図8に示すように、枠所ブロックセット30Fの下側の単位ブロック部材30の係合用孔36は上側の単位ブロック部材30の係合用突起37と係合し、下側の係合用突起37は上側の係合用孔36と係合する。
【0026】
(2脚形態の単位ブロック部材)
図9に示す実施例の単位ブロック部材40は2脚形態(1/2サイズ)として構成されたものであり、ここでは、その使用箇所からみて、側部単位ブロック部材と称される。単位ブロック部材40には、矩形板41の一方の片面中央に矩形平面部42が形成され、その平面部42に隣接してその両側に、この矩形平面部42よりも高さの低い凹部45、45が形成されている。また、各凹部45には中空部44が形成され、さらに、他方の片面(矩形板の裏面)には中空部44と整合する一対の中空筒状脚部43、43が形成されている。2脚形態の単位ブロック部材40においても、矩形平面部42は図7の4脚形態の単位ブロック部材30と同じ巾寸法dを有している。
【0027】
そして、矩形平面部42、凹部45、脚部43の底部には雨水を逃がす通水孔(図示省略)が裏面へ抜けるように形成されている。そして、矩形板41の裏面に突設された2本の脚部43、43、一方の脚部43の先端には凸状の嵌合部48が形成され、他の脚部43の先端には凹状の嵌合部49が形成されている。各凹部45の底面にはそれぞれ2個の係合用孔46、46と2個の係合用突起47、47が形成されている。この実施例では、図示のように係合用孔46は凹部45の区画壁に隣接した位置に設けられ、係合用突起47は矩形板41の側縁部に隣接して設けられている。多段形態の倉庫1において、4脚形態の単位ブロック部材30と同様に、図10に示すように、枠状ブロックセット40Fの下側の単位ブロック部材40の係合用孔46は上側の単位ブロック部材40の係合用突起47と係合し、下側の係合用突起47は上側の係合用孔46と係合する。
【0028】
(1脚形態の単位ブロック部材)
図11に示す実施例の単位ブロック部材50は脚部53が1本の1脚形態(1/4サイズ)の構成とした例である。中心に中空部54をもつ矩形板51と、中空部54と整合して矩形板51の他方の面に形成された1本の筒状の脚部53とを有している。この1脚の単位ブロック部材50は主として施設構成体の隅角部に配置される場合が多いことから角部単位ブロック部材と称されている。この1脚形態の単位ブロック部材50は、2タイプのものが作られるが、脚部53の先端構造のみが異なり、他は同じである。つまり、1脚形態の枠状ブロックセット50Fにおいては、2タイプのものが1組となって枠状ブロックセット50Fが形成される。
【0029】
そして、1脚形態の単位ブロック部材50の矩形板51には、裏面まで抜ける複数個の通水孔(図示省略)が形成されている。また、矩形板51の片面にはそれぞれ区画壁に隣接した位置に2個の係合用孔56、56と、矩形板51の側部に隣接した位置に2個の係合用突起57、57とが設けられている。複数段に重ねられた1脚柱形の枠状ブロックセット50Fにおいて、下側の枠状ブロックセット50Fの単位ブロック部材50の係合用孔56および係合用突起57と上側の枠状ブロックセット50Fの単位ブロック部材50の係合用突起57および係合用孔56とがそれぞれ係合する。
【0030】
中空の脚部53は複数の通水孔(図示省略)を持つ有底構造となっている。そして、一方のタイプの1脚形態の単位ブロック部材50の1本の脚部53の先端には凸状の嵌合部58が形成され、他方のタイプの1脚形態の単位ブロック部材50の1本の脚部53の先端には凹状の嵌合部59が形成されている。凹状の嵌合部59の脚部53をもつ単位ブロック部材50と凸状の嵌合部58の脚部53をもつ単位ブロック部材50とが、これらの嵌合部58、59どうしが嵌合することにより、図12に示すように、1脚形態の枠状ブロックセット50Fが形成される。
【0031】
(倉庫の構築方法)
次に、本実施例の倉庫1の構築方法について説明する。倉庫1は、以下のような工程を順に実施することで構築される。
【0032】
1)単位ブロック部材30、40、50を準備する工程
工場において、単位ブロック部材30、40、50を射出成型によって製造する。製造後は、単位ブロック部材30、40、50を互いに重ね合わせることで、少ないスペースに収納可能である。
2)単位ブロック部材30、40、50を運搬する工程
トレーラやトラックに積載する際には、単位ブロック部材30、40、50がスタック可能な構造となっていることで、一度に多量の部材を運搬することができる。
【0033】
3)設置場所の不陸を調整する工程(省略可)
設置場所に、砕石や砂を敷き均すことで不陸調整する。基礎コンクリートを打設することも可能である。なお、不陸調整が不要な場合は、この工程は省略できる。
4)底面を組み立てる工程(省略可)
図13(a)に示すように、各サイズの複数の天地板91、・・・を、X方向及びY方向に所定の間隔dを空けて敷き並べる。すなわち、1/4サイズの天地板91を隅角部に、1/2サイズの天地板91を端縁部に、通常サイズ(1/1サイズ)の天地板91をそれ以外の中央部に、X方向とY方向に間隔dを開けながら整列配置する。
【0034】
5)隙間dを塞ぐようにして、単位ブロック部材30、40、50を嵌め合わせる工程
下側の単位ブロック部材30、40、50の上向きの脚部33、43、53に、上側の単位ブロック部材30、40、50の下向きの脚部33、43、53を嵌合させることで、枠状ブロックセット30F、40F、50Fを構築する。
【0035】
つまり、単位ブロック部材30、40、50を水平方向及び鉛直方向に千鳥状(互い違い)にずらしながら配置する。そして、この工程を必要な段数分だけ繰り返すことで、壁部2が構築される。壁部2は同一の高さのものを2つ(左右一対)構築する。さらに、壁部2の外向きの側面に側板20を取り付けてもよい。
【0036】
6)壁部2に形成される上下方向の貫通孔21を利用して、アンカー部材22を設置することにより、複数の単位ブロック部材30、・・・を上下方向に締結する工程
アンカー部材22としては、例えば、ナイロンスリングや鋼製ワイヤロープを用いることができる。アンカー部材22の最下部の定着部22b、22bは、地中に埋設することができる。
7)繊維補強コンクリートパネルを取り付ける工程
アンカー部材22を施工後、さらに最上部の単位ブロック部材30、40、50を設置した後に、図13(b)に示すように、これらの上に各サイズの複数の天地板91、・・・を嵌合する。そして、壁部2の外向きの側面、正面、背面に、繊維補強コンクリートパネルを番線等で取り付ける。
【0037】
8)一対の壁部2、2の上に天井部6を架け渡す工程
次に、一対の壁部2、2の上に、天井部6を構成する天井パネル61、62を設置する。具体的には、長い方の第1の天井パネル61を壁部2、2の間に架け渡し、側方の部分には第2の天井パネル62を設置する。パネル61、62の固定は、例えば番線を用いることができる。
【0038】
(効果)
次に、本実施例の倉庫1の奏する効果を列挙して説明する。
【0039】
(1)上述してきたように、本実施例の倉庫1は、複数の単位ブロック部材30、40、50を組み立てることによって構成される一対の壁部2、2と、一対の壁部2、2の上に設置される天井部6と、を備えている。このように、それぞれ細かい単位である単位ブロック部材30、40、50を使用することで、構造のうち主要な部分である壁部2、2を人力で迅速に組み立てることができ、強度がきわめて高く、再利用する際に単位ブロック部材30、40、50の配置や個数を変えることで平面形状や広さを変えることのできる倉庫となる。
【0040】
(2)また、単位ブロック部材(30、40、50)は、矩形板31と4本の脚部33とを有する4脚形態の単位ブロック部材30、矩形板41と2本の脚部43、43とを有する2脚形態の単位ブロック部材40、又は、矩形板51と1本の脚部53とを有する1脚形態の単位ブロック部材50であることが好ましい。このような種類を揃えておくことで、様々な立体形状の壁部2を表面の凹凸なく構築することができる。さらに脚部33の周囲の空間を収納空間として利用することができる。この空間には、全体の重量を増やすために、土嚢を設置することもできる。
【0041】
(3)壁部2は、2つの単位ブロック部材30、30((40、40)(50、50))の一方を上下方向に反転させて、互いの脚部33、33どうしを嵌合して連結された、複数の枠状ブロックセット30F(40F、50F)によって構成されている。このため、保管時、運搬時には、省スペースで保管・運搬できるうえ、使用時には所定の幅・高さの内部空間を効率よく広く構築できる。さらに、脚部33の側方の高さのある空間を収納空間として利用することができる。
【0042】
(4)単位ブロック部材30、40、50の矩形板31、41、51には、脚部33、43、53を有しない面側に凹凸形状が形成されており、複数の枠状ブロックセット30F、40F、50Fが千鳥状(互い違い)に上下にずらして重ね合わされた状態で、互いの矩形板31、41、51どうしが嵌合するようになっている。このため、枠状ブロックセット30F、40F、50Fどうしを、矩形板31、41、51を背中合わせにして重ね合わせた状態で、互いにずれないようにすることができる。このため、壁部2の強度を損なうことなく、壁部2の高さをより高く構築することができる。
【0043】
(5)また、天井部6は、一対の壁部の上に架け渡される繊維補強コンクリートパネル(61)を含むことで、壁部2の上部を塞いで内部に収容用の空間を構築できる。さらに、壁部2の上に重量のある繊維補強コンクリートパネル(第1の天井パネル61)を載せることで、単位ブロック部材30、40、50どうし、枠状ブロックセット30F、40F、50Fどうしの嵌合をずれにくくして壁部2全体の強度を高くすることができる。
【0044】
(6)また、壁部2には、外向きの側面に繊維補強コンクリートパネル(壁パネル71)がさらに取り付けられているため、壁部2の側面を塞いで内部の収容用の空間を安全に保護することができる。さらに、壁部2に重量のある繊維補強コンクリートパネル(71)の重量を作用させることで、単位ブロック部材30、40、50どうし、枠状ブロックセット30F、40F、50Fどうしの嵌合をずれにくくして壁部2全体の強度を高くすることができる。
【0045】
この他にも、本実施例の倉庫1は、単位ブロック部材30、40、50を利用することによって、以下のような特徴を有している。
・構造強度が高く、鉛直方向、水平方向の許容荷重が大きい。
・長期性能の信頼性が高い。耐候性に優れている。
・耐震性能に優れる。
・現地での手作業で簡単に組み立てることができる。最大の部材でも人力で運搬可能。
・嵌合部は解体時に人力で外すことが可能である。
【0046】
(7)さらに、本実施例の倉庫の構築方法は、以下のような工程を備えることが好ましい。すなわち、倉庫の構築方法は、複数の単位ブロック部材30、40、50を水平方向及び鉛直方向に千鳥状(互い違い)に配置して、一対の壁部2、2を構築する工程と、一対の壁部2、2の上に天井部6を架け渡す工程と、を備えている。このような構築方法であるから、構造のうち主要な部分である壁部2、2を人力で迅速に組み立てることができ、再利用する際に単位ブロック部材30、40、50の配置や個数を変えることで平面形状や広さを変えることのできる倉庫となる。
【0047】
(8)さらに、壁部2の外向きの側面に繊維補強コンクリートパネル(71)を取り付ける工程をさらに備えることで、壁部2の側面を塞いで内部の収容用の空間を安全に保護することができる。さらに、壁部2に重量のある繊維補強コンクリートパネル(71)の重量を作用させることで、単位ブロック部材30、40、50どうし、枠状ブロックセット30F、40F、50Fどうしの嵌合をずれにくくして壁部2全体の強度を高くすることができる。
【0048】
(9)加えて、壁部2に形成された貫通孔21にアンカー部材22を挿通して、単位ブロック部材30、・・・を上下方向に締結する工程をさらに備えることで、複数の単位ブロック部材30、・・・を上下方向に締め付けることで嵌合強度を向上させることができる。加えて、貫通孔21を通じて、電気設備や配管等を引き込み可能である。
【0049】
(倉庫の用途)
本発明の倉庫1は、例えば、1)自然災害、大規模事故等緊急時の被災地の救援活動、支援活動における仮設連絡事務所、被災者の緊急診療所、救援活動者の待機所、機材保管簡易倉庫、救援物資の保管倉庫等、2)製品、商品の保管、3)荷捌き場、4)作業機械、材料等の保管、など、多岐にわたる利用可能性がある。この意味では、倉庫1は、格納庫と表現することもできる。
【0050】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0051】
例えば、実施例では、倉庫1の全体が地表面上に設置される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、倉庫1の一部が地中に埋設されたり、一部又は全体に土砂を被せたりすることも可能である。一例として、防空壕のように倉庫1の入口付近は露出させつつ、側面や天面に土を被せることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 倉庫
2 壁部
20 側板
21 貫通孔
22 アンカー部材
30 単位ブロック部材(4脚形態)
31 矩形板
33 脚部
30F 枠状ブロックセット(4脚形態)
40 単位ブロック部材(2脚形態)
41 矩形板
43 脚部
40F 枠状ブロックセット(2脚形態)
50 単位ブロック部材(1脚形態)
51 矩形板
53 脚部
50F 枠状ブロックセット(1脚形態)
6 天井部(天井パネル)
61 第1の天井パネル
62 第2の天井パネル
71 壁パネル
81、82 正面パネル
図1
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